宇宙戦争
H・G・ウェルズ
「だが、もしこれらの世界に住む者がいるなら、それは誰なのか。
……世界の支配者は、われらか、それとも彼らか。……そして
万物は、いかにして人間のために作られたというのか。」
ケプラー(『憂鬱の解剖』より引用)
第一部 火星人の来襲
I. 戦争前夜
十九世紀も末のころ、この世界が、人間よりもすぐれた知性――それでいて人間と同じく死すべき存在――によって、鋭く、綿密に監視されていたなどと信じた者は誰ひとりいなかっただろう。人々がそれぞれの雑事に追われているあいだ、彼らは観察され、研究されていたのだ。顕微鏡をのぞく人間が、一滴の水の中で群がり増殖するはかない生き物を見つめるのと、おそらくほとんど変わらぬほどの執拗さで。人類は、物質界を支配しているという確信に安んじ、果てしない自己満足のうちに、この地球上を行き来しては、ちっぽけな用事を片づけていた。顕微鏡下の微生物も、あるいは同じことをしているのかもしれない。宇宙の古い世界が人類に危険をもたらす源であるなど、誰も考えなかった。考えたとしても、そこに生命が存在するなど不可能、あるいはありそうもないとして、すぐに退けていた。あの過ぎ去った時代の思考習慣を思い返すと、奇妙な気分になる。地球人がせいぜい想像したのは、火星には別の人間がいるかもしれない、しかもおそらく自分たちより劣っていて、宣教師の事業を喜んで迎えるだろう、という程度だった。だが宇宙の深淵を隔てて、われわれの知性が滅びゆく獣たちの知性に対するのと同じほど、われわれの知性を見下ろす精神が、広大で冷静で同情心を欠いた知性が、この地球を羨望の目で眺め、ゆっくりと、しかし確実に、われわれに対する計画を練っていた。そして二十世紀初頭、大いなる幻想の崩壊が訪れた。
火星という惑星は、読者にあらためて説明するまでもないだろうが、太陽から平均一億四千万マイル(約二億二千五百万キロメートル)の距離をめぐっており、太陽から受ける光と熱は、この地球の受けるものの半分にも満たない。星雲仮説[訳注:太陽系がガス状の星雲から形成されたとする説]がいくらかでも真実を含むなら、火星は地球より古いに違いない。そして地球が溶融状態を脱するはるか以前に、その表面では生命の歩みが始まっていたはずだ。体積が地球の七分の一にも満たないという事実は、生命が始まりうる温度まで冷えるのを早めたに違いない。火星には大気があり、水があり、生命活動を支えるために必要なものはすべて備わっている。
それにもかかわらず、人間はかくも虚栄に満ち、虚栄に目を曇らされていたために、十九世紀のまさに終わりに至るまで、あの星で知的生命が地球上の水準をはるかに、いや少しでも超えて発達したかもしれないという考えを述べた著述家は誰ひとりいなかった。また、火星は地球より古く、表面積は地球の四分の一にも満たず、太陽からも遠いのだから、時間の始まりからより遠く離れているだけでなく、その終わりにより近いという当然の帰結も、一般には理解されていなかった。
いつかはわれわれの惑星にも訪れる長い冷却は、隣人である火星においては、すでに相当に進んでいる。その物理的状態はいまだ大部分が謎であるが、いまやわれわれは、赤道付近でさえ正午の気温が地球の厳冬期のそれにようやく近づく程度であることを知っている。大気は地球よりはるかに希薄で、海は縮み、表面の三分の一を覆うばかりとなっている。そして緩慢な季節が移り変わるにつれ、両極には巨大な雪帽が集まっては溶け、周期的に温帯を氾濫させる。われわれにとってはなお信じがたいほど遠い未来にある、あの疲弊の最終段階が、火星の住民にとっては現下の問題となっていたのだ。差し迫った必要という圧力が、彼らの知性を磨き、能力を拡大し、心を冷酷にした。そしてわれわれには夢想も及ばぬような器具と知性とをもって宇宙を見渡す彼らの目には、最接近時でわずか三千五百万マイル(約五千六百万キロメートル)太陽寄りに、希望の明けの明星が映った。すなわち、われわれの、より暖かな惑星。植物に緑なし、水に灰色を帯び、豊穣を物語る雲の大気に包まれ、漂う雲の切れ間からは、人々の暮らす広大な陸地と、艦船ひしめく細い海がのぞく地球である。
そしてこの地球に住むわれわれ人間という生き物は、彼らにとって少なくとも、われわれにとっての猿やキツネザルほどに異質で卑しい存在であったに違いない。人間の知的側面はすでに、生命とは絶えざる生存競争であることを認めている。そして火星の精神もまた、同じ信念を抱いていたように思われる。彼らの世界は冷却の末期にあり、この世界はいまだ生命に満ちている。だが彼らから見れば、満ちているのは劣等な動物ばかりなのだ。戦争を太陽の方向へ押し広げることこそ、世代を重ねるごとに忍び寄る破滅から逃れる、彼らに残された唯一の道だった。
彼らをあまりにも苛烈に裁く前に、われわれ自身の種がどれほど無慈悲で徹底した破壊を行ってきたかを思い出さねばならない。絶滅したバイソンやドードーのような動物に対してのみならず、自分たちより劣ると見なした人種に対してもである。タスマニア人は、人間と同じ姿をしていたにもかかわらず、ヨーロッパからの移民が仕掛けた殲滅戦争によって、五十年のうちに完全に地上から消し去られた。ならば火星人が同じ精神で戦争を仕掛けたとして、われわれは慈悲の使徒を気取って非難できるほどの者だろうか。
火星人は驚くべき精妙さで降下を計算していたらしい――彼らの数学的知識がわれわれをはるかに超えていたことは明らかである――そして、ほとんど完全な一致団結のもとに準備を遂行したようだ。われわれの観測器具がそれを許していれば、十九世紀のかなり早い時期から、迫り来る災厄を見て取れたかもしれない。シアパレッリのような人々は赤い惑星を観測していた――ところで、数え切れないほど長い時代にわたり、火星が戦争の星であったというのは奇妙なことだ――だが、彼らがあれほど見事に地図に描いた模様の変動が何を意味するかを解釈できなかった。そのあいだずっと、火星人は準備を進めていたに違いない。
一八九四年の衝のころ、まずリック天文台で、次いでニースのペロタン、さらにほかの観測者たちによって、火星の照らされた面に大きな光が見られた。イギリスの読者がそれを初めて知ったのは、八月二日付の『ネイチャー誌』においてである。私は、この閃光こそ、彼らの惑星に穿たれた巨大な坑の中で、われわれに向けて弾丸を撃ち出すための巨大な砲を鋳造していた光だったのではないかと思っている。その爆発地点の近くでは、続く二度の衝の際にも、いまだ説明のつかない奇妙な模様が見られた。
その嵐がわれわれに襲いかかったのは、いまから六年前のことだ。火星が衝に近づくころ、ジャワのラヴェルが、火星上で巨大な白熱ガスの爆発が起こったという驚くべき情報を天文交流会に打電し、その電線を震わせた。それは十二日の真夜中近くに起こった。彼がただちに用いた分光器は、主に水素から成る燃えるガスの塊が、途方もない速度で地球に向かって動いていることを示していた。この火の噴流は十二時十五分ごろには見えなくなった。彼はそれを「燃えるガスが砲から噴き出すように」、惑星から突然、激しく噴射された巨大な炎の一吹きにたとえた。
まことにふさわしい表現だった。だが翌日の新聞には、『デイリー・テレグラフ』の小さな記事を除いて、この件は何ひとつ載らなかった。そして世界は、人類を脅かした史上最大級の危険のひとつを知らぬまま過ごした。もし私がオッターショウで、著名な天文学者オギルヴィに会っていなかったなら、その噴出のことはまったく耳にしなかったかもしれない。彼はその知らせにひどく興奮しており、感情の高ぶりにまかせて、その夜、赤い惑星を一緒に観察しないかと私を誘った。
その後に起きたすべてにもかかわらず、私は今もなお、その夜の見張りをきわめて鮮明に覚えている。黒く静まり返った天文台。片隅の床に弱い光を投げる、影に包まれたランタン。望遠鏡の時計仕掛けが規則正しく刻む音。屋根に開いた細い裂け目――星屑が筋をなして走る、長方形の深淵。オギルヴィは姿こそ見えないが、物音でそこにいるとわかった。望遠鏡をのぞくと、深い青の円が見え、その視野の中に小さな丸い惑星が浮かんでいた。なんと小さく、明るく、小さく、静かに見えたことか。かすかな横縞を帯び、完全な球よりわずかに扁平だった。だが本当に小さく、銀色に温かく輝く、針の頭ほどの光だった! それは震えているように見えたが、実際には、惑星を視野に保つ時計仕掛けの動きで望遠鏡が振動していたのだった。
見つめていると、その惑星は大きくなったり小さくなったり、近づいたり遠ざかったりするように思えた。だがそれは、単に私の目が疲れていたためだった。われわれから四千万マイル(約六千四百万キロメートル)離れていた――四千万マイルを超える虚無である。物質宇宙の塵が漂う、この空虚の巨大さを実感している者はほとんどいない。
視野の中で火星のそばには、かすかな光点が三つあったのを覚えている。望遠鏡でなければ見えない、無限に遠い三つの星である。そして周囲には、空っぽの宇宙の測り知れぬ闇が広がっていた。凍てつく星明かりの夜の黒さが、どのようなものかはご存じだろう。望遠鏡の中では、それはいっそう深く見える。そしてあまりに遠く小さかったため私には見えなかったが、その信じがたい距離を越えて、私へ向かって、迅速かつ着実に飛び、毎分幾千マイルも近づいてくるものがあった。彼らがわれわれに送り込んだ「もの」、地球にかくも多くの闘争と災厄と死をもたらすはずの「もの」だ。見つめていたその時、私はそれを夢にも思わなかった。地上の誰ひとり、その必中の弾丸を夢にも思わなかった。
その夜にもまた、遠い惑星から別のガスの噴出があった。私はそれを見た。クロノメーターが真夜中を告げた瞬間、縁のあたりに赤い閃光が走り、輪郭がごくわずかに突き出したのだ。私はそれをオギルヴィに告げ、彼が私の場所を代わった。夜は暖かく、私は喉が渇いていたので、暗闇の中をぎこちなく足を伸ばし、手探りしながら、サイフォンの置いてある小卓へ向かった。そのあいだオギルヴィは、こちらへ向かって噴き出すガスの筋を見て声を上げていた。
その夜、最初のものから二十四時間に一秒ほど足りないだけの間隔をおいて、もう一つの見えない弾丸が火星から地球へ向けて旅立った。私は、緑や深紅の斑点が目の前を泳ぐ中、暗闇の小卓に腰かけていたことを覚えている。煙草に火をつける明かりがあればと思っていたが、私が目にしたあの微かな輝きが何を意味し、まもなく何をもたらすのかなど、少しも疑っていなかった。オギルヴィは一時まで観測を続け、それから諦めた。私たちはランタンに火を入れ、彼の家まで歩いた。下方の暗闇の中には、オッターショウとチャートシーがあり、そこに暮らす何百もの人々が安らかに眠っていた。
その夜、彼は火星の状態について思索にふけり、そこに住民がいてわれわれに信号を送っているという俗説を嘲笑した。彼の考えでは、流星群が激しくその惑星に降り注いでいるか、あるいは巨大な火山爆発が進行中なのだろうということだった。隣り合った二つの惑星で、有機的進化が同じ方向に進んだとは考えにくい、と彼は私に指摘した。
「火星に人間めいたものがいる可能性なんて、百万に一つもない」と彼は言った。
その夜と翌夜の真夜中ごろ、何百人もの観測者がその炎を見た。さらにその翌夜も。そして十夜にわたり、毎晩一つずつ炎が見えた。なぜ十発目の後で射撃が止んだのか、地球上の誰も説明を試みていない。発射のガスが火星人に不都合をもたらしたのかもしれない。地球上の強力な望遠鏡では、小さな灰色の揺らめく斑点として見える濃い煙か塵の雲が、火星の澄んだ大気の中に広がり、なじみ深い地表の特徴を覆い隠した。
ついには日刊紙までもがその異変に気づき、火星の火山についての一般向け記事があちこちに現れた。風刺漫画誌『パンチ誌』は、たしか政治漫画でこれをうまく利用していた。そして誰にも疑われぬまま、火星人がわれわれに向けて撃ち出した弾丸は、空虚な宇宙の裂け目を秒速何マイルもの速度で突き進み、時々刻々、日に日に、地球へ近づいていた。今にして思えば、あれほど速い運命が頭上に迫っていたというのに、人々が相変わらずささいな用事にかまけていられたことは、ほとんど信じがたいほど不思議である。当時編集していた挿絵入り新聞のために、マーカムが火星の新しい写真を手に入れて、どれほど得意げだったかを私は覚えている。近ごろの人々は、十九世紀の新聞がどれほど豊富で、どれほど進取の気性に富んでいたかをほとんど実感していない。私自身についていえば、自転車に乗る練習に大いに時間を取られ、文明の進歩に伴う道徳観念の発達の見込みについて論じる一連の論文に忙しかった。
ある夜(その時、最初の弾丸は一千万マイル(約千六百万キロメートル)も離れていなかったはずだ)、私は妻と散歩に出た。星明かりの夜で、私は妻に黄道十二星座を説明し、多くの望遠鏡が向けられていた火星――天頂へ向かって這うように進む明るい光点――を指し示した。暖かい夜だった。帰り道、チャートシーかアイルワースから来たらしい行楽客の一団が、歌い、音楽を奏でながら私たちのそばを通り過ぎた。人々が床に就くころ、家々の上階の窓には明かりがともっていた。遠くの駅からは、列車の入れ替えの音が、鳴り、轟きながら聞こえてきたが、距離のためにほとんど旋律のようにやわらげられていた。妻は、空を背景にした枠組みの中で光る赤、緑、黄の信号灯の鮮やかさを私に示した。すべてが、いかにも安全で静穏に思えた。
II. 落ちる星
そして最初の流れ星の夜が来た。早朝、それはウィンチェスターの上空を東へ、炎の一線となって大気の高いところを駆け抜けるのを見られた。何百人もの人がそれを見て、普通の流れ星だと思ったに違いない。アルビンは、それが緑がかった筋をあとに残し、その筋が数秒間輝いていたと述べている。隕石に関するわが国随一の権威であるデニングは、その最初の出現高度をおよそ九十ないし百マイル(約百四十五〜百六十キロメートル)とした。彼には、それが自分のいる場所から東へ約百マイル(約百六十キロメートル)の地点に落ちたように思えた。
その時刻、私は家にいて書斎で執筆していた。フランス窓はオッターショウの方を向き、ブラインドは上げてあった(当時の私は夜空を見上げるのが好きだったからだ)が、それでも何も見なかった。宇宙空間から地球へ来たものの中で最も奇妙なこの物体は、私がそこに座っているあいだに落ちたに違いない。もし通過時に見上げてさえいれば、私にも見えたはずだった。その飛行を見た者の中には、シューという音を立てて進んだと言う者もいる。私自身は何も聞かなかった。バークシャー、サリー、ミドルセックスの多くの人々がその落下を目にしたに違いないが、せいぜい、また隕石が落ちたのだろうと考えただけだった。その夜、落ちた塊を探そうとした者はいなかったらしい。
だがその翌朝ごく早く、かわいそうなオギルヴィは、その流星を見ており、ホーセル、オッターショウ、ウォーキングのあいだのコモンのどこかに隕石があると確信して、早起きし、それを探しに出かけた。彼は実際にそれを見つけた。夜明けから間もなく、砂採り場から遠くない場所である。投射物の衝撃で巨大な穴が開き、砂と砂利は荒野のあらゆる方向へ激しく吹き飛ばされ、一マイル半(約二・四キロメートル)離れたところからも見えるほどの山を作っていた。東の方ではヒースが燃えており、薄い青い煙が夜明けを背景に立ち上っていた。
「もの」そのものは、下降時に粉々に砕いた一本のモミの木の破片が散らばる中、ほとんど完全に砂に埋もれて横たわっていた。露出している部分は巨大な円筒のように見え、表面は固まり、厚い鱗状の鈍褐色の付着物に覆われて輪郭がぼやけていた。直径はおよそ三十ヤード(約二十七メートル)あった。彼はその塊に近づき、大きさにも驚いたが、形にはさらに驚いた。隕石の多くは、多かれ少なかれ丸みを帯びているものだからである。とはいえ、それは大気中を飛行してきた熱のため、なお近づけないほど熱かった。円筒の内部から聞こえるかすかな動きを、彼は表面の冷却むらによるものだと考えた。その時点では、それが中空であるかもしれないなど、思いもよらなかったのだ。
彼は、その「もの」が自ら作った穴の縁に立ち、その奇妙な外観をじっと見つめていた。とりわけ異様な形と色に驚きつつ、到着の仕方に何らかの意図の痕跡があることを、その時すでにぼんやりと感じていた。早朝は驚くほど静かで、ウィブリッジの方の松林をちょうど越えた太陽は、すでに暖かかった。その朝、鳥の声を聞いた覚えはないと彼は言っていた。風がそよいでいたことも確かになく、聞こえる音といえば、燃え殻めいた円筒の内側からかすかに響く動きだけだった。彼はコモンにひとりきりだった。
すると突然、彼ははっとして、隕石を覆っていた灰色の焼けかす、灰のような付着物の一部が、端の円形の縁から剥がれ落ちているのに気づいた。それは薄片となって落ち、砂の上に降り注いでいた。大きな一片が不意に剥がれ、鋭い音を立てて落ちたので、彼は肝を冷やした。
一分ほどのあいだ、彼はその意味をほとんど理解できなかった。そして熱は猛烈だったにもかかわらず、その「もの」をもっとはっきり見ようとして、塊のそばまで穴の中を降りていった。その時でさえ、物体の冷却で説明できるかもしれないと彼は考えていた。だがその考えを揺るがしたのは、灰が円筒の端からだけ落ちているという事実だった。
そして彼は、円筒の丸い天蓋が、胴体の上でごくゆっくり回転しているのを認めた。あまりに緩慢な動きだったので、五分前には自分の近くにあった黒い印が、いまや円周の反対側にあることに気づいて初めてわかったほどだった。それでもなお、くぐもったこすれ音を聞き、その黒い印が一インチ(約二・五センチメートル)ほどぎくりと進むのを見るまでは、それが何を示しているのかほとんど理解できなかった。その瞬間、真相が閃いた。円筒は人工物だ――中空で――端がねじ式で外れるのだ! 円筒の中の何かが、蓋をねじって開けている!
