L・フランク・ボーム 作
ジョン・R・ニール 挿絵

臆病なライオンとお腹のすいたトラ
妖精の国オズ、その中央にあるエメラルドの都の壮麗な宮殿には、大きな謁見の間がある。統治者であるオズマ姫は、毎日一時間、きらめくエメラルドの玉座に腰かけ、国民の悩みに耳を傾ける。人々はどんな困り事も、きっと姫に打ち明けるのだ。そんなとき玉座の周りには、かかし、ジャック・パンプキンヘッド、ぜんまい仕掛けの人間チックトック、ブリキの木こり、オズの魔法使い、シャギー・マンをはじめ、オズの名高い妖精たちが勢ぞろいする。小さなドロシーはたいていオズマ姫の足元に座り、玉座の両側には、お腹のすいたトラと臆病なライオンという二頭の巨大な獣がうずくまっている。

この二頭はオズマ姫を守る最高位の護衛だった。だが、誰もが美しい姫を愛していたので、大広間で騒ぎが起きたことなど一度もない。護衛たちの仕事といえば、王の謁見が終わって人々が家へ帰るまで、恐ろしげで厳粛な顔をして、じっと静かにしていることだけだった。
もちろん、巨大なライオンとトラが玉座のそばにうずくまっている前で、悪さをしようという者はいない。もっとも実のところ、オズの国の人々が悪さをすること自体、めったになかった。だからオズマ姫の大きな護衛たちは、役に立つというより飾りのようなものだった。それを誰よりよくわかっていたのは、ほかならぬ二頭自身である。
ある日、謁見の間から皆が去り、臆病なライオンとお腹のすいたトラだけが残ったとき、ライオンはあくびをして友に言った。
「この仕事にも飽きてきたよ。誰もぼくたちを怖がらないし、気にも留めてくれない。」
「まったくだ」と、大きなトラは小さく喉を鳴らした。「守ってもらう必要などないオズマ姫を守ろうとしているくらいなら、生まれ故郷の深いジャングルにいたって同じことだ。それにわしは、いつだってひどく腹が減っている。」
「食べ物なら十分もらっているだろう」と、ライオンは尾をゆっくり左右に揺らしながら言った。
「量は十分かもしれん。だが、わしが欲しくてたまらない食べ物ではない」とトラは答えた。「わしが食べたいのは、丸々太った赤ん坊だ。太った赤ん坊を二、三人、食べてみたくてしかたがない。そうすればオズの人々もわしを恐れ、わしも今より重要な存在になれるかもしれん。」

「確かにな」とライオンも賛成した。「太った赤ん坊をたった一人食べただけでも、大騒ぎになるだろう。ぼくの爪は針のように鋭く、梃子棒のように強い。牙だって、ほんの数秒で人間をずたずたにできるほど強力だ。誰かに飛びかかって細切れにしてやれば、エメラルドの都は蜂の巣をつついたような騒ぎになり、人々はぼくの前にひざまずいて、命乞いをするだろう。そうなれば、ぼくもかなり重要な存在になれると思うんだ。」
「その人をずたずたにしたあと、どうする?」と、トラは眠そうに尋ねた。
「地面が揺れるほど大声で咆哮してから、誰かに襲われたり、やったことの仕返しに殺されたりする前に、ジャングルへ悠々と立ち去って身を隠すさ。」
「なるほど」とトラはうなずいた。「おまえは本当に臆病だな。」
「もちろんさ。だから臆病なライオンという名なんだ。だからぼくは、いつだっておとなしく平和に暮らしてきた。でも、おとなしくしているのにもすっかり飽きたよ」と、ライオンはため息をついた。「大騒ぎを起こして、ぼくが本当はどれほど恐ろしい獣なのか、皆に見せてやったら愉快だろうな。」
トラは数分のあいだ黙り込み、左の前足でゆっくり顔を洗いながら、じっくり考えた。それから言った。
「わしも年を取ってきた。死ぬ前に、せめて一人くらい太った赤ん坊を食べられれば満足だ。オズの人々を驚かせ、わしらの力を見せつけてやろうではないか。どうだ? いつものようにここから歩いて出て、最初に出会った赤ん坊をわしがたちまち食べる。そして、おまえは最初に出会った男か女をずたずたにする。そのあと二人で都の門を飛び出し、野を駆け抜け、誰にも止められないうちにジャングルへ隠れるのだ。」
「よし、乗った」とライオンは言い、またあくびをして、ぞっとするほど鋭い二列の牙をむき出しにした。
トラは立ち上がり、巨大でつややかな体を伸ばした。
「行くぞ」とトラは言った。ライオンも立ち上がったが、二頭のうち大きいのはライオンのほうだった。小柄な馬ほどもあったのである。
二頭は宮殿を出たが、誰にも会わなかった。噴水や美しい花壇のある見事な庭園を通り抜けたが、やはり誰にも会わなかった。それから門の掛け金を外して都の通りへ出たが、そこにも誰一人いなかった。
「太った赤ん坊は、どんな味がするのだろうな」と、二頭が肩を並べ、威風堂々と歩きながらトラが言った。
「たぶんナツメグみたいな味だろう」とライオンは言った。
「いや」とトラは言った。「グミ菓子みたいな味だと、わしは思う。」
角を曲がっても、誰にも会わなかった。エメラルドの都の人々は、午後のこの時間には昼寝をする習慣があったからだ。
「人間は何切れくらいに引き裂けばいいのかな」と、ライオンは考え込むような声で言った。
「六十切れくらいがちょうどよかろう」とトラが提案した。

「十二切れくらいにするより、六十切れのほうが痛いのかな?」と、ライオンは小さく身震いしながら尋ねた。
「痛かろうが痛くなかろうが、知ったことか」とトラはうなった。
ライオンは答えなかった。二頭は脇道へ入ったが、やはり誰にも会わなかった。
そのとき突然、子供の泣き声が聞こえた。
「しめた!」とトラが叫んだ。「わしの肉だ。」
トラは角の向こうへ駆け出し、ライオンもあとを追った。すると通りの真ん中に、かわいらしく丸々太った赤ん坊が座り、たいそう悲しそうに泣いていた。
「どうしたのだ?」と、トラは赤ん坊の前にうずくまって尋ねた。
「マ、マ、ママが、い、い、いなくなっちゃったの!」と赤ん坊は泣きわめいた。
「まあ、かわいそうに」と巨大な獣は言い、前足で子供の頭を優しくなでた。「泣くな、いい子だ。ママはそう遠くへ行ってはいない。わしが一緒に捜してやろう。」
「さあ、やれよ」と、そばに立つライオンが言った。
「どこへ行くのだ?」とトラは顔を上げた。
「その太った赤ん坊を食べるんだよ。」
「なんと恐ろしいことを言う!」とトラは非難した。「母親がどこにいるかもわからない、迷子のかわいそうな赤ん坊を、わしに食べろというのか?」
そう言ってトラは、小さな赤ん坊をたくましい毛むくじゃらの腕に抱き上げ、優しく前後に揺すって、なだめようとした。

ライオンは喉の奥で低くうなり、ひどくがっかりしたようだった。だがそのとき、二頭の耳に悲鳴が届き、一人の女が家から飛び出して通りへ駆けてきた。怪物のようなトラに赤ん坊が抱かれているのを見ると、女はもう一度悲鳴を上げ、子供を助けようと突進した。ところが慌てた拍子に裾へ足を引っかけ、頭と足を何度もひっくり返しながら転げ、どしんと地面にぶつかった。真昼だというのに、空いっぱいの星が見えるほどの衝撃だった。女は衣服をすっかり絡ませ、身動きもできず、なすすべなく横たわった。
雷鳴のような咆哮を上げ、巨大なライオンがひと跳びで女のそばへ来た。力強い顎でドレスをくわえ、女をまっすぐ立たせてやった。

「かわいそうに。けがはないか?」とライオンは優しく尋ねた。
女は息を切らしながらもがいて体を離し、歩こうとしたが、ひどく足を引きずってまた倒れてしまった。
「赤ちゃんを!」と女は懇願した。
「赤ん坊は無事だ。心配はいらない」とライオンは答え、さらに言った。「さあ、じっとしていなさい。ぼくが家まで運んであげる。赤ん坊はお腹のすいたトラが運ぶから。」
赤ん坊を腕に抱いて近づいてきたトラは、驚いて尋ねた。
「その女を六十切れに引き裂かないのか?」

