王子と乞食

これから書き記す物語は、ある男から聞いたものである。その男は父から聞き、その父はまた自分の父から聞いた。さらにその父も同じように父から聞き――そうして三百年あまりもの間、代々父から息子へと語り継がれ、今日まで伝えられてきた。これは史実かもしれないし、ただの伝説、言い伝えにすぎないかもしれない。実際に起きたことかもしれず、起きなかったことかもしれない。だが、起こり得た話ではある。昔の賢者や学者たちも信じていたのかもしれないし、学のない素朴な人々だけがこの物語を愛し、真実だと信じていたのかもしれない。

第一章 王子と乞食の誕生

十六世紀の第二・四半期、ある秋の日のこと、古都ロンドンで、キャンティという貧しい一家に男の子が生まれた。家族にとっては望まぬ子だった。同じ日、テューダーという裕福な一家にも、もう一人のイングランドの男の子が生まれた。こちらは待ち望まれていた子である。それどころか、全イングランドがその誕生を待ち望んでいた。あまりにも長いあいだ人々が焦がれ、期待し、神に祈り続けてきたものだから、いよいよ本当に生まれたと知るや、国中は歓喜のあまり狂わんばかりになった。顔見知り程度の者同士まで抱き合い、口づけを交わし、涙を流した。誰も彼も仕事を休み、身分の高い者も低い者も、富める者も貧しい者も、ご馳走を食べ、踊り、歌い、したたかに酔った。それが幾日も幾晩も続いた。昼のロンドンは、どの露台からも屋根からも華やかな旗が翻り、豪壮な行列が練り歩く、まさに見ものだった。夜になれば、街角ごとに大きな篝火かがりびが焚かれ、その周囲で浮かれ騒ぐ群衆が歓楽にふけり、これまた見ものであった。国中の話題は、生まれたばかりのウェールズ公エドワード・テューダーのことでもちきりだった。王子は絹と繻子にくるまれ、これほどの騒ぎにも気づかず、身分ある貴族たちが自分にかしずき、見守っていることも知らず――知ったところで気にも留めなかっただろう。だが、粗末な襤褸にくるまれたもう一人の赤ん坊、トム・キャンティのことを話題にする者は、彼の誕生でまた厄介を背負い込んだ貧乏一家のほかには誰一人いなかった。

第二章 トムの幼少時代

ここで年月をいくつか飛び越えることにしよう。

ロンドンは千五百年の歴史を持ち、当時としては大都市だった。人口は十万、倍の二十万はいたと考える者もいる。通りはひどく狭く、曲がりくねり、汚れていた。なかでもトム・キャンティの住む一帯は格別で、ロンドン橋からそう遠くなかった。家々は木造で、二階が一階よりせり出し、三階はさらに二階の外へ肘を突き出すように張り出していた。高くなるほど幅も広くなったのである。頑丈な梁を縦横に組んだ骨組みの隙間を堅い建材で埋め、その上を漆喰で塗ってあった。梁は持ち主の好みに応じて赤や青や黒に塗られ、家々にじつに絵画的な趣を添えていた。窓は小さく、小さな菱形のガラス板がはめ込まれ、扉のように蝶番で外側へ開くようになっていた。

トムの父親が住んでいた家は、プディング・レーンから入ったオファル・コートという、汚らしい袋小路の奥にあった。小さく、朽ちかけ、今にも崩れそうな家だったが、惨めな貧乏所帯がぎっしり詰め込まれていた。キャンティ一家は三階の一部屋を占めていた。父と母には、部屋の隅に寝台らしきものがあった。だがトムと祖母、それに二人の姉妹ベットとナンにはそんな制約はなく、床を存分に使って好きな場所で眠れた。毛布の残骸が一、二枚と、古く汚れた藁の束がいくつかあったが、とても寝床とは呼べない代物だった。形を整えてあるわけでもなく、朝には一まとめに蹴り寄せ、夜になるとその山から各自が使う分を選び取るのである。

ベットとナンは十五歳の双子だった。心根は優しかったが、不潔で、襤褸をまとい、恐ろしいほど無学だった。母親も同様である。しかし父親と祖母は、まさしく悪鬼の一組だった。酒が手に入れば必ず酔い、酔えば互いに、あるいは目についた相手と殴り合った。酔っていようが素面だろうが、口を開けば罵詈雑言だった。ジョン・キャンティは盗人、その母親は物乞いだった。子供たちを物乞いには仕立てたが、盗人にすることには失敗した。この家を巣窟としていた恐ろしい有象無象のなかに交じりながら、しかし仲間ではない善良な老司祭が一人いた。王に住まいを追われ、わずか数ファージング[訳注:当時のイングランドの小額硬貨]の年金を与えられただけの身で、子供たちをこっそり呼び寄せては正しい道を教えていた。アンドリュー神父はトムに少しばかりのラテン語と、読み書きも教えた。姉妹にも同じことを教えたかったのだが、二人は仲間にからかわれるのを恐れた。女の子がそんな珍妙な芸当を身につけるなど、仲間たちには我慢ならなかったのである。

オファル・コート全体が、キャンティ家の住む家と同じような巣窟だった。毎晩、ほとんど一晩中、酔っ払いの騒ぎと喧嘩が絶えなかった。ここでは空腹と同じくらい、頭をかち割られることが当たり前だった。それでも幼いトムは不幸ではなかった。暮らしは過酷だったが、本人はそうと知らなかったのである。オファル・コートの少年たちは皆、同じ暮らしをしていたから、これがごく正しく快適な生活なのだと思っていた。夜、何も持たずに帰れば、まず父親に罵られ、殴られる。父親が終えると、恐ろしい祖母が同じことを初めから、それもさらに念入りにやり直す。そして夜更けには、飢えた母親が、自分の食事を抜いてまで取っておいた惨めな食べ残しやパンの皮を、こっそり持ってきてくれる。だがそんな裏切り行為が見つかって、夫から激しく殴られることもしばしばだった。

いや、トムの暮らしはそれなりに順調だった。とりわけ夏はそうである。物乞いを禁じる法律は厳しく、罰も重かったので、わが身を守るのに必要なだけしか物乞いはしなかった。そこで多くの時間を、善良なアンドリュー神父が語る、巨人や妖精、小人や魔神、魔法の城、華麗な王や王子たちの魅惑的な昔話や伝説を聞いて過ごした。トムの頭はそうした不思議な物語でいっぱいになった。暗闇のなか、わずかばかりの臭い藁に横たわり、疲れ、飢え、殴られた傷をひりつかせながらも、想像の翼を解き放てば、王宮で大切に育てられる王子の夢のような暮らしが鮮やかに浮かび、たちまち痛みも苦しみも忘れられた。やがて一つの願いが、昼も夜もトムにつきまとうようになった。本物の王子を、この目で見てみたい。オファル・コートの仲間に一度だけその願いを打ち明けたことがある。だがあまりにも容赦なく嘲り笑われたので、それ以後は夢を胸に秘めておくことにした。

トムはよく神父の古い本を読み、内容を説明し、詳しく語ってくれるよう頼んだ。そうした夢想と読書は、やがてトムにある変化をもたらした。夢のなかの人々があまりに立派だったので、自分のぼろ服や汚れを嘆き、清潔になり、もっとましな服を着たいと思うようになったのである。以前と同じく泥のなかで遊び、それを楽しみもした。だがテムズ川で水を跳ね散らすのも、ただ面白いからというだけでなく、体を洗い、汚れを落とせるという新たな価値を見いだすようになった。

チープサイドの五月柱の周辺や市では、いつも何かしら催しがあった。また時折、名高い不運な人物が、陸路や船で囚人としてロンドン塔へ連行される際には、トムもほかのロンドン市民とともに軍隊の行進を見る機会に恵まれた。ある夏の日には、哀れなアン・アスキューと三人の男がスミスフィールドで火刑に処されるのを見た。元司教が彼らに説教するのも聞いたが、こちらはまるで面白くなかった。そう、全体としてみれば、トムの人生は変化に富み、十分に楽しかったのである。

やがて王侯の暮らしについて読み、夢想し続けた影響があまりにも強くなり、トムは無意識に王子を演じるようになった。その言葉遣いや立ち居振る舞いは、妙に儀礼ばって宮廷風になり、親しい仲間たちは大いに感心し、面白がった。だが今や、少年たちのあいだでトムの影響力は日ごとに増していった。やがて仲間たちは、トムを優れた存在として、驚きと畏敬の入り交じった目で仰ぎ見るようになった。なんと物知りなのだろう! なんと素晴らしいことをし、素晴らしい話をするのだろう! しかも実に思慮深く、賢い! トムの言葉や振る舞いは少年たちから大人へ伝わり、ほどなく大人たちまでトム・キャンティのことを語り合い、類いまれな才能を持つ、並外れた子供だとみなすようになった。立派な大人たちまで難題を持ち込んでトムに解決を求め、その裁きに表れる機知と知恵にしばしば驚かされた。実際、トムを知る者すべてにとって、彼は英雄となった――ただし家族だけは例外で、家族には何の値打ちも見えていなかった。

しばらくすると、トムはひそかに王宮まで組織した! トムが王子となり、特に親しい仲間たちは衛兵、侍従、厩官きゅうかん、侍従の貴族男女、そして王族となった。毎日、にせ王子は、トムが物語の本から借りてきた手の込んだ儀礼で迎えられた。毎日、まねごとの王国の大事が御前会議で論じられ、まねごとの殿下が架空の陸軍、海軍、属領の総督たちに勅令を下した。

それが終われば、襤褸をまとって外へ出て、数ファージングを物乞いし、粗末なパンの皮を食べ、いつものように殴られ罵られる。そしてひとつかみの汚い藁に身を横たえ、夢のなかで中身のない栄華を再び味わうのだった。

それでも、生身の本物の王子をただ一度でいいから見たいという願いは、日ごと、週ごとに強くなっていき、ついにはほかの願いをすべて呑み込み、トムの生涯ただ一つの情熱となった。

一月のある日、いつものように物乞いに出たトムは、ミンシング・レーンとリトル・イースト・チープの界隈を、何時間も裸足で寒さに震えながら、しょんぼりと歩き回った。料理屋の窓をのぞき込み、そこに並ぶ恐ろしい豚肉のパイや、健康を損ねそうなほかの発明品を食べたいと願った。トムにとっては天使にふさわしいご馳走だったのである――少なくとも匂いから判断するかぎりは。というのも、これまで一度として自分のものにして食べる幸運に恵まれたことがなかったからだ。冷たい霧雨が降り、大気はどんよりと濁っていた。陰鬱な一日だった。夜になって家へたどり着いたトムは、ずぶ濡れで、疲れ果て、腹を空かせていた。父と祖母も、その惨めな姿を見て何も感じずにはいられなかった――もちろん二人なりの感じ方である。そこで二人はさっそく景気よくトムを殴りつけ、寝床へ追いやった。長いあいだ、痛みと空腹、そして家中に響く罵声と喧嘩の音で眠れなかった。しかしついに思いは遠い夢の国へと漂い、宝石と黄金で身を飾った幼い王侯たちとともに眠りに落ちた。彼らは広大な宮殿に住み、召使いたちは御前でひれ伏し、命令を受ければ飛ぶように駆けていく。そしていつものように、トムは自分自身が幼い王侯となった夢を見た。

一晩中、王者としての栄華がトムを照らした。まばゆい光のなか、身分ある貴族たちに囲まれて歩き、芳香を吸い、妙なる音楽に酔いしれた。きらびやかな群衆が道を開けて恭しく頭を下げると、ある者には微笑み、またある者には王子らしく軽くうなずいて応えた。

そして朝、目を覚まして周囲の惨めさを目にすると、夢はいつもの効果をもたらした。身の回りのむさ苦しさが、千倍にも増して感じられたのである。苦い思いがこみ上げ、胸が張り裂け、涙が流れた。


第三章 トム、王子と出会う

トムは空腹のまま起き、空腹のままぶらぶらと出かけた。しかし頭のなかは、昨夜の夢に現れた朧な栄華でいっぱいだった。自分がどこへ向かっているのか、周囲で何が起きているのかにもろくに気づかず、街をあちらこちらとさまよった。人にぶつかられ、乱暴な言葉を浴びせられることもあったが、物思いに沈む少年の耳には入らなかった。やがて気がつくと、テンプル・バーまで来ていた。こちらの方角では、家からこれほど遠くへ来たことはなかった。立ち止まってしばらく考えたが、またすぐに空想へ沈み、ロンドンの城壁の外へ出ていった。当時のストランドはすでに田舎道ではなく、自らを街路と称していたが、ずいぶん無理のある話だった。片側には家並みがかなり密集していたものの、反対側には大きな建物が点在するだけだったからである。それらは裕福な貴族の宮殿で、広く美しい庭園が川まで伸びていた。今では陰気な煉瓦と石の建物が、隙間なく立ち並んでいる場所である。

ほどなくトムはチャリング村へ着き、昔、妻を失った王が建てた美しい十字架のもとで休んだ。それから静かで美しい道をぶらぶらと進み、枢機卿の壮麗な宮殿を通り過ぎ、その先にある、はるかに壮大で威厳に満ちた宮殿――ウェストミンスターへと向かった。広大な石造建築、左右に広がる翼棟、威圧的な稜堡と小塔、巨大な石造りの門、金色の格子、壮麗な花崗岩の巨大な獅子像、その他イングランド王権を示すあらゆる印と象徴を、トムは喜びと驚きに目を見張って眺めた。ついに心からの願いがかなうのだろうか? ここはまさしく王宮だ。天が許すなら、今こそ王子を――血の通った本物の王子を見られるのではないか? 

金色の門の両脇には、生きた彫像が一体ずつ立っていた。つまり頭の先から足の先まで輝く鋼の鎧に包まれ、直立したまま威厳に満ちて微動だにしない武装兵である。離れた場所には、王族の姿を一目でも拝める機会を待って、大勢の田舎者や市民が集まっていた。華麗な人々を乗せ、外側には華麗な召使いを従えた豪華な馬車が、王宮の囲いに設けられたいくつもの堂々たる門から出入りしていた。

襤褸をまとった哀れなトムは、胸を高鳴らせ、期待を膨らませながら門へ近づき、衛兵の前をおずおずとゆっくり通り過ぎようとした。そのとき突然、金色の格子越しにある光景が目に入り、喜びの叫びを上げそうになった。門の内側に、健康的な戸外の運動で日に焼けた、端正な少年がいた。身につけているのは美しい絹と繻子ばかりで、宝石がきらめいている。腰には宝石をちりばめた小さな剣と短剣。足には赤い踵のついた上品な半長靴。頭には大粒の輝く宝石で垂れ羽根を留めた、粋な深紅の帽子。近くには華麗な装いの紳士が何人も立っていた――間違いなく召使いだ。ああ! 王子だ――生きた王子、本物の王子だ――疑いの余地など微塵もない。乞食の少年が心に抱き続けた祈りは、ついに聞き届けられたのである。

興奮のあまりトムの息は浅く速くなり、目は驚きと喜びに大きく見開かれた。心のなかのすべてが、一つの願いに道を譲った。王子のそばへ近づき、むさぼるように、心ゆくまで眺めたい。自分が何をしているか気づかぬうちに、顔を門の格子へ押しつけていた。次の瞬間、兵士の一人に乱暴につかまれて引き剥がされ、口を開けて見物していた田舎者やロンドンの暇人たちの群れへ、ぐるぐる回りながら放り込まれた。兵士は言った――

「身の程をわきまえろ、この小乞食め!」

群衆は嘲り笑った。だが幼い王子は顔を紅潮させ、憤怒に目を輝かせながら門へ駆け寄ると、叫んだ――

「なぜ貧しい少年にそのような真似をする! 父王の臣民、それも最も卑しい身分の者を、なぜそのように扱うのだ! 門を開け、この者を中へ入れよ!」

そのとき、あの気まぐれな群衆が一斉に帽子を脱いださまを、皆にも見せたかったものだ。そして彼らが歓声を上げ、「ウェールズ公殿下、万歳!」と叫ぶ声を、聞かせたかったものだ。

兵士たちは斧槍を掲げて敬礼し、門を開いた。そして襤褸をはためかせた小さな貧困の王子が、無限の富を持つ王子と手を取り合うべく中へ入ると、再び敬礼した。

エドワード・テューダーは言った――

「疲れて腹も減っているようだな。ひどい扱いを受けたものだ。私と来い。」

五、六人の従者が、何をするためかは知らないが、さっと進み出た。おそらく口を挟もうとしたのだろう。だが王子がいかにも王者らしい仕草で手を振ると退けられ、その場で彫像のようにぴたりと止まった。エドワードはトムを、王宮内の豪華な部屋へ連れていった。王子が私室と呼んでいる部屋である。命令を受け、トムがこれまで本のなか以外で目にしたことのないご馳走が運ばれてきた。王子は、王侯らしい心遣いと教養から、卑しい身分の客が召使いたちの詮索するような視線に気後れしないよう、彼らを下がらせた。それから近くに座り、食べるトムに尋ねた。

「名は何という、少年?」

「トム・キャンティと申します、旦那さま。」

「変わった名だ。どこに住んでいる?」

「市内でございます、旦那さま。プディング・レーンから入ったオファル・コートです。」

「オファル・コート! これまた変わった名だ。両親はいるのか?」

「両親がおります。それと、あまり大切に思えない祖母も。そんなことを申すのが罪なら、神さまにお許しいただきたいですが。それから双子の姉妹、ナンとベットもおります。」

「では、その祖母はあまり優しくないのだな?」

「誰にも優しくございません、殿さま。心根が邪悪で、一日中悪いことばかりしております。」

「おまえを虐待するのか?」

「手を出さないこともございます。眠っているときか、酒に酔いつぶれているときです。ですが意識がはっきり戻れば、その分を取り返すように、たっぷり殴ってくれます。」

幼い王子の目に険しい光が宿り、声を上げた――

「何だと! 殴るのか?」

「はい、それはもう、旦那さま。」

殴るだと! ――こんなに小さく、ひ弱なおまえを。よいか、日が暮れる前に、その女をロンドン塔へ送ってやる。父王が――」

「ですが旦那さま、祖母の身分をお忘れです。ロンドン塔へ入るのは偉い方だけでございます。」

「なるほど、そのとおりだ。そこまでは考えなかった。罰については考えておこう。父親は優しいのか?」

「キャンティばあさんと変わりません、旦那さま。」

「父親というものは皆、似ているのかもしれぬ。私の父も人形のように穏やかな気性ではない。手ひどく打つことはあっても、私には手加減する。ただ、言葉では必ずしも手加減してくれぬがな。母親はおまえにどう接する?」

「優しい方です、旦那さま。悲しい思いも痛い思いも、少しもさせません。ナンとベットも同じです。」

「二人はいくつだ?」

「十五でございます、旦那さま。」

「姉のレディ・エリザベスは十四歳、従姉妹のレディ・ジェーン・グレイは私と同じ年で、美しく心優しい。だが姉のレディ・メアリーときたら、陰気な顔つきで――ところで、おまえの姉妹も、笑えば罪で魂が滅びるからと、召使いたちに笑うのを禁じているのか?」

「あの二人が? 旦那さま、姉たちに召使いがいるとお思いですか?」

幼い王子はしばらく、幼い乞食を真顔で見つめてから言った――

「では、なぜいない? 夜、服を脱ぐのを誰が手伝う? 朝起きたとき、誰が服を着せるのだ?」

「誰もおりません、旦那さま。服を脱いで、獣のように何も着ずに寝ろとおっしゃるのですか?」

「服だと! 一着しかないのか?」

「まあ、殿さま、何着もあってどうするのです? 二人とも体が二つあるわけではございません。」

「奇妙で驚くべき考えだ! 許せ、笑うつもりではなかった。だが善良なナンとベットには、近いうちに十分な衣服と従僕を与えよう。会計官に手配させる。いや、礼には及ばぬ。大したことではない。それにしても、おまえは言葉遣いがよい。自然な気品がある。学問をしたのか?」

「学問があるかどうかは、私には分かりません、旦那さま。アンドリュー神父という善良な司祭さまが、ご親切に本を使って教えてくださいました。」

「ラテン語は分かるか?」

「ほんの少しだけでございます、旦那さま。」

「学ぶがよい。難しいのは初めだけだ。ギリシャ語はもっと難しい。だが姉のレディ・エリザベスと従姉妹には、どちらも――いや、どんな言葉も難しくないらしい。あの娘たちが話すのを聞かせてやりたいものだ! ところで、オファル・コートのことを話してくれ。そこでの暮らしは楽しいか?」

「はい、まことに。お腹が空いているとき以外は楽しいです。パンチとジュディの人形芝居があり、猿もおります――それはもう、面白おかしな生き物で! 服もたいそう立派です! ――それにお芝居もあります。役者たちが叫んだり戦ったりして、最後には全員死んでしまいます。見るのはとても楽しく、たった一ファージングです――もっとも、その一ファージングを手に入れるのが、ひどく大変なのですが、殿さま。」

「もっと話せ。」

「オファル・コートの少年たちは、時々、徒弟たちの真似をして棍棒で戦います。」

王子の目が輝いた。そして言った――

「それは面白そうだ。もっと話せ。」

「駆けっこをして、誰がいちばん速いか競います、旦那さま。」

「それも面白そうだ。続けよ。」

「夏には、運河や川へ入って泳ぎます。互いに水へ沈めたり、水をかけたり、潜ったり、叫んだり、転げ回ったりして――」

「一度それを楽しめるなら、父上の王国にも値する! 頼む、続きを話してくれ。」

「チープサイドの五月柱の周りで踊ったり、歌ったりします。砂場で遊び、互いに砂をかけて埋めたりもします。それから時々、泥でお菓子を作ります――ああ、あの素敵な泥! あれほど楽しいものは、この世のどこにもございません! ――泥のなかを思う存分転げ回ります、旦那さま。御前でこんなお話をして申し訳ございません。」

「ああ、もうよい、素晴らしい! もしおまえのような服をまとい、裸足になり、誰にも叱られず、止められずに、たった一度でも泥のなかで遊べるなら、王冠など手放してもよいと思う!」

「そして私も、優しい旦那さまのような服を、一度だけでも着ることができましたら――」

「おお、着てみたいか? ならば、そうしよう。襤褸を脱ぎ、この立派な服を着よ! 束の間の喜びではあるが、だからといって楽しさが減るわけではない。邪魔が入らぬうちに楽しみ、誰か来る前にまた着替えればよい。」

数分後、小さなウェールズ公は、トムの寄せ集めの襤褸をひらひらとまとい、小さな貧民国の王子は、王族の華美な羽毛で身を飾っていた。二人は大きな鏡の前へ行き、並んで立った。すると、何という奇跡だろう――何一つ変わっていないように見えた! 二人は互いを見つめ、鏡を見つめ、また互いを見つめた。やがて当惑した王子が言った――

「これはどういうことだと思う?」

「ああ、殿さま、どうか私に答えさせないでください。私のような身分の者が、口にしてよいことではございません。」

「では、が言おう。おまえは私と同じ髪、同じ目、同じ声と話し方、同じ体つきと背丈、同じ顔と表情をしている。二人とも裸で外へ出たなら、どちらがおまえで、どちらがウェールズ公か、誰にも見分けられまい。そして今、おまえが着ていた服を私が着てみると、あの野蛮な兵士に――そうだ、おまえの手にあるのは痣ではないか?」

「はい。でもほんのかすり傷ですし、殿さまもご存じのとおり、あの哀れな兵士は――」

「黙れ! 恥ずべき、残酷な行いだ!」幼い王子は裸足を踏み鳴らして叫んだ。「もし父王が――私が戻るまで一歩も動くな! これは命令だ!」

王子はたちまち、机の上にあった国家的に重要な品をつかんでしまい込むと、部屋を飛び出し、旗のように襤褸をはためかせ、顔を熱くし、目を燃え立たせながら王宮の庭を駆け抜けた。大門へ着くや格子をつかみ、揺さぶろうとしながら叫んだ――

「開けよ! 閂を外せ!」

トムを虐待した兵士はただちに従った。王子が王者の怒りに息を詰まらせながら門から飛び出すと、兵士はその耳に景気のよい平手打ちを食らわせ、街道まで吹き飛ばして言った――

「これでも食らえ、乞食の餓鬼め。殿下に俺を叱らせた礼だ!」

群衆はどっと笑った。王子は泥のなかから起き上がると、激しく衛兵へ詰め寄り、叫んだ――

「私はウェールズ公だ。この身は神聖であるぞ。私に手をかけた罪で、貴様は絞首刑だ!」

兵士は斧槍を捧げて敬礼し、嘲るように言った――

「ご機嫌麗しゅう、殿下。」

それから怒鳴った――「失せろ、この気違いの屑め!」

嘲り笑う群衆が哀れな小王子を取り囲み、街道の彼方まで押し流していった。口々に囃し、叫びながら――

「王太子殿下のお通りだ! ウェールズ公殿下に道を開けろ!」


第四章 王子の苦難が始まる

何時間もしつこく追い回され、いたぶられた末、幼い王子はようやく野次馬たちに飽きられ、一人きりになった。群衆へ怒りをぶつけ、王者らしく脅し、笑いの種にしかならない命令を王者らしく下しているうちは、実に面白い見世物だった。だが疲れ果てて黙り込むと、もはやいじめる価値もなくなり、群衆はほかの楽しみを探しに去った。王子は辺りを見回したが、どこなのか分からなかった。ロンドン市内にいる――分かるのはそれだけだった。あてもなく歩き続けると、ほどなく家々はまばらになり、行き交う人も少なくなった。現在ファリンドン通りのある場所を当時流れていた小川で、血のにじむ足を洗い、しばらく休んでから、再び歩き出した。やがて、家が数軒しかない広大な空き地と、とてつもなく大きな教会に行き当たった。王子はその教会を知っていた。至る所に足場が組まれ、大勢の職人が群がっている。大がかりな修復工事の最中だったのである。王子はたちまち元気を取り戻した――これで苦難も終わりだと思った。心のなかで言った。「これは古いグレイ・フライヤーズ教会だ。父王が修道士たちから取り上げ、貧しく見捨てられた子供たちの永遠の住まいとして与え、クライスト・チャーチと改名された。これほど寛大なことをしてくれた王の息子なら、喜んで仕えてくれるだろう――まして今や、その息子自身が、今日ここに保護されているどの子供にも、これから保護されるどの子供にも劣らぬほど、貧しく孤独なのだから。」

やがて王子は、走ったり、跳んだり、球遊びや馬跳びをしたり、そのほかさまざまな遊びに大声ではしゃぐ少年たちの真っただ中にいた。全員が同じ服を着ていた。それは当時の召使いや徒弟が着ていた流行の服である。すなわち、頭頂には受け皿ほどの平たい黒帽子を載せている。あまりに小さいため頭を覆う役には立たず、装飾として美しいわけでもない。その下から分け目のない髪が額の中央まで垂れ、ぐるりと一直線に切りそろえられている。首には聖職者風の白い帯。体にぴったり合い、膝かそれより下まで垂れる青い上着。ゆったりした袖。幅広の赤い帯。膝の上を紐で留めた鮮やかな黄色い長靴下。大きな金属の留め金がついた浅靴。十分に醜い服装だった。

少年たちは遊びをやめて王子の周りへ集まった。王子は生まれつきの威厳をもって言った――

「よい子らよ、そなたたちの主人に、ウェールズ公エドワードがお目通りを望んでいると伝えよ。」

これを聞いて大爆笑が起こり、無作法な少年の一人が言った――

「おい乞食、おまえは殿下の使者なのか?」

王子の顔が怒りで赤く染まり、手がさっと腰へ伸びたが、そこには何もなかった。爆笑が巻き起こり、一人の少年が言った――

「今のを見たか? 剣を持ってるつもりだったぞ――きっとご本人さまだ!」

この冗談でさらに笑いが起こった。哀れなエドワードは誇らしげに胸を張り、言った――

「私は王子である。父王の慈悲で養われているそなたらが、このような無礼を働くとは、まことに恥ずべきことだ。」

笑い声が証明するように、皆はこの言葉を大いに面白がった。最初に口を開いた少年は、仲間たちへ叫んだ――

「おい、豚ども、奴隷ども、ありがたい王子さまの父上に養われている居候ども、礼儀はどうした? 全員その膝を地面につけて、陛下のようなご威容と王家の襤褸に敬意を表せ!」

少年たちはどっと膝をつき、大騒ぎしながら獲物へ偽りの礼を捧げた。王子は最も近くにいた少年を蹴飛ばし、激しく言った――

「今日はそれで我慢せよ。明日になれば、そなたのために絞首台を建ててやる!」

だが、これは冗談では済まなかった――悪ふざけの一線を越えていた。笑いはたちまち消え、怒りが取って代わった。十数人が叫んだ――

「こいつを引っ張り出せ! 馬洗い池へ放り込め! 犬はどこだ? おい、ライオン! ファングズ!」

そしてイングランドがかつて見たこともない出来事が起きた。王位継承者の神聖な体が平民の手で乱暴に打たれ、犬に襲われて引き裂かれたのである。

その日の夜も暮れかけたころ、王子は市内でも家々が密集する一帯の奥深くにいた。全身は痣だらけ、両手からは血が流れ、襤褸は泥まみれだった。歩けども歩けども、ますます道が分からなくなり、疲労と衰弱のあまり、一歩ずつ足を引きずるのも難しくなった。道を尋ねても教えてもらえず、侮辱されるだけだったので、もはや誰にも質問しなかった。ぶつぶつと独り言を繰り返した。「オファル・コート――そういう名だった。力が尽きて倒れる前に、そこさえ見つけられれば助かる。あの少年の家族が私を王宮へ連れていき、私が家族ではなく本物の王子であることを証明してくれる。そうすれば、自分のものを取り戻せる。」

時折、無作法なクライスト・ホスピタルの少年たちから受けた仕打ちを思い返しては言った。「私が王になったなら、あの者たちには食べ物と住まいだけでなく、本による教育も与えよう。心と魂が飢えているなら、腹だけ満たしてもほとんど意味はない。この教訓を無駄にせず、民を苦しませぬよう、今日のことは心にしっかり刻んでおこう。学問は心を和らげ、優しさと慈愛を育むものだから。」

灯が瞬き始め、雨が降りだした。風も強まり、身を切る突風の吹く夜となった。家を失った王子、イングランド王位の宿なしの継承者は、なおも歩き続けた。貧困と悲惨が群がる巣窟、薄汚い路地の迷宮へ、さらに深く迷い込んでいった。

突然、酔った大男が王子の襟首をつかんで言った――

「またこんな夜更けまで出歩いて、どうせ一ファージングも持って帰らなかったんだろう! もしそうなら、その痩せっぽちの体の骨を一本残らずへし折ってやる。それをしなきゃ、俺はジョン・キャンティじゃなくて別人だ!」

王子は身をよじって逃れ、汚された肩を無意識に払いながら、勢い込んで言った――

「おお、そなたが本当にあの少年の父親なのか? どうかそうであってくれ――ならば、あの少年を連れ戻し、私を元に戻してくれ!」

あの少年の父親だと? 何を言ってやがるか知らねえが、俺がおまえの父親だってことだけは分かる。そいつはじきに嫌というほど――」

「おお、冗談を言うな、言い逃れをするな、ぐずぐずするな! ――私は疲れ果て、傷つき、もう耐えられぬ。父王のもとへ連れていけ。そうすれば、そなたの想像も及ばぬほどの金持ちにしてくださる。信じてくれ、頼むから信じてくれ! ――私は嘘などついていない、真実だけを話している! ――手を差し伸べて、私を救え! 私は本当にウェールズ公なのだ!」

男は呆然として少年を見下ろし、それから首を振ってつぶやいた――

「ベドラムの気違いみてえに、すっかり狂っちまいやがった!」――そして再び襟首をつかむと、下品な笑い声とともに悪態をついた。「だが正気だろうが気違いだろうが、おまえの骨のどこが柔らけえか、俺とキャンティばあさんですぐに確かめてやる。でなきゃ俺は男じゃねえ!」

そう言うと、狂ったように暴れる王子を引きずっていった。喜んで騒ぎ立てる人間の害虫どもの群れを後ろに従え、表通りに面した中庭の奥へ姿を消した。


第五章 貴族となったトム

王子の私室に一人残されたトム・キャンティは、この機会を存分に活用した。大きな鏡の前であちらを向き、こちらを向き、華麗な服を眺めてうっとりした。それから歩き回り、王子の気品ある身のこなしを真似ながら、その出来栄えを鏡で確かめ続けた。次に美しい剣を抜き、刃に口づけして胸の前へ横たえ、頭を下げた。五、六週間前、ノーフォークとサリーの大貴族を囚人としてロンドン塔長官へ引き渡した際、ある高貴な騎士が挨拶としてそうするのを見たのである。トムは腿から下がった宝石飾りの短剣を弄び、部屋にある高価で精巧な装飾品を調べ、豪華な椅子を一つ一つ試した。オファル・コートの連中がここをのぞき込み、この栄華に包まれた自分を見たなら、どれほど誇らしい気分だろうと思った。家へ戻ってこの驚くべき話をしたとき、皆は信じてくれるだろうか。それとも首を振り、空想を働かせすぎてとうとう正気を失ったと言うだろうか。

三十分ほどたったころ、王子の戻りがあまりにも遅いことに突然気づいた。するとたちまち心細くなり、ほどなく物音に耳を澄ませ、王子の帰りを待ち望み、周囲の美しい品々を弄ぶのをやめた。不安になり、落ち着きを失い、ついには苦悩し始めた。もし誰かが入ってきて、王子の服を着た自分を見つけ、しかも事情を説明してくれる王子がいなかったら? まず絞首刑にしてから、あとで事情を調べるのではないか? 偉い人々は些細なことほど始末が早いと聞いていた。恐怖はますます募った。震えながら控えの間へ通じる扉をそっと開け、逃げ出して王子を捜し、保護してもらい、ここから解放してもらおうと決意した。すると華麗な装いの紳士の従者が六人と、蝶のように着飾った身分の高い小姓が二人、さっと立ち上がり、深々と頭を下げた。トムは急いで後ずさりし、扉を閉めた。そして言った――

「ああ、僕をからかっているんだ! きっと行って、皆に知らせるぞ。ああ! どうして命を捨てるために、こんな所へ来てしまったんだ?」

名状しがたい恐怖に満たされ、床を行ったり来たりしながら耳を澄まし、どんな小さな物音にも飛び上がった。ほどなく扉が開き、絹をまとった小姓が告げた――

「レディ・ジェーン・グレイさま。」

扉が閉まり、豪華な衣装をまとった愛らしい少女が、弾むように近づいてきた。だが不意に足を止め、苦しげな声で言った――

「ああ、殿下、どうなさったのです?」

トムは息も止まりそうだったが、どうにか口を動かし、つかえながら言った――

「ああ、どうかお慈悲を! 本当は殿下などではありません。市内のオファル・コートに住む、貧しいトム・キャンティです。どうか王子さまに会わせてください。王子さまなら、お情けで僕に襤褸を返し、傷つけずにここから出してくださいます。ああ、どうかお慈悲を、僕を助けてください!」

このときにはもう、トムは膝をつき、言葉だけでなく、目と差し上げた両手でも哀願していた。少女は恐怖に打たれたように叫んだ――

「ああ、殿下が跪いて? ――しかも、このに!」

そして怯えて逃げ去った。絶望に打ちのめされたトムは、その場に崩れ落ち、つぶやいた――

「助かる道はない。もう望みもない。今に皆が来て、僕を連れていくんだ。」

トムが恐怖に麻痺して横たわっているあいだにも、恐ろしい知らせが王宮中を駆け巡っていた。その囁きは――常に囁き声で伝えられた――下僕から下僕へ、貴族から貴婦人へ、長い廊下を走り抜け、階から階へ、広間から広間へと飛んでいった。「王子がご乱心だ。王子がご乱心だ!」

ほどなく、どの広間にも、どの大理石の大広間にも、きらびやかな貴族の男女や、それより身分は低いが目も眩むような人々の一団ができ、互いに真剣な顔で囁き合っていた。どの顔にも狼狽が浮かんでいた。やがて豪華な装いの役人が一団の前を進み、厳かに布告した――

「国王陛下の御名において! 

この虚偽にして愚かなる風聞に耳を貸す者、これを論ずる者、あるいは外部へ広める者は、死罪に処す。国王陛下の御名において!」

囁いていた者たちは、突然口が利けなくなったかのように、一斉に黙った。

ほどなく廊下のあちこちから、ざわめきが起こった。「王子だ! 見よ、王子がおいでになる!」

哀れなトムは、深々と頭を下げる人々の列のあいだをゆっくり歩いていった。自分も頭を下げ返そうとしながら、当惑と哀れさをたたえた目で、見慣れぬ周囲をおとなしく眺めていた。左右には身分ある貴族が付き添い、トムに腕を預けさせ、足取りを支えた。後ろには宮廷医たちと数人の召使いが続いた。

やがてトムは王宮内の立派な部屋に入り、背後で扉が閉まる音を聞いた。周囲には、一緒に来た人々が立っていた。少し離れた正面には、非常に大柄で太った男が横たわっていた。幅広く肉のたるんだ顔に、厳しい表情を浮かべている。大きな頭はすっかり灰色で、顔の周囲だけを額縁のように取り巻く頬髭も灰色だった。上等な服を着ていたが、古びており、ところどころ少し擦り切れていた。腫れ上がった片脚の下には枕が置かれ、包帯が巻かれている。辺りは静まり返っていた。その男を除き、その場にあるすべての頭が敬意をもって垂れていた。この厳しい顔をした病人こそ、恐るべきヘンリー八世だった。男は言った――話し始めるにつれ、その顔は優しくなった。

「どうしたのだ、エドワード卿、わが王子よ? そなたを愛し、優しく遇してきた善良な父王を、つまらぬ冗談で欺こうと思ったのか?」

哀れなトムは、麻痺した頭でどうにか話の初めを聞いていた。だが「善良な王であるこの私」という言葉が耳に入った途端、顔から血の気が引き、鉄砲で撃たれたかのようにその場へ跪いた。両手を差し上げ、叫んだ――

「あなたが国王陛下? それでは僕は、もうおしまいです!」

この言葉には、王も呆然としたようだった。視線はあてもなく人々の顔から顔へ移り、やがて困惑しきって、目の前の少年に止まった。それから深い失望をにじませて言った――

「ああ、噂は真実を大げさにしたものと信じていた。だが、そうではないらしい。」

重い溜息をつき、優しい声で言った。「父のもとへ来なさい、わが子よ。具合がよくないのだな。」

トムは助け起こされ、恐れおののきながらイングランド国王へ近づいた。王は怯えた顔を両手で包み込み、正気が戻った喜ばしい兆しを探すかのように、しばらく真剣に、愛情深く見つめた。それから巻き毛の頭を胸へ抱き寄せ、優しく撫でた。やがて言った――

「父が分からぬのか、わが子よ? この老いた胸を張り裂けさせないでくれ。私が分かると言ってくれ。私が分かるのだろう?」

「はい。あなたさまは、畏れ多き国王陛下です。神のご加護がありますように!」

「そうだ、そうだ。それでよい。安心せよ、そんなに震えるでない。ここには、そなたを傷つける者などいない。皆、そなたを愛している。もうよくなってきた。悪い夢も覚めつつある――そうであろう? 先ほどしたと聞いたように、また自分を別人だなどと言いはしないな?」

「どうかお慈悲をもって信じてください、畏れ多き陛下。僕はただ真実を話しただけなのです。僕は陛下の臣民のなかで最も卑しい、貧乏人の生まれです。ひどい不運と偶然のため、ここへ来てしまいましたが、僕には何の落ち度もございません。僕はまだ若く、死ぬには早すぎます。陛下のほんの一言で、僕を救えます。ああ、どうかその一言を!」

「死ぬだと? そのようなことを言うでない、愛しい王子よ――静まれ、静まれ、悩める心よ――そなたは死なぬ!」

トムは喜びの叫びとともに跪いた――

「国王陛下、どうか神さまがそのお慈悲に報い、末永く御国をお守りくださいますように!」

そして飛び上がると、待機していた二人の貴族へ喜びに満ちた顔を向け、叫んだ。「お聞きになりましたね! 僕は死なずに済むのです。国王陛下がそうおっしゃいました!」

全員が厳粛な敬意をもって頭を下げたほかには、動きはなかった。誰も口を開かなかった。トムは少し戸惑ってためらい、それから王へおずおずと顔を向けて言った。「では、もう行ってよろしいでしょうか?」

「行く? もちろん、そなたが望むなら。だが、なぜもう少しいないのだ? どこへ行こうという?」

トムは目を伏せ、慎ましく答えた――

「もしかすると、僕の勘違いかもしれません。でも自由になったのだと思い、それなら生まれ育った貧しいあばら家へ帰りたいと思いました。惨めな場所ではありますが、母と姉妹がおりますので、僕にとっては家なのです。こうした華美や栄華には慣れておりません――ああ、どうか陛下、行かせてください!」

王はしばらく黙って考え込んだ。その顔には、苦悩と不安が次第に濃くなっていった。やがて、いくらか希望をにじませて言った――

「もしや一事についてのみ狂い、ほかのことについては正気を保っているのかもしれぬ。神よ、どうかそうであってくれ! 試してみよう。」

それから王はラテン語でトムに質問した。トムは同じ言葉で、たどたどしく答えた。貴族たちも医師たちも満足の意を示した。王は言った――

「これまで受けた教育と能力にふさわしい答えではなかった。だが心を病んでいるだけで、完全に損なわれたわけではないことを示しておる。どう思う、先生?」

呼びかけられた医師は深く頭を下げ、答えた――

「陛下のご推察は正しく、私の見立てとも完全に一致いたします。」

これほど優れた専門家から励ましを得て、王は満足そうな顔をし、元気を取り戻して続けた――

「皆、よく見ておれ。さらに試してみよう。」

王はフランス語でトムに質問した。大勢の視線が自分に集まっていることに気後れし、トムはしばらく黙っていた。それから自信なさそうに言った――

「陛下、僕はその言葉を存じません。」

王は長椅子の上へ崩れ落ちた。従者たちが助けようと駆け寄ったが、王は彼らを退けて言った――

「構うな――ただの不快な目眩だ。体を起こせ! そこだ、もうよい。こちらへ来い、わが子よ。さあ、その哀れな悩める頭を父の胸に預け、心を安らかにせよ。じきによくなる。一時の迷いにすぎぬ。恐れるでない。すぐによくなる。」

それから一同へ顔を向けた。優しい物腰は一変し、目には不吉な稲妻が走り始めた。王は言った――

「皆、よく聞け! わが息子は正気を失っている。だが、永続するものではない。勉学のしすぎと、閉じ込めすぎたことが原因だ。書物も教師も遠ざけよ! 必ずそうせよ。遊びで楽しませ、健全な方法で心を紛らわせ、健康を取り戻させるのだ。」

王はさらに身を起こし、力強く続けた。「正気を失ってはいる。だが私の息子であり、イングランドの継承者である。狂っていようと正気であろうと、いずれ王位に就く! さらに聞け、これを布告せよ。この病について語る者は、この諸王国の平和と秩序を乱す者であり、絞首台へ送られる! ……飲み物をくれ――体が燃える。この悲しみが力を奪う……もうよい、杯を下げよ……体を支えよ。そうだ、それでよい。狂っているだと? 千倍狂っていようとも、ウェールズ公であることに変わりはない。この国王たる私が、それを確定する。明日にも、正当かつ古式にのっとった儀式をもって、正式に王子の位へ就ける。ただちに手配せよ、ハートフォード卿。」

貴族の一人が王の長椅子の前へ跪き、言った――

「国王陛下もご存じのとおり、イングランドの世襲大元帥は反逆罪に問われ、ロンドン塔へ収監されております。反逆者が――」

「黙れ! あの憎むべき名で、私の耳を汚すな。あの男は永遠に生き続けるつもりか? 私は望みを妨げられねばならぬのか? 王子に栄誉を授ける、反逆の汚名なき軍務伯が王国にいないというだけで、王子は正式な叙任を受けられず、待たねばならぬのか? 断じてならぬ、神の栄光にかけて! 日が再び昇る前に、ノーフォークへの判決を私のもとへ持参するよう国会へ命じよ。さもなくば、奴らは重い責任を負うことになる!」

ハートフォード卿は言った――

「陛下のご意思こそ法でございます」そして立ち上がり、元の場所へ戻った。

老王の顔から怒りが徐々に消え、王は言った――

「口づけしてくれ、わが王子よ。さあ……何を恐れている? 私はそなたを愛する父ではないか?」

「畏れ多く慈悲深い陛下は、このように値打ちのない僕にまでお優しくしてくださいます。それだけは確かに分かります。でも――でも――死ぬことになる方のことを考えると、悲しくて――」

「ああ、いかにもそなたらしい、そなたらしいぞ! 心は少しも変わっておらぬ。頭が傷ついても、そなたの心根は昔のままだ。そなたはいつでも優しい子であった。だがこの公爵は、そなたと栄誉のあいだに立ちふさがっている。代わりに別の者を据えよう。その者なら、大元帥の職に汚名を持ち込むこともない。安心せよ、わが王子。このことで、その哀れな頭を悩ませてはならぬ。」

「ですが陛下、あの方を死へ追いやるのは、僕ではないのですか? 僕がいなければ、あとどれほど長く生きられたでしょう?」

「あの男のことなど考えるな、わが王子。気にかける値打ちもない。もう一度口づけをして、玩具や遊びのもとへ戻りなさい。病が私を苦しめている。疲れたので休みたい。叔父のハートフォードや供の者たちと行き、体が回復したらまた来るがよい。」

心を重くしたトムは御前から退出させられた。最後の言葉は、今度こそ自由になれると抱いていた希望に致命的な一撃を与えたからだ。再び低い声のざわめきが聞こえた。「王子だ、王子がおいでになる!」

頭を下げる廷臣たちのきらびやかな列のあいだを歩くにつれ、気持ちはますます沈んでいった。今や本当に囚われの身であり、神が慈悲をもって憐れみ、自由にしてくださらないかぎり、孤独で味方もない王子として、永遠にこの金色の鳥籠へ閉じ込められるかもしれないと悟ったからである。

どちらを向いても、空中にはノーフォーク公爵の切り落とされた首と、記憶にあるその顔が漂い、両目が恨めしげに自分を見つめているように思えた。

昔の夢はあれほど楽しかった。だが、この現実はなんと陰鬱なのだろう! 