「なんてことだ!」とオギルヴィは言った。「中に人がいる――何人もいる! 半分焼け死にかけてるんだ! 逃げようとしている!」
その瞬間、彼は素早い思考の跳躍で、その「もの」と火星の閃光を結びつけた。
閉じ込められた生き物のことを思うとあまりに恐ろしく、彼は熱のことも忘れて、回すのを手伝おうと円筒へ近づいた。だが幸い、鈍い放射熱が、まだ赤熱している金属で手を焼く前に彼を押しとどめた。彼はしばらくためらって立ち尽くしたが、やがて向きを変え、穴からよじ登り、ウォーキングへ向かって狂ったように走りだした。その時刻はおそらく六時ごろだったに違いない。彼は荷馬車の御者に会い、事情をわからせようとした。だが彼の語る話も姿もあまりに異様で――帽子は穴の中に落としてきていた――その男はそのまま馬車を走らせていった。ホーセル橋のそばのパブの扉をちょうど開けていた給仕にも、同じように失敗した。その男は彼を脱走した狂人だと思い、酒場の一室に閉じ込めようとして失敗した。それで彼も少し冷静になった。そして庭にいたロンドンの新聞記者ヘンダーソンを見つけると、柵越しに声をかけ、ようやく話を通じさせた。
「ヘンダーソン」と彼は叫んだ。「昨夜の流れ星を見たか?」
「それが?」とヘンダーソンが言った。
「いまホーセル・コモンにあるんだ。」
「なんだって!」とヘンダーソンが言った。「落ちた隕石か! それはいい。」
「だが隕石どころじゃない。円筒なんだ――人工の円筒だぞ、君! しかも中に何かいる。」
ヘンダーソンは鋤を手にしたまま立ち上がった。
「何だって?」と彼は言った。片耳が聞こえなかったのだ。
オギルヴィは自分の見たことをすべて話した。ヘンダーソンは一分ほどかけてそれを理解した。それから鋤を落とし、上着をひっつかみ、道路へ出てきた。二人はすぐにコモンへ急いで戻り、円筒がなお同じ位置に横たわっているのを見つけた。しかし中の音はすでに止み、蓋と円筒本体のあいだには、明るい金属の細い輪が見えていた。縁のあたりでは、空気が細く、しゅうしゅうという音を立てて、入っているのか出ているのかしていた。
二人は耳を澄まし、鱗状に焼けた金属を棒で叩いた。反応がなかったので、中の人間――あるいは人々――は意識を失っているか、死んでいるに違いないと二人とも結論した。
もちろん、二人だけではどうすることもできなかった。慰めと約束の言葉を叫び、助けを求めるため、ふたたび町へ戻っていった。砂にまみれ、興奮し、取り乱した二人が、朝の明るい陽光の中、商店の人々がちょうど雨戸を外し、人々が寝室の窓を開けている小さな通りを駆け上っていく姿は想像に難くない。ヘンダーソンはただちに駅へ入り、ロンドンへ電報で知らせを送ろうとした。新聞記事のおかげで、人々はその考えを受け入れる下地ができていた。
八時までには、数人の少年と失業者たちが、「火星から来た死人」を見ようと、すでにコモンへ向かっていた。
話はそういう形で広まった。私が最初にそれを聞いたのは九時十五分前ごろ、『デイリー・クロニクル』を取りに外へ出た時、新聞配達の少年からだった。当然私は驚き、すぐに外へ出て、オッターショウ橋を渡り、砂採り場へ向かった。
III. ホーセル・コモンにて
円筒の横たわる巨大な穴を取り巻いて、二十人ほどの小さな群衆がいるのを見つけた。その地面に埋まった巨大な塊の外観については、すでに述べた。周囲の芝土と砂利は、突然の爆発にあったかのように焦げていた。おそらく衝突の衝撃で火花が生じたのだろう。ヘンダーソンとオギルヴィはそこにいなかった。差し当たりできることは何もないと悟り、ヘンダーソンの家へ朝食を取りに行ったのだと思う。
穴の縁には四、五人の少年が腰を下ろし、足をぶらぶらさせながら、その巨大な塊に石を投げて遊んでいた――私がやめさせるまでのことだ。私が注意すると、少年たちは見物人の群れの内外で「鬼ごっこ」を始めた。
その中には、自転車乗りが二人、私が時折雇う日雇いの庭師、赤ん坊を抱いた少女、肉屋のグレッグとその幼い息子、そして普段から駅のあたりをうろついている二、三人の怠け者やゴルフのキャディーたちがいた。会話はほとんどなかった。当時、イングランドの一般の人々の天文学的知識は、きわめてぼんやりしたものにすぎなかった。大半の者は、オギルヴィとヘンダーソンが去った時のままの、円筒の大きな卓上のような端を静かに見つめていた。黒焦げの死体の山を期待していた大衆は、この動かぬ塊に失望したのではないかと思う。私がそこにいるあいだにも、去っていく者があり、新たに来る者もあった。私は穴に降り、足の下でかすかな動きを聞いたように思った。蓋は確かに回転を止めていた。
この物体の異様さが私にいくらかでもはっきりわかったのは、こうして近づいてからだった。一見しただけでは、それは横転した馬車や道をふさいだ倒木ほどにも刺激的ではなかった。実際、それほどですらなかった。錆びたガス浮標のように見えた。この「もの」を覆う灰色の鱗が普通の酸化物ではないこと、蓋と円筒の隙間に輝く黄白色の金属が見慣れぬ色合いを持つことを見て取るには、ある程度の科学教育が必要だった。「地球外」という言葉は、見物人の大半には何の意味もなかった。
その時点で私は、この「もの」が火星から来たことは自分の中ではまったく明白だと思っていたが、そこに生き物が入っている可能性は低いと判断していた。ねじの開放は自動式なのかもしれないと考えた。オギルヴィの意見にもかかわらず、私はなお、火星には人間がいると信じていた。私の想像は、中に手稿が入っている可能性、翻訳に生じるかもしれない困難、貨幣や模型が見つかるかどうか、といった方面へ奔った。とはいえ、この考えに確信を持つには、それは少し大きすぎた。私はそれが開けられるのを見たいと焦れた。十一時ごろ、何も起きそうにないので、そうした思いで頭をいっぱいにしながら、メイベリーの自宅へ歩いて戻った。だが抽象的な研究に取りかかるのは難しかった。
午後になると、コモンの様子はすっかり変わっていた。夕刊の早刷りが、巨大な見出しでロンドンを驚かせていたのである。
「火星からのメッセージ受信。」
「ウォーキング発、驚くべき報告。」
などなど。さらに、オギルヴィが天文交流会へ送った電報が、 三王国[訳注:イングランド、スコットランド、アイルランドを指す当時の表現]のあらゆる天文台を騒がせていた。
砂採り場のそばの道路には、ウォーキング駅から来た四輪馬車が六台以上、チョバムからの籠付き二輪馬車が一台、そしていささか堂々とした馬車が一台止まっていた。そのほか、自転車もかなりの山になっていた。加えて、日中の暑さにもかかわらず、ウォーキングやチャートシーから相当数の人々が歩いてきたに違いなく、全体としてかなりの群衆となっていた。その中には派手な装いの婦人も一、二人いた。
ぎらぎらと暑く、空には雲ひとつなく、風もひと息もなかった。影といえば、まばらに立つ数本の松の木が落とすものだけだった。燃えていたヒースは消し止められていたが、オッターショウの方へ続く平地は見渡す限り黒く焦げ、なお垂直に煙の筋を立てていた。チョバム通りの抜け目ない菓子屋が、青リンゴとジンジャービアを手押し車いっぱいに積んで、息子を送り込んでいた。
穴の縁へ行くと、そこには半ダースほどの男たちがいた。ヘンダーソン、オギルヴィ、そして後に王室天文官ステントだと知ることになる背の高い金髪の男、それに鋤やつるはしを扱う数人の作業員たちである。ステントは澄んだ甲高い声で指示を出していた。彼は円筒の上に立っていたが、円筒は今や明らかにかなり冷えていた。彼の顔は真っ赤で汗が流れ、何かが彼を苛立たせているように見えた。
円筒の大部分は掘り出されていたが、下端はなお埋まっていた。穴の縁にいる見物人の中に私を見つけると、オギルヴィは降りてくるよう呼び、荘園領主であるヒルトン卿のところへ行ってくれないかと頼んだ。
増え続ける群衆が、とりわけ少年たちが、発掘作業の重大な妨げになっているのだと彼は言った。簡単な柵を立て、人々を押しとどめる助けが必要だった。彼は、ケースの内部から時折かすかな動きがまだ聞こえるが、作業員たちは蓋を回して外すことに失敗した、と私に話した。手がかりがなかったからである。ケースは途方もなく厚いようで、われわれの聞いたかすかな音は、内部では騒々しい大混乱を意味していた可能性もあった。
私は喜んで彼の頼みに応じた。そうすれば、予定されている囲いの中に入れる特権的な見物人の一人になれるからでもあった。ヒルトン卿の屋敷には彼を見つけられなかったが、ウォータールー発六時の列車でロンドンから戻る予定だと聞かされた。その時すでに五時十五分ごろだったので、私は家に戻って茶を飲み、それから彼を待ち伏せるため駅へ歩いていった。
IV. 円筒が開く
コモンへ戻った時、太陽は沈みかけていた。ウォーキングの方から、まばらな群れが急ぎ足でやって来ており、一、二人は引き返していた。穴の周囲の群衆はさらに増え、レモン色の空を背景に黒く浮かび上がっていた――おそらく二百人ほどだった。声が高まり、穴のあたりで何らかのもみ合いが起こっているようだった。奇妙な想像が私の心をよぎった。近づくにつれ、ステントの声が聞こえた。
「下がれ! 下がれ!」
一人の少年が私の方へ走ってきた。
「動いてるんだ」と彼はすれ違いざまに言った。「ぐるぐる、ぐるぐる外れてる。いやだよ。おれ、家に帰る。」
私は群衆の方へ進んだ。実際には二、三百人ほどの人々が肘で押し合い、もみ合っていたと思う。そこにいた一、二人の婦人も、決しておとなしい方ではなかった。
「穴に落ちたぞ!」と誰かが叫んだ。
「下がれ!」と何人かが言った。
群衆が少し揺れ、私は肘で押し分けながら進んだ。誰もがひどく興奮しているようだった。穴の中から、奇妙なうなり音が聞こえた。
「おい!」とオギルヴィが言った。「この馬鹿どもを押しとどめるのを手伝ってくれ。あの忌々しいものの中に何がいるか、わからないんだぞ!」
私は、ウォーキングの商店員だったと思われる若い男が円筒の上に立ち、穴からよじ登ろうとしているのを見た。群衆に押し込まれたのだ。
円筒の端は、内側からねじられて外されつつあった。光るねじ山が二フィート(約六十センチメートル)近く突き出していた。誰かが私にぶつかり、私は危うくそのねじ山の上に投げ出されそうになった。私は向きを変えた。その時にはねじが外れたに違いない。円筒の蓋が、鳴り響く衝撃音を立てて砂利の上に落ちたからだ。私は背後の人物に肘を突き立て、ふたたびその「もの」の方へ顔を向けた。一瞬、その円形の空洞は完全な黒に見えた。夕日が目に入っていたのだ。
誰もが、人間が出てくると予想していたと思う――おそらく地球人とは少し違うが、本質的には人間である何かを。私もそうだった。しかし目を凝らすと、やがて影の中で何かが動いているのが見えた。灰色がかった波打つ動きが重なり合い、次いで二つの光る円盤――目のようなものが現れた。すると、杖ほどの太さの小さな灰色の蛇に似たものが、のたうつ中央から巻き上がり、空中を私の方へくねった――そしてさらにもう一本。
不意に寒気が私を襲った。背後で女の鋭い悲鳴が上がった。私はなお円筒から目を離さぬまま半ば振り返り、そこから別の触手が突き出してくるのを見ながら、穴の縁から後ずさりし始めた。周囲の人々の顔に浮かんでいた驚きが、恐怖へ変わっていくのが見えた。四方で意味をなさない叫び声が聞こえた。全体が後退しはじめた。商店員がなお穴の縁でもがいているのが見えた。気づくと私はひとりになっており、穴の向こう側の人々が走り去るのが見えた。その中にはステントもいた。私はもう一度円筒を見た。すると制御できない恐怖が私をつかんだ。私は石になったように立ち尽くし、見つめた。
熊ほどの大きさはあるだろう、大きな灰色がかった丸い塊が、円筒からゆっくりと苦しげにせり上がっていた。それが膨れ上がり、光を受けると、濡れた革のように光った。
二つの大きな暗色の目が、じっと私を見つめていた。それらを収めている塊、つまりそのものの頭部は丸く、いわば顔を備えていた。目の下には口があり、唇のない縁が震え、喘ぎ、唾液を垂らしていた。全身が痙攣するように上下し、脈打っていた。細長い触手状の付属肢が円筒の縁をつかみ、別の一本が空中で揺れていた。
生きた火星人を見たことのない者には、その姿の奇怪な恐ろしさはほとんど想像できないだろう。尖った上唇を持つ特異なV字形の口、眉骨の欠如、楔形の下唇の下に顎がないこと、その口の絶え間ない震え、ゴルゴン[訳注:ギリシア神話の怪物で、髪が蛇とされる]めいた触手の束、異様な大気の中で肺が激しく呼吸するさま、地球の重力がより大きいために生じる明らかな重さと苦しげな動き――そして何よりも、巨大な目の途方もない強烈さ――それらは同時に、生々しく、激しく、非人間的で、傷つき、怪物じみていた。油じみた褐色の皮膚にはどこか菌類めいたものがあり、鈍重で慎重な退屈な動作には、言いようもなく不快なものがあった。この最初の遭遇、この最初の一瞥においてすら、私は嫌悪と恐怖に圧倒された。
突然、その怪物は消えた。円筒の縁から転げ落ち、大きな革の塊が落ちるようなどすんという音を立てて、穴の中へ落ちたのだ。そいつが独特の濁った叫び声を上げるのが聞こえ、すぐさまもう一体のそのような生き物が、開口部の深い影の中に黒々と現れた。
私は向きを変え、狂ったように走って、おそらく百ヤード(約九十メートル)先の最初の木立へ向かった。だが斜めによろめきながら走った。これらのものから顔をそむけることができなかったからだ。
若い松とハリエニシダの茂みの中で、私は息を切らして立ち止まり、次の展開を待った。砂採り場の周囲のコモンには人々が点在しており、私と同じく、半ば魅入られた恐怖にとらわれて立ち、これらの生き物を、いや正確には、彼らが横たわる穴の縁に積まれた砂利を見つめていた。すると、あらためて恐怖が込み上げる中、私は穴の縁で丸い黒い物体が上下しているのを見た。落ちた商店員の頭だった。だが熱い西日を背景に、小さな黒い物体として見えていた。やがて彼は肩と膝を持ち上げたが、また滑り戻ったようで、頭だけが見えるようになった。突然彼は消え、かすかな悲鳴が届いたような気がした。一瞬、戻って助けたい衝動に駆られたが、恐怖がそれを押し伏せた。
その時には、すべてがまったく見えなくなっていた。深い穴と、円筒の落下でできた砂の山に隠されていたからだ。チョバムかウォーキングから道路を歩いて来た者がいれば、その光景に仰天したことだろう。百人かそれ以上に減った群衆が、大きく不規則な円を描き、溝の中、茂みの陰、門や生け垣の背後に立ち、互いにほとんど言葉を交わさず、交わしても短く興奮した叫びばかりで、いくつかの砂の山をじっと、じっと見つめている。ジンジャービアの手押し車は、燃える空を背景に黒く、奇妙な漂着物のように立っていた。砂採り場には、置き去りにされた馬車が一列に並び、馬たちは鼻袋から餌を食べるか、地面を前足で掻いていた。
V. 熱線
火星人たちが、自分たちの惑星から地球へ来るのに用いた円筒から這い出すのを一目見て以来、私の行動は一種の魅惑に麻痺させられていた。私は膝までヒースに埋まり、彼らを隠す土盛りを見つめたまま立っていた。私の中では、恐怖と好奇心が戦場となっていた。
穴の方へ戻る勇気はなかったが、その中をのぞき込みたいという激しい欲求を感じていた。そこで私は、大きく弧を描くように歩き始め、何か有利な見晴らしの場所を探しながら、地球への新来者たちを隠している砂の山を絶えず見つめた。一度、タコの腕のような細い黒い鞭が三本、夕日を横切って閃き、すぐに引っ込んだ。その後、細い棒が関節ごとに伸び上がり、その先端には円盤がついていて、よろめくような動きで回転していた。あそこで何が起こっているのだろうか。
見物人の大半は、一、二の群れに集まっていた。一つはウォーキングの方角の小群衆、もう一つはチョバム方面の人だかりだった。明らかに彼らも私と同じ心の葛藤を抱えていた。私の近くにはほとんど人がいなかった。一人の男に近づいた――近所の人だとはわかったが、名前は知らなかった――そして声をかけた。だが、まともな会話をするような時ではほとんどなかった。
「なんて醜い獣どもだ!」と彼は言った。「神さま! なんて醜い獣どもだ!」
彼はそれを何度も繰り返した。
「穴の中に男がいたのを見ましたか?」
私は言った。だが彼はそれには答えなかった。私たちは黙り、しばらく並んで見つめていた。互いの存在に、いくらか慰めを得ていたのだと思う。それから私は、一ヤード(約九十センチメートル)ほど高くなる小さな塚へ位置を移した。やがて彼を探すと、彼はウォーキングの方へ歩いていた。
さらに何かが起きる前に、夕焼けは薄明へと薄れていった。左手の遠く、ウォーキングの方の群衆は増えているように見え、そこからかすかなざわめきが聞こえた。チョバムの方の小さな人だかりは散っていった。穴からは、ほとんど動きの気配がなかった。
人々に勇気を与えたのは、何よりもこのことだった。そしておそらく、ウォーキングから新たに来た者たちも、自信を回復させるのに一役買ったのだろう。いずれにせよ、夕闇が深まるにつれて、砂採り場の方へ向かうゆっくりとした断続的な動きが始まった。その動きは、円筒の周囲の夕方の静けさが破られないままでいるにつれ、勢いを増していくようだった。二人、三人ずつの直立した黒い人影が進み、止まり、見つめ、また進む。その間に薄く不規則な三日月形に広がり、細い角で穴を包囲しようとしていた。私も自分の側から、穴の方へ動き始めた。
やがて、数人の御者やほかの者たちが大胆にも砂採り場へ入っていくのが見え、蹄の音と車輪のきしむ音が聞こえた。リンゴの手押し車を少年が押し去っていくのも見えた。そして穴から三十ヤード(約二十七メートル)以内、ホーセルの方角から進んでくる小さな黒い男たちの一団に気づいた。その先頭の者が白旗を振っていた。
それは代表団だった。急いで相談が行われ、火星人たちは忌まわしい姿にもかかわらず明らかに知的な生き物であるから、合図を掲げて近づき、われわれもまた知的存在であることを示そうと決められたのだ。
ぱたぱた、ぱたぱたと、旗はまず右へ、それから左へ振られた。遠すぎて誰がいるかはわからなかったが、後に私は、オギルヴィ、ステント、ヘンダーソンがほかの人々と共に、この意思疎通の試みに加わっていたことを知った。この小さな一団が進むにつれ、ほとんど完成していた人々の輪の円周を、いわば内側へ引き寄せ、薄暗い黒い人影が何人も、慎重な距離を置いてそれに続いた。
突然、光が閃き、穴から発光する緑がかった煙が、三つのはっきりした噴き上がりとなって現れた。それらは一つずつ、動かぬ大気の中へまっすぐ立ち上った。
この煙――いや、炎と言った方が適切かもしれない――はあまりに明るかったので、頭上の濃い青空も、黒い松の木が点在するチャートシー方面の霞んだ褐色のコモンも、その煙が上がると突然暗くなったように見え、煙が散った後も暗さが残るように思われた。同時に、かすかなシューという音が聞こえ始めた。