「六十どころか、六切れにだってするものか」とライオンは憤慨した。「迷子の赤ん坊を助けようとしてけがをした、かわいそうな女を殺すほど、ぼくは野蛮じゃない。きみがそれほど凶暴で残酷で血に飢えているのなら、ぼくを置いてどこかへ行ってくれ。きみのような者とは付き合いたくない。」
「それならいい」とトラは答えた。「わしは残酷ではない――これっぽっちもな。ただ腹が減っているだけだ。だが、残酷なのはおまえのほうだと思っていた。」
「ありがたいことに、ぼくは立派な獣なんだ」とライオンは威厳を込めて言った。それから女を抱き上げ、たいそう優しく家の中へ運び、長椅子に寝かせた。トラも赤ん坊を運び、無事に母親のそばへ置いた。赤ん坊はお腹のすいたトラが気に入り、巨大な獣の両耳をつかむと、うれしい気持ちと感謝を示すため、その鼻にキスをした。
「本当にありがとう」と女は言った。「あなた方には人を傷つける力があるけれど、本当は善良な獣だという話を何度も聞いていました。今、その話が本当だとわかりました。お二人とも、悪いことなど一度も考えたことはないのでしょうね。」
お腹のすいたトラと臆病なライオンはうなだれ、互いの目を見ようとしなかった。二頭とも恥じ入り、すっかりしょげていたのである。こそこそと家を出ると、通りを歩いて戻り、再び宮殿の庭へ入った。そして宮殿の裏手にある、美しく居心地のよい自分たちの部屋へ引きこもった。二頭はいつもの隅に黙ってうずくまり、今日の冒険について考えた。

しばらくして、トラが眠そうに言った。
「太った赤ん坊は、グミ菓子の味ではないと思う。きっと木イチゴのタルトの味だ。ああ、太った赤ん坊が食べたくて、なんと腹が減ったことか!」
ライオンは軽蔑するように鼻を鳴らした。
「きみは大ぼら吹きだ」とライオンは言った。
「わしが?」とトラはあざ笑った。「なら教えてもらおう。勇敢なライオン殿は、いつも獲物を何切れに引き裂いているのかな?」
ライオンは苛立たしげに尾で床をたたいた。
「誰かを引き裂いたら、爪は汚れるし、牙も鈍ってしまう」とライオンは言った。「今日の午後、あのかわいそうな母親を傷つけて、体を汚さずに済んでよかったよ。」
トラはライオンをじっと見つめ、それから大きな大きなあくびをした。
「おまえは臆病者だ」とトラは言った。
「まあね」とライオンは言った。「でも、悪いことをするより、臆病でいるほうがましだ。」
「まったくだ」とトラは答えた。「そう言われて思い出したが、わしも危うく自分の評判を失うところだった。もしあの太った赤ん坊を食べていたら、今ごろわしは『お腹のすいたトラ』ではなくなっていたからな。小さな子供に残酷なことをするくらいなら、腹をすかせているほうがましだと、わしも思う。」
それから二頭は前足に頭を載せ、眠りについた。

小さなドロシーとトト
ドロシーはカンザス州の小さな女の子で、かつて偶然、美しいオズの国へ迷い込み、いつまでもそこに住むよう招かれた。トトはドロシーの飼っている小さな黒犬で、ふわふわした巻き毛と、輝く黒い瞳を持っていた。二人はオズのエメラルドの都の壮麗さに飽きると、一緒に田舎へ出かけ、国じゅうを歩き回った。風変わりな隅や物陰をのぞき込み、素朴なやり方で楽しい時を過ごすのである。オズにはドロシーの忠実な友である小さな魔法使いが住んでいて、少女がこうして一人で旅をするのをよく思っていなかった。けれどドロシーはいつも、魔法使いの心配を笑い飛ばし、何が起きても怖くないと言っていた。

ある日、そんな旅をしていたドロシーとトトは、オズの南東にある、人けのない森深い丘陵地帯へ入り込んだ。魔法に満ちた場所だったので、旅人たちがたいてい避けて通る土地である。森の小道へ入ったとき、少女は木に打ちつけられた立て札に気づいた。そこには「クリンクリンクに注意」と書かれていた。
オズの多くの動物とは違い、トトは言葉を話せなかった。ただのカンザス犬だからだ。それでもあまりに真剣に立て札を見つめるので、ドロシーはトトが字を読めるのではないかと、危うく信じそうになった。それに、自分の言葉なら一言残らず理解していることを、ドロシーはよく知っていた。
「クリンクリンクなんて気にしなくていいわ」とドロシーは言った。「オズでわたしたちを傷つけようとするものなんて、いるはずないもの。トト、もしわたしが困ったことになったら、あなたが守ってね。」
「ワン、ワン!」とトトは答えた。ドロシーには、それが約束の言葉だとわかった。
道は細く、木々のあいだを右へ左へと曲がりくねっていた。それでも両側を太い蔓やつる草にふさがれていたので、道に迷うことはなかった。二人は長いあいだ歩き続けたが、やがて小道の曲がり角を抜けると、目の前に黒い水をたたえた湖が現れた。あまりに大きく深い湖なので、立ち止まるほかなかった。

「ねえ、トト」と、ドロシーは湖を眺めて言った。「引き返すしかなさそうね。黒い水を渡るための橋も、舟もないんだもの。」
「だが、渡し守ならここにいるぞ」と、すぐそばで小さな声がした。少女はびくりとして足元を見た。そこでは身長わずか三インチ(約八センチ)の男が、小道の端に腰かけ、湖の上へ両脚をぶらぶらさせていた。
「あら!」とドロシーは言った。「さっきは見えなかったわ。」
トトは耳をぴんと立て、激しくうなったが、小男は犬を少しも恐れていないようだった。ただ同じことを繰り返した。「わしは渡し守だ。人々を湖の向こうへ運ぶのが仕事なのだ。」
ドロシーは驚かずにはいられなかった。小男なら片手で持ち上げられるほどなのに、湖は広大だったからだ。渡し守をさらによく見ると、小さな目に大きな鼻、尖った顎をしている。髪は青く、服は真っ赤だった。そして上着のボタンが一つ残らず、動物の頭になっていることにドロシーは気づいた。一番上はクマの頭、次はオオカミ、その次はネコ、その次はイタチ、最後のボタンは野ネズミの頭だった。ドロシーが動物たちの目をのぞき込むと、皆いっせいにうなずき、声をそろえて言った。「聞いたことを何でも信じちゃいけないよ、お嬢ちゃん!」

「黙れ!」と小さな渡し守は言い、ボタンの頭を一つずつたたいた。もっとも、痛くない程度の強さだった。それからドロシーを向いて尋ねた。「湖を渡りたいのか?」
「ええ、渡りたいけれど」と、ドロシーはためらいながら答えた。「舟もないのに、どうやってわたしたちを運ぶのかわからないわ。」
「わからないのなら、見なければよい」と男は笑った。「目を閉じ、合図の言葉を言いさえすれば――ほら、向こう岸だ!」
ドロシーは旅を続けるためにも、湖の向こうへ渡りたかった。
「わかったわ」と、目を閉じて言った。「準備はできたわよ。」
たちまち二本のたくましい腕に捕まえられた。あまりに太く力強い腕だったので、ドロシーは驚き、怖くなって叫んだ。
「黙れ!」と巨大な声がとどろいた。少女が目を開くと、あの小男が突然、巨人に変わっていた。巨人はドロシーとトトをきつく抱きしめ、たったひとまたぎで湖を越え、向こう岸へ着いた。
そこでドロシーは本当に怖くなった。巨人は止まらず、森に覆われた丘を、大股でどんどん進んでいったからだ。幅広い足の下で、茂みや木々が押しつぶされた。ドロシーは逃れようともがいたが無駄だった。隣ではトトも鼻を鳴らして震えている。小犬も怖かったのだ。
「止まって!」と少女は叫んだ。「下ろしてよ!」
だが巨人は耳を貸さなかった。「あなたは誰? わたしをどこへ連れていくの?」とドロシーは続けたが、巨人は一言も答えない。ところがドロシーの耳元で別の声が答えた。「こいつは恐ろしいクリンクリンクだ。おまえはもう、やつの手中にある。」
ドロシーがどうにか首をひねって見ると、話したのは上着の二番目のボタン――オオカミの頭だった。
「クリンクリンクは、わたしをどうするの?」と、ドロシーは不安げに尋ねた。