第六章 トム、心得を授けられる

トムは高貴な一続きの部屋のうち、中心となる広間へ案内され、座らされた。周囲に年長者や身分の高い人々がいたので、座ることには気が進まなかった。皆にも座るよう頼んだが、人々は礼を述べて頭を下げるか、低く言葉をつぶやくだけで、立ったままでいた。トムはなおも強く勧めようとしたが、「叔父」にあたるハートフォード伯爵が耳元で囁いた――

「どうか、お強いになりませぬよう、殿下。この者たちが殿下の御前で座るのは、礼にかないません。」

セント・ジョン卿の来訪が告げられた。トムへ拝礼したのち、セント・ジョン卿は言った――

「国王陛下のご用命により、人払いを要する件について参上いたしました。ハートフォード伯爵閣下を除き、こちらにお控えの皆をお下がりになるよう、殿下よりお命じいただけますでしょうか?」

トムがどうすればよいか分からない様子なのを見て、ハートフォード卿は、手で合図するだけでよく、お望みでなければ言葉を発する必要はないと囁いた。控えていた紳士たちが退出すると、セント・ジョン卿は言った――

「国王陛下より、重大かつ正当な国事上の理由により、ご病気が去り、以前のご様子に戻られるまで、殿下は力の及ぶかぎり、そのご不調を隠すようにとのご命令でございます。すなわち、ご自身が真の王子にして、イングランドの偉大なる王位の継承者であることを、何人に対しても否定なさらぬこと。王子たる尊厳をお守りになり、古来の慣習と正当な権利によってそれに伴う敬意と礼節を、言葉にも仕草にも異議を示さずお受けになること。過労による不健全な空想から、ご病気が生み出した卑しい生まれや暮らしについては、何人にもお話しにならぬこと。かつてご存じであった方々のお顔を、懸命に思い出すようお努めになること。思い出せない場合には沈黙を保ち、驚いた表情その他の仕草によって、お忘れであると悟られぬこと。国事の場において、何をなすべきか、何と申すべきかお迷いになった折には、見守る者たちに動揺をお見せにならず、ハートフォード卿、またはこの卑しき私へご相談になること。我ら両名は、このご命令が解かれるまで、いつでもお呼びに応じられるよう、殿下のおそばに侍ることを国王陛下より命じられております。以上が国王陛下のお言葉でございます。陛下は殿下へご挨拶をお送りになり、神がそのお慈悲によって速やかに殿下を癒やし、今も、そして永遠に、その聖なる御手でお守りくださるよう祈っておられます。」

セント・ジョン卿は拝礼し、脇へ退いた。トムは諦めたように答えた――

「国王陛下がそうお命じになった。王命に言い逃れをしたり、都合の悪いところを巧みな方便で避け、自分に都合よく曲げたりすることは、誰にも許されぬ。王には従わねばならない。」

ハートフォード卿が言った――

「書物その他の難しい事柄について、国王陛下がお定めになったことに鑑みれば、ご宴席へお疲れのまま臨んでお体を損なうことがないよう、殿下には軽い余興でお時間をお過ごしいただくのがよろしいかと存じます。」

トムの顔に、何のことかと訝しむ驚きが浮かんだ。そしてセント・ジョン卿が悲しげに自分を見ていることに気づき、顔を赤らめた。セント・ジョン卿は言った――

「まだ記憶が殿下をお苦しめになり、驚きを表へお出しになりました。ですがお気になさらぬよう。長く続くことではなく、ご病気の回復とともに去るものです。ハートフォード卿が申したのは、二か月ほど前に国王陛下がお約束になった、今宵殿下がご臨席になるロンドン市の宴のことでございます。今は思い出されましたか?」

「まことに残念だが、忘れていたことを認めねばならぬ」トムはためらいがちな声で言い、再び顔を赤らめた。

そのとき、レディ・エリザベスとレディ・ジェーン・グレイの来訪が告げられた。二人の貴族は意味ありげな視線を交わし、ハートフォード卿は急いで扉へ向かった。少女たちがそばを通る際、低い声で言った――

「お二方、どうか殿下のご様子にお気づきでないよう振る舞い、記憶が途切れても驚きをお見せになりませぬよう。どれほど些細なことにも記憶がつかえてしまわれるのを見れば、さぞ胸を痛められることでしょう。」

その間、セント・ジョン卿はトムの耳元で言っていた――

「殿下、国王陛下のご希望を、どうかしっかりお心に留め置かれますよう。思い出せることはすべて思い出し、それ以外も思い出したようにお見せください。以前とは大きく変わられたと、お二人に気づかせてはなりません。昔からの遊び友達が、どれほど殿下を心から慕い、このことを知ればどれほど悲しまれるか、殿下もご存じでしょう。私と叔父君も、ここに残りましょうか?」

トムは身振りと低い返事で同意を示した。すでに学び始めており、その素朴な心で、王命に従い、できるかぎり立派に役目を果たそうと決意していたのである。

どれほど用心しても、少年少女たちの会話は時折、気まずいものになった。実際、トムは何度もくじけそうになり、この途方もない役目は自分には務まらないと告白しかけた。しかしエリザベス王女の機転に救われ、あるいは警戒を怠らぬ二人の貴族のどちらかが、偶然を装って挟んだ一言が、同じように事態を救った。一度など、幼いレディ・ジェーンがトムへ向き直り、こんな質問をして狼狽させた――

「殿下、今日は女王陛下へのご挨拶をお済ませになりましたか?」

トムはためらい、困った顔をして、当てずっぽうに何か口ごもりかけた。するとセント・ジョン卿が代わって口を開き、厄介な事態に慣れ、いつでも対処できる廷臣らしい、さりげない優雅さで答えた――

「はい、妃殿下。王子殿下はすでにご挨拶をお済ませになり、女王陛下から国王陛下のご容体について、たいそう心強いお言葉をいただきました。さようでございましたね、殿下?」

トムは同意を示す言葉をもごもごとつぶやいたが、危険な場所へ踏み込んだと感じていた。少したって、トムは当分勉強をしないことになったという話が出ると、幼いレディ・ジェーンが叫んだ――

「まあ、残念です、本当に残念! あれほどよく励んでおいででしたのに。でも辛抱して時をお待ちください。長くはかかりません。いずれ父君のような学識を身につけ、父君と同じほど多くの言葉を自在に操られるようになります、王子さま。」

「僕の父親が!」一瞬、警戒を忘れたトムは叫んだ。「豚小屋に住む豚どもでもなければ意味の分からぬような話し方しかできないはずです。まして、どんな学問であろうと――」

顔を上げると、セント・ジョン卿の目に厳粛な警告が浮かんでいた。

トムは言葉を切り、顔を赤らめ、それから低く悲しげに続けた。「ああ、また病に苦しめられ、心がさまよってしまった。国王陛下に無礼を申すつもりはなかった。」

「分かっております、殿下」エリザベス王女は「弟」の手を両の手のひらで包み、敬意を保ちつつ愛情深く言った。「そのことはお気になさらぬよう。殿下に落ち度はなく、ご病気のせいなのですから。」

「優しく慰めてくれるのだな」トムは感謝を込めて言った。「差し出がましくなければ、心より礼を申したい。」

一度、快活な幼いレディ・ジェーンが、簡単なギリシャ語の句をトムへ投げかけた。エリザベス王女の鋭い目は、標的の顔に浮かぶ穏やかな空白から、その矢が頭上を飛び越えたことを察した。そこでトムに代わって流麗なギリシャ語の斉射を落ち着いて返し、すぐに話題を変えた。

全体として、時は楽しく、順調に過ぎていった。暗礁や砂州は次第に減り、皆がこれほど愛情深く助け、失敗を見逃そうとしていると分かるにつれ、トムもだんだん気楽になった。夜のロンドン市長主催の宴へ二人の少女も同行すると知ったとき、トムの胸は安堵と喜びに跳ね上がった。大勢の見知らぬ人々のなかでも、これで味方がいなくなることはないと感じたのである。だが一時間前であれば、二人が同行するという考えだけで、耐え難い恐怖に襲われていただろう。

トムの守護天使である二人の貴族は、ほかの者たちほどこの面会を楽しめなかった。危険な水路で大船を操っているような心地だった。常に警戒を怠れず、その役目は決して子供の遊びではなかった。そのため少女たちの訪問がようやく終わろうとしたとき、ギルフォード・ダドリー卿の来訪が告げられると、二人は、保護すべき王子は当面十分に疲れたばかりか、自分たちも船を戻し、同じ心配な航海を一からやり直すには最良の状態ではないと感じた。そこでトムに、面会を辞退するよう恭しく助言した。立派な若者が入室を断られたと聞いたとき、レディ・ジェーンの顔にはわずかな失望の影が浮かんだかもしれないが、トムは喜んで助言に従った。

ここで小休止となり、トムには意味の分からない、何かを待つような沈黙が訪れた。ハートフォード卿を見ると、何やら合図を送ってきたが、それも理解できなかった。機転の利くエリザベスが、いつもの自然な優雅さで救いの手を差し伸べた。拝礼して言った――

「王子殿下である弟君より、退出のお許しをいただけますか?」

トムは言った――

「お二方が私に望まれるものなら、求めさえすれば何でも差し上げよう。だが、その存在がもたらす光と祝福をここから持ち去る許しよりは、この貧しい私の力で差し上げられる別の何かを選んでいただきたいものだ。では、ご機嫌よう。神がお二方とともにあらんことを!」

そして心のなかで微笑んだ。「読書のなかとはいえ、長いあいだ王侯たちに囲まれて暮らし、飾り立てた優雅な言葉遣いを少しばかり舌に覚え込ませたのも、無駄ではなかったぞ!」

高貴な少女たちが去ると、トムは疲れ切って二人の守役へ向き直り、言った――

「お二方、どこか隅へ行って休むことをお許しいただけますか?」

ハートフォード卿は言った――

「殿下のお望みであれば、ご命令になるのは殿下、従うのは我らでございます。まもなく市内へお出かけにならねばなりませんから、お休みになることはまことに必要です。」

呼び鈴に触れると小姓が現れ、サー・ウィリアム・ハーバートを呼ぶよう命じられた。サー・ウィリアムはすぐにやって来て、トムを奥の部屋へ案内した。トムはまず水の入った杯へ手を伸ばした。だが絹とビロードをまとった召使いがそれを取り上げ、片膝をつき、金の盆に載せて差し出した。

次に疲れた囚人は腰を下ろし、目でおずおずと許可を求めながら半長靴を脱ごうとした。だが別の絹とビロードをまとった厄介者が跪き、その役目を奪った。その後も二、三度、自分のことを自分でしようとしたが、そのたびに素早く先回りされた。ついに諦め、溜息をつきながら小声でつぶやいた。「まったく、僕の代わりに息をするとまで言い出さないのが不思議なくらいだ!」

室内履きを履かされ、豪華な長衣に包まれ、ようやく休むため横になった。しかし眠るためではなかった。頭のなかは考え事でいっぱいで、部屋のなかは人でいっぱいだったからだ。考えを追い出すことはできなかったので、それらは居座った。人々を退出させる方法も知らなかったので、彼らも居座った。トムにも彼らにも、実に残念なことだった。

トムが退出すると、二人の高貴な守役だけが残された。二人はしばらく、盛んに首を振り、部屋を歩き回りながら考え込んだ。やがてセント・ジョン卿が言った――

「率直に、どう思われる?」

「では率直に申そう。国王陛下は最期が近い。甥は正気を失った――狂人が王位に就き、そのまま狂人であり続ける。イングランドには神のご加護が必要となろう!」

「まことに、そうなりそうです。ですが……閣下は何の疑念も……つまり……」

セント・ジョン卿はためらい、ついに言葉を止めた。明らかに、危うい領域へ足を踏み入れたと感じたのである。ハートフォード卿はその前で足を止め、澄んだ率直な目で顔を見つめ、言った――

「続けよ。聞いているのは私だけだ。何について疑っている?」

「閣下は殿下と血縁の近いお方ですから、心にあることを言葉にするのは、まことに気が進みません。ですが無礼をお許しいただけるなら、狂気によって身のこなしや振る舞いが、これほど変わるのは奇妙ではありませんか? もちろん、今も立ち居振る舞いと言葉遣いは王子らしい。ですが取るに足らない点とはいえ、以前の習慣とは異なっております。狂気のために、父君のお顔そのものを記憶から失い、周囲の者から受けるべき慣習や礼節を忘れるというのも、奇妙ではありませんか? ラテン語は残しながら、ギリシャ語とフランス語だけを奪うというのも。閣下、どうかお気を悪くなさらず、私の不安を取り除き、感謝を受けてください。ご自分は王子ではないとおっしゃったことが、どうにも頭を離れず、それで――」

「黙れ、閣下。今のは反逆の言葉だ! 王命を忘れたか? ただ耳を傾けるだけで、私も罪の共犯となるのだぞ。」

セント・ジョン卿は青ざめ、急いで言った――

「過ちでした。認めます。どうか私を告発せず、ご厚情をもってお許しください。二度とこのことを考えも、口にもいたしません。厳しいお取り扱いはなさらぬよう。さもなくば私は破滅です。」

「承知した、閣下。ここでも、ほかの者の前でも、二度と同じ過ちを犯さぬなら、今の言葉はなかったものとしよう。だが疑う必要などない。あの方は私の姉の息子だ。揺り籠のころから、その声も、顔も、体つきも見慣れている。狂気は、そなたが目にした奇妙で矛盾した振る舞いのすべてを、いや、それ以上をも引き起こす。年老いたマーリー男爵のことを覚えていないか? 気が狂うと、六十年間見続けてきた自分の顔を忘れ、他人の顔だと思い込んだ。それどころか、自分はマグダラのマリアの息子で、頭はスペイン製のガラスでできていると言い張った。うっかりした手に砕かれることを恐れ、誰にも頭へ触れさせなかったものだ。疑念を鎮められよ、閣下。あの方はまさしく王子だ――私はよく知っている――そして間もなく、そなたの王となる。ほかのことより、その事実を心に留め、よく考えておくほうが、そなたのためになるだろう。」

その後もしばらく話し合いが続き、セント・ジョン卿は、今や信念はしっかり固まり、二度と疑念に揺らぐことはないと繰り返し断言して、できるかぎり失言を取り繕った。やがてハートフォード卿は同僚の守役を退出させ、一人で見張るため腰を下ろした。ほどなく深い思索へ沈んだが、考えれば考えるほど、悩みが深くなるようだった。やがて床を行き来し、独り言をつぶやき始めた。

「いや、あの方は王子でなければならぬ! 血筋も生まれも違う二人が、あれほど奇跡的にそっくりだなどと、この国の誰が主張できよう? 仮にそのような二人がいたとしても、偶然によって一方がもう一方の場所へ入れ替わるなど、さらに奇妙な奇跡ではないか。いや、愚かな、愚かな、愚かな話だ!」

やがて言った――

「もし偽者が自らを王子と称するなら、なるほどそれは自然だ。理にかなっている。だが国王から王子と呼ばれ、宮廷から王子と呼ばれ、皆から王子と呼ばれながら、なお自らの身分を否定し、位を高められることに異議を唱える偽者が、これまで存在しただろうか? ! 聖スウィジンの御魂にかけて、断じて否! あの方は本物の王子だ。ただ正気を失われたのだ!」


第七章 トム、初めて王族の昼食をとる

午後一時を少し回ったころ、トムは諦めた心境で、昼食のために着替えさせられる試練を受けた。先ほどと同じく華麗な装いになったが、襞襟から長靴下まで、何もかもが違う品に替わっていた。ほどなく、広々とした華麗な部屋へ、大仰な儀礼をもって案内された。そこにはすでに一人分の食卓が整えられていた。食器類はすべて重厚な金でできており、ほとんど値段もつけられないほど美しい意匠で飾られていた。ベンヴェヌート[訳注:ルネサンス期イタリアの金工・彫刻家ベンヴェヌート・チェッリーニ]の作品だったからである。部屋の半分は、高貴な召使いたちで埋まっていた。司祭が食前の祈りを捧げ、トムはさっそく食べ始めようとした。空腹は長年、トムの体質の一部だったからである。だがバークリー伯爵がトムの首へナプキンを結びつけたため、邪魔が入った。ウェールズ公付きナプキン係という重要な役職は、伯爵の家に代々受け継がれていたのである。献酌官も控えており、トムが自分で葡萄酒を取ろうとするたび、先回りした。ウェールズ公付き毒見役もおり、求められれば怪しい料理を味見し、毒に当たる危険を冒す用意を整えていた。この時代には単なる飾りの付属品であり、実際に役目を果たすよう求められることはめったになかった。しかしそれほど昔でもない数世代前には、毒見役は危険な職で、望んで就きたい栄誉ではなかった。なぜ犬や鉛管工を使わなかったのか不思議だが、王族のすることは何もかも不思議である。第一寝室係のダーシー卿も、いったい何をするためか神のみぞ知るが、とにかくそこにいた――それで十分としておこう。飲料部門を統括する役人もおり、トムの椅子の後ろに立って儀礼を監督していた。その上には、近くに立つ宮内長官と料理長がいた。このほかにトムには三百八十四人の召使いがいたが、もちろん全員がこの部屋にいたわけではなく、四分の一すらいなかった。またトムは、彼らが存在することさえまだ知らなかった。

その場にいる者たちは皆、この一時間のうちに十分な訓練を受け、王子が一時的に正気を失っていることを忘れず、その奇行に驚きを示さぬよう注意されていた。ほどなくその「奇行」が披露されたが、皆の心に生まれたのは同情と悲しみだけで、笑いではなかった。愛する王子がこのような病に侵されているのを見るのは、彼らにとって大きな苦しみだった。

哀れなトムは、主として指で食べた。だが誰も笑わず、気づいた様子すら見せなかった。ナプキンが非常に繊細で美しい布地だったため、珍しそうに、深い興味をもって調べ、それから素朴に言った――

「どうか下げてくれ。うっかり汚してしまうといけない。」

世襲ナプキン係は、恭しい態度でそれを下げ、一言も口にせず、いかなる異議も唱えなかった。

トムは興味深そうに蕪とレタスを調べ、これは何か、食べるものなのかと尋ねた。当時イングランドでは、こうした野菜をオランダから贅沢品として輸入する代わりに、自国で栽培し始めたばかりだったのである。質問には厳粛な敬意をもって答えられ、誰も驚きを示さなかった。食後の甘味を食べ終えると、トムは木の実をポケットに詰め込んだ。だが誰もそれに気づいた様子はなく、動揺もしなかった。しかし次の瞬間、動揺したのはトム自身だった。食事中、自分の手で行うことを許された唯一の行為であり、きっとひどく無作法で、王子らしくない真似をしたに違いないと思ったからである。そのとき、鼻の筋肉がひくひく動き始め、鼻先が持ち上がって皺を寄せた。それは止まらず、トムは次第に苦しそうな様子を見せ始めた。周囲の貴族を一人ずつ、訴えるように見つめ、目に涙を浮かべた。人々は狼狽した顔で駆け寄り、何があったのかと尋ねた。トムは心底苦しそうに言った――

「どうか許してほしい。鼻がひどく痒い。このような場合、しきたりではどうするのだ? 頼むから急いでくれ、もうほとんど耐えられない。」

誰も笑わなかった。だが皆ひどく困惑し、苦悩に満ちて互いの顔を見つめ、助言を求め合った。だが何ということだ、これは行き止まりの壁であり、乗り越え方を教えてくれる事例はイングランド史のどこにもなかった。式部官は不在だった。誰一人、この海図なき海へ乗り出し、この重大な問題の解決を試みる危険を冒そうとは思わなかった。ああ! 世襲鼻掻き係はいなかったのだ。その間にも涙は堤防を越え、トムの頬を流れ始めた。ひくつく鼻は、先ほどよりも切実に救いを求めていた。ついに自然の欲求が礼法の障壁を打ち破った。間違ったことをしているならお許しくださいと心のなかで祈り、トムは自ら鼻を掻いて、廷臣たちの重荷に耐えかねた心を救った。

食事が終わると、一人の貴族が、口と指を洗うための香り高い薔薇水を満たした、広く浅い金の皿を差し出した。世襲ナプキン係が、使わせるためのナプキンを手に控えていた。トムは困惑してしばらく皿を見つめた。それから唇へ運び、厳粛な顔で一口飲んだ。そして待っていた貴族へ返し、言った――

「いや、私の口には合わぬ。よい香りはするが、味に力が足りない。」

王子の病んだ心が見せたこの新たな奇行に、周囲の者は皆、胸を痛めた。しかしその悲しい光景を面白がる者は一人もいなかった。

次にトムが無意識に犯した過ちは、司祭が椅子の後ろに立ち、両手を上げ、閉じた目を天へ向けて食後の祈りを始めようとした、まさにそのとき、立ち上がって食卓を離れたことだった。それでも、王子が異常なことをしたと気づいた様子を見せる者はいなかった。

小さな友人は自ら望んで私室へ案内され、一人で好きに過ごすことを許された。樫の羽目板に設けられた鉤には、輝く鋼の甲冑一式が部品ごとに掛けられていた。全面に美しい意匠が施され、黄金が精巧にはめ込まれている。この武具一式は本物の王子のもので、王妃パー夫人から最近贈られた品だった。トムは脛当て、籠手、羽根飾りの兜など、手助けなしで身につけられる部品を装着した。しばらくは人を呼び、残りも着せてもらおうかと考えた。だが昼食から持ち出した木の実を思い出した。誰にも見張られず、望まぬ世話を押しつける大世襲係たちにも煩わされず、それを食べるのはどれほど楽しいだろう。そこで美しい武具をそれぞれ元の場所へ戻し、ほどなく木の実の殻を割り始めた。罪への罰として神に王子にされて以来、初めて自然な幸福に近いものを感じた。木の実をすべて食べ終えると、戸棚のなかに興味をそそる本が何冊かあるのを見つけた。そのなかに、イングランド宮廷の作法について書かれた本があった。これは宝物だった。トムは豪華な長椅子へ横になり、真摯な熱意をもって学び始めた。ひとまず、トムはそこに残しておこう。


第八章 国璽の問題

五時ごろ、ヘンリー八世は少しも疲れの取れない眠りから目を覚まし、独り言をつぶやいた。「忌まわしい夢、忌まわしい夢だ! 今や最期が近い。これらの警告がそう告げ、弱まる脈がそれを裏づけておる。」

やがて目に邪悪な光が燃え上がり、つぶやいた。「だが、が先に逝くまでは死なぬぞ。」

従者たちは王が目覚めたことに気づき、そのうちの一人が、外で待っている大法官卿をどうするか尋ねた。

「通せ、通せ!」王は待ちきれない様子で叫んだ。

大法官卿は入室し、王の長椅子のそばへ跪いて言った――

「手配を済ませました。国王陛下のご命令に従い、王国の貴族たちは正装して議院の法廷に立ち、ノーフォーク公爵への判決を承認したのち、この件に関する陛下のさらなるご意向を、謹んでお待ちしております。」

王の顔が凶暴な喜びに輝いた。そして言った――

「体を起こせ! 自ら国会へ出向き、自らの手で令状に国璽を押し、あの男をこの世から――」

声が途切れた。灰色の蒼白さが頬の赤みを拭い去った。従者たちは王を枕へそっと戻し、急いで気付け薬などを与えた。やがて王は悲しげに言った――

「ああ、この喜ばしい時をどれほど待ち望んだことか! だが、見よ。訪れるのが遅すぎた。これほど切望した機会を奪われてしまった。だが急げ、急げ! 私に許されぬのなら、ほかの者にこの喜ばしい役目を果たさせよ。国璽を委員会へ委ねる。委員となる貴族をそなたが選び、仕事にかかれ。急げ! 日がもう一度昇り、沈むまでに、あの男の首を持ってこい。この目で見てやる。」

「国王陛下のご命令どおりにいたします。執務に取りかかれますよう、国璽を私にご返還くださるようお命じいただけますでしょうか?」

「国璽だと? そなた以外の誰が国璽を預かっている?」

「陛下、二日前に陛下ご自身が私からお取り上げになりました。ノーフォーク公爵の令状へ陛下自らお使いになるまで、もう役目を果たさせぬと仰せになりまして。」

「おお、確かにそうした。思い出した……あれをどうした? ……ひどく体が弱っている……近ごろ、あまりにも頻繁に記憶が私を裏切る……奇妙だ、奇妙なことだ――」

王は意味の取れないつぶやきを漏らし始め、ときおり力なく灰色の頭を振り、手探りするように国璽をどうしたか思い出そうとした。ついにハートフォード卿が跪き、思い切って情報を申し上げた――

「陛下、差し出がましいことをお許しいただけるなら、こちらの何名かも私と同じく、陛下が国璽をウェールズ公殿下へお預けになったことを覚えております。その日まで保管するようにと――」

「そうだ、まさしくそうだ!」王が言葉を遮った。「持ってこい! 行け、時は飛ぶように過ぎるぞ!」

ハートフォード卿はトムのもとへ飛んでいったが、それほどたたぬうちに、困惑した様子で手ぶらのまま王のもとへ戻った。そしておおよそ次のように報告した――

「国王陛下、これほど重大で、お聞き苦しい知らせを申し上げることは、まことに心苦しゅうございます。ですが神のご意志により、王子殿下のご病気はいまだ続いており、国璽をお受け取りになったことを思い出せずにおられます。そのため急ぎご報告に戻りました。王子殿下がお使いになる長大な部屋や広間を捜索するのは、貴重な時間を浪費するばかりで、大した益もないと考え――」

王のうめき声が、この箇所でハートフォード卿の言葉を遮った。しばらくして、陛下は深い悲しみを込めて言った――

「もうあの子を煩わせるな、哀れな子だ。神の御手が重くのしかかっている。愛しさと憐れみで胸が痛む。この老い、苦難に疲れた肩であの子の重荷を引き受け、安らぎを与えてやれぬことが悲しい。」

王は目を閉じ、何やらつぶやき、やがて沈黙した。しばらくして再び目を開け、虚ろに辺りを見回した。視線が、跪いたままの大法官卿に止まるや、たちまち顔が怒りで赤くなった――

「何だ、まだいたのか! 神の栄光にかけて、さっさとあの反逆者の始末に取りかからぬなら、明日はそなたの司教冠も、それを載せる頭を失って休暇を取ることになるぞ!」

震える大法官卿は答えた――

「国王陛下、どうかお許しを! 私はただ、国璽をお待ちしていたのでございます。」

「そなた、正気を失ったか? 以前、私が外出時に携えた小国璽なら宝物庫にある。大国璽が飛び去ったからといって、あれで間に合わぬというのか? 正気を失ったか? 失せよ! それから、よく聞け――あの男の首を持参するまで、二度と来るな。」

哀れな大法官卿は、すぐにこの危険な場所から退散した。委員会も、従順な国会が行った仕事に国王の裁可を与え、イングランド第一の貴族、不運なノーフォーク公爵の斬首を翌日に定めるのに、いささかも時間を無駄にしなかった。


第九章 川上の壮麗な行列

夜九時、王宮の広大な川沿い一帯は光に燃えていた。川面そのものも、市内の方角へ目の届くかぎり、船頭の小舟や遊覧船で埋め尽くされていた。どの船も色とりどりの提灯で縁取られ、波に穏やかに揺れていたため、夏風にそよぐ、光り輝く果てしない花園のようだった。水辺へ下る壮大な石段は、ドイツの一公国の軍隊を集結させられるほど広かった。磨き上げた甲冑をまとった王室斧槍兵が列をなし、鮮やかな衣装の召使いたちが準備に追われて上下左右へ忙しく行き交うさまは、まさに一幅の絵だった。

やがて命令が下ると、石段からすべての人影がたちまち消えた。張り詰めた期待と緊張の沈黙が、大気に重く満ちた。目の届くかぎり、船に乗った無数の人々が立ち上がり、提灯や松明の眩しさを手で遮り、王宮の方角を見つめるのが見えた。

四、五十艘の儀礼用御座船が、石段へ横づけされた。どの船にも豪華な金箔が施され、高くそびえる舳先と船尾には精緻な彫刻があった。旗や長旗で飾られた船もあれば、金襴や、紋章を刺繍した綴織で飾られた船もあった。無数の小さな銀の鈴を縫いつけた絹の旗を掲げるものもあり、そよ風が旗を揺らすたび、喜びに満ちた音楽の雫が小さく降り注いだ。さらに豪華な船は、王子に近侍する貴族たちの所有で、華麗な紋章を描いた盾が船縁を絵のように囲んでいた。御座船はそれぞれ、付属艇に曳かれていた。付属艇には漕ぎ手のほか、光沢ある兜と胸甲をまとった武装兵と、楽士の一団が乗っていた。

待ち受ける行列の先導隊が、今や大門に姿を現した。斧槍兵の一隊である。兵士たちは黒と黄褐色の縞模様の脚衣を履き、銀の薔薇を側面に飾ったビロードの帽子をかぶり、桑の実色と青の布で仕立てた胴着をまとっていた。その胸と背には、王子の紋章である三枚の羽根が金糸で刺繍されている。斧槍の柄は深紅のビロードで覆われ、金色の鋲で留められ、金の房飾りがついていた。兵士たちは左右に分かれ、王宮の門から水際まで続く二本の長い列を作った。続いて、厚手で放射模様の入った布、すなわち絨毯が広げられ、王子付きの金と深紅の制服をまとった従者たちによって、兵士の列のあいだに敷かれた。それが終わると、内側から華やかな喇叭の音が響いた。水上の楽士たちが快活な前奏を奏で始め、白い杖を持った二人の案内役が、ゆっくりと威厳ある足取りで門から進み出た。その後ろには市の職杖を運ぶ役人、続いて市の剣を携えた役人。それから正装し、袖に記章をつけた市警備隊の数名の軍曹。紋章官服をまとったガーター主席紋章官。袖に白い紐をつけたバス騎士団の騎士たち。その従士たち。緋色の法服と法官帽をまとった裁判官たち。前開きで白貂の毛皮を縁取った緋色の法衣をまとうイングランド大法官卿。緋色の外套をまとった市参事会員の代表団。さらに正装した各市同業組合の長たちが続いた。今度は十二人のフランス人紳士が、華麗な装いで石段を下りてきた。黄金の横縞が入った白いダマスク織の胴着、菫色のタフタを裏地にした深紅のビロードの短い外套、撫子色の半ズボンという装いである。彼らはフランス大使の随員だった。その後ろにはスペイン大使の随員である十二人の騎士が続いた。こちらは一切の装飾を加えない黒いビロードをまとっていた。さらに、従者を伴ったイングランドの大貴族たちが続いた。

内側から喇叭が華やかに鳴り響いた。王子の叔父であり、のちに偉大なサマセット公爵となる人物が、大門から姿を現した。「黒地の金襴の胴着と、金の花模様を施し、銀の網状リボンで飾った深紅の繻子の外套」をまとっていた。叔父は振り返り、羽根飾りの帽子を脱ぎ、深く腰を折って拝礼すると、一歩ごとに頭を下げながら後ろ向きに進み始めた。長く響く喇叭の音が続き、布告が行われた。「道を開けよ! 高貴にして偉大なるウェールズ公、エドワード殿下のお出ましである!」

王宮の城壁の高みでは、赤く長い炎の舌が一列に噴き出し、雷鳴のような轟音を響かせた。川面を埋める世界全体が、歓迎の大歓声を爆発させた。そしてこのすべての原因であり、主役であるトム・キャンティが人々の前へ姿を現し、王子らしくわずかに頭を下げた。

トムは「白い繻子の胴着に、紫の金糸織の胸当てをつけ、そこへダイヤモンドを散りばめ、白貂の毛皮で縁取った、壮麗な装い」だった。その上には、「三枚羽根の紋章を型抜きした白い金襴の外套をまとい、青い繻子の裏地には真珠と宝石をちりばめ、ダイヤモンドの留め金で前を留めていた。首にはガーター勲章と、外国の王侯に授けられたいくつもの勲章を掛けていた」。そして光が当たるたび、宝石が目も眩む閃光で応えた。ああ、トム・キャンティよ。あばら家に生まれ、ロンドンのどぶで育ち、襤褸と汚れと悲惨しか知らなかった少年よ――これは何という光景だろう! 


第十章 罠にかかった王子

ジョン・キャンティが正真正銘の王子を引きずってオファル・コートへ連れ込み、その後ろから騒々しく喜びに沸く群衆がついていくところまで話した。捕らわれた少年をかばう言葉を口にした者は、群衆の中にただ一人しかいなかった。だが誰も耳を貸さなかった――いや、この大騒ぎでは、声そのものがほとんど聞こえなかったのだ。王子は自由になろうともがき続け、受けている仕打ちに怒りをぶつけ続けた。ついにジョン・キャンティは、わずかに残っていた辛抱さえ失い、突如として激昂し、樫の棍棒を王子の頭上高く振り上げた。少年をかばっていたただ一人の男が、腕を止めようと飛びかかり、その一撃を自分の手首に受けた。キャンティが怒鳴った――

「でしゃばる気か? ならば褒美をくれてやる。」

棍棒が、でしゃばった男の頭に激しく振り下ろされた。呻き声が上がり、ぼんやりした人影が群衆の足もとへ崩れ落ちた。そして次の瞬間には、暗がりの中にただ一人、取り残されていた。群衆は先へと押し進み、この出来事にも楽しみを少しも損なわれなかった。

やがて王子は、ジョン・キャンティの住まいの中にいた。外の者たちを締め出すように、扉は閉ざされている。瓶に突き立てられた獣脂蝋燭の頼りない明かりのもと、王子はその忌まわしい巣窟のあらましと、そこにいる者たちの姿を見て取った。薄汚れた二人の娘と中年の女が、片隅の壁際に身を寄せている。虐待に慣れきった獣のような様子で、今またそれが始まることを予期し、怯えていた。別の隅からは、白髪を振り乱し、邪悪な目をした枯れ木のような老婆が忍び出てきた。ジョン・キャンティは老婆に言った――

「待て! ここから見ものが始まる。たっぷり楽しむまでは台なしにするな。そのあとは、好きなだけ手荒にやれ。前へ出ろ、小僧。さあ、まだ忘れておらんのなら、もう一度たわごとを言ってみろ。名を名乗れ。お前は何者だ?」

侮辱を受けた幼い王子の頬に、またもや血が上った。王子は揺るぎない憤怒の眼差しを男の顔へ向け、言った――

「私に口を利けと命じるとは、そなたのような者にしても無作法が過ぎる。前にも言ったとおり、私はエドワード、ウェールズ公である。それ以外の何者でもない。」

この返答はあまりに驚天動地だったため、老婆は立っていたその場に釘づけになり、息まで止まりそうになった。呆然と王子を見つめる老婆の様子が、ならず者の息子にはよほどおかしかったらしく、ジョンは大声で笑いだした。だがトム・キャンティの母と姉たちが受けた衝撃は違っていた。殴られる恐怖など、たちまち別の苦しみの前に消え去った。三人は悲嘆と驚愕を顔に浮かべ、王子へ駆け寄って叫んだ――

「ああ、かわいそうなトム、かわいそうに!」

母親は王子の前にひざまずき、両手をその肩に置き、込み上げる涙越しに、すがるように顔を見つめた。それから言った――

「ああ、かわいそうな坊や! あんなに本ばかり読んだせいで、とうとう取り返しのつかないことになって、正気まで失ってしまったんだね。ああ! あれほどやめなさいと言ったのに、どうして読み続けたんだい? 母さんの胸は張り裂けそうだよ。」

王子は女の顔を見つめ、穏やかに言った――

「そなたの息子は無事だ。正気も失ってはいない、善良なご婦人。安心するがよい。息子のいる宮殿まで私を連れていってくれれば、父王がすぐにそなたのもとへ返してくださる。」

「父王ですって! ああ、坊や! そんな言葉は取り消しておくれ。お前を死に追いやり、近くにいる者まで破滅させる言葉だよ。その恐ろしい夢から覚めておくれ。さまよっている哀れな記憶を呼び戻すんだ。私を見ておくれ。お前を産み、お前を愛している母さんじゃないか?」

王子は首を振り、気の進まない様子で言った――

「そなたの心を悲しませるのは、神もご存じのとおり私の本意ではない。だが本当に、私はこれまで一度もそなたの顔を見たことがないのだ。」

女は力なく床へ座り込み、両手で顔を覆うと、胸も張り裂けんばかりに泣きむせび、嘆き声を上げた。

「見世物を続けろ!」とキャンティが叫んだ。「おい、ナン! ベット! 無礼な小娘どもめ! 王子様の御前で立ったままでいる気か? ひざまずけ、この貧民のくずども。王子様に敬意を表せ!」

そう言って、また下品な高笑いを上げた。娘たちはおずおずと弟をかばい始め、ナンが言った――

「父さん、せめて寝かせてやってよ。休んで眠れば、このおかしな病気も治るから。お願い。」

「そうしてよ、父さん」とベットが言った。「いつもよりずっと疲れてるんだよ。明日になれば元のトムに戻って、しっかり物乞いをして、もう手ぶらでは帰ってこないから。」

その言葉で父親の浮かれ気分は消え、現実の用事へ意識が戻った。怒って王子に向き直り、言った――

「明日はこの穴倉の持ち主に二ペンス払わねばならん。二ペンスだぞ、よく覚えておけ――半年分の家賃に、これだけの大金を払うんだ。さもなければ追い出される。お前が怠けて物乞いをして集めたものを出せ。」

王子は言った――

「その卑しい金の話で私を侮辱するな。もう一度言う。私は国王の息子だ。」

キャンティの幅広い手が王子の肩を激しく打ち、王子はよろめいてキャンティ夫人の腕の中へ倒れ込んだ。夫人は王子を胸に抱き寄せ、自分の体を盾にして、拳や平手の雨からかばった。怯えた娘たちは隅へ逃げたが、祖母は息子に加勢しようと勢い込んで前へ出た。王子はキャンティ夫人の腕から飛び離れ、叫んだ――

「奥方、私のために苦しむことはない。この豚どもの好きにさせるなら、私一人にさせよ。」

この言葉に豚どもは激怒し、一刻も無駄にせず仕事に取りかかった。二人がかりで少年を散々に打ちのめし、さらに犠牲者へ同情した罰として、娘たちと母親まで殴りつけた。

「さあ」とキャンティは言った。「全員、寝ろ。余興で疲れた。」

明かりが消され、一家は床についた。家長とその母親のいびきが聞こえ、二人が眠ったとわかるや、若い娘たちは王子の寝ているところまで忍び寄り、藁とぼろ布を優しくかけて寒さから守った。母親もそっと近づき、髪を撫でながら涙を流し、途切れ途切れの慰めと憐れみの言葉を耳もとで囁いた。食べさせようと、わずかな食べ物も取っておいてくれた。だが少年は痛みのせいで、すっかり食欲を失っていた――少なくとも、黒く味のないパンの皮を食べる気にはなれなかった。女が大きな犠牲を払ってまで勇敢に自分を守り、いたわってくれたことに心を打たれ、王子は実に気高く王子らしい言葉で礼を述べた。そして、もう眠りに戻り、悲しみを忘れるよう努めてほしいと頼んだ。さらに父王は、女の忠実な親切と献身を、決して報いずにはおかれないだろうと付け加えた。この「狂気」の再発に、女の心はまたも打ち砕かれた。何度も王子を胸に抱き締めたあと、涙にくれながら寝床へ戻った。

横になって思い悩み、悲しみに沈むうち、女の心に一つの疑いが忍び込み始めた。この少年には、正気であれ狂気であれ、トム・キャンティにはなかった何かがある。何とは言い表せない。正体もわからない。それでも鋭い母親の本能が、その何かを嗅ぎ取り、見抜いているように思えた。もしこの少年が、本当は自分の息子ではないとしたら? ああ、馬鹿げている! 苦しみと悲しみのさなかにありながら、その考えに思わず笑いそうになった。だがどうにも、その考えは消えてくれなかった。しつこくつきまとい、女を悩ませ、離れようとせず、追い払うことも無視することも許してくれない。ついに女は、この少年が本当に自分の息子か否かを、明白に、疑問の余地なく証明する試験を考え出し、身をすり減らす疑念を消し去るまでは、決して心の安らぎを得られないと悟った。そうだ、それこそがこの難題から抜け出す正しい道に違いない。そこで女は、ただちに知恵を絞って試験を考え始めた。だが思いつくのは簡単でも、実行するのは難しかった。有望そうな試験を次々に考えてみたものの、どれも捨てざるを得なかった――絶対に確実でも、完全でもなかったのだ。不完全な試験では、女を納得させることはできない。どうやらいくら頭を絞っても無駄で、この件は諦めるしかないらしい。そう意気消沈していたとき、少年の規則正しい寝息が耳に届き、眠りに落ちたのだとわかった。耳を澄ましていると、その整った寝息が、苦しい夢の中で漏らすような、かすかな怯えた声によって破られた。この偶然が、それまで苦心して考えたすべての試験を合わせても及ばないほど、すばらしい方法をもたらした。女はすぐさま、熱に浮かされたように、しかし音を立てず、蝋燭に火をつけ始めた。そして独りごちた。「あのときの仕草さえ見ていたら、すぐわかったのに! あの子が幼かったころ、火薬が顔の前ではじけたあの日から、夢の中から不意に起こされたときも、物思いから突然引き戻されたときも、必ずあの日と同じように手を目の前へ出すんだ。他の人のように掌を内側へ向けるのではなく、いつも外側へ向ける。もう百回も見てきたけれど、一度だって違ったことも、しなかったこともない。そうだ、これですぐにわかる!」

女は覆いをかざした蝋燭を手に、眠る少年のそばまで這い寄っていた。押し殺した興奮に息さえほとんどせず、細心の注意を払いながら身を屈めると、不意に少年の顔へ光を浴びせ、耳もとの床を拳で叩いた。眠っていた少年の目が大きく見開かれ、驚いて辺りを見回した――だが両手には、何の特徴的な動きもなかった。

哀れな女は驚きと悲しみに打ちのめされ、動く力さえ失いかけた。それでもどうにか感情を隠し、少年をなだめて再び眠らせた。それから離れた場所へ這っていき、試験の絶望的な結果について、ひとり惨めに思い巡らせた。トムの狂気が、いつもの仕草まで消してしまったのだと思おうとした。だが、できなかった。「違う」と女は言った。「あの子の〈手〉まで狂ったわけじゃない。あれほど昔からの癖を、こんな短い間に忘れられるはずがない。ああ、今日はなんてつらい日なんだろう!」

それでも今度は、先ほどまでの疑いと同じほど、希望が頑強に抵抗した。女は試験の判定を受け入れられなかった。もう一度試さなければならない――失敗はただの偶然だったに違いない。そこで間を置きながら、二度、三度と少年を眠りから驚かせた。だが結果は最初とまったく同じだった。女はようやく重い体を引きずって寝床へ戻り、悲嘆に暮れながら眠りに落ちた。「でも、あの子を諦めるなんてできない――ああ、できない、できないよ――あの子は〈きっと〉私の坊やなんだ!」

哀れな母親に起こされることもなくなり、王子の痛みも次第に眠りを妨げる力を失っていった。そしてついに極度の疲労がまぶたを閉ざし、王子は深く安らかな眠りに落ちた。何時間たっても、死んだように眠り続けた。そうして四、五時間が過ぎたころ、昏睡が少しずつ浅くなり始めた。やがて半ば眠り、半ば目覚めた状態で、王子は呟いた――

「サー・ウィリアム!」

しばらくして――

「おい、サー・ウィリアム・ハーバート! こちらへ参れ。これまで聞いたこともないほど奇妙な夢を……サー・ウィリアム! 聞こえぬのか? 私は自分が貧民に変わったと思い込み、そして……誰か! 衛兵! サー・ウィリアム! 何だ! 控えている侍従は一人もおらぬのか? ああ! ただでは済まさぬぞ――」

「どうしたの?」と、近くから囁き声がした。「誰を呼んでるの?」

「サー・ウィリアム・ハーバートだ。そなたは誰だ?」

「私? 姉さんのナンに決まってるじゃない。ああ、トム、忘れてた! まだおかしくなったままなんだね――かわいそうに、まだ治ってないんだ。こんなことをまた知るくらいなら、目なんて覚めなければよかった! でもお願いだから口をつぐんで。でないと、みんな死ぬまで殴られるよ!」

驚いた王子は半身を起こしたが、強張った打ち身の鋭い痛みに現実を思い出させられ、呻きとともに汚れた藁の中へ沈み込んだ。そして叫んだ――

「ああ! では、夢ではなかったのか!」

たちまち、眠りが追い払っていた重い悲しみと惨めさが、ことごとく王子へ襲いかかった。自分はもはや、国中の民から敬愛の眼差しを向けられ、宮殿で大切にされる王子ではない。ぼろをまとった貧民、世間から捨てられた者、獣にしかふさわしくない巣窟の囚人となり、物乞いや盗人と暮らしているのだ。

悲嘆に沈むうち、どうやら一、二区画ほど離れた場所から、陽気な騒ぎと叫び声が聞こえてくることに気づいた。次の瞬間、扉が何度も鋭く叩かれた。ジョン・キャンティはいびきを止めて言った――

「誰だ? 何の用だ?」

声が答えた――

「お前が棍棒で殴った相手が誰か知っているか?」

「知らん。知りもしないし、知りたくもない。」

「じきに口ぶりが変わるだろうよ。首が惜しければ、逃げる以外に助かる道はない。あの男は今まさに息を引き取ろうとしている。司祭のアンドリュー神父だ!」

「なんてことだ!」とキャンティは叫んだ。家族を叩き起こし、しわがれ声で命じた。「全員起きて逃げろ――でなければ、そこに残って死ね!」

五分もたたないうちに、キャンティ一家は通りへ飛び出し、命からがら逃げていた。ジョン・キャンティは王子の手首をつかみ、暗い道を急がせながら、低い声で警告した――

「口に気をつけろ、この狂った馬鹿め。俺たちの名を言うな。すぐに新しい名を考えて、役人どもの鼻をくらましてやる。口に気をつけろと言っているんだ!」

そして残りの家族へ、唸るように言った――

「もしはぐれたら、各自ロンドン橋を目指せ。橋のいちばん端にある呉服屋まで着いた者は、ほかの者が来るまでそこで待て。それから一緒にサザークへ逃げるぞ。」

その瞬間、一行は突然、暗闇から光の中へ飛び出した。それもただ明るい場所に出ただけではない。歌い、踊り、叫ぶ人々が、川岸にひしめき合う、その真っただ中へ出たのだ。テムズ川の上流にも下流にも、見渡す限りかがり火が連なっていた。ロンドン橋は明々と照らされ、サザーク橋も同様だった。川全体が色とりどりの光を受け、きらめき輝いていた。絶え間なく炸裂する花火が空を彩り、飛び交う光が複雑に混じり合い、目も眩む火花が雨のように降り注いで、夜をほとんど昼へと変えていた。どこもかしこも浮かれ騒ぐ群衆であふれ、まるでロンドン中の人々が街へ繰り出したかのようだった。

ジョン・キャンティは激しく悪態をつき、引き返せと命じた。だが、もう遅かった。キャンティとその一族は、人間の大群がうごめく巣へ呑み込まれ、瞬く間にばらばらに引き離された。もっとも、王子までキャンティ一族に数える必要はない。キャンティはなおも王子をつかんでいた。今や王子の胸は、逃げられるかもしれないという希望に高鳴っていた。酒でかなり気の大きくなった屈強な船頭が、群衆をかき分けようとするキャンティに手荒く押しのけられた。船頭は大きな手をキャンティの肩へ置き、言った――

「おいおい、友よ、どこへそんなに急ぐ? 忠義あるまことの男がみな祝いに興じているというのに、卑しい仕事で魂を腐らせる気か?」

「俺の用事は俺のものだ。お前には関係ない」とキャンティは荒々しく答えた。「手をどけて通せ。」

「そんな態度なら、ウェールズ公のために乾杯するまで〈通すわけにはいかん〉。そう心得ろ」と船頭は言い、断固として道をふさいだ。

「なら杯をよこせ。さっさとしろ、早く!」

そのころには、ほかの浮かれ客たちも興味を持っていた。彼らは叫んだ――

「親睦の杯だ、親睦の杯を! この気難しい悪党に飲ませろ。飲まなければ魚の餌にしてしまえ!」

そこで巨大な親睦杯が運ばれてきた。船頭は片方の取っ手を握り、もう一方の手で、そこにあるはずもないナプキンの端を支える仕草をしながら、古式にのっとって厳かにキャンティへ差し出した。キャンティも昔からの作法どおり、片手で反対側の取っ手を握り、もう一方の手で蓋を取らねばならなかった。当然、その一瞬だけ王子の手は自由になった。王子は一刻も無駄にせず、周囲に林立する脚の間へ飛び込み、そのまま姿を消した。次の瞬間には、うねり逆巻く人の海の下で王子を見つけるのは、たとえその波が大西洋のもので、王子がなくした六ペンス銀貨だったとしても、これ以上難しくはなかっただろう。

王子はすぐにその事実を悟り、ジョン・キャンティのことなどもう考えず、自分の用事に取りかかった。そして、もう一つのことにもたちまち気づいた。すなわち、偽のウェールズ公が、自分に代わってロンドン市の歓待を受けているということだ。貧民の少年トム・キャンティが、この途方もない好機を意図的に利用し、王位簒奪者になったのだと、王子はあっさり結論づけた。

ならば取るべき道は一つしかない――ギルドホールへ行き、自分の身分を明かし、偽者を告発することだ。またトムには、魂の備えをするための相応の猶予を与え、その後、当時の大逆罪に対する法律と慣習に従って、絞首刑に処し、内臓を抉り出し、四つ裂きにすると決めた。


第十一章 ギルドホールにて

きらびやかな船団を従えた王室の御座船は、明かりに彩られた無数の舟の間を抜け、威風堂々とテムズ川を下っていった。大気は音楽に満ち、川岸は歓喜の炎で縁取られていた。遠くの市街は、姿の見えない無数のかがり火から放たれる柔らかな光に包まれ、その上には、きらめく灯火をちりばめた細長い尖塔がいくつも空へ伸びている。遠目には、宝石を飾って高々と掲げた槍のようだった。船団が進むにつれ、川岸からは絶え間ない野太い歓声が轟き、大砲がひっきりなしに閃光を放って轟音を響かせた。

絹のクッションに半ば埋もれていたトム・キャンティにとって、この音と光景は、言葉では言い尽くせないほど崇高で驚異に満ちたものだった。だが傍らにいる幼い友人、エリザベス王女とレディ・ジェーン・グレイにとっては、何でもない見慣れたものだった。

ダウゲートへ着くと、船団は澄みきったウォルブルックを曳かれて上り(その川筋は今では二世紀にわたり、何エーカーもの建物の下に埋もれて見えなくなっている)、バックラーズベリーへ向かった。陽気な見物人で鈴なりになり、煌々と照らされた家々や橋の下を通り、ついに古都ロンドンの中心、現在バージ・ヤードがある場所の船溜まりで止まった。トムは上陸し、華麗な行列とともにチープサイドを横切り、オールド・ジュリーとベージングホール通りを少し行進して、ギルドホールへ向かった。

トムと幼い貴婦人たちは、金の鎖と緋色の礼服をまとったロンドン市長および市参事会の長老たちから、しかるべき儀礼をもって迎えられた。そして先触れをする紋章官と、職杖および市の剣に先導され、大広間上座の豪華な天蓋へ案内された。トムと二人の幼い友人に付き従う貴族たちは、椅子の後ろに位置を占めた。

一段低い食卓には、宮廷の高官やその他の高貴な客人が、市の有力者たちとともに座り、平民たちは大広間の床に並べられた無数の食卓についた。市の古き守護者である巨人ゴグとマゴグは、高所から下の光景を眺めていた。その目は、もはや忘れ去られた幾世代もの昔から、こうした眺めを見慣れていた。角笛が鳴り、布告が行われると、左側の壁の高い壇上に太った給仕長が現れた。その後ろには、湯気を立て、今にも切り分けられようとしている牛肉の大塊を、厳粛きわまりない様子で運ぶ従者たちが続いた。

食前の祈りのあと、あらかじめ教えられたとおりトムが立ち上がり――大広間の全員もそれにならい――エリザベス王女とともに、ふくよかな黄金の親睦杯から飲んだ。杯は王女からレディ・ジェーンへ渡り、さらに列席者全員の間を巡った。こうして宴が始まった。

真夜中になるころ、祝宴は最高潮に達した。ここで、当時たいへん好まれた、絵のように華やかな催しの一つが始まった。その場に居合わせた年代記作者が、古風な言葉遣いで記した描写が、今も残っている。

「場所が空けられると、ほどなく男爵と伯爵が一人ずつ、トルコ風の装いで入場した。金粉模様の入った錦織りの長衣をまとい、頭には真紅のビロードに太い金の飾りを巻いた帽子をかぶり、金の太い剣帯からシミターと呼ばれる二本の剣を下げていた。次にまた男爵と伯爵が一人ずつ現れた。二人は黄色い繻子の長衣に白い繻子を斜めに渡し、その白い帯の一つ一つに真紅の繻子の帯を重ねた、ロシア風の衣装をまとい、頭には灰色の毛皮の帽子をかぶっていた。どちらも手に手斧を持ち、つま先が一フィート(約三十センチメートル)もある長靴を上へ反らせて履いていた。そのあとに騎士が一人、さらに海軍卿が五人の貴族とともに続いた。彼らは真紅のビロードの胴着を着ており、背と前は鎖骨まで深く開き、胸には銀の鎖を編み上げていた。その上に真紅の繻子の短い外套を羽織り、頭には踊り手風の帽子をかぶり、雉の羽根を挿していた。これらはプロイセン風の装いである。およそ百人の松明持ちは、ムーア人のように真紅と緑の繻子をまとい、顔を黒く塗っていた。次いで仮面劇が始まった。そのあと変装した楽師たちが踊り、貴族の男女もまた激しく踊った。そのさまは、まことに見事であった。」

トムが高い席から、この「激しい」踊りに見入り、眼下で派手な衣装の人々が渦巻くことで生まれる、万華鏡のように眩い色彩の交錯に心を奪われていたまさにそのころ、ぼろをまとった本物の幼いウェールズ公は、ギルドホールの門前で自分の権利と受けた不当な扱いを訴え、偽者を糾弾し、中へ入れろとわめき立てていた! 群衆はこの出来事を大いに面白がり、小さな騒動の主を見ようと前へ押し寄せ、首を伸ばした。やがて、もっと激しく、もっと面白い怒り方をさせようと、わざと野次を飛ばして嘲り始めた。屈辱の涙が王子の目に浮かんだが、一歩も退かず、まことに王者らしく群衆へ立ち向かった。さらに野次が浴びせられ、嘲笑が王子を刺した。王子は叫んだ――

「もう一度言うぞ、この無礼な野良犬ども。私はウェールズ公だ! 今は孤独で友もなく、優しい言葉をかける者も、窮地で助ける者もいない。だがそれでも、私はここを追い払われはせぬ。この場を一歩も動かず、最後まで守り抜く!」