穴の向こうには、白旗を先端に立てた小さな人々の楔形の群れが、これらの現象に足止めされて立っていた。黒い地面の上の、小さく直立した黒い形のかたまりである。緑の煙が上がると、彼らの顔は青白い緑に閃き、それが消えるとまた色を失った。それからシューという音はゆっくりと唸りに変わり、長く大きな低い響きとなった。穴から、こぶのような形がゆっくりとせり上がり、そこから光線の幽霊のようなものがちらりと揺らいだ。
たちまち本物の炎の閃光が、明るいぎらつきとなって、散らばった男たちの一団の中で一人から一人へ飛び移った。見えない噴流が彼らにぶつかり、白い炎となって燃え上がるかのようだった。一人一人が突然、一瞬だけ火に変えられたかのようだった。
そして彼ら自身の破滅の光の中で、私は彼らがよろめき、倒れ、後ろにいた者たちが走って逃げ出すのを見た。
私は立ち尽くして見つめていた。それが遠くの小さな群衆の中で、人から人へ飛び移る死であることを、まだ理解していなかった。ただ、何かひどく奇妙なことだと感じていた。ほとんど音もなく、目もくらむ光が閃き、男が真っ逆さまに倒れて動かなくなる。そして見えない熱の槍が彼らの上を通り過ぎると、松の木は燃え上がり、乾いたハリエニシダの茂みは、鈍い一音と共に炎の塊となった。遠くナップヒルの方では、木々や生け垣や木造の建物が突然燃え上がる閃光が見えた。
その燃える死、この見えない避けがたい熱の剣は、速く、着実に旋回していた。触れた茂みが閃くことで、それが自分の方へ来ていると私は悟ったが、あまりの驚愕と茫然自失で身動きできなかった。砂採り場では火の爆ぜる音が聞こえ、馬が突然甲高くいななき、その声は同じく突然途絶えた。次いで、見えないが強烈に熱せられた指が、私と火星人のあいだのヒースをなぞったかのように、砂採り場の向こうの曲線に沿って、黒い地面が煙を上げ、ぱちぱちと音を立てた。左手遠く、ウォーキング駅からの道がコモンへ開けるあたりで、何かが轟音を立てて倒れた。するとただちに、シューという音とうなりは止み、黒いドーム状の物体はゆっくりと穴の中へ沈んで見えなくなった。
すべてはあまりに迅速に起こったので、私は身じろぎもせず、唖然とし、閃光に目を奪われて立ち尽くしていた。もしあの死が完全な円を描いて掃いていたなら、驚きの中にいた私は必ず殺されていただろう。だがそれは通り過ぎ、私を見逃し、私の周囲の夜を突然、暗く見知らぬものにした。
うねるコモンは、いまやほとんど黒に近い暗さに見えた。ただ、初夜の深い青空の下、道筋だけが灰色に青白く横たわっていた。暗く、そして突然、人の気配が消えていた。頭上には星々が集まりはじめ、西の空はなお淡く明るい、ほとんど緑がかった青を保っていた。松の梢とホーセルの屋根は、西の残照を背景に鋭く黒く浮かび上がっていた。火星人と彼らの装置は、落ち着きなく揺れる鏡を支えるあの細い柱を除けば、まったく見えなかった。あちこちの茂みや孤立した木々はなお煙り、赤く光り、ウォーキング駅方面の家々からは、夕方の静止した大気へ炎の尖塔が上がっていた。
それ以外に変わったものは何もなかった。ただ、恐るべき驚愕だけがあった。白旗を掲げた黒い点の小集団は存在から一掃され、夕方の静けさは、私には、ほとんど破られなかったように思えた。
私は、自分がこの暗いコモンに、無力で、守るものもなく、ひとりでいるのだと悟った。突然、外から私の上に落ちてくるもののように――恐怖が来た。
私は努力して向きを変え、ヒースの中をよろめきながら走り出した。
私が感じた恐怖は理にかなった恐れではなく、火星人だけでなく、周囲の薄闇と静けさそのものへの、恐慌的な恐怖だった。それは私から男らしさを奪うほど異常な力を持ち、私は子どものように声もなく泣きながら走った。いったん振り返ってからは、もう後ろを見る勇気がなかった。
私は、奇妙な確信に取りつかれていたのを覚えている。自分は弄ばれているのだ、まもなく安全の縁にたどり着いたその瞬間、この謎めいた死が――光の通過のように速く――円筒の穴から私を追って飛び出し、打ち倒すのだ、と。
VI. チョバム通りの熱線
火星人がどのようにして人間をあれほど素早く、静かに殺すことができるのかは、今なお驚異の的である。多くの者は、彼らが何らかの方法で、ほとんど完全に非伝導性の室内に強烈な熱を発生させるのだと考えている。その強烈な熱を、未知の組成を持つ磨き上げられた放物面鏡によって、選んだ任意の物体へ平行な光束として投射するのだ。灯台の放物面鏡が光の束を投げかけるのとよく似ている。しかし、これらの細部を絶対的に証明した者はいない。方法がどうであれ、問題の本質が熱の束であることは確かだ。可視光ではなく、不可視の熱である。燃えやすいものはそれに触れるやいなや炎と化し、鉛は水のように流れ、鉄は軟らかくなり、ガラスは割れて溶ける。そして水に落ちると、たちまちそれは蒸気となって爆発する。
その夜、穴の周囲では四十人近くが星明かりの下に横たわり、黒焦げになって、見分けもつかぬほど歪んでいた。そして一晩中、ホーセルからメイベリーにかけてのコモンは人影もなく、明るく燃えていた。
虐殺の知らせは、おそらくチョバム、ウォーキング、オッターショウにほぼ同時に届いた。悲劇が起こった時、ウォーキングの店々は閉まり、聞いた話に引き寄せられた多くの人々、店の者たちなどが、ホーセル橋を渡り、生け垣に挟まれた道を進み、ついにはコモンへ出ようとしていた。あなたにも想像できるだろう。一日の仕事を終え、身なりを整えた若者たちが、この珍事を、ほかの珍事と同じように、一緒に歩き、ささやかな恋の駆け引きを楽しむ口実にしている様子を。夕暮れの道に沿って、声のざわめきが流れていたことも思い描けるだろう……。
もちろん、この時点では、ウォーキングの人々の中で円筒が開いたことを知る者はまだほとんどいなかった。もっとも、かわいそうなヘンダーソンは、夕刊紙へ特電を送るため、自転車の使いを郵便局へ走らせていた。
こうした人々が二人、三人と開けた場所へ出ると、興奮して話し合い、砂採り場の上で回転する鏡をのぞき込む小さな人だかりを見つけた。そして新来者たちも、疑いなくすぐその場の興奮に感染した。
代表団が破壊された八時半までには、この場所に三百人以上の群衆がいたかもしれない。火星人にもっと近づこうとして道を離れた者たちを除いてである。警官も三人いた。そのうち一人は騎馬で、ステントの指示のもと、人々を押しとどめ、円筒へ近づかせまいと全力を尽くしていた。群衆となればいつでも騒ぎや悪ふざけの機会としか考えない、より軽率で興奮しやすい者たちからは、野次が飛んでいた。
ステントとオギルヴィは、衝突の可能性を予期して、火星人が姿を現すやいなやホーセルから兵舎へ電報を送り、奇妙な生き物たちを暴力から守るため一個中隊の兵士を求めていた。その後、二人はあの不運な前進を率いるために戻った。彼らの死の様子について、群衆が見た描写は、私自身の印象ときわめてよく一致している。三つの緑の煙、深い唸り音、そして炎の閃光である。
だがその群衆は、私よりもはるかに危ういところで難を逃れた。ヒースの生えた砂の小丘が熱線の下部を遮ったという、その事実だけが彼らを救ったのだ。もし放物面鏡の仰角が数ヤード高かったなら、その話を伝える者は誰ひとり生き残らなかっただろう。彼らは閃光と倒れる男たちを見た。そして見えない手が、薄明の中を彼らに向かって急ぎながら、茂みに火をつけていくかのようだった。次いで、穴からの低い響きをしのぐ笛のような音とともに、光束は彼らの頭上すれすれを振れ、道路沿いに並ぶブナの梢を燃やし、角に最も近い家の煉瓦を裂き、窓を砕き、窓枠に火をつけ、破砕した廃墟となって破風の一部を崩れ落とした。
木々が発火する突然のどすんという音、シューという音、まぶしい光の中で、恐慌に陥った群衆は、しばらくためらうように揺れたらしい。火花と燃える小枝が道に降り始め、葉が一枚一枚、炎の吹き出しのように落ちた。帽子や服に火がついた。するとコモンの方から叫び声が起こった。悲鳴と怒号が上がり、突然、一人の騎馬警官が混乱の中を、両手を頭の上で組んだまま、叫びながら駆け抜けてきた。
「来るわ!」と女が叫び、たちまち誰もが向きを変え、ウォーキングへ戻る道を開こうとして背後の者を押し始めた。彼らは羊の群れのように、目も当てられぬほど無分別に逃げ出したに違いない。高い土手のあいだで道が狭く暗くなるところで群衆は詰まり、必死のもみ合いが起こった。その群衆の全員が逃げおおせたわけではない。少なくとも三人、二人の女と一人の幼い男の子がそこで押し潰され、踏みつけられ、恐怖と闇の中に死ぬまま置き去りにされた。
VII. 私が家にたどり着くまで
私自身についていえば、逃走のことは、木にぶつかり、ヒースにつまずく苦しさ以外、何も覚えていない。周囲には火星人の見えない恐怖が集まっていた。あの容赦ない熱の剣は頭上であちこちへ振り回され、やがて降りかかって私の命を打ち消すように思えた。私は十字路とホーセルのあいだの道に出て、その道を十字路へ向かって走った。
ついに私はそれ以上進めなくなった。感情と逃走の激しさで力尽き、よろめいて道端に倒れた。そこはガス工場のそばで運河に架かる橋の近くだった。私は倒れ、そのまま横たわった。
しばらくそこにいたに違いない。
私は身を起こし、奇妙に困惑していた。しばらくのあいだ、どうしてそこにいるのか、はっきり理解できなかったのかもしれない。恐怖は衣服のように私から落ちていた。帽子はなく、襟は留め具から外れていた。数分前まで、私の前にはただ三つの現実があった。夜と宇宙と自然の巨大さ、自分自身の弱さと苦痛、そして死の接近である。だが今は、何かがひっくり返り、視点が突然変わったかのようだった。一つの精神状態からもう一つへの、感覚できる移行はなかった。私はたちまち、いつもの自分に戻っていた――きちんとした、普通の市民に。静かなコモン、逃走の衝動、立ち上がる炎は、まるで夢の中の出来事のようだった。私は、果たしてあれらは本当に起こったのかと自問した。信じることができなかった。
私は立ち上がり、橋の急な坂を不安定に歩いて上った。頭の中は空白の驚きだった。筋肉も神経も力を吸い尽くされたようだった。おそらく酔ったようによろめいていたのだろう。アーチの向こうから一つの頭が現れ、籠を持った労働者の姿が見えた。そのそばを小さな男の子が走っていた。彼は私にこんばんはと言って通り過ぎた。私は話しかけようと思ったが、しなかった。意味のないつぶやきで挨拶に答え、橋を渡って進んだ。
メイベリーのアーチの上を、白くうねる火明かりに照らされた煙の渦と、明かりのついた窓が長い毛虫のように連なった列車が南へ飛んでいった――ガタン、ガタン、カン、コン、そして去っていた。オリエンタル・テラスと呼ばれる、美しい小さな切妻屋根の並びの一軒の門口で、薄暗い人の集まりが話していた。すべてがあまりに現実で、あまりになじみ深かった。そして私の背後にあるもの! それは狂気じみ、幻想じみていた! そんなことがあるはずがない、と私は自分に言い聞かせた。
おそらく私は、気分の振れが並外れている人間なのだろう。自分の経験がどの程度一般的なのか、私にはわからない。時折、私は自分自身と周囲の世界から奇妙に切り離された感覚に襲われる。すべてを外側から、想像もつかぬほど遠いどこかから、時間の外、空間の外、すべての緊張と悲劇の外から眺めているように思えるのだ。その夜、この感覚は非常に強かった。ここには、私の夢のもう一つの側面があった。
だが問題は、この静けさと、二マイル(約三・二キロメートル)も離れていない向こうで飛び回る素早い死との、空虚なまでの不調和だった。ガス工場からは作業の物音がし、電灯はすべて灯っていた。私は人々の集まりのところで立ち止まった。
「コモンの方はどうなっていますか?」と私は言った。
門のところには男二人と女一人がいた。
「え?」と男の一人が振り返って言った。
「コモンの方はどうなっていますか?」
私は言った。
「あんた、そこに行ってきたんじゃないのか?」と男たちが尋ねた。
「みんなコモンのことでずいぶん馬鹿騒ぎしてるみたいだね」と女が門越しに言った。「いったい何なんだい?」
「火星から来た人間のことを聞いていないんですか?」と私は言った。「火星の生き物のことを。」
「もうたくさんだよ」と門越しの女が言った。「どうもね」そして三人とも笑った。
私は愚かしく、腹立たしく感じた。私は自分の見たことを伝えようとしたが、できなかった。途切れ途切れの私の言葉に、彼らはまた笑った。
「まだこれから、もっと聞くことになりますよ」と私は言い、そのまま家へ向かった。
戸口で妻を驚かせた。私の顔があまりにもやつれていたからだ。私は食堂へ入り、腰を下ろし、ワインを飲み、十分に気持ちをまとめられるようになるとすぐ、見てきたことを彼女に話した。冷たい夕食はすでに出されていたが、私が話しているあいだ、食卓の上に放置されたままだった。
「一つだけは確かだ」と私は、自分が引き起こした恐怖を和らげようとして言った。「あいつらは、私が見たどんな這うものより鈍い。穴を守り、近づく人間を殺すことはできても、外へ出ることはできない……。だが、あの恐ろしさ!」
「やめて、あなた!」と妻は眉を寄せ、私の手に自分の手を置いて言った。
「かわいそうなオギルヴィ!」
私は言った。「彼があそこで死んで横たわっているかもしれないと思うと!」
少なくとも妻は、私の体験を信じがたいものとは思わなかった。彼女の顔が死人のように白くなっているのを見て、私は唐突に話をやめた。
「あの人たち、ここへ来るかもしれないわ」と彼女は何度も言った。
私は彼女にワインを飲むよう勧め、安心させようとした。
「あいつらはほとんど動けない」と私は言った。
私は、火星人が地球に定着することの不可能性についてオギルヴィが話してくれたことをすべて繰り返し、妻と自分自身を慰め始めた。とりわけ私は、重力の困難を強調した。地球表面の重力は、火星表面の三倍である。したがって火星人は、筋力は同じであるにもかかわらず、火星上の三倍の重さになる。自分の身体が鉛の外套になるわけだ。実際、それが一般の見方だった。たとえば翌朝の『タイムズ』も『デイリー・テレグラフ』もその点を強調していた。そして両紙とも、私と同じように、二つの明白な修正要因を見落としていた。
地球の大気には、今ではわかっているように、火星の大気よりはるかに多くの酸素、あるいははるかに少ないアルゴンが含まれている(どちらの言い方を好むにせよ)。この過剰な酸素が火星人に及ぼす活力増進の影響は、体重増加を相殺するのに疑いなく大いに役立った。そして第二に、われわれは皆、火星人の持つ機械的知性が、いざという時には筋肉の努力を不要にできるほどのものであるという事実を見落としていた。
しかし当時の私はこれらの点を考慮しておらず、それゆえ私の推論は侵略者たちの見込みにまったく不利だった。ワインと食事、自分の食卓が与える安心感、そして妻を安心させねばならない必要から、私は知らず知らずのうちに勇気と安心を増していった。
「あいつらは愚かなことをした」と私はワイングラスを指でいじりながら言った。「危険なのは確かだ。だが、それは恐怖で正気を失っているからだろう。おそらく生き物などいないと思っていたのだ――少なくとも、知的な生き物はいないと。」
「最悪の場合には」と私は言った。「穴に砲弾を撃ち込めば、あいつらはみんな死ぬ。」
出来事の激しい興奮が、私の知覚能力を過敏な状態にしていたことは疑いない。私は今でも、その夕食の食卓を並外れて鮮明に覚えている。ピンク色のランプシェードの下から私をのぞき込む、いとしい妻の甘く不安げな顔。白いテーブルクロスと、その上の銀器やガラスの食卓道具――当時は哲学的著述家でさえ、多くの小さな贅沢品を持っていたのだ――私のグラスの中の深紅がかった紫のワイン、それらは写真のように鮮明である。食事の終わり、私は煙草をくわえながらナッツを割り、オギルヴィの無謀を悔やみ、火星人の近視眼的な臆病さを非難していた。
モーリシャスの、品のよいドードーの一羽も、自分の巣で威張りながら、食料となる動物を求める無慈悲な船乗りたちを満載した船の到着について論じていたかもしれない。「明日、私たちでつつき殺してやりましょう、あなた。」
私は知らなかった。だがそれは、これから続く多くの奇妙で恐ろしい日々の前に、私が食べることになる最後の文明的な夕食だった。
VIII. 金曜の夜
あの金曜日に起こった奇妙で驚くべき出来事の中で、私にとって最も異常に思えるのは、われわれの社会秩序における日常的な習慣と、その社会秩序を真っ逆さまに転覆させる一連の出来事の始まりとが、ぴたりとかみ合っていたことである。もし金曜の夜、コンパスを取り、ウォーキングの砂採り場を中心に半径五マイル(約八キロメートル)の円を描いたなら、その外にいた人間のうち、新来者によって感情や習慣を少しでも乱された者は、おそらく一人もいなかっただろう。例外があるとすれば、ステントの親族か、コモンに死んで横たわっていた三、四人の自転車乗りやロンドン人の関係者くらいだ。もちろん、多くの人は円筒のことを聞き、余暇にそれについて話していた。だがそれは、ドイツへの最後通牒がもたらしたであろうような衝撃を与えたわけでは確かになかった。
その夜ロンドンでは、かわいそうなヘンダーソンが送った、砲弾の蓋が徐々にねじれて開いているという電報は、作り話と判断された。彼の夕刊紙は、確認のため彼に電報を打ち、返事を受け取れなかった――彼は殺されていた――ため、号外を印刷しないことに決めた。
五マイルの円の内側でさえ、大多数の人々は動かなかった。私が話しかけた男女の様子はすでに述べた。地域一帯で、人々は夕食や夜食を取っていた。労働者たちは一日の仕事の後に庭仕事をし、子どもたちは寝かしつけられ、若者たちは恋を語らいながら小道をさまよい、学生たちは本に向かっていた。
村の通りではざわめきがあったかもしれない。パブでは新しく支配的な話題となり、あちこちでは使者、あるいは後に起こった出来事の目撃者が興奮の渦を巻き起こし、叫び声や右往左往する足音を生んだかもしれない。だが大部分において、働き、食べ、飲み、眠るという日々の営みは、数え切れない年月そうであったように続いていた――まるで空に火星という惑星など存在しないかのように。ウォーキング駅でも、ホーセルでも、チョバムでも、それは同じだった。
ウォーキングの分岐駅では、遅い時刻まで列車が止まっては出発し、別の列車は側線で入れ替えをし、乗客は降りたり待ったりしており、すべてがごく普通に進んでいた。町から来た少年が、スミスの独占を侵すように、午後のニュースを載せた新聞を売っていた。貨車がぶつかる鋭い音、分岐駅からの機関車の甲高い汽笛が、彼らの「火星から来た人間だ!」という叫び声と入り混じっていた。