「誰にもわからない。待って確かめるしかない」とオオカミは答えた。
「捕まえた者を鞭打つこともある」と、イタチの頭が甲高い声で言った。
「虫や、ほかの何かに変えてしまうこともある」と、クマの頭がうなった。
「魔法をかけて、ドアノブにしてしまうこともある」と、ネコの頭がため息をついた。
「わたしたちのように奴隷にされる者もいる――それこそ何より恐ろしい運命だ」と、野ネズミが付け加えた。「クリンクリンクが存在するかぎり、わたしたちはボタンのままだ。だが、上着にはもうボタン穴が残っていないから、おまえはたぶん奴隷にされるだろう。」

ドロシーはクリンクリンクに会わなければよかったと思い始めた。その間にも巨人は大股で歩き続け、ほどなく丘陵地帯の中心へ着いた。そこでは一番高い頂の上に、丸太造りの城がそびえていた。城の前でクリンクリンクは立ち止まり、ドロシーとトトを地面へ下ろした。今のままでは体が大きすぎて、自分の城の戸口をくぐれなかったからだ。そこで普通の人間ほどの大きさになるまで、体を小さくした。それから厳しい命令口調でドロシーに言った。
「中へ入れ、小娘!」
ドロシーは従い、トトを引き連れて城へ入った。城の中は、ただ一つの大部屋になっていた。中央近くには普通の大きさのテーブルと椅子があり、片側には人形さえ寝られそうにないほど小さなベッドがあった。それ以外の場所は、皿、皿、皿だらけ! どれも汚れていて、床の上にも、部屋の隅にも、棚という棚にも積み上げられていた。どうやらクリンクリンクは何年も皿を洗わず、使うたびに放り出してきたらしい。
ドロシーを捕らえた男は椅子に腰かけ、少女をにらみつけた。
「おまえは若くて丈夫だ。よい皿洗いになれる」と男は言った。
「あの皿を全部、わたしに洗わせるつもりなの?」とドロシーは尋ねた。腹立たしくもあり、恐ろしくもあった。全部洗い終えるには、何週間もかかりそうだったからだ。
「そのとおりだ」と男は言い返した。「わしにはきれいな皿が必要だが、あるのは汚れた皿ばかり。おまえがきれいにしろ。さもなければ鞭でたたくぞ。さあ、仕事にかかれ。何一つ割らないよう気をつけろ。皿を一枚割るたび、砕けた破片一つにつき一回、この恐ろしい九尾の猫鞭で打ってやる」そう言ってクリンクリンクは恐ろしい鞭を取り出し、小さな少女を震え上がらせた。
ドロシーは皿の洗い方を知っていたが、不注意で割ってしまうことがよくあった。だが今度ばかりは、用心深くできるかどうかに大変なことが懸かっている。そこで細心の注意を払って皿を扱った。
ドロシーが働くあいだ、トトは暖炉のそばに座り、クリンクリンクへ低くうなり続けた。クリンクリンクは椅子に座り、動きが遅いと言ってドロシーへうなり続けた。少女が今にも皿を割るものと期待していたが、何時間たっても割れないので、クリンクリンクは眠くなってきた。少女が皿を洗うのを見張るのは退屈で、何度も小さなベッドを物欲しそうに眺めた。やがてあくびを始め、何度も何度もあくびを繰り返した末、とうとう言った。

「わしは昼寝をする。だが、上着のボタンたちは目を覚ましているし、おまえが皿を割れば、その音でわしも起きる。かなり眠いから、長いあいだ何も割らず、昼寝の邪魔をしないでもらいたいものだ。」
それからクリンクリンクはどんどん小さくなり、三インチ(約八センチ)の背丈になって、小さなベッドへぴったり収まる大きさになった。すぐに横たわり、ぐっすり眠り込んだ。
ドロシーはボタンのそばへ寄り、ささやいた。「もしわたしが逃げようとしたら、本当にクリンクリンクへ知らせるの?」
「逃げられはしない」とクマがうなった。「クリンクリンクは巨人になり、たちまちおまえに追いつくだろう。」
「でも、眠っているあいだに殺せるかもしれない」と、ネコが柔らかな声で言った。
「まあ!」とドロシーは叫び、後ずさった。「自分の命を助けるためでも、何かを殺すなんて絶対にできないわ。」
だがトトはこの会話を聞いていたし、怪物を殺すことについて、そこまでこだわりはなかった。それに小犬は、主人を助けなければならないとわかっていた。たちまち小さなベッドへ飛びかかり、眠っているクリンクリンクを顎でくわえようとした。その瞬間、ドロシーは大きな音を聞き、テーブルに積まれた皿が床へ崩れ落ちた。続いて少女が目にしたのは、毛むくじゃらの球のようになって床を転がるトトと小男だった。球が転がるのをやめると――なんということだろう! そこにはうれしそうに尾を振るトトと、ドロシーの驚いた顔を見て陽気に笑う、小さなオズの魔法使いが座っていた。
「そうとも、かわいいドロシー。わしだよ」と魔法使いは言った。「きみのためを思って、いたずらを仕掛けたのだ。妖精の国を小さな女の子が一人で歩き回るのは、本当に危険だと証明したかった。そこでクリンクリンクに化けて、きみに教訓を与えたのだ。もちろんクリンクリンクなど存在しない。だが、もし本当にいたなら、あれだけの皿を割ったきみは、ひどく鞭で打たれていただろう。」

魔法使いは立ち上がり、動物の頭のボタンがついた上着を脱ぐと、裏返しにして床へ広げた。するとその下から、クマ、オオカミ、ネコ、イタチ、野ネズミがはい出し、皆いっせいに部屋を飛び出して、山へ逃げていった。
「行きましょう、トト」とドロシーは言った。「エメラルドの都へ帰りましょう。魔法使いさん、ずいぶん怖い思いをさせてくれたわね」と、威厳を込めて付け加えた。「そのうち許してあげるかもしれないけれど、今は、こんなに簡単にだまされたことが腹立たしくてたまらないわ。」

チックトックとノーム王
ノーム王はひどく不機嫌だった。朝食のとき、うっかり舌をかんでしまい、まだ痛んでいたのである。そのため地下宮殿を歩き回りながら、わめき、怒鳴り、地団駄を踏み、実に近寄りがたい有様だった。
運悪くもそんな日に、ぜんまい仕掛けの人間チックトックが、頼み事をするためノーム王を訪れた。チックトックはオズの国に住み、活動的で重要な人物だったが、全身が金属でできていた。時計の仕組みに似た体内の機械が体を動かし、別の機械が言葉を話させ、さらに別の機械がものを考えさせていた。

じつに巧妙な造りではあったが、ぜんまい仕掛けの人間は完璧には程遠かった。動作装置、発声装置、思考装置を巻くため、それぞれ別の鍵が三本ついていた。そのうち一つ以上が、肝心なときに止まってしまい、かわいそうなチックトックを身動きできなくすることがよくあった。しかも使いすぎで摩耗した部品もあり、今は思考装置を修理する必要があった。腕のよい小さなオズの魔法使いも、チックトックの思考装置をいじってみたが、うまく調整できなかった。そのためノーム王のもとへ行き、思考をもっと柔軟にし、素早く反応させる新しいばね一式を手に入れるよう勧めたのである。
「ノーム王に何を言うか、よく気をつけるのだ」と魔法使いは警告した。「王は短気で、ほんのささいなことにも腹を立てる。」
チックトックは約束した。魔法使いは機械のぜんまいを巻き、オズの国から砂漠を越えた先にあるノーム王の領地へ向けて歩かせた。地下宮殿の入口へ着いたところで、ちょうどぜんまいが切れたが、そこでノーム王の執事長カリコに発見され、再び巻いてもらった。
「王に会い・た・い」とチックトックは、ぎくしゃくした声で言った。
「そうだな」とカリコは言った。「おまえのような鋳鉄製の者なら、今朝、陛下にお目通りしても無事かもしれない。だが、自分で名乗ってくれ。王がわめき散らしている宝石だらけの洞窟へわしが顔を出したら、たちまちマッシュポテトのようにされて、二度と誰の役にも立てなくなる。」
「ぼくは、こ・わ・く・な・い」とチックトックは言った。
「ならば遠慮なく入って、くつろぐがいい」とカリコは答え、王の洞窟の扉を開け放った。