「王子だろうが王子でなかろうが、そんなことはどうでもいい。お前は勇敢な小僧だ。それに、友がいないわけでもないぞ! その証拠に、この俺がお前の隣に立っている。よく覚えておけ、マイルズ・ヘンドンより悪い友なら、脚を疲れさせて探さずとも、いくらでも見つかるぞ。さあ小さな口を休ませろ、坊や。この卑しいどぶ鼠どもの言葉なら、俺は生まれつきの住人同然に話せる。」

話し手は、服装も風貌も身のこなしも、さながらドン・セザール・デ・バザンのような男だった。背が高く、均整が取れ、筋骨たくましい。胴着と半ズボンは上質な品だったが、色褪せて擦り切れ、金糸の装飾もひどく曇っていた。襞襟は皺だらけで傷み、つば広帽子の羽根飾りは折れ、濡れそぼったようにみすぼらしかった。腰には、錆びた鉄の鞘に収めた長い細身剣を下げている。その威張った歩き方を一目見れば、戦場を渡り歩く荒くれ者とわかった。この奇妙な男の言葉に、群衆から一斉に嘲笑と高笑いが爆発した。「また変装した王子様だぞ!」「口に気をつけろ、友よ。ひょっとすると危険な男かもしれん!」「まったくだ、危険そうだ――あの目を見ろ!」「小僧を引き離せ――馬洗い池へ放り込んでやれ!」

この愉快な思いつきに駆られ、たちまち一人の手が王子へ伸びた。同時に見知らぬ男の長剣が抜き放たれ、手を出した者は剣の平で激しく打たれて地面に倒れた。次の瞬間、二十もの声が「犬を殺せ! 殺せ! 殺してしまえ!」と叫び、群衆が戦士へ殺到した。男は壁を背にして、長い武器を狂人のように振り回し始めた。打たれた者たちはあちらこちらに転がったが、群衆の波は倒れた体を乗り越え、少しも衰えぬ猛威で勇者へ押し寄せた。

男に残された時間はわずかで、破滅は確実と思われたそのとき、不意にラッパが鳴り、「国王の使者のお通りだ!」という声が上がった。騎馬の一団が群衆へ突進し、人々は危険を避けようと、脚の続く限り素早く逃げ散った。勇敢な見知らぬ男は王子を抱き上げ、ほどなく危険と群衆から遠く離れた。

さて、ギルドホールの中へ戻ろう。突然、祝宴の歓喜に満ちた轟音をはるかに凌ぎ、角笛の澄んだ音色が鳴り渡った。たちまち静寂が訪れた――深い沈黙である。やがて一人の声が上がった。宮殿から来た使者の声だ。全員が立って聞くなか、使者は布告を読み上げ始めた。

最後に、厳粛な声で告げられた言葉は――

「国王陛下、崩御!」

集まった大勢の者たちは一斉に頭を胸へ垂れた。深い沈黙のまま、しばしそうしていた。それから全員がひざまずき、トムへ向かって両手を差し伸べた。そして建物を揺るがすかと思われるほどの大歓声が湧き起こった――

「国王陛下、万歳!」

哀れなトムは呆然と、この度肝を抜く光景を見渡した。その目はやがて、隣にひざまずく王女たちの上へ夢見るように止まり、次いでハートフォード伯へ向けられた。突然、ある決意が顔に浮かんだ。トムはハートフォード卿の耳もとで、低い声で言った――

「信義と名誉にかけ、真実を答えよ! もし私がここで、国王だけが発する権利と特権を持つ命令を下したなら、その命令は従われ、誰一人として否とは申さぬのか?」

「この王国のどこにも、否と申す者はおりません、陛下。陛下のお体には、イングランドの王威が宿っております。陛下こそ国王――陛下のお言葉が法でございます。」

トムは力強く真剣な声で、激しい熱意を込めて答えた――

「ならば今日より、国王の法は慈悲の法とする。二度と血の法とはせぬ! ひざまずいていないで立て、急げ! ロンドン塔へ行き、国王はノーフォーク公を死なせぬと命じた、と伝えよ!」

その言葉は口から口へと熱烈に伝えられ、たちまち大広間の隅々まで広がった。ハートフォードが御前から急ぎ去ると、またもや途方もない歓声が爆発した――

「血の治世は終わった! イングランド国王エドワード陛下、万歳!」


第十二章 王子と救い主

マイルズ・ヘンドンと幼い王子は、群衆から抜け出すとすぐ、裏道や路地を通って川へ向かった。ロンドン橋へ近づくまでは妨げるものもなかったが、そこで再び群衆へ突入した。ヘンドンは王子の――いや、国王の――手首をしっかりつかんでいた。重大な知らせはすでに広まっており、少年は千もの声から一度にそれを聞いた――「国王陛下が崩御された!」

その知らせは哀れな幼い浮浪児の心を凍らせ、全身を震わせた。少年は失ったものの大きさを悟り、激しい悲しみに満たされた。他の者には恐ろしい暴君だったあの厳格な王も、自分にだけはいつも優しかったのだ。涙が目にあふれ、あらゆるものを曇らせた。一瞬、自分こそ神の創りたもうたものの中で、最も孤独で、見捨てられ、寄る辺ない存在だと感じた――そのとき、別の叫びが夜を揺るがし、遠くまで雷鳴のように響いた。「国王エドワード六世陛下、万歳!」その声に少年の目は輝き、指先まで誇りに震えた。「ああ」と少年は思った。「なんと壮大で、不思議なことだろう――〈私が国王なのだ〉!」

二人は橋上の群衆を縫い、ゆっくりと進んでいった。この橋は六百年にわたって立ち続け、その間ずっと騒々しく人通りの多い大通りであり続けた、実に奇妙な建造物だった。川の一方の岸からもう一方まで、橋の両側には店舗や商店がぎっしりと軒を連ね、その上階には家族の住居が並んでいた。ロンドン橋そのものが、一つの町のようなものだった。宿屋もあれば、酒場、パン屋、小間物屋、食料市場、工房、さらには教会まであった。橋は、自らが結ぶ二つの隣町――ロンドンとサザーク――を、郊外としてはまずまずだが、それ以外には特に重要でもない場所と見なしていた。いわば閉鎖的な自治共同体である。全長五分の一マイル(約三百二十メートル)の一本道しかない細長い町で、人口は村ほどにすぎず、住民は町の仲間を誰もが親しく知り、その父母のことも、ついでに家族の細かな事情まで知り尽くしていた。もちろん貴族階級もあった。由緒正しい肉屋やパン屋その他の名家である。五、六百年も同じ古い店舗を占め続け、橋の偉大な歴史を初めから終わりまで知り、その不思議な伝説にも通じていた。彼らはいつも橋らしい話をし、橋らしい考え方をし、長々と平板かつ直截で、堂々たる橋流の嘘をついた。まさに視野が狭く、無知で、うぬぼれの強い人々になるにはうってつけの住民たちだった。子供たちは橋の上で生まれ、そこで育ち、老い、ついにはロンドン橋以外の世界へ一歩も足を踏み入れぬまま死んでいった。そういう人々なら当然、橋の通りを昼夜絶え間なく進む巨大な行列――叫び声や呼び声の混じった轟き、馬のいななき、牛の唸り、羊の鳴き声、地面を打つ足音の鈍い雷鳴――こそがこの世で最も偉大なものであり、自分たちが何らかの意味でその所有者なのだと考えただろう。そして実際、そうでもあった――少なくとも、帰還した国王や英雄によって行列が一時の輝きを与えられるたび、窓からそれを見物させることはできたし、代金を取って実際にそうしていた。行進する隊列を、長く真っ直ぐ、遮るものなく眺めるには、これほど適した場所はなかったからだ。

橋で生まれ育った者には、ほかの場所での暮らしは耐え難いほど退屈で、空虚に思えた。歴史には、七十一歳で橋を離れ、田舎へ隠居した男の話が残っている。だが男は寝床で苛立ちながら寝返りを打つばかりで、眠れなかった。深い静けさがあまりに苦しく、恐ろしく、息苦しかったのだ。ついに耐えきれなくなると、痩せこけ憔悴した幽霊のような姿で昔の家へ逃げ帰った。そして打ち寄せる水の音と、ロンドン橋の轟き、激突音、雷鳴のような響きを子守歌に、安らかな眠りと心地よい夢を取り戻した。

この物語の時代、ロンドン橋は、子供たちにイングランド史の「実物教育」を提供していた。すなわち、橋門の上に立つ鉄の杭へ串刺しにされた、名高い人々の青ざめ腐りゆく首である。だが話が逸れた。

ヘンドンの宿は、橋の上にある小さな宿屋だった。幼い連れとともに戸口へ近づいたとき、荒々しい声が言った――

「ようやく来たか! 今度は逃がさんぞ。骨を叩いて粥にするほど殴れば、少しは物を覚えて、二度と俺たちを待たせなくなるかもしれんな」――そう言って、ジョン・キャンティが少年をつかもうと手を伸ばした。

マイルズ・ヘンドンは間へ割って入り、言った――

「そう急くな、友よ。いささか手荒に過ぎるようだ。その少年とお前はどういう関係だ?」

「他人の用事に首を突っ込むのがお前の仕事だというなら、教えてやる。そいつは俺の息子だ。」

「嘘だ!」と幼い国王が激しく叫んだ。

「勇ましく言ったな。その小さな頭がまともでも壊れていても、俺はお前を信じるぞ、坊や。だがこの卑劣な悪党がお前の父親であろうとなかろうと、そんなことはどうでもいい。俺と一緒にいたいのなら、脅したとおりお前を殴り、虐待するために連れていかせはしない。」

「一緒にいる、いるとも――私はこの男を知らぬし、嫌悪している。ついていくくらいなら死んだほうがましだ。」

「なら決まりだ。これ以上、話すことはない。」

「それはどうかな!」とジョン・キャンティは叫び、ヘンドンの脇を抜けて少年を捕まえようとした。「力ずくでもこいつを――」

「その子に触れてみろ、この歩く生ごみめ。鵞鳥のように串刺しにしてやる!」とヘンドンは言い、道をふさいで剣の柄へ手をかけた。キャンティは後ずさった。「よく聞け」とヘンドンは続けた。「俺は、お前のような連中がこの少年を痛めつけ、ひょっとすると殺しかねなかったとき、保護してやったのだ。それなのに今、もっとひどい運命へ見捨てると思うか? お前が父親かどうかは知らん――正直に言えば、嘘だと思うが――こんな少年にとっては、お前のような獣の手にかかって生きるより、苦しまずにさっさと死ぬほうがましだ。だから立ち去れ。さっさと行け。俺は長々と言い争うのが嫌いで、もともと気の長いほうではない。」

ジョン・キャンティは脅しと呪いの言葉を呟きながら立ち去り、群衆に呑み込まれて見えなくなった。ヘンドンは食事を部屋へ運ぶよう命じたあと、預かった少年を連れ、階段を三つ上って自室へ入った。粗末な部屋で、みすぼらしい寝台と、古い家具がいくつかあるだけだった。弱々しく燃える二本の蝋燭が、ぼんやりと辺りを照らしていた。幼い国王はほとんど力尽きた様子で寝台まで体を引きずり、横になった。今は午前二時か三時であり、昼から夜にかけて大半を立ち通しで過ごし、その間、何も食べていなかった。眠そうに呟いた――

「食卓の支度ができたら起こしてくれ」そう言うと、ただちに深い眠りへ落ちた。

ヘンドンの目に笑いがきらめき、独りごちた――

「いやはや、この小さな物乞いときたら、まるで自分の部屋と寝台であるかのように、ごく自然に、平然と人の部屋へ入り込み、人の寝台を奪ったぞ。お許しくださいとも、よろしければとも、何一つ言わずにな。気の触れたたわごとの中で、自分をウェールズ公と称していたが、見事に役になりきっている。哀れな、身寄りのない小鼠め。きっと虐待で心を病んだのだろう。よし、俺が友になってやろう。命を救ったせいか、妙に心を惹かれる。もうこの威勢のよい小悪党が好きになってしまった。薄汚い野次馬どもに、何と兵士らしく立ち向かい、気高く啖呵を切ったことか! それに眠りが苦悩と悲しみを消し去った今、何と美しく、愛らしく、優しい顔をしているのだろう。俺が教え、病を治してやる。そうとも、兄となって世話をし、見守ってやろう。この子に恥をかかせ、傷つけようとする者は、自分の死に装束を用意しておくがいい。たとえ俺が火あぶりになろうとも、それが必要になるようにしてやる!」

ヘンドンは少年の上へ身を屈め、優しく同情に満ちた眼差しで眺めた。若い頬をそっと叩き、大きな褐色の手で、もつれた巻き毛を後ろへ撫でつけた。少年の体がかすかに震えた。ヘンドンは呟いた――

「まったく、覆いもかけずにここへ寝かせ、死に至る病を体へ入り込ませるとは、いかにも男らしい気の利かなさだ。さて、どうする? 抱き上げて寝床へ入れれば起こしてしまうし、ひどく眠りを必要としている。」

余分な掛け物がないか見回したが、見つからなかったので、胴着を脱いで少年を包んだ。「俺は身を切る寒風にも薄着にも慣れている。寒さくらい、どうということはない!」そう言うと、血の巡りを保つため部屋を歩き回りながら、先ほどと同じように独り言を続けた。

「傷ついた心が、自分はウェールズ公だと思い込ませている。これまで王子だった方が王子でなく国王となった今も、ウェールズ公がまだ一人いるとは妙な話だ。この哀れな心は一つの妄想に凝り固まり、今こそ王子を捨てて国王と名乗るべきだと理屈で考えることもできぬ……異国の牢獄で故郷からの便りを絶たれて七年、父がまだ生きているなら、この哀れな少年を歓迎し、俺に免じて寛大にかくまってくれるだろう。善良な兄アーサーも同じだ。もう一人の弟ヒューは――いや、あの狐の心を持つ性悪な畜生が邪魔をするなら、頭をかち割ってやる! そうだ、そこへ行こう――しかも、すぐにだ。」

召使いが湯気の立つ食事を運び込み、小さな松材の食卓へ並べ、椅子を置いて立ち去った。このような安宿の客は、自分たちで給仕することになっていた。召使いが閉めた扉の音で少年は目を覚まし、身を起こして嬉しそうに辺りを見回した。だがすぐに悲しげな表情となり、深いため息をついて独りごちた。「ああ、夢にすぎなかったのか。何と悲しいことだ!」

次にマイルズ・ヘンドンの胴着へ気づき、そこからヘンドンを見て、自分のために払われた犠牲を悟った。そして穏やかに言った――

「そなたは私によくしてくれる。本当に親切にしてくれるな。これを取って着るがよい――もう必要ない。」

それから立ち上がり、部屋の隅の洗面台まで歩いていくと、そこで待った。ヘンドンが明るい声で言った――

「さあ、たっぷり飲んで食べよう。どれも旨そうで、熱々だ。食事と昼寝を合わせれば、すぐにまた元気な小男へ戻れるぞ。心配するな!」

少年は答えず、真剣な驚きと、いくらかの苛立ちを帯びた視線で、長身の剣士をじっと見つめた。ヘンドンは困惑して言った――

「どうした?」

「そなた、私は体を洗いたいのだ。」

「ああ、それだけか? 欲しいものについて、マイルズ・ヘンドンへ許しを請う必要などない。ここにあるものは何でも、遠慮せず自由に使え。」

それでも少年は立ったまま動かなかった。それどころか、いらだたしげな小さな足で床を一、二度鳴らした。ヘンドンはすっかり途方に暮れた。彼は言った――

「これはいったい、どうしたというのだ?」

「早く水を注げ。いちいち言わせるな!」

ヘンドンは下品な高笑いを押し殺し、「なんとまあ、実に見事なものだ!」と独りごちながら、素早く前へ出て、小生意気な少年の命令どおりにした。それから「さあ、手拭いを!」という命令ではっと我に返るまで、呆気にとられたまま脇に立っていた。少年の鼻先にある手拭いを取り、何も言わず手渡した。次に自分の顔も洗い始めたが、その間に養い子は食卓につき、食事を始める用意を整えた。ヘンドンは大急ぎで洗い終え、もう一つの椅子を引いて食卓へ座ろうとした。そのとき少年が憤然と言った――

「控えよ! 国王の御前で座るつもりか?」

この一撃は、ヘンドンを根底からぐらつかせた。独りごちた。「おやまあ、かわいそうに、狂気も時勢についてきたぞ! 王国に起きた大変化に合わせて妄想も変わり、今度は自分を〈国王〉だと思っている! やれやれ、この思い込みにも付き合わねばならん――ほかに手はない。さもなくば、きっとロンドン塔送りを命じられるぞ!」

この冗談を面白がりながら、ヘンドンは椅子を食卓からどけ、国王の後ろに立つと、自分にできる限り宮廷風に給仕し始めた。

国王は食べるにつれ、王者の威厳に伴う厳格さをいくらか緩めた。満足感が増すと、話をしたくなったらしい。「聞き違いでなければ、そなたはマイルズ・ヘンドンと名乗っていたな?」

「はい、陛下」とマイルズは答え、それから心の中で考えた。「この哀れな少年の狂気に〈どうしても〉付き合うなら、陛下と呼び、御主君として扱わねばならん。中途半端はいけない。演じる役に属することなら何でもやらねば、下手な芝居になって、この慈善と親切の企てを害してしまう。」

国王は二杯目の葡萄酒で胸を温め、言った。「そなたのことを知りたい――身の上を話せ。勇ましい振る舞いをするし、気品もある――高貴な生まれなのか?」

「貴族の末席に連なる家でございます、陛下。父は準男爵――騎士奉仕で領地を保有する小領主の一人――ケントのモンクス・ホルムに近いヘンドン・ホールのサー・リチャード・ヘンドンです。」

「その名は記憶から抜け落ちている。続けよ――身の上を話せ。」

「大した話ではございません、陛下。しかし、ほかに何もなければ、短い半時ほどの退屈しのぎにはなるかもしれません。父サー・リチャードはたいへん裕福で、非常に寛大な人です。母は私がまだ子供のころに亡くなりました。私には兄弟が二人おります。兄のアーサーは父に似た心の持ち主。弟のヒューは私より年下で、卑しく、強欲で、裏切り者で、悪辣で、陰険な――爬虫類のような男です。生まれたときからそうでしたし、最後に会った十年前もそうでした。当時十九歳にして、すでに立派な悪党でした。私は二十歳、アーサーは二十二歳でした。ほかにいるのは従妹のレディ・イーディスだけです。当時十六歳――美しく、優しく、善良で、伯爵の娘でした。家系最後の一人で、莫大な財産と断絶した爵位の相続人です。父が後見人を務めていました。私は彼女を愛し、彼女も私を愛していました。しかしイーディスは生まれたときからアーサーと婚約しており、サー・リチャードはその契約を破ることを許しませんでした。アーサーは別の娘を愛しており、元気を出して希望を捨てるな、時と幸運が合わされば、いつか我々それぞれの願いがかなうだろうと言ってくれました。ヒューが愛していたのはレディ・イーディスの財産でした。本人は彼女自身を愛していると言っていましたが――一つを口にしながら別のことを意味するのが、昔からあの男のやり方なのです。しかし娘には、その手練手管も通じませんでした。父は騙せても、ほかの者は騙せなかったのです。父は兄弟の中でヒューを最も愛し、信頼していました。末の子であり、ほかの者から嫌われていたからです――どの時代でも、こうした条件は親の最も深い愛情を勝ち取るのに十分なものです。しかも滑らかで人を説き伏せる舌と、見事な嘘の才能を持っていました――これもまた、盲目的な愛情が自らを欺くうえで、大いに役立つ資質です。私は無鉄砲でした――実を言えば、〈非常に〉無鉄砲だったとまで申してよいでしょう。とはいえ罪のない種類の無鉄砲さで、傷つくのは私自身だけでした。誰にも恥をかかせず、損害も与えず、犯罪や卑劣さの汚点もなく、私の名誉ある身分にふさわしくないことは何一つしておりません。

「それでも弟ヒューは、私の欠点を巧みに利用しました。兄アーサーの健康が思わしくないのを見て、私を道から追い払えば、最悪の事態が自分の利益になると期待したのです。それで――いや、陛下、語れば長くなりますし、聞くほどの価値もございません。手短に申せば、弟は私の欠点を巧みに誇張して犯罪に仕立て上げました。そして卑劣な企ての仕上げとして、私の部屋から絹の縄梯子を発見しました――むろん、自分でそこへ運び込んだものです。そして買収された召使いや、ほかの嘘つきの悪党どもの証言と合わせ、私は父の意志へ真っ向から逆らい、イーディスを連れ去って結婚するつもりだと、父に信じ込ませました。

「故郷とイングランドを三年追放されれば、私は兵士となり、一人前の男となって、いくらか分別も身につけるだろうと父は言いました。私は大陸の戦争で長い試練の期間を戦い抜き、打撃と困窮と冒険を心ゆくまで味わいました。ところが最後の戦いで捕虜となり、それから満ち欠けを重ねた七年の間、異国の牢獄に囚われておりました。知恵と勇気によってようやく自由な空気のもとへ脱し、真っ直ぐこちらへ逃げてきました。着いたばかりで、財布も衣服もひどく貧しく、ヘンドン・ホールとそこにいる人々や財産を、この重苦しい七年がどう変えたのかについては、さらに乏しい知識しかありません。陛下、これで私のささやかな話は終わりです。」

「そなたは恥ずべき仕打ちを受けたのだ!」と幼い国王は、目を光らせて言った。「だが私が正してやる――十字架にかけて、必ずだ! 国王がそう申したぞ。」

それからマイルズの受けた不当な仕打ちに心を燃やし、国王は堰を切ったように、自身が最近被った災難の一部始終を、驚く聞き手へ語った。話が終わると、マイルズは心の中で言った――

「何という想像力だ! まことに、並の心ではない。さもなければ、狂っていようが正気だろうが、何もない空想だけを材料に、これほど筋の通った華麗な物語を織り上げ、この奇妙な伝奇譚を作ることなどできぬだろう。哀れな、壊れてしまった小さな頭よ。俺が生きている限り、友と住まいには困らせぬ。この子を二度とそばから離すまい。俺の可愛がる子、幼い仲間にしよう。そして必ず治してやる! そうだ、完全に健やかな心へ戻すのだ。そうすれば、この子は名を上げるだろう。そして俺は誇らしくこう言うのだ。『そうとも、あいつは俺の子だ――家のない小さな浮浪児を引き取ったが、俺にはあいつの中にあるものが見えた。いつか名を聞くようになると言ったものだ――あいつを見ろ、よく見ろ――俺の言ったとおりだったろう?』。」

国王は考え深く、ゆっくりした声で言った――

「そなたは私を危害と屈辱から救った。おそらくは命を救い、それゆえ王冠をも救った。このような働きには、豊かな褒美が必要だ。望みを申せ。私の王権でかなえられるものであれば、そなたに与える。」

この奇想天外な申し出に、ヘンドンは物思いから引き戻された。国王へ礼を言い、自分は義務を果たしただけで褒美など望まないと答え、この話を打ち切ろうとした。だがもっと賢い考えが浮かび、しばらく黙って慈悲深い申し出を検討する許しを求めた。国王は厳粛に同意し、これほど重大なことは性急に決めぬほうがよいと述べた。

マイルズはしばらく考え、それから心の中で言った。「そうだ、それがいい。ほかの方法ではどうにもならん――それに確かに、この一時間の経験で、今のまま続けるのはひどく疲れるうえに不便だとわかった。よし、頼んでみよう。機会を捨てずに済んだのは幸運だった。」

それから片ひざをつき、言った――

「私のささやかな働きは、一臣民として当然の義務を越えるものではなく、ゆえに功績とは申せません。しかし陛下が何らかの褒美に値するとお考えくださるのであれば、御厚意にすがり、次のことをお願い申し上げます。陛下もご存じのとおり、およそ四百年前、イングランド王ジョンとフランス王の間が険悪となり、二人の代表戦士が決闘場で戦い、いわゆる神明裁判によって争いを決することとなりました。この二王とスペイン王が戦いを見届け、裁定するために集まると、フランス側の代表戦士が現れました。ところがあまりに恐るべき強者だったため、イングランドの騎士たちは誰も武器を交えることを拒みました。そのため、この重大な争いは、不戦敗によってイングランド王に不利な決着となりかけました。さて当時、ロンドン塔には、イングランド随一の剛腕を誇るド・クーシー卿が囚われていました。名誉と領地を奪われ、長い幽閉で衰弱していたのです。卿に出場が要請されると、これを承諾し、戦支度を整えて現れました。するとフランス人は、その巨大な体格を一目見て、高名な名を耳にしただけで逃げ去り、フランス王の訴えは敗れました。ジョン王はド・クーシーの爵位と領地を返還し、『望みを申せ。たとえ王国の半分を失おうとも、かなえてやる』と言いました。するとド・クーシーは、今の私と同じくひざまずき、『では、陛下、これをお願い申し上げます。王座が続く限り今後永遠に、私と子孫がイングランド国王の御前で帽子をかぶったままでいられる特権をお認めください』と答えました。陛下もご存じのとおり、願いは認められました。この四百年間、その家系は一度も相続人を絶やしておりません。ゆえに今日に至るまで、この古き家の当主は誰にも妨げられず、国王陛下の御前で帽子または兜を着けたままでおります。ほかの者には許されぬことです。この先例を我が願いの支えとして、国王陛下に、ただ一つの御慈悲と特権をお与えくださるようお願い申し上げます。それだけで私には身に余る褒美であり、ほかには何も望みません。すなわち、私と私の子孫が永遠に、イングランド国王陛下の御前で〈座る〉ことをお許しください!」

「立て、サー・マイルズ・ヘンドン騎士」と国王は厳粛に言い、ヘンドンの剣で騎士叙任の儀式を行った。「立って座るがよい。そなたの願いを認める。イングランドが存続し、王冠が受け継がれる限り、その特権が失われることはない。」

陛下は離れた場所へ歩いていき、物思いにふけった。ヘンドンは食卓の椅子へ腰を落とし、心の中で言った。「見事な思いつきだった。おかげで大いに救われたぞ。脚がひどく疲れている。これを思いつかなかったら、哀れな少年の正気が戻るまで、何週間も立ち続けねばならなかった。」

少しして、さらに考えた。「こうして俺は、夢と影の王国の騎士になったわけか! 俺のような現実一筋の男には、まことに奇妙で不思議な立場だ。笑うまい――いや、神にかけて笑ってはならん。俺には実体のないことでも、この子には〈現実〉なのだ。それにある意味では、俺にとっても偽りではない。この子の中にある優しく寛大な心を、まことに映し出しているのだから。」

しばらくして考えた。「ああ、人前で立派な称号を使って俺を呼んだらどうなる! 俺の栄光と、この服装との対比は愉快だろうな! だが構わん。この子が喜ぶなら、好きなように呼ばせよう。それで俺は満足だ。」


第十三章 王子の失踪

やがて二人の仲間は、激しい眠気に襲われた。国王が言った――

「このぼろを脱がせよ」――自分の服のことだった。

ヘンドンは反対も質問もせず少年の服を脱がせ、寝台へ入れて布団をかけた。それから部屋を見回し、悲しげに独りごちた。「また前と同じく、俺の寝台を取られたぞ――やれやれ、〈俺〉はどうすればいいのだ?」

幼い国王はその困惑に気づき、一言で解決してやった。眠そうに言った――

「そなたは扉を横切るように寝て、見張るがよい。」

次の瞬間には、あらゆる悩みから解き放たれ、深く眠り込んでいた。

「まったく、この子は国王に生まれるべきだった!」とヘンドンは感心して呟いた。「見事なまでに役を演じる。」

それから満足そうに言いながら、床の上で扉を横切るように体を伸ばした――

「七年間、もっとひどい場所で寝てきた。この程度に不平を言っては、天におわす御方へ恩知らずというものだ。」

夜が明けるころ、ヘンドンも眠りに落ちた。正午近くに起きると、意識のない庇護相手から掛け物を少しずつめくり、紐を使って寸法を測った。ちょうど測り終えたところで国王が目を覚まし、寒いと文句を言い、何をしているのか尋ねた。

「もう終わりました、陛下」とヘンドンは言った。「少々、外に用事がございますが、すぐに戻ります。もう一度お休みください――眠りが必要です。さあ、頭も覆って差し上げましょう――そのほうが早く暖まります。」

この言葉が終わらぬうちに、国王は夢の国へ戻っていた。マイルズは静かに外へ出て、三、四十分ほどして、同じように静かに戻ってきた。安物で使用の跡もあるが、小ぎれいで季節に合った、少年用の古着一式を携えていた。椅子に座って買った品を調べながら、独りごちた――

「財布にもっと余裕があれば、もっと上等なものを買えたのだが、長い財布を持たぬ者は、短い財布でできることに満足せねばならん――

「『ある町に女がいた、

その町に住んでいた――』

「動いたようだ――もっと静かな声で歌わねば。これから旅が待っているうえ、哀れな子はあれほど疲れている。眠りを邪魔してはいかん……この服は――まあ悪くない。ここに一針、あそこにもう一針縫えば、ちゃんとなる。もう一つはもっといいが、こちらも一、二針縫って損はない……

〈これは〉とても丈夫で上等だ。小さな足を暖かく乾いたままにしてくれるだろう――おそらくこの子には、珍しい経験だろうな。冬も夏も、ずっと裸足で歩くのに慣れていたに違いない……糸がパンならよかったのに。わずか一ファージングで一年分が買え、こんな立派な大針まで、好意だけで無料でもらえるのだから。さて、糸を通すのに悪魔のような苦労をするぞ!」

そして実際、そのとおりになった。太古から男がしてきたように、そしておそらく世の終わりまでし続けるであろうように、針を動かさず、糸のほうを針穴へ押し込もうとした。これは女のやり方とは正反対である。何度やっても糸は狙いを外し、針の右へ行ったり、左へ行ったり、針の軸へ当たって折れ曲がったりした。だが兵士時代にも同じ経験をしていたので、辛抱強く続けた。ついに成功すると、その間ずっと膝の上で待っていた服を取り、仕事を始めた。

「宿代は支払い済み――これから来る朝食代も含まれている――それに驢馬を二頭買い、ヘンドン・ホールで待つ豊かさへ着くまでの二、三日のわずかな費用を賄うだけは残っている――

「『女は夫を愛して――』

「なんてことだ! 針を爪の下へ突き刺した! ……大したことではない――初めてでもない――だが便利なものでもないな……向こうへ着けば楽しくなるぞ、坊や、疑うな! お前の苦労も、悲しい病も、そこで消える――

「『女は夫を心から愛したが、

別の男を――』

「実に立派で大きな縫い目だ!」――服を持ち上げ、感心しながら眺めた――「壮大で威厳があり、仕立屋のけち臭い小さな縫い目など、ひどく卑小で下賤に見える――

「『女は夫を心から愛したが、

別の男が女を愛した――』

「よし、できた――見事な仕事だ。しかも素早く仕上げた。さあ、この子を起こし、服を着せ、水を注ぎ、食べさせ、それからサザークのタバード・イン近くの市場へ向かうとしよう。――お目覚めください、陛下! ――返事がない――おおい、陛下! ――まったく、言葉では届かぬほど深く眠っているなら、その神聖なお体へ触れる無礼を働くしかない。何だと!」

掛け物を跳ねのけた――少年はいなかった! 

ヘンドンはしばらく、声も出せずに辺りを見回した。そして初めて、庇護していた少年のぼろ服までなくなっていることに気づいた。たちまち怒鳴り散らし、宿の主人を呼べと叫んだ。そのとき、召使いが朝食を持って入ってきた。

「説明しろ、悪魔の手先め。さもなくば命はないぞ!」と戦士は吠え、あまりに獰猛な勢いで給仕へ飛びかかったため、男は恐怖と驚きで、しばらく言葉が出なかった。「少年はどこだ?」

男は震えながら、途切れ途切れに求められた情報を話した。

「旦那様がここを出られて間もなく、若者が一人駆けてきて、橋のサザーク側の端まで、少年をすぐ旦那様のところへ寄こすようにとのご命令だと申しました。そこで若者をこちらへお通ししました。若者が少年を起こして伝言を伝えると、少年は『こんなに早く』起こされたことに少し文句を言いましたが、すぐにぼろを身につけて一緒に出ていきました。ただ、旦那様が見知らぬ者を寄こさず、ご自分で来るのが礼儀だった、と申して――それで――」

「それで、お前は馬鹿だ! 馬鹿で、簡単に騙されたのだ――お前のような連中はみな首を吊れ! だが、まだ危害を加えられたとは限らん。少年に悪意が向けられていない可能性もある。俺が連れ戻してくる。食卓の支度をしておけ。待て! 寝台の掛け物は、まるで誰かが下に寝ているように整えられていた――偶然そうなったのか?」

「わかりません、旦那様。若者が掛け物をいじっているのは見ました――少年を迎えに来た者です。」

「千回死にさらせ! 俺を欺くためにやったのだ――時間を稼ぐためなのは明白だ。よく聞け! その若者は一人だったか?」

「まったくの一人でございました、旦那様。」

「確かか?」

「確かです、旦那様。」

「散らばった頭を拾い集めろ――よく思い出せ――時間をかけていい。」

しばらく考えてから、召使いは言った――

「来たときには誰も連れていませんでした。しかし今、思い出しました。二人が橋の人混みへ入ったとき、ならず者風の男が近くのどこかから飛び出してきました。そして二人へ合流しようとした、ちょうどそのとき――」

「そのとき〈どうした〉? ――早く言え!」と、いらだったヘンドンが遮り、雷のように怒鳴った。

「ちょうどそのとき、群衆が三人を呑み込んで取り囲み、そのあとは見えませんでした。主人に呼ばれたもので。書記が注文した肉の塊を忘れたと言って、ひどく怒っていたのです。ですが、あの失敗で〈私を〉責めるのは、生まれてもいない赤ん坊を、犯してもいない罪で裁くようなものだと、すべての聖人に誓って――」

「失せろ、馬鹿め! お前の無駄話を聞くと頭がおかしくなる! 待て! どこへ逃げる? 一瞬もじっとしていられんのか? 三人はサザークのほうへ行ったのか?」

「そのとおりです、旦那様――先ほど申し上げましたように、あの忌まわしい肉の塊については、生まれていない赤ん坊も私と同じくらい何の罪も――」

「まだ〈いた〉のか! しかもまだしゃべっている! 失せろ。さもなくば絞め殺すぞ!」

召使いは消えた。ヘンドンもあとへ続き、召使いを追い越すと、一度に二段ずつ踏み越えて階段を駆け下りた。そして呟いた。「あの子を息子だと言い張っていた、卑劣な悪党の仕業だ。お前を失ってしまった、哀れな小さな狂ったご主人様――つらいことだ――あれほど好きになっていたのに! いや! 聖書と鐘にかけて、〈失ってなどいない〉! 見つけ出すまで国中をくまなく捜してやる。哀れな子よ、あそこにはあの子の朝食がある――俺の分もだ。だが今は食欲などない。鼠にくれてやれ――急げ、急げ! それだけだ!」

橋上の騒々しい群衆を素早く縫って進む間、ヘンドンは何度も独りごちた――特に心を喜ばせる考えであるかのように、しがみつきながら――「文句を言ったが、〈ついていった〉――そうだ、マイルズ・ヘンドンに呼ばれたと思ったから、ついていったのだ。愛しい子よ――ほかの者のためなら決して行かなかったはずだ。俺にはよくわかる。」


第十四章 「国王は崩御された――国王万歳。」

同じ朝の夜明け近く、トム・キャンティは深い眠りから身じろぎし、暗闇の中で目を開けた。しばらく黙って横になり、混乱した考えや印象を整理し、そこから何らかの意味をつかもうとした。やがて突然、歓喜にあふれながらも声を抑えて叫んだ――

「わかった、全部わかったぞ! 神様、ありがとうございます。僕は本当に、ようやく目を覚ましたんだ! 喜びよ来い! 悲しみよ消えろ! おーい、ナン! ベット! 藁を蹴飛ばして、こっちへおいで。夜の精霊が人の魂を仰天させようと作り出した夢の中でも、いちばん途方もなく、でたらめな夢を、信じようとしないお前たちの耳へ聞かせてやる! ……おーい、ナン! ベット!」

ぼんやりした人影が傍らに現れ、声が言った――

「ご命令を賜ってもよろしいでしょうか?」

「命令? ……ああ、なんてことだ、その声を知ってるぞ! 言ってくれ――僕は誰なんだ?」

「陛下でございますか? まことに昨夜まではウェールズ公殿下であらせられましたが、今日からは我が慈悲深き御主君、イングランド国王エドワード陛下でございます。」

トムは枕へ顔を埋め、悲しげに呟いた――

「ああ、夢じゃなかった! もう休んでいいよ、優しい方――僕を一人で悲しませておくれ。」

トムは再び眠り、しばらくすると、こんな心地よい夢を見た。季節は夏で、自分はグッドマンズ・フィールズと呼ばれる美しい草地で、一人遊んでいた。すると、身長わずか一フィート(約三十センチメートル)で、長い赤髭を生やし、背中に瘤のある小人が突然現れ、「あの切り株のそばを掘れ」と言った。

言われたとおりにすると、ぴかぴかの新しい一ペニー銅貨が十二枚見つかった――夢のような大金だ! だが一番すばらしいのは、そこではなかった。小人が言った――

「お前を知っているぞ。お前は善良で、褒美を受けるに値する少年だ。苦しみはもう終わる。報われる日が来たのだ。七日ごとにここを掘れば、いつも同じ宝――ぴかぴかの新しい一ペニー銅貨十二枚――が見つかる。誰にも言うな――秘密にしておけ。」

小人は姿を消し、トムは宝を手にオファル・コートへ飛んで帰った。心の中で言った。「毎晩、父さんに一ペニー渡そう。物乞いでもらったと思って喜ぶだろうし、もう殴られずに済む。僕に教えてくれる親切な神父様には、毎週一ペニー。残りの四ペンスは母さんとナンとベットにあげよう。もう飢えも、ぼろも、恐怖も、心配も、ひどい仕打ちもおしまいだ。」

夢の中で、トムは息を切らして汚い家へ着いた。だが目は感謝と興奮で輝いていた。四枚の銅貨を母親の膝へ投げ、叫んだ――

「母さんにあげる! ――全部、一枚残らず! ――母さんとナンとベットの分だよ――ちゃんと手に入れたお金で、物乞いでも盗んだものでもないんだ!」

幸福と驚きに満ちた母親は、トムを胸へ強く抱き締め、叫んだ――

「お時間でございます――陛下、お目覚めくださいませ。」

ああ! 期待していた返事ではなかった。夢がぷつりと断ち切られた――目が覚めたのだ。

目を開くと、豪華な衣装をまとった首席寝室侍従が、寝台のそばにひざまずいていた。偽りの夢がもたらした喜びは消え去った――哀れな少年は、自分が今なお囚人であり、国王でもあるのだと思い出した。部屋は、喪の色である紫の外套をまとった廷臣たちと、国王に仕える高貴な従者たちで満ちていた。トムは寝台で身を起こし、重い絹の垂れ幕の間から、この華やかな一団を眺めた。

衣服を着せるという重大な仕事が始まった。着替えが進む間、廷臣が一人ずつひざまずいて敬意を表し、幼い国王が被った大きな喪失に悔やみの言葉を述べた。まず当番の主馬頭がシャツを取り上げ、首席鹿犬管理長へ渡した。首席鹿犬管理長は第二寝室侍従へ、第二寝室侍従はウィンザー森林長へ、森林長は第三便器係侍従へ、第三便器係侍従はランカスター公領王室大法官へ、王室大法官は衣装長へ、衣装長はノロイ紋章院長へ、紋章院長はロンドン塔長官へ、塔長官は王室家政長官へ、家政長官は世襲式布奉仕長へ、式布奉仕長はイングランド海軍卿へ、海軍卿はカンタベリー大主教へ、大主教は首席寝室侍従へ渡した。そして首席寝室侍従が、残っていたシャツをトムに着せた。哀れな幼い少年は驚きながら、火事場で手桶を次々に手渡す様子を思い出した。

衣服は一枚ごとに、このゆっくりした厳粛な手続きを経なければならなかった。そのためトムは儀式にすっかり疲れ果てた。ついに絹の長靴下が列を下って旅を始め、終わりが近いとわかったときには、感謝が噴き出しそうなほどだった。しかし喜ぶのが早すぎた。首席寝室侍従は靴下を受け取り、トムの脚に履かせようとした。ところが突然、顔を真っ赤にし、驚愕の表情で靴下をカンタベリー大主教の手へ急いで押し戻した。そして靴下に関係する何かを指し、囁いた。「ご覧ください、猊下!」大主教は青ざめ、次いで赤くなり、靴下を海軍卿へ渡して囁いた。「ご覧ください、閣下!」

海軍卿は世襲式布奉仕長へ靴下を渡し、「ご覧ください、閣下!」と声を絞り出すだけで息も尽きそうだった。

靴下は列を逆に流れ、王室家政長官、ロンドン塔長官、ノロイ紋章院長、衣装長、ランカスター公領王室大法官、第三便器係侍従、ウィンザー森林長、第二寝室侍従、首席鹿犬管理長へ渡っていった。その間ずっと、驚愕と恐怖に満ちた「ご覧を! ご覧を!」という声が添えられていた。ついに当番の主馬頭の手へ戻ると、主馬頭は一同を震撼させたものを、青ざめた顔でしばらく見つめ、しわがれ声で囁いた。「なんということだ、靴下留め紐の金具が一つ取れている! ――国王靴下管理長をロンドン塔へ送れ!」そう言ったあと、失われた力を取り戻すため、首席鹿犬管理長の肩へもたれた。一方、傷んだ紐のない新しい靴下が運ばれてきた。

しかし何事にも終わりはある。やがてトム・キャンティは、寝台から出られる状態になった。しかるべき役人が水を注ぎ、しかるべき役人が洗顔を取り仕切り、しかるべき役人が手拭いを持って待機した。そしてほどなくトムは無事に清めの段階を終え、王室理髪師の奉仕を受ける用意が整った。ようやくその達人の手から解放されたとき、紫の繻子の外套と半ズボン、紫の羽根飾りのついた帽子を身につけたトムは、気品に満ち、少女のように愛らしい姿となっていた。今度は宮廷人の群れの間を威儀正しく進み、朝食の間へ向かった。トムが通ると、人々は後ろへ下がって道を開け、ひざまずいた。

朝食後、トムは王者の儀礼をもって玉座の間へ案内された。大官たちと、金箔を施した戦斧を持つ五十人の近衛紳士隊が付き従った。そこで国務の処理に取りかかった。「叔父」のハートフォード卿が、賢明な助言で国王の頭脳を助けるべく、玉座のそばに立った。

亡き国王が遺言執行人に指名した高名な人々が現れ、自分たちの行為の一部についてトムの承認を求めた。それは形式的な手続きではあったが、まだ護国卿が任命されていなかったため、完全な形式だけでもなかった。カンタベリー大主教は、亡き偉大なる国王陛下の葬儀について、遺言執行評議会が下した決定を報告した。そして最後に、執行人たちの署名を読み上げた。すなわち、カンタベリー大主教、イングランド大法官、ウィリアム・セント・ジョン卿、ジョン・ラッセル卿、エドワード・ハートフォード伯、ジョン・ライル子爵、カスバート・ダラム司教――

トムは聞いていなかった――文書の少し前の条項が気になっていたのだ。ここで振り向き、ハートフォード卿へ囁いた――

「葬儀は何日に決まったと言った?」

「来月十六日でございます、陛下。」

「妙な愚行だ。それまで持つのか?」

哀れな少年は、まだ王室の慣習に不慣れだった。オファル・コートの身寄りなき死者なら、まったく異なる素早さで片づけられるのを見慣れていたのだ。だがハートフォード卿が二、三言説明し、心配を取り除いた。

国務秘書官が、外国大使の謁見を明日の十一時に定める評議会命令を提出し、国王の同意を求めた。

トムは問いかけるような眼差しをハートフォードへ向けた。卿は囁いた――

「陛下は御同意をお示しください。大使たちは、それぞれの君主が、陛下とイングランド王国を襲った重大な不幸を深く悼んでいると申し上げに参ります。」

トムは言われたとおりにした。別の秘書官が、亡き国王の王室経費についての前文を読み始めた。過去六か月で二万八千ポンドに達していた――あまりの巨額にトム・キャンティは息を呑んだ。そのうち二万ポンドがまだ未払いだと聞くと、もう一度息を呑んだ。さらに国王の金庫がほぼ空で、千二百人の召使いが、払われるべき賃金を受け取れず大いに困窮していると知り、またも息を呑んだ。トムは切実な不安を抱き、声を上げた――

「このままでは破滅するのは明らかだ。もっと小さな家へ移り、召使いたちは解雇するのが適切で必要だと思う。あの者たちは物事を遅らせ、心を悩ませ、魂に恥じるような仕事で人を煩わせる以外、何の役にも立たぬ。あのようなことは、自分を助ける頭も手も持たない人形にしかふさわしくない。ビリングズゲートの魚市場の向かいに、小さな家があったのを覚えている――」

ハートフォードがトムの腕を鋭く押したため、愚かな舌は止まり、顔が赤くなった。だが居並ぶ者の顔には、この奇妙な発言に気づいた、あるいは懸念を抱いたことを示す表情は、一切浮かばなかった。

秘書官が報告した。亡き国王は遺言により、ハートフォード伯へ公爵位を授け、その弟サー・トマス・シーモアを貴族へ列し、さらにハートフォードの息子へ伯爵位を与え、王室に仕えたほかの重臣たちも同様に昇格させるよう定めていた。それゆえ評議会は、これらの栄誉を授与し確定する会合を二月十六日に開くことを決議した。また亡き国王は、その地位を維持するのにふさわしい領地を文書で授与していなかったため、評議会はこの件に関する国王の内意を知る者として、現国王陛下の御承認が得られるなら、シーモアには「年五百ポンドの収入を生む領地」を、ハートフォードの息子には「年八百ポンドの領地、および次に空位となる司教領から年三百ポンド分」を与えるのが適切と考えた。

トムは、これほどの金を浪費する前に、まず亡き国王の借金を払うのが筋ではないかと口走りかけた。だが思慮深いハートフォードが頃合いよく腕へ触れ、その軽率な発言を防いだ。そのためトムは言葉では何も述べず、胸中に大きな不満を抱きながらも、国王の承認を与えた。自分が奇妙で華やかな奇跡を、いとも簡単に起こしていることについてしばし考えていると、すばらしい考えがひらめいた。母親をオファル・コート公爵夫人にして、領地を与えてはどうだろう? しかし悲しい考えが、たちまちその思いつきを押し流した。自分は名ばかりの国王で、この重々しい老練な者たちや大貴族こそ主人なのだ。彼らにとって母親は、病んだ心が作り出した存在にすぎない。この計画を話しても、信じようとしない耳で聞き、医者を呼ぶだけだろう。

退屈な仕事が、うんざりするほど続いた。請願書、布告、特許状、そのほか国務に関する冗長で、同じことを繰り返す、あらゆる退屈な書類が読み上げられた。ついにトムは哀れっぽくため息をつき、独りごちた。「僕が何をしたというんだろう。善良な神様は、なぜ僕を野原と自由な空気と日の光から連れ去り、ここへ閉じ込め、国王にして、こんなに苦しめるんだ?」

やがて混乱した哀れな頭が何度か揺れ、ほどなく肩へ垂れた。そして国家の仕事は、承認権という尊厳ある要素を失い、停止した。眠る子供の周囲に静寂が訪れ、王国の賢人たちは審議を中断した。

午前中、トムは監督役のハートフォード卿とセント・ジョン卿の許しを得て、レディ・エリザベスと幼いレディ・ジェーン・グレイとともに、楽しい一時間を過ごした。もっとも王家を襲った大きな打撃のため、王女たちの気分はいくぶん沈んでいた。訪問の終わりには、「姉」――のちに歴史上「血まみれのメアリー」と呼ばれる人物――との厳粛な面談で、トムは背筋を寒くさせられた。その面談には、トムの目から見て、短いというただ一つの長所しかなかった。それからしばらく一人で過ごしたあと、十二歳ほどの細身の少年が御前へ通された。雪のように白い襞襟と手首のレースを除けば、胴着も靴下もすべて黒かった。喪を示すものは、肩に結ばれた紫のリボンだけだった。少年は頭を下げ、帽子を脱いだまま、ためらいがちに進み、トムの前で片ひざをついた。トムは黙って、しばらく真面目な顔で少年を眺めた。それから言った――

「立て、少年。そなたは何者だ。何を望む?」

少年は立ち上がり、優雅で自然な姿勢を取ったが、顔には心配そうな色が浮かんでいた。彼は言った――

「まさか私をお忘れではありますまい、殿下。私は殿下の身代わり鞭打ち役でございます。」

「〈身代わり鞭打ち〉役?」

「さようでございます、陛下。私はハンフリー――ハンフリー・マーロウです。」

トムは、監督役たちがこの者についても、あらかじめ教えておくべきだったと気づいた。厄介な状況だった。どうすればいい? ――この少年を知っているふりをしながら、一言話すごとに、これまで聞いたこともないと自ら暴露するのか? いや、それではいけない。救いとなる考えが浮かんだ。遺言執行評議会の一員であるハートフォードとセント・ジョンは、急な公務でたびたびそばを離れるだろうから、今後も同じような事故が頻繁に起こるかもしれない。ならば、そうした緊急事態へ対処する方法を、自分で考えておくのがよいだろう。そうだ、それが賢明だ――この少年を相手に練習し、どの程度うまくできるか試してみよう。そこで困惑したように一、二度額を撫で、やがて言った――

「今、少し思い出せそうな気がする――だが苦しみのせいで、頭の働きが鈍り、記憶も霞んでいる――」

「ああ、かわいそうな殿下!」と身代わり鞭打ち役は、心を込めて叫んだ。さらに心の中で付け加えた。「本当に聞いていたとおりだ――正気を失われたのだ――ああ、おかわいそうに! いけない、何を忘れているんだ! 何かがおかしいと気づいた素振りを見せてはならないと言われていた。」

「近ごろ私の記憶は、奇妙なほど私を弄ぶ」とトムは言った。「だが気にするな――急速に回復している――わずかな手がかりだけで、忘れていた出来事や名前を思い出せることも多い。(しかも実のところ、それだけではない。これまで聞いたこともないものまで思い出せる――この少年もすぐ知るだろう。)用件を申せ。」

「大したことではございません、陛下。それでもお許しくださるなら、申し上げます。一昨日の朝のお稽古で、陛下はギリシャ語を三度お間違えになりました――覚えておいでですか?」

「う、うむ――覚えていると思う。(これはそれほど大きな嘘じゃない――もし僕がギリシャ語なんかを習ったら、三度どころか四十回は間違えるだろう。)うむ、今、思い出した――続けよ。」