九時ごろ、興奮した男たちが信じがたい知らせを携えて駅に入ってきたが、酔っぱらいが引き起こす程度以上の騒ぎにはならなかった。ロンドンへ向かってがたがた進む列車の乗客たちは、車窓の外の暗闇をのぞき込んだが、ホーセルの方角から、まれにちらちらと消えかけの火花が踊り上がり、赤い光と薄い煙の帳が星々を横切って流れているのを見ただけで、ヒースの火事以上に深刻なことが起きているとは思わなかった。異変が感じられたのは、コモンの縁のあたりだけだった。ウォーキング側の端では、半ダースほどのヴィラが燃えていた。三つの村のうちコモン側に面した家々にはすべて明かりがともり、そこの人々は夜明けまで眠らずにいた。
チョバム橋とホーセル橋の両方には、好奇心に満ちた群衆が落ち着きなく居残り、人々は出入りしたが群衆そのものは残った。後にわかったことだが、一、二人の冒険好きな者は暗闇の中へ入り込み、火星人のかなり近くまで這っていった。しかし彼らは二度と戻らなかった。というのも、時折、軍艦の探照灯の光束のような光線がコモンを掃き、熱線がいつでもそれに続ける状態だったからだ。そうしたものを除けば、その広大なコモン一帯は静かで荒れ果て、黒焦げの死体は星の下で一晩中、そして翌日いっぱい、そこに横たわっていた。穴から響く金槌のような音は、多くの人々に聞こえた。
これが金曜の夜の状況である。中心には、古い惑星である地球の皮膚に毒矢のように突き刺さった円筒があった。だが毒はまだほとんど作用していなかった。その周囲には、ところどころ燻る静かなコモンが広がり、あちこちに、ねじれた姿勢で横たわる暗くぼんやりした物体がいくつかあった。ところどころには燃える茂みや木があった。その外側には興奮の縁があり、その縁より遠くへは、炎症はまだ広がっていなかった。世界のほかの場所では、生命の流れはいにしえより流れてきたように、なお流れ続けていた。やがて静脈と動脈を詰まらせ、神経を麻痺させ、脳を破壊する戦争の熱病は、まだ発症していなかった。
一晩中、火星人たちは眠らず、疲れを知らず、準備中の機械に取り組み、叩き、動き回っていた。そして時折、緑がかった白い煙のひと吹きが、星明かりの空へ渦を巻いて立ち上った。
十一時ごろ、一個中隊の兵士がホーセルを通り抜け、コモンの縁に沿って展開し、非常線を形成した。後に第二の中隊がチョバムを通って進軍し、コモンの北側に展開した。インカーマン兵舎の数名の将校はその日の早いうちにコモンに入っており、その一人、エデン少佐は行方不明と報じられた。連隊の大佐はチョバム橋へ来て、真夜中には群衆への聞き取りに忙しかった。軍当局は確かに事態の重大さを認識していた。翌朝の新聞が報じることになったところでは、十一時ごろ、騎兵一個中隊、マキシム機関銃二門、そしてカーディガン連隊の兵士約四百名がオールダーショットを出発した。
真夜中を数秒過ぎたころ、ウォーキングのチャートシー通りにいた群衆は、北西の松林へ空から一つの星が落ちるのを見た。それは緑がかった色をしており、夏の稲妻のような、音のない明るさを生じさせた。これが第二の円筒だった。
IX. 戦闘開始
土曜日は、不安に満ちた一日として私の記憶に刻まれている。だるさに覆われた日でもあった。蒸し暑く、空気は重く、聞くところによれば気圧計は激しく上下していたという。妻はどうにか眠れたが、私はほとんど眠れず、早くに起き出した。朝食前に庭へ出て、耳を澄ませて立っていたが、コモンの方ではヒバリが一羽さえずっているほか、何ひとつ動く気配はなかった。
牛乳配達はいつもどおりやって来た。車のがらがらいう音が聞こえたので、私は脇門へ回って最新の様子を尋ねた。夜のあいだに火星人たちは軍隊に包囲され、大砲も来る見込みだと彼は言った。そのとき、聞き慣れた、心を落ち着かせる音がした。ウォーキングへ向かう列車の走る音だった。
「殺すことにはならないそうですよ」と牛乳配達は言った。「できるかぎり避けるんだとか。」
隣人が庭仕事をしているのが見えたので、しばらく話をしてから、私は朝食をとりに家へ入った。実に何の変哲もない朝だった。隣人は、その日のうちに軍隊が火星人を捕獲するか、破壊できるだろうという考えだった。
「あれだけ近寄りがたくしているのは残念ですね」と彼は言った。「別の惑星でどうやって暮らしているのか、知れたら面白いでしょうに。こちらも一つ二つ、学べることがあるかもしれません。」
彼は垣根まで寄ってきて、ひとつかみのイチゴを差し出した。庭仕事に熱心なだけでなく、気前もよかったのだ。同時に彼は、バイフリート・ゴルフリンクスのあたりの松林が燃えていることを教えてくれた。
「聞くところじゃ」と彼は言った。「あそこにもまた、あの忌々しいやつが落ちたそうですよ。二つ目だとか。とはいえ、一つでも十分でしょうに。何もかも片がつくまでに、保険屋はずいぶん高くつくでしょうな。」
そう言って、彼は実に上機嫌そうに笑った。森はまだ燃えていると言い、煙のもやを指し示した。「松葉と芝土が厚いから、何日も足元が熱いままでしょう」と彼は言い、それから「気の毒なオギルヴィ」の話になると真顔になった。
朝食のあと、仕事をするかわりに、私はコモンの方へ歩いていくことにした。鉄道橋の下で兵士の一団に出くわした。工兵たちだと思う。小さな丸帽をかぶり、汚れた赤い上着の前をはだけ、青いシャツをのぞかせ、黒っぽいズボンとふくらはぎまである靴を履いた男たちだった。彼らは、運河の向こうへは誰も行かせないと言った。橋の方へ道沿いに目をやると、カーディガン隊の兵士が一人、そこで歩哨に立っていた。私はしばらくこの兵士たちと話をした。前の晩に見た火星人の姿を話して聞かせた。彼らの誰も火星人を見ておらず、その姿についてはごく漠然とした考えしか持っていなかったので、私に次々と質問を浴びせた。部隊の移動を誰が命じたのかは知らないと言い、ホース・ガーズで何か意見の食い違いがあったのだろうというのが彼らの見立てだった。普通の工兵は一般兵よりずっと教育があり、起こりうる戦闘の特殊な条件について、なかなか鋭く論じ合っていた。私が熱線のことを説明すると、彼らは互いに議論を始めた。
「遮蔽物の下を這って近づいて、一気に突っ込むんだよ」と一人が言った。
「やめとけ!」と別の一人が言った。「この熱の前で遮蔽なんか何になる? 枝切れごと焼かれちまう! やるべきことは、地面が許すかぎり近づいて、それから塹壕を掘ることだ。」
「塹壕なんかくそくらえだ! おまえはいつでも塹壕、塹壕だな。スニッピー、おまえはウサギに生まれるべきだったんだよ。」
「じゃあ、あいつらには首がないのか?」と三人目が唐突に言った。小柄で、もの思わしげな、浅黒い男で、パイプをふかしていた。
私は自分の説明を繰り返した。
「タコだな」と彼は言った。「俺ならそう呼ぶね。人間をすなどる漁師どころか、今回は魚を相手に戦うってわけだ!」
「あんな獣を殺しても殺人にはならん」と最初の男が言った。
「いっそ砲弾をぶち込んで、さっさと片づけりゃいいじゃねえか」と小柄な浅黒い男が言った。「やつらが何をするか分かったもんじゃない。」
「砲弾はどこにあるんだ?」と最初の男が言った。「時間がない。一気にやるんだ。それが俺の見立てだ。しかも今すぐだ。」
そんなふうに彼らは論じ合った。しばらくして私はその場を離れ、朝刊をできるだけ多く手に入れようと駅へ向かった。
だが、あの長い午前と、それよりさらに長い午後の描写で読者をうんざりさせるつもりはない。私はコモンを一目見ることにも成功しなかった。ホーセルとチョバムの教会塔でさえ、軍当局の管理下に置かれていたからだ。話しかけた兵士たちは何も知らず、将校たちは忙しいうえに口を閉ざしていた。町の人々は軍隊の存在にすっかり安心を取り戻していた。そこで私は、煙草屋のマーシャルから初めて、彼の息子がコモンで死んだ者たちの中にいることを聞いた。兵士たちはホーセル外れの住民に、家に鍵をかけて立ち去らせていた。
二時ごろ昼食に戻ったが、ひどく疲れていた。前にも言ったとおり、その日はひどく暑く、どんよりしていたからだ。気分をさっぱりさせるため、午後に冷たい風呂に入った。四時半ごろ、夕刊を手に入れようと駅へ出かけた。朝刊には、ステント、ヘンダーソン、オギルヴィ、その他の人々の死について、きわめて不正確な記述しか載っていなかったからだ。とはいえ、私の知らないことはほとんどなかった。火星人たちは、身体の一寸たりとも見せなかった。穴の中で忙しく働いているらしく、槌音が聞こえ、ほとんど絶え間なく煙の筋が立ちのぼっていた。どうやら戦いに備えて忙しく準備をしていたのだ。「新たな信号伝達の試みが行われたが、成功しなかった」――新聞は決まり文句のようにそう記していた。ある工兵が私に、長い竿に旗をつけた男が溝の中からやったのだと教えてくれた。火星人たちは、そうした働きかけを、われわれが牛の鳴き声に向ける程度にしか気に留めなかった。
正直に言えば、こうした武装と準備の光景は、私を大いに興奮させた。私の想像力は好戦的になり、侵略者たちを十通りもの劇的なやり方で打ち破ってみせた。戦いや英雄行為を夢見た少年時代の空想が、いくらか戻ってきたのだ。そのときの私には、それは到底公平な戦いとは思えなかった。火星人たちは、あの穴の中でずいぶん無力に見えた。
三時ごろ、チャートシーかアドルストーンの方から、規則正しい間隔で砲声が響き始めた。二つ目の円筒が落ちた、くすぶる松林に砲撃を加えているのだと私は知った。開く前にその物体を破壊しようという望みからだった。しかし、最初の火星人の集団に対して用いる野砲がチョバムに到着したのは、五時ごろになってからのことだった。
夕方六時ごろ、私は妻と夏小屋でお茶を飲みながら、迫りくる戦闘について熱心に話していた。そのとき、コモンの方からくぐもった爆発音が聞こえ、すぐあとに一斉射撃の響きが続いた。その直後、私たちのごく近くで激しいがらがらという破壊音が起こり、地面が揺れた。芝生へ飛び出すと、オリエンタル・カレッジのあたりの木々の梢が煙を上げる赤い炎に包まれ、その横にある小さな教会の塔が崩れ落ちていくのが見えた。モスクの尖塔は消え失せ、カレッジ本館の屋根の線は、まるで百トン砲を撃ち込まれたかのようだった。わが家の煙突の一つが砲弾に当たったかのように裂け、吹き飛び、その一部が瓦の上をがらがらと転がり落ちて、書斎の窓辺の花壇に赤い破片の山を作った。
私と妻は呆然と立ち尽くした。それから私は、カレッジが邪魔にならなくなった今、メイベリー・ヒルの尾根は火星人の熱線の射程に入ったに違いないと悟った。
その瞬間、私は妻の腕をつかみ、有無を言わせず道へ走らせた。それから女中を連れ出し、彼女がしきりに持ち出したがっていた箱は自分で二階へ取りに行くと言った。
「ここにはとてもいられない」と私は言った。その言葉の最中にも、コモンの方では一瞬、射撃が再開された。
「でも、どこへ行くの?」妻は恐怖におびえて言った。
私は困惑しながら考えた。すると、レザヘッドにいる妻の従兄弟たちのことを思い出した。
「レザヘッドだ!」
私は突然の騒音に負けじと叫んだ。
妻は私から目をそらし、坂下を見た。人々が驚いて家々から出てきていた。
「どうやってレザヘッドまで行くの?」と妻が言った。
坂の下では、鉄道橋の下を一群の軽騎兵が駆け抜けるのが見えた。三騎はオリエンタル・カレッジの開いた門を駆け抜け、ほかの二人は下馬して、家から家へ走り始めた。木々の梢から立ちのぼる煙を通して照る太陽は血のように赤く、あらゆるものに見慣れぬ禍々しい光を投げかけていた。
「ここにいろ」と私は言った。「ここなら安全だ」そして私はすぐさまスポッテッド・ドッグへ駆け出した。そこの主人が馬と犬車を持っていることを知っていたからだ。私は走った。というのも、もうすぐこの丘のこちら側にいる者はみな動き出すと分かったからである。主人は店の酒場にいて、家の裏で何が起きているのかまったく気づいていなかった。ひとりの男が私に背を向けて立ち、彼と話していた。
「一ポンドはもらわんと」と宿屋の主人は言った。「それに、動かす者もいないんでね。」
「二ポンド払う」と私は見知らぬ男の肩越しに言った。
「何にだ?」
「真夜中までには返す」と私は言った。
「何だって!」主人は言った。「何をそんなに急ぐんだ? こっちはちょっとした豚を売ってるところなんだ。二ポンドで、しかも返してくれる? 今度は何が起きてるんだ?」
私は家を出なければならないのだと手早く説明し、こうして犬車を確保した。そのときの私には、主人自身が家を離れる必要があるなどということは、ほとんど差し迫った問題には思えなかった。私はその場ですぐ犬車を引き出させ、道へ乗り出した。そして妻と女中にそれを任せると、家へ駆け込み、多少の貴重品、手持ちの銀器などを荷造りした。その間、家の下手のブナの木々が燃え、道沿いの柵が赤く光っていた。そうしている最中に、下馬した軽騎兵の一人が走ってきた。彼は家から家へ、人々に退去を警告して回っていた。私がテーブルクロスに包んだ宝物を引きずって玄関から出てきたとき、彼はちょうど先へ進むところだった。私はその背中へ叫んだ。
「何か知らせは?」
彼は振り向き、私を見つめ、「皿の蓋みたいなものから這い出してきた」といったようなことを怒鳴り、尾根の上の家の門へ走っていった。道路を横切って吹きつけた黒煙の渦が、一瞬彼の姿を隠した。私は隣家の戸口へ走って叩き、自分がすでに知っていることを確かめた。つまり、隣人の妻は彼とともにロンドンへ行き、家には鍵がかけられていたのだ。私は約束どおりもう一度家に入り、女中の箱を取り出し、それを犬車の後部の女中の脇にどさりと置いた。それから手綱をつかみ、妻の横の御者席へ飛び乗った。次の瞬間には煙と騒音を抜け、メイベリー・ヒルの反対側の斜面をオールド・ウォーキングへ向かって勢いよく下っていた。
前方には、静かな陽光の風景が広がっていた。道の両側には麦畑が続き、揺れる看板を掲げたメイベリー・インが見えた。私の前には医者の馬車があった。坂の下で、私は振り返って、去りつつある丘の斜面を見た。赤い炎の筋をはらんだ濃い黒煙が、静かな空へいく筋も立ちのぼり、東の緑の梢に暗い影を投げていた。煙はすでに東西へ遠く広がっていた。東はバイフリートの松林へ、西はウォーキングへと。道には、こちらへ走ってくる人々が点々と見えた。そして今はごくかすかだが、暑く静かな空気を通してはっきりと、しばらくして静まる機関銃のうなりと、断続的な小銃の発砲音が聞こえた。どうやら火星人たちは、熱線の射程内にあるものすべてに火を放っているらしかった。
私は馬車の扱いに熟達しているわけではなく、すぐに馬へ注意を向けねばならなかった。再び振り返ったときには、二つ目の丘が黒煙を隠していた。私は鞭で馬を打ち、手綱を緩め、ウォーキングとセンドが、私たちとあの震える混乱とのあいだに入るまで走らせた。ウォーキングとセンドのあいだで医者に追いつき、追い越した。
X. 嵐の中で
レザヘッドはメイベリー・ヒルからおよそ十二マイル(約十九キロ)ある。パイフォードの先の青々とした牧草地には干し草の香りが漂い、道の両側の生け垣は無数の野バラで甘く華やいでいた。メイベリー・ヒルを下っているあいだに始まった激しい砲撃は、始まったときと同じくらい唐突に止み、夕べはひどく穏やかで静かになった。九時ごろ、私たちは何事もなくレザヘッドに着いた。私は従兄弟たちと夕食をとり、妻を彼らに託しているあいだ、馬には一時間の休息を与えた。
道中、妻は妙に口数が少なく、悪い予感に押しつぶされているようだった。私は、火星人たちはその重さゆえに穴から離れられず、せいぜい少し這い出ることしかできないのだと説いて安心させようとしたが、妻は短い返事をするだけだった。宿屋の主人との約束がなければ、その夜はレザヘッドに残るよう、私に強く求めただろうと思う。そうしていればよかったのだが! 別れ際の妻の顔は、覚えているかぎり、ひどく青白かった。
私自身は、その日一日、熱に浮かされたように興奮していた。文明社会に時折広がる戦争熱にひどく似たものが血に入り込み、心の奥では、その夜メイベリーへ戻らなければならないことを、それほど残念には思っていなかった。むしろ、最後に聞いたあの一斉射撃が、火星から来た侵略者たちの全滅を意味しているのではないかとさえ恐れていた。私の心理状態を最もよく言い表すなら、決着の場に居合わせたかった、ということになる。
戻り始めたのは十一時近くだった。夜は思いがけず暗かった。従兄弟の家の明るい廊下から外へ出た私には、本当に真っ黒に見えた。暑く、重苦しさは昼間と変わらなかった。頭上では雲が速く流れていたが、周囲の茂みは息ひとつ動かなかった。従兄弟の家の使用人が、二つのランプに火を入れてくれた。幸い、道はよく知っていた。妻は戸口の明かりの中に立ち、私が犬車に飛び乗るまで見守っていた。それから唐突に身を翻して中へ入り、従兄弟たちは並んで立ったまま、私の無事を祈ってくれた。
最初のうち、妻の恐怖が伝染したように、私は少し気が沈んでいた。だが、すぐに思考は火星人へ戻っていった。そのとき私は、夕刻の戦闘がどのように進んだのか、まったく知らなかった。衝突を引き起こした事情さえ知らなかった。オッカムを通っているとき――帰り道はセンドとオールド・ウォーキング経由ではなく、そちらを通った――西の地平線に血のように赤い光が見えた。近づくにつれて、それはゆっくりと空へ這い上がっていった。近づきつつある雷雨の雲が、黒と赤の煙の塊とそこに混じり合っていた。
リプリー通りには人影がなく、灯りのついた窓が一つ二つあるほか、村に生きている気配はなかった。だが、パイフォードへ向かう道の角で、私は危うく事故に遭いかけた。そこには一群の人々が私に背を向けて立っていたのだ。通り過ぎても、彼らは私に何も言わなかった。彼らが丘の向こうで起きていることをどれほど知っていたのか、私は知らない。また道中に通り過ぎた沈黙する家々が、安らかに眠っていたのか、見捨てられて空になっていたのか、それとも夜の恐怖に怯え見張っていたのかも分からない。
リプリーからパイフォードを抜けるまではウェイ川の谷にいて、赤い光は見えなかった。パイフォード教会の先の小さな丘を上ると、その光がまた視界に入り、私の周囲の木々が、迫りくる嵐の最初の前触れに震えた。そのとき背後のパイフォード教会から真夜中を告げる鐘が鳴り響き、続いてメイベリー・ヒルの輪郭が、梢や屋根を黒く鋭く、赤い空に浮かび上がらせた。
まさにそれを眺めていると、禍々しい緑の閃光が周囲の道を照らし、アドルストーン方面の遠い森を見せた。手綱がぐいと引かれるのを感じた。流れる雲が、一本の緑の火の糸に貫かれたかのように、その混沌を突然照らし、私の左手の野へ落ちていくのが見えた。三つ目の流星だった!