チックトックはすぐに中へ入り、驚くノーム王と向かい合って言った。「おは・よ・う・ござ・い・ます。思考・装置に新しい鋼鉄の・ばねが二本、発声・装置に新しい歯車が一個・ほし・いの・です。いかが・で・しょう、陛下?」
ノーム王は脅すようにうなった。両目は怒りで真っ赤だった。
「よくもわしの前へ入ってこられたな!」と王は叫んだ。
「ぼくは、なん・でも・でき・ます」とチックトックは言った。「太った・ノームなど、こ・わ・く・な・い。」

それは本当だったが、賢明な発言ではなかった。思考装置が正常なら、チックトックも別のことを言っただろう。怒ったノーム王はすぐ重い戦棍をつかみ、チックトックめがけて投げつけた。金属の胸に命中すると、衝撃で胴体の板を留めていたボルトが弾け飛び、二十ほどの破片になって床へ散らばった。何百もの車輪、ピン、歯車、ばねが雲のように宙を舞い、やがて雹のような音を立てて床へ降り注いだ。
チックトックが立っていた場所には、今や鉄くずの山しかなかった。ノーム王は一撃がもたらした恐ろしい結果に驚き、目を見張った。
陛下の怒りはたちまち冷めた。ぜんまい仕掛けの人間は、強大なオズの国のオズマ姫が気に入っている臣下だった。チックトックを壊された姫が、黙っているはずはない。
「まずい、まずいぞ!」と王は後悔しながらつぶやいた。「あやつを鉄くずにしてしまったのは、まことに残念だ。こんなに簡単に壊れるとは知らなかった。」
「後悔なさるべきです」と、ようやく部屋へ入る勇気を出したカリコが言った。「このことをオズマ姫が知れば、戦争になりますぞ。おそらく陛下は玉座も王国も失うでしょう。」
ノーム王は青ざめた。ノームたちを支配するのが大好きだったし、もしオズマ姫と戦って敗れたら、ほかにどうやって生計を立てればよいのかわからなかったからだ。
「オ、オズマは怒ると思うか?」と王は不安げに尋ねた。
「間違いなく」とカリコは言った。「怒る権利もあります。陛下は姫のお気に入りを鉄くずにしてしまったのですから。」
王はうめいた。
「掃き集めて、そのがらくたを黒い穴へ捨ててしまえ」と王は命じた。それから私室に閉じこもり、何日ものあいだ誰にも会おうとしなかった。理性を失うほど怒ったことを恥じ、軽率な行いの結果を恐れていたからだ。
カリコは破片を掃き集めたが、黒い穴へは捨てなかった。頭がよく腕の立つ機械工でもあったので、破片をもう一度組み立てようと決心したのだ。
これほど難しい組み合わせパズルに挑んだ者は、かつていなかっただろう。だが面白い仕事でもあり、カリコは見事にやり遂げた。摩耗したり、不完全だったりするばねや車輪を見つければ、新しいものを作った。

昼も夜も休まず働き続け、二週間もしないうちに、執事長は仕事を完成させた。三組の時計仕掛けと最後のリベットを、チックトックの体へ収めたのである。それから動作装置のぜんまいを巻くと、ぜんまい仕掛けの人間は以前と同じく自然に部屋を行ったり来たりした。続いて思考装置と発声調節器のぜんまいも巻き、カリコはチックトックに尋ねた。
「気分はどうだ?」
「快調・です」とぜんまい仕掛けの人間は言った。「じつ・に・よい仕事・です、カ・リ・コ。破壊・から、ぼくを・救って・くれ・ました。感謝・し・ます。」
「礼には及ばない」と執事長は答えた。「わしも仕事をずいぶん楽しんだからな。」
ちょうどそのとき、ノーム王の銅鑼が鳴った。カリコは宝石だらけの洞窟を駆け抜け、王が隠れている私室へ急いだが、扉は開けたままにしていた。
「カリコ」と王はおとなしい声で言った。「チックトックを壊したことは、この中へ十分長く閉じこもり、心から悔やんだ。当然オズマは復讐し、軍隊を送って戦いを挑むだろう。だが、報いは受けねばならぬ。一つだけ心の慰めになることがある。チックトックは本物の生き物ではない。ただの機械人間だ。だから時計仕掛けを止めても、そこまで邪悪な行いではなかった。最初のうちは心配で夜も眠れなかったが、機械人間を壊すのは、蝋人形を壊すのと同じで、別に悪いことではない。そう思わぬか?」
「陛下の御前で考え事をするには、わたくしはあまりに卑しい身分でございます」とカリコは言った。
「ならば何か食べ物を持ってこい」と王は命じた。「腹が減って死にそうだ。夕食までは、焼いたヤギ二頭、ケーキ一樽、ミンスパイ九個でよかろう。」
カリコは一礼して王室の厨房へ急いだが、外の洞窟を歩き回っていたチックトックのことを忘れていた。やがてノーム王がふと顔を上げると、目の前にぜんまい仕掛けの人間が立っていた。それを見た王の目は大きく丸くなり、全身をがたがた震わせた。
「去れ、恐ろしい亡霊よ!」と王は叫んだ。「おまえがここにいるはずはない。おまえは歯車とばねのごった煮になり、黒い穴の底に転がっているはずだ。破壊されたチックトックの幻影よ、消え失せて、わしを安らかにしてくれ――心から悔いておるのだ!」

「ならば、ぼくに・謝って・くだ・さい」とチックトックはしゃがれ声で言った。カリコが発声装置に油を差すのを忘れていたのである。
ただの幻影と思っていたものが声まで出したため、怯えきったノーム王の神経は耐えられなかった。恐怖の叫びを上げ、部屋から飛び出した。チックトックがあとを追うと、王は廊下を全速力で逃げ、食べ物の盆を運んで戻ってきたカリコへぶつかった。皿が床へ落ちて割れる音が王の恐怖をさらにあおった。王はまた悲鳴を上げ、千人のノームが金属を打って働く巨大な洞窟へ飛び込んだ。

「気をつけろ! ぜんまい仕掛けの人間の亡霊が来るぞ!」と怯えきった王が叫ぶと、すべてのノームが道具を放り出し、洞窟から我先に逃げ出した。その狂乱のさなか、王を押し倒し、地面へ倒れた太った体を容赦なく踏みつけていった。そのためチックトックが洞窟へ入ったとき、残っていたのはノーム王だけだった。王は岩の床を転がりながら命乞いをし、目を固く閉じていた。恐ろしい亡霊が自分めがけて近づいてくるに違いないと思い込み、それを見まいとしていたのである。
「ぼくの・考え・では」と、チックトックは落ち着いて言った。「陛下は、赤ん坊・の・よう・です。ぼくは・亡霊・では・あり・ません。亡霊は・本物・では・ない。ぼくは・本物・です。」
王はごろりと転がって起き上がり、目を開いた。
「わしがおまえを粉々に壊したのではなかったか?」と震える声で尋ねた。
「はい」とチックトックは言った。
「ならばおまえは鉄くずの山にすぎない。今、目の前に見えるその姿が本物であるはずはない。」
「でも、本物・です」とチックトックは断言した。「カ・リ・コが、ぼくの・破片を・拾い、もう一度・組み・立てて・くれ・ました。新品・同様、いえ、前より・よく・なった・かも・しれ・ません。」
「そのとおりでございます、陛下」と、姿を現したカリコが付け加えた。「チックトックを直したことを、どうかお許しください。陛下が壊されたあと、ひどくばらばらになっておりまして、グーズベリーの茂みからカブを摘むのと同じくらい、破片を組み合わせるのは難しゅうございました。ですが、やり遂げました」と、誇らしげに付け加えた。
「許そう」とノーム王は宣言し、立ち上がって長く息を吐いた。「おまえの給金を一年につき一スペクト増やす。そしてチックトックには、オズマ姫への宝石を山ほど持たせ、オズの国へ帰すことにしよう。」
「それは・けっこう・です」とチックトックは言った。「でも、ぼくが・知り・たいのは、なぜ陛下が・戦棍で・ぼくを・殴った・のか・です。」
「腹を立てていたからだ」と王は認めた。「わしは怒ると、必ずあとで後悔することをしてしまう。だから二度と怒らぬと、固く決心した。ただし――ただし――」
「ただし、何でございましょう、陛下?」とカリコが尋ねた。