「教師は、あまりに怠惰で愚かな出来だと腹を立て、私をひどく鞭打つと約束いたしました――それで――」

「〈そなた〉を鞭打つ?」とトムは驚き、うっかり役目を忘れて言った。「なぜ私の間違いで〈そなた〉が鞭打たれる?」

「ああ、陛下、またお忘れです。陛下がお稽古で失敗なさると、いつも私が鞭打たれます。」

「そうだった、そうだった――忘れていた。そなたが内々に私を教える――だから私が失敗すれば、教師はそなたが職務を怠ったと考え、それで――」

「ああ、陛下、何をおっしゃいます! 陛下の最も卑しい僕である私が、〈陛下〉をお教えするなどと?」

「ならば、そなたに何の責任がある? 何という謎だ? 本当に私が狂っているのか、それともそなたか? 説明せよ――はっきり申せ。」

「ですが、慈悲深き陛下、説明するまでもないことでございます。ウェールズ公殿下の神聖なお体を、打擲することは誰にも許されません。ゆえに殿下がお間違えになれば、私が代わりに鞭を受けるのでございます。それが私の務めであり、生計でもありますから、当然かつ正しいことです。」

トムは落ち着いた少年を見つめ、心の中で言った。「何て不思議なことだ――本当に変わった、妙な商売だ。どうして僕の代わりに髪を梳かされ、服を着せられる少年も雇わなかったんだろう――雇ってくれたら、どんなにいいか! ――もしそうしてくれるなら、鞭は自分で受けることにして、その交換を神様に感謝するのに。」

それから声に出して言った――

「それで、かわいそうな友よ、約束どおり鞭打たれたのか?」

「いいえ、慈悲深き陛下。罰は本日に予定されておりましたが、我らを襲った喪の時節にはふさわしくないとして、取り消されるかもしれません。ですが私にはわかりませんので、思い切ってこちらへ参り、私のために口添えしてくださるという、陛下の慈悲深いお約束をお思い出しいただこうと――」

「教師にか? そなたを鞭から救うために?」

「ああ、お思い出しになったのですね!」

「見てのとおり、記憶は回復している。安心せよ――そなたの背は傷一つ負わせぬ――私が取り計らう。」

「ああ、ありがとうございます、慈悲深き陛下!」と少年は叫び、再び片ひざをついた。「これ以上は出過ぎた願いかもしれません。ですが――」

ハンフリー少年がためらうのを見て、トムは「今は願いをかなえたい気分だ」と言い、続きを促した。

「では、胸に重くのしかかっておりますので、申し上げます。陛下はもはやウェールズ公ではなく国王であらせられます。何事も御心のままに命じられ、誰も否とは申しません。ゆえに、今後も退屈な勉強で御身を悩ませるとは思えません。書物を焼き、もっと面倒でないことへ心を向けられるでしょう。そうなれば、私は破滅し、身寄りのない姉妹たちも道連れになります!」

「破滅? どうしてだ?」

「私の背中が私のパンなのでございます、慈悲深き陛下! 背中が働かなければ飢えてしまいます。陛下が勉強をおやめになれば、私の職はなくなります――身代わり鞭打ち役が必要なくなるからです。どうか私をお払い箱になさらないでください!」

トムはこの哀れな苦悩に心を打たれた。そしてまことに王者らしい寛大さを爆発させ、言った――

「もう心を悩ませるな、少年。そなたとそなたの家系が、その職を永遠に世襲することを認める。」

それから剣の平で少年の肩を軽く打ち、叫んだ。「立て、ハンフリー・マーロウ、イングランド王家世襲身代わり鞭打ち長! 悲しみを捨てよ――私はまた勉学に励み、教師が正義に従ってそなたの俸給を三倍にせねばならぬほど、ひどい成績を取ってやる。そなたの職務を大いに増やすためだ。」

感激したハンフリーは、熱烈に答えた――

「ありがとうございます、気高き陛下。この王者のような気前よさは、財を得るという私の最も突飛な夢さえ、はるかに上回ります。これで私は一生幸福に暮らし、私のあとのマーロウ家も代々幸福に暮らせます。」

トムには、この少年が役立つ存在だと気づくだけの知恵があった。そこでハンフリーに話を続けさせたが、少年もまったく嫌がらなかった。自分がトムの「治療」を助けていると信じ、大いに喜んでいた。王室の学習室や宮殿の各所で、トムが経験したさまざまな出来事や冒険の詳細を、病んだ心へ呼び戻してやるたび、その直後にはトムが事情をはっきり「思い出せる」ようになるのに気づいたからだ。一時間が終わるころ、トムの頭には、宮廷に関係する人物や事柄について、非常に有益な情報がたっぷりと詰め込まれていた。そのため今後は毎日、この情報源から教えを引き出そうと決めた。その目的のため、イングランド国王が他の者と会っているときでない限り、ハンフリーが来ればいつでも国王の私室へ通すよう命じるつもりだった。ハンフリーが退出して間もなく、ハートフォード卿がトムへさらなる厄介事を運んできた。

卿によれば、評議会の諸卿は、国王の損なわれた健康について大げさな報告が漏れ、世間に広まった可能性を恐れていた。そこで一、二日後から、陛下が人前で食事を始めるのが賢明かつ最善だと考えたのだという。陛下の健やかな顔色と力強い足取りに、慎重に保たれた落ち着きと、自然で優雅な身のこなしが加われば、仮に悪い噂が〈広まっていた〉としても、ほかのどの策より確実に、民衆の動揺を鎮められるだろうということだった。

それから伯爵は、トムがすでに知っていることを「思い出させる」という、いささか見え透いた口実のもと、厳かな場にふさわしい作法を極めて慎重に教え始めた。ところが伯爵を大いに喜ばせたことに、この方面ではトムにほとんど助けが要らないとわかった。トムはすでにハンフリーを活用していたのだ。宮廷を翼のように素早く飛び交う噂から、数日中に国王が人前で食事を始めると聞いていたハンフリーが、その話をしていたのである。もっともトムは、その事実を胸に秘めていた。

国王の記憶が大幅に改善したのを見て、伯爵はどこまで回復したか確かめようと、何気ないふうを装っていくつか試験をしてみた。ところどころ――ハンフリーの足跡が残っているところ――では、よい結果が得られた。全体として伯爵は大いに満足し、勇気づけられた。実際、あまりに勇気づけられたため、かなり希望に満ちた声で言った――

「今や私は、陛下がもう少しだけ記憶をおたどりになれば、国璽こくじの謎も解けると確信しております。昨日には重大な紛失でございましたが、亡き御主君の御命とともに役目を終えたため、本日にはもはや重要ではございません。陛下、お試しくださいますでしょうか?」

トムは途方に暮れた。国璽など、まったく知らないものだった。しばらくためらったあと、無邪気に顔を上げ、尋ねた――

「それは、どんな物だったのだ?」

伯爵はほとんどわからないほど、かすかに身を震わせた。「ああ、またご正気が飛び去ってしまった! ――無理に思い出させようとしたのは、賢明でなかった」と独りごちた。それから手際よく話題をほかの事柄へ変え、不運な国璽をトムの頭から追い出そうとした。その目的は、たやすく達せられた。


第十五章 国王になったトム

翌日、外国の大使たちが華麗な随行団を引き連れて参内し、トムは威厳に満ちた玉座から彼らを迎えた。はじめのうちこそ、その絢爛たる光景に目を奪われ、想像力をかき立てられたものの、謁見は長く退屈で、大使たちの口上もたいてい同じようなものだった。こうして、喜びとして始まった儀式も、やがては倦怠と里心に変わっていった。トムは折々ハートフォード卿に教えられたとおりの言葉を口にし、立派に務めを果たそうと懸命に努力したが、何もかもが初めてで、気持ちも落ち着かなかったため、どうにか及第点を取るのが精いっぱいだった。見た目こそ立派な国王だったが、国王らしい気分になることは到底できなかった。儀式が終わると、心底ほっとした。

その日の大半は、心の中で本人が「無駄」と呼んでいた、国王としての務めに費やされた。王子らしい遊戯や気晴らしにあてられた二時間さえ、細かな規則と仰々しい作法に縛られていたので、楽しみというより苦役だった。ただし、身代わりに鞭打たれる少年と二人きりで過ごした一時間だけは、まぎれもない収穫だった。楽しませてもらえたうえ、必要な知識まで仕入れられたからである。

トム・キャンティが国王となって三日目も、前の二日とほとんど同じように過ぎていった。ただ一つ、心を覆う雲が晴れはじめたことがあった。初めほど居心地の悪さを感じなくなったのだ。置かれた境遇や周囲の環境に少しずつ慣れてきていた。鎖は相変わらず肌を擦ったが、四六時中というわけではない。身分ある人々がそばに控え、敬意を捧げることにも、時が経つにつれて苦痛や気詰まりを覚えなくなっていった。

ただ一つの恐れさえなければ、四日目が来るのをさほど苦にせず迎えられただろう。その恐れとは、公開の場で食事をすることだった。その日から始まるのである。予定には、もっと重大な行事もあった。その日は会議を主宰し、広い世界の各地に散らばる諸外国に対して、いかなる政策を取るべきか、意見と命令を求められることになっていた。また、ハートフォード卿が正式に護国卿の大任へ選ばれる日でもあった。そのほかにも注目すべき行事がいくつも予定されていた。しかしトムにとっては、好奇心に満ちた無数の目に見つめられ、無数の口から一挙一動について――運悪く失敗すれば、その失敗についても――ひそひそ評されながら、たった一人で食事をする試練に比べれば、どれも取るに足らないことだった。

とはいえ、四日目の訪れを止められる者はいない。とうとうその日はやって来た。哀れなトムは気落ちし、上の空だった。その気分はいつまでも消えなかった。午前中の決まりきった務めはなかなか片づかず、ひどく彼を疲れさせた。ふたたび、囚われの身であるという思いが重くのしかかった。

昼近く、トムは広い謁見の間でハートフォード伯と話しながら、大勢の高官や廷臣たちが儀礼のために参上する時刻が告げられるのを、ぼんやりと待っていた。

しばらくして窓辺へ歩み寄ったトムは、宮殿の門外を走る大通りの活気と人の流れに目を奪われた。単なる暇つぶしの興味ではない。その喧騒と自由のただ中へ、自分も飛び込んでいきたいと心の底から願っていたのである。やがて道の向こうから、身分も暮らしも最下層の、ならず者めいた男や女や子供たちが、わめき声をあげながら群れをなして近づいてくるのが見えた。

「いったい何の騒ぎなのか、知りたいものだ!」

こうした出来事に対する少年らしい好奇心をむき出しにして、トムは叫んだ。

「陛下は国王であらせられます!」

伯爵はうやうやしく一礼し、厳かに答えた。

「お許しをいただければ、ただちに調べさせますが?」

「もちろんだ、喜んで! すぐに頼む!」

トムは興奮して叫び、胸の中で嬉しそうに付け加えた。

「なるほど、国王でいるのも退屈なことばかりではない。埋め合わせになる楽しみや便利なこともあるのだな。」

伯爵は小姓を呼び、近衛隊長へ次の命令を伝えさせた――

「群衆を止め、何ゆえ集まり進んでいるのかを調べよ。国王陛下のご命令である!」

数秒後、きらめく鋼鉄の鎧に身を包んだ近衛兵の長い列が門から進み出て、群衆の前で大通りを塞ぐように並んだ。やがて使者が戻り、群衆は男一人、女一人、少女一人を追っているのだと報告した。三人は王国の平和と威信を損なう罪を犯し、処刑場へ引かれていくところだという。

死――しかも暴力による死が、この不幸な者たちを待っている! その思いがトムの胸を締めつけた。憐れみの心がほかの一切を押しのけ、彼を支配した。破られた法律のことも、三人の罪人が被害者に与えた悲しみや損害のことも、少しも頭に浮かばなかった。考えられるのは、処刑台と、死刑囚たちの頭上に迫る恐ろしい運命だけだった。心配のあまり、自分が国王の実体ではなく、偽りの影にすぎないことさえ一瞬忘れ、気づいたときには命令を口走っていた――

「ここへ連れてまいれ!」

たちまち顔を真っ赤にし、弁解の言葉が口元まで出かかった。しかし、その命令を聞いても伯爵や控えていた小姓が少しも驚かなかったので、言いかけた言葉を呑み込んだ。小姓はごく当たり前の命令を受けたように深々と頭を下げ、後ろ向きに退出して命令を伝えにいった。トムの胸には誇らしさが湧き、王位には不自由を埋め合わせるだけの利点もあるのだという思いを新たにした。心の中でこう言った。

「まったく、昔アンドリュー神父の物語を読み、自分が王子になったつもりでいたときの気分と同じだ。『これをせよ、あれをせよ』と万人に法と命令を下し、誰一人としてわたしの意志を妨げようとはしない。」

そのとき扉が開き、仰々しい肩書が次々と読み上げられ、その持ち主たちが入ってきた。たちまち広間の半分が、貴人と華やかな衣装で埋まった。だがトムは興奮しきり、もっと興味深い別の一件に夢中だったので、彼らがいることにもほとんど気づかなかった。心ここにあらずといった様子で玉座に腰を下ろし、待ちきれないという表情で扉を見つめた。それを見た一同は邪魔をしないようにし、公務の話と宮廷の噂話を織り交ぜながら、互いに談笑しはじめた。

ほどなく、規則正しい兵士たちの足音が近づき、罪人たちが王の近衛兵に護衛され、州長官代理に連れられて御前へ入ってきた。役人はトムの前にひざまずいてから脇へ退いた。死刑を宣告された三人もひざまずき、そのまま頭を垂れていた。近衛兵はトムの椅子の背後に並んだ。トムは興味深そうに罪人たちを見回した。男の服装か顔つきのどこかが、かすかな記憶を呼び起こしたのである。「この男には以前会ったような気がする……だが、いつどこでだったか思い出せぬ」――そう考えていると、男が一瞬だけ顔を上げ、すぐにまた伏せた。恐ろしい王威を正面から仰ぎ見ることに耐えられなかったのだ。だが、その一瞥だけでトムには十分だった。心の中で言った。「そうか、分かったぞ。この男は、風が強く凍えるように寒かった元日の朝、ジャイルズ・ウィットをテムズ川から引き上げて命を救った旅人だ。勇敢で立派な行いだった。それなのに、その後は卑しいことに手を染め、こんな惨めな境遇に落ちたとは惜しいことだ……あの日も時刻も、よく覚えている。その一時間後、十一時の鐘が鳴ったとき、キャンティばあさんから実に見事で称賛に値するほど激しい折檻を受けたからだ。それ以前や以後に受けた折檻など、比べれば撫でたり抱いたりされたようなものだった。」

トムは女と少女をしばらく御前から退出させるよう命じ、それから州長官代理に尋ねた――

「そなた、この男の罪は何だ?」

役人はひざまずいて答えた――

「恐れながら陛下、この者は毒を用いて陛下の臣民一名の命を奪いました。」

罪人への同情も、溺れた少年を救った勇敢な男への称賛も、これには大きく揺らいだ。

「その罪は立証されたのか?」

「疑いの余地なく、陛下。」

トムはため息をついて言った――

「連れていけ。死に値する罪だ。惜しいことだ、この者は勇ましい心を持つ男だった――いや、違う、そのような人相をしている、と申したのだ!」

罪人は突然激しく両手を組み合わせ、絶望して揉み絞りながら、途切れ途切れの怯えた声で「国王」に嘆願した――

「国王陛下、滅びゆく者をお憐れみくださるなら、どうか私にもお慈悲を! 私は無実です。罪の証拠も、実のところきわめて不十分なものでした――ですが、そのことを申し上げたいのではありません。すでに判決は下され、変えることはできないでしょう。けれども、この窮地にあって、どうか一つだけお願いをお聞きください。私には耐えられぬ刑なのでございます。お慈悲を、お慈悲を、国王陛下! 王者の憐れみをもって願いをお聞き届けください――どうか、私を絞首刑にせよとお命じください!」

トムは呆然とした。予想していた願いとはまるで違う。

「何たることだ、奇妙な願いではないか! もともと絞首刑に処されるのではないのか?」

「慈悲深き陛下、違います! 私は、生きたまま煮殺されることになっております!」

その恐ろしい言葉に、トムは椅子から飛び上がりそうになった。ようやく我に返ると叫んだ――

「望みどおりにしてやれ、哀れな者よ! たとえ百人を毒殺したとしても、そのようなむごい死に方をさせてはならぬ。」

罪人は地面に額をつけ、激しい感謝の言葉をほとばしらせ、最後にこう結んだ――

「陛下が不幸に遭われることが万一にもございましたなら――神よ、どうかそのようなことをお許しなきよう! ――本日いただいたお慈悲が思い起こされ、陛下にも報われますように!」

トムはハートフォード伯へ向き直って言った――

「伯爵、この男にそれほど残酷な刑を科す根拠が、本当にあるのか?」

「毒殺者に対しては、それが法でございます。ドイツでは贋金造りを油で煮殺します。一度に投げ込むのではなく、縄で少しずつ、ゆっくりと油の中へ降ろしていくのです。まず足を、次に脚を、それから――」

「お願いだ、もうやめてくれ、伯爵。耐えられぬ!」

トムは両手で目を覆い、恐ろしい光景を頭から追い払おうとしながら叫んだ。

「どうか、この法律を改めるよう取り計らってくれ。哀れな者たちを、もう二度とあのような責め苦に遭わせてはならぬ。」

伯爵の顔には深い喜びが浮かんだ。彼は慈悲深く寛大な心を持つ人物だったが、それはこの残酷な時代の同階級にはあまり見られない性質だった。伯爵は言った――

「陛下の高貴なお言葉により、この法の命運は尽きました。歴史は王家の誉れとして、必ずやこれを記憶するでしょう。」

州長官代理は罪人を連れ去ろうとしたが、トムは待つよう合図し、それから言った――

「そなた、この一件をもう少し調べたい。この男は、罪の立証が不十分だったと申した。知っていることを話せ。」

「恐れながら陛下、裁判では、この男がイズリントンの集落にある一軒の家へ入ったことが明らかになりました。そこには病人が一人おりました。三人の証人は午前十時だったと証言し、ほかの二人は、それより数分あとだったと申しております。そのとき病人は一人きりで眠っており、ほどなくこの男は家から出て立ち去りました。病人は一時間もしないうちに、痙攣と吐き気に苦しみながら死にました。」

「毒を飲ませるところを見た者はいるのか? 毒は発見されたのか?」

「いえ、陛下、どちらもございません。」

「では、そもそも毒を飲まされたと、どうして分かるのだ?」

「恐れながら陛下、医師たちが、そのような症状で死ぬ者は毒を盛られた者に限ると証言いたしました。」

素朴な時代にあっては、これは重みのある証拠だった。トムもその強力さを認め、言った――

「医師は医術を心得ている。おそらく正しいのであろう。この哀れな男にとって、ひどく不利な話だ。」

「ですが、陛下、証拠はそれだけではございません。さらに悪いものがございます。今では村を去り、行方も知れぬ魔女が、病人は毒によって死ぬであろうと予言し、多くの者の耳元でひそかに告げていたと、大勢が証言しました。しかも、毒を与えるのは旅人であり、茶色の髪をして、着古した粗末な服をまとっていると申したのです。この囚人が、その人相書きに驚くほどよく当てはまるのはご覧のとおりでございます。陛下、何とぞこの事情にしかるべき重みをお与えください。何しろ、前もって予言されていたのでございます。」

迷信深い時代において、これは絶大な説得力を持つ論拠だった。トムは、もはや決着したと感じた。証拠というものに少しでも価値があるなら、この哀れな男の有罪は立証されている。それでも罪人に機会を与え、こう言った――

「何か申し開きがあるなら、申してみよ。」

「役に立つことは何もございません、陛下。私は無実ですが、それを証明できないのです。友人さえいれば、あの日、私がイズリントンにいなかったことを示せたでしょう。また、証人たちが申す時刻には一リーグ(約4.8キロメートル)以上も離れたワッピング・オールド・ステアーズにいたことも証明できたでしょう。それどころか陛下、彼らが私を命を奪っていたと言うそのとき、私は命を救っていたことも示せます。溺れていた少年を――」

「待て! 州長官代理、その事件が起きた日を申せ!」

「午前十時、あるいはその数分後でございます。日は元日、いとも尊き――」

「囚人を釈放せよ。国王の意志である!」

この国王らしからぬ叫びのあと、トムはまた顔を赤らめ、できるかぎり体裁を繕うために付け加えた――

「これほど根拠のない馬鹿げた証拠で、人が絞首刑にされようとしていたことに腹が立ったのだ!」

一同の間に、感嘆のざわめきが低く広がった。彼らが感嘆したのは、トムが下した裁定そのものではない。有罪判決を受けた毒殺者への恩赦が妥当か、賢明かと問われれば、そこにいた者のうち、それを認めたり称賛したりできる者はほとんどいなかっただろう。感嘆の的となったのは、トムが示した知性と気迫だった。低く交わされた言葉の中には、こんなものがあった――

「この国王は狂っておられぬ。正気を取り戻されたのだ。」

「何と理にかなった問い方をなさったことか。最後にきっぱりと裁きを下された様子も、以前の陛下そのものではないか!」

「神に感謝を、病は去った! もはや弱々しいお方ではない。まさしく国王だ。父君と同じ振る舞いをなされた。」

あたりが称賛の声に満ちていたので、そのいくらかは当然トムの耳にも入った。それによって彼はすっかり気が楽になり、全身にひどく心地よい感覚が満ちた。

しかし、少年らしい好奇心は、ほどなくそうした快い思いや感情を押しのけた。女と幼い少女が、いったいどのような恐ろしい悪事を働いたのか知りたくてたまらなかったのである。そこで命令により、怯えてすすり泣く二人が御前へ連れ戻された。

「この者たちは何をしたのだ?」

トムは州長官代理に尋ねた。

「恐れながら陛下、二人は恐るべき罪に問われ、その罪は明白に立証されております。よって裁判官は法に従い、絞首刑に処すと定めました。悪魔に魂を売った――それが罪でございます。」

トムは身震いした。そのような邪悪なことをする者は忌み嫌うよう教えられていた。それでも、好奇心を満たす楽しみまで捨てるつもりはなかった。そこで尋ねた――

「それは、どこで、いつ行われたのだ?」

「十二月の真夜中、廃墟となった教会でございます、陛下。」

トムはふたたび身震いした。

「その場には誰がいた?」

「この二人だけでございます、陛下――それと、もう一人のあの者が。」

「二人は自白したのか?」

「いいえ、陛下。否認しております。」

「ならば、どうして分かった?」

「証人が、この二人がそこへ向かうところを目撃いたしました、陛下。それによって疑いが生じ、その後に起きた恐ろしい出来事が、疑いを裏づけました。とりわけ、二人がこうして得た邪悪な力を使い、周囲一帯を荒廃させる嵐を呼び起こしたことは、証拠によって明らかです。四十人を超す証人が嵐の発生を証言しております。実のところ、千人でも証人を集められたでしょう。誰もが被害を受け、忘れられぬ理由があったからです。」

「なるほど、確かに重大な一件だ。」

トムは、この陰惨な悪事についてしばらく考えてから尋ねた――

「その女も、嵐の被害を受けたのか?」

一同の中の年配者たちが、この質問の賢明さを認めて何人かうなずいた。しかし州長官代理は、その問いに特別な意味があるとは思わず、率直に答えた――

「はい、陛下。それも、誰もが当然の報いだと申すほど、ひどい被害を受けました。家は吹き飛ばされ、本人も子供も住む所を失いました。」

「自分をそれほどひどい目に遭わせる力としては、ずいぶん高い買い物だ。一ファージング[訳注:当時のイングランドの最小額硬貨]でも払えば、騙されたことになろう。それを自分と子供の魂で買ったというなら、この女は正気ではない。正気でなければ、自分が何をしているか分からぬ。ならば罪もない。」

年配者たちは、ふたたびトムの賢明さを認めてうなずいた。ある者はつぶやいた。

「噂どおり国王ご自身が狂っておられるとしても、神の優しき摂理によって、わしの知る何人かがその狂気にかかれたなら、かえって正気が増すような狂気だ。」

「子供はいくつだ?」

トムが尋ねた。

「九歳でございます、陛下。」

「イングランドの法では、子供が契約を結び、自分自身を売ることが許されているのか、判事?」

トムは学識ある判事へ向き直って尋ねた。

「恐れながら陛下、法は子供が重大な事柄を取り決めたり、それに関与したりすることを認めておりません。未熟な知恵では、年長者の成熟した知恵や邪悪な企みに対抗できぬと見なすからでございます。ただし、

悪魔は、望むなら子供を買うことができます。子供が同意しさえすれば

成立いたします。しかしイングランド人にはできません。その場合、契約は無効となります。」

「イングランド人に認めぬ権利を悪魔には惜しげもなく与えるとは、イングランドの法は無礼で、キリスト教徒らしからぬ、何とも出来の悪いものではないか!」

トムは心から憤って叫んだ。

この斬新な見解に多くの者が微笑み、トムの独創性と、正気を取り戻しつつある証拠として、宮廷中へ言い広めようと胸に刻んだ。

年上の罪人はもう泣くのをやめ、興奮した面持ちと高まりゆく希望を抱いて、トムの言葉に聞き入っていた。トムはそれに気づき、危険にさらされ、味方もいない女へ強い同情を覚えた。やがて尋ねた――

「二人は、どうやって嵐を起こしたのだ?」

「靴下を脱ぐことによってでございます、陛下。」

トムは仰天し、好奇心を熱病のようにかき立てられた。勢い込んで言った――

「驚くべきことだ! 靴下を脱げば、いつでもそのような恐ろしいことが起きるのか?」

「いつでも起きます、陛下。少なくとも女がそう望み、必要な呪文を心の中か、声に出して唱えれば。」

トムは女へ向き直り、激しい熱意を込めて言った――

「その力を使ってみよ。嵐を見てみたい!」

迷信深い一同の顔から、さっと血の気が引いた。そして誰も口には出さなかったが、皆がこの場から逃げたいと願った。しかしトムには、そんなことなど目に入らなかった。これから起こるという大異変のほかには、何も見えていなかったのである。女が当惑し、驚いた顔をしているのを見て、興奮しながら付け加えた――

「恐れるな。そなたを責めはせぬ。それどころか、自由にしてやる。誰にも手出しはさせぬ。さあ、その力を使え。」

「国王陛下、私にそのような力はございません。濡れ衣でございます。」

「恐怖が邪魔をしているのだ。心を強く持て。害は加えさせぬ。嵐を起こしてみよ。どれほど小さくてもよい。大きなものや害を及ぼすものを求めているのではない。むしろ逆のほうがよい。これを成し遂げれば、命を助ける。子供とともに自由の身となり、国王の恩赦を携えてここを出られる。この国の誰からも危害や悪意を受けぬよう守ってやる。」

女はひれ伏し、涙ながらに訴えた。自分には奇跡を起こす力などない。もしあれば、喜んで子供の命だけでも救い、自分の命は失っても構わない。国王の命令に従うことで、それほど尊い恩寵を得られるなら、そうするというのである。

トムはなおも迫ったが、女は主張を変えなかった。ついにトムは言った――

「この女は真実を申していると思う。もしわたしの母上がこの者と同じ立場にあり、悪魔の力を授かっていたなら、わたしの失われかけた命を救うためとあらば、一瞬もためらわず嵐を呼び、国中を廃墟にしたであろう! ほかの母親も同じようにできているはずだ。そなたは自由だ、女房。そなたも子供も。わたしはそなたを無実だと思う。さあ、もう何も恐れることはない。恩赦を与えたのだから。靴下を脱いでみよ! もし嵐を起こせたなら、そなたを金持ちにしてやる!」

救われた女は大声で感謝を述べ、命令に従いはじめた。トムは期待に胸を躍らせながら見守ったが、わずかな不安も感じていた。同時に廷臣たちは、明らかな不快と動揺を示していた。女は自分の足と、幼い娘の足からも靴下を脱がせ、国王の寛大さに報いるため、地震を起こそうと精いっぱい努めた。しかし、すべては失敗と失望に終わった。トムはため息をついて言った――

「もうよい、気の毒な者よ。これ以上苦労するな。そなたの力は失われてしまったのだ。心安らかに立ち去れ。いつか力が戻ったなら、わたしを忘れず、嵐を届けに来てくれ。」


第十六章 国王の晩餐

食事の時刻が近づいた――ところが不思議なことに、そのことを考えてもトムはさほど不安を覚えず、恐怖などほとんど感じなかった。午前中の経験によって、自信が驚くほど増していたのである。哀れな小さな灰まみれの猫は、四日間を過ごしただけで、ひと月暮らした大人よりも早く、奇妙な屋根裏部屋に慣れつつあった。子供が境遇に順応する力を、これほど鮮やかに示した例もないだろう。

われわれは特権を利用して、壮麗な式典に備えてトムが身支度を整えられている間に、大宴会場へ先回りし、様子を眺めてみよう。そこは広々とした部屋で、金箔を施した円柱と付け柱が並び、壁と天井は絵で飾られている。扉のところには、豪華で絵画的な衣装をまとい、ハルバード[訳注:槍と斧を組み合わせた長柄武器]を手にした長身の衛兵たちが、彫像のように身じろぎもせず立っている。室内をぐるりと取り巻く高い回廊には楽団がおり、華やかな衣装をまとった男女の市民がぎっしり詰めかけている。部屋の中央には一段高い壇があり、その上にトムの食卓が置かれている。ここからは、古い年代記の記者に語ってもらおう。

「一本の杖を持った紳士が部屋へ入り、食卓布を持った別の紳士がそれに続く。二人はこのうえなくうやうやしく三度ひざまずいたのち、一人が布を卓上に広げる。ふたたびひざまずくと、二人とも退出する。次にまた二人が入ってくる。一人は先ほどと同じ杖を、もう一人は塩入れ、皿、パンを携えている。二人は先の者たちと同じくひざまずき、運んできた品々を卓上に置くと、最初の二人と同じ儀礼を行って退出する。最後に、豪華な衣装をまとった二人の貴族が現れ、その一人は毒見用の短刀を携えている。二人はこのうえなく優雅に三度平伏したのち、国王ご本人がそこにおられるかのような畏怖をもって食卓へ近づき、パンと塩で卓上をこする。」

これで厳粛な準備は終わる。今度は、反響する長い廊下のはるか向こうから、角笛の響きと、「国王陛下のお通り! いとも尊き国王陛下に道を!」という、かすかな叫び声が聞こえてくる。

その音は刻々と繰り返され、次第に近づいてくる。そしてついには、すぐ目の前で軍楽の音が鳴り響き、「国王陛下に道を!」という声が轟く。

その瞬間、きらびやかな行列が姿を現し、整然たる歩調で扉から入ってくる。ふたたび年代記の記者に語ってもらおう――

「先頭には、紳士、男爵、伯爵、ガーター勲爵士が続く。皆、豪華に着飾り、帽子はかぶっていない。次に大法官が二人の間を進む。一人は王笏を携え、もう一人は、金の百合紋をちりばめた赤い鞘に収めた国剣を、切っ先を上にして持っている。次に国王ご自身が進まれる。その姿が現れると、十二本のトランペットと無数の太鼓が盛大な歓迎の音を奏で、回廊にいる者たちは全員立ち上がって、『国王陛下万歳!』と叫ぶ。その後ろには側近の貴族たちが続き、左右には儀仗兵である五十名の王室年金受給紳士が、金色の戦斧を携えて行進する。」

すべてが華やかで心地よかった。トムの鼓動は高鳴り、瞳には喜びの光が宿った。その立ち居振る舞いは実に優雅だった。自分がどう振る舞っているかを意識せず、周囲の陽気な光景と音に心を奪われていたため、なおさら自然な優雅さが生まれたのである。それに、身体にぴったり合う美しい衣装にも少し慣れ、しかもその衣装を意識していないとき、人はそう無様にはなれないものだ。トムは教えられたことを思い出し、羽根飾りのついた頭をわずかに下げて挨拶に応え、丁重に言った。

「皆の者、礼を申す。」

トムは帽子を脱がずに食卓へ着き、少しもまごつかなかった。帽子をかぶったまま食べるという習慣だけは、歴代の国王とキャンティ家の者たちに共通する、たった一つのしきたりだったからである。どちらも昔から慣れ親しんでいるという点では、相手に一歩も譲らなかった。行列はほどけて絵画のように美しく配置され、全員が帽子を脱いだまま控えた。

やがて陽気な音楽に合わせて、近衛侍従じじゅう隊が入ってきた。「イングランドでもっとも背が高く、もっともたくましい男たち。この点を重視して、入念に選ばれた者たちである」――だが、ここも年代記の記者に語ってもらおう――

「近衛侍従隊は帽子を脱ぎ、背に金色の薔薇をあしらった緋色の衣装で入場した。彼らは料理を一品ずつ銀器に載せ、何度も往復して運んだ。それらの料理は、運ばれてきた順に一人の紳士が受け取り、食卓へ並べた。一方、毒見役は毒が盛られていないか確かめるため、各近衛兵に、その者が運んできた料理を一口ずつ食べさせた。」

何百もの目が、一口ごとにトムの口元を追い、食べる様子を見守っているのが分かった。その一口が、いつ爆発して彼を木端微塵に吹き飛ばすか分からない危険な爆薬でもあるかのような、異様なまでの熱心さだった。それでもトムはしっかり食事をした。急がぬよう気をつけ、自分では何一つせず、担当の役人がひざまずいて世話をしてくれるまで待つことにも同じように注意した。とうとう一度も間違えずにやり遂げた――一点の曇りもない、何より尊い勝利だった。

ようやく食事が終わり、きらびやかな行列の中央を行進して退場した。耳には角笛の高らかな音、太鼓の轟き、雷鳴のような歓呼が快く響いていた。もし人前で食事をすることの最悪の部分がこの程度なら、国王の務めのうち、もっと恐ろしい難題のいくつかから逃れられるのと引き換えに、一日に何度でも喜んで耐えよう――トムはそう思った。


第十七章 へなちょこ一世

マイルズ・ヘンドンは、捜している者たちを見落とさぬよう鋭く目を配りながら、ロンドン橋のサザーク側へ急いだ。じきに追いつけるだろうと期待していたが、当ては外れた。人々に尋ね歩き、サザークの途中までは足取りを追えたものの、そこで痕跡はすべて途絶え、どうすべきか途方に暮れた。それでも、その日の残りを費やして、できるかぎり捜索を続けた。日が暮れるころには足は疲れきり、腹は半ば飢え、目的を果たせる見込みは相変わらず遠かった。そこでタバード・インで夕食を取り、翌朝早く出発して町をくまなく捜そうと決め、床に就いた。横になって考えを巡らせ、計画を立てるうち、やがて次のように推理しはじめた。あの少年は、父親と称する悪党の手から、できるものなら逃げ出すだろう。ではロンドンへ戻り、以前いた場所を訪ねるだろうか? いや、そんなことはしない。ふたたび捕まる危険を避けるはずだ。ならば、どうする? マイルズ・ヘンドンと出会うまで、この世に友人も保護者も一人としていなかったのだから、ロンドンや危険へ近づく必要がないかぎり、当然その友人をふたたび捜そうとするだろう。ヘンドン・ホールを目指すはずだ。ヘンドンが故郷へ帰ろうとしており、そこへ行けば会えるかもしれないと知っているからだ。そうだ、答えは明らかだ、とヘンドンは考えた。サザークでこれ以上時間を無駄にせず、ただちにケントを抜けてモンクス・ホルムへ向かい、道々、森を捜し、人々に尋ねるべきなのだ。さて、ここで姿を消した小国王のもとへ戻ろう。

橋の上の宿屋で給仕が目撃した、若者と国王に「合流しようとしていた」悪党は、正確には合流しなかった。二人のすぐ後ろにつき、足取りを追ったのである。一言も口を利かなかった。左腕を吊り、左目には大きな緑色の眼帯をしていた。わずかに足を引きずり、樫の杖で身体を支えていた。若者は国王を連れ、サザークの曲がりくねった道を進み、やがて町の外へ続く街道へ出た。国王は苛立ち、ここで止まると言い出した。自分がヘンドンを捜しにいくのではなく、ヘンドンのほうから参上すべきだというのだ。このような無礼は許さぬ、ここから動かぬ、と言い張った。若者は言った――

「向こうの森で友人が傷ついて倒れているのに、ここで待つというのか? なら、そうするがいい。」

国王の態度は一変した。叫んだ――

「傷を負っているだと? 誰がそのような真似をした? いや、それはあとだ。案内せよ、早く! もっと急げ! 足に鉛でもつけているのか? 傷を負ったというのだな? 下手人が公爵の息子であろうと、必ず後悔させてくれる!」

森まではいくらか距離があったが、たちまち進みきった。若者はあたりを見回し、地面に突き立てられた枝に、小さな布切れが結びつけてあるのを見つけた。それから森へ入り、一定の間隔で置かれた同じような枝を探しながら先導した。どうやら目的地までの目印らしい。やがて開けた場所へ出た。焼け落ちた農家の跡があり、その近くには崩れかけ、朽ち果てた納屋が建っていた。人の気配はどこにもなく、あたりは完全な静寂に包まれていた。若者が納屋へ入り、国王もすぐ後ろに続いた。誰もいない! 国王は驚きと疑いを込めて若者をにらみ、尋ねた――

「どこにいる?」

返ってきたのは、嘲るような笑い声だった。国王は一瞬で激怒した。薪をつかみ、若者へ飛びかかろうとしたそのとき、別の嘲笑が耳に届いた。少し離れて後をつけていた、足の不自由な悪党の声だった。国王は振り返り、怒鳴った――

「何者だ? ここへ何をしに来た?」

「馬鹿な真似はよせ」と男は言った。「おとなしくしろ。わしの変装は、おまえが父親だと分からぬふりを通せるほど上等ではあるまい。」

「おまえは父ではない。知らぬ男だ。わたしは国王である。わたしの従者を隠したのなら、捜し出して連れてこい。さもなくば、自分のしたことを嘆く羽目になるぞ。」

ジョン・キャンティは、厳しく落ち着いた声で答えた――

「おまえが狂っているのは明らかだ。できれば罰したくはないが、逆らうなら仕方がない。ここには、おまえのたわ言を気にする耳などないから、いくら喚いても害はない。だが、ねぐらが変わったときに災いを招かぬよう、用心深く話す癖をつけておくべきだ。わしは人を殺した。もう家にはいられぬ。おまえにも働いてもらわねばならぬから、おまえも戻れぬ。事情があって、わしは名前を変えた。ホッブズ――ジョン・ホッブズだ。おまえはジャックだ。よく覚えておけ。では答えろ。母親はどこだ? 姉たちはどこだ? 約束の場所へ来なかった。どこへ行ったか知らぬか?」

国王は不機嫌に答えた――

「そのような謎で煩わせるな。母上は亡くなられた。姉たちは宮殿にいる。」

そばにいた若者が馬鹿にしたように笑った。国王は殴りかかろうとしたが、キャンティ――今では自らホッブズと名乗っている男――が止めて言った――

「やめろ、ヒューゴ。からかうな。こいつは正気を失っていて、おまえの態度が神経に障るのだ。座っておとなしくしろ、ジャック。あとで何か食わせてやる。」

ホッブズとヒューゴは声を低くして話しはじめ、国王は不愉快な二人から、できるだけ遠くへ離れた。薄暗い納屋の奥へ引っ込むと、土の床には一フィート(約30センチメートル)ほどの厚さに藁が敷かれていた。そこへ横になり、毛布代わりに藁を身体へかけると、たちまち物思いに沈んだ。悲しみはいくつもあったが、ささいなものは最大の悲しみ――父を失った悲しみ――によって、ほとんど忘れ去られていた。世間の人々はヘンリー八世の名を聞くと震え上がり、破滅の息を鼻から吐き、手に鞭と死を握る人食い鬼を思い浮かべた。しかし、この少年にとって、その名が呼び起こすのは喜びだけだった。心に浮かぶ父の顔は、優しさと愛情に満ちていた。父と交わした数々の愛情深い思い出を一つずつ呼び起こし、いつまでも慈しんだ。とめどなく流れる涙が、その心を占める悲しみの深さと真実を物語っていた。午後が過ぎていくうち、悩みに疲れた少年は、次第に穏やかで癒やしに満ちた眠りへ落ちていった。

かなりの時が経った――どれほどかは分からなかった――ころ、感覚が半ば目覚めた。目を閉じたまま、ここはどこで、何が起きていたのかとぼんやり考えていると、低くざわめくような音に気づいた。屋根を陰気に打つ雨音だった。ぬくぬくとした心地よさが忍び寄ってきたが、次の瞬間、甲高い笑い声と下品な爆笑の合唱によって乱暴に破られた。国王は不愉快に驚き、頭にかぶっていた藁をどけ、邪魔をしたものの正体を確かめた。目に飛び込んできたのは、陰惨で醜悪な光景だった。納屋の反対側、床の中央では明るい火が燃えていた。その周囲に、赤い炎で不気味に照らされながら、男女入り交じった、ぼろをまとった街の屑と悪党どもが、寝そべり、手足を投げ出していた。これほど雑多な集団は、本でも読んだことがなく、夢に見たことすらなかった。風雨にさらされて褐色になり、髪を長く伸ばし、奇怪なぼろをまとった、巨大で頑健な男たち。凶暴な顔つきをして、同じような服を着た中背の若者たち。継ぎを当てたり、包帯で覆ったりした目を持つ、盲目の物乞いたち。木の義足や松葉杖を使う者。役にも立たぬ包帯の隙間から、膿の流れる傷をのぞかせた病人。悪党面をした行商人は背に荷を負い、ほかには刃物研ぎ、鋳掛け屋、仕事道具を持った理髪外科医もいた。女たちの中には、まだ成長しきらぬ少女もいれば、女盛りの者も、皺だらけの老女もいたが、誰もが声高で、恥知らずで、口汚かった。そして全員が薄汚れ、だらしなかった。顔中にただれのある赤子が三人。首に紐をつけた、やせこけた犬が二匹いて、盲人を案内する役を担っていた。

すでに夜になり、一味は宴を終えたばかりで、今まさに酒盛りが始まろうとしていた。酒の入った大杯が、口から口へ回されていた。皆が一斉に叫んだ――

「歌だ! コウモリとディックと片足引きに歌わせろ!」

盲人の一人が立ち上がり、よく見える目を覆っていた継ぎ布と、自分が不幸に陥った理由を哀れっぽく記した札を外して、歌う準備をした。片足引きは木の義足を取り外すと、健康そのものの両脚で仲間の悪党の隣に立った。それから二人は陽気な歌を声高に歌い、節が終わるごとに一味全員が加わって、威勢のよい合唱を響かせた。最後の節に達するころには、半ば酔った熱狂が頂点に達し、全員が加わって最初から最後まで歌い直した。梁が震えるほど大きな、凶悪な音の塊が生まれた。その胸を高鳴らせる歌詞は、次のようなものだった――

「夜も更けたなら 酒場と女とねぐらから、 粋な野郎どもが飛び出して、 盗みで縛り首になった仲間を 絞首台へ見送りに行く。 さあ、きれいな女ども、出て見ろ、見ろ、

ロンドンの町から出てきて見ろ、 おまえの服をかっぱらった野郎が、 絞首台でぶら下がるところを。」

(『イングランドの悪党』より。ロンドン、一六六五年)

それから会話が始まった。歌に使われていた盗賊の隠語ではない。あれは、敵意ある耳が聞いているかもしれないときの会話にだけ用いる言葉だった。話を聞いていると、「ジョン・ホッブズ」はまったくの新入りではなく、以前この一味で修業を積んだことがあるらしい。その後どうしていたのかと問われ、「はずみで」人を殺したと答えると、皆は大いに満足した。しかも殺した相手が司祭だったと付け加えると盛大な拍手が起き、全員と一杯ずつ酌み交わす羽目になった。昔の仲間たちは喜んで迎え、新顔たちは誇らしげに握手を求めた。「なぜ何か月も姿を見せなかった?」と問われ、彼は答えた――

「近ごろは法律があまりに厳しく、あまりに熱心に取り締まられているから、田舎よりロンドンのほうが暮らしやすく安全だ。あの事故さえなければ、ずっとあそこにいた。もう二度と田舎へ足を向けまいと決めていたのだが、あの事故ですべて終わりだ。」

ホッブズは、今の一味は何人いるのかと尋ねた。「ラフラー」と呼ばれる首領が答えた――

「丈夫な物乞い、こそ泥、追い剥ぎ、盲人を装う奴、乞食が二十五人。若い女や娼婦、そのほかの女どもも含めてな。大半はここにいる。残りは冬の稼ぎ場をたどって東へ向かっている。夜明けに追いかける。」

「ここにいる立派な仲間たちの中に、ウェンが見えない。どこにいる?」

「かわいそうにな、今ごろ硫黄を食っているよ。繊細な舌には熱すぎるだろうがな。夏至のころ、どこかの喧嘩で殺された。」

「それは残念だ。ウェンは腕が立ち、勇敢な男だった。」

「まったくそのとおりだ。情婦のブラック・ベスはまだ仲間だが、今は東へ向かう旅に出ている。立派な娘だ。行儀がよく、品行方正で、一週間のうち四日を超えて酔っているところなど、誰も見たことがない。」

「あれは昔から自分に厳しかった。よく覚えている。立派な娘で、称賛に値する。母親のほうはもっと奔放で、細かいことを気にしなかった。面倒で気性の荒い婆さんだったが、人並み以上の知恵があった。」

「その知恵のせいで失った。手相占いや、ほかのさまざまな占いの才があったため、ついには魔女という評判が立ったのだ。法は弱火でじっくり婆さんを焼き殺した。あの運命を堂々と迎える姿には、わしもいささか胸を打たれたよ。炎が顔へ向かって舐め上がり、薄い髪へ燃え移り、灰色の老いた頭の周りでぱちぱち音を立てる間も、周囲で口を開けて見物する群衆を、ずっと罵り、悪態をついていた。あの罵り方ときたら! 千年生きても、あれほど見事な呪いの言葉は二度と聞けまい。ああ、あの技は婆さんとともに死んだ。下手で弱々しい物真似なら残っているが、本物の冒瀆はもうない。」

首領はため息をつき、聞き手も同情してため息をついた。一同はしばし深い沈鬱に包まれた。このように心の荒んだ世捨て人でさえ、情緒を完全に失っているわけではない。ごくまれに、特に好都合な事情のもとでは、つかの間の喪失感や悲しみを味わうことがある。たとえば今回のように、天才と教養がこの世を去り、後継者を残さなかった場合である。しかし全員で酒をたっぷり飲むと、悲しみに沈んだ者たちの元気もたちまち戻った。

「ほかにも、ひどい目に遭った仲間はいるか?」とホッブズが尋ねた。

「何人かいる。特に新入りたちだ。たとえば、小さな農地を羊の放牧場にするため奪われ、世間に放り出されて、食うにも困った小作農たちだ。物乞いをすると、上半身裸で荷車の後ろにつながれ、血が流れるまで鞭で打たれる。それからさらし台へ入れられ、物を投げつけられる。ふたたび物乞いをすれば、また鞭で打たれ、耳を一つ切り落とされる。三度目も物乞いをする――哀れな連中には、ほかに何ができる? ――すると、焼けた鉄で頬に烙印を押され、奴隷として売られる。逃げれば追い詰められ、絞首刑だ。短く、すぐに語り終わる話だ。ほかの仲間は、それほどひどくはない。前へ出ろ、ヨーケル、バーンズ、ホッジ。おまえたちの飾りを見せてやれ!」

三人は立ち上がってぼろの一部を脱ぎ、背中をさらした。そこには鞭が残した縄のような古い腫れ跡が、縦横に走っていた。一人は髪を持ち上げ、かつて左耳があった場所を見せた。もう一人は、肩に押されたVの烙印と、切り取られた耳を見せた。三人目が言った――

「おれはヨーケル。昔は農夫で、暮らし向きもよく、愛する妻と子供たちがいた。今では身分も仕事も、少々変わってしまったがな。妻も子供たちもいなくなった。天国にいるかもしれん。あるいは――もう一つの場所にいるかもしれん。だが慈悲深い神に感謝しよう。少なくとも、もうイングランドにはいない! 何の罪もない優しい老母は、病人を看護してパンを得ようとしていた。その一人が死んだが、医者には死因が分からなかった。だから母は魔女として焼かれた。幼い子供たちが見守り、泣き叫ぶ前でな。イングランドの法律に乾杯だ! 皆、杯を上げろ! さあ、声を合わせ、歓声とともに! 母をイングランドの地獄から救ってくれた、慈悲深いイングランド法に乾杯! ありがとうよ、仲間たち。おれは妻とともに、腹を空かせた子供たちを連れ、家から家へ物乞いして回った。だがイングランドでは、腹を空かせるのも罪だった。だから服を剥がされ、三つの町を引き回されながら鞭で打たれた。もう一度、慈悲深いイングランド法に乾杯しろ! その鞭は妻メアリーの血を存分にすすり、祝福された救いはすぐに訪れた。妻は今、無縁墓地に眠り、あらゆる害から守られている。子供たちは――そうだな、法律がおれを町から町へ鞭打っている間に、飢え死にした。飲め、仲間たち――ほんの一滴でいい――何者にも害をなさなかった哀れな子供たちへ、一滴を捧げてくれ。おれはまた物乞いをした。パンの皮を求めて物乞いをし、さらし台へ入れられ、耳を失った。見ろ、ここに切り株が残っている。また物乞いをし、もう片方の切り株も手に入れた。忘れぬためにな。それでも物乞いを続け、奴隷として売られた。この汚れの下、頬を洗えば、焼き鏝が残した赤いSの字が見えるぞ! 奴隷だ! この言葉の意味が分かるか? イングランド人の奴隷だ! ――それが、おまえたちの前に立っている。おれは主人から逃げた。見つかれば――それを命じたこの国の法に、天の重い呪いあれ! ――絞首刑になる!」

濁った空気を貫いて、よく響く声が飛んだ――

「絞首刑にはさせぬ! その法律は、本日をもって終わりだ!」

全員が振り返り、小国王の奇妙な姿が足早に近づいてくるのを見た。火明かりの中へ現れ、はっきり姿が見えると、さまざまな問いが一斉に爆発した――

「誰だ? 何だ、ありゃ? 何者だ、このちび!」

少年は、驚きと疑問に満ちた無数の視線に囲まれても少しも動じず、王者の威厳をもって答えた――

「わたしはエドワード、イングランド国王である。」

激しい笑いが爆発した。半分は嘲笑、半分は冗談の出来栄えに対する喜びだった。国王は傷つき、鋭く言った――

「無作法な浮浪者どもめ。わたしが約束した王の恩恵に対し、それがそなたらの礼なのか?」

怒った声と興奮した身振りでさらに言葉を続けたが、笑いと嘲りの叫びが渦巻き、すべてかき消された。「ジョン・ホッブズ」は何度も騒音に負けず声を届かせようとし、ようやく成功した――