その出現にすぐ続いて、対照的に目もくらむほど紫色の、集まりつつある嵐の最初の稲妻が躍り出た。雷鳴は頭上でロケットのようにはじけた。馬ははみを噛みしめ、暴走した。
メイベリー・ヒルの麓へ向かって、ほどほどの下り坂が続いており、私たちはそこをがらがらと下っていった。稲妻が始まると、私がかつて見たこともないほどすばやく、次々と閃き続けた。雷鳴は立て続けに重なり、奇妙なぱちぱちという伴奏を伴って、普通の轟く反響というより、巨大な電気機械が作動している音のようだった。明滅する光は目をくらませ、方向感覚を乱し、細かな雹が突風にあおられて坂を下る私の顔を打った。
最初のうち私は目の前の道以外ほとんど見ていなかった。すると突然、メイベリー・ヒルの向こう側の斜面をすばやく下ってくる何かに目を奪われた。初めは濡れた家の屋根かと思ったが、続けざまの閃光が、それがすさまじい速さで転がるように動いていることを示した。それは捉えどころのない幻影だった。戸惑うほどの暗闇が一瞬あり、次に昼のような閃光の中で、丘の尾根近くにある孤児院の赤い塊、松の木々の緑の梢、そしてその不可解な物体が、くっきり、鋭く、明るく浮かび上がった。
そして私は、その「もの」を見た! どう描写すればいいのだろうか。多くの家より高い怪物じみた三脚で、若い松の木々をまたぎ越え、進む先の木々を打ち砕きながら進んでいた。きらめく金属でできた歩行する機関で、今やヒースの上を大股に進んでいる。関節のある鋼鉄の綱が垂れ下がり、その通過が生むがちゃがちゃという騒音が、雷の狂騒に混じっていた。閃光。するとそれは鮮やかに現れ、二本の脚を宙に浮かせて一方へ傾き、次の閃光とともに、ほとんど瞬時に消えてまた現れ、百ヤード(約九十一メートル)も近づいていたように見えた。乳搾り用の腰掛けが傾いたまま、地面を激しく転がされるところを想像できるだろうか。その瞬間瞬間の閃光が与えた印象はそれだった。ただし、乳搾りの腰掛けではなく、三脚台に載った巨大な機械の胴体を思い浮かべてほしい。
そのとき突然、前方の松林の木々が、人がもろい葦を押し分けて進むように左右へ割れた。木々は折れ、勢いよくなぎ倒され、二つ目の巨大な三脚が現れた。まるでこちらへ真っすぐ突進してくるようだった。そして私は、それを迎え撃つように全速力で駆けていたのだ! 二体目の怪物を見た瞬間、私の勇気は完全に崩れた。二度見する余裕もなく、馬の頭を右へ強く引き回した。次の瞬間、犬車は馬の上へ横倒しになり、車軸が大きな音を立てて砕け、私は横へ投げ出されて、浅い水たまりの中へ激しく落ちた。
私はほとんどすぐに這い出し、足をまだ水に浸けたまま、ハリエニシダの茂みの下に身を縮めた。馬は動かず横たわっていた。哀れな獣め、首が折れていたのだ。稲妻の光の中で、ひっくり返った犬車の黒い塊と、まだゆっくり回っている車輪の輪郭が見えた。次の瞬間、巨大な機構は私のそばを大股で通り過ぎ、パイフォードへ向かって丘を上っていった。
近くで見ると、その「もの」は信じられないほど奇妙だった。それは単なる無感覚な機械が勝手に進んでいるのではなかった。たしかに機械ではあった。金属音を響かせる足どり、長くしなやかできらめく触手――その一つは若い松の木をつかんでいた――が奇妙な胴体のまわりで揺れ、がらがら鳴っていた。大股で進みながら道を選び、その頂部に載った真鍮色のフードは、あたかも頭があたりを見回しているように前後左右へ動いていた。胴体の後ろには、巨大な漁師のびくのような白い金属の大きな塊があり、怪物が私のそばを通り過ぎるとき、脚の関節から緑の煙がぷっと噴き出していた。そして一瞬のうちに、それは去っていた。
そのとき私が見たのはそれだけだった。すべて稲妻の明滅のせいでぼんやりしており、目を刺す強い光と濃い黒影の中でのことだった。
通り過ぎるとき、それは雷鳴をかき消すほどの、勝ち誇った耳をつんざく咆哮をあげた――「アロー! アロー!」――そして次の一分には、半マイル(約八百メートル)先で仲間と合流し、野の何かの上にかがみ込んでいた。その野にあるものが、火星から私たちへ撃ち込まれた十個の円筒のうち三つ目であることに、私は疑いを持たない。
数分のあいだ、私は雨と闇の中に身を伏せ、断続的な光に照らされながら、これら金属の怪物たちが遠くで生け垣の上を越えて動き回るのを見ていた。細かな雹が降り始めており、それが強まったり弱まったりするにつれ、彼らの姿はかすみ、また閃光の中にくっきり浮かび上がった。ときおり稲妻が途切れると、夜が彼らをのみ込んだ。
上からは雹に打たれ、下からは水たまりの水に濡れて、私はずぶ濡れだった。あまりの驚愕に心が空白になり、堤をよじ登って乾いた場所へ移ろうとすることも、差し迫った危険について考えることも、しばらくできなかった。
私からそう遠くないところに、木造の小さな一間きりの不法占拠小屋があり、ジャガイモ畑の小区画に囲まれていた。私はようやく足を踏ん張って立ち上がり、身をかがめ、使える遮蔽物はすべて利用しながら、そこへ走った。戸を激しく叩いたが、中に人がいたとしても私の声は届かず、やがて諦めた。そして道の大半で溝を利用し、あの怪物じみた機械たちに見つからずに、メイベリー方面の松林へ這い込むことに成功した。
その覆いに守られながら、私は濡れて震えつつ、自分の家へ向かった。木々のあいだを歩き、小道を探した。森の中は本当に暗かった。稲妻はもうまばらになっており、土砂降りのように降る雹が、重い葉叢の隙間から柱のように落ちていたからだ。
見たものすべての意味を完全に理解していたなら、私はすぐさまバイフリートを回ってストリート・コブハムへ抜け、そこからレザヘッドの妻のもとへ戻っていたはずだ。だがその夜、周囲のものの異様さと、自分の肉体的惨めさが、それを妨げた。私は打撲し、疲れ果て、全身ずぶ濡れで、嵐に耳を聾され、目もくらんでいたのだ。
自分の家へ行こうという漠然とした考えがあり、それだけが私の動機だった。私は木々のあいだをよろめき、溝に落ち、板に膝をぶつけて打ち、最後にはカレッジ・アームズから下ってくる小道へ水を跳ね上げながら出た。水を跳ね上げたと言ったのは、嵐の水が砂を泥の奔流にして丘から押し流していたからだ。闇の中で、一人の男が私にぶつかり、私はよろめいて後ろへ下がった。
彼は恐怖の叫びをあげ、横へ跳び、私が言葉をかけるだけの正気を取り戻す前に走り去った。この場所では嵐の圧力があまりに激しく、丘を登るのは困難を極めた。私は左手の柵にぴったり寄り、その板柵に沿って進んだ。
頂上近くで柔らかいものにつまずき、稲妻の閃光で、足元に黒いブロードクロスの塊と一足の靴が見えた。その男がどう横たわっているのかはっきり見分ける前に、光は過ぎ去った。私は次の閃光を待って、彼の上に立っていた。次の光が来たとき、彼ががっしりした男で、安物だがみすぼらしくはない服を着ているのが分かった。頭は身体の下へ折れ曲がり、ひどい勢いで柵に投げつけられたかのように、柵のすぐそばでくしゃりと潰れて横たわっていた。
それまで死体に触れたことのない者に自然に生じる嫌悪感を押し殺し、私はかがみ込み、心臓を確かめようと彼を仰向けに返した。完全に死んでいた。どうやら首が折れていたらしい。三度目の稲妻が光り、その顔が私に迫った。私は跳ね起きた。それはスポッテッド・ドッグの主人、私が乗り物を借りた相手だった。
私は慎重に彼をまたぎ、丘を登り続けた。警察署とカレッジ・アームズのそばを通って、自分の家へ向かった。丘の斜面では何も燃えていなかったが、コモンの方からはなお赤い光と、ずぶ濡れにする雹に打ち上げられる赤みを帯びた煙のうねりが見えた。閃光で見えるかぎり、周囲の家々はほとんど損傷していなかった。カレッジ・アームズのそばには、道の上に黒い塊が横たわっていた。
メイベリー橋へ向かう道の下手からは人の声と足音が聞こえたが、叫ぶ勇気も、そちらへ行く勇気もなかった。私は掛け金の鍵で家に入り、戸を閉め、鍵をかけ、かんぬきを差し、階段の下までよろめいていって腰を下ろした。私の想像の中は、あの大股に歩く金属の怪物たちと、柵に叩きつけられて潰れた死体でいっぱいだった。
私は階段の下で壁に背をつけ、激しく震えながらうずくまっていた。
XI. 窓辺で
すでに述べたように、私の感情の嵐は、ひとしきり荒れると燃え尽きる癖がある。しばらくして私は、自分が冷たく濡れており、階段の絨毯の上に小さな水たまりがいくつもできていることに気づいた。ほとんど機械的に立ち上がり、食堂へ行ってウイスキーを飲むと、着替えようという気になった。
それを済ませてから、私は二階の書斎へ上がった。なぜそうしたのかは分からない。私の書斎の窓からは、木々と鉄道越しにホーセル・コモンを見渡すことができる。慌ただしく出発した際、この窓は開け放したままだった。廊下は暗く、窓枠の中に収まった光景との対比で、部屋の側面は見通せないほど暗く見えた。私は戸口で立ち止まった。
雷雨は過ぎ去っていた。オリエンタル・カレッジの塔とその周囲の松の木々は消え、はるか遠く、鮮やかな赤い光に照らされて、砂穴のあたりのコモンが見えた。その光を横切って、巨大な黒い形、奇怪で異様なものが、忙しげに行き来していた。
その方角の土地全体が火に包まれているように見えた。広い丘の斜面には小さな炎の舌が無数に点在し、死にゆく嵐の突風に揺れ、身をよじらせ、頭上を流れる雲に赤い反射を投げかけていた。時おり、近くの火災から流れてくる煙のもやが窓を横切り、火星人の姿を隠した。彼らが何をしているのかも、その姿のはっきりした形も、取り組んでいる黒い物体が何であるのかも、私には分からなかった。近くの火そのものも見えなかったが、その反射は書斎の壁や天井の上で踊っていた。空気には、樹脂の焼ける鋭い匂いが漂っていた。
私は音を立てずに戸を閉め、窓へ忍び寄った。そうするにつれて視界が開け、片方にはウォーキング駅周辺の家々まで、もう片方には焼け焦げて黒くなったバイフリートの松林まで見えるようになった。丘の下、鉄道のアーチ近くに光があり、メイベリー通り沿いと駅近くの数軒の家々は燃える廃墟になっていた。鉄道の上の光は、最初私を戸惑わせた。黒い塊と鮮烈な光、その右手には黄色い長方形の列があった。それから私は、それが破壊された列車であり、前部は砕けて燃え、後ろの客車はまだ線路の上にあるのだと悟った。
これら三つの主要な光――家々、列車、そしてチョバム方面で燃える地方――のあいだには、不規則な暗い土地の斑点が広がり、ところどころ、ぼんやり光り煙を上げる地面によって途切れていた。火を点々と置いた黒い広がりは、実に奇妙な光景だった。何よりもそれは、夜の陶器工業地帯を私に思い出させた。最初、人影はまったく見分けられなかったが、私は目を凝らした。後になって、ウォーキング駅の光を背に、黒い人影が何人も線路を次々と急いで渡っていくのが見えた。
そしてこれが、私が何年も安心して暮らしてきた小さな世界だった。この炎の混沌が! この七時間のあいだに何が起きたのか、私はまだ知らなかった。また、あの機械の巨人たちと、円筒から吐き出されるのを見た鈍重な塊との関係も、推測し始めてはいたものの、まだ分からなかった。奇妙に個人的な感情から離れた興味を覚えながら、私は机の椅子を窓へ向け、腰を下ろし、黒くなった地方、とりわけ砂穴のあたりの光の中を行き来している三つの巨大な黒いものを見つめた。
彼らは驚くほど忙しそうだった。私は、それらが何なのか自問し始めた。知能を持った機構なのか? そんなものはありえないと感じた。それとも、それぞれの内部に火星人が座り、人間の脳が身体の中にあってそれを支配するように、操り、指示し、使っているのだろうか。私はそれらを人間の機械と比べ始め、生まれて初めて、装甲艦や蒸気機関が知性ある下等動物にはどう見えるのか、自問し始めた。
嵐の去った空は澄み、燃える大地の煙の向こうで、火星の小さく消えかけた光点が西へ沈みかけていた。そのとき、一人の兵士が私の庭へ入ってきた。柵でわずかにこすれる音が聞こえ、私を襲っていた無気力から身を起こして下を見ると、彼が板柵をよじ登っているのがぼんやり見えた。ほかの人間の姿を見た途端、私の麻痺は去り、私は勢い込んで窓から身を乗り出した。
「しっ!」と私はささやいた。
彼は柵にまたがったまま、不安げに止まった。それから乗り越え、芝生を横切って家の角へ来た。彼は身をかがめ、そっと歩いていた。
「誰だ?」と彼もささやき、窓の下に立って見上げた。
「どこへ行くんだ?」
私は尋ねた。
「神のみぞ知る、だ。」
「隠れようとしているのか?」
「そうだ。」
「家に入れ」と私は言った。
私は下へ降り、戸を開けて彼を入れ、また戸に鍵をかけた。彼の顔は見えなかった。帽子はなく、上着の前は開いていた。
「神よ!」と、私が彼を引き入れると彼は言った。
「何があった?」
私は尋ねた。
「何がなかったと言うんだ?」
暗がりの中で、彼が絶望の身振りをしたのが分かった。「やつらに一掃された――ただ一掃されたんだ」と彼は何度も繰り返した。
彼はほとんど機械的に私について食堂へ入った。
「ウイスキーを飲め」と私は言い、強い一杯を注いだ。
彼はそれを飲んだ。それから突然、テーブルの前に腰を下ろし、腕に頭を埋め、小さな子供のようにすすり泣き始めた。感情が一気にあふれ出したのだ。一方の私は、自分がついさっきまで絶望していたことを妙に忘れ、そばに立って不思議に思っていた。
彼が神経を落ち着けて私の質問に答えられるようになるまで、かなり時間がかかった。答えは混乱し、途切れ途切れだった。彼は砲兵隊の御者で、戦闘に加わったのは七時ごろになってからだという。そのころコモン一帯では射撃が続いており、最初の火星人の一隊は金属の盾に守られながら、二つ目の円筒へ向かってゆっくり這っていると言われていた。
後になって、この盾が三脚の脚でよろめくように立ち上がり、私が見た最初の戦闘機械になった。彼の牽いていた砲は、砂穴を射程に収めるためホーセル近くで砲架から外されていた。そしてその到着こそが戦闘を引き起こしたのだった。前車の砲兵たちが後方へ下がるとき、彼の馬がウサギの穴に足を踏み入れて倒れ、彼は地面のくぼみへ投げ出された。同時に背後で砲が爆発し、弾薬が吹き飛び、あたり一面が火に包まれ、気づくと彼は黒焦げの死んだ男たちと死んだ馬たちの山の下に横たわっていた。
「じっとしていた」と彼は言った。「正気を失うほど怖くて、馬の前半身が俺の上に乗っていた。俺たちは一掃されたんだ。それに臭いが――神よ! 焼けた肉みたいだった! 馬が倒れたとき背中を痛めて、少し楽になるまでそこに横たわっているしかなかった。ほんの一分前までは観兵式みたいだったのに――つまずき、どかん、しゅっ!