「何かに腹を立てさせられた場合は別だ」とノーム王は言った。それからオズの国のオズマ姫に贈る宝石を取りに、宝物庫へ向かった。

オズマ姫と小さな魔法使い
昔々、妖精の国オズの中央にある美しいエメラルドの都に、オズマ姫という愛らしい少女が住んでいた。姫はこの国すべての統治者だった。この若き統治者に仕え、壮麗な宮殿の居心地よい一続きの部屋で暮らす者たちの中に、オズの魔法使いとして知られる、小柄でしわだらけの老人がいた。

この小さな魔法使いは、魔法でいろいろと奇妙なことができた。だが陽気に輝く目と優しい笑顔を持つ、思いやり深い人だった。そのため魔法の力を恐れられるどころか、皆から愛されていた。
さて、オズマ姫は、心地よいオズの国に暮らすすべての民が幸せで満ち足りていることを強く願っていた。そこである朝、国じゅうを旅して回ることにした。何か問題がないか、不満を抱く者がいないか、正すべき間違いがないか、自分の目で確かめるためだった。姫が小さな魔法使いを旅に誘うと、魔法使いは喜んで同行した。
「魔法の道具袋を持っていきましょうか?」と魔法使いは尋ねた。
「もちろんよ」とオズマ姫は言った。「国の見知らぬ隅々まで出かけるのだから、帰るまでにたくさんの魔法が必要になるかもしれないわ。未知の生き物に出会ったり、危険な冒険に巻き込まれたりするかもしれないもの。」
そこで魔法使いは魔法の道具袋を持ち、二人はエメラルドの都を出発した。何日も国を歩き回り、ついに二人とも訪れたことのない、山奥の土地へたどり着いた。ある朝、向こうの美しい谷へ続く岩だらけの小道のそばに建つ小屋へ立ち寄り、オズマ姫は一人の男に尋ねた。
「あなたは幸せ? 今の境遇に不満はある?」
すると男は答えた。
「向こうの谷に住む三人のいたずら小鬼を除けば、わたしたちは幸せです。あの小鬼どもはたびたびここへ来て、わたしたちを困らせるのです。殿下が追い払ってくだされば、わたしも家族も心から幸せになり、殿下に深く感謝するでしょう。」
「その悪い小鬼たちは何者なの?」と少女の統治者は尋ねた。
「一人はオライト、一人はユーデント、もう一人はアーティネントといい、誰にも何にも敬意を払いません。よそ者が谷を通れば、小鬼どもはあざ笑い、恐ろしいしかめ面をして、悪口を浴びせます。旅人を道から突き飛ばしたり、石を投げつけたりすることも珍しくありません。小鬼のオライト、ユーデント、アーティネントの誰かがここへ来て迷惑をかけるたび、わたしと家族は家へ逃げ込み、戸や窓をすべて閉ざします。そして小鬼どもが立ち去るまで、怖くて外へ出られないのです。」
この話を聞いたオズマ姫は心を痛め、小さな魔法使いも厳しい顔で首を振り、悪い小鬼たちは罰を受けるべきだと言った。二人は善良な男に、守るため何ができるか考えてみると約束し、すぐ谷へ入って、三人のいたずら者の住みかを捜した。

ほどなく岩をくりぬいた三つの洞穴が見つかり、それぞれの前には、奇妙な小人が一人ずつうずくまっていた。オズマ姫と魔法使いは立ち止まり、三人を観察した。皆、均整の取れた体つきで、強く、活発そうだった。大きく丸い耳、平たい鼻、にやにや笑う幅広い口を持ち、漆黒の髪は頭頂で尖り、まるで角のようだった。服は胴や手足にぴったり合っていた。あまりに小柄なので、初めオズマ姫は、まったく危険ではなさそうだと思った。だが、そのうち一人が突然手を伸ばして姫のドレスをつかみ、激しく引っぱったので、姫はもう少しで転ぶところだった。その直後には別の小鬼が魔法使いを強く突き飛ばした。魔法使いはオズマ姫へぶつかり、二人そろって思いがけず地面に尻もちをついた。
すると小鬼たちは大笑いし、ぐるぐる走り回りながら、王女へ土ぼこりを蹴りかけ始めた。オズマ姫は鋭い声で叫んだ。「魔法使い、務めを果たしなさい!」
魔法使いは即座に従った。地面に座ったまま道具袋を開け、必要な道具を取り出し、魔法の呪文をつぶやいた。
たちまち三人の小鬼は、ずんぐりした棘だらけの三本の茂みに変わり、地面へ根を張った。突然の変身に驚いたのか、茂みは初めのうち動かなかったので、魔法使いと姫は立ち上がり、美しい服についた土ぼこりを払うことができた。それからオズマ姫は茂みに向かって言った。
「かわいそうな小鬼たち。今の不幸な境遇は、すべて自分たちの悪い行いが招いたものよ。もう罪のない旅人を困らせることはできない。悪い行いを悔い改め、善良な小鬼になると約束するまで、鋭い棘に覆われた醜い茂みのままでいなさい。」
「もう悪さはできません、殿下」と、自分の仕事ぶりに大満足していた魔法使いが言った。「最も安全なのは、このままずっと茂みにしておくことでしょう。」
ところが魔法使いの魔法に何か問題があったのか、あるいは小鬼たち自身が魔力を持っていたのか、その言葉が終わるやいなや茂みが動き始めた。初めは姫と小男に向かって枝を振るだけだったが、ほどなく根で土を引っかきながら、地面を滑り始めた。そのうち一つが魔法使いへ体当たりし、棘で激しく突いたので、魔法使いは「痛い!」と叫んで逃げ出した。

オズマ姫もあとを追った。ほかの茂みが脚へ棘を突き刺そうと狙っており、そのうち一つは姫へ近づきすぎて、美しいドレスを大きく引き裂いたのである。だが姫は足が速く、逃げる魔法使いを追いかけた。魔法使いは丸太につまずいて頭から転び、地面を転がった。姫は木の陰へ飛び込み、「早く! 別のものに変えて!」と叫んだ。
魔法使いには聞こえたが、転んだせいですっかり混乱していた。道具袋から最初に手に触れた魔法の道具をつかむと、茂みを三匹の白いブタに変えた。これには小鬼たちも驚いた。丸々太ってころころした、かわいらしいブタの姿で少し離れたところまで駆けていき、腰を下ろして新しい境遇について考えた。
オズマ姫は長く息をつき、木の陰から出て言った。
「そのほうがずっといいわ、魔法使いさん。こんなブタなら、きっと何の害もないでしょう。もう誰も、いたずら小鬼を恐れる必要はないわね。」
「本当はネズミに変えるつもりでした」と魔法使いは答えた。「ですが慌てたせいで、違う魔法を使ってしまいました。しかし、この恐ろしい者たちが今後おとなしくしなければ、殺されて食べられるかもしれません。おいしいポークチョップやソーセージ、ローストになるでしょうからね。」

だが小鬼たちは怒っており、おとなしくするつもりなどなかった。オズマ姫と小さな魔法使いが旅を再開しようと振り返ったとたん、三匹のブタが突進し、二人の脚のあいだを駆け抜けた。足をすくわれた二人は互いにしがみつきながら、釣り合いを失って倒れた。魔法使いが起き上がろうとすると、また足を払われ、三匹目のブタの背中へ落ちた。ブタは魔法使いを載せたまま谷を駆け下り、小男を川の中へ放り落とした。オズマ姫は地面に倒れていたが、けががないとわかると立ち上がり、魔法使いを助けに走った。姫が着いたとき、魔法使いは息を切らし、全身から水を滴らせながら、ちょうど川からはい上がるところだった。そのみじめな姿を見て、少女は笑わずにはいられなかった。だが魔法使いが目の水を拭ったとたん、小鬼のブタがまた足を払い、二度目の水浴びをさせた。ブタたちはオズマ姫も転ばせようとしたが、姫は切り株の周りを走り、どうにか逃げ続けた。魔法使いは再び水からはい出すと、身を守るため鋭い棒を拾った。それから魔法の言葉をぶつぶつ唱え、たちまち服を乾かすと、急いでオズマ姫を助けに向かった。ブタたちは鋭い棒を恐れ、近づかなかった。
「これではだめね」と姫は言った。「何一つ解決していないわ。ブタの小鬼だって、本物の小鬼と同じくらい旅人を困らせるでしょう。魔法使いさん、別のものに変えてちょうだい。」