「仲間たち、こいつはわしの息子だ。夢想家で、馬鹿で、完全な狂人だ。相手にするな。自分が本当に国王だと思い込んでいる。」

「わたしは国王だ」とエドワードは彼へ向き直って言った。「やがて、その代償とともに思い知るだろう。おまえは殺人を自白した。絞首台でぶら下がることになるぞ。」

「おまえがわしを売るのか? おまえが? この手で捕まえたら――」

「まあまあ!」と大柄な首領が言った。国王を救うべく間へ割り込み、その働きを強調するかのように、拳でホッブズを殴り倒した。「国王にも首領にも敬意を払わぬのか? もう一度わしの前で無礼を働けば、この手で吊るしてやる。」

それから陛下に向かって言った。「仲間を脅すのはよせ、坊主。それに、ほかの場所で仲間の悪口を言わぬよう、舌には気をつけろ。狂った気分が望むなら、国王になってもよい。だが、それで害を及ぼすな。今言った称号は捨てろ。反逆罪に当たる。わしらは、いくつかのささいな点で悪人ではあるが、自国の国王を裏切るほど卑しい者は一人もおらん。そのことについては、皆、愛国心に富み、忠実だ。嘘かどうか、見てみろ。さあ全員で――『イングランド国王エドワード陛下万歳!』。」

「イングランド国王エドワード陛下万歳!」

雑多な一味の返事は雷鳴のように轟き、ぼろ納屋が音で震えた。小国王の顔は一瞬、喜びに輝いた。わずかに頭を下げ、厳粛かつ素朴に言った――

「皆の者、礼を申す。」

この予想外の返事に、一同は腹を抱えて笑い転げた。やがていくらか静けさが戻ると、首領は断固としながらも、どこか親しげな調子で言った――

「もうやめろ、坊主。賢明でもなければ、よいことでもない。どうしても妄想を楽しみたいなら、別の称号を選べ。」

鋳掛け屋が提案を叫んだ――

「へなちょこ大王国王、へなちょこ一世!」

その称号はたちまち受けた。全員が声を合わせ、轟く歓声を上げた――

「へなちょこ大王国王、へなちょこ一世万歳!」それに野次、猫の鳴き真似、爆笑が続いた。

「引っ張り出して、戴冠させろ!」

「王衣を着せろ!」

「王笏を持たせろ!」

「玉座に就けろ!」

それをはじめ、二十もの叫びが一度に飛び交った! 哀れな小さな犠牲者が息をつく暇もないうちに、ブリキの洗面器を冠としてかぶせられ、破れた毛布を王衣としてまとわされ、樽を玉座に座らされ、鋳掛け屋の半田ごてを王笏として持たされた。それから全員が周囲にひざまずき、汚れたぼろ袖や前掛けで目を拭いながら、皮肉な嘆きと嘲りの嘆願を一斉に浴びせた――

「お慈悲を、優しき国王様!」

「嘆願する虫けらどもを踏み潰さないでくださいませ、尊き陛下!」

「奴隷どもをお憐れみになり、王者の蹴りで慰めてください!」

「王権の燃える太陽よ、慈悲深き光で我らを元気づけ、温めてくださいませ!」

「御足で大地を清めてください。その土を食らい、我らも高貴な身となれますように!」

「どうか我らに唾を吐きかけてくださいませ、陛下。そうすれば子々孫々まで、王者の慈悲深きへりくだりを語り伝え、永遠に誇りと幸福を味わえます!」

しかし、その晩いちばんの笑いを取り、喝采を独占したのは、おどけた鋳掛け屋だった。ひざまずいて国王の足に口づけるふりをし、憤然と蹴り飛ばされると、国王の足が触れた顔の部分へ貼る布を貸してくれと、皆に頼んで回った。その箇所が下賤な空気に触れぬよう保存し、街道へ出て、一目百シリングで見物させれば大金持ちになれる、と言うのだった。あまりに見事な滑稽ぶりだったので、薄汚れたならず者ども全員の羨望と称賛を集めた。

幼い君主の目には、屈辱と憤りの涙が浮かんだ。胸の中でこう思った。「たとえひどい悪事を働いたとしても、これ以上残酷には扱われまい。わたしはただ親切にしてやろうと申し出ただけなのに、その礼がこれなのか!」


第十八章 浮浪者たちと王子

浮浪者の一団は夜明け早々に起き出し、行進を始めた。頭上には重苦しい空、足元にはぬかるんだ地面、空気には冬の冷たさがあった。一同から陽気さはすっかり消えていた。不機嫌に黙り込む者もいれば、苛立って怒りっぽくなる者もいた。機嫌のよい者は一人もおらず、全員が喉を渇かせていた。

首領は簡単な指示とともに「ジャック」をヒューゴに預け、ジョン・キャンティには近づかず、放っておけと命じた。またヒューゴにも、少年をあまり手荒に扱うなと警告した。

しばらくすると気候が穏やかになり、雲もいくらか晴れた。一行は震えなくなり、気分も上向きはじめた。次第に陽気になり、ついには互いをからかい、街道を行く人々に罵声を浴びせはじめた。ふたたび人生と、その喜びを味わう余裕が生まれた証拠である。道行く者が一味をどれほど恐れていたかは、誰もが道を譲り、下品で無礼な言葉にも言い返そうとせず、おとなしく耐えたことから明らかだった。一味は生け垣に干された布を奪った。持ち主が見ている前で行うことさえあったが、抗議する者はいなかった。それどころか、生け垣まで持っていかれなかったことに感謝しているようにさえ見えた。

やがて一味は小さな農家へ押し入り、我が家同然にくつろいだ。震える農夫と家族は、朝食を用意するため食料庫を空にした。食べ物を受け取る際には、主婦や娘たちの顎をつつき、侮辱的な呼び名と馬鹿笑いを交えながら、下品な冗談を飛ばした。農夫と息子たちには骨や野菜を投げつけ、休みなく逃げ回らせ、うまく命中すれば大喝采した。最後には、馴れ馴れしい振る舞いに抵抗した娘の一人の頭へ、バターを塗りつけた。立ち去る際、自分たちのしたことを役人へ知らせたなら、戻ってきて家族ごと家を焼くと脅した。

正午ごろ、長く疲れる行軍の末、一味はかなり大きな村の外れにある生け垣の陰で足を止めた。一時間の休憩が与えられ、それから一同はさまざまな方向に散り、各々の商売をするため、別々の場所から村へ入った。「ジャック」はヒューゴと組まされた。二人はしばらくあちこち歩き回った。ヒューゴは一仕事する機会をうかがったが、何も見つからない。ついに言った――

「盗めそうな物が何もない。つまらん村だ。仕方がない、物乞いをしよう。」

「わたしたちが、だと! 勝手に自分の商売をするがよい。おまえには似合いだ。だが、わたしは物乞いなどせぬ。」

「物乞いをしないだと!」ヒューゴは驚いて国王を見つめた。「いつから改心したのだ?」

「何のことだ?」

「何のこと? おまえは生まれてからずっと、ロンドンの街で物乞いをしていたのではないのか?」

「わたしが? この愚か者!」

「褒め言葉は取っておけ。長持ちするぞ。父親は、おまえがずっと物乞いをしてきたと言っている。あるいは嘘かもしれん。まさか父親が嘘をついたとまで言うつもりではあるまいな」とヒューゴは嘲った。

「おまえが父と呼ぶ、あの男か? そうだ、あれは嘘をついた。」

「おい、狂人ごっこをそこまでやるな、仲間。遊びのために使え。自分を痛めつけるために使うな。これをあいつに話せば、おまえは見事に焼きを入れられるぞ。」

「手間をかける必要はない。わたしが自分で言う。」

「その心意気は気に入った。本当だ。だが、その判断力には感心できん。骨を軋ませるような仕打ちや殴打は、わざわざ招かなくても、この世に十分ある。だが、この話はここまでだ。おれはおまえの父親を信じる。あいつが嘘をつけることは疑わない。時には嘘もつくのだろう。誰でもそうだからな。しかし今回は嘘をつく理由がない。賢い人間は、嘘という上等な品物を、何の得もなく無駄にはしない。さあ、物乞いをやめたいという気分なら、何をして稼ぐ? 台所荒らしか?」

国王は苛立って言った――

「もう馬鹿な話はやめろ。うんざりだ!」

ヒューゴは腹を立てて答えた――

「よく聞け、仲間。物乞いはしない、盗みもしない。それならよい。だが、おまえが何をするかは、おれが教えてやる。おまえは囮になれ。その間に

おれが物乞いをする。断れるものなら断ってみろ!」

国王が軽蔑を込めて答えようとすると、ヒューゴが遮った――

「黙れ! 優しそうな顔の男が来る。これから、おれは発作を起こして倒れる。旅人がおれのところへ駆け寄ったら、おまえは泣き声を上げ、泣くふりをしてひざまずけ。それから腹の中に不幸の悪魔が全部詰まっているような声で叫ぶのだ。『旦那様、病に苦しむ哀れな兄でございます。私どもには頼る者もおりません。神の御名にかけて、病み、見捨てられ、惨めきわまる者へ、慈悲深き御目を一度だけお向けください。神に打たれ、死にかけている者に、その富の中から小銭を一枚お恵みください!』とな。いいか、泣き続けろ。小銭を騙し取るまで少しも声を弱めるな。さもなくば後悔するぞ。」

するとヒューゴはただちに呻き、唸り、目をぐるぐる回し、よろめきはじめた。旅人が近くまで来ると、叫び声を上げてその前へ倒れ込み、苦痛に襲われたふりをして、泥の上で身をよじり、転げ回った。

「おお、何ということだ!」心優しい旅人が叫んだ。「かわいそうに、ひどく苦しんでいる! さあ、起こしてやろう。」

「高貴な旦那様、どうかおやめください。王侯のように立派な旦那様へ、神のお恵みがありますように。ですが、発作の最中に触れられると、ひどく痛むのでございます。あそこにいる弟が、発作のたびに、どれほど苦しむか申し上げます。どうか一ペニー、親切な旦那様、食べ物を買うために一ペニーだけ。それからは私を、悲しみの中へ置いていってください。」

「一ペニーだと! 不幸な者よ、三ペニーやろう」旅人は慌てて懐を探り、硬貨を取り出した。「さあ、かわいそうに。遠慮なく受け取りなさい。そこの少年、こちらへ来て、病に倒れた兄をあの家まで運ぶのを手伝ってくれ。そこで――」

「わたしは、その男の弟ではない」と国王が遮った。

「何だと! 弟ではない?」

「ああ、聞いてください!」ヒューゴは呻き、それから人知れず歯ぎしりした。「実の兄を否定するとは――しかも兄は、片足を墓へ入れているというのに!」

「少年よ、これが兄なら、まことに冷たい心の持ち主だ。恥を知りなさい! この者は手足を動かすことさえできぬではないか。兄でないなら、いったい何者なのだ?」

「物乞いで、泥棒だ! あなたの金を受け取ったうえ、懐からも盗んでいる。治癒の奇跡を起こしたいなら、杖をその肩へ振り下ろし、あとは神意に任せるがよい。」

だがヒューゴは、奇跡が起きるのを待たなかった。たちまち飛び起き、風のように逃げた。紳士は後を追いながら、泥棒を捕らえろと力いっぱい叫んだ。国王は自分が解放されたことを天へ深く感謝し、反対方向へ逃げた。危険の及ばぬ所へ来るまで、足を緩めなかった。最初に見つけた道へ入り、ほどなく村を背後へ置いた。数時間、できるかぎり足早に進み、追っ手が来ないかと不安げに何度も肩越しに振り返った。しかし、ついには恐怖も去り、代わって安全への感謝が湧いてきた。そこで初めて、自分が腹を空かせ、ひどく疲れていることに気づいた。農家の前で足を止めたが、口を開こうとした途端に言葉を遮られ、手荒く追い払われた。服装のせいだった。

傷つき、憤りながら歩き続け、もう二度と同じ扱いを受けるような真似はすまいと決めた。だが飢えは、誇りより強い。夕方が近づくと、別の農家でもう一度試してみた。しかし、ここでは先ほど以上にひどい目に遭った。罵声を浴びせられ、すぐに立ち去らなければ浮浪者として捕らえさせると脅された。

寒く曇った夜が訪れたが、足を痛めた君主はなおもゆっくり歩き続けた。動き続けるほかなかった。休もうと腰を下ろすたび、たちまち骨まで寒さが染み込んだからだ。厳粛な暗闇と、人気のない夜の広大さを進む間、感じることも経験することも、すべてが初めてで奇妙だった。時折、人の声が近づき、そばを通り過ぎ、また静寂の中へ消えていった。しかし、その声の主は形の定かでない、漂うぼやけた影にしか見えない。そのすべてに幽霊めいた不気味さがあり、国王は震えた。時折、明かりがまたたくのを目にしたが、いつもはるか遠く、まるで別世界にあるようだった。羊の鈴が聞こえても、ぼんやりと遠く、かすかな響きにすぎない。群れのくぐもった低い鳴き声が、消えゆく調べとなって夜風に乗って届いた。その音は物悲しかった。ときおり、姿の見えない野原や森の彼方から、犬の訴えるような遠吠えが響いた。すべての音が遠かった。そのため小国王は、あらゆる生命と活動が自分から遠く隔てられ、自分だけが仲間もなく、果てしない孤独の中心に立っているように感じた。

この新たな経験がもたらす、恐ろしくも心惹かれる世界の中を、国王はつまずきながら進んだ。頭上で枯葉がさらさらと鳴るたび、人のささやきにあまりによく似ているので驚いた。やがて、すぐ近くにブリキの角灯が落とす、斑模様の光が突然現れた。国王は影の中へ退いて待った。角灯は納屋の開いた扉のそばに置かれていた。しばらく待ったが、物音もせず、動く者もいない。立ったままでいるうち、ひどく身体が冷えた。しかも人を迎え入れてくれそうな納屋は、あまりにも魅力的に見えた。そこでついに、すべてを賭けて入ることにした。素早く、足音を忍ばせて近づき、敷居をまたごうとした瞬間、背後から人の声が聞こえた。納屋の中にあった樽の陰へ飛び込み、身をかがめた。二人の農夫が角灯を持って入り、話をしながら作業を始めた。二人が明かりを持って動き回る間、国王は目をよく働かせ、納屋の奥にかなり広そうな家畜房があるのを確かめた。一人になったら、手探りでそこまで行くつもりだった。また途中には馬用の毛布が積まれていた。その晩だけ、イングランド王権のために徴用するつもりで、その位置も覚えた。

やがて二人は仕事を終え、扉に鍵をかけ、角灯を持って去った。震える国王は、暗闇の許すかぎり急いで毛布の所へ向かった。それをかき集め、無事に手探りで家畜房へたどり着いた。二枚を寝床にし、残る二枚を身体にかけた。毛布は古く薄く、十分な暖かさとは言いがたかった。しかも鼻を突く馬の臭いを放ち、息が詰まりそうなほど強烈だった。それでも今や、国王は喜んでいた。

空腹で寒かったとはいえ、それ以上に疲れ、眠気も強かった。やがて後の二つが前の二つに勝ちはじめ、国王はほどなく半ば意識を失うようにうとうとしはじめた。そして、まさに完全な眠りへ落ちようとした瞬間、何かが自分に触れたのを、はっきり感じた! たちまち目が覚め、息を呑んだ。暗闇の中で受けた謎めいた感触の恐怖に、心臓が止まりそうになった。身動き一つせず、息を殺して耳を澄ませた。だが何も動かず、音もしない。長いと思われる間、聞き耳を立てて待ち続けたが、それでも何も動かず、音もしなかった。そこでようやく、ふたたび眠りへ落ちはじめた。その瞬間、また謎のものが触れた! 音もなく、姿も見えぬ何かがそっと触れてくる。それは恐ろしいものだった。少年は幽霊への恐怖で気分が悪くなった。どうすればよい? それが問題だったが、答えは分からなかった。この比較的快適な場所を捨て、正体の分からぬ恐怖から逃げるべきか? だが、どこへ? 納屋からは出られない。四方の壁に閉じ込められた暗闇の中を、やみくもに逃げ回り、その後を幽霊が滑るように追ってきて、曲がるたびに頬や肩へ、あの柔らかく恐ろしい感触を与える――そう考えるだけで耐えられなかった。だからといって、ここに留まり、一晩中この生き地獄に耐えるほうがましだろうか? 違う。では、ほかに何ができる? ああ、道は一つしかない。よく分かっていた――手を伸ばし、あれの正体を突き止めなければならない! 

考えるのは簡単だった。しかし実行する勇気を奮い起こすのは難しかった。三度、用心深く手を少しだけ暗闇へ伸ばし、息を呑みながら急いで引っ込めた。何かに触れたからではない。ただ、今にも触れると確信したからだった。だが四度目には、もう少し先まで手探りした。すると手が、柔らかく温かい何かを軽く撫でた。恐怖のあまり、ほとんど石のように固まった。精神が極度に緊張していたため、それは死んだばかりで、まだ温かい死体に違いないとしか考えられなかった。もう一度触れるくらいなら、死んだほうがましだと思った。だが、それは偽りの考えだった。人間の好奇心が不滅の力を持つことを、まだ知らなかったからである。ほどなく、本人の判断にも意志にも反して、震える手がまた探りはじめた。それでも手は頑固に進み続けた。やがて長い毛の房に触れた。少年は身震いしたが、その毛をたどり、温かい縄のようなものを見つけた。さらに縄をたどると、何の罪もない子牛へ行き着いた! 縄だと思ったものは縄ではなく、子牛の尻尾だったのだ。

眠っている子牛などという取るに足らないものから、あれほどの恐怖と苦しみを生み出したことを、国王は心から恥じた。だが、恥じる必要はなかった。彼を怯えさせたのは子牛ではなく、子牛が代わりを務めた、実在しない恐ろしい何かだったからである。迷信深かった昔の時代なら、ほかのどんな少年も同じように振る舞い、同じように苦しんだだろう。

その動物がただの子牛だと分かって、国王は喜んだだけではない。子牛という仲間ができたことも嬉しかった。あまりにも孤独で、味方が一人もいないと感じていたので、この卑しい動物であっても、そばにいて仲間となってくれることがありがたかったのだ。しかも人間たちから散々に打ちのめされ、手荒に扱われてきたあとだったので、ほかに高尚な性質は欠けているとしても、少なくとも心が柔らかく、穏やかな気性を持つ生き物と一緒にいられることは、本当の慰めだった。そこで身分の違いには目をつぶり、子牛と友達になることにした。

すぐ近く、楽に手の届く所へ横たわる、滑らかで温かな背を撫でているうち、この子牛は一つならず役に立つかもしれないと思いついた。そこで寝床を作り直し、子牛のすぐそばへ敷いた。それから背中へぴったり寄り添い、自分と友達の上へ毛布を引き上げた。すると一、二分のうちに、ウェストミンスターの宮殿で羽毛の寝台に横たわっていたときと変わらぬほど、温かく快適になった。

たちまち愉快な考えが浮かび、人生も明るく見えはじめた。隷属と犯罪の鎖から解放され、卑劣で残忍な無法者たちとの交わりからも自由になった。身体は温かく、雨風をしのぐ場所もある。つまり、幸せだった。夜風が強くなってきた。気まぐれな突風となって吹き抜け、古い納屋を揺らしてがたがた鳴らしたかと思えば、しばらく勢いを弱め、角や突き出た部分の周りで呻き、泣き叫んだ。しかし、ぬくぬくと快適になった国王には、すべてが音楽に聞こえた。吹け、荒れろ、叩け、鳴れ、呻け、泣け――何も気にならず、ただ楽しんでいた。温かな満足感に浸りながら、友達へさらに身体を寄せただけだった。そして幸せに意識を手放し、静穏と平安に満ちた、深く夢のない眠りへ落ちていった。遠くで犬が吠え、牛が物悲しく鳴き、風は荒れ続け、激しい雨が屋根を横殴りに打った。しかしイングランド国王陛下は、妨げられることなく眠り続けた。子牛も同じだった。単純な生き物なので、嵐には容易に悩まされず、国王と一緒に眠ることにも気後れしなかったのである。


第十九章 農民たちと王子

早朝、国王が目を覚ますと、濡れてはいるが気の利く鼠が夜の間に忍び込み、彼の胸元へ居心地のよい寝床を作っていた。目を覚まされると、鼠は慌てて走り去った。少年は微笑み、言った。「哀れな愚か者よ、なぜそれほど恐れる? わたしもおまえと同じく、頼る者のない身だ。自分もこれほど無力なのに、無力な者を傷つけるのは恥であろう。それに、よい兆しをもたらしてくれた礼を言わねばならぬ。国王が、鼠にまで寝床にされるほど落ちぶれたなら、運勢はきっと上向きはじめるに違いない。これ以上、下へは落ちようがないのだから。」

立ち上がって家畜房から出ると、ちょうど子供たちの声が聞こえた。納屋の扉が開き、二人の幼い少女が入ってきた。国王を見ると、話し声も笑い声も止まり、その場に立ち尽くして、強い好奇心を込めて見つめた。やがて互いにささやき合い、それから少し近づいて、また立ち止まり、見つめながらささやいた。ほどなく勇気が湧いてきたらしく、聞こえる声で国王について話しはじめた。一人が言った――

「きれいな顔をしているわ。」

もう一人が付け加えた――

「髪もきれい。」

「でも、服はずいぶん粗末ね。」

「それに、ひどくお腹を空かせているみたい。」

二人はさらに近づき、恥ずかしそうに横歩きしながら国王の周りを巡った。まるで見たこともない新種の動物でもあるかのように、あらゆる方向から細かく観察した。ただし、いつ噛みつくかもしれない動物ではないかと半ば恐れているように、用心深く警戒を怠らなかった。ついに二人は国王の前で立ち止まり、身を守るため互いの手を握り合うと、無邪気な瞳で心ゆくまで見つめた。それから一人がありったけの勇気を振り絞り、率直に尋ねた――

「あなたは誰なの?」

「わたしは国王だ」厳粛な返事が返ってきた。

子供たちはびくりとし、目を大きく見開いたまま、半分ほどの間、言葉を失った。やがて好奇心が沈黙を破った――

「国王? どこの国王なの?」

「イングランド国王だ。」

子供たちは顔を見合わせ、それから国王を見て、また互いの顔を見た。驚き、困惑している様子だった。やがて一人が言った――

「聞いた、マージェリー? 国王だって言ったわ。本当かしら?」

「本当でないはずがある、プリシー? この子が嘘を言うと思う? だってプリシー、本当でなかったら、それは嘘になるのよ。絶対そうよ。よく考えてみて。本当でないことは全部嘘なんだから、それ以外にはどうしようもないでしょう。」

どこにも隙のない、実に堅固な論法だった。そのため、プリシーの半信半疑は立っていられる足場を完全に失った。少し考えてから、単純な一言で国王の名誉に訴えた――

「あなたが本当に国王なら、信じるわ。」

「わたしは本当に国王だ。」

これで決着した。陛下が国王であることは、それ以上の疑問も議論もなく受け入れられた。二人の少女はすぐに、どうしてここにいるのか、なぜ国王らしくない服を着ているのか、どこへ向かうのか、そのほか身の上について何もかも尋ねはじめた。嘲られも疑われもしない相手へ苦しみを打ち明けられることは、国王にとって大きな救いだった。そこで一時は空腹さえ忘れ、感情を込めて身の上を語った。優しい少女たちは、深く温かな同情をもって話を聞いた。しかし直近の出来事まで話し、長い間何も食べていないと知ると、二人は話を遮り、朝食を探すため急いで農家へ連れていった。

国王はすっかり明るく幸せな気分になり、心の中で言った。「王位を取り戻したなら、わたしはいつまでも幼い子供たちを敬おう。苦難のとき、この子たちがわたしを信頼し、信じてくれたことを忘れまい。年上で、自分を賢いと思っている者たちは、わたしを嘲り、嘘つき呼ばわりしたのだから。」

少女たちの母親は親切に国王を迎え、深く同情した。見捨てられたような姿と、明らかに正気を失っているらしい様子が、女心を動かしたのである。女は寡婦で、暮らし向きもあまりよくなかった。そのため不幸を十分に経験しており、不運な者へ共感することができた。気のふれた少年が、友人か世話役のもとから迷い出たのだろうと考え、送り返す手段を講じるため、どこから来たのか聞き出そうとした。しかし近くの町や村の名をいくら挙げ、同じような質問を重ねても、何の役にも立たなかった。少年の顔を見ても、答えを聞いても、彼女が話す場所を知らないことは明らかだった。宮廷の事柄については真剣かつ率直に語り、先王である「父上」に触れると、何度も声を詰まらせた。しかし話題が卑近なものへ移ると興味を失い、黙り込んだ。

女はひどく困惑したが、諦めなかった。料理を続けながら、少年を不意打ちにして本当の秘密を漏らさせる方法を考えた。牛の話をしてみたが、興味を示さない。次に羊――結果は同じだった。つまり羊飼いの少年だったという推測は間違いだ。水車、織工、鋳掛け屋、鍛冶屋、あらゆる商売と職人、ベドラム[訳注:ロンドンの精神病院。転じて狂騒や混乱の代名詞]、牢獄、慈善救護院についても話した。しかし、どれも駄目だった。ことごとく失敗したのである。いや、完全な失敗でもなかった。これで家事奉公まで絞り込めたと女は考えた。そうだ、今度こそ正しい道にいる。きっと屋敷の使用人だったのだ。そこで、その話へ導いた。しかし結果は落胆すべきものだった。掃除の話をすると、少年は退屈そうにした。火を起こす話にも反応せず、磨き掃除にも興味を示さなかった。善良な主婦は消えかけた望みを抱き、ほとんど形式的に、料理の話題へ触れた。すると驚いたことに、そして大いに喜んだことに、国王の顔がたちまち輝いた! ああ、とうとう追い詰めた、と女は思った。そこまでたどり着いた自分の回りくどい知恵と巧みさを、ひどく誇らしくも思った。

疲れた女の舌は、ようやく休む機会を得た。国王の舌が、胃を噛むような空腹と、音を立てる鍋や平鍋から漂う香ばしい匂いに刺激され、自由に動きはじめたからである。いくつかの美味な料理について、あまりに雄弁な講釈を披露したので、三分も経たぬうちに女は心の中で言った。「やはり思ったとおり。この子は台所で手伝いをしていたのだ!」

やがて国王は献立の範囲を広げ、深い理解と熱意をもって語った。主婦は心の中で言った。「まあ! どうして、こんなに多くの料理、それもこれほど上等な料理を知っているのだろう? 金持ちや身分の高い人の食卓にしか出ないものばかりなのに。ああ、分かった! 今はぼろをまとった浮浪児だけれど、正気を失う前は宮殿で働いていたに違いない。そうだ、国王ご自身の台所で手伝っていたのだ! 試してみよう。」

自分の賢さを証明したくてたまらなかった女は、少しの間料理を見ているよう国王に頼み、望むなら一、二品作って加えてもよいとほのめかした。それから部屋を出て、子供たちにもついてくるよう合図した。国王はつぶやいた――

「昔、別のイングランド国王も、これと似た務めを与えられた。偉大なるアルフレッド王[訳注:農家に身を寄せ、パン菓子の番を任されながら焦がしたという伝説で知られる]が引き受けた仕事を、わたしが務めても威厳は損なわれぬ。だが、アルフレッド王より立派に責任を果たそう。王はパン菓子を焦がしてしまったからな。」

意図は立派だったが、実行が伴わなかった。この国王も、もう一人の国王と同じように、国の重大事を考えるうち、すぐ物思いに沈んでしまったからである。その結果、同じ災難が起きた――料理は焦げた。女は朝食が完全に駄目になる寸前に戻り、景気のよい遠慮のない叱責で、国王を夢想から引き戻した。しかし託された務めを破ったことに少年が深く心を痛めていると分かると、すぐに態度を和らげ、ひたすら優しく親切に接した。

少年は腹いっぱい満足するまで食べ、すっかり元気を取り戻して喜んだ。その食事には、奇妙な特色があった。双方が身分の違いに目をつぶったのだが、どちらも相手がそうしてくれたとは気づいていなかったのである。主婦は当初、この若い浮浪児をほかの浮浪者や犬と同じように、隅へ座らせ、残り物を与えるつもりだった。しかし叱りつけたことをひどく後悔し、償いとして、家族の食卓へ着き、目上の者たちと表向きは対等な立場で食べることを許した。一方、国王も、自分に親切にしてくれた一家から託された務めを破ったことを深く悔やんでいた。その償いとして、自らを一家と同じ水準にまでへりくだらせることにした。本来なら、生まれと威厳にふさわしく、一人で食卓を占め、女と子供たちを立たせて給仕させるべきところだった。時には肩の力を抜くことが、誰にとってもよい働きをする。この善良な女は、浮浪児に対して寛大にへりくだった自分を一日中褒め続け、幸せに過ごした。一方、国王も卑しい農婦へ慈悲深くへりくだった自分に、同じくらい満足していた。

朝食が終わると、主婦は国王に食器を洗うよう言いつけた。この命令には一瞬、ひどく面食らい、危うく反抗しかけた。だが心の中で言った。「アルフレッド大王はパン菓子の番をした。ならば食器も洗ったに違いない。よって、わたしも試みよう。」

出来栄えはかなりお粗末だった。本人も驚いた。木の匙や木皿を洗うくらい、簡単なことに思えたからである。退屈で面倒な仕事だったが、ついには終えた。そろそろ旅へ戻りたいという焦りが強くなってきた。しかし、この倹約家の女からそう簡単に逃れられるはずもなかった。女は細々した仕事をいくつか与えた。国王はまずまずの出来で片づけ、いくらか面目も保った。それから幼い少女たちとともに冬リンゴの皮をむかされた。しかし、あまりに不器用だったので、その仕事からは外され、代わりに肉切り包丁を研がされた。

その後は羊毛を梳かされ続けた。国王は、物語や歴史書で絵になりそうな華々しい下働きの英雄譚に関しては、ひとまず善王アルフレッドを十分にしのいだのではないかと思いはじめた。そこで半ば、役目を辞する気になった。そして昼食が終わった直後、主婦から溺れさせるよう子猫の入った籠を渡されると、本当に辞めることにした。少なくとも、まさに辞めようとしていた。どこかで一線を引かねばならないと感じており、子猫を溺れさせる仕事の手前こそ、その線を引くのにちょうどよいと思ったのだ――そのとき、邪魔が入った。現れたのは、行商人の荷を背負ったジョン・キャンティと、ヒューゴだった。

国王は、二人が自分に気づくより先に、悪党どもが正門へ近づいてくるのを見つけた。そこで一線を引く話は何もせず、子猫の籠を持ち上げると、黙って裏口から静かに出ていった。子猫たちは物置小屋へ残し、家の裏手にある狭い小道へ急いだ。


第二十章 王子と隠者

今や高い生け垣が少年の姿を家から隠していた。死ぬほどの恐怖に駆られ、持てる力のすべてを振り絞って、遠くに見える森へと駆けだした。森の隠れ場へあと少しというところまで、一度も振り返らなかった。そこで初めて振り向くと、遠くに二つの人影が見えた。それだけで十分だった。誰なのか確かめようともせず、さらに先へと急ぎ、森の薄暗い奥深くへ入り込むまで速度を緩めなかった。そこでようやく立ち止まった。ここまで来れば、ひとまず安全だと思ったのである。耳を澄ませたが、辺りは深く厳粛な静寂に包まれていた――恐ろしく、気の滅入るほどの静けさだった。長い間を置いて、ときおり張り詰めた耳に物音が届いたが、それはあまりにも遠く、うつろで、不可思議な響きを帯びていたため、現実の音ではなく、死者の亡霊が嘆き訴える声のように思われた。ゆえにその物音は、破られる前の静寂よりもいっそう物寂しかった。

初めはその場で一日を過ごすつもりだった。だが、汗に濡れた体へじきに寒気が忍び込み、ついには体を温めるため、再び歩きださざるを得なくなった。やがて街道へ出られることを願い、森をまっすぐ突っ切って進んだが、その期待は裏切られた。歩いても歩いても、先へ進むほど森はむしろ深くなっていくようだった。やがて闇が濃くなり始め、王は夜が迫っていることに気づいた。こんな不気味な場所で夜を明かすのかと思うと身震いした。そこで足を速めようとしたが、かえって進みは遅くなった。もう足元がよく見えず、踏み場を慎重に選べなかったからである。そのため木の根につまずいては、蔓や茨に絡め取られた。

だから、ついに明かりのちらつきを目にしたときの喜びは、どれほどだったことか。少年は幾度も立ち止まって周囲を見回し、耳を澄ませながら、用心深く近づいていった。明かりは、みすぼらしい小屋の、ガラスもはまっていない窓穴から漏れていた。やがて声が聞こえ、逃げて身を隠したい衝動に駆られた。だが、それが明らかに祈りの声だと分かると、すぐに思い直した。小屋に一つしかない窓へ忍び寄り、爪先立ちになって、そっと中をのぞいた。部屋は狭かった。床はむき出しの土で、長年踏み固められていた。隅には藺草の寝床と、ぼろぼろの毛布が一、二枚。そのそばには手桶、杯、洗面器、それに鍋や平鍋が二、三個あった。短い腰掛けと三本脚の椅子もある。炉では薪束の燃え残りがくすぶっていた。一本のろうそくに照らされた祭壇の前には、一人の老人がひざまずいており、その脇の古い木箱には、開かれた本と人間の頭蓋骨が置かれていた。老人は大柄で骨張り、髪も頬ひげも非常に長く、雪のように白かった。首から踵まで届く羊皮の衣をまとっていた。

「聖なる隠者だ!」王は心の中で言った。「これで本当に運が向いてきたぞ。」

隠者がひざまずいた姿勢から立ち上がると、王は戸を叩いた。低く太い声が応じた――

「入れ! ――されど罪は外へ置いてこい。そなたが足を踏み入れる地は聖なる場所なれば!」

王は中へ入り、立ち止まった。隠者はぎらぎらと落ち着きのない目を少年に向けて言った――

「何者だ?」

「私は王だ」穏やかで飾り気のない答えが返ってきた。

「ようこそ、王よ!」隠者は熱狂して叫んだ。それから熱に浮かされたようにせわしなく動き回り、絶えず「ようこそ、ようこそ」と繰り返しながら腰掛けを整え、王を炉端に座らせ、火へ薪束をいくつか投げ込んだ。そして最後には、神経質な足取りで部屋を行き来し始めた。

「ようこそ! これまで多くの者がここに聖域を求めてきた。だが、いずれもその資格がなく、追い返された。しかし、王冠を投げ捨て、地位の空しい栄華を蔑み、身をぼろ布に包み、聖なる生活と肉体の苦行に生涯を捧げる王――その者には資格がある。歓迎しよう! ――死が訪れるその日まで、ここに住まうがよい。」

王は慌てて口を挟み、事情を説明しようとした。だが隠者は一向に構わなかった――どうやら耳に入りさえしないらしく、声を高め、ますます勢いを増して話し続けた。「ここならば、そなたは安らかに暮らせる。神がそなたに捨てさせた、あの空虚で愚かな生活へ戻ってくれと嘆願し、心を乱す者にも、この隠れ家を見つけさせはせぬ。ここで祈り、『聖書』を学ぶのだ。この世の愚かさと迷妄、そして来世の崇高さに思いを巡らすがよい。パンの皮と野草を食らい、魂を清めるため、毎日鞭で体を打つのだ。素肌には毛織りの苦行衣をまとい、水だけを飲め。そうすれば安らかでいられる。そう、完全なる平安だ。そなたを捜しに来る者は、誰であれ目的を果たせぬまま引き返す。そなたを見つけることも、悩ませることもできぬ。」

老人はなおも行ったり来たりしながら、大声で話すのをやめ、ぶつぶつと独り言をつぶやき始めた。王はこの機を逃さず、自分の事情を訴えた。不安と恐れに突き動かされ、雄弁に語ったのである。だが隠者はつぶやき続け、まるで耳を貸さなかった。そしてなおもぶつぶつ言いながら王へ近づき、重々しく告げた――

「しっ! 秘密を教えてやろう!」

身をかがめて打ち明けようとしたが、ふと口をつぐみ、何かに聞き耳を立てた。しばらくすると爪先立ちで窓穴へ行き、頭を外へ突き出して、夕闇の中を見回した。それからまた爪先立ちで戻り、王の顔へ自分の顔を近づけ、ささやいた――

「わしは大天使なのだ!」

王は激しく身を震わせ、心の中で言った。「ああ、無法者どものところへ戻れたなら! 見よ、今や私は狂人の囚われ人となってしまった!」

王の不安はますます募り、それが顔にはっきり表れた。隠者は興奮を押し殺した低い声で続けた――

「わしの漂わせる霊気を感じるのだな! そなたの顔には畏れがある! この霊気の中にいて、心を動かされぬ者などおらぬ。これはまさしく天国の霊気だからだ。わしは瞬きする間に天へ昇り、また戻ってくる。五年前、まさにこの場所で、天より遣わされた天使たちから、畏れ多き大天使の位を授けられた。天使たちが現れると、ここは耐え難いほどの光に満たされた。そして彼らは、わしの前にひざまずいたのだ、王よ! そう、わしにひざまずいた! なぜなら、わしは彼らより偉大だったからだ。わしは天国の宮廷を歩き、族長たちと言葉を交わした。この手に触れてみよ――恐れるな――触れるがよい。ほら――今そなたは、アブラハム、イサク、ヤコブが握った手に触れたのだ! わしは黄金の宮廷を歩いた。神をその目で、顔と顔を合わせて拝したのだ!」

老人は言葉の効果を味わうように間を置いた。すると顔つきが急に変わり、また立ち上がって、怒りに満ちた勢いで言った。「そうだ、わしは大天使だ。

たかが大天使にすぎぬ!――教皇になれたはずの、このわしが! これは

紛れもない真実だ。二十年前、夢の中で天から告げられた。ああ、そうだ、わしは教皇になるはずだった! ――いや、教皇になっていたはずなのだ。天がそう定めたのだから――それなのに王がわしの修道院を解散させ、貧しく名もなく後ろ盾もない修道士だったわしは、偉大なる運命を奪われ、家も宿もなく世間へ放り出された!」

そこで老人はまたぶつぶつ言い始め、むなしい怒りに駆られて拳で額を叩いた。ときおり毒々しい呪いの言葉を吐き、ときおり哀れっぽく、「ゆえに、わしは大天使にすぎぬ――教皇になるはずだった、このわしが!」と嘆いた。

老人は一時間もそうして語り続け、その間、哀れな小さな王は座ったまま耐えていた。だが突然、老人の狂乱は消え去り、すっかり穏やかになった。声は柔らかくなり、雲の上から地上へ降りてきたかのように、ごく素朴で人間らしい世間話を始めた。そのため、ほどなく王の心を完全につかんでしまった。老いた信仰者は少年を火の近くへ寄せ、楽な姿勢を取らせると、手際よく優しい手つきで小さな打ち身や擦り傷を手当てした。それから夕食の支度と料理に取りかかった――その間も楽しげに話し続け、ときどき少年の頬を撫でたり、頭を軽く叩いたりした。その慈しみに満ちた愛撫を受けるうちに、大天使に対して抱いた恐怖と嫌悪は、やがて人間としての老人に対する敬愛へと変わっていった。

二人が夕食を取っている間、この幸福な空気は続いた。その後、祭壇の前で祈りを捧げると、隠者は隣の小部屋で少年を寝かせ、母親のように優しく、隙間なく寝具を掛けてやった。そして別れ際にひと撫でしてから部屋を出て、炉端に腰を下ろし、ぼんやりと当てもなく燃えさしをつつき始めた。やがて手を止めた。それから、頭から抜け落ちた何かを思い出そうとするように、指で何度か額を叩いた。どうやら思い出せなかったらしい。突然勢いよく立ち上がり、客の部屋へ入って言った――

「そなたは王なのか?」

「そうだ」眠そうな返事が返った。

「何の王だ?」

「イングランドの。」

「イングランドだと? では、ヘンリーは死んだのか!」

「ああ、そのとおりだ。私はその息子だ。」

隠者の顔に暗い険が浮かび、骨張った両手を執念深く握り締めた。しばらくその場に立ち、荒い息をついて何度も唾をのみ込むと、かすれた声で言った――

「われらから住まいを奪い、家なき身で世間へ追い出したのが、あやつだと知っているか?」

返事はなかった。老人は身をかがめ、穏やかに眠る少年の顔を見つめ、静かな寝息に耳を澄ませた。「眠っておる――ぐっすりとな」険しい表情が消え、代わりに邪悪な満足が浮かんだ。夢見る少年の顔に、かすかな微笑がよぎった。隠者は「そうか――心は幸せなのだな」とつぶやき、背を向けた。老人は小屋の中をこそこそと歩き回り、何かを捜した。ときどき立ち止まって耳を澄ませ、ときどき急に首を回して寝床へ素早く目をやり、その間も絶えず独り言をつぶやいていた。ついに目当ての物を見つけたらしい――錆びついた古い肉切り包丁と砥石だった。それを持って炉端へ忍び寄り、腰を下ろすと、なおもつぶやき、ぶつぶつ言い、ときおり声を漏らしながら、砥石で静かに包丁を研ぎ始めた。風が寂しい小屋の周りでため息をつき、夜の不可思議な声が遠くから漂ってきた。大胆な鼠たちの光る目が、割れ目や物陰から老人をうかがっていた。だが隠者は夢中で作業を続け、何一つ気づかなかった。

長い間を置いては、包丁の刃へ親指を滑らせ、満足げにうなずいた。「鋭くなってきた」と老人は言った。「そうだ、鋭くなってきた。」

時の流れにも気づかず、老人は自分の思いに浸りながら、穏やかに作業を続けた。その思いは、ときおり明瞭な言葉となって口から漏れた――

「あやつの父親はわれらに害をなし、われらを滅ぼした――そして永遠の炎へ堕ちた! そうだ、永遠の炎へ! あやつはわれらの手を逃れた――だが、それは神の御心だった。そう、神の御心だったのだ。不平を言ってはならぬ。だが炎からは逃れられなかった! そうだ、炎からは逃れられぬ。すべてを焼き尽くす、慈悲なき、容赦なき炎からは――そして

その炎は永遠に消えぬ!」

こうして老人は作業を続け、なおも研ぎ続けた――ぶつぶつ言い、ときには低く耳障りな含み笑いを漏らし、またときには言葉を発した――

「すべてはあやつの父親がしたことだ。わしはたかが大天使。あやつさえいなければ、教皇だったものを!」

王が身じろぎした。隠者は音もなく寝床へ飛び寄り、ひざまずくと、包丁を振り上げたまま、横たわる少年の上へ身を屈めた。少年がまた動いた。目が一瞬開いたが、そこに意識の光はなく、何も見てはいなかった。次の瞬間、静かな寝息から、再び深い眠りに落ちたことが分かった。

隠者はしばらくその姿勢のまま、ほとんど息もせずに見守り、耳を澄ませていた。それからゆっくりと腕を下ろし、やがて這うように離れながら言った――

「真夜中はとうに過ぎた。叫ばせるわけにはいかぬ。たまたま誰かが通りかからぬとも限らぬからな。」

老人はあばら小屋の中を滑るように動き回り、こちらでぼろ布、あちらで革紐、さらに向こうでも別の紐を拾い集めた。それから戻ってくると、慎重かつ優しく扱い、王を起こさずに両足首を縛り合わせた。次に両手首を縛ろうとした。手を交差させようと何度か試みたが、紐を掛けようとするたび、少年はどちらかの手を引いてしまう。だがついに、大天使がもう諦めかけたとき、少年が自分から両手を重ね、次の瞬間には縛り上げられていた。続いて、眠る少年の顎の下へ布を通し、頭の上へ回して固く結んだ――あまりにも静かに、ゆっくりと、巧みに結び目を締めたため、少年は一度も身じろぎせず、最後まで安らかに眠り続けた。


第二十一章 ヘンドン、救出に来る

老人は身をかがめ、猫のように忍び足で滑るように去り、低い腰掛けを持ってきた。そこへ腰を下ろすと、体の半分はぼんやり揺らめく明かりに照らされ、残り半分は影に沈んだ。そして眠る少年へ貪るような目を注ぎ、時の流れにも頓着せず、じっと辛抱強く見張り続けた。静かに包丁を研ぎながら、ぶつぶつと独り言を言い、含み笑いを漏らす。その姿と物腰は、網にかかって身動きもできない哀れな虫を眺めて悦に入る、灰色の巨大な化け蜘蛛そのものだった。

長い時が過ぎた。老人はなお少年を見つめていた――だが実際には何も見ておらず、心は夢のような物思いへ沈んでいた――そのとき突然、少年の目が開いていることに気づいた! 大きく見開かれ、包丁を凍りついた恐怖のまなざしで見つめている! 満ち足りた悪魔のような笑みが老人の顔に忍び寄った。姿勢も手の動きも変えぬまま、老人は言った――

「ヘンリー八世の息子よ、祈りは済ませたか?」

少年は縛られたまま必死にもがき、それと同時に、固く閉ざされた顎の間から、くぐもった声を押し出した。隠者はそれを、質問への肯定の返事と勝手に受け取った。

「ならば、もう一度祈れ。臨終の祈りを唱えるのだ!」

少年の体を震えが走り、顔から血の気が引いた。それから再び自由になろうともがいた――体をあちらへねじり、こちらへひねり、気も狂わんばかりに、激しく、必死になって戒めを引きちぎろうとした――だが無駄だった。その間も老いた人食い鬼は少年を見下ろして微笑み、うなずきながら、悠然と包丁を研ぎ、ときおりつぶやいた。「時は貴重だ。残り少なく、貴重なのだ――臨終の祈りを唱えよ!」

少年は絶望のうめきを漏らし、もがくのをやめて、荒い息をついた。やがて涙が浮かび、一粒、また一粒と頬を伝った。しかし、その痛ましい光景にも、残忍な老人の心は少しも和らがなかった。

今や夜明けが迫っていた。隠者はそれに気づき、声に神経質な焦りをにじませて、鋭く言った――

「これ以上、この恍惚に浸ってはおれぬ! 夜はもう明けた。ほんの一瞬に思える――ただの一瞬だ。一年続いてくれたなら! 教会を荒らした者の血を引く者よ、これから見るものが恐ろしいなら、滅びゆくその目を閉じ――」

残りの言葉は、意味をなさないつぶやきに消えた。老人は包丁を手にひざまずき、うめく少年の上へ身を屈めた。

聞け! 小屋の近くで人の声がした――包丁が隠者の手から落ちた。老人は少年へ羊皮をかぶせ、震えながら立ち上がった。物音は大きくなり、やがて声は荒々しく怒気を帯びた。次いで殴り合う音、助けを求める叫び、そして急ぎ遠ざかる足音が続いた。直後、小屋の戸を雷鳴のように叩く音が立て続けに響き、声がした――

「おーい! 開けろ! 悪魔どもの名にかけて、ぐずぐずするな!」

ああ、これほど喜ばしい音色が王の耳を楽しませたことはなかった。マイルズ・ヘンドンの声だったからだ! 

隠者はどうにもならない怒りに歯ぎしりしながら、素早く寝室を出て、後ろ手に戸を閉めた。すると王の耳に、すぐさま「礼拝室」から、次のような会話が聞こえてきた――

「敬意をもってご挨拶申し上げる、ご尊師! 少年はどこだ――私の少年は?」

「何の少年だ、友よ?」

「何の少年だと! 嘘をつくな、坊主殿、私をだまそうとするな! ――今はそんなものにつき合う気分ではない。この近くで、少年を私からさらったと思しき悪党どもを捕らえ、白状させた。奴らの話では、少年はまた逃げだし、この戸口まで跡を追ってきたそうだ。実際に足跡まで見せられた。もう言葉を濁すな。よいか、聖者殿、少年を出さぬなら――どこにいる?」

「おお、善良なる御仁よ、もしや昨夜ここへ泊まった、ぼろをまとった王気取りの浮浪児のことであろうか。あのような者に関心をお持ちなら、使いに出したと知るがよい。じきに戻る。」

「どれくらいで? どれくらいで戻る? さあ、時間を無駄にするな――今から追いつけるか? いつ戻る?」

「出かける必要はない。すぐ戻ってくる。」

「ならばよい。待つとしよう。だが待て! ――お前が使いに出しただと? ――お前が! まったくの嘘だ――あの子が行くものか。そんな無礼を言いつければ、その老いぼれたひげを引き抜くだろう。嘘をついたな、友よ。間違いなく嘘だ! あの子はお前のためにも、誰のためにも使いになど行かぬ。」

「どんな人間のためにも――そう、行かぬかもしれぬ。だが、わしは人間ではない。」

何だと! では神にかけて、いったい何者だ?」

「秘密だ――決して漏らすな。わしは大天使なのだ!」

マイルズ・ヘンドンがすさまじい声を上げた――まったく罰当たりでなかったとは言い難い――そして続けた。

「なるほど、それなら少年が素直に従ったのも、実にもっともだ! ただの人間の卑しい用事なら、手どころか足一本動かさぬと知っていた。だが何と、王でさえ大天使から命令されれば従わねばならぬ! では私も――しっ! 今の音は何だ?」

その間ずっと、小さな王は奥で、あるときは恐怖に震え、あるときは希望に胸を震わせていた。そして苦しいうめきに、ありったけの力を注ぎ続けた。ヘンドンの耳へ届くことを絶えず期待しながらも、そのたびに届かなかったか、少なくとも何の注意も引かなかったことを、苦い思いで悟っていた。それだけに、この従者の最後の言葉は、死にかけた者へ新鮮な野の息吹が蘇生をもたらすように響いた。王は隠者が言いかけるのと同時に、もう一度、全力を振り絞った――

「音だと? 聞こえたのは風だけだ。」

「そうかもしれぬ。ああ、きっとそうだろう。さっきからかすかに聞こえて――まただ! 風ではない! 何とも奇妙な音だ! さあ、突き止めよう!」

今や王の喜びは、耐え難いほどに膨れ上がった。疲れ切った肺を希望とともに限界まで働かせた――だが固く縛られた顎と、上にかぶせられた羊皮が、その努力をひどく妨げた。そして隠者がこう言うのを聞き、哀れな少年の心は沈んだ――

「ああ、外から聞こえた――向こうの雑木林からだと思う。来い、案内しよう。」

王は二人が話しながら外へ出るのを聞いた。足音はたちまち遠ざかり、消えていった――そして少年は、何か凶事をはらんで重く沈む、恐ろしい静寂の中に一人残された。

再び足音と声が近づくまで、永遠の時が過ぎたように思えた――今度は別の音も加わっていた。どうやら馬の蹄の音だった。やがてヘンドンの声が聞こえた――

「これ以上は待たぬ。もう待てぬ。この深い森で道に迷ったのだ。どちらへ行った? 早く――方角を示してくれ。」

「あの者は――いや待て。わしも一緒に行こう。」

「よし――よし! まったく、見かけよりずっと立派な男ではないか。誓って、お前ほど心根の正しい大天使はほかにおるまい。乗るか? 私の少年のために用意した小さな驢馬に乗るか、それとも私自身のために調達した、この性悪な奴隷同然の騾馬へ、聖なる両脚をまたがせるか? ――もっとも、失業中の鋳掛け屋へ貸した真鍮の一ファージングに、一か月分の利息をつけた程度の値段だったとしても、買った私はだまされたことになるが。」

「いや――そなたは騾馬に乗り、驢馬を引くがよい。わしは自分の足のほうが確かだ。歩いていこう。」

「では、どうかこの小さな獣を見ていてくれ。私は命懸けで、できる限り大きいほうへ乗ってみる。」

続いて、蹴る音、殴る音、踏みつける音、跳ね回る音が入り乱れ、そこへ雷鳴のように浴びせられる呪いの言葉が加わった。最後には騾馬へ向けた痛烈な罵倒が響き、それが騾馬の心をくじいたらしい。その瞬間から戦いは収まったようだった。

縛られた小さな王は、言葉では言い表せない苦しみの中で、声と足音が遠ざかり、消えていくのを聞いた。今や一時的に、あらゆる希望が少年を見捨て、鈍い絶望が心を覆った。「たった一人の味方がだまされ、追い払われてしまった」と少年は言った。「隠者が戻ってきて、それから――」息をのみ、言葉を切った。そしてすぐさま、再び気も狂わんばかりに縄と格闘し、かぶせられていた羊皮を振り落とした。

そのとき、戸が開く音がした! その音に骨の髄まで凍りついた――すでに喉へ包丁が当たる感触さえ覚えた。恐怖のあまり目を閉じた。だが同じ恐怖に駆られて、また目を開いた――すると目の前に立っていたのは、ジョン・キャンティとヒューゴだった! 