「一掃されたんだ!」と彼は言った。
彼は長いあいだ死んだ馬の下に隠れ、コモンの向こうをこっそりのぞいていた。カーディガン隊の兵士たちは散兵隊形で穴へ突撃を試みたが、ただ存在ごと薙ぎ払われただけだった。それから怪物は立ち上がり、わずかに逃げ残った者たちのあいだを、頭のようなフードを、まさに頭巾をかぶった人間の頭のように動かしながら、悠々とコモンを行き来し始めた。腕のようなものが複雑な金属の箱を持っており、その周囲では緑の閃光がきらめき、そこの漏斗から熱線が煙を上げていた。
数分のうちに、兵士の目に見えるかぎり、コモンには生きているものは一つも残らなかった。すでに黒い骨組みになっていなかった茂みや木々は、すべて燃えていた。軽騎兵たちは地面の起伏の向こうの道にいたため、彼には見えなかった。マキシム機関銃の音がしばらくがらがら鳴り、それから静まるのを聞いた。巨人はウォーキング駅とその家々の集まりを最後まで残していた。それから一瞬、熱線が向けられ、町は燃える廃墟の山になった。続いてその「もの」は熱線を止め、砲兵に背を向けて、二つ目の円筒を覆っていたくすぶる松林へよたよた歩き出した。そうするうち、二体目のきらめく巨人が穴の中から組み上がるように立ち上がった。
二体目の怪物が一体目についていった。そこで砲兵は、熱いヒースの灰の上を、ホーセルの方へきわめて慎重に這い始めた。なんとか生きたまま道脇の溝に入り、ウォーキングへ逃げ延びた。そこから彼の話は、叫ぶような断片になった。その場所は通れない状態だったらしい。そこにはまだ何人か生きている者がいたようだが、たいていは取り乱し、多くは火傷や熱傷を負っていた。彼は火に遮られ、火星の巨人の一体が戻ってきたとき、灼けるほど熱い崩れた壁の山のあいだに隠れた。その一体が一人の男を追いかけ、鋼鉄の触手の一本で捕まえ、松の幹に頭を叩きつけるのを見た。ようやく日が暮れてから、砲兵は一気に走り出し、鉄道の土手を越えた。
それ以来、彼は危険から逃れてロンドン方面へ出ようと、メイベリーへ向かってこそこそ進んできた。人々は塹壕や地下室に隠れ、生き残った者の多くはウォーキング村やセンドへ逃げていた。彼は激しい渇きに苦しんでいたが、鉄道アーチの近くで水道本管の一つが壊れ、泉のように道へ水が湧き出しているのを見つけたという。
これが、私が彼から少しずつ聞き出した話だった。話すうちに、また自分の見たものを私に分からせようとするうちに、彼は落ち着いていった。話の早い段階で、正午から何も食べていないと彼が言ったので、私は食料庫で羊肉とパンを見つけて部屋へ持ってきた。火星人の注意を引くのを恐れてランプは灯さず、時おり私たちの手がパンや肉の上で触れ合った。彼が話しているあいだ、周囲のものが闇の中からおぼろに浮かび上がり、窓の外の踏み荒らされた茂みや折れたバラの木がはっきりしてきた。多くの男たちか動物たちが芝生を駆け抜けたようだった。彼の顔が見えるようになった。黒く汚れ、やつれていた。疑いなく、私の顔も同じだったろう。
食べ終えると、私たちはそっと二階の書斎へ行き、私は再び開いた窓の外を見た。一夜のうちに、谷は灰の谷になっていた。火は今や小さくなっていた。炎のあったところには煙の筋が立っている。しかし夜が隠していた、砕かれ内側を焼き抜かれた家々の無数の廃墟と、吹き飛ばされ黒く焦げた木々が、情け容赦ない夜明けの光の中で、痩せこけ恐ろしい姿をさらしていた。それでもところどころ、運よく難を逃れたものがあった。ここには白い鉄道信号、あそこには温室の端が、瓦礫の中で白く新鮮に見えた。戦争の歴史の中で、これほど無差別で、これほど全面的な破壊はかつてなかった。そして東の明るさを受けて輝きながら、三体の金属の巨人が穴の周囲に立ち、そのフードを回転させ、まるで自分たちが生み出した荒廃を見渡しているかのようだった。
穴は広げられたように見え、時おり鮮やかな緑の蒸気がそこから噴き上がり、明るくなりつつある夜明けへ向かって流れた。流れ上がり、渦を巻き、裂け、消えた。
その向こうには、チョバムのあたりに炎の柱が立っていた。それらは夜明けの最初の光に触れ、血走った煙の柱へ変わっていった。
XII. 私が見たウィブリッジとシェッパートンの破壊
夜明けが明るくなるにつれ、私たちは火星人を見張っていた窓から離れ、非常に静かに階下へ降りた。
砲兵は、この家にとどまるべきではないという私の考えに同意した。彼はロンドン方面へ向かい、そこから自分の砲兵中隊――騎馬砲兵第十二中隊――に合流するつもりだと言った。私の計画はすぐにレザヘッドへ戻ることだった。火星人の力にはそれほどまでに強い衝撃を受けていたので、妻をニューヘイブンへ連れていき、そのまま一緒に国外へ出る決心をしていた。というのも、あのような生き物が破壊されるまでには、ロンドン周辺一帯が必然的に悲惨な戦いの舞台になることを、私はすでにはっきり理解していたからだ。
しかし私たちとレザヘッドのあいだには、守護する巨人たちを伴った三つ目の円筒があった。私ひとりであれば、危険を承知で野を横切っただろうと思う。だが砲兵は私を思いとどまらせた。「まともな奥さんにしてやる親切じゃありませんよ」と彼は言った。「未亡人にするなんて」結局私は彼と一緒に、森に身を隠しながら北へ進み、ストリート・コブハムまで行ってから別れることに同意した。そこから私はエプソムを大きく迂回してレザヘッドへ向かうつもりだった。
私はすぐ出発するつもりだったが、連れは実戦を経験していたので、そうするより賢明だった。彼は私に家じゅうを探させ、水筒を見つけさせると、それにウイスキーを満たした。そして使えるポケットにはすべてビスケットの包みと肉の薄切りを詰め込んだ。それから私たちは家を忍び出て、前夜私が来た粗末な道をできるだけ速く走り下りた。家々は見捨てられているようだった。道には、熱線に撃たれて死んだ三つの黒焦げの死体が、寄り添うように横たわっていた。ところどころに、人々が落としていったもの――時計、片方の靴、銀の匙、そうした哀れな貴重品――が転がっていた。郵便局へ向かって曲がる角には、箱や家具を積んだ小さな荷車が馬もなく、壊れた車輪の上に傾いていた。金庫箱は慌ててこじ開けられ、瓦礫の下に投げ捨てられていた。
孤児院の門番小屋はまだ燃えていたが、それを除けば、このあたりの家々はさほど大きな被害を受けていなかった。熱線は煙突の頂部をかすめて通り過ぎていた。しかし私たち以外、メイベリー・ヒルには生きた人間がいるようには見えなかった。住民の大半は、おそらくオールド・ウォーキングの道――私がレザヘッドへ向かったとき通った道――を通って逃げたか、隠れたのだろう。
私たちは小道を下り、前夜の雹に濡れそぼった黒衣の男の死体のそばを通って、丘の麓で森へ入った。そこを鉄道へ向かって押し進んだが、人には誰ひとり会わなかった。線路の向こうの森は、傷だらけで黒焦げになった森の廃墟でしかなかった。木々の大半は倒れていたが、一部はまだ立っていた。緑のかわりに暗褐色の葉をまとった、陰鬱な灰色の幹だった。
私たちの側では、火は近くの木々を焦がしただけで、根を下ろすことはできなかった。ある場所では、土曜日に木こりたちが作業していた。切り倒され、切り揃えられたばかりの木々が空き地に横たわり、製材機とそのエンジンのそばにはおがくずの山があった。すぐ近くには仮小屋があり、無人だった。この朝は風ひとつなく、すべてが奇妙なほど静かだった。鳥さえ鳴かず、急いで進むあいだ、私と砲兵はささやき声で話し、時おり肩越しに振り返った。一度か二度、立ち止まって耳を澄ませた。
しばらくして道へ近づくと、蹄の音が聞こえ、木の幹越しに三人の騎兵がウォーキングへ向かってゆっくり進んでくるのが見えた。私たちは呼びかけ、彼らは止まった。そのあいだに私たちは急いでそちらへ向かった。一人の中尉と第八軽騎兵の二人の兵卒で、測量器のような台を持っていた。砲兵はそれがヘリオグラフ[訳注:太陽光を鏡で反射して信号を送る通信装置]だと教えてくれた。
「今朝こちらへ来る人間を見たのは君たちが初めてだ」と中尉は言った。「何が起きている?」
声も顔も切迫していた。後ろの兵たちは好奇心に満ちて見つめていた。砲兵は土手から道へ飛び降り、敬礼した。
「昨夜、砲が破壊されました、閣下。隠れておりました。中隊へ戻ろうとしております、閣下。この道を半マイル(約八百メートル)ほど行けば、火星人が見えると思います。」
「いったいどんなやつらだ?」と中尉が尋ねた。
「装甲をまとった巨人です、閣下。高さ百フィート(約三十メートル)。三本脚で、胴体はアルミみたいで、フードに入ったひどく大きな頭がついております、閣下。」
「馬鹿な!」と中尉は言った。「何をふざけたことを!」
「ご覧になります、閣下。やつらは一種の箱を持っておりまして、火を撃ち出し、当たると即死です。」
「何を言っている――大砲か?」
「違います、閣下」そして砲兵は熱線について生々しく語り始めた。途中で中尉は彼を遮り、私を見上げた。私はまだ道脇の土手に立っていた。
「完全に本当です」と私は言った。
「よし」と中尉は言った。「それなら私も見てくるのが任務だろう。いいか」――砲兵に向かって――「我々はここで住民を家から退去させる任務についている。君は先へ行ってマーヴィン准将に出頭し、知っていることをすべて報告した方がいい。准将はウィブリッジにいる。道は分かるか?」
「分かります」と私は言った。すると彼は馬を再び南へ向けた。
「半マイルと言ったな?」と彼は言った。
「せいぜいそのくらいです」と私は答え、南の木々の梢越しを指さした。彼は礼を言って馬を進め、私たちはその後彼らを見ることはなかった。
さらに先へ進むと、道で三人の女と二人の子供が、労働者の小屋から荷物を運び出しているのに出会った。彼女たちは小さな手押し車を手に入れ、汚らしい包みや粗末な家具を積み上げていた。あまりにも懸命に働いていたので、通り過ぎる私たちと話をする余裕はなかった。
バイフリート駅のあたりで松林を抜けると、朝の陽光の下に、静かで平和な田園が広がっていた。そこは熱線の射程からはるかに外れており、いくつかの家が無言のまま見捨てられていること、ほかの家で荷造りの動きがあること、そして鉄道橋の上に一団の兵士が立ってウォーキング方面の線路を見下ろしていることさえなければ、その日はどこにでもある日曜日とそっくりに見えただろう。
何台かの農業荷馬車や荷車が、アドルストーンへ向かう道をきしませながら進んでいた。すると突然、畑の門越しに、平らな牧草地の向こう、六門の十二ポンド砲が等間隔に整然と並び、ウォーキングの方を向いているのが見えた。砲手たちは砲のそばに立って待ち、弾薬車は実務的な距離を置いていた。兵たちは、まるで閲兵を受けているかのように立っていた。
「いいぞ!」と私は言った。「少なくとも、一発はまともに撃てる。」
砲兵は門のところでためらった。
「私は先へ行きます」と彼は言った。
ウィブリッジへさらに進み、橋を越えたところでは、白い作業服を着た男たちが何人も長い土塁を築いており、その後ろにはさらに大砲があった。
「どのみち、稲妻に弓矢で立ち向かうようなものですよ」と砲兵は言った。「あいつらの火の光線をまだ見ていないんです。」
積極的に作業していない将校たちは立ったまま南西の木々の梢越しを見つめ、掘っている兵士たちも時おり手を止め、同じ方角を見つめていた。
バイフリートは混乱の中にあった。人々は荷造りし、二十人ほどの軽騎兵が、下馬している者も騎乗している者もいて、彼らを追い立てていた。白い円の中に十字の印をつけた黒い政府の荷車が三、四台あり、ほかの車両に混じって古い乗合馬車も村の通りで荷を積まれていた。数十人の人々がいて、その多くは日曜日らしく、よそ行きの服を着ていた。兵士たちは彼らに状況の重大さを理解させるのにひどく苦労していた。私たちは、巨大な箱と、ランの植木鉢を二十ほど抱えたしなびた老人が、それらを置いていけと言う伍長に腹を立てて抗議しているのを見た。私は立ち止まり、彼の腕をつかんだ。
「あちらに何がいるか知っているのか?」
私はそう言って、火星人を隠している松の梢を指さした。
「え?」と彼は振り向いた。「こいつらは値打ちもんだって説明してたんだ。」
「死だ!」
私は叫んだ。「死が来ている! 死だ!」そして彼がそれを理解できるなら理解するがいいと思い、その場に残して砲兵のあとを急いだ。角で振り返ると、兵士は老人を離れており、老人はまだ箱のそばに立ち、その蓋の上にランの鉢を置いたまま、木々の向こうをぼんやり見つめていた。
ウィブリッジでは、司令部がどこに置かれているのか、誰も教えてくれなかった。町全体が、私がこれまでどの町でも見たことのないほどの混乱に陥っていた。荷車、馬車、あらゆる場所にあり、驚くほど雑多な乗り物と馬がひしめいていた。ゴルフやボートの服装をした品のよい住民たち、きれいに着飾った妻たちが荷造りをし、川辺ののらくら者たちは精力的に手伝い、子供たちは興奮し、日曜の経験としてはこの驚くべき変化に大いに喜んでいる者が多かった。その真っただ中で、立派な牧師は非常に勇敢にも早朝の聖餐式を執り行っており、その鐘が興奮の上にがらんがらんと鳴り響いていた。
私と砲兵は水飲み場の段に腰を下ろし、持ってきたものでまずまずの食事をした。兵士の巡回隊――ここではもはや軽騎兵ではなく、白服の擲弾兵だった――が、人々に、今すぐ移動するか、砲撃が始まったらただちに地下室へ避難するよう警告していた。鉄道橋を渡るとき、駅の中と周囲に群衆が増えつつあり、人であふれるホームには箱や荷物が積み上げられているのが見えた。通常の交通は、チャートシーへ兵員と大砲を通すために停止されていたのだと思う。後に聞いたところでは、遅い時間に運行された臨時列車の席をめぐって激しい争いが起きたという。
私たちは正午までウィブリッジにとどまり、その時刻にはシェッパートン閘門近く、ウェイ川とテムズ川が合流する場所にいた。時間の一部は、二人の老婦人が小さな荷車に荷造りするのを手伝うのに費やした。ウェイ川は三つの河口を持ち、この地点では船を借りることができ、川を渡る渡しもあった。シェッパートン側には芝生のある宿屋があり、その向こうにはシェッパートン教会の塔――今は尖塔に建て替えられている――が木々の上にそびえていた。
ここで私たちは、興奮して騒がしい避難民の群れに出会った。まだ逃走は恐慌にまでは至っていなかったが、行き来するすべての船で渡せる人数をすでにはるかに超えていた。人々は重い荷物を背負って息を切らしながらやって来た。ある夫婦などは、小さな離れ小屋の戸を二人で担ぎ、その上に家財道具を積んでいた。一人の男は、シェッパートン駅から逃げようと思っていると私たちに言った。
多くの叫び声があり、冗談を言っている男さえいた。ここにいる人々の考えでは、火星人はただ恐るべき人間のような存在で、町を攻撃して略奪するかもしれないが、最後には必ず滅ぼされるものらしかった。時おり人々は不安げにウェイ川の向こう、チャートシー方面の牧草地をちらちら見たが、そちらは何もかも静かだった。
テムズ川の向こう岸では、船の着く場所を除けばすべてが静かで、サリー側とは鮮やかな対照を成していた。船から降りた人々は小道をどしどし歩いて去っていった。大きな渡し船はちょうど一往復してきたところだった。宿屋の芝生には三、四人の兵士が立ち、避難民を見つめたりからかったりしていたが、手助けしようとはしなかった。宿屋は閉まっていた。いまや禁酒時間内だったからだ。
「あれは何だ?」と船頭が叫び、私の近くの男が吠え立てる犬に「黙れ、この馬鹿!」と言った。すると、その音がまた聞こえた。今度はチャートシーの方向からだった。くぐもったどんという音――大砲の音だった。
戦闘が始まった。ほとんどすぐに、右手の川向こう、木々に隠れて見えない砲台が、その合唱に加わり、次々と激しく撃ち始めた。女が悲鳴を上げた。突然始まった戦闘の気配に、誰もがその場で固まった。私たちのすぐ近くでありながら、見えない戦いだった。見えるものといえば、平らな牧草地、ほとんど気に留めず草を食む牛たち、暖かな陽光の中で動かぬ銀色の剪定柳だけだった。
「兵隊さんが止めてくれるわ」と私のそばの女が、疑わしげに言った。木々の梢の上にかすみが立ちのぼった。
すると突然、川上遠くに煙が勢いよく上がるのが見えた。空へ跳ね上がって漂う煙の一吹きだった。たちまち足元の地面が揺れ、重い爆発が空気を震わせ、近くの家々の窓を二、三枚砕き、私たちを呆然とさせた。
「来たぞ!」青いジャージの男が叫んだ。「あそこだ! 見えるか? あそこだ!」
すばやく、次々に、一、二、三、四体の装甲した火星人が、チャートシーへ広がる平らな牧草地の向こう、小さな木々の上のはるか遠くに姿を現し、川へ向かって急ぎ足で大股に進んできた。初めのうち、それらはフードをかぶった小さな影のようで、揺れるような動きで、飛ぶ鳥のように速く進んでいた。
それから五体目が、斜めにこちらへ向かって進んできた。その装甲の身体は太陽を受けてきらめき、砲へ向かってすばやく前進するにつれ、近づくほどに急速に大きくなっていった。最も左にいる一体、つまり最も遠い一体が、巨大な箱を高々と空中で振りかざした。そして、私がすでに金曜日の夜に見た、幽霊じみた恐るべき熱線がチャートシーへ向かって放たれ、町を打った。
この奇妙で、すばやく、恐ろしい生き物たちを見たとき、水際の群衆は一瞬、恐怖に打たれて凍りついたように私には見えた。叫びも怒号もなく、沈黙があった。それから、しわがれたざわめきと足の動き――水の中での跳ね音。肩に旅行鞄を担いだ男が、恐怖のあまりそれを下ろすこともできず、振り向きざま荷物の角で私を殴り、私はよろめいた。女が手で私を押しのけ、私のそばを駆け抜けた。私は人の流れに合わせて向きを変えたが、考えることもできないほど恐怖に呑まれてはいなかった。私の頭の中には恐るべき熱線があった。水の下へ潜るのだ! それだ!