魔法使いは時間をかけて考えた。それから白いブタを、三羽の青いハトに変えた。
「ハトは」と魔法使いは言った。「この世で最も害のない生き物です。」
だが言い終わるか終わらないかのうちに、ハトたちは二人へ飛びかかり、目をつつき出そうとした。二人が手で目をかばうと、二羽が魔法使いの指をかみ、もう一羽は姫のかわいらしい桃色の耳をくちばしで挟み、残酷に引っぱった。姫は痛みに叫び、スカートを頭からかぶった。
「この鳥たちはブタよりひどいわ、魔法使いさん」と姫は仲間に向かって叫んだ。「厚かましい怒りや、無礼ないたずら心が宿っているものは、何に変えても無害にはならないのよ。小鬼たちを、生きていないものに変えなくては。」
魔法使いは鳥を追い払うので手いっぱいだったが、どうにか魔法の道具袋を開き、まじないの道具を見つけた。それを使うと、ハトはたちまち三つのボタンに変わった。地面へ落ちたボタンを拾い上げ、魔法使いは満足げに微笑んだ。ブリキのボタンは小鬼オライト、真鍮のボタンは小鬼ユーデント、鉛のボタンは小鬼アーティネントだった。魔法使いはボタンを小箱へ入れ、その箱を上着のポケットへしまった。

「これで」と魔法使いは言った。「小鬼たちはもう旅人を困らせられません。わたしたちがエメラルドの都へ連れ帰りますからね。」
「でも、そのボタンを使うのは危険ね」と、危機が去ってようやく再び笑顔になったオズマ姫が言った。
「なぜです?」と魔法使いは尋ねた。「わたしは上着に縫いつけ、注意深く見張るつもりです。小鬼たちの魂は、今もボタンの中にあります。やがて悪い行いを悔い、自分たちのしたことを悲しむでしょう。そして今後は、とても善良になろうと決意します。そういう気持ちになれば、ブリキのボタンは銀に、真鍮は金に、鉛はアルミニウムに変わります。そのとき本来の姿へ戻し、以前の醜い名ではなく、美しい名をつけてやりましょう。それから三人の小鬼は、オズの国の善良な市民となります。きっと、わたしたちが敬愛するオズマ姫に忠実な臣下となるでしょう。」

「まあ、それこそ価値のある魔法だわ」と、オズマ姫は大いに満足して叫んだ。「あなたが本当に優れた魔法使いであることは、疑いようがないわね。」

ジャック・パンプキンヘッドとソーホース
オズのエメラルドの都にある王宮の一室には、魔法の絵が掛けられている。その絵には、妖精の国々で起きる重要な出来事がことごとく映し出される。場面は絶えず移り変わり、少女の統治者オズマ姫は、それを眺めることで王国のどこで起きた出来事でも知ることができた。
ある日、オズマ姫は魔法の絵の中に、一人の女の子と一人の男の子を見つけた。二人は一緒にオズの最西端にある大きく薄暗い森へ迷い込み、どうしても道がわからなくなっていた。友人たちは間違った方角を捜している。このままオズマ姫が助けなければ、二人は餓死する前に発見されないだろう。
そこで姫はジャック・パンプキンヘッドへ使いを送り、宮殿へ来るよう頼んだ。この人物は、オズに住む奇妙な者たちの中でもひときわ風変わりで、オズマ姫の古くからの友であり仲間だった。体はごつごつした棒を組み合わせ、普通の服を着せて作られていた。頭は顔を彫ったカボチャで、首になっている尖った杭の先に載せられていた。
ジャックは活発で人がよく、皆の人気者だった。だがカボチャの頭は、古くなると腐ってしまう。そこで頭を十分確保できるよう、大きな畑でカボチャを育て、その真ん中に住んでいた。家は巨大なカボチャをくりぬいて作られていた。新しい頭が必要になると、カボチャを一つもぎ、顔を彫って首の杭に刺し、古い頭はもう役に立たないので捨てるのだった。
オズマ姫が呼び出した日、ジャックは絶好調で、迷子の子供たちを助ける役に立てることを喜んだ。オズマ姫は森の正確な場所と、そこへ行く道、子供たちへたどり着くため進むべき小道を示した地図を作った。それから言った。

「ソーホースに乗ったほうがいいわ。足が速くて頭もよいから、あなたの仕事を手伝ってくれるでしょう。」
「わかった」とジャックは答え、王室の厩へ行き、旅の支度をするようソーホースへ伝えた。
この風変わりな動物は形こそ違うが、造りはジャック・パンプキンヘッドと似ていた。胴体は一本の丸太で、そこへ四本の棒を刺して脚にしてある。丸太の片方の端についた枝が尾で、反対側には切れ込みを入れて口が作られていた。その上にある二つの小さな節が、目の役目を立派に果たした。ソーホースはオズマ姫お気に入りの乗用馬であり、木の脚がすり減らないよう、金の板で蹄鉄を打ってもらっていた。
ジャックはソーホースに「おはよう」と言い、宝石をちりばめた紫の革の鞍を、その背に載せた。
「今度はどこへ?」と馬は尋ね、節の目をぱちぱちさせてジャックを見た。
「森で迷った二人の子供を助けに行くんだ」とジャックは答えた。それから鞍へまたがると、木の動物は厩から勢いよく走り出した。エメラルドの都の通りを抜け、子供たちが迷った西の森へ続く街道へ出た。
小柄ではあったが、ソーホースは速く、決して疲れなかった。日暮れまでには最西部へ着き、目指す森のすぐ近くまで来ていた。その夜、二人は道端に静かに立ったまま過ごした。木の体は腹が減らないので食べ物はいらず、疲れることもないので眠る必要もなかった。夜が明けると旅を再開し、ほどなく森へ着いた。
ジャックはオズマ姫にもらった地図を調べ、進むべき小道を見つけた。ソーホースは素直にその道を進んだ。木々の下は静まり返って薄暗かったので、ジャックは明るく口笛を吹き、速足で進むソーホースの上から道中をにぎやかにした。

小道は何度も、さまざまな方向へ枝分かれしていた。そのたびにパンプキンヘッドはオズマ姫の地図を確かめねばならなかった。ついにソーホースも疑い始めた。
「本当にこの道で合っているのか?」と尋ねた。
「もちろん」とジャックは答えた。「頭の中身が種しかないパンプキンヘッドだって、これほどわかりやすい地図なら読める。道は全部はっきり印がついているし、子供たちのいる場所には十字がある。」
ついに二人は森のまさに中心で、迷子の少年と少女を発見した。だが二人は大木の幹にきつく縛りつけられ、その根元に座らされていた。
救助者たちが着いたとき、少女は激しくすすり泣き、少年は慰めようとしていた。もっとも少年も、少女と同じくらい怖がっていたのだろう。
「元気を出して、二人とも」とジャックは鞍から下りながら言った。「きみたちを両親のもとへ連れ帰るために来たんだ。ところで、どうして木に縛られているんだい?」
「それはな」と、小さく鋭い声が叫んだ。「こいつらが泥棒で、強盗だからだ。だからさ!」
「おやまあ!」とジャックは言い、声の主を捜して辺りを見回した。声は頭上から聞こえたようだった。
大きな灰色のリスが、木の低い枝に座っていた。頭には金の輪を載せ、その中央にはダイヤモンドがはめ込まれている。リスは枝を上ったり下りたりしながら、興奮した声で鳴いていた。

「こいつらは」と、リスは怒って続けた。「我らが冬のために蓄えておいた木の実を、貯蔵庫から残らず盗んだのだ。そこで、この森に住むすべてのリスの王であるわしが、二人を逮捕し、今こうして目の前に見えるとおり、牢へ入れるよう命じた。我らの食料を盗む権利などない。これから罰を与えるところだ。」
「お腹がすいていたんです」と少年は懇願した。「木の実でいっぱいの空洞がある木を見つけたので、生きるために食べました。目の前に食べ物があるのに、飢え死にしたくなかったんです。」
「もっともだ」とジャックはカボチャの頭をうなずかせた。「そんな事情なら、少しもきみたちを責められない。まったく責められないよ。」
そう言うと、子供たちを木へ縛りつけていた縄をほどき始めた。
「やめろ!」とリスの王は叫び、声高に鳴きながら走り回った。「我らの囚人を解放してはならん。おまえにそんな権利はない!」
だがジャックは抗議を無視した。木の指は不器用だったので、縄をほどくのに時間がかかった。ようやく成功したころには、王に呼び集められたリスたちで木が埋め尽くされていた。囚人を奪われたリスたちは激怒し、木の上からパンプキンヘッドへ木の実を投げ始めた。ジャックは笑いながら、二人の子供が立ち上がるのを助けた。