顎が自由だったなら、「神よ、感謝します!」と言っていただろう。

一、二分後には手足も自由になり、二人の捕らえ手に片腕ずつつかまれ、森の中を全速力で連れ去られていた。


第二十二章 裏切りの犠牲者

「フーフー一世陛下」は再び浮浪者と無法者の群れをさすらい、彼らの下品な冗談や鈍い頭から出る冷やかしの的となった。さらに首領が背を向けているときには、キャンティやヒューゴから、ささやかな意地悪を受けることもあった。本当に少年を嫌っていたのは、キャンティとヒューゴだけだった。ほかの者の中には少年を好く者もおり、その勇気と気概には誰もが感服していた。王を監視し、管理する役目を負っていたヒューゴは、二、三日の間、少年を不愉快にさせようと人知れずあらゆることをした。夜の恒例のどんちゃん騒ぎでは、いつも事故を装いながら、小さな屈辱を加えて一同を楽しませた。二度、王の足の指を――偶然に――踏みつけたが、王は王たる者らしく、侮蔑を込めて気づかぬふりをし、相手にしなかった。ところが三度目にヒューゴが同じ遊びをしたとき、王は棍棒でヒューゴを地面へ叩き倒した。仲間たちは大喜びした。怒りと恥辱に焼かれたヒューゴは跳ね起き、棍棒をつかんで、小さな敵へ猛烈な勢いで襲いかかった。たちまち剣闘士二人を囲む輪ができ、賭けと声援が始まった。

だが哀れなヒューゴには、まるで勝ち目がなかった。狂ったように繰り出される不器用な見習い芸など、一本棒、長杖、あらゆる剣術の技と駆け引きを、ヨーロッパ随一の師範たちから叩き込まれた腕を相手にしては、何の値打ちもない。小さな王は油断なく、それでいて優雅な余裕を保って立ち、雨あられと降り注ぐ棍棒の一撃を、たやすく正確に受け流した。そのたびに、雑多な見物人たちは熱狂的な賛嘆の声を上げた。そして熟練した目が隙を見抜き、稲妻のように素早い一撃がヒューゴの頭へ炸裂するたび、その場を揺るがす歓声と笑い声は、聞くも驚くほどだった。十五分後、全身を打たれて痣だらけになり、容赦ない嘲笑の砲火を浴びたヒューゴは、こそこそと戦場から逃げ去った。一方、無傷の英雄は歓喜する群衆に担ぎ上げられ、首領の隣にある上座へ運ばれた。そこで盛大な儀式とともに「闘鶏王」の冠を授けられた。同時に、それまでの卑しい称号は厳粛に取り消され、無効とされた。以後その名を口にする者は一味から追放する、との布告まで出された。

王を一味の役に立たせようとする試みは、どれも失敗していた。少年は頑として働くことを拒み、そのうえ絶えず逃げようとしていた。連れ戻された初日、見張りのいない台所へ押し込まれたが、手ぶらで出てきただけでなく、家人たちへ警告しようとまでした。鋳掛け屋の仕事を手伝わせるため、一緒に送り出されたときも働かなかった。それどころか、鋳掛け屋自身のはんだごてで脅した。結局ヒューゴと鋳掛け屋は、逃げ出させないようにするだけで手いっぱいになった。自由を妨げたり、無理やり働かせようとしたりする者の頭上には、王者の雷を落とした。ヒューゴの監視のもと、だらしない女と病気の赤ん坊と一緒に物乞いへ出されたが、その結果も芳しくなかった――物乞いのために人へ哀願することも、その仕事へいかなる形であれ加担することも拒んだからだ。

こうして数日が過ぎた。この放浪生活の苦しさ、疲労、むさ苦しさ、卑しさ、下品さは、徐々に、そして着実に、囚われの少年にとって耐え難いものとなっていった。ついには、隠者の包丁から救われたのも、せいぜい死刑の執行が一時延期されただけなのだと思い始めた。

だが夜の夢の中では、そうしたことをすべて忘れ、再び王座に就き、すべての主となっていた。当然、目覚めたときの苦しみはそれだけ強まった。再び囚われてからヒューゴとの決闘までの短い間、朝を迎えるたびに屈辱は苦みを増し、ますます耐え難くなっていった。

決闘の翌朝、ヒューゴは王への復讐心を胸いっぱいに抱いて起きた。とりわけ二つの計画があった。一つは、誇り高い心と「思い込みの」王位にとって、格別の屈辱となる仕打ちを少年へ加えること。これに失敗した場合のもう一つの計画は、何らかの罪を王へ着せ、それから情け容赦ない法の手へ裏切って引き渡すことだった。

第一の計画を実行するため、ヒューゴは王の脚に「クライム」を作ろうとした。それなら少年を徹底的に、完膚なきまでに辱められると正しく見抜いていたのだ。そしてクライムが出来上がればキャンティの手を借り、街道で王に脚をさらさせ、無理やり施しを乞わせるつもりだった。「クライム」とは、人為的に作った潰瘍を指す隠語である。クライムを作る者は、生石灰、石鹸、古い鉄の錆を練って膏薬か湿布にし、革切れへ塗りつけ、それを脚へきつく縛りつける。やがて皮膚が擦り剥け、肉がむき出しになって赤く腫れ上がる。そこへ血を擦り込み、完全に乾かすと、患部は黒ずんで見るもおぞましい色になる。最後に、汚れたぼろ布の包帯をわざと無造作に巻き、恐ろしい潰瘍が見えるようにして、通行人の同情を誘うのである。

ヒューゴは、王にはんだごてで脅された鋳掛け屋の手を借りた。二人は少年を鋳掛け仕事の旅へ連れ出し、野営地が見えなくなるとすぐ地面へ押し倒した。鋳掛け屋が押さえつけている間に、ヒューゴが湿布を脚へきつく、外れないように縛りつけた。

王は激怒してわめき散らし、再び笏を手にした暁には、二人を即刻絞首刑にすると言い渡した。だが二人はしっかり押さえつけたまま、無力な抵抗を楽しみ、その脅しを嘲笑した。湿布が皮膚を蝕み始めるまで、これが続いた。邪魔さえ入らなければ、間もなく目的を果たしていただろう。だが邪魔は入った。ちょうどそのころ、イングランドの法律を非難する演説をした例の「奴隷」が現れ、企みをやめさせて、湿布と包帯を剥ぎ取ったのである。

王は助けてくれた男の棍棒を借り、その場で悪党二人の背中をたっぷり温めてやりたいと言った。しかし男は、騒ぎになるから駄目だと答えた――夜まで待て、一味全員がそろっていれば、外の人間もあえて干渉したり邪魔したりはしない、と。男は一行を野営地へ連れ戻し、首領へ一件を報告した。首領は耳を傾け、考え込んだ末、王を二度と物乞いへ出してはならぬと裁定した。もっと高尚で立派な仕事にふさわしいことは明白だというのである――そこでその場で物乞いの身分から昇進させ、盗みを命じた! 

ヒューゴは大喜びした。以前にも王へ盗みをさせようとして失敗していたが、今度はもう、そんな問題は起きないだろう。首領から直接下された明確な命令へ、王が逆らおうなどと考えるはずがないからだ。そこでヒューゴは、その日の午後にも盗みを働く計画を立て、その最中に王を法の手へ落とそうとした。しかも巧妙な策を用い、すべてが偶然で意図せぬ出来事に見えるようにするつもりだった。闘鶏王は今や人気者であり、共通の敵たる法律へ引き渡すほどの重大な裏切りをすれば、人気のない一味の者には、仲間たちもさほど優しく接してくれないかもしれなかったからだ。

さて、頃合いを見計らい、ヒューゴは獲物を連れて近くの村へぶらぶら出かけた。二人は通りから通りへゆっくり行きつ戻りつした。一方は邪悪な目的を確実に遂げられる機会を鋭くうかがい、もう一方も、この恥ずべき囚われの身から永遠に逃れられる機会を、同じように鋭くうかがっていた。

二人とも、一見かなり有望そうな機会をいくつか見送った。どちらも心の中で、今度こそ絶対に失敗しないと決めており、熱に浮かされた望みに負けて、不確実な企てへ手を出すつもりはなかったからだ。

先に機会をつかんだのはヒューゴだった。やがて、何やらたっぷり詰まった包みを籠に入れて運ぶ女が近づいてきた。ヒューゴの目は罪深い喜びに輝き、心の中で言った。「命にかけても、あれをあいつの仕業にできさえすれば、闘鶏王ともめでたくお別れだ。神の御加護を!」

ヒューゴは女が通り過ぎ、機が熟すまで待ち、見守った――外見は辛抱強く装っていたが、内心では興奮に身を焦がしていた――そして低い声で言った。

「俺が戻るまでここにいろ」そう言うと、獲物を追ってこっそり駆けだした。

王の心は喜びに満ちた――ヒューゴが十分遠くまで行きさえすれば、今こそ逃げられる。

だが、そんな幸運には恵まれなかった。ヒューゴは女の背後へ忍び寄り、包みをひったくると、腕に掛けていた古い毛布でそれを包みながら、走って戻ってきた。盗むところは見ていなかったものの、荷が軽くなったことで被害に気づいた女は、たちまち大声で騒ぎ立てた。ヒューゴは足を止めず、包みを王の手へ押しつけて言った――

「さあ、ほかの連中と一緒に俺を追いかけて、『泥棒を捕まえろ!』と叫べ。だが、奴らを間違った方角へ導け!」

次の瞬間、ヒューゴは角を曲がって、曲がりくねった路地を駆けていった――ところが一、二分後には、無邪気で何も気にしていない様子を装って、再びぶらぶらと姿を現し、結果を見物するため柱の後ろへ陣取った。

侮辱を受けた王は、包みを地面へ投げ捨てた。女が追っ手を増やしながら到着したちょうどそのとき、毛布がほどけて中身が露わになった。女は片手で王の手首をつかみ、もう一方の手で包みを拾い上げると、少年へ罵詈雑言を浴びせ始めた。王はその手から逃れようともがいたが、うまくいかなかった。

ヒューゴはもう十分に見た――敵は捕まり、今や法律が始末してくれる――そこで上機嫌に含み笑いを浮かべながら立ち去り、野営地へ向かった。歩きながら、首領の一味へ話すための、もっともらしい一件の顚末を組み立てていた。

王は女の力強い手から逃れようともがき続け、ときおり苛立ちの声を上げた――

「手を放せ、この愚か者め。そなたのつまらぬ品物を奪ったのは私ではない。」

群衆が王を取り囲み、脅し、悪口を浴びせた。革の前掛けを着け、袖を肘までまくった屈強な鍛冶屋が手を伸ばし、懲らしめのためにたっぷり殴ってやると言った。だがそのとき、長剣が空中にきらめき、平たい面を下にして、男の腕へ有無を言わせぬ勢いで振り下ろされた。その風変わりな持ち主は、同時に楽しげな口調で言った――

「いやはや、善良なる皆さん、穏やかにまいろうではないか。悪意や情けない罵声は無用だ。これは法が判断すべき問題であり、私人が非公式に処理すべきことではない。奥さん、その子の手を放してやりなさい。」

鍛冶屋はたくましい兵士をひと目で値踏みすると、腕をさすりながら、ぶつぶつ言って立ち去った。女は渋々、少年の手首を放した。群衆はよそ者へ憎々しげな目を向けたが、賢明にも口を閉ざした。王は頬を紅潮させ、目を輝かせながら救い主のそばへ飛び寄り、叫んだ――

「ずいぶん遅かったではないか。だが今はよい時に来たぞ、サー・マイルズ。この無礼な連中を切り刻んで、ぼろ布にしてしまえ!」


第二十三章 囚われの王子

ヘンドンは笑みをこらえ、身をかがめて王の耳へささやいた――

「お静かに、お静かに、王子。言葉には十分お気をつけください――いえ、何もおっしゃらぬほうがよろしい。私をお信じください――最後にはすべてうまくまいります。」

それから心の中で付け加えた。「サー・マイルズだと! いやはや、自分が騎士になったことをすっかり忘れていた! まったく、この子の記憶が奇妙で狂った空想を、あれほどしっかりとつかんで離さぬとは、何とも不思議なことだ! ……私の爵位など空虚で愚かなものだ。それでも、それに値すると認められたことには意味がある。この世の現実の王国で伯爵になるに足るほど卑しいと思われるより、この子の夢と影の王国で、幻の騎士にふさわしいと思われるほうが、名誉なことではあるまいか。」

群衆は左右へ分かれ、巡査を通した。巡査が近づいて王の肩へ手を掛けようとしたところで、ヘンドンが言った――

「穏やかに頼む、友よ。手を出すのは控えてくれ――この子はおとなしく同行する。私が責任を持とう。先へ行ってくれ、われらも従う。」

巡査が女と包みを伴って先頭を歩き、マイルズと王がその後ろに続き、群衆がさらに後をついていった。王は反抗しかけたが、ヘンドンが小声で言った――

「お考えください、陛下――陛下の法律は、御身の王権から生まれた健全な息吹です。その源たる陛下が法律へ抵抗しながら、末端の民には尊重せよと求められましょうか? どうやら、その法律の一つが破られたようです。王座へお戻りになったとき、ご自分が一私人に見えたころ、忠実にも王を市民の中へ沈め、その権威へ従ったことを思い出して、陛下が後悔なさることなどありましょうか?」

「そなたの言うとおりだ。もう何も言うな。イングランド王が法のもとで臣民へ耐えよと求めるものは何であれ、自らが臣民の立場にある間は、王自身も耐える。それを見届けるがよい。」

女は治安判事の前で証言を求められると、被告席にいる小さな囚人こそ盗みを働いた本人だと宣誓した。それを否定できる者は誰もおらず、王は有罪となった。そこで包みが解かれ、中身が丸々と太った小さな食肉用の豚だと分かると、判事は困惑した顔をした。一方、ヘンドンは青ざめ、電流に打たれたような恐怖の震えが全身を走った。だが王は事情を知らないため、平然としていた。不吉な沈黙の中で考え込んだ後、判事は女へ向き直って尋ねた――

「この品には、どれほどの値打ちがあると思う?」

女はお辞儀をして答えた――

「三シリング八ペンスでございます、判事様――正直に値を申しますと、一ペニーたりともまけられません。」

判事は落ち着かない様子で群衆を見回し、巡査へうなずいて言った――

「法廷から人を出し、戸を閉めよ。」

そのとおりになった。残ったのは二人の役人、被告、告発者、それにマイルズ・ヘンドンだけだった。ヘンドンは硬直して血の気を失い、額には大粒の冷や汗が浮かんでは一つに集まり、顔を伝って流れ落ちた。判事は再び女へ向き直り、同情のこもった声で言った――

「哀れな、物を知らぬ少年だ。この不運な者たちにはつらい時世ゆえ、ひどい飢えに追い詰められたのかもしれぬ。見よ、悪人の顔ではない――だが飢えに駆られたからといって――奥方! 十三ペンス半を超える価値の物を盗んだ者は、法律によって絞首刑になると知っているか?」

小さな王は驚愕に目を見開き、びくりとした。だが自制して黙っていた。女のほうはそうはいかなかった。恐怖に震えながら跳ね起き、叫んだ――

「ああ、何ということをしてしまったのでしょう! どうか神様、お助けを。世界中の何と引き換えでも、このかわいそうな子を絞首刑になどしたくありません! 判事様、この罪から私をお救いください――どうすれば、いったい何ができるのでしょう?」

判事は裁判官らしい平静さを保ったまま、ただこう言った――

「まだ記録へ書き込んではおらぬゆえ、価値を訂正することは許されるだろう。」

「では、どうか神様の御名にかけて、その豚を八ペンスということにしてください。この恐ろしい重荷から良心を解き放ってくださった今日という日に、天の祝福がありますように!」

マイルズ・ヘンドンは喜びのあまり、あらゆる礼儀を忘れた。王を驚かせ、その尊厳を傷つけることも構わず、両腕で抱き締めたのである。女は感謝しながら別れを告げ、豚を持って立ち去ろうとした。巡査は女のために戸を開けると、その後を追って狭い廊下へ出た。判事は記録簿へ書き込み始めた。常に抜け目のないヘンドンは、巡査がなぜ女について出たのか知りたくなり、薄暗い廊下へ静かに忍び出て耳を澄ませた。次のような会話が聞こえた――

「丸々太った豚だ。うまそうではないか。俺が買ってやろう。ほら、八ペンスだ。」

「八ペンスですって! 冗談じゃない。三シリング八ペンスもしたんだよ。しかも今の王様の前、死んだばかりの老いぼれハリーが、まだいじくっても価値を落としてもいなかった、正真正銘の硬貨で払ったんだ。八ペンスなんてお断りだよ!」

「そういう風向きか? お前は宣誓した身でありながら、価値は八ペンスにすぎぬと言って偽証したのだな。今すぐ俺と一緒に判事様の前へ戻り、その罪へ答えろ! ――そうすれば、あの少年は絞首刑だ。」

「分かったよ、分かった、あんた。もう何も言わないでおくれ。それでいいよ。八ペンスを渡して、このことは黙っていておくれ。」

女は泣きながら立ち去った。ヘンドンは法廷へ忍び戻り、巡査も獲物をどこか都合のよい場所へ隠した後、ほどなく戻ってきた。判事はしばらく書き続け、それから王へ賢明で思いやりのある説教をし、共同牢での短期間の禁錮と、その後の公開鞭打ちを言い渡した。仰天した王は口を開いた。おそらく、その場で善良な判事の首をはねよと命じるつもりだったのだろう。だがヘンドンの警告の合図に気づき、言葉を一つも外へ漏らさぬうちに、どうにか口を閉じることができた。ヘンドンは王の手を取り、判事へ一礼すると、二人で巡査の後に従い、牢獄へ向かった。通りへ出た途端、激怒した君主は立ち止まり、手を振りほどいて叫んだ――

「愚か者め、私が生きたまま共同牢へ入るとでも思っているのか?」

ヘンドンは身をかがめ、やや鋭い口調で言った――

「私を信じてくださるのですか? お静かに! 危険な発言で、われらの望みをさらに損なうのはおやめください。神が望まれることは起こります。急がせることも、変えることもできません。ゆえに待ち、辛抱なさいませ――起こるべきことが起きてから、罵るなり喜ぶなりしても遅くはありません。」


第二十四章 脱走

短い冬の日が、もう暮れようとしていた。通りには、まばらに歩く数人のほか、人影もなかった。その者たちも、用事をできるだけ早く済ませ、強まりつつある風と深まる夕闇を逃れて、暖かな家へ引きこもることしか考えていない人々の、ひたむきな表情で足早に進んでいた。右も左も見ず、こちらの一行へ注意を払わず、その姿さえ目に入っていないようだった。エドワード六世は、牢獄へ送られる王という見世物が、これほど驚くべき無関心に迎えられたことなど、かつてあったのだろうかと思った。やがて巡査は人気のない市場広場へ着き、そこを横切り始めた。中央まで来たとき、ヘンドンは巡査の腕へ手を置き、低い声で言った――

「少し待ってくれ、善良なる御仁よ。聞いている者はいない。話したいことがある。」

「職務上、それはできません。どうか邪魔をしないでください。夜になります。」

「それでも待て。この話は、お前自身に大いに関わる。一時だけ背を向け、何も見なかったことにしろ。この哀れな少年を逃がすのだ。」

「私へそんなことを言うのか! お前を逮捕――」

「いや、早まるな。よく注意し、愚かな過ちを犯さぬようにしろ」そう言うと声をささやきに落とし、巡査の耳元で続けた――「八ペンスで買った豚の代金が、お前の首になるかもしれぬぞ!」

不意を突かれた哀れな巡査は、初め言葉を失った。やがて口が利けるようになると、虚勢を張り、脅し始めた。だがヘンドンは平然と、相手が息切れするまで辛抱強く待ち、それから言った――

「お前のことは嫌いではない、友よ。だから害を受ける姿は見たくない。よく聞け、私はすべてを聞いた――一言残らずだ。証明してやろう。」

それから役人と女が廊下で交わした会話を、一言一句そのまま繰り返し、最後に言った――

「どうだ――正確に再現しただろう? 必要となれば、判事の前でも正確に述べられると思わぬか?」

巡査はしばらく恐怖と苦悩で口も利けなかった。だが気を取り直すと、無理に軽い調子を作って言った――

「ただの冗談を、まったく大げさな話にしたものだ。女をからかって面白がっただけさ。」

「面白半分に、女の豚を取り上げたのか?」

男は鋭く答えた――

「それ以外に何がある、旦那――言っただろう、ただの冗談だ。」

「なるほど、信じられるような気がしてきた」ヘンドンは嘲りと半ば納得した響きを、相手が困惑するように織り交ぜて言った。「だが、ここで少し待っていてくれ。私が走って判事様に尋ねてくる――何しろ、あの方は法律にも、冗談にも、そのほか――」

なおも話しながら立ち去ろうとすると、巡査はためらい、落ち着きなく身を動かし、悪態を一つ二つ吐いてから叫んだ――

「待て、待ってくれ、旦那――どうか少し待ってくれ――判事だって! あの人には冗談を解する心など、死人ほどにもない! ――さあ、もっと話し合おう。ええい、どうやらひどくまずいことになった――すべては悪気も考えもない、無邪気な冗談のせいだ。俺には家族がいる。妻も幼い子供たちも――どうか道理を聞いてください、旦那様。俺に何をさせたいのです?」

「ゆっくり十万まで数え終わる間だけ、盲目、聾唖、全身麻痺になってもらいたい」ヘンドンは、ごくもっともで、しかも極めてささやかな頼みしかしていない者の顔で答えた。

「それでは俺の破滅だ!」巡査は絶望して言った。「どうか道理を分かってください、旦那。この件をあらゆる角度から見て、まったくの冗談にすぎないことを理解してください――どう見ても明らかに、紛れもなく冗談です。たとえ冗談でないと認めたとしても、ほんの小さな過ちにすぎず、最も厳しい罰でさえ、判事様から叱責と警告を受ける程度でしょう。」

ヘンドンは周囲の空気まで凍りつかせるような厳粛さで答えた――

「お前のその冗談には、法律上の名前がある――何というか知っているか?」

「知りません! もしや私は愚かなことをしたのでしょう。名前があるなど夢にも思わなかった――ああ、優しき天よ、独創的な冗談だと思っていたのに。」

「ああ、名前がある。法律上、この罪は『ノン・コンポス・メンティス・レクス・タリオニス・シク・トランシト・グロリア・ムンディ』と呼ばれる[訳注:ラテン語句をでたらめにつなげた、ヘンドンの作り話]。」

「ああ、神よ!」

「過ちを犯して窮地に陥り、お前の慈悲へすがるしかない者につけ込み、十三ペンス半を超える品を、わずかな金で奪った。それは法の目から見れば、擬制的訴訟教唆、反逆罪不告発、職権乱用、アド・ホミネム・エクスプルガティス・イン・スタトゥ・クオである――その罰は、身代金も、減刑も、聖職者特権も認められぬ絞首刑だ。」

「支えてください、支えてください、優しき旦那様。脚から力が抜けてしまう! どうかお慈悲を――この運命からお救いください。私は背を向け、何が起きても何一つ見ません。」

「よし! ようやく賢明で道理の分かる男になったな。それから豚も返すのだろう?」

「返します、必ず返します――たとえ天が豚を送り、大天使が運んできたとしても、二度と手を触れません。行ってください――あなたのために私は盲目となります――何も見えません。あなたが押し入り、力ずくで囚人を私の手から奪ったと言います。あれは古くて壊れかけた戸です――夜中から夜明けまでの間に、自分で叩き壊しておきます。」

「そうしろ、善良なる男よ。何の問題も起こらぬ。この哀れな少年に、判事は慈悲深い好意を抱いている。逃げたからといって涙を流しもせず、牢番の骨を折りもしないだろう。」


第二十五章 ヘンドン・ホール

ヘンドンと王が巡査から見えないところまで来ると、陛下は町外れの指定された場所へ急いで行き、ヘンドンが宿へ戻って勘定を済ませる間、そこで待つように言われた。半時間後、二人の友はヘンドンのみすぼらしい馬に乗り、陽気に東へ進んでいた。王はもう暖かく快適だった。ぼろを脱ぎ捨て、ヘンドンがロンドン橋で買った古着へ着替えていたからだ。

ヘンドンは少年を疲れさせすぎないようにしたかった。過酷な旅、不規則な食事、不十分な睡眠は、狂った心に悪いだろう。反対に休息、規則正しい生活、適度な運動なら、ほぼ確実に回復を早めるはずだと考えたのである。傷ついた知性が健全さを取り戻し、病んだ幻が苦しむ小さな頭から追い払われることを、心から願っていた。そこで焦る気持ちのまま昼夜を分かたず急ぐのではなく、長らく追放されていた故郷まで、ゆっくりと旅をすることに決めた。

王とともに十マイル(約十六キロメートル)ほど進むと、かなり大きな村へ着き、立派な宿で一夜を過ごした。以前の主従関係が再開された。王が食事をしている間、ヘンドンは椅子の後ろに立って給仕をした。寝る支度ができれば服を脱がせ、それから自分は床を寝場所とし、毛布にくるまって戸口を横切るように眠った。

翌日も、その翌日も、二人は離れ離れになってから経験した冒険を語り合い、その話を大いに楽しみながら、のんびり馬を進めた。ヘンドンは王を捜して広くさまよった話を詳しく語り、大天使が森じゅうを無駄に歩かせ、最後にはどうしても追い払えないと悟って、小屋へ連れ戻した顚末を説明した。それから――ヘンドンの話によれば――老人は寝室へ入り、悲嘆に打ちのめされた様子でよろめきながら戻ってきた。そして少年が帰ってきて、そこで横になって休んでいるものと思ったが、いなかったと言った。ヘンドンは一日じゅう小屋で待ったが、王が戻る望みもやがて消え、再び捜索へ旅立った。

「あの老いた至聖所殿は、殿下がお戻りにならなかったことを、本当に悲しんでおりました」とヘンドンは言った。「顔を見れば分かりました。」

「まったく、それを疑うことは二度とあるまい!」と王は言った――それから自分の身に起きたことを語った。それを聞いたヘンドンは、大天使を殺しておかなかったことを悔やんだ。

旅の最終日、ヘンドンの心は舞い上がっていた。口は休むことなく動いた。老いた父、兄のアーサーについて語り、二人の高潔で寛大な人柄を示す多くの思い出を話した。愛するイーディスのことになると、愛情に熱狂した。そしてあまりに心が弾んでいたため、ヒューについてさえ、兄弟らしい優しいことをいくらか口にできた。ヘンドン・ホールで待つ再会について、長々と語った。皆がどれほど驚くか、どれほど感謝と喜びが爆発するかを話し続けた。

辺りは美しい地方で、ところどころに小さな家や果樹園が点在していた。道は広大な牧草地を抜け、その遠ざかる広がりには緩やかな高低があり、海の波が盛り上がっては沈む、うねりを思わせた。午後になると、帰郷する放蕩息子は小高い丘へ登れば遠くを見通し、故郷をひと目見られるのではないかと、しきりに道を外れた。ついにそれがかなうと、興奮して叫んだ――

「あそこが村です、王子。そしてすぐそばにあるのが館です! ここから塔が見えるでしょう。あの森――あれが父の領地にある公園です。ああ、今こそ殿下にも、威容と豪華さがどんなものか分かります! 七十もの部屋がある屋敷――お考えください! ――そして使用人が二十七人! われらのような者には見事な宿ではありませんか? さあ急ぎましょう――もう焦る心が、これ以上の遅れを許してくれません。」

可能な限り急いだが、それでも村へ着いたのは三時を過ぎていた。旅人たちは村を駆け抜け、その間もヘンドンの口は休まなかった。「これが教会です――昔と同じ蔦に覆われている――減りも増えもしていない」「あちらが宿、昔ながらのレッド・ライオン――そして向こうが市場です」「ここに五月柱があり、ここにはポンプがある――何一つ変わっていない。少なくとも、人々以外は。十年もたてば、人は変わる。この中には見覚えのある者もいるようだが、誰も私を知らない。」

このように話は続いた。じきに村の端へ着き、二人は高い生け垣に挟まれた、狭く曲がりくねった道へ入った。そこを半マイル(約八百メートル)ほど速足で進み、彫刻された紋章を載せる巨大な石柱の立つ、堂々たる門を抜けて、広大な花園へ入った。目の前には壮麗な館がそびえていた。

「ヘンドン・ホールへようこそ、わが王よ!」マイルズは叫んだ。「ああ、何と素晴らしい日だ! 父も兄も、レディ・イーディスも、喜びのあまり我を忘れ、再会したばかりの間は私以外に目も耳も向けられないでしょう。ですから殿下は、冷たく迎えられたようにお感じになるかもしれません――ですがお気になさらず。すぐに様子は変わります。殿下が私の被後見人であり、どれほど大切に思っているかを話せば、マイルズ・ヘンドンのために殿下を胸へ迎え、これより永遠に、この館と心を御身の故郷としてくれるでしょう!」

次の瞬間、ヘンドンは大玄関の前で地面へ飛び降り、王が降りるのを助けると、その手を取って中へ駆け込んだ。数歩で広々とした部屋へ着いた。中へ入り、礼儀よりも急ぐ気持ちを優先して王を座らせると、盛大に燃える薪の火を前に、書き物机へ向かっていた若い男のもとへ走った。

「抱き締めてくれ、ヒュー」と叫んだ。「私が戻ったことを喜んでくれ! 父上を呼んでくれ。もう一度あの手に触れ、顔を見て、声を聞くまで、故郷へ戻ったことにはならない!」

だがヒューは一瞬驚きを見せただけで、後ずさった。そして侵入者へ重々しい視線を向けた――初めは尊厳を傷つけられたような色を帯びていたが、何らかの内なる考えか目的に応じ、やがて本物か見せかけか分からぬ同情の入り交じった、驚きと好奇心の表情へ変わった。ほどなく穏やかな声で言った――

「気の毒なよそ者よ、少し心を病んでいるようだ。おそらく困窮し、世間から手荒く打ちのめされてきたのだろう。その姿と服を見れば分かる。私を誰だと思っている?」

「誰だと思うだと? そなたが何者であるか、そのとおりに決まっているではないか。ヒュー・ヘンドンだと思っている」マイルズは鋭く言った。

相手は同じ穏やかな口調で続けた――

「では、自分を何者だと思っている?」

「思っているのではない! そなたは、この兄マイルズ・ヘンドンが分からぬふりをするのか?」

うれしげな驚きがヒューの顔をよぎり、声を上げた――

「何と! 冗談ではないのか? 死者が生き返ることなどあるのか? もし本当なら、神をたたえよう! 残酷な歳月を経て、行方知れずだった哀れな弟が、ついにわれらの腕へ戻ってきた! ああ、あまりにも喜ばしく、真実とは思えぬ。いや、真実であるにはあまりにも喜ばしすぎる――頼むから憐れんでくれ。私を弄ばないでくれ! さあ――明るいところへ来い――よく見せてくれ!」

ヒューはマイルズの腕をつかみ、窓辺まで引っ張っていくと、頭の先から爪先まで食い入るように見つめ始めた。あちらを向かせ、こちらを向かせ、周囲を素早く歩き回って、あらゆる角度から確かめた。一方、帰ってきた放蕩息子は喜びに輝き、微笑み、笑い、しきりにうなずきながら言い続けた――

「続けろ、兄弟、続けてくれ。恐れることはない。試されて耐えられぬ手足も、顔立ちも、一つとして見つかりはしない。気の済むまで詳しく調べてくれ、懐かしいヒュー――私は本当に昔のマイルズだ。同じマイルズ、行方知れずだった弟だ。そうではないか? ああ、今日は素晴らしい日だ――素晴らしい日だと言っただろう! 手をくれ、頬を寄せてくれ――ああ、喜びのあまり死んでしまいそうだ!」

兄へ抱きつこうとしたが、ヒューは拒むように手を上げ、それから悲しげに顎を胸へ落とし、感情を込めて言った――

「ああ、慈悲深き神よ、このつらい失望へ耐える力をお与えください!」

驚愕したマイルズは、しばらく口も利けなかった。やがて言葉を取り戻し、叫んだ――

何が失望だ? 私はそなたの弟ではないのか?」

ヒューは悲しげに首を振って言った――

「そうであることを天へ祈ろう。そして私の目には見えぬ面影を、ほかの目が見つけてくれるように。だが悲しいかな、あの手紙はあまりにも真実を語っていたらしい。」

「何の手紙だ?」

「六、七年前、海の向こうから届いた手紙だ。弟は戦死したと書かれていた。」

「嘘だ! 父上を呼べ――父上なら私が分かる。」

「死者を呼ぶことはできぬ。」

「死んだ?」

マイルズの声は弱まり、唇が震えた。「父上が死んだ! ――ああ、何というつらい知らせだ。新たに得た喜びの半分が、もう萎れてしまった。頼む、兄のアーサーに会わせてくれ――兄なら私が分かる。私だと分かり、慰めてくれる。」

「アーサーも死んだ。」

「神よ、打ちのめされた私をお憐れみください! 二人とも逝った――立派な者たちが召され、役立たずの私だけが残された! ああ! どうか慈悲を――まさかレディ・イーディスも――」

「死んだのか? いや、生きている。」

「ならば神をたたえよう。私の喜びは再び完全になった! 急いでくれ、兄弟――彼女をここへ! もし彼女まで、私が私ではないと言うなら――だが、そんなはずはない。そうだ、彼女なら分かる。疑うなど愚かだった。連れてきてくれ――昔からの使用人たちも。皆、私が分かるはずだ。」

「残っているのは五人だけだ――ピーター、ハルシー、デイヴィッド、バーナード、それにマーガレット。」

そう言うと、ヒューは部屋を出ていった。マイルズはしばらく物思いに沈んで立っていたが、やがて部屋を歩き回りながらつぶやいた――

「二十二人いた忠実で正直な者は死に、五人の極悪人だけが生き残ったとは――妙な話だ。」

独り言をつぶやきながら行ったり来たりし続け、王のことはすっかり忘れていた。やがて陛下は重々しく、心からの同情をわずかに込めて言った。もっとも、その言葉自体は皮肉とも取れた――

「不運を気にするな、善良なる男よ。この世にはほかにも、身元を否定され、訴えを嘲笑される者がいる。そなたは一人ではない。」

「ああ、わが王よ」ヘンドンはわずかに顔を赤らめて叫んだ。「どうか私を責めないでください――お待ちになれば分かります。私は偽者ではありません――彼女がそう言ってくれます。イングランドで最も優しい唇から、それをお聞きになるでしょう。この私が偽者? 私はこの古い館も、祖先の肖像画も、周りにあるすべての物も、子供が自分の育った部屋を知るように知っています。私はここで生まれ育ったのです、陛下。真実を申しております。御身をだますことなどいたしません。たとえほかの誰一人信じなくとも、どうか

陛下だけは私を疑わないでください――それには耐えられません。」

「私はそなたを疑わぬ」王は子供らしい素直さと信頼を込めて言った。

「心の底から感謝いたします!」ヘンドンは、胸を打たれたことが伝わる熱烈さで叫んだ。王は同じ穏やかな素直さで付け加えた――

「そなたは私を疑うのか?」

ヘンドンは後ろめたい困惑に襲われた。だがその瞬間に戸が開いてヒューが入ってきたため、答えずに済み、ありがたく思った。

美しく豪華な衣装をまとった婦人がヒューに続き、その後ろから制服姿の使用人が数人入ってきた。婦人は頭を垂れ、目を床へ落としたまま、ゆっくりと歩いていた。その顔は言葉にできないほど悲しげだった。マイルズ・ヘンドンは前へ飛び出し、叫んだ――

「ああ、私のイーディス、愛する人――」

だがヒューは重々しく手を振って押しとどめ、婦人へ言った――

「この者を見なさい。知っているか?」

マイルズの声を聞いた瞬間、婦人はかすかに身を震わせ、頬を紅潮させた。今は体じゅうを震わせていた。数瞬にわたる重苦しい沈黙の間、じっと立ち尽くした。それからゆっくり顔を上げ、石のように固く、怯えたまなざしでヘンドンの目を見た。顔から一滴ずつ血が失われていくように色が消え、やがて死者のような灰色の蒼白さだけが残った。そして顔と同じく生気のない声で、「この方は存じません!」と言った。うめきと、押し殺したすすり泣きを漏らして背を向け、よろめきながら部屋を出ていった。

マイルズ・ヘンドンは椅子へ崩れ落ち、両手で顔を覆った。しばらくして、弟が使用人たちへ言った――

「この者をよく見ただろう。知っているか?」

使用人たちは首を振った。すると主人は言った――

「使用人たちは、あなたを知らぬそうだ。どうやら何かの間違いらしい。ご覧のとおり、妻もあなたを知らなかった。」

「そなたのだと!」

次の瞬間、ヒューは喉を鉄のような手で締め上げられ、壁へ押しつけられていた。「おお、狐の心を持つ卑劣漢め、すべて分かったぞ! あの偽りの手紙を書いたのはそなただ。私から奪った花嫁と財産は、その実りなのだな。さあ――消え失せろ。さもなくば、こんな哀れな小人を殺し、名誉ある兵士の身を汚すことになるぞ!」

顔を真っ赤にし、窒息しかけたヒューは、よろめきながら近くの椅子へ向かい、殺人を企てるよそ者を捕らえて縛れと使用人たちへ命じた。使用人たちはためらい、その一人が言った――

「あの男は武装しております、サー・ヒュー。われらには武器がありません。」

「武装しているから何だ。そなたたちは大勢いるではないか? かかれと言っている!」

だがマイルズは、何をするかよく考えろと警告し、付け加えた――

「昔の私を知っているだろう――何も変わってはいない。望むなら、かかってこい。」

この言葉は、使用人たちをあまり勇気づけなかった。彼らはなお後ろへ下がっていた。

「ならば行け、役立たずの臆病者ども。武器を取り、戸口を見張れ。私は衛兵を呼びに使いを出す!」ヒューは敷居のところで振り返り、マイルズへ言った。「逃げようと無駄な真似をしないほうが、身のためだぞ。」

「逃げる? それだけがそなたの気がかりなら、心配せずともよい。ヘンドン・ホールと、そのすべての持ち物の主人は、マイルズ・ヘンドンだ。私はここへ残る――疑うな。」


第二十六章 拒絶

王はしばらく物思いにふけって座っていたが、やがて顔を上げて言った――

「奇妙だ――実に奇妙だ。どうにも説明がつかぬ。」

「いえ、奇妙なことではありません、陛下。私はあの男を知っております。これこそ本性です。生まれついての悪党でした。」

「いや、あの男のことではないぞ、サー・マイルズ。」

「あの男ではない? では何のことでしょう? 何が奇妙なのです?」

「王が行方不明なのに、誰も気づいていないことだ。」

「何ですと? どの王が? 申し訳ありませんが、意味が分かりません。」

「本当に? 私の姿を記した早馬や布告が国じゅうを埋め尽くし、捜索していないことを、極めて奇妙だとは思わぬのか? 国家の元首が消えたのだぞ。私が姿を消し、行方知れずになったというのに、騒乱も悲嘆も起きぬとはどういうことだ?」

「まったくそのとおりです、わが王よ。失念しておりました。」

それからヘンドンはため息をつき、心の中でつぶやいた。「哀れにも壊れた心――今もあの痛ましい夢に取りつかれている。」

「だが、われら二人を救う策がある――私はラテン語、ギリシャ語、英語の三つの言葉で書状を書く。そなたは明朝、それを持ってロンドンへ急げ。叔父のハートフォード卿以外には渡してはならぬ。書状を見れば、私が書いたものだと分かり、そう証言する。そうすれば迎えを寄こすだろう。」

「王子、私が身元を証明し、この領地への権利を確かなものとするまで、ここでお待ちになるほうがよいのではありませんか? そうすれば、もっと力を持って――」

王は威厳をもって遮った――

「黙れ! そなたのちっぽけな領地や、取るに足らぬ利害など、国家の安寧と王座の正統性に関わる問題と比べて、何だというのか?」

それから厳しすぎたことを悔いるかのように、優しい声で付け加えた。「従え。恐れることはない。私がそなたの権利を正し、すべてを取り戻してやる――いや、それ以上のものを与えよう。私は忘れぬ。必ず報いる。」

そう言うと、ペンを取り、書き始めた。ヘンドンはしばらく愛情を込めて眺め、それから心の中で言った――

「暗闇の中で声だけ聞けば、本物の王が話していると思っただろう。認めざるを得ぬ。あの気分になると、本物の王さながらに雷鳴をとどろかせ、稲妻を放つ。だが、いったいどこであの技を身につけたのだ? 意味のない鉤形の文字を、ラテン語やギリシャ語だと思い込み、満足げに走り書きしている。うまい口実を思いつき、この目的から気をそらしてやれなければ、明日はこの子が考え出した荒唐無稽な使いへ、大急ぎで出かけるふりをせねばならぬ。」

次の瞬間、サー・マイルズの思いは、先ほどの出来事へ戻っていた。あまりにも深く考え込んでいたため、やがて王が書き終えた紙を差し出したときも、受け取って懐へしまったことにさえ気づかなかった。「彼女の振る舞いは、何とも不可思議だった」とつぶやいた。「私を知っていたように思える――同時に、知らなかったようにも思える。この二つの考えは矛盾している。それはよく分かる。だが、どうしても折り合いをつけられず、理屈によってどちらかを退けることも、一方が他方より正しいと納得することもできない。事実は単純だ。彼女は私の顔、体つき、声を知っていたに違いない。そうでないことなどあり得ようか? だが彼女は、私を知らぬと言った。それは完全な証拠だ。彼女は嘘をつけないのだから。いや、待て――分かってきたぞ。おそらく、あの男が彼女へ影響を及ぼし、命令し、嘘をつくよう強いたのだ。それが答えだ。謎は解けた。彼女は恐怖で死にそうに見えた――そうだ、あの男に強制されていたのだ。彼女を捜そう。必ず見つける。今はあの男がいない。ならば本心を話してくれる。われらが幼い遊び仲間だった昔を思い出せば、心も和らぎ、もう私を裏切らず、私だと認めてくれるだろう。彼女の血に裏切りはない――そうだ、いつも正直で誠実だった。昔、彼女は私を愛していた――それこそが私の保証だ。一度愛した相手を、人は裏切れぬ。」

勢いよく戸口へ向かおうとした。そのとき戸が開き、レディ・イーディスが入ってきた。顔はひどく青ざめていたが、足取りはしっかりしており、その身のこなしには優雅さと穏やかな威厳があった。顔には先ほどと同じ悲しみが浮かんでいた。

マイルズは喜びに満ちた確信を抱いて前へ飛び出し、彼女を迎えようとした。だがほとんど見えないほど小さな仕草で制止され、その場に立ち止まった。彼女は腰を下ろし、マイルズにも座るよう求めた。ただそれだけで、昔なじみとしての親しさを彼から奪い、よそ者であり客である立場へ変えてしまった。その驚きと、思いも寄らぬ困惑のため、マイルズは一瞬、自分は本当に名乗っているとおりの人物なのだろうかと疑い始めた。レディ・イーディスは言った――

「あなたへ警告するために参りました。狂人を妄想から説得して目覚めさせることは、できないかもしれません。けれど危険を避けるよう説得することなら、きっとできるでしょう。その夢は、あなたにとって真実そのものに思えるのでしょう。ならば罪ではありません――ですが、その夢を抱いたままここへ留まってはなりません。ここでは危険です。」

彼女はしばらくマイルズの顔をまっすぐ見つめ、それから重々しく付け加えた。「あなたは、生きていれば成長したであろう、行方知れずのあの方にあまりにもよく似ている。だからこそ、いっそう危険なのです。」

「何ということです、奥方。私がその本人なのです!」

「あなた自身は本当にそう信じているのでしょう。その点で、あなたの誠実さを疑ってはいません。ただ警告しているだけです。夫はこの地方の支配者です。その力には、ほとんど限りがありません。人々が栄えるか飢えるかは、夫の望み次第です。あなたが名乗っている人物と似ていなければ、夫も夢を見て楽しむまま、平穏に放っておいたかもしれません。ですが私を信じてください。夫のことはよく知っています。何をするかも分かっています。夫が皆へ、あなたは狂った偽者にすぎぬと言えば、たちまち全員が同じことを繰り返すでしょう。」

彼女はもう一度、同じ揺るぎない視線をマイルズへ注ぎ、付け加えた。「仮にあなたが本当にマイルズ・ヘンドンであり、夫もそれを知り、この地方の全員も知っていたとしても――私の言葉をよく考え、慎重に量ってください――あなたは同じ危険にさらされ、処罰も同じく確実でしょう。夫はあなたを否定して糾弾し、あなたを支持しようとする者は一人もいません。」

「まさしく、そのとおりだと思います」マイルズは苦々しく言った。「生涯の友へ、もう一人を裏切り、縁を切れと命じて従わせられる権力なら、忠誠や名誉という蜘蛛の糸のような絆などなく、パンと命が懸かっている者たちからも、当然服従を期待できるでしょう。」

一瞬、婦人の頬へかすかな色が差し、目が床へ落ちた。だが続ける声には、何の感情も表れなかった――

「警告しました――それでもなお、ここから去るよう警告せねばなりません。さもなくば、あの男はあなたを滅ぼします。慈悲を知らぬ暴君です。鎖につながれた奴隷である私には、それが分かります。哀れなマイルズも、アーサーも、私の愛する後見人サー・リチャードも、もうあの男から解放され、安らかに眠っています。この悪党の爪へ捕らえられたままここにいるより、あなたも彼らとともにあるほうがましでしょう。あなたの主張は、夫の爵位と財産への脅威です。しかも、あなたは夫自身の屋敷で暴力を振るった。ここに残れば破滅します。行ってください――ためらわずに。お金がないなら、どうかこの財布を受け取り、使用人たちへ賄賂を渡して通してもらってください。ああ、警告を聞いてください、哀れな方。逃げられるうちに逃げるのです。」

マイルズは仕草で財布を断り、立ち上がって彼女の前へ立った。

「一つだけ願いを聞いてください」と言った。「その目が揺らがぬか確かめたい。私の目をまっすぐ見てください。そう――そのまま答えてください。私はマイルズ・ヘンドンですか?」

「いいえ。あなたを存じません。」

「誓ってください!」

答えは低かったが、はっきりしていた――

「誓います。」

「ああ、信じられぬ!」

「逃げて! なぜ貴重な時間を無駄にするのです? 逃げて、ご自分をお救いください。」

その瞬間、役人たちが部屋へなだれ込み、激しい格闘が始まった。だがヘンドンはすぐに取り押さえられ、引きずられていった。王も捕らえられ、二人とも縛られて牢獄へ連行された。


第二十七章 獄中にて

牢房はどこも満員だった。そのため二人の友は、軽微な罪に問われた者たちがふつう収容される大部屋に、鎖でつながれて入れられた。仲間は大勢いた。男女、年齢もさまざまな二十人ほどの囚人が、手枷足枷をはめられていたのである――猥雑で騒々しい一団だった。王は、王たる自分に加えられた途方もない屈辱に激しく苛立ったが、ヘンドンは塞ぎ込み、口を閉ざしていた。意気揚々と帰還した放蕩息子よろしく、誰もが狂喜して迎えてくれるものと思っていたのに、実際に待っていたのは冷たい仕打ちと牢獄だった。期待と現実があまりにもかけ離れていたため、その衝撃は強烈だった。悲劇と呼ぶべきか、茶番と呼ぶべきか、自分でもわからない。陽気に虹を追いかけて出かけた途端、雷に打たれた男のような気分だった。

だが、混乱し、苦しみもがいていた思考も、しだいにいくらか秩序を取り戻し、やがて心はレディ・イーディスのことだけに集中した。彼女の振る舞いを何度も思い返し、あらゆる角度から吟味したが、納得のゆく答えは得られなかった。彼女は自分に気づいていたのか――それとも本当にわからなかったのか。悩ましい謎であり、長いこと考え抜いた末、とうとう彼は、彼女は自分を知っていながら、利害ゆえに拒絶したのだと確信した。今やその名にありったけの呪いを浴びせたかった。だが、あまりにも長く神聖な名として胸に抱いてきたため、どうしても舌がそれを汚すことを許さなかった。

汚れてぼろぼろになった牢獄の毛布にくるまり、ヘンドンと王は不穏な一夜を過ごした。看守は賄賂と引き換えに何人かの囚人へ酒を与えており、当然のごとく猥歌、喧嘩、怒号、酒盛りが始まった。ついには真夜中をだいぶ過ぎたころ、一人の男が女に襲いかかり、看守が助けに来るまで手枷で頭を殴りつづけ、危うく殺しかけた。看守は男の頭と肩を棍棒でさんざん打ち据えて秩序を取り戻した――それで酒宴も終わった。その後は、負傷した二人の呻き声や苦鳴さえ気にならなければ、誰もが眠ることができた。