「水に潜れ!」
私は叫んだが、誰も耳を貸さなかった。
私は再び向き直り、近づいてくる火星人へ向かって駆け出した。砂利の岸をまっすぐ駆け下り、頭から水へ飛び込んだ。ほかの者たちも同じようにした。引き返そうとしていた船いっぱいの人々が、私が駆け抜けるそばで次々と飛び降りた。足元の石は泥をかぶって滑りやすく、川の水は低かったので、二十フィート(約六メートル)ほど走っても水は腰まで届くかどうかだった。それから、火星人が頭上にそびえ、二百ヤード(約百八十メートル)ほど先まで迫ったとき、私は水面の下へ身を投げた。船の人々が川へ飛び込む水音は、私の耳には雷鳴のように響いた。人々は川の両岸に慌ただしく上陸していた。だが火星の機械は、その瞬間、右往左往する人々に、男が足で蹴った蟻塚の中の混乱に向ける程度の注意さえ払わなかった。半ば窒息しながら頭を水面上に上げると、火星人のフードは、川向こうでまだ砲撃している砲台へ向いていた。そして前進しながら、熱線の発生装置に違いないものを揺り下ろした。
次の瞬間、それは岸に乗り上げ、一歩で川の半ばまで渡っていた。最前脚の膝が向こう岸で曲がり、次の瞬間にはシェッパートン村の近くで再び全高へ身を起こした。するとすぐ、右岸の誰にも知られずその村の外れに隠されていた六門の砲が、同時に火を噴いた。突然の近い衝撃、最初の音にほとんど重なって最後の音が来るその震動に、私の心臓は跳ね上がった。最初の砲弾がフードの上六ヤード(約五・五メートル)で炸裂したとき、怪物はすでに熱線を生み出す箱を持ち上げていた。
私は驚きの叫びを上げた。ほかの四体の火星の怪物については見もせず、考えもしなかった。私の注意は、すぐ近くで起きた出来事に釘づけだった。フードが受けるために――しかし避けるには間に合わず――回ったその瞬間、ほかの二発の砲弾が胴体の近くの空中で同時に炸裂し、四発目の砲弾が到達した。
砲弾はその「もの」の顔面でまともに炸裂した。フードは膨れ、閃き、赤い肉ときらめく金属のぼろぼろの破片となって、十数片に吹き飛ばされた。
「命中だ!」私は叫んだ。悲鳴とも歓声ともつかない声だった。
周囲の水中にいる人々からも応える叫びが聞こえた。その瞬間の歓喜で、私は水から飛び上がれそうだった。
首を落とされた巨像は、酔った巨人のようによろめいた。だが倒れなかった。奇跡的に均衡を取り戻し、もはや足元に気を配ることもなく、熱線を発射する装置を硬直したまま掲げて、シェッパートンへ向かってすばやくよろめき進んだ。生きた知性、フードの中の火星人は殺され、四方へ飛び散っていた。そしてその「もの」は今や、破滅へ向かって回転する、ただの精巧な金属装置にすぎなかった。操縦できないまま、一直線に突き進んだ。シェッパートン教会の塔にぶつかり、破城槌が当たったかのようにそれを打ち砕き、脇へそれ、めちゃくちゃに進んで、私の視界の外、川の中へすさまじい力で崩れ落ちた。
激しい爆発が空気を震わせ、水、蒸気、泥、砕けた金属が噴水のように空高く噴き上がった。熱線の装置が水に触れた瞬間、その水はただちに蒸気へと変わっていた。次の瞬間、泥の津波のような、だがほとんど火傷するほど熱い巨大な波が、上流の曲がり角を回って押し寄せた。人々が岸へ向かってもがくのが見え、火星人の崩壊が生む煮え立つ音と轟音の向こうに、彼らの悲鳴や叫びがかすかに聞こえた。
しばらくのあいだ、私は熱さにも気づかず、自己保存の明白な必要も忘れていた。黒衣の男を押しのけ、荒れ狂う水をかき分けながら、曲がり角の向こうが見えるところまで進んだ。半ダースほどの無人の船が、波の混乱の上であてもなく揺れていた。倒れた火星人が下流に見えた。川を横切るように横たわり、その大部分は水没していた。
濃い蒸気の雲が残骸から噴き出し、激しく渦巻く蒸気の切れ間から、巨大な脚が水をかき回し、泥と泡のしぶきと飛沫を空中へ跳ね上げるのが、断続的におぼろに見えた。触手は生きた腕のように揺れ、打ちつけていた。その動きにどうしようもない無目的さがなければ、まるで負傷した何かが波の中で命を守ろうともがいているようだった。機械からは、赤褐色の液体が莫大な量、騒々しい噴流となって噴き上がっていた。
この死の痙攣から私の注意をそらしたのは、工業都市でサイレンと呼ばれるもののような、激しい叫び声だった。曳舟道の近くで膝まで水に浸かった男が、私には聞こえない声で叫び、指さした。振り返ると、ほかの火星人たちがチャートシーの方向から川岸を大股に進んでくるのが見えた。シェッパートンの砲は今度は無駄に火を噴いた。
そこで私はすぐ水中へ潜り、動くことが苦痛になるまで息を止め、できるかぎり長く水面下を苦しみながら必死に前へ進んだ。周囲の水は荒れ狂い、急速に熱くなっていった。
一瞬息をするために頭を上げ、髪と水を目から払いのけると、蒸気が渦巻く白い霧となって立ちのぼり、最初は火星人たちを完全に隠していた。騒音は耳を聾するほどだった。それから霧に拡大された灰色の巨大な姿が、おぼろに見えた。彼らは私のそばを通り過ぎ、二体が泡立ち荒れ狂う仲間の廃墟の上にかがみ込んでいた。
三体目と四体目は水の中でそのそばに立っており、一体はおそらく私から二百ヤード(約百八十メートル)ほど、もう一体はラレハムの方にいた。熱線の発生装置は高く揺れ、しゅうしゅう鳴る光線があちらこちらへ打ち下ろされた。
空気は音で満ちていた。耳を聾し、混乱させる騒音の衝突だった。火星人の鳴らすけたたましい轟音、倒壊する家々の破裂音、木々、柵、小屋が炎に変わるどすんという音、そして火のぱちぱちという音とうなり。濃い黒煙が川から立つ蒸気と混じり合うために跳ね上がり、熱線がウィブリッジの上を行き来するたび、その衝突点には白熱した閃光が現れ、すぐに煙をまとった禍々しい炎の踊りに取って代わった。近くの家々はまだ無傷で立ち、運命を待っていた。背後で火が行き来する中、蒸気の中に影のように薄く青ざめていた。
おそらく一瞬、私はほとんど沸騰する水に胸まで浸かって立ち尽くし、自分の状況に呆然とし、逃げる望みを失っていた。悪臭と蒸気の中で、私と一緒に川にいた人々が、葦のあいだを水から這い上がるのが見えた。人間の進む前から草むらを急ぐ小さな蛙のように、また曳舟道の上で完全な恐慌に陥って右往左往していた。
そのとき突然、熱線の白い閃光が私の方へ跳ね寄ってきた。家々はその接触で溶け崩れ、炎を噴き出した。木々は轟音とともに火へ変わった。光線は曳舟道を上下にちらつき、右往左往して逃げる人々を舐め取るように消し、水際へ降りてきた。私が立っているところから五十ヤード(約四十六メートル)もなかった。それは川を横切ってシェッパートンへ向かい、その軌跡の水は蒸気を冠した煮え立つ腫れ跡のように盛り上がった。私は岸へ向いた。
次の瞬間、沸点に近い巨大な波が私に襲いかかった。私は声を上げて叫び、火傷を負い、半ば目が見えず、苦痛にあえぎながら、跳ねる、しゅうしゅう鳴る水をかき分けて岸へよろめいた。もし足を踏み外していたら、それで終わりだった。私は火星人たちの目の前で、ウェイ川とテムズ川の角を示すように突き出た広く裸の砂利の州へ、どうしようもなく倒れ込んだ。死以外、何も予想していなかった。
ぼんやりとした記憶がある。火星人の足が、私の頭から二十ヤード(約十八メートル)ほどのところへ下り、ゆるい砂利にまっすぐ突き刺さり、それをあちらこちらへ巻き上げ、また持ち上がったこと。長い待機。そして、四体が仲間の残骸を間に担ぎ、あるときはくっきり、やがて煙の幕越しに淡く、私には果てしなく思えるほど、広大な川と牧草地を越えて遠ざかっていくこと。そしてそれから、ごくゆっくりと、私は奇跡的に逃れたのだと悟った。
XIII. 司祭と出会った経緯
地球の武器の威力についてこの突然の教訓を受けたのち、火星人たちはホーセル・コモンの元の位置へ退いた。そして急いでいたこと、また砕けた仲間の残骸に手を取られていたこともあって、私のような、はぐれた取るに足らない犠牲者を数多く見落としたに違いない。もし彼らが仲間を置き去りにしてそのまま進撃していたなら、その時点で彼らとロンドンのあいだにあったものは十二ポンド砲の砲台だけであり、彼らは自分たち接近の知らせより先に首都へ到達していただろう。その出現は、一世紀前にリスボンを破壊した地震のように、突然で、恐ろしく、破壊的なものになっていたはずだ。
しかし彼らは急がなかった。円筒は円筒を追って惑星間の飛行を続け、二十四時間ごとに援軍をもたらした。その一方で、陸海軍当局は、今や敵のすさまじい力を十分に悟り、猛烈な精力で動いた。一分ごとに新たな大砲が配置につき、夕暮れ前には、キングストンとリッチモンド周辺の丘の斜面にあるあらゆる雑木林、郊外住宅のあらゆる列が、待ち構える黒い砲口を隠していた。そしてホーセル・コモンの火星人の陣地を囲む、焦げて荒廃した一帯――おそらく全部で二十平方マイル(約五十二平方キロ)ほど――を通って、緑の木々のあいだにある焦げて廃墟となった村々を通って、ほんの一日前には松の若木林だった黒く焦げ煙る回廊を通って、献身的な斥候たちが、まもなく火星人の接近を砲手たちに知らせるヘリオグラフを携えて這い進んだ。しかし火星人たちは今や、こちらの砲兵支配と、人間が近づくことの危険を理解しており、どちらの円筒にも一マイル(約一・六キロ)以内へ入ろうとする者は、命を代償にするほかなかった。
どうやらこの巨人たちは、午後の早い時間を、二つ目と三つ目の円筒――二つ目はアドルストーン・ゴルフリンクス、三つ目はパイフォードにあった――から、あらゆるものをホーセル・コモンの元の穴へ運ぶために、行き来して過ごしたらしい。広く遠くまで広がる黒くなったヒースと破壊された建物の上には、一体が歩哨のように立ち、残りは巨大な戦闘機械を離れて穴の中へ降りていった。彼らは夜更けまでそこで懸命に働き、そこから立ちのぼる濃い緑の煙の高い柱は、メロウ周辺の丘から見え、さらにはバンステッドやエプソム・ダウンズからも見えたと言われている。
そして背後で火星人たちが次の出撃に備え、前方では人類が戦いに備えて集結しているあいだ、私は燃えるウィブリッジの火と煙の中から、ロンドンへ向かって、果てしない苦労と労力をかけて進んでいた。
放置された小舟が一艘、とても小さく遠くに、下流へ漂っているのが見えた。私は濡れきった衣服の大半を脱ぎ捨て、それを追いかけ、たどり着き、こうしてその破壊から逃れた。舟に櫂はなかったが、私は半ば茹でられた手が許すかぎり、ハリフォードとウォルトンの方へ川を下りながら水をかいて進んだ。ひどく時間がかかり、当然のことながら、絶えず背後を振り返った。川沿いに進んだのは、もしあの巨人たちが戻ってきた場合、水が逃げる最良の可能性を与えてくれると考えたからだ。
火星人が倒れたことで生じた熱い水が私とともに下流へ流れたため、一マイル(約一・六キロ)近くにわたって両岸はほとんど見えなかった。それでも一度、ウィブリッジの方から牧草地を横切って急ぐ黒い人影の列が見えた。ハリフォードは見捨てられているようで、川に面した家々のいくつかは燃えていた。熱い青空の下、その場所がまったく静かで、まったく荒れ果て、煙と細い炎の筋が午後の熱気の中へまっすぐ立ちのぼっているのを見るのは奇妙だった。それまで私は、邪魔な群衆を伴わずに家が燃える光景を見たことがなかった。少し先では、岸辺の乾いた葦が煙を上げて赤く光り、内陸では火の列が遅い刈り取り前の干し草の畑を着実に横切っていた。
私は長いあいだ漂っていた。経験した激しい出来事のあとで、痛みと疲労がひどく、水面の熱も強烈だったからだ。やがてまた恐怖が勝り、私は水かきを再開した。太陽は裸の背中を焼いた。ついに、ウォルトンの橋が曲がり角の先に見え始めたころ、熱とめまいが恐怖を上回り、私はミドルセックス側の岸に上がり、背の高い草の中へ倒れ込んだ。ひどく気分が悪かった。そのとき時刻は四時か五時ごろだったと思う。やがて立ち上がり、誰にも会わずに半マイル(約八百メートル)ほど歩き、それからまた生け垣の陰に横になった。最後に少し力を振り絞って歩いたあいだ、私はとりとめなく独り言を言っていたように思う。ひどく喉も渇いており、もっと水を飲んでおかなかったことをひどく後悔していた。不思議なことに、私は妻に腹を立てていた。説明はできないが、レザヘッドへ行きたいのに行けない無力な思いが、私を異常に苦しめていた。
司祭が現れたことははっきり覚えていないので、おそらく私はうとうとしていたのだろう。彼に気づいたとき、彼は煤で汚れたシャツの袖姿で座っており、髭をきれいに剃った上向きの顔で、空に踊るかすかなちらつきを見つめていた。空はいわゆる鯖雲の空で、淡い羽毛のような雲が幾列にも並び、真夏の夕焼けにわずかに染まっていた。
私は身を起こした。その動きの衣擦れに、彼はすばやく私を見た。
「水はありませんか?」
私は唐突に尋ねた。
彼は首を振った。
「あなたはこの一時間、ずっと水を求めていました」と彼は言った。
しばらく私たちは黙り、互いを見定めた。水浸しのズボンと靴下以外は裸で、火傷を負い、顔と肩を煙で黒くした私の姿は、彼にはさぞ奇妙に見えただろう。彼の顔には弱々しい美しさがあり、顎は引っ込み、髪は淡い亜麻色に近い巻き毛となって低い額にかかっていた。目はやや大きく、淡い青で、空虚に見開かれていた。彼は突然口を開き、私から目をそらして虚ろに見ながら言った。
「これは何を意味するのです?」と彼は言った。「これらの出来事は何を意味しているのです?」
私は彼を見つめ、答えなかった。
彼は細い白い手を差し出し、ほとんど不平を言うような調子で話した。
「なぜこのようなことが許されるのです? 私たちはどんな罪を犯したというのです? 朝の礼拝が終わり、午後に備えて頭をすっきりさせようと道を歩いていました。すると――火、地震、死! まるでソドムとゴモラです! 私たちの仕事がすべて台なしに、すべての仕事が――この火星人とは何なのです?」
「われわれは何なのです?」
私は喉を整えながら答えた。
彼は膝をつかみ、もう一度私を見た。おそらく半分ほど、無言で見つめていた。
「頭をすっきりさせようと、道を歩いていたのです」と彼は言った。「すると突然――火、地震、死!」
彼はまた黙り込み、顎はほとんど膝に沈み込んでいた。
やがて彼は手を振り始めた。
「すべての仕事が――すべての日曜学校が――私たちは何をしたのです――ウィブリッジが何をしたのです? 何もかも消えた――何もかも破壊された。教会が! 三年前に建て直したばかりなのに。消えた! 存在ごと掃き払われた! なぜ?」
また沈黙があり、彼は狂った者のように再び叫び出した。
「その焼かれる煙は永遠に、永遠に立ちのぼる!」と彼は叫んだ。
目は燃え、痩せた指でウィブリッジの方角を指さした。
このころには、私は彼という人物を見定め始めていた。彼が巻き込まれた途方もない悲劇――彼がウィブリッジからの避難者であることは明らかだった――が、彼を正気の瀬戸際まで追いやっていたのだ。
「ここはサンベリーから遠いですか?」
私は事務的な口調で言った。
「私たちはどうすればよいのです?」彼は尋ねた。「あの生き物たちはどこにでもいるのですか? 地球は彼らに引き渡されたのですか?」
「ここはサンベリーから遠いですか?」
「今朝になって、私は早朝聖餐式を司式したばかりで――」
「状況は変わりました」と私は静かに言った。「冷静でいなければ。まだ希望はあります。」
「希望!」
「そうです。この破壊の中にも、十分な希望が。」
私は私たちの置かれた状況について自分の見方を説明し始めた。彼は最初こそ耳を傾けたが、話を続けるにつれ、目に芽生えかけた関心は以前の凝視に戻り、視線は私から逸れていった。
「これは終わりの始まりに違いありません」と彼は私を遮って言った。「終わりだ! 主の大いなる恐るべき日だ! 人々が山々と岩に向かって、自分たちの上に落ち、身を隠してくれと叫ぶとき――御座に座す方の御顔から隠してくれと!」
私は状況を理解し始めた。苦心して説得するのをやめ、どうにか立ち上がると、彼の上に立って肩に手を置いた。
「しっかりしなさい!」と私は言った。「恐怖で正気を失っているだけだ! 災難の前で崩れ落ちるなら、宗教に何の意味がある? 地震や洪水、戦争や火山が、これまで人間に何をしてきたか考えてみなさい! 神がウィブリッジだけを免除していると思っていたのか? 神は保険屋ではない。」
しばらく彼は虚ろな沈黙の中に座っていた。
「しかし、どうやって逃げればよいのです?」彼は突然尋ねた。「彼らは傷つけられず、容赦もない。」
「どちらも違う。少なくとも、おそらくは」と私は答えた。「それに彼らが強大であればあるほど、こちらはますます冷静で慎重であるべきだ。三時間も前ではない、あそこで一体が殺された。」
「殺された!」彼はあたりを見回しながら言った。「神の使いがどうして殺されるのです?」
「私はそれが起きるのを見ました。」
私は彼に話して聞かせた。「私たちはたまたま戦いの最も激しい場所に巻き込まれたのです」と私は言った。「それだけです。」
「あの空のちらつきは何です?」彼は唐突に尋ねた。
私は、それはヘリオグラフの信号であり、空に現れた人間の援助と努力のしるしだと教えた。
「私たちはそのただ中にいます」と私は言った。「静かではありますが。あの空のちらつきは、集まりつつある嵐を告げています。向こうには、おそらく火星人がいる。そしてロンドン方面、リッチモンドやキングストンの周辺に丘が起伏し、木々が身を隠す場所を与えているところでは、土塁が築かれ、大砲が据えられている。やがて火星人はまたこちらへ来るでしょう。」
私がそう言っている最中、彼は跳ねるように立ち上がり、身振りで私を制した。
「聞いてください!」と彼は言った。
水の向こうの低い丘の先から、遠い大砲の鈍い反響と、遠く奇妙な叫び声が聞こえた。それから何もかも静かになった。コフキコガネが生け垣の上をぶんぶん飛び、私たちのそばを過ぎた。西の高い空には、細い三日月が、ウィブリッジとシェッパートンの煙、そして暑く静かな夕焼けの輝きの上に、淡く青白くかかっていた。
「この道をたどった方がいい」と私は言った。「北へ。」
第十四章 ロンドンにて
火星人がウォーキングに落下したとき、弟はロンドンにいた。医学生で、目前に迫った試験の勉強に追われており、その到着については土曜の朝まで何も知らなかった。土曜の朝刊には、惑星火星や、惑星における生命などについての長い特集記事に加えて、短く、曖昧な言葉で書かれた電報が載っていた。その短さが、かえって強い印象を与えていた。