さて、この木の上部には大きな枯れ枝があった。あまりに多くのリスが集まったので、突然折れて地面へ落ちてきた。かわいそうなジャックは真下に立っていた。枝はカボチャの頭へ直撃し、果肉の塊になるまで押しつぶした。ジャックの木の体は吹き飛ばされ、十二フィート(約三・七メートル)ほど先の木へぶつかって止まった。
しばらくしてジャックは起き上がったが、頭を触ろうとしても、もうそこにはなかった。何も見えず、話すこともできない。ジャック・パンプキンヘッドに起こり得る、最大の不幸だっただろう。リスたちは大喜びだった。ジャックの窮状を見て、木の上で歓喜の踊りを踊った。

少年と少女は確かに自由になったが、守ってくれる者が壊れてしまった。だが、そこにはソーホースがいた。そしてソーホースなりに知恵があった。事故を見ていたので、つぶれたカボチャが二度とジャックの頭として使えないこともわかっていた。そこで、新しくできた友の事故に怯える子供たちへ言った。
「パンプキンヘッドの体を拾い、わたしの鞍へ載せるんだ。それから後ろへまたがって、しっかりつかまれ。できるだけ早く森を出なければ、リスたちにまた捕まるかもしれない。正しい道は勘で選ぶしかない。あの枝に頭を壊されてしまった今、ジャックには地図を使えないからな。」

二人の子供は、少しも重くないジャックの体を持ち上げ、鞍へ載せた。それから後ろへよじ登ると、ソーホースはすぐ向きを変え、来た小道を速足で引き返した。三人を載せても苦もなく走れた。だが小道がそれぞれ違う方角へ何本も枝分かれし始めると、木の動物は混乱し、ほどなく正しい道を見つけるあてもなく、当てもなしにさまよい始めた。夕方近く、美しい果物の木を見つけ、子供たちはその実を夕食にした。夜になると、二人は落ち葉の寝床へ横たわり、ソーホースが見張りに立った。その鞍には、かわいそうなジャック・パンプキンヘッドの力なく頭のない体が、なすすべもなく横たわっていた。
さて、オズマ姫は森で起きたすべてを魔法の絵で見ていた。そこで不運な者たちを助けるため、小さな魔法使いを臆病なライオンに乗せて送り出した。ライオンは森をよく知っており、中へ入ると、入り組んだ小道をまっすぐ駆け抜けた。そしてジャックと二人の子供を背に載せ、さまよっていたソーホースのもとへ着いた。
魔法使いは頭のないジャックを見て心を痛めたが、自分なら助けられると考えた。まずソーホースを森から連れ出し、心配していた友人たちの腕へ少年と少女を返した。それからライオンをオズマ姫のもとへ戻し、起きたことを伝えさせた。

魔法使いはソーホースへ乗り、カボチャ畑までの長い道中、ジャックの体を支えてやった。ジャックの家へ着くと、魔法使いは熟しすぎていない立派なカボチャを選び、たいそう丁寧に顔を彫った。それからジャックの首へしっかり差し込み、尋ねた。
「さて、古い友よ、気分はどうだね?」
「最高だ!」とジャックは答え、小さな魔法使いの手を感謝して握った。「本当に命を救ってくれたね。きみの助けがなかったら、家へ帰って新しい頭を手に入れることはできなかった。でも、もう大丈夫だ。今度はこの美しい頭を壊さないよう、十分に気をつけるよ。」
そう言って、もう一度魔法使いと握手した。
「新しい頭の脳みそは、古いものより少しはよくなったのか?」と、ジャックが元どおりになる様子を見ていたソーホースが尋ねた。
「うむ、この種はずいぶん柔らかい」と魔法使いは答えた。「だから友人にも、優しい考えを与えてくれるだろう。だが本当のことを言えば、親愛なるソーホースよ、ジャック・パンプキンヘッドには長所がいくつもあるが、知恵で名を上げることは決してないだろうな。」

かかしとブリキの木こり
オズの国には、奇妙な造りをした二人の男が住んでおり、互いに無二の親友だった。一緒にいるときが何より幸せだったので、離れることはめったになかった。それでも時には別々に過ごした。再会する喜びを味わうためである。
一人はかかしだった。つまり青いマンチキンの服にわらを詰め、その上へ、形を保つためふすまを詰めた丸い布の頭を取りつけた姿である。頭には二つの目、二つの耳、鼻、口が描かれていた。かかしはカラスを追い払うことにはほとんど成功しなかったが、自分は優れた人間だと自負していた。痛みを感じず、疲れることもなく、飲み食いの必要もなかったからだ。頭脳も鋭かった。オズの魔法使いが、かかしの脳へピンや針を入れてくれたのである。
もう一人の男は全身がブリキでできていた。腕、脚、頭には巧みな関節があり、自由に動かせた。かつて木こりだったので、ブリキの木こりと呼ばれていた。魔法使いから赤い天鵞絨製のすばらしい心臓をもらっていたので、誰もが彼を愛していた。
ブリキの木こりは、オズのエメラルドの都からそう遠くないウィンキーの国に領地を持ち、そこに建てた壮麗なブリキの城で暮らしていた。城には美しいブリキの家具があり、周囲を取り巻く見事な庭園には、たくさんのブリキの木とブリキの花壇があった。かかしの宮殿は、さほど離れていない川岸にあり、巨大なトウモロコシの穂の形をしていた。
ある朝、ブリキの木こりは友人のかかしを訪ねた。二人にはほかにすることもなかったので、川で舟遊びをすることにした。そこで、かかしの舟へ乗り込んだ。大きなトウモロコシの芯をくりぬき、両端を尖らせて作った舟で、縁にはまばゆい宝石が飾られていた。帆は紫の絹で、日差しを浴びて陽気にきらめいた。
その日はよい風が吹き、舟は水の上を滑るように進んだ。やがて深い森から流れ出す、もっと小さな川へ着いた。木々の下なら涼しく日陰になっているだろうと、ブリキの木こりはその川を上ろうと提案した。そこで舵を取っていたかかしが舟を川上へ向けた。二人は昔のことや、カンザス州の少女ドロシーと旅をしたときに出会った、すばらしい冒険について語り合った。あまりに話へ夢中になったので、舟がすでに森の中を進んでいることにも、川幅がどんどん狭くなり、流れが曲がりくねってきたことにも気づかなかった。
突然、かかしが顔を上げ、すぐ前方に大きな岩があるのを見つけた。
「危ない!」と叫んだが、警告は遅すぎた。
舟が岩へぶつかった瞬間、ブリキの木こりは立ち上がった。その衝撃で釣り合いを失い、舟から水中へ転げ落ちた。ブリキでできているため、たちまち水底へ沈み、仰向けに全身を伸ばして横たわった。
かかしはすぐに錨を投げ、舟をその場へ留めた。それから舟べりから身を乗り出し、澄んだ水越しに、悲しげに友人を見つめた。

「なんということだ!」とかかしは叫んだ。「なんたる不運だろう!」
「まったくだ」とブリキの木こりは答えた。上に大量の水があるので、くぐもった声だった。「もちろん溺れることはないが、きみが引き上げる方法を見つけてくれるまで、ここに寝ていなければならない。その間にも関節へ水が染み込み、助け出される前にひどく錆びてしまうだろう。」
「確かにそうだ」とかかしは同意した。「だが辛抱してくれ、友よ。ぼくが潜って助け出す。ぼくのわらは錆びないし、傷んでも簡単に取り替えられる。だから水なんて怖くない。」
かかしは帽子を脱ぎ、舟から水中へ飛び込んだ。だが体が軽すぎて、水面をわずかにへこませただけだった。わらの腕をいっぱいに伸ばしても、ブリキの木こりへ届かない。そのまま舟まで浮かんでいき、はい上がりながら言った。
「絶望してはいけない、友よ。舟には予備の錨がある。沈めるように腰へ縛りつけて、もう一度潜ってみる。」
「それはやめろ!」とブリキの男が叫んだ。「そんなことをすれば、きみまでぼくと一緒に水底へつなぎ留められて、二人とも身動きできなくなる。」
「確かにそのとおりだ」とかかしはため息をつき、ハンカチで濡れた顔を拭いた。すると驚きの声を上げた。描かれた目を一つ拭き取ってしまい、見るための目が一つしか残っていなかったのである。