それから一週間、昼も夜も、起こることは単調なまでに同じだった。ヘンドンが顔を多少なりとも覚えている男たちが、昼になると「詐欺師」を見物しにやって来ては、彼を知らぬと言い張り、侮辱した。夜には、きわめて規則正しく酒盛りと乱闘が繰り返された。だが、ついに少し変わった出来事が起こった。看守が一人の老人を連れてきて、こう言ったのである――

「悪党はこの部屋にいる。その老いぼれた目で見回して、どいつか言い当ててみろ。」

ヘンドンは顔を上げ、投獄されて以来初めて、心地よい感覚を覚えた。胸の中で言った。「ブレイク・アンドルーズだ。生涯、父上の家に仕えてきた使用人――胸にまっすぐな心を持つ、善良で正直な男だ。少なくとも、昔はな。だが今では誰も誠実ではない。皆、嘘つきだ。この男も私だとわかるだろう――そしてほかの者と同じく、知らぬと言うに違いない。」

老人は部屋を見回し、一人ひとりの顔に目をやった末、こう言った――

「ここにいるのは、つまらぬ悪党と街の屑ばかりだ。どいつのことだ?」

看守は笑った。

「こいつだ」と言った。「この大きな獣をよく見て、意見を聞かせてくれ。」

老人は近づき、長いあいだ真剣にヘンドンを見つめた。それから首を振って言った――

「まったく、こいつはヘンドンではない――断じてな!」

「そのとおり! まだ目は確かなようだな。俺がサー・ヒューなら、このみすぼらしい悪党をこうして――」

看守は、見えない首縄で吊られるようにつま先立ちになり、同時に窒息を思わせるごぼごぼという音を喉から出して、言葉の続きを身振りで示した。老人は憎々しげに言った――

「それ以上ひどい目に遭わぬなら、神に感謝するがよい。もしわしがこの悪党を自由にできるなら、火あぶりにしてやる。さもなくば、わしは誠の男ではない!」

看守は愉快そうに、ハイエナじみた笑い声をあげて言った――

「思っていることをぶちまけてやれ、爺さん――皆そうしている。なかなかよい気晴らしになるぞ。」

そうして前室へぶらぶら歩いていき、姿を消した。老人は膝をつき、ささやいた――

「神に感謝を、旦那様、お戻りになったのですね! この七年、ずっと死んだものと信じておりましたのに、こうして生きておられる! お顔を見た瞬間にわかりました。平然とした顔を保ち、ここには安っぽい悪党と街の屑しか見えぬふりをするのは、実に骨が折れました。私は老いて貧しくなりました、サー・マイルズ。ですが、ひと言お命じくだされば、たとえ絞め殺されようとも外へ出て、真実を告げてまいります。」

「いや」とヘンドンは言った。「それはするな。おまえの身を滅ぼすばかりで、私の助けにはほとんどならぬ。だが礼を言う。おまえのおかげで、人への信頼を少し取り戻せた。」

この老僕は、ヘンドンと王にとってたいそう貴重な存在となった。一日に何度も、ヘンドンを「罵る」ためにやって来ては、牢獄の食事を補う珍味をこっそり持ち込んでくれたのである。また、世間の最新情報も伝えてくれた。ヘンドンは珍味を王のために取っておいた。それがなければ陛下は生き延びられなかったかもしれない。看守の出す粗末でひどい食事を、王は口にできなかったからである。疑いを避けるため、アンドルーズは訪問を短く切り上げねばならなかった。それでも毎回、かなりの情報を伝えることができた――ヘンドンに聞かせる情報は低い声で、それをところどころ、大声で浴びせる侮辱の言葉で彩り、ほかの聞き手を納得させたのである。

こうして少しずつ、一家の物語が明らかになった。アーサーは六年前に死んでいた。この喪失に加え、ヘンドンから何の便りもないことが父の健康を損なった。死期が近いと信じた父は、自分が逝く前にヒューとレディ・イーディスの身を固めさせたいと望んだ。だがレディ・イーディスは、マイルズの帰還を願って必死に延期を求めた。そのとき、マイルズの死を知らせる手紙が届いた。その衝撃でサー・リチャードは床に伏し、最期が間近だと信じた父とヒューは、結婚を強く迫った。レディ・イーディスは一か月の猶予を願って認められ、さらに一か月、ついには三度目の一か月も得た。その後、サー・リチャードの死の床のそばで婚礼が行われた。結婚生活は幸福なものではなかった。結婚して間もなく、花嫁は夫の書類の中から、あの運命の手紙の粗雑で未完成な草稿を何枚も見つけ、邪悪な偽造によって結婚を――さらにはサー・リチャードの死をも――早めたのだと夫を責めた、という噂が近隣一帯に広まっていた。レディ・イーディスや使用人たちへの虐待の話は、至るところで聞かれた。父の死後、サー・ヒューは穏やかさを装う仮面をすべて脱ぎ捨て、糧を得るうえで少しでも自分や領地に頼る者すべてに対し、情け容赦のない主人となっていた。

アンドルーズの噂話の中に、王が強い関心を示したものがあった――

「王が狂っておられるという噂がございます。ですが、どうか情けと思って、が申したとは口外なさらぬよう。そんなことを言えば死罪だそうですから。」

陛下は老人を睨みつけて言った――

「王は狂ってなどおらぬ、善良なる者よ。このような反逆的な戯言より、もっと己に関わりの深いことに精を出すほうが身のためだぞ。」

「この子は何を言っているのです?」と、予想外の方向から飛んできた鋭い攻撃に驚き、アンドルーズは言った。ヘンドンが合図したため、それ以上は尋ねず、話の続きを始めた――

「先王は一、二日後――今月十六日にウィンザーで埋葬され、新王は二十日にウェストミンスターで戴冠なさるそうです。」

「まず、その王を見つけねばならぬと思うがな」と陛下はつぶやき、それから確信を込めて付け加えた。「だが、その手配はするであろう――私もまた、そうする。」

「いったい何を――」

しかし老人は最後まで言えなかった。ヘンドンの警告の合図が、その言葉を止めたのである。アンドルーズは噂話に戻った――

「サー・ヒューも戴冠式へ参ります――大きな望みを抱いて。護国卿の寵愛が厚いため、貴族となって戻れるものと固く信じております。」

「何という護国卿だ?」と陛下は尋ねた。

「サマセット公爵閣下でございます。」

「何というサマセット公爵だ?」

「これは異なことを。お一人しかおりません――ハートフォード伯爵シーモア様です。」

王は鋭く尋ねた――

「いつからあの者が公爵となり、護国卿となった?」

「一月最後の日からです。」

「では、誰がその位を与えた?」

「ご本人と枢密院が――王の力添えを得て。」

陛下は激しく身を震わせた。「だと!」と叫んだ。「善良なる者よ、何という王だ?」

「何という王ですと! (おお神よ、この子はどうしたのだ?)王はお一人しかおられぬのだから、答えは難しくありません――神聖なる国王陛下、エドワード六世でございます。神のご加護を! 実に愛らしく慈悲深い小さな坊ちゃまでもあります。狂っておられようがいまいが――日ごとに快方へ向かっているそうですが――誰もが王を褒め称えております。皆が祝福し、末永くイングランドを治められるよう祈っております。まず老ノーフォーク公爵の命を救うという慈悲深い行いをなされ、今や民を苦しめ虐げる最も残酷な法律を廃そうとなさっているのです。」

この知らせに陛下は驚愕のあまり言葉を失い、深く暗い物思いに沈んだため、それ以後の老人の噂話は何一つ耳に入らなかった。あの「小さな坊ちゃま」とは、自分の衣服を着せて宮殿に残した乞食の少年なのだろうか、と考えた。そんなことがあり得るとは思えない。プリンス・オブ・ウェールズを装ったところで、振る舞いや話し方が必ず正体を暴くはずだ――そうなれば追い出され、本物の王子を捜すことになる。では、宮廷がどこかの若い貴族を身代わりに立てたのだろうか。いや、叔父がそれを許すはずはない――叔父は絶大な権力を持ち、そのような企てなど当然、叩き潰せるし、そうするはずだ。いくら考えても何の役にも立たなかった。謎を解こうとすればするほど混乱し、頭痛はひどくなり、眠りも浅くなった。ロンドンへ行きたいという焦りは時ごとに募り、囚われの身はほとんど耐えがたいものとなった。

ヘンドンがどれほど手を尽くしても、王を慰めることはできなかった。だが近くにつながれていた二人の女は、彼よりうまくやった。優しく世話をしてもらううち、王は心の安らぎを見いだし、いくらか辛抱することも覚えた。王は深く感謝し、二人を心から慕うようになり、その存在がもたらす甘く穏やかな感化を喜んだ。なぜ牢に入れられたのかと尋ねると、二人はバプテスト[訳注:幼児洗礼を認めず、信仰を自覚した者への洗礼を重んじたキリスト教宗派]だからだと答えた。王は微笑んで尋ねた――

「それが牢獄へ入れられるほどの罪なのか? それなら悲しいな。そなたたちとは別れねばならぬ――そんな些細なことで、長くは閉じ込めておくまいから。」

二人は答えなかった。その表情に何かを感じ取り、王は不安になった。急き込んで言った――

「なぜ黙っている? 私に親切にしてくれたではないか。教えてくれ――ほかに罰はないのだろう? どうか、そんな恐れはないと言ってくれ。」

二人は話題を変えようとしたが、王の不安はすでに目覚めており、追及をやめなかった――

「鞭で打たれるのか? いや、いや、そこまで残酷ではあるまい! そうではないと言ってくれ。頼む、そんなことはないのだろう?」

女たちは動揺と苦悩を隠せなかったが、答えを避けることはできなかった。一人が感情に詰まった声で言った――

「ああ、そんなに優しくされては胸が張り裂けます! 神が私どもに力を与え、この――」

「白状したな!」と王は遮った。「ならば、やはり鞭打つのか、石の心を持つ悪党どもめ! だが、ああ、泣いてはならぬ。私には耐えられない。勇気を持て――間に合うよう本来の地位へ戻り、このつらい目からそなたたちを救ってみせる。必ずそうする!」

朝、王が目を覚ますと、女たちはいなくなっていた。

「助かったのだ!」と王は喜んで言ったが、すぐ沈んだ声で付け加えた。「だが、ああ、私は不幸だ! 二人は私を慰めてくれたのに。」

二人はそれぞれ、形見として王の衣服にリボンの切れ端を留めていた。王はこれをいつまでも大切にすると言い、近いうちに、この親愛なる善良な友人たちを捜し出して庇護すると誓った。

ちょうどそのとき、看守が部下を何人か連れて入ってきて、囚人たちを牢の中庭へ連れ出せと命じた。王は大喜びした――もう一度、青空を見て新鮮な空気を吸えるとは、何という恵みだろう。役人たちの手際の悪さに苛立ち、じりじりしながら待ったが、ついに自分の番が来た。壁の鉄環から鎖を外され、ヘンドンとともにほかの囚人たちのあとへ続くよう命じられた。

方形の中庭には石が敷かれ、頭上には空が開けていた。囚人たちは頑丈な石造りのアーチをくぐって入り、壁を背に、一列に立たされた。その前には縄が張られ、役人たちも見張りについた。寒々しく空の曇った朝で、夜のうちに降った薄雪が広々とした空間を白く覆い、ただでさえ陰気な光景をいっそう侘しくしていた。時おり冬の風が中庭を震えながら吹き抜け、雪をあちらこちらへ渦巻かせた。

中庭の中央では、二人の女が柱につながれていた。ひと目で、王にはあの親切な友人たちだとわかった。身震いし、胸の中で言った。「ああ、思っていたように釈放されたのではなかった。このような者たちが鞭を受けるとは! ――このイングランドで! そう、そこが恥なのだ――異教の国ではない、キリスト教国イングランドで! 二人は鞭打たれる。そして二人に慰められ、親切にしてもらった私は、ただ見ているしかなく、この大いなる不正が行われるのを目撃せねばならぬ。何と奇妙なことだ。これほど広い王国の権力の源である私が、二人を守ることさえできぬとは。だが、悪党どもよ、せいぜい覚悟しておけ。この所業について、重い償いを求める日が来る。今ここで一度打つごとに、その日には百倍をその身で味わわせてやる。」

大きな門が開き、市民の群れがなだれ込んだ。人々は二人の女の周囲に群がり、王の視界から姿を隠した。一人の聖職者が入って群衆の中を進み、その姿も見えなくなった。やがて質疑応答のような話し声が聞こえたが、何を言っているのか王にはわからなかった。次いで大がかりな準備が始まり、女たちの向こう側に立つ群衆の間を役人たちがせわしなく行き来した。そのうち、人々はしだいに深い沈黙に包まれていった。

やがて命令によって群衆が左右に分かれ、王の目に、骨の髄まで凍らせる光景が飛び込んだ。二人の女の周りには薪束が積まれ、膝をついた男が火をつけていたのである! 

女たちは頭を垂れ、両手で顔を覆った。ぱちぱちとはぜる薪束の間を黄色い炎が昇りはじめ、青い煙が幾筋も風に流れていった。聖職者は両手を上げて祈りを始めた――そのとき、二人の少女が鋭い悲鳴をあげながら大門を駆け抜け、柱につながれた女たちへ飛びついた。すぐさま役人たちに引き離され、一人はしっかり押さえ込まれた。だがもう一人は振りほどき、母と一緒に死ぬのだと叫んで、止められるより先に再び母の首へ腕を回した。もう一度引き剥がされたときには、服に火がついていた。二、三人の男が少女を押さえ、燃えている部分を引きちぎって、炎をあげたまま脇へ投げ捨てた。その間も少女は必死に逃れようともがきつづけ、これでは一人きりになってしまう、母と一緒に死なせてほしいと懇願した。二人の少女は絶え間なく悲鳴をあげ、自由になろうと暴れた。だが突然、その騒ぎは、死の苦痛に引き裂かれた凄絶な絶叫の連続にかき消された――王は狂乱する少女たちから火刑柱へ目を移すと、顔を背け、血の気を失った顔を壁に押しつけ、二度と見ようとしなかった。そして言った。「あのほんの一瞬に見たものは、決して記憶から消えぬ。死ぬまでそこに残り、昼ごとに目に浮かび、夜ごとに夢となるだろう。神よ、私の目が見えなければよかったものを!」

ヘンドンは王を見守っていた。満足げに胸の中で言った。「この子の病は快方へ向かっている。変わったのだ、優しくなってきた。これまでなら、あの悪党どもを怒鳴りつけ、自分は王だと名乗り、女たちを無傷で放せと命じただろう。もうすぐ妄想は消え、忘れ去られ、哀れな心も元どおりになる。神よ、その日を早めたまえ!」

その日のうちに、何人かの囚人が一夜を過ごすため連れてこられた。犯した罪の罰を受けるべく、護送されて王国各地へ向かう途中の者たちだった。王は彼らと話をした――囚人に質問する機会があれば、王たる務めを学ぶため、当初から必ずそうしていたのである――そして悲惨な身の上話に胸を締めつけられた。一人は知恵の足りない哀れな女で、織工から一、二ヤード(約〇・九~一・八メートル)の布を盗み、そのために絞首刑になるという。もう一人は馬を盗んだとして訴えられた男だった。証拠不十分となり、首縄を免れたと思ったらしい。だが違った――釈放されるやいなや、王の猟園で鹿を殺した罪に問われた。それは有罪とされ、今や絞首台へ向かう途中だった。商人の徒弟もおり、その一件には王もひどく心を痛めた。ある晩、飼い主のもとから逃げた鷹を見つけ、自分のものにしてよいと思って家へ持ち帰ったところ、裁判所は盗んだと認定し、死刑を宣告したという。

王はこの非人道的な仕打ちに激怒し、ヘンドンに脱獄して自分とともにウェストミンスターへ飛んでいけと言った。そうすれば王座に就き、慈悲の王笏をこれら不幸な者たちの上に差し伸べ、その命を救えるというのである。「哀れな子だ」とヘンドンは嘆息した。「この痛ましい話のせいで、また病がぶり返した。この災難さえなければ、もうじき治っていただろうに。」

囚人の中には一人の老法律家がいた――意志の強そうな顔に、不屈の風格を備えた男である。三年前、大法官卿の不正を糾弾する小冊子を書き、その罰としてさらし台で両耳を失い、法曹資格を剥奪され、さらに三千ポンドの罰金と終身刑を宣告されていた。近ごろ同じ罪を繰り返したため、今度は、残っている耳を切り落とされ、五千ポンドの罰金を科され、両頬に焼き印を押されたうえ、生涯牢獄で過ごすことになっていた。

「これは名誉の傷跡だ」と男は言い、白髪をかき上げて、かつて耳だった無残な切り株を見せた。

王の目は怒りに燃えた。王は言った――

「誰も私を信じぬ――そなたも信じまい。だが構わぬ。一か月もたたぬうち、そなたは自由になる。それだけではない。そなたの名誉を傷つけ、イングランドの名を汚した法律は、法令集から一掃してやる。この世は間違っている。王は時に、自らの法律を教わる学校へ行き、そこで慈悲を学ぶべきなのだ。」


第二十八章 犠牲

そのころマイルズは、監禁され、何もできずにいることにすっかりうんざりしていた。だが今や、大いに喜ばしいことに裁判が始まり、これ以上の投獄さえ含まれていなければ、どんな判決でも歓迎できると思った。しかし、それは見込み違いだった。自分が「屈強な浮浪者」と呼ばれ、その身分とヘンドン・ホールの主人への暴行を理由に、さらし台に二時間入れられると宣告されたとき、彼は怒り狂った。原告の兄であり、ヘンドン家の名誉と領地の正当な相続人だという主張は、検討する価値すらないものとして、侮蔑的に黙殺された。

刑場へ向かう途中も怒鳴り、脅しつづけたが、何の役にも立たなかった。役人たちに手荒く引っ張られ、不敬な態度をとるたび、時おり拳骨まで食らった。

王は背後に群がる野次馬を突き抜けられなかったため、善良な友にして臣下であるヘンドンから遠く離れた最後尾を進むしかなかった。王自身も、そのような悪党と行動を共にした罪で、危うくさらし台へ入れられるところだったが、幼さを考慮され、説教と警告だけで放免された。群衆がようやく止まると、王は外縁を熱に浮かされたようにあちらこちらへ走り回り、入り込める場所を探した。そして大変な苦労と時間の末、とうとう中へ入ることができた。哀れな従者は、屈辱的なさらし台に座らされ、薄汚い群衆の見世物となり、笑いものにされていた――イングランド王の身辺に仕える従者が! エドワードは判決を聞いていたが、それが何を意味するのか半分も理解していなかった。自分に加えられた新たな屈辱の意味を悟るにつれ、怒りがこみ上げてきた。次の瞬間、卵が宙を飛び、ヘンドンの頬で潰れ、その出来事を喜ぶ群衆の爆笑を耳にすると、怒りは真夏の暑さのように一気に沸騰した。王は空いた円の中へ飛び込み、責任者の前に立ちはだかって叫んだ――

「恥を知れ! これは私の臣下だ――放してやれ! 私は――」

「おお、黙ってくれ!」とヘンドンは恐慌をきたして叫んだ。「自分の身を滅ぼすぞ。この子は気にしないでくれ、役人殿。気が狂っているのだ。」

「この子を気にかける必要はないぞ、善良なる男よ。わしも気にかけるつもりなどほとんどない。ただし、少し教育してやることなら大いに乗り気だ。」

役人は部下を振り返って言った。「この小さな愚か者に鞭を一、二度味わわせ、礼儀を教えてやれ。」

「六回もやれば、もっとよく効くだろう」とサー・ヒューが提案した。つい先ほど馬で乗りつけ、刑の様子をちらりと見に来たのである。

王は捕らえられた。抵抗すらしなかった。神聖なる王の身に加えようとしている途方もない暴虐を考えただけで、体が麻痺してしまったのである。イングランド王が鞭打たれたという記録によって、歴史はすでに一度汚されている――その恥辱の一ページを自ら再現せねばならぬという考えは、到底耐えられなかった。もはや逃げ場はない。罰を受けるか、免除を乞うしかなかった。どちらも過酷な選択だ。ならば鞭を受けよう――王は鞭打たれることはできても、命乞いはできない。

だがその間に、マイルズ・ヘンドンが難題を解決しようとしていた。「その子を放せ」と言った。「この血も涙もない犬どもめ。これほど幼く、か弱いのが見えぬのか? 放してやれ――私が代わりに鞭を受ける。」

「これはまことによい思いつきだ――礼を言おう」とサー・ヒューは、意地の悪い満足に顔を輝かせて言った。「その小さな乞食を放し、代わりにこいつへ十二回くれてやれ――手加減なしの、きっちり十二回だ。」

王は激しく抗議しかけたが、サー・ヒューの強烈なひと言に黙らされた。「さあ、言え。遠慮なく思いをぶちまけろ――ただし、よく覚えておけ。おまえがひと言発するたび、こいつはさらに六回打たれるぞ。」

ヘンドンはさらし台から外され、背中をむき出しにされた。鞭が振るわれるあいだ、哀れな小さな王は顔を背け、王らしからぬ涙が頬に跡を刻むままにした。「ああ、勇敢で善良な心の持ち主よ」と胸の中で言った。「この忠義の行いは決して私の記憶から消えぬ。私は忘れぬ――奴らにも忘れさせぬぞ!」と激しく付け加えた。考えれば考えるほど、ヘンドンの高潔な振る舞いは王の心の中でますます大きなものとなり、それへの感謝も深まった。やがて胸の中で言った。「王子を傷や死の危険から救う者は――この男は私のためにそうした――大いなる功績を立てたことになる。だが、それさえ小さい。何でもない――ああ、無にも等しい! ――王子を恥辱から救った者の行いと比べれば!」

ヘンドンは鞭を受けても叫び声一つあげず、兵士らしい忍耐で重い一撃に耐えた。その態度と、少年の身代わりに鞭を受けて救った行いは、そこに集まった落ちぶれた卑しい群衆にさえ敬意を抱かせた。嘲りや野次は消え去り、響くのは鞭が振り下ろされる音だけになった。ヘンドンが再びさらし台に戻されたとき、その場を支配していた静寂は、ほんの少し前まで満ちていた侮辱的な喧騒とは際立った対照をなしていた。王はそっとヘンドンのそばへ行き、その耳元でささやいた――

「王とて、善良で偉大な心を持つそなたを貴族にすることはできぬ。王より高き御方が、すでにそなたを高貴な者となされたからだ。だが王は、その高貴さを人々に認めさせることができる。」

王は地面から鞭を拾い上げ、それでヘンドンの血まみれの肩へ軽く触れ、ささやいた。「イングランドのエドワードは、そなたを伯爵に叙する!」

ヘンドンは心を打たれた。目には涙が湧いたが、同時に、この状況の凄まじく滑稽なところが彼の厳粛さを根底から揺るがし、内心の笑いを表情に出さずにいるのがやっとだった。裸で血まみれのまま、庶民のさらし台から突然、伯爵位というアルプスのごとき高みと栄光へ引き上げられるとは、滑稽の極致に思えた。胸の中で言った。「これで私は、実に見事な金箔を貼られたわけだ! 夢と影の王国の幻の騎士が、今度は幻の伯爵となった――ひな鳥の翼には目もくらむほどの飛躍だ! この調子でいけば、まもなく五月柱のように奇妙な飾り物や見せかけの栄誉を全身にぶら下げられるだろう。だが、どれほど無価値でも、それを授ける愛ゆえに大切にしよう。清らかな手と正しい心から、求めずして与えられたこの哀れな偽りの爵位のほうが、出し惜しみする利己的な権力にへつらって買う本物の爵位より、はるかによい。」

恐れられるサー・ヒューが馬首を返し、拍車をかけて立ち去ると、人の壁は無言で割れて道を開け、通り過ぎたあと、また無言で閉じた。そのまま沈黙は続いた。囚人を擁護したり、称賛したりする言葉をあえて口にする者はいなかった。しかし、それで十分だった――罵声がないこと自体、何よりの敬意だったからである。事情を知らずに遅れて来た者が「詐欺師」を嘲り、続いて猫の死骸を投げつけようとしたところ、すぐさま無言で殴り倒され、蹴り出された。その後、再び深い静寂が支配した。


第二十九章 ロンドンへ

ヘンドンがさらし台での刑期を終えると、解放され、この土地を去って二度と戻るなと命じられた。剣も返され、ラバとロバも戻ってきた。ヘンドンが乗って出発し、王があとに続くと、群衆は静かな敬意をもって道を開け、二人が去ったあと散っていった。

ほどなくヘンドンは物思いに沈んだ。答えを出すべき重大な問題がいくつもあった。これからどうすべきか。どこへ行くべきか。どこかで強力な助けを得なければ、遺産を諦めねばならず、おまけに詐欺師という汚名まで背負いつづけることになる。どこへ行けば、そのような強力な援助を得られるのか。いったいどこへ! 実に難しい問題だった。やがて、一つの可能性を示す考えが浮かんだ――確かに、これ以上ないほどかすかな可能性だった。それでも、ほかに何一つ望みがない以上、検討する価値はあった。若い王の善良さと、虐げられた不幸な者たちを寛大に擁護しているという、老アンドルーズの話を思い出したのである。王に拝謁し、正義を求めてはどうか。だが、このように奇怪な姿をした貧民が、尊い君主の御前へ入れるだろうか。まあよい――それは成り行きに任せよう。実際にそこへ着くまでは、渡る必要のない橋である。ヘンドンは古参の兵士で、窮余の策を編み出すことには慣れていた。きっと道を見つけられるだろう。そうだ、都を目指そう。父の旧友サー・ハンフリー・マーロウなら助けてくれるかもしれない――「善良な老サー・ハンフリー。先王の厨房か厩舎か、何かの長を務めていた」――何の役職だったか、マイルズには正確に思い出せなかった。力を注ぐ対象、成し遂げるべき明確な目標を得ると、心を覆っていた屈辱と落胆の霧は晴れ、吹き飛んだ。顔を上げて周囲を見ると、思いのほか遠くまで来ていたことに驚いた。村ははるか後方にあった。王はうつむいたまま、彼のあとをとぼとぼ進んでいた。王もまた、計画と思案に深く沈んでいたのである。ヘンドンの生まれたばかりの快活さに、悲しい不安が影を落とした。この子は、短い生涯を通じて虐待と飢えしか知らなかった町へ、もう一度行くことを承知するだろうか。だが尋ねねばならない。避けることはできない。そこでヘンドンは手綱を引き、声をかけた――

「どちらへ向かうのか、まだ伺っておりませんでした。ご命令を、陛下!」

「ロンドンへ!」

ヘンドンは再び進みだした。その答えに大いに満足したが、同時に仰天もしていた。

旅のあいだ、重大な事件は何も起こらなかった。だが最後に一つ起こった。二月十九日の夜十時ごろ、二人はロンドン橋へ足を踏み入れた。そこは身をよじり、押し合い、わめき、歓声をあげる人々でぎっしり詰まり、大量の松明の光の中、ビールで陽気になった顔がくっきり浮かび上がっていた――その瞬間、かつての公爵か何かの大貴族の朽ちかけた首が二人の間へ落ちてきて、ヘンドンの肘に当たり、せわしなく入り乱れる足の群れの中へ跳ねていった。この世における人の営みとは、何と儚く頼りないものか! ――善良な先王が亡くなってわずか三週間、埋葬されて三日しかたたないというのに、王が苦心して名高い人々の中から選び、この立派な橋を飾った装飾品は、早くも落ちはじめている。一人の市民がその首につまずき、自分の頭を前にいた者の背中へ突っ込んだ。ぶつかられた者は振り返り、手近にいた最初の男を殴り倒したが、すぐさまその友人に殴り倒された。乱闘が始まるには、まさに絶好の時機だった。翌日の祝典――戴冠式の日――はすでに始まりつつあり、誰もが強い酒と愛国心に満ちていたからである。五分もしないうちに乱闘はかなりの範囲へ広がり、十分か十二分後には一エーカー(約四千平方メートル)ほどを覆い、暴動となった。そのころには、ヘンドンと王は完全にはぐれ、吠えたける人間の大群が押し合いへし合いする混乱の中で、互いを見失っていた。そこで、ひとまず二人と別れることにしよう。


第三十章 トムの歩み

真の王が、みすぼらしい服を着て、ろくな食事も取れず、一方では浮浪者に殴られ嘲られ、また一方では牢獄で盗賊や殺人者と同居し、誰からも平等に白痴や詐欺師と呼ばれて国中をさまよっているあいだ、偽の王トム・キャンティは、まるで違った経験をしていた。

前にトムを見たとき、王の暮らしはようやく明るい面を見せはじめていた。その明るさは日ごとに増し、ほどなく、ほとんどすべてが陽光と喜びになった。恐怖は消えた。不安は薄れ、やがて死に絶えた。戸惑いも去り、代わりに自然で自信に満ちた態度が身についた。身代わりの鞭打ち役という鉱脈から、ますます大きな利益を掘り出した。

遊びたいときや話したいときにはレディ・エリザベスとレディ・ジェーン・グレイを御前に呼び、用が済めば、そうすることに慣れきった者の態度で退出させた。別れ際、この高貴な人々が自分の手に口づけても、もう困惑しなかった。

夜、盛大な儀式とともに寝室へ案内され、朝には複雑で厳粛な作法によって着替えさせられることも、楽しめるようになった。国務官や近衛兵のきらびやかな行列を従え、夕食へ向かって進むことも誇らしい喜びとなった。実際、近衛兵を倍に増やし、百人にしたほどである。長い廊下にラッパが鳴り響き、遠くの声が「王のお通り!」と応じるのを聞くのが好きだった。

玉座に就いて会議に臨み、護国卿の言葉を代弁するだけではない何者かを装うことすら、楽しめるようになった。偉大な大使とその華麗な随員を迎え、自分を兄弟と呼ぶ高名な君主たちの親愛に満ちた言葉を聞くことも好んだ。ああ、幸福なトム・キャンティよ。ついこの間までオファル・コートにいたというのに! 

豪華な衣装を楽しみ、さらに注文した。自らの威厳に対して四百人の使用人では少なすぎると考え、三倍に増やした。平伏する廷臣たちの追従は、耳に心地よい音楽となった。それでも優しく温和な心を保ち、虐げられた者すべてを守る強く断固たる闘士でありつづけ、不正な法律とは休むことなく戦った。ただし、ときに腹を立てれば、伯爵、さらには公爵にさえ向き直り、相手を震え上がらせる眼差しを向けることもできた。あるとき、王の「姉」である厳格で信仰深いレディ・メアリーが、投獄、絞首刑、火刑になるはずの者たちを大勢赦免する方針は賢明ではないと諭そうとした。そして、尊い亡き父王の牢獄には、一度に六万人もの罪人がいたこともあり、その称賛すべき治世のあいだ、七万二千人の盗人や強盗を処刑人の手に渡して死なせたことを思い出させた。すると少年は高潔な憤りに満たされ、姉に私室へ行って、胸の中にある石を取り除き、人間の心を与えてくださるよう神に願えと命じた。

トム・キャンティは、自分にあれほど親切にし、宮殿の門で傲慢な衛兵に侮辱された彼のため、激しい怒りに燃えて復讐へ飛び出していった、哀れな小さな正統の王子を思い、心を痛めることはなかったのだろうか。いや、あった。王となった最初の数日と数夜は、行方不明の王子を思う苦しい気持ちと、王子が戻って本来の権利と栄華を幸福のうちに取り戻してほしいという心からの願いに、かなり満たされていた。だが時が過ぎても王子は現れず、トムの心が新しく魅惑的な経験にますます占められていくにつれ、姿を消した君主は少しずつ思考からほとんど消えていった。そして最後には、時おり心へ忍び込んでくると、トムに罪悪感と恥を覚えさせる、歓迎されざる亡霊となった。

哀れな母と姉たちも、同じ道をたどってトムの心から消えていった。初めのうちは恋しく思い、身を案じ、会いたいと願った。だが後には、いつの日か彼女たちがぼろをまとい、汚れた姿で現れ、口づけによって正体を暴き、高い地位から引きずり下ろし、再び貧困と屈辱と貧民街へ連れ戻すところを想像すると、身震いするようになった。ついには、ほとんどまったく心を悩ませなくなった。トムは満足し、喜びさえした。悲しげに責める顔が目の前へ浮かぶたび、自分が地を這う虫よりも卑しい者に思えたからである。

二月十九日の真夜中、トム・キャンティは宮殿の豪華な寝台で眠りに落ちようとしていた。忠実な臣下に守られ、王者の栄華に囲まれた幸福な少年だった。翌日は、イングランド王として厳かに戴冠する日である。同じ時刻、真の王エドワードは空腹と渇きに苦しみ、汚れて泥まみれになり、旅に疲れ果て、暴動で得た分け前であるぼろと裂け布を身にまとっていた。そしてウェストミンスター寺院へ忙しく出入りし、蟻のように働く人夫たちを深い関心とともに眺める群衆の中に挟まれていた。人夫たちは、王の戴冠式に向けた最後の準備をしていたのである。


第三十一章 承認の行進

翌朝、トム・キャンティが目覚めると、大気は雷鳴のようなどよめきで重く震えていた。遠い場所まで、すべてがその音に満たされていた。トムには音楽だった。それは、イングランド中の民が総出で、この偉大な日を忠実に迎えようとしている証しだったからである。

ほどなくトムは、再びテムズ川を進む見事な水上行列の中心にいた。古来の慣習により、ロンドン市内を進む「承認の行進」はロンドン塔から出発せねばならず、トムはそこへ向かっていたのである。

到着すると、由緒ある城塞の壁面が突如、千か所で裂けたかに見え、あらゆる裂け目から赤い炎の舌と白い煙が噴き出した。続いて耳を聾する爆音が響き、群衆の叫びをかき消し、大地を揺らした。炎と煙と爆発は驚くほどの速さで何度も繰り返され、ほんの数分で古いロンドン塔は自ら生んだ巨大な煙霧の中へ消えた。唯一見えているのは、ホワイト・タワーと呼ばれる高い建物の頂上だけだった。旗を掲げたその頂は、雲海から突き出す山頂のように、濃密な煙の層の上にそびえていた。

華麗に装ったトム・キャンティは、豊かな馬具が地面近くまで垂れた、足を高く上げて歩く軍馬にまたがった。同じく馬に乗った「叔父」の護国卿サマセットが後ろについた。王の近衛兵は磨き上げた甲冑をまとい、左右に一列ずつ並んだ。護国卿の後ろには、臣下を従えた燦然たる貴族の行列が、果てしなく続くかに見えた。その後には、深紅のビロードの長衣をまとい、胸に金鎖をかけたロンドン市長と参事会員たちが続いた。さらにその後には、豪華な服を着て、それぞれの組合の華やかな旗を掲げた、ロンドン全同業者組合の役員と構成員が続いた。また、市中を進む特別儀仗隊として、古式砲兵中隊も行列に加わっていた。これは当時すでに三百年の歴史を持つ組織であり、国会の命令から独立して行動できる特権を有する、イングランド唯一の軍事組織だった――その特権は現代にも残っている。まばゆい光景だった。行列が密集する市民の間を堂々と進むと、沿道の至るところで歓呼に迎えられた。年代記はこう記している。『王が市中へ入ると、民は祈り、歓迎の言葉、叫び、優しい言葉、臣民が君主へ抱く真摯な愛を示すすべてのしるしをもって迎えた。王も、遠くに立つ者には喜ばしい顔を上げ、陛下の近くに立つ者にはこの上なく優しい言葉をかけ、民が善意を捧げるのに劣らず感謝して、それを受け取られた。幸福を祈るすべての者へ、礼を述べられた。「陛下に神のご加護を」と言う者には、「そなたたち皆にも神のご加護を!」と答え、「心より礼を言う」と付け加えられた。

王の愛情深い返答と身振りに、民は驚くほど心を奪われた。』

フェンチャーチ通りでは、「高価な衣装を着た美しい子供」が舞台に立ち、陛下を市内へ迎え入れた。歓迎の言葉の最後の一節は、こうだった――

『ようこそ、王よ! 心に思いうるかぎり、 ようこそ、再び、言葉にできるかぎり―― 喜びの舌と、揺るがぬ心へ、ようこそ。 神よ王を守りたまえ。永遠の幸をわれらは祈る。』

民衆は歓喜の叫びをあげ、子供の言葉を声をそろえて繰り返した。トム・キャンティは、波打つ熱烈な顔の海を見渡し、胸を誇らしさで膨らませた。この世で生きるに値する唯一のことは、王となり、一国の偶像となることだと感じた。やがて遠くに、ぼろをまとったオファル・コートの仲間を二人見つけた――一人は、かつての物まね宮廷で海軍大提督を務め、もう一人は、同じ大仰な芝居の中で寝室侍従長を務めていた。トムの誇りは、かつてないほど大きく膨れ上がった。ああ、今の自分に気づいてくれたなら! 気づいてくれたなら、貧民街と裏路地で嘲られた偽の王が、今や名高い公爵や王子を卑しい従者とし、イングランド中を足元に従える本物の王となったことを知ってくれたなら、何と筆舌に尽くしがたい栄光だろう! だが自制し、その願いを押し殺さねばならなかった。正体を知られる代償は、得られる喜びより大きいかもしれないからだ。そこで顔を背け、汚れた二人の少年をそのまま叫ばせ、喜びに満ちた賛辞を捧げさせた。二人は、それを誰に浴びせているのか、まるで気づいていなかった。

時おり「ご祝儀を! ご祝儀を!」という叫びがあがり、トムは応えて、輝く新しい硬貨を一握り群衆へまき、人々に奪い合わせた。

年代記はこう記している。『グレイスチャーチ通りの上手、鷲の看板の前に、市は豪華な門を築いた。その下には、通りの端から端まで届く舞台があった。これは王の直系の祖先を表す歴史劇だった。ヨークのエリザベスが巨大な白薔薇の中央に座り、花びらが精巧なひだ飾りとなって周囲を囲んでいた。その傍らでは、ヘンリー七世が同じように配置された巨大な赤薔薇から姿を現していた。王夫妻は手を取り合い、婚礼の指輪がこれ見よがしに示されていた。赤と白の薔薇から一本の茎が伸び、第二の舞台へ達していた。そこではヘンリー八世が赤白の薔薇から姿を現し、傍らには新王の母ジェーン・シーモアの像が置かれていた。この二人から一本の枝が伸び、第三の舞台へ昇っていた。そこにはエドワード六世その人の像が、王者の威厳をもって玉座に就いていた。劇全体は、赤と白の薔薇の花輪で縁取られていた。』

この風変わりで華美な見世物に喜びを刺激された民衆は、喝采によって、この仕掛けを賛美の韻文で説明する役目の子供の細い声を完全にかき消した。だがトム・キャンティに不満はなかった。この忠誠の大歓声は、どれほど優れた詩よりも甘美な音楽だったからである。トムが幸福に輝く若い顔を向けるたび、人々は彼の像が、生身の本人に寸分違わず似ていることに気づき、新たな喝采の旋風を巻き起こした。

大行列は進みつづけた。次々と凱旋門をくぐり、目もくらむほど連続する華麗で象徴的な活人画の前を通りすぎた。その一つ一つが、小さな王の何らかの美徳、才能、功績を象徴し、称揚していた。『チープサイド全域では、張り出し屋根や窓という窓から旗や吹き流しが垂れ、最高級の絨毯、織物、金襴が通りを飾っていた――店内に蓄えられた莫大な富の見本である。この大通りの壮麗さは、ほかの通りでも同等であり、中にはそれを上回るものさえあった。』

「この驚異も、あの奇観も、すべて私を――この私を迎えるためなのか!」とトム・キャンティはつぶやいた。

偽王の頬は興奮に紅潮し、目は輝き、感覚は喜びの陶酔に揺らいでいた。ちょうどそこで、もう一度豪華な祝儀を投げようと手を上げたとき、群衆の二列目から身を乗り出し、強い眼差しを自分に釘づけにしている、青ざめた驚愕の顔が目に入った。吐き気を催すような恐怖が全身を貫いた。母だった! そして手が跳ね上がり、手のひらを外へ向けて目の前を覆った――忘れ去られた出来事から生まれ、習慣として残った、あの無意識の仕草だった。次の瞬間、母は人混みをかき分け、近衛兵を突破して、トムのそばへ来ていた。その脚にすがりつき、何度も口づけし、「ああ、私の子、愛しい子!」と叫びながら、喜びと愛で一変した顔を見上げた。同じ瞬間、王の近衛兵が罵声とともに母を引き剥がし、強い腕で激しく突き飛ばして、来た方向へよろめかせた。「おまえなど知らぬ、女!」という言葉がトム・キャンティの唇から落ちかけた、まさにそのときのことだった。だが、この痛ましい扱いを受ける母の姿は、トムの心を刺し貫いた。群衆に呑まれて見えなくなる直前、母が最後に振り返ったとき、その顔はあまりに傷つき、あまりに悲嘆に暮れていた。そのため恥がトムを襲い、誇りを灰にし、盗み取った王者の栄光を枯らした。壮麗なものはすべて価値を失い、腐ったぼろのように体から剥がれ落ちたかに思えた。

行列はなおも進みつづけた。ますます壮麗になる光景と、ますます激しくなる歓迎の嵐の中を。だがトム・キャンティにとって、それらは存在しないも同然だった。何も見えず、何も聞こえなかった。王位は優美さも甘美さも失い、その華やかさは責め苦となった。後悔が心を食い尽くしていた。「神よ、この囚われの身から自由にしてくだされば!」と口にした。

強いられた栄華の最初の日々に使っていた言葉へ、無意識のうちに戻っていたのである。

輝く行列は、光り輝く果てしない蛇のように、趣深い古都の曲がりくねった小道を進み、万歳を叫ぶ大群衆の中を抜けていった。だが王はうつむき、虚ろな目をしたまま馬を進めた。見えるのは母の顔と、そこに浮かんだ傷ついた表情だけだった。

「ご祝儀を、ご祝儀を!」

その叫びは、聞く耳を持たぬ者の耳へ落ちた。

「イングランドのエドワード万歳!」

その爆発的な歓声に大地まで揺れたかに思えたが、王は応じなかった。はるか彼方から風に運ばれてくる波の轟きを聞くように、かすかに耳へ届いただけだった。もっと近く、自らの胸の中、責める良心から聞こえる別の声にかき消されていたのである――「おまえなど知らぬ、女!」という恥ずべき言葉を繰り返す声に。

その言葉は、亡き友へひそかに働いた裏切りを思い出させる弔鐘の一打、一打のように、王の魂を打った。

曲がり角ごとに新たな栄光が開け、新たな驚異、新たな奇観が姿を現した。待機していた砲列は、溜め込んだ轟音を解き放ち、待ち受けた群衆の喉からは新たな歓喜があふれた。だが王は何の反応も示さず、慰めを失った胸の中で呻く、責める声だけを聞いていた。

やがて民衆の顔に浮かぶ喜びが少し変わり、気遣いや不安にも似たものが混じりはじめた。喝采の音量が弱まったことも、はっきり感じられた。護国卿はすぐにそれを察し、その原因もただちに見抜いた。馬に拍車をかけて王のそばへ行き、帽子を脱いで鞍上から深く身を屈め、言った――

「陛下、物思いに耽る時ではございません。民は、うなだれた御首と曇った御顔を見て、凶兆と受け取っております。どうかお聞き入れを。王者の太陽から雲を払い、この不吉な霧へ光を注いで、追い散らしてください。御顔をお上げになり、民へ微笑みかけられませ。」

そう言うと、公爵は左右へ一握りの硬貨をまき、自分の位置へ退いた。偽王は命じられたとおり、機械的に振る舞った。微笑みに心はこもっていなかったが、それを見抜けるほど近く、目の鋭い者はほとんどいなかった。羽根飾りのついた頭を優雅にうなずかせて臣民へ挨拶し、その手から王らしく惜しみなく祝儀を投げた。そのため民衆の不安は消え、先ほどと同じほど力強い喝采が、再び爆発した。

行進が終わる少し前、公爵はもう一度前へ馬を進め、諫めねばならなかった。声を潜めて言った――

「畏れ多き陛下! この不吉な気分をお振り払いください。世界中の目が、陛下へ注がれております。」

それから鋭い苛立ちを込めて付け加えた。「あの気の狂った貧民め、地獄へ落ちればよい! あの女が殿下の御心を乱したのだ。」

華麗な装いの人物は、光を失った目を公爵へ向け、死んだような声で言った――

「あれは私の母だ!」

「何ということだ!」と護国卿は呻き、手綱を引いて持ち場へ馬を後退させた。「あの凶兆は、まさしく予言を孕んでいた。また狂気が戻られたのだ!」


第三十二章 戴冠式の日

ここで数時間さかのぼり、この記念すべき戴冠式の日、午前四時のウェストミンスター寺院へ行ってみよう。われわれにはすでに仲間がいる。まだ夜だというのに、松明に照らされた桟敷は、七時間か八時間もじっと座って待つことを厭わぬ人々で埋まりはじめているからである。人生で二度は見られないだろうもの――王の戴冠式を目にする時が来るまで、喜んで待つ者たちだ。そう、ロンドンとウェストミンスターでは、三時に号砲が鳴って以来ずっと人々が動き回っている。桟敷で席を探す権利を金で買った、爵位を持たぬ富裕な人々の群れが、早くも彼ら専用の入口から続々と入ってきていた。

時間は退屈なほどゆっくり過ぎていった。どの桟敷もとうに満員になり、しばらく前から動きはすべて止まっていた。今は座り、ゆっくり眺め、考えることができる。大聖堂の薄暗い夕闇にも似た光の中、あちらこちらに、多くの桟敷やバルコニーの一部が見え、そこにも人々が隙間なく詰まっている。残りの部分は、間に立つ柱や建築上の突起に遮られ、見ることができない。巨大な北翼廊の全体が見渡せた――そこは空で、イングランドの特権階級を待っていた。豪華な織物で覆われ、玉座の置かれた広々とした場所、すなわち舞台も見える。玉座は舞台中央を占め、四段の階段の上に据えられている。玉座の座部の中には、粗く平たい岩――スクーンの石――が収められている。代々のスコットランド王がその上に座って戴冠し、やがて十分に神聖なものとなって、イングランド君主にも同じ役目を果たすようになった。玉座も足台も、金襴で覆われている。

静寂が支配し、松明は鈍く瞬き、時間は重苦しく過ぎていく。だがようやく、のろい朝の光が存在を主張しはじめる。松明は消され、柔らかな輝きが巨大な空間を満たす。壮麗な建物のあらゆる造作が、今やはっきりと見える。それでも柔らかく、夢のようだった。太陽が薄い雲のヴェールに覆われているからである。

七時、まどろむような単調さが初めて破られた。時を告げる鐘とともに、最初の貴族夫人が翼廊へ入ってきたのである。ソロモンにも比すべき華麗な装いで、サテンとビロードをまとった役人に所定の席へ案内された。その役人と瓜二つのもう一人が、夫人の長い裾を抱えてあとに従い、夫人が座ると、その裾を膝の上へ整えた。それから希望どおりに足台を置き、貴族たちが一斉に宝冠を戴く時が来たら手に取りやすい場所へ、夫人の宝冠を置いた。

このころには貴族夫人たちが輝く流れとなって押し寄せ、サテン姿の役人たちが至るところを飛び回るようにきらめきながら、席へ案内し、快適に過ごせるよう世話をしていた。今や光景は十分に活気づいていた。至るところに動きと生命があり、色彩が移ろっている。しばらくすると、再び静けさが支配した。貴族夫人たちが全員到着し、席に着いたからである。一エーカー(約四千平方メートル)ほどを埋め尽くす人間の花々は、色とりどりに輝き、天の川のようにダイヤモンドの霜をまとっていた。あらゆる年齢の者がいる。日に焼け、皺を刻み、白髪となった老貴婦人は、時の流れをどこまでもさかのぼり、リチャード三世の戴冠式と、今は忘れ去られた古い時代の動乱の日々を思い出すことができた。美しい中年の夫人も、愛らしく優雅な若い既婚女性もいた。そして輝く目と瑞々しい肌を持つ、優しく美しい少女たちもいた。大いなる時が来たなら、宝石をちりばめた宝冠をぎこちなく戴く者もいるかもしれない。それは初めての経験であり、興奮が大きな妨げとなるからである。もっとも、そうはならないかもしれない。合図が来たとき、素早く確実に冠を載せられるよう、夫人たちの髪は皆、特別に結い上げられていたからだ。

貴族夫人の集団にダイヤモンドが密にちりばめられ、それだけでも驚くべき光景だということは、すでに見た。だが今、われわれは心の底から驚かされようとしている。九時ごろ、雲が突如切れ、一本の陽光が柔らかな大気を裂いて、夫人たちの列をゆっくり流れていった。光が触れるたび、その列は色とりどりの炎をあげて眩い輝きに燃え上がる。その意外さと美しさが全身へ走らせる電撃的な感動に、指先まで震えるほどだ! やがて東洋の遥かな一角から来た特使が、外国大使の一団とともに進み、この陽光の帯を横切った。あまりにも圧倒的な栄光が周囲を流れ、閃き、脈打ったため、われわれは息を呑んだ。頭のてっぺんから足元まで宝石に覆われ、ほんのわずか身を動かすたび、踊るような光が周囲へ降り注いだからである。

便宜上、ここから時制を変えよう。時間は流れていった――一時間、二時間、二時間半。やがて重々しい大砲の轟音が、王と壮大な行列の到着を知らせ、待ちつづけた群衆は喜んだ。このあとさらに待たねばならないことは、誰もが承知していた。厳粛な儀式のため、王は身を整え、礼服をまとわねばならない。だがこの待ち時間は、荘厳な礼服を着た王国の貴族たちが集まる様子を見て、楽しく過ごせるだろう。貴族たちは儀礼に従って席へ案内され、宝冠を手の届く場所へ置かれた。その間、桟敷の群衆は興味に沸き立っていた。大半の者にとって、五百年にわたり歴史に名を刻んできた公爵、伯爵、男爵を目にするのは初めてだったからである。全員が着席すると、桟敷やあらゆる見晴らしのよい場所から眺められる光景は完成した。目に焼きつけ、記憶にとどめるべき豪華な眺めだった。

次に、祭服と司教冠をまとった教会の高位聖職者たちが、従者を連れて列を作り、舞台へ入って所定の位置に着いた。その後には護国卿をはじめとする高官たちが続き、さらに鋼鉄の甲冑をまとった近衛兵の一隊が続いた。

しばし待つ静寂があった。やがて合図とともに勝利の音楽が鳴り響き、長い金襴の衣をまとったトム・キャンティが扉から姿を現し、舞台へ足を踏み入れた。大群衆は一斉に立ち上がり、承認の儀式が始まった。

続いて荘厳な聖歌が、豊かな音の波となって寺院を満たした。その先触れと歓迎を受け、トム・キャンティは玉座へ導かれた。観衆が見守る中、古式の儀礼は印象深い厳粛さをもって進んだ。完了へ近づくにつれ、トム・キャンティの顔は青ざめ、さらに青ざめていった。深い悲しみと落胆が刻一刻と濃くなり、その心と、後悔に苛まれる胸へ重くのしかかった。

ついに最後の儀式が迫った。カンタベリー大主教がクッションからイングランドの王冠を取り上げ、震える偽王の頭上に掲げた。同じ瞬間、広大な翼廊を虹色の輝きが走った。集まった大貴族の全員が、一つの衝動に動かされて宝冠を持ち上げ、自らの頭上に掲げ――その姿勢で止まったからである。

深い静寂が寺院を満たした。この荘厳な瞬間、驚くべき人物が光景の中へ入り込んできた。夢中になった群衆は誰一人気づかなかったが、その姿は突如、大きな中央通路を進んで現れた。少年だった。頭に何もかぶらず、粗末な靴を履き、ぼろになりかけた庶民の粗い服をまとっていた。汚れた惨めな姿には似つかわしくない厳粛さで手を上げ、警告を発した――

「その権利を失った頭に、イングランドの王冠を載せることを禁ずる。王は私だ!」

たちまち憤激した何本もの手が少年へ伸びた。だが同じ瞬間、王の礼服をまとったトム・キャンティが勢いよく一歩踏み出し、よく通る声で叫んだ――

「放せ、手を出すな! その方こそだ!」

驚愕の波が恐慌のように集会を襲い、人々は席から半ば立ち上がって、途方に暮れた様子で互いの顔と、この場の中心人物たちを見比べた。自分たちは目覚めて正気でいるのか、それとも眠って夢を見ているのかと疑う者のようだった。護国卿もほかの者と同じく仰天したが、すぐに我を取り戻し、威厳ある声で叫んだ――

「陛下のお言葉を気にするな。また御病気が出たのだ――その浮浪児を捕らえよ!」

命令は実行されるところだった。だが偽王が足を踏み鳴らし、叫んだ――

「命が惜しくば! その方に触れるな。その方が王だ!」

伸びた手は止まった。全員が麻痺したようになり、誰も動かず、誰も口をきかなかった。実際、このように奇怪で驚くべき事態に際し、どう振る舞い、何を言えばよいのか、誰にもわからなかった。皆が思考を立て直そうともがく間も、少年は堂々と自信に満ちた様子で、着実に前へ進みつづけた。最初から一度も足を止めていなかった。混乱した人々の思考がなおも進むべき道を見いだせずにいるうち、少年は舞台へ上がった。偽王は喜びに満ちた顔で駆け寄り、その前に跪いて言った――

「ああ、わが君、国王陛下。哀れなトム・キャンティを、最初に忠誠を誓う者とならせてください。そして申し上げます。『王冠をお戴きになり、再び御自身のものへお戻りください!』。」

護国卿は新来の少年の顔を厳しく見据えた。だがたちまち厳しさは消え、驚き怪しむ表情へ変わった。ほかの高官たちも同じだった。互いに顔を見合わせ、共通した無意識の衝動により、一歩後ずさった。誰の心にも同じ考えが浮かんでいた。「何という不思議な瓜二つぶりだ!」

護国卿は困惑しながらしばらく考え、それから厳粛な敬意をもって言った――

「お許しくだされ、そなたにいくつか尋ねたいことが――」

「お答えしよう、卿。」

公爵は宮廷、先王、王子、王女たちについて数多く質問した。少年は一つもためらわず、すべて正しく答えた。宮殿の公式諸室、先王の居室、プリンス・オブ・ウェールズの居室についても説明した。

不思議だった。驚異だった。そう、説明のつかないことだった――聞いた者は皆そう言った。潮目が変わりはじめ、トム・キャンティの希望が大きく膨らみかけたとき、護国卿が首を振って言った――

「確かに実に驚くべきことだ――だが、われらが国王陛下も同じことがおできになる。」

この言葉と、自分がいまだ王と呼ばれたことにトム・キャンティは悲しくなり、足元から希望が崩れていくのを感じた。「これは証拠ではない」と護国卿は付け加えた。

今や潮目は急速に、実に急速に変わっていた――だが方向が違った。哀れなトム・キャンティを玉座に取り残し、もう一人の少年を沖へ流していた。護国卿は思案し――首を振った――そして一つの考えに捕らわれた。「このように重大な謎をまともに取り合うことは、国家にも、われら全員にも危険だ。国を二分し、王座を揺るがしかねぬ。」

振り返って言った――

「サー・トマス、この者を捕らえ――いや、待て!」

顔が明るくなり、ぼろをまとった王位請求者へ向き直って尋ねた――

国璽こくじはどこにある? これに正しく答えれば、謎は解ける。プリンス・オブ・ウェールズであった者だけが答えられるからだ! かくも些細なものに、王座と王朝の命運がかかっている!」

幸運な思いつき、見事な思いつきだった。高官たちもそう考えたことは、輪の中を目から目へ走った、明るく賛同する視線という無言の喝采に表れていた。そうだ、消えた国璽の難解な謎を解けるのは、本物の王子だけだ――この惨めな小詐欺師は十分に教え込まれている。だがここでは、その教えも役に立たぬ。教師自身がその質問には答えられないのだから――ああ、よいぞ、実によい。これで厄介で危険な一件も、たちまち片づく! 彼らは目に見えぬほど小さくうなずき、内心で満足げに微笑み、愚かな少年が罪の意識による混乱に打ちのめされるのを待った。それなのに、そのようなことがまるで起こらず、少年が自信に満ちた穏やかな声で即座に答えたため、彼らは驚き怪しんだ――

「この謎に難しいことなど何もない。」

それから誰の許しも求めず、このような命令に慣れた者の自然な態度で振り返り、命じた。「セント・ジョン卿、宮殿の私の私室へ行け――その場所をそなた以上によく知る者はいない――そして、控えの間から通じる扉より最も遠い左隅、床近くの壁に、真鍮の釘の頭がある。それを押せば、小さな宝石入れが開く。そなたさえ知らず、この世で知る者は私と、それを私のために作った信頼できる職人だけだ。最初に目に入るものが国璽だ――ここへ持ってこい。」

一同はこの言葉に驚き、さらに、この小さな乞食がためらいも、間違える不安も見せずに、この貴族を選び出し、生涯知ってきた者のような落ち着いた確信をもって名を呼んだことに、いっそう驚いた。貴族は危うく驚きのあまり従いそうになった。実際、立ち去ろうと身を動かしかけたが、すぐに平静な姿勢を取り戻し、頬を赤らめて自分の過ちを認めた。トム・キャンティが鋭く振り向いて言った――

「なぜためらう? 王の命令が聞こえなかったのか? 行け!」

セント・ジョン卿は深々と一礼した――もっとも、それは用心深く、どちらとも取れる意味深な礼だった。二人の王のどちらへ向けるでもなく、二人のちょうど中間にある中立地帯へ向けられていたからである――そして退出した。

すると高官たちのきらびやかな集団を構成する粒子が、ゆっくりと、ほとんど目に見えないほどながら、着実かつ執拗に動きはじめた。ゆっくり回す万華鏡の中で、一つの華麗な模様を作っていた断片が離れ、別の模様へ加わっていくような動きだった。この場合、トム・キャンティの周囲に立つ輝かしい人垣は少しずつ崩れ、新来の少年の近くで再び固まりはじめた。トム・キャンティは、ほとんど一人になった。しばし、深い不安と待機の時が続いた――その間、トムの近くに残っていたわずかな臆病者たちさえ、しだいに勇気をかき集め、一人ずつ多数派のもとへ滑るように移っていった。こうしてついにトム・キャンティは、王衣と宝石を身につけたまま、世界から完全に切り離され、独り立っていた。雄弁な空白の中でひときわ目立つ姿だった。

やがてセント・ジョン卿が戻ってくるのが見えた。中央通路を進むにつれ、一同の関心は極度に高まり、大集会を満たしていた低い話し声は消え、深い沈黙、息を殺した静寂へ変わった。その中を、足音だけが鈍く遠い響きを打った。歩く姿へ、すべての目が釘づけになった。卿は舞台へ着くと一瞬立ち止まり、それから深々と一礼してトム・キャンティへ近づき、言った――

「陛下、国璽はそこにございません!」

疫病患者のそばから群衆が逃げ去るときでさえ、青ざめ、恐れおののく廷臣たちが、みすぼらしい小さな王位請求者のそばから離れたほどには素早くないだろう。たちまち少年はただ一人、友も支持者もなく立ち尽くし、軽蔑と怒りに満ちた視線の激しい砲火を一身に浴びた。護国卿が猛々しく叫んだ――

「その乞食を街路へ放り出し、町中を引き回して鞭打て――この卑しい悪党に、これ以上かまう価値はない!」

近衛兵たちが命令に従おうと飛び出したが、トム・キャンティは手を振って退け、言った――

「下がれ! その方に触れる者は命を失うぞ!」

護国卿は極度に困惑した。セント・ジョン卿へ言った――

「十分に捜したのか? ――いや、聞くまでもあるまい。実に奇妙なことだ。小さなもの、つまらぬ品が見つからなくなっても驚きはしない。だがイングランドの国璽ほど大きなものが消え、誰一人その行方を突き止められぬとは――ずっしりした金の円盤が――」

トム・キャンティが目を輝かせて飛び出し、叫んだ――

「待て、それで十分だ! 丸いのか? ――厚みがあるのか? ――文字や模様が彫ってあるのか? ――そうなのか? ああ、わかったぞ。皆があれほど騒いでいた国璽が何なのか。そう説明してくれていれば、三週間前に渡せたのだ。どこにあるか、よく知っている。だが最初にそこへ置いたのは私ではない。」

「では、誰でございます、陛下?」と護国卿が尋ねた。

「そこに立つ御方――イングランドの正統なる王だ。どこにあるかは、王御自身に答えていただこう。そうすれば、自ら知っておられたと皆も信じるだろう。思い出してください、わが王よ――記憶を呼び覚ますのです。あの日、私のぼろをまとって宮殿から飛び出し、私を侮辱した兵士を罰しに行かれる直前、最後に――本当に最後になさったことです。」

静寂が訪れた。身じろぎ一つ、ささやき一つ、それを乱さなかった。すべての目が新来の少年へ注がれた。少年はうつむき、眉間に皺を寄せ、群がる無価値な記憶の中から、たった一つの、捕らえがたい小さな事実を探していた。見つかれば玉座に就き、見つからなければ永久に今のまま――貧民であり、世間から捨てられた者となる。瞬間が次の瞬間へ過ぎ――積み重なって数分になった――それでも少年は無言で苦闘し、何の兆しも見せなかった。だがついに溜息をつき、ゆっくり首を振り、震える唇と落胆した声で言った――

「あの場面は思い出せる――すべてだ――だが、その中に国璽はない。」

少年は言葉を切り、やがて顔を上げ、穏やかな威厳をもって言った。「諸卿、諸君。正統なる君主が提示できぬこの証拠を理由に、その君主から本来のものを奪うというなら、無力な私には止められぬ。だが――」

「ああ、愚かな、何という愚かなことを、わが王よ!」とトム・キャンティは恐慌をきたして叫んだ。「お待ちください! ――考えてください! 諦めてはなりません! ――まだ負けてはいません! 絶対に負けません! 私の言うことをお聞きください――ひと言ひと言、追ってください――あの朝を、起きたことをすべて、そのとおり呼び戻します。私たちは話しました――私は姉のナンとベットのことを申し上げました――ああ、そうです、それは覚えておられる。年老いた祖母と、オファル・コートの少年たちの荒っぽい遊びについても――そう、それも覚えておられる。よろしい、そのままついてきてください。すべて思い出されます。食べ物と飲み物をくださり、私の卑しい育ちが使用人たちの前で恥とならぬよう、王子らしい礼儀をもって彼らを退出させてくださいました――ああ、そうです、それも覚えておられる。」

トムが一つずつ細部を挙げ、もう一人の少年が思い出した証しにうなずくと、大観衆と高官たちは困惑と驚嘆をもって見つめた。語られる話は本当の出来事らしく聞こえた。それでも、王子と乞食の少年というあり得ない組み合わせが、どうして生じたというのか。これほど困惑し、興味をかき立てられ、茫然とした人々の集団は、かつてなかった。

「戯れに、王子、私たちは衣服を交換しました。それから鏡の前に立ちました。あまりに似ていたので、二人とも、まるで何も変わっていないようだと言いました――そうです、覚えておられる。それから兵士が私の手を傷つけたことにお気づきになりました――ご覧ください! これです。指がこんなにこわばり、今もまだ字さえ書けません。それを見て殿下は跳ね起き、兵士への復讐を誓い、扉へ駆け出されました――一つのテーブルの前を通りました――国璽と呼ばれるものは、その上にありました――殿下はそれをつかみ、隠し場所を探すように熱心にあたりを見回されました――そして御目に入ったのは――」

「そこまででよい! ――善き神に感謝を!」と、ぼろ姿の王位請求者は激しく興奮して叫んだ。「行け、善良なセント・ジョン――壁に掛かっているミラノ製甲冑の腕当ての中に、国璽がある!」

「そのとおりです、わが王よ! そのとおり!」とトム・キャンティは叫んだ。「今こそイングランドの王笏は、あなたのものです。それに異を唱える者は、口の利けぬ者として生まれたほうが身のためでしょう! 行け、セント・ジョン卿、足に翼を生やせ!」

今や全員が立ち上がり、不安、恐れ、身を焼く興奮で正気を失いかけていた。床でも舞台でも、熱狂的な会話が耳を聾するざわめきとなって爆発した。しばらくの間、誰も何も知らず、何も聞かず、自分が隣人の耳へ叫ぶ言葉か、隣人が自分の耳へ叫ぶ言葉以外には、何の関心も持たなかった。どれほどの時間か――誰にもわからなかった――が、意識も記録もされぬまま過ぎ去った。ついに突然、会堂を静寂が覆った。同じ瞬間、セント・ジョン卿が舞台へ現れ、国璽を手に高々と掲げた。すると、轟く叫びが上がった――

「真の王、万歳!」

五分ものあいだ、歓声と楽器の轟きが大気を震わせ、振られるハンカチの嵐があたりを白く染めた。そのすべての中、イングランドで最も目立つ人物となったぼろ姿の少年が、広い舞台の中央で頬を紅潮させ、幸福と誇りに満ちて立ち、周囲には王国の大諸侯たちが跪いていた。

やがて全員が立ち上がり、トム・キャンティが叫んだ――

「さあ、わが王よ、その王衣をお取り戻しください。そして哀れな臣下トムに、ぼろ切れをお返しください。」

護国卿が口を挟んだ――

「その小悪党の衣を剥ぎ、ロンドン塔へ放り込め。」

だが新たな王、真の王は言った――

「そうはさせぬ。この者がいなければ、私は王冠を取り戻せなかった。傷つけようと手を出す者は許さぬ。それに善良なる叔父、護国卿よ、この哀れな少年へのその態度は恩知らずだ。聞けば、この者がそなたを公爵にしたというではないか」――護国卿は赤面した――「だが、この者は王ではなかった。ならば今、その立派な称号にどれほどの価値がある? 明日、この者を通じて私に称号の承認を願い出よ。さもなくば公爵ではなく、ただの伯爵のままだ。」

この叱責を受け、サマセット公爵閣下はひとまず前面から少し退いた。王はトムへ向き直り、優しく言った――「哀れな少年よ。私自身が国璽を隠した場所を思い出せなかったのに、どうしてそなたは覚えていたのだ?」

「ああ、わが王よ、それは簡単です。私は何日ものあいだ、それを使っておりましたから。」

「使っていた――それなのに、どこにあったか説明できなかったのか?」

「皆が欲しがっていたのが、あれだと知らなかったのです。どんな物か説明してくれませんでした、陛下。」

「では、どう使っていたのだ?」

赤い血がトムの頬へ昇りはじめた。トムは目を伏せ、黙り込んだ。

「さあ、話せ。何も恐れることはない」と王は言った。「イングランドの国璽を、何に使っていた?」

トムは痛ましいほど狼狽し、しばらく口ごもった末、ようやく答えを絞り出した――

「くるみを割るのに!」

哀れな子よ。その答えを迎えた雪崩のような笑い声に、危うく足元をすくわれるところだった。だがトム・キャンティがイングランド王ではなく、王権の尊い付属品にも馴染みがないことを疑う者がまだいたとしても、この返答が疑いを完全に消し去った。

その間に豪華な大礼服はトムの肩から外され、王の肩へ掛けられていた。その下で、王のぼろは完全に見えなくなった。戴冠の儀式は再開され、真の王は聖油を塗られ、頭上に王冠を戴いた。大砲がその知らせを市内へ轟かせ、ロンドン全体が喝采に揺れ動くかに思えた。


第三十三章 王となったエドワード

ロンドン橋の騒ぎに巻き込まれる前から、マイルズ・ヘンドンの姿は十分に絵になっていた――そこから抜け出したあとは、なおさらだった。騒ぎに入ったときにはわずかながら金を持っていたが、出てきたときには一文も残っていなかった。すりに最後の一ファージングまで奪われてしまったのだ。

だが、あの子さえ見つかれば、そんなことはどうでもよかった。軍人であるマイルズは、当てもなく捜し回るような真似はせず、まず作戦を練ることから始めた。

あの子なら、当然どうするだろう? どこへ向かうだろう? そうだな――とマイルズは考えた――おそらく昔なじみの場所へ戻るはずだ。家もなく見捨てられた者が、かつての居場所へ帰ろうとするのは、正気であろうとなかろうと本能のようなものだからだ。では、その昔なじみの場所はどこか? あのぼろ服に加え、少年を知っているらしく、しかも父親だと名乗った卑しい悪党の様子からすれば、住まいはロンドンでも最も貧しく、みすぼらしい地区のどこかに違いない。見つけるのは難しいか、時間がかかるか? いや、おそらく簡単で、すぐに済む。少年そのものを捜す必要はない。人だかりを捜せばよい。大きかろうが小さかろうが、その中心には遅かれ早かれ、哀れな小さな友が必ずいるはずだ。そして、薄汚い野次馬どもが、いつものように自分は王だと宣言する少年を、からかい、怒らせて楽しんでいることだろう。そこでマイルズ・ヘンドンが何人かを叩きのめし、幼い庇護者を連れ去って、愛情のこもった言葉で慰め、元気づけるのだ。そうしたら、二人はもう二度と離れない。

こうしてマイルズは捜索を開始した。何時間も裏路地や薄汚れた通りを歩き回り、人の集まりや群衆を捜した。そうしたものならいくらでも見つかったが、少年の姿だけは影も形もなかった。マイルズはひどく驚いたが、落胆はしなかった。作戦そのものに問題があるとは思えない。ただ一つ計算違いだったのは、短期戦になるはずの捜索が長引いていることだけだった。

ようやく夜が明けたころには、何マイル(数キロメートル)も歩き、多くの群衆を一つ一つ確かめていたが、得られたものといえば、かなりの疲労と、空腹と、激しい眠気だけだった。朝食が欲しかったが、手に入れるすべはない。物乞いをするなど思いもよらなかった。剣を質に入れるくらいなら、名誉を売り渡すほうがまだましだ。服ならいくらか手放せる――そう、しかし、こんな服の買い手を見つけるのは、病気の買い手を見つけるのと同じくらい難しい。

正午になっても、マイルズは歩き続けていた――今度は王の行列についてゆく群衆の中を。これほど華やかな王者の行進なら、あの小さな狂人の心を強く引きつけるはずだ、と考えたからだ。行列がロンドンの街を曲がりくねって進むあいだ、ずっとそのあとを追い、ウェストミンスターから寺院までついていった。その近辺にひしめく群衆の中を、疲れ果てるほど長いあいだ、あちらへこちらへとさまよったが、手がかりはなく、途方に暮れるばかりだった。ついにはそこを離れ、作戦を改善する方法はないものかと思案しながら歩き続けた。やがて物思いから我に返ると、街ははるか後方にあり、日はすでに傾きかけていた。近くには川が流れ、辺りは田園地帯だった。立派な郊外邸宅が並ぶ地域であり、マイルズのような服装の者を歓迎する土地柄ではなかった。

寒さはまったくなかったので、マイルズは生け垣を風よけにして地面に身を横たえ、休みながら考えることにした。ほどなく眠気が感覚を包みはじめた。かすかな遠い大砲の響きが風に乗って耳に届き、マイルズは独りごちた。「新しい王が戴冠したのだな」――そう言うなり眠りに落ちた。すでに三十時間以上、眠ることも休むこともしていなかったのだ。次に目を覚ましたのは、翌朝も半ば近くになってからだった。

起き上がると、身体は痛み、こわばり、空腹で倒れそうだった。川で顔と身体を洗い、二パイント(約一~二リットル)の水で腹をごまかすと、これほど時間を無駄にした自分に悪態をつきながら、ウェストミンスターへ向けて重い足を運んだ。空腹のおかげで、今度は新しい策が浮かんだ。老サー・ハンフリー・マーロウに会って、数マーク借りるのだ。そして――いや、当面の計画としてはそれで十分だ。第一段階を成し遂げてから、続きを考えればよい。

十一時ごろ、マイルズは宮殿に近づいた。周囲には同じ方向へ進む華やかな身なりの人々が大勢いたが、その中でも彼の姿は決して目立たないものではなかった――服装がそれを許さなかったのだ。マイルズは人々の顔を注意深く観察し、情け深そうな者を捜した。老副官のもとへ自分の名を取り次いでくれる者がいないかと期待したのだ。自分で宮殿へ入るなど、まったく問題外だった。

やがて、例の身代わり少年がマイルズの前を通り過ぎた。だがすぐに振り返り、その姿をまじまじと眺め、胸の内で言った。「あれが、陛下があれほど気を揉んでおられる、まさにその浮浪者でないとしたら、僕は大馬鹿者だ――もっとも、前からそうだったのかもしれないが。ぼろの一枚に至るまで、聞いたとおりの姿だ。神様がこんなのを二人もお造りになったとすれば、奇跡を無駄に繰り返して値打ちを下げるようなものだ。何か口実を作って話しかけられればよいのだが。」

マイルズ・ヘンドンが、その手間を省いてくれた。背後から強く見つめられれば、人はたいてい催眠術にでもかけられたように振り返るものだが、マイルズもそのとき振り向いたのだ。そして少年の目に並々ならぬ関心が浮かんでいるのを見ると、歩み寄って言った――

「今、宮殿から出てきたな。ここに仕えているのか?」

「はい、旦那様。」

「サー・ハンフリー・マーロウを知っているか?」

少年はぎくりとし、胸の内で叫んだ。「なんと! 亡くなった僕の父上ではないか!」

それから声に出して答えた。「ええ、よく存じております、旦那様。」

「それはよかった――中にいるか?」

「はい」と少年は答え、心の中で付け加えた。「墓の中に。」

「頼みがある。私の名を伝え、ひと言お話ししたいと申し上げてもらえぬか?」

「喜んでお取り次ぎいたします、旦那様。」

「では、サー・リチャードの息子、マイルズ・ヘンドンが外にいると伝えてくれ。恩に着るぞ、よい子よ。」

少年はがっかりしたようだった。「陛下がおっしゃった名とは違う」と胸の内でつぶやいた。「だが構うものか。きっと双子の兄弟だ。もう一人のサー何とかかんとかについて、陛下に知らせを持っていけるに違いない。」

そこで少年はマイルズに言った。「旦那様、しばらくあちらに入って、私が返事を持ってくるまでお待ちください。」

ヘンドンは示された場所へ退いた。宮殿の壁をくぼませた一角で、中には石の腰掛けがあり、悪天候の際に衛兵が身を寄せる場所だった。腰を下ろして間もなく、士官に率いられた数人の斧槍兵ふそうへいが通りかかった。士官はヘンドンに目を留めると、部下を止め、出てくるよう命じた。ヘンドンが従うと、宮殿の敷地内をうろついていた不審人物として、たちまち逮捕されてしまった。雲行きが怪しくなってきた。哀れなマイルズが説明しようとすると、士官は乱暴に黙らせ、武器を取り上げて身体を調べるよう部下に命じた。

「どうか神の慈悲により、何か見つけてくれますように」と、哀れなマイルズは言った。「こちらはさんざん捜して何も見つからなかったし、必要としている度合いも連中より大きいのだから。」

見つかったのは一通の文書だけだった。士官がそれを破るように開くと、ヘンドンは、あの暗い日にヘンドン・ホールで行方知れずの小さな友が書いた、鉤のような文字を見て微笑んだ。だが英語で書かれた一節を読むにつれ、士官の顔は暗くなり、それを聞くマイルズの顔からは逆に血の気が引いていった。

「また新たな王位請求者か!」士官は叫んだ。「まったく、今日は兎のように次から次へと湧いてくる。兵ども、この悪党を捕らえ、しっかり押さえておけ。このありがたい文書を中へ運び、王に届けてくる。」

士官は急いで立ち去り、囚人は斧槍兵たちに拘束されたまま残された。

「これで俺の悪運も、とうとう尽きた」とヘンドンはつぶやいた。「あの紙切れのせいで、今度こそ間違いなく縄の先にぶら下がることになる。そうしたら、哀れなあの子はどうなる! ――ああ、それは神のみぞ知る、だ。」

しばらくすると、士官が大急ぎで戻ってくるのが見えた。そこでヘンドンは、男らしく災難に向き合おうと勇気を奮い起こした。ところが士官は、囚人を放し、剣を返すよう兵たちに命じると、うやうやしく頭を下げて言った――

「恐れ入りますが、私についてお越しください。」

ヘンドンはあとに従いながら、胸の内で言った。「これから死と最後の審判へ向かう身で、罪を節約せねばならぬのでなければ、この悪党の喉を絞めてやるところだ。何が慇懃な礼だ。」

二人は人であふれる中庭を横切り、宮殿の正面玄関へ着いた。そこで士官は再び頭を下げ、きらびやかな高官にヘンドンを引き渡した。その高官は深い敬意をもって彼を迎え、大広間へと案内した。広間の両側には豪華な従僕たちが列をなしていた(二人が通り過ぎるあいだはうやうやしく頭を下げていたが、威風堂々たる案山子の背が向いた途端、声を殺した笑いに悶え苦しんだ)。さらに大階段を上り、華やかな人々の群れを抜け、ついには広大な部屋へ案内された。高官はそこに集まるイングランド貴族たちを左右へ分けて道を開き、一礼すると、帽子を脱ぐよう注意してから立ち去った。ヘンドンは部屋の中央に一人残され、すべての視線と、数多くの憤然たるしかめ面と、十分すぎるほどの面白がる嘲笑を一身に浴びた。

マイルズ・ヘンドンは完全に途方に暮れていた。五歩ほど先、玉座の天蓋てんがいの下には若い王が座っており、頭を伏せて横を向き、人間の極楽鳥とでも呼ぶべき華美な人物――おそらく公爵だろう――と言葉を交わしていた。人生の盛りに死刑を宣告されるだけでも十分つらいというのに、これほど公衆の面前で恥をかかされる必要まであるのか、とヘンドンは思った。王には早く事を済ませてほしかった――近くにいる着飾った連中の態度が、かなり鼻につき始めていた。そのとき、王がわずかに頭を上げ、ヘンドンはその顔をはっきり見た。その瞬間、息が止まりそうになった! ――美しい少年の顔を、雷に打たれたように凝視し、やがて叫んだ――

「見よ、夢と影の王国の主が、玉座におわす!」

なおも驚嘆しながら、途切れ途切れに何やらつぶやいた。それから周囲へ目を走らせ、豪華な人々と壮麗な広間を見回しながら言った。「だが、これはみな本物だ――確かに本物だ――夢のはずがない。」

再び王を見つめ、考えた。「これは夢……なのか。それとも、あの子は本当にイングランドの君主で、俺がそう思い込んでいた、身寄りのない哀れな狂人などではなかったのか――誰がこの謎を解いてくれる?」

突然ひらめいたように目を光らせると、ヘンドンは壁際へ大股で歩み寄り、椅子を一脚つかんで戻り、床に据え、その上に腰を下ろした! 

憤りのざわめきが起こり、荒々しい手がヘンドンにかけられ、声が叫んだ――

「立て、無礼な田舎者! 王の御前で座るつもりか?」

その騒ぎに国王陛下が気づき、手を伸ばして叫んだ――

「その者に触れるな。それは彼の権利だ!」

群衆は呆然として後ずさった。王は続けた――

「婦人、諸卿、紳士たちよ、皆よく聞け。この者は、余が信頼し、深く愛する臣下、マイルズ・ヘンドンである。彼はその優れた剣をもって間に立ち、王子たる余を負傷と、ひょっとすれば死から救った。それゆえ、王の言葉をもって、彼を騎士に叙する。また、さらに大いなる功績として、主君である余が鞭打たれ、辱められるのを救い、その苦痛を自ら引き受けた。それゆえ、彼をイングランドの貴族、ケント伯爵とし、その尊厳にふさわしい黄金と領地を授ける。さらに――彼が今しがた行使した特権は、王より授けられたものである。余は、彼の一族の当主が今後、王冠の続くかぎり、代々にわたってイングランド国王の御前に座る権利を有し、保持するものと定めた。彼の邪魔をしてはならぬ。」

遅れて地方を発ち、この朝ようやく到着し、この部屋に入ってまだ五分しかたっていない二人の人物が、その言葉を聞きながら、王を見、案山子のような男を見、また王を見るということを、茫然自失のうちに繰り返していた。サー・ヒューとレディ・イーディスである。だが、新たな伯爵は二人に気づかなかった。いまだ呆けたように君主を見つめ、つぶやいていた――

「ああ、何ということだ! これが俺の貧乏人! 俺の狂人! 七十の部屋と二十七人の召使いを持つ我が屋敷で、俺が壮麗とは何かを見せてやろうとした相手だ! 衣服といえばぼろ、慰めといえば蹴り、食事といえば残飯しか知らぬと思っていた相手だ! 俺が引き取り、立派な人間にしてやろうとした相手だ! ああ神よ、頭を隠す袋があればよいものを!」

その瞬間、突然礼儀を思い出し、ヘンドンはひざまずいた。両手を王の手に挟まれながら忠誠を誓い、領地と爵位に対する臣従の礼を取った。それから立ち上がり、うやうやしく脇へ退いた。なおもすべての視線――そして多くの羨望――を浴びながら。

そのとき王はサー・ヒューに気づき、燃えるような目で、怒りに満ちた声を放った――

「この盗人から、偽りの栄華と盗んだ領地をすべて剥ぎ取り、余が必要とするまで牢へ入れておけ。」

元サー・ヒューは連行されていった。

今度は部屋の反対側で動きが起こった。人々が左右に分かれ、その人の壁のあいだを、風変わりながら豪華な服をまとったトム・キャンティが、先導役に導かれて進んできた。トムが王の前にひざまずくと、王は言った――

「この数週間に起きたことは、すべて聞いた。そなたの働きに、余は大いに満足している。そなたは真の王者にふさわしい慈愛と慈悲をもって、この国を治めた。母と姉たちにも再会できたのだな? よろしい。今後は皆、不自由なく暮らせるようにしよう――そなたが望み、法が許すなら、父親は絞首刑にする。余の声を聞くすべての者よ、心得よ。本日より、クライスト・ホスピタルの庇護のもとに暮らし、王の恩恵を受ける者には、身体だけでなく精神と心にも糧を与えるものとする。そしてこの少年は生涯そこに住み、その誉れ高き理事たちの首席を務める。また、かつて王であった者には、並の礼遇を超えた敬意が払われるのがふさわしい。ゆえに、この礼装をよく覚えておけ。この衣によって彼は見分けられ、ほかの者が同じものをまとうことは許されぬ。この姿は、彼がかつて王であったことを、行く先々で民に思い出させるだろう。誰であろうと、しかるべき敬意を否定せず、挨拶を怠ってはならぬ。彼は玉座の庇護と王冠の支援を受け、今後は『王の被保護者』という誉れ高き称号をもって知られ、そう呼ばれるものとする。」

誇らしさと喜びに満ちたトム・キャンティは立ち上がり、王の手に口づけすると、御前から退出するよう導かれた。トムは一刻も無駄にせず母のもとへ飛んでいき、この知らせをナンとベットにも残らず話し、皆で喜びを分かち合おうとした。


結び 正義と報い

すべての謎が解けたあと、ヒュー・ヘンドンの自白によって真相が明らかになった。あの日、ヘンドン・ホールで妻がマイルズを他人だと言い張ったのは、ヒューに命じられたためだった。その命令には、絶対に守られると確信できる脅迫が添えられていた。あの男がマイルズ・ヘンドンであることを否定し、断固として否定を貫かなければ、命を奪うというのである。すると妻は、「ならば奪いなさい!」と言った――自分の命など惜しくない、マイルズを否定することはできない、と。そこで夫は、命は助けるが、その代わりマイルズを暗殺させる、と言った! それでは話が違う。そこで彼女は約束し、その約束を守ったのである。

ヒューは、妻を脅したことについても、兄の領地と爵位を奪ったことについても起訴されなかった。妻も兄も彼に不利な証言をしようとしなかったからである――しかも当時、妻は望んだとしても夫に不利な証言を許されなかった。ヒューは妻を捨ててヨーロッパ大陸へ渡り、ほどなく死んだ。その後、ケント伯爵はヒューの未亡人と結婚した。二人が初めてヘンドン・ホールを訪れたとき、ヘンドン村では盛大な宴と祝賀が催された。

トム・キャンティの父親の消息は、それきり二度と聞かれなかった。

王は、焼き印を押され奴隷として売られたあの農夫を捜し出し、ラフラーの一味に加わって送っていた悪しき生活から救い出し、不自由なく生計を立てられるよう取り計らった。

また、あの老弁護士を牢から釈放し、罰金を免除した。火あぶりにされた二人のバプテスト派の女性の娘たちにはよい家庭を用意し、マイルズ・ヘンドンの背に不当な鞭を浴びせた役人には、厳しい処罰を下した。

逃げた鷹を捕らえた少年と、織工から布の切れ端を盗んだ女性を絞首台から救った。しかし、王室の森で鹿を殺した罪に問われた男を救うには、間に合わなかった。

豚を盗んだと疑われたとき、自分を哀れんでくれた判事には恩恵を施した。そしてその判事が世間の尊敬を集め、偉大で誉れ高い人物になってゆくのを、満足とともに見届けた。

王は生涯にわたり、自らの冒険の一部始終を語るのを好んだ。衛兵に殴られて宮殿の門から追い払われたときから、最後の真夜中、急いでいた作業員の一団へ巧みに紛れ込み、寺院へ忍び入り、証聖王の墓に登って身を隠し、翌日あまりにも長く眠り込んだため、危うく戴冠式そのものに間に合わなくなりかけたところまで、すべてである。王は、あの貴重な教訓を繰り返し語ることで、その教えを民のために役立てようとする決意を保てるのだと言った。ゆえに命あるかぎり物語を語り続け、悲惨な光景の数々を記憶に新しく留め、心の中に湧く憐れみの泉を絶やさぬようにするのだ、と。

マイルズ・ヘンドンとトム・キャンティは、王の短い治世を通じて寵愛を受け、王が死んだときには心からその死を悼んだ。善良なケント伯爵は分別ある人物だったので、特別な権利を乱用することはなかった。だが、すでに見た一度目の行使のあと、この世を去るまでに二度その権利を用いた――一度はメアリー女王の即位時、もう一度はエリザベス女王の即位時である。その子孫の一人も、ジェームズ一世の即位に際して行使した。だが、その者の息子が特権を使おうとしたころには、およそ四半世紀が過ぎ、「ケント家の特権」はほとんどの人々の記憶から消えていた。そのため、当時のケント伯爵がチャールズ一世と廷臣たちの前へ現れ、家門の権利を主張し、後世へ残すため、君主の御前で腰を下ろしたときには、実に大変な騒ぎとなった! しかし事情はすぐに説明され、その権利も確認された。一族最後の伯爵は、王党派として清教徒革命の戦争を戦い、戦死した。この風変わりな特権も、彼とともに消滅した。

トム・キャンティはたいへんな長寿を保ち、白髪の美しい老人となった。厳かで慈愛に満ちた風貌だった。生きているかぎり尊敬され、また崇敬もされた。人目を引く独特の衣装が、トムが「かつて王であった」ことを人々に思い出させたからである。どこへ姿を現しても、群衆は左右に分かれて道を開け、互いにささやいた。「帽子を取れ、王の被保護者だ!」――人々が敬礼すると、トムは親しみ深い微笑みを返した。その微笑みは人々にとっても大切なものだった。トムには誉れ高い来歴があったからである。

そう、エドワード六世の生涯は、哀れにもわずか数年で終わった。だが、その年月を立派に生きた。王冠に仕える高位の者や、金ぴかに飾った臣下が王の寛大さに異を唱え、王が改めようとしている法律は目的に照らして十分に穏当であり、誰もそれほど気に病むほどの苦痛や抑圧を生んではいない、と主張したことが一度ならずあった。すると若き王は、深い慈悲をたたえた大きな目に、悲しみそのもののような雄弁さを浮かべて相手を見つめ、こう答えた――

「そなたに、苦しみや抑圧の何がわかる? 余と民は知っている。だが、そなたは知らぬ。」

苛酷だったあの時代にあって、エドワード六世の治世は並外れて慈悲深いものだった。今、王に別れを告げるにあたり、そのことを彼の功績として心に留めておこうではないか。


トウェインの注

注一、第四章 クライスト・ホスピタルの制服

この服装は、当時のロンドン市民の衣装を写したものと考えるのが最も妥当である。当時、徒弟や使用人の一般的な服装は長い青色の上着であり、黄色い靴下も広く着用されていた。上着は胴体にぴったり合っているが、袖はゆったりしており、その下には袖なしの黄色い下着を着る。腰には赤い革帯を巻き、首には聖職者風の襟飾りをつけ、受け皿ほどの大きさの小さく平たい黒帽をかぶれば、この服装は完成する。――ティムズ『ロンドン珍聞。』

注二、第四章

クライスト・ホスピタルは、もともと学校として設立されたのではなかったらしい。その目的は、子供たちを路上生活から救い、住まいと食事と衣服を与えることにあった。――ティムズ『ロンドン珍聞。』

注三、第五章 ノーフォーク公の処刑命令

王はすでに急速に死へ近づいていた。そしてノーフォークを取り逃がすことを恐れ、庶民院へ伝言を送り、法案の審議を急ぐよう求めた。その口実は、ノーフォークが軍務伯の地位にあり、来たる息子のウェールズ公叙任式を執り行う別の者を任命する必要がある、というものだった。――ヒューム『イングランド史』第三巻、三〇七頁

注四、第七章

イングランドでサラダ用野菜、ニンジン、カブ、そのほか食用の根菜が作られるようになったのは、この治世(ヘンリー八世)の末期になってからである。それ以前、わずかに使われていたこうした野菜は、オランダやフランドルから輸入されていた。キャサリン王妃はサラダを欲すると、そのためだけに使者を現地へ送らなければならなかった。――ヒューム『イングランド史』第三巻、三一四頁

注五、第八章 ノーフォークに対する私権剥奪

貴族院は、被告人を尋問することも、裁判や証拠調べを行うこともなく、ノーフォークに対する私権剥奪法案を可決し、庶民院へ送った……従順な庶民院は王の意向に従った。そして王は、委員を通じて法案に国王裁可を与え、一月二十九日朝(翌日)にノーフォークを処刑するよう命令を発した。――ヒューム『イングランド史』第三巻、三〇六頁

注六、第十章 親愛の杯

親愛の杯[訳注:宴席で回し飲みする大型の杯]と、それを飲む際に守られる独特な儀式は、イングランドの歴史よりも古い。どちらもデンマークから伝わったものだと考えられている。記録でたどれるかぎり、親愛の杯はイングランドの宴席で常に飲まれてきた。伝承によれば、その儀式の由来はこうである。荒々しい古代には、二人の酒飲みの両手をふさぐことが賢明な用心と考えられた。さもなければ、一人が相手への愛と忠誠を誓っている隙に、誓いを受ける側がその胸へ短剣を突き立てかねなかったからだ! 

注七、第十一章 ノーフォーク公の危機一髪

もしヘンリー八世があと数時間長く生きていたなら、公爵の処刑命令は実行されていただろう。「しかし、その夜に王自身が崩御したという知らせがロンドン塔へ届いたため、副官は令状への服従を延期した。そして、これほど不当で専制的な判決によって有罪とされた国内最大の貴族を死なせることで、新たな治世を始めるのは得策でないと評議会は判断した」――ヒューム『イングランド史』第三巻、三〇七頁

注八、第十四章 身代わり少年

ジェームズ一世とチャールズ二世には、幼少期、勉強が不十分だった際に本人に代わって罰を受ける身代わり少年がいた。そこで私も、物語上の目的のため、小さな王子に一人用意することにした。

第十五章への注

ハートフォードの人物像

若き王は叔父に並外れた愛着を示した。叔父は、おおむね節度と誠実さを備えた人物だった。――ヒューム『イングランド史』第三巻、三二四頁

しかし彼(護国卿)が、あまりにも尊大に振る舞って反感を招いたとしても、この会期に成立した法律については大いに称賛されるべきである。それによって従来の法令の苛酷さは大幅に緩和され、憲政上の自由にも一定の保障が与えられた。エドワード三世治世第二十五年の法令を超えて反逆罪の範囲を広げた法律は、すべて廃止された。先の治世中に重罪の範囲を拡大した法律も、ロラード派または異端に対する従来の法律も、六箇条法も、すべて廃止された。発言を理由として告発する場合は、その発言から一か月以内に行わなければならなくなった。こうした廃止により、イングランド史上でも最も苛酷な法律のいくつかが無効となり、市民的自由と信教の自由の双方に、夜明けの兆しが民衆の前に現れ始めた。また、あらゆる法律を破壊する法律ともいうべき、国王の布告に制定法と同等の効力を与えた法律も廃止された。――同書、第三巻、三三九頁

釜ゆでの刑

ヘンリー八世の治世には、毒殺犯は国会制定法によって釜ゆでで死刑に処された。この法律は次の治世に廃止された。

ドイツでは、十七世紀に至ってさえ、貨幣鋳造犯や通貨偽造犯にこの恐ろしい刑罰が科されていた。「水の詩人」テイラーは、一六一六年にハンブルクで目撃した処刑について記している。偽金鋳造犯に下された判決は、次のようなものだった。「油で煮殺す。ただし、一度に容器へ投げ込むのではなく、滑車または縄を用いて脇の下で吊り、油の中へ少しずつ下ろす。まず足、次に脚を入れ、こうして生きたまま肉を骨から煮落とす」――J・ハモンド・トランブル博士『青い法律――真実と虚偽』一三頁

有名な靴下事件

ある女性と、九歳の娘が、悪魔に魂を売り、靴下を脱いで嵐を起こした罪により、ハンティンドンで絞首刑にされた! ――J・ハモンド・トランブル博士『青い法律――真実と虚偽』二〇頁

注十、第十七章 奴隷化

幼い王と無知な農夫なら、誤解することもあり得る。これがまさに、その一例である。この農夫は、法律が成立する前から先取りしてその被害を受けていた。王は、まだ存在していない法律に憤りをぶつけていたのである。というのも、この忌まわしい法令が誕生するのは、この小さな王自身の治世だったからだ。しかし王の人道的な性格を考えれば、それが王自身の発案でなかったことは明らかである。

第二十三章への注 ささいな窃盗に対する死刑

コネティカットとニューヘイブンが最初の法典を編纂していたころ、イングランドでは十二ペンスを超える価値の物を盗むことは死刑に値する罪だった――ヘンリー一世の時代以来、ずっとそうだったのである。――J・ハモンド・トランブル博士『青い法律――真実と虚偽』一七頁

『イングランドの悪党』と呼ばれる興味深い古書では、その限度額を十三ペンス半としている。「十三ペンス半を超える価値」の物を盗んだ者には、死が割り当てられた。

第二十七章への注

法律は、多くの種類の窃盗について明文で聖職者特権[訳注:聖職者や読み書きのできる者が世俗裁判所の刑罰を免れた制度]の適用を排除していた。馬、、または織工から毛織物を盗めば、絞首刑となった。王室の森で鹿を殺すことや、羊を国外へ輸出することも同様だった。――J・ハモンド・トランブル博士『青い法律――真実と虚偽』一三頁

学識ある法廷弁護士ウィリアム・プリンは、エドワード六世の時代よりずっと後、さらし台で両耳を切り落とされ、弁護士資格を剥奪され、三千ポンドの罰金を科され、終身刑に処された。その三年後、教会位階制度に反対する小冊子を出版し、再びロードを怒らせた。プリンはまた起訴され、両耳の残った部分を切り落とし、五千ポンドの罰金を払い、両頬にS・L(Seditious Libeller――扇動的誹謗者)の文字を焼き印で刻み、終身刑に服するよう宣告された。この判決の苛酷さに劣らず、その執行もまた残忍きわまりないものだった。――同書、一二頁

第三十三章への注

クライスト・ホスピタル、別名ブルーコート校――「世界で最も高貴な施設。」

グレイ・フライヤーズ修道院の建っていた土地は、ヘンリー八世によってロンドン市当局へ与えられた(市はそこに貧しい少年少女のための施設を設立した)。その後、エドワード六世は旧修道院を適切に修復させ、孤児と困窮者の子供たちを教育し養育するため、ブルーコート校、すなわちクライスト・ホスピタルと呼ばれる高貴な施設を創設した……エドワードは、手紙(ロンドン市長宛て)が書き上がるまで彼(リドリー主教)を帰そうとしなかった。そして、その手紙を自ら届け、適切な案を提示し、進捗を王へ報告するにあたって一刻も無駄にしてはならないという、王の特別な要望と命令を伝えるよう言いつけた。この事業は熱意をもって進められ、リドリー自身も携わった。そしてその結果、貧しい子供たちを教育するクライスト・ホスピタルが設立されたのである。(王は同時に、ほかにもいくつかの慈善施設へ基金を寄付した。)「主なる神よ」と王は言った。「御名の栄光のために、この事業を成し遂げるまで私を生かしてくださったことを、心より感謝いたします!」

その無垢で、きわめて模範的な生涯は、急速に終わりへ近づいていた。数日後、王は、カトリック主義から王国を守ってくださるよう神に祈りながら、創造主へ魂を返した。――J・ヘニッジ・ジェシー『ロンドン――その著名人と名所。』

大広間には、玉座に座ったエドワード六世の大きな絵が掛けられている。王は緋色とアーミンの毛皮の長衣をまとい、左手に王笏を持ち、もう一方の手で、ひざまずくロンドン市長へ勅許状を渡している。王の傍らには印章を持った大法官が立ち、その隣にはほかの国務高官たちがいる。リドリー主教は、出来事への祝福を願うかのように両手を掲げ、王の前にひざまずいている。一方、市参事会員たちはロンドン市長とともに両側へひざまずき、絵の中景を占めている。そして最前景には、片側に少年、反対側に少女が二列に並んでいる。校長と寮母から始まり、各列から前へ進み出て王の前で両手を上げ、ひざまずいている少年少女までが描かれている。――ティムズ『ロンドン珍聞』九八頁

古来の慣習により、クライスト・ホスピタルは、君主がロンドン市当局の歓待を受けるためシティへ来訪した際、その君主へ挨拶を述べる特権を有している。――同書

食堂は、前室およびオルガン席とともに一つの階全体を占め、長さ百八十七フィート(約五十七メートル)、幅五十一フィート(約十五・五メートル)、高さ四十七フィート(約十四・三メートル)ある。南側にはステンドグラスの入った九つの大窓があり、ウェストミンスター・ホールに次いで、首都で最も見事な広間である。現在およそ八百人いる少年たちは、ここで食事を取る。また、会計責任者とクライスト・ホスピタルの理事が発行する入場券によって見学者を迎える「公開晩餐」も、ここで催される。食卓には木の鉢に入れたチーズ、革製のジョッキから木製の小さな手桶へ注がれたビール、大籠で運ばれるパンが並べられる。公式の一行が入場し、ロンドン市長または理事長が、ロンドン塔近くの聖キャサリン教会のオーク材で作られた儀礼用の椅子へ着く。オルガンの伴奏で讃美歌が歌われ、「ギリシア人」と呼ばれる最上級生が説教壇から祈祷文を読み上げ、木槌を三度打って静粛を命じる。祈りのあとに夕食が始まり、見学者は食卓のあいだを歩く。終了すると、「職業訓練生」たちが籠、鉢、革製ジョッキ、手桶、燭台を持ち上げ、列を作って進む。理事たちに対するお辞儀は、奇妙なほど形式張っている。一八四五年には、ヴィクトリア女王とアルバート公もこの光景を見学した。

ブルーコート校出身の著名人には、アナクレオンとエウリピデスの編者ジョシュア・バーンズ、特にギリシア文学で名高い批評家ジェレマイア・マークランド、古物研究家カムデン、スティリングフリート主教、小説家サミュエル・リチャードソン、アリストパネスの翻訳者トーマス・ミッチェル、長年『ロンドン・タイムズ』の編集者を務めたトーマス・バーンズ、コールリッジ、チャールズ・ラム、リー・ハントがいる。

少年は七歳未満でも九歳を超えていても入学できず、王の給費生と「ギリシア人」を除き、十五歳を過ぎて在学することもできない。理事はおよそ五百人で、その頂点には君主とウェールズ公がいる。理事となる資格は、五百ポンドを支払うことである。――同書

総注

「コネティカットの忌まわしい青い法律」については、しばしば耳にするし、その名を聞くたび敬虔そうに身震いするのが世間の習いとなっている。アメリカには――いや、イングランドにさえ! ――それを悪意、無慈悲、非人道性の記念碑そのものだと考える者がいる。だが実際には、それは「文明」世界が初めて目にした、司法の残虐性からの全面的離脱ともいうべきものだった。二百四十年前の、この人道的で温情ある青い法典は孤立して存在している。その向こう側には血塗られた法律の幾世紀があり、こちら側にも、一世紀と四分の三に及ぶ血塗られたイングランド法が横たわっている。

青い法律のもとであろうと、それ以外の法律のもとであろうと、コネティカットで死刑に処され得る犯罪が十四種類を超えた時代は一度もない。ところがイングランドでは、今なお心身ともに壮健な人々の記憶に残るほど近年まで、実に二百二十三種類もの犯罪が死刑に値した! これは知っておく価値のある事実である――そして、じっくり考える価値もある。

公開日: 2026-07-12