「なんてひどい!」と、かわいそうなかかしは言った。「あの目は油絵具ではなく、水彩絵具で描かれていたに違いない。もう片方まで拭き取らないよう、気をつけなくては。両目を失ったら、きみを助けることもできなくなる。」
その言葉に、妖精めいたけたたましい笑い声が返ってきた。かかしが見上げると、木々は黒いカラスでいっぱいだった。わらの男の一つ目の顔を見て、ずいぶん面白がっているようだった。だが、かかしはカラスたちをよく知っており、普段は友好的な関係だった。かかしは、自分が肉でできた人間――カラスが本当に恐れる種類の人間――だと思い込ませて、だましたことがなかったからだ。
「笑うなよ」とかかしは言った。「きみたちだって、いつか目を一つ失うかもしれないぞ。」

「失ったところで、おまえほどおかしな顔にはならん」と、一羽の年老いたカラスが答えた。カラスたちの王だった。「ところで、何があったのだ?」
「ぼくの大切な友で仲間のブリキの木こりが舟から落ちて、川底に沈んでいるんだ」とかかしは言った。「引き上げようとしているけれど、どうもうまくいきそうにない。」
「なんだ、そんなのは簡単だ」と老カラスは断言した。「ひもを体に結びつければ、わしのカラスたちが皆で飛び降り、ひもをつかんで水から引き上げてやる。ここには何百羽もいるから、力を合わせれば、あれよりずっと重いものだって持ち上げられる。」
「でも、ひもを結びつけられないんだ」とかかしは答えた。「わらが軽すぎて、水中へ潜れない。やってみたけれど、目を一つ失っただけだった。」
「釣り上げてはどうだ?」
「ああ、それはいい考えだ」とかかしは言った。「やってみよう。」
舟の中で、先に丈夫な釣り針のついた釣り糸を見つけた。餌は必要ない。かかしは針が木こりに触れるまで、水中へ垂らした。
「関節に引っかけろ」とカラスが助言した。今では水の上まで長く張り出し、下向きに曲がった枝へ止まっていた。
かかしはそうしようとしたが、目が一つしかないため、関節がよく見えなかった。
「どうか急いでくれ」とブリキの木こりは頼んだ。「ここがどれほど湿っぽいか、きみには想像もつかないだろう。」

「自分で手伝えないのか?」とカラスは尋ねた。
「どうやって?」とブリキの男は聞き返した。
「糸をつかんで、首の周りへ針を引っかけるんだ。」
ブリキの木こりはやってみた。何度か試した末、首の周りへ糸を巻きつけ、針をしっかり固定した。
「よし!」と、いたずら好きの老カラス、カラスの王が叫んだ。「さあ、皆で糸をつかみ、引っぱり上げるぞ。」
たちまち空は黒いカラスで埋まり、一羽一羽がくちばしや爪でひもをつかんだ。かかしは興味津々でその様子を眺めていた。そして友人を釣っているあいだ糸を失くさないよう、反対側の端を自分の腰へ結んでいたことを忘れていた。
「さあ、よい鳴き声のために力を合わせろ!」とカラスの王が叫んだ。鳥たちは翼を大きく羽ばたかせ、空へ舞い上がった。
友人が水中から空中へ引き上げられるのを見て、かかしは詰め物入りの両手を喜んでたたいた。だが次の瞬間、わらの男自身も空へ浮かび、詰め物の脚を激しくばたつかせていた。カラスたちは木々のあいだを、まっすぐ上へ飛んでいたのだ。糸の一方には、ブリキの木こりが首をつられてぶら下がり、もう一方には、かかしが腰をつられてぶら下がっていた。かかしは助かろうとして、舟の予備の錨をつかみ、しっかり抱えていた。
「おい、気をつけてくれ!」とかかしはカラスたちへ叫んだ。「そんなに高く上げるな。川岸へ下ろしてくれ。」

だがカラスたちは、いたずらをする気でいた。二人を捕らえた今、困らせるのは面白い冗談だと思っていたのである。
「今度はカラスがかかしを怖がらせる番だ!」と、意地悪なカラスの王はくすくす笑った。王の命令で、鳥たちは森を越え、ほかのどの木よりも高くそびえる枯れ木のところまで飛んでいった。頂上には二本の枯れ枝が作る股があり、カラスたちは糸の中央をそこへ落とした。それから糸を放し、笑い声のように鳴きながら飛び去った。二人の友人は、木の両側へ一人ずつ、空高くつり下げられたまま残された。
ブリキの木こりはかかしよりずっと重かった。それでもうまく釣り合っていたのは、わらの男が鉄の錨をしっかり抱えていたからだ。二人の距離は十フィート(約三メートル)もなかったが、むき出しの木の幹へ手を伸ばしても届かなかった。
「お願いだから、その錨を落とさないでくれ」とブリキの木こりは不安げに言った。
「どうして?」とかかしは尋ねた。
「落とせば、ぼくは地面へ転落し、衝撃でブリキの体がひどくへこんでしまう。それに、きみは空へ飛び上がり、木々の梢のどこかへ落ちるだろう。」
「それなら」とかかしは真剣に言った。「ぼくは錨をしっかり抱えていよう。」
しばらく二人は黙ってぶら下がり、風に吹かれてゆっくり前後に揺れていた。やがてブリキの男が言った。「友よ、これは頭脳だけがぼくたちを助けられる危機だ。何か逃げ出す方法を考えなくては。」
「考えるのはぼくに任せてくれ」とかかしは答えた。「ぼくの頭脳は誰より鋭いんだ。」
あまりに長く考え続けるので、ブリキの男は疲れて姿勢を変えようとした。だが関節はすでにひどく錆び、動かせなくなっていた。油差しは舟の中だった。
「友よ、きみの頭脳まで錆びたのではないか?」と、ブリキの木こりは弱々しい声で尋ねた。顎さえほとんど動かなくなっていた。
「まさか。ああ、ようやく思いついたぞ!」
そう言って、かかしは両手で頭をたたいた。そのとき錨のことを忘れ、地面へ落としてしまった。結果は驚くべきものだった。ブリキの男が言ったとおり、軽いかかしは空へ跳ね上がり、木の頂を越えて飛び、イバラの茂みへ落ちた。一方、ブリキの男は地面へまっさかさまに落ちたが、乾いた落ち葉の寝床へ着地したので、少しもへこまなかった。だがブリキの木こりの関節はひどく錆び、身動きができない。かかしも棘に捕らえられ、しっかり囚われの身になった。
二人がそんな悲惨な目に遭っていると、ひづめの音が聞こえてきた。森の小道を、木のソーホースにまたがった小さなオズの魔法使いがやって来たのである。イバラの茂みから、かかしの一つ目の頭が突き出しているのを見て微笑んだが、かわいそうなわらの男を助け出してやった。
「ありがとう、親愛なる魔法使いさん」と、感謝したかかしは言った。「さあ、油差しを取ってきて、ブリキの木こりを助けなくては。」

二人は一緒に川岸へ走った。だが舟は川の中央を漂っていたので、魔法使いは魔法の言葉をつぶやき、岸へ引き寄せなければならなかった。それでかかしは油差しを手に入れた。二人は急いでブリキの男のもとへ戻った。かかしが一つ一つの関節へ慎重に油を差し、小さな魔法使いがそっと前後に動かし、自由に動くようにした。一時間の作業の末、ブリキの木こりは再び立ち上がった。まだ少し体は硬かったが、どうにか舟まで歩くことができた。
魔法使いとソーホースもトウモロコシの芯の舟へ乗り込み、皆でかかしの宮殿へ帰った。だがブリキの木こりは、二度と舟の上で立ち上がらないよう、十分に気をつけた。

公開日: 2026-07-16