記事によれば、火星人は群衆が近づいてきたことに驚き、速射砲で多数の人々を殺したという。電報は次の言葉で締めくくられていた。「火星人は一見恐るべき存在に見えるが、落下した穴から動いておらず、実際、そこから出ることができないようである。おそらくこれは、地球の重力エネルギーの相対的な強さによるものと思われる。」
その最後の一節について、社説筆者はひどく読者を安心させる調子で論を広げていた。
もちろん、その日弟が出席した詰め込み式予備校の生物学の授業では、学生たちはみな強い関心を示していた。だが通りには、異常な興奮の気配はまったくなかった。午後の新聞は、大見出しの下に断片的なニュースを大げさに載せていた。八時までは、コモン周辺での軍隊の動きと、ウォーキングとウィブリッジのあいだの松林が燃えていること以外、伝えることは何もなかった。それから『セント・ジェームズ・ガゼット』が特別号外で、電信連絡が途絶したという事実だけを報じた。これは、燃えた松が線路上に倒れたためだと考えられていた。その夜――私がレザヘッドまで往復した夜――戦闘についてそれ以上のことは何も知られていなかった。
弟は私たちのことを心配していなかった。新聞の記述から、円筒が私の家から優に二マイル(約3.2キロ)離れていると知っていたからだ。弟は、その夜私のところへ出かけるつもりでいた。本人の言い方を借りれば、あの「ものども」が殺される前に見ておくためだった。四時ごろ電報を打ったが、それは私のもとへ届かなかった。そして夜はミュージックホールで過ごした。
ロンドンでも、土曜の夜には雷雨があり、弟は辻馬車でウォータールーに着いた。深夜列車がいつも発車するホームでしばらく待ったあと、その夜は事故のため列車がウォーキングまで行けないことを知った。事故の内容は分からなかった。実際、鉄道当局でさえ、その時点でははっきり把握していなかった。駅にはほとんど興奮はなかった。職員たちは、バイフリートとウォーキング分岐点のあいだで単なる故障以上のことが起きたとは思っておらず、普段ウォーキングを通る劇場帰りの列車をヴァージニア・ウォーターかギルフォード経由に迂回させて運行していた。彼らはサウサンプトンおよびポーツマス方面の日曜リーグ遠足列車の経路変更に必要な手配に追われていた。夜勤の新聞記者が、弟を、少し面差しの似ている運輸部長と取り違え、待ち伏せして取材しようとした。鉄道職員を除けば、この不通を火星人と結びつける者はほとんどいなかった。
私はこれらの出来事についての別の記録で、日曜の朝、「ウォーキングからの知らせにロンドン中が電撃を受けた」と書かれているのを読んだことがある。
実際には、そのひどく大げさな言い回しを正当化するものは何もなかった。多くのロンドン市民は、月曜朝の恐慌まで火星人のことを聞いていなかった。聞いた者たちも、日曜紙に急いで書かれた電報が何を意味しているのか理解するまでには時間がかかった。ロンドンの大多数の人々は日曜紙を読まないのだ。
そのうえ、個人としての安全は揺るがないという習慣がロンドン市民の心にはあまりにも深く根づいており、新聞に驚くべき情報が載ることもあまりにも当たり前だった。そのため彼らは、身に迫る恐怖を少しも覚えずに、こう読めたのである。「昨夜七時ごろ、火星人は円筒から姿を現し、金属の盾からなる装甲の下で動き回り、ウォーキング駅と隣接する家々を完全に破壊し、カーディガン連隊の一個大隊を全滅させた。詳細は不明。マキシム機関銃は彼らの装甲に対してまったく効果がなく、野砲は彼らによって使用不能にされた。騎兵斥候はチャートシーへ疾走している。火星人はチャートシー、またはウィンザー方面へゆっくり進んでいるらしい。西サリーでは大きな不安が広がっており、ロンドン方面への進撃を食い止めるため土塁が築かれている。」
それが『サンデー・サン』の書き方であり、『レフェリー』には機敏で驚くほど迅速な「手引き」記事が載っていて、この出来事を、動物園の獣たちが突然村に放たれたようなものだと比べていた。
ロンドンの誰も、装甲をまとった火星人の本質については確かなことを知らなかった。そしてなお、これらの怪物は鈍重であるに違いないという固定観念があった。「這う」「苦しげににじり進む」――初期の報告のほとんどに、そうした表現が見られた。電報のどれも、彼らの進撃を目撃した者が書いたものではあり得なかった。日曜紙は新しい知らせが入るたびに別版を刷り、なかには知らせがなくても刷るものさえあった。だが午後遅く、当局が通信社に手持ちの情報を渡すまで、人々に伝えるべきことは実質的に何もなかった。ウォルトン、ウィブリッジ、および周辺一帯の住民がロンドン方面へ街道を押し寄せている、と報じられた。それだけだった。
弟は午前中、まだ前夜に何が起こったか知らないまま、ファウンドリング病院の教会へ行った。そこで侵略への言及を聞き、平和のための特別な祈りを耳にした。外へ出ると、『レフェリー』を買った。その記事に不安を覚え、連絡が復旧したかどうか確かめるため、再びウォータールー駅へ向かった。ニュース売りが広めている奇妙な情報にも、乗合馬車、辻馬車、自転車乗り、そして晴れ着を着て歩く無数の人々は、ほとんど影響されていないように見えた。人々は興味を示していた。あるいは不安を覚えていても、それは現地住民のことを思っての不安にすぎなかった。駅で弟は初めて、ウィンザー線とチャートシー線が今や不通になっていると聞いた。ポーターたちは、午前中にバイフリート駅とチャートシー駅からいくつか異様な電報が届いたが、それが突然途絶えたと話した。弟は彼らから正確な詳細をほとんど聞き出せなかった。
「ウィブリッジのあたりで戦闘が起きている」というのが、彼らの知っているすべてだった。
列車運行はすでに大きく乱れていた。サウス・ウェスタン鉄道網の各地から友人が来るのを待っていたかなりの人数が、駅にたむろしていた。白髪の老紳士がひとりやって来て、弟に向かってサウス・ウェスタン鉄道会社を激しく罵った。「世間にさらしてやらねばならん」と彼は言った。
リッチモンド、パトニー、キングストンから一、二本の列車が到着した。乗っていたのは、一日舟遊びに出かけたものの、閘門が閉ざされ、あたりに恐慌の気配が漂っているのに出くわした人々だった。青と白のブレザーを着た男が、奇妙な知らせでいっぱいの様子で弟に話しかけた。
「キングストンへ、罠だの荷車だの、そんなものに貴重品の箱や何やらを積んで、ものすごい数の人間が押し寄せてるんです」と彼は言った。「モールジーやウィブリッジやウォルトンから来てるんです。チャートシーで砲声が聞こえたとか、ひどい砲撃だとか、騎馬兵に火星人が来るからすぐ逃げろと言われたとか言ってます。僕らはハンプトン・コート駅で砲声を聞きましたが、雷だと思っていました。いったい何がどうなってるんです? 火星人は穴から出られないんでしょう?」
弟は答えられなかった。
その後、地下鉄の乗客たちのあいだにも漠然とした不安が広がっていること、そして日曜の行楽客たちが、サウス・ウェスタンの「肺」と呼ばれる地域――バーンズ、ウィンブルドン、リッチモンド・パーク、キューなど――の各地から、異常に早い時間に戻りはじめていることを知った。だが誰ひとりとして、曖昧な伝聞以上のことは語れなかった。終着駅に関わる者はみな、ひどく不機嫌に見えた。
五時ごろ、駅に集まった群衆は、ほとんど常に閉じられているサウス・イースタン駅とサウス・ウェスタン駅の連絡線が開かれたことで、ひどく興奮した。巨大な砲を載せ、兵士をぎっしり詰め込んだ砲車を運ぶ貨車が通過したからである。それらはキングストンを援護するため、ウーリッジとチャタムから運び込まれた砲だった。軽口が飛び交った。「食われちまうぞ!」「こっちは猛獣使いだ!」といった具合だ。その少しあと、警官隊が駅に入り、一般人をホームから退去させはじめた。弟はまた通りへ出た。
教会の鐘が夕べの礼拝を告げて鳴っており、救世軍の娘たちの一隊が歌いながらウォータールー・ロードを下ってきた。橋の上では、何人もの怠け者たちが、川面を斑に流れてくる奇妙な褐色の泡を見つめていた。太陽は沈みかけており、時計塔と国会議事堂は、想像し得る限りもっとも穏やかな空を背にそびえていた。金色の空には、赤紫の雲が長い横縞をなしてかかっていた。浮いている死体の話が出ていた。そこにいた男のひとり――予備役だと言っていた――は、西の方でヘリオグラフ[訳注:鏡で太陽光を反射させて信号を送る通信装置]がちらちら光るのを見たと弟に語った。
ウェリントン通りで弟は、フリート街から刷りたてでまだ湿った新聞と大きな掲示板を持って駆け出してきた、たくましい粗野な男二人に出会った。「恐るべき大惨事!」彼らはウェリントン通りを下りながら互いに怒鳴り合っていた。「ウィブリッジで戦闘! 全容詳報! 火星人撃退! ロンドン危うし!」
弟はその新聞一部に三ペンス払わねばならなかった。
そのとき、そしてそのときになって初めて、弟はこれらの怪物の力と恐怖の全貌をいくらか悟った。彼らは、ただの少数の小さく鈍重な生き物ではなかった。巨大な機械の身体を操る知性だったのだ。そして素早く動き、最強の大砲でさえ太刀打ちできないほどの力で打撃を加えることができた。
彼らは「高さほぼ百フィート(約30メートル)に達する巨大な蜘蛛のような機械で、急行列車並みの速度を出し、強烈な熱の光線を放つことができる」と描写されていた。
主として野砲からなる隠蔽砲台が、ホーセル・コモン周辺の田園地帯、とりわけウォーキング地区とロンドンのあいだに配置されていた。五台の機械がテムズ川へ向かって移動しているのが目撃され、そのうち一台は幸運にも破壊された。ほかの場合には砲弾が外れ、砲台は直ちに熱線で壊滅させられた。兵士に大きな損害が出たことも触れられていたが、電報の調子は楽観的だった。
火星人は撃退された。彼らは無敵ではない。彼らはウォーキング周辺の円内にある、三つの円筒からなる三角地帯へ再び退いた。ヘリオグラフを持った信号兵が、四方から彼らに向かって前進している。砲はウィンザー、ポーツマス、オールダーショット、ウーリッジ――さらには北方からも――急速に輸送中だった。その中には、ウーリッジから運ばれる九十五トン(約97トン)の長いワイヤー砲もあった。総計百十六門が配置済み、あるいは急ぎ配置されつつあり、その多くはロンドンを援護していた。これほど大量の軍需物資が、これほど迅速に集中した例は、イングランドではかつてなかった。
さらに落下する円筒は、急速に製造・配備されている強力爆薬によって、ただちに破壊できるものと期待されていた。報告によれば、たしかに状況はきわめて異様で重大なものだが、一般市民には恐慌を避け、また煽らぬよう求められていた。火星人が極度に奇怪で恐ろしい存在であることは間違いないが、最大限に見積もっても、我々数百万に対して二十体を超えることはあり得ないというのだ。
当局は円筒の大きさから、各円筒に多くても五体――総数十五体以上はないと考える理由があった。そして少なくとも一体は始末された――おそらくそれ以上である。危険が近づけば市民には十分な警告が与えられ、脅威にさらされる南西郊外の住民を守るため、周到な措置が講じられている。こうして、ロンドンの安全と、当局が困難に対処できる能力についての保証を繰り返しながら、この半ば布告のような記事は締めくくられていた。
それは、まだ湿っているほど新しい紙に、巨大な活字で印刷されており、論評を一言加える時間もなかった。弟が言うには、その場所を空けるために、新聞の通常の記事が容赦なく削り取られているのを見るのは妙なものだったという。
ウェリントン通り一帯では、人々がピンク色の紙面をひらひらさせて読んでいるのが見えた。そしてストランドは、先駆けとなった新聞売りのあとを追う無数の売り子たちの声で、突然騒がしくなった。男たちは新聞を手に入れようと乗合馬車からよじ降りてきた。先ほどまでの無関心がどうであれ、このニュースが人々を激しく興奮させたことは確かだった。弟によれば、ストランドの地図店では雨戸が外されており、日曜の盛装に身を包み、レモン色の手袋までした男が、店内の窓際でサリーの地図を急いでガラスに貼りつけているのが見えたという。
新聞を手に、ストランドをトラファルガー広場へ進んでいく途中、弟は西サリーからの避難民を幾人か見た。男が妻と二人の男の子、それにいくつかの家具を、八百屋が使うような荷車に乗せていた。男はウェストミンスター橋の方向から来ており、そのすぐ後ろには、身なりのきちんとした五、六人と箱や包みを乗せた干し草馬車が続いていた。彼らの顔はやつれ、その姿全体は、乗合馬車に乗る人々の日曜の晴れ着姿と著しく対照的だった。流行の服を着た人々が、辻馬車の中から彼らをのぞき見ていた。彼らはどちらへ行くべきか迷うように広場で止まり、ついにはストランドを東へ折れた。彼らから少し離れて、普段着の男が、小さな前輪のついた旧式の三輪車に乗ってやって来た。男は汚れ、顔は蒼白だった。
弟はヴィクトリア方面へ曲がり、そのような人々を何人も見かけた。私を見つけられるかもしれないという漠然とした考えがあったのだ。交通整理をしている警官が異常に多いことに気づいた。避難民のなかには、乗合馬車の人々と情報を交換している者もいた。ひとりは火星人を見たと言い張っていた。「高足のボイラーみたいなやつだ。人間みたいに大股で歩いてたんだ。」
その大半は興奮しており、奇妙な体験に気持ちが高ぶっていた。
ヴィクトリアを越えると、パブはこうした到着者たち相手に盛況だった。どの街角にも、新聞を読む人々、興奮して話し合う人々、この異様な日曜の訪問者たちを見つめる人々の群れがあった。夜が近づくにつれて彼らは増えていくように見え、ついには道路が、ダービーの日のエプソム・ハイ・ストリートのようになったと弟は言っていた。弟はそうした避難民の何人かに話しかけたが、ほとんどから満足な答えは得られなかった。
彼らのうち、ウォーキングについて何か知らせを伝えられた者は一人だけだった。その男は、ウォーキングは前の晩に完全に破壊されたと断言した。
「私はバイフリートから来たんです」と彼は言った。「朝早く、自転車の男が町を通り抜けて、家々を一軒ずつ回り、逃げろと警告していきました。それから兵隊が来ました。私たちは外へ出て見ましたが、南の方には煙の雲があるだけでした――煙ばかりで、そっちから来る人影は一人もありませんでした。それからチャートシーの砲声を聞き、ウィブリッジから人々が来るのを見ました。それで家に鍵をかけて、こちらへ来たんです。」
そのころ通りでは、これほどの不便を招くことなく侵略者を始末できなかった当局の無能が悪い、という強い感情が広がっていた。
八時ごろには、ロンドン南部全域で重砲の音がはっきり聞こえた。弟は大通りの交通音に遮られてそれを聞くことができなかったが、静かな裏通りを抜けて川へ向かうと、きわめて明瞭に聞き分けることができた。
彼はウェストミンスターから、リージェンツ・パーク近くの下宿まで歩いた。二時間ほどかかった。弟は今や私のことをひどく案じており、事態の明らかな大きさに動揺していた。彼の心は、土曜の私の心と同じように、軍事上の細部へ向かいがちだった。静かに待ち構えるあれらの砲、突然遊牧民のように移動を始めた田園地帯を思い浮かべた。そして、高さ百フィート(約30メートル)の「高足のボイラー」を想像しようとした。
オックスフォード通りでは避難民を乗せた荷車が一、二台、メリルボーン・ロードでは数台通り過ぎた。だがニュースの広がりは非常に遅く、リージェント・ストリートとポートランド・プレイスには、いつもの日曜夜の散歩客があふれていた。もっとも彼らはあちこちで群れになって話し込んでいたし、リージェンツ・パークの縁には、まばらなガス灯の下を連れ立って「散歩する」無言の男女が、いつもと同じほどいた。夜は暖かく静かで、少し息苦しかった。砲声は断続的に続き、真夜中過ぎには南の空に幕電のような光が見えた。
弟は新聞を何度も読み返し、私に最悪のことが起きたのではないかと恐れた。落ち着かず、夕食後ふたたび当てもなく外をうろついた。戻ってから試験ノートに気を紛らわせようとしたが、無駄だった。真夜中を少し過ぎて床に就き、月曜未明、血なまぐさい夢の中から、戸を叩く音、通りを走る足音、遠くの太鼓、鐘の騒ぎに起こされた。天井には赤い反射が踊っていた。一瞬、彼は驚いたまま横たわり、夜が明けたのか、それとも世界が狂ったのかと思った。それから跳ね起き、窓へ走った。
彼の部屋は屋根裏だった。頭を突き出すと、通りの上下で彼の窓枠が立てた音に応じるように、十数か所から同じ音が響き、思い思いの寝乱れ姿の頭が現れた。問いかけが叫ばれていた。「来るぞ!」警官が扉を叩きながら怒鳴った。「火星人が来る!」そして次の家へ急いだ。
太鼓とラッパの音はアルバニー・ストリート兵舎から聞こえ、耳の届く範囲のあらゆる教会が、激しく乱れた警鐘で眠りを殺そうと躍起になっていた。扉の開く音がし、向かいの家々では窓が一つまた一つ、暗闇から黄色い明かりへと変わっていった。
通りの上手から、閉じた馬車が駆け下りてきた。角で突然けたたましい音を立て、窓の下でがらがらと最高潮に達し、やがて遠くでゆっくり消えていった。そのすぐ後ろには二台の辻馬車が続いていた。それは逃げる車両の長い列の先触れであり、その多くは坂を下ってユーストンへ向かうのではなく、北西鉄道の臨時列車が乗客を詰め込んでいるチョーク・ファーム駅へ向かっていた。
弟はしばらくのあいだ、呆然と窓の外を見つめていた。警官たちが次々と扉を叩き、理解しがたい伝言を伝えていくのを見守っていた。やがて背後の扉が開き、踊り場の向かいに下宿している男が入ってきた。シャツとズボンとスリッパだけを身につけ、ズボン吊りは腰のあたりにだらりと垂れ、髪は枕で乱れていた。
「いったい何なんだ?」彼は尋ねた。「火事か? なんて騒ぎだ!」
二人は窓から身を乗り出し、警官たちが何を叫んでいるのか聞き取ろうとした。人々は脇道から出てきて、角に群がって話していた。
「いったい何の騒ぎなんだ?」弟の隣人が言った。
弟は曖昧に答え、服を着はじめた。高まっていく興奮を見逃すまいと、衣類を一つ身につけるたびに窓へ駆け寄った。やがて、異常なほど早い時間に新聞を売る男たちが、通りへ怒鳴り込んできた。
「ロンドン、窒息の危機! キングストン、リッチモンド防衛線突破! テムズ渓谷で恐るべき虐殺!」
そして弟の周囲では――下の部屋でも、左右の家でも、道の向こうでも、背後のパーク・テラスでも、このメリルボーンの一帯にある百もの通りでも、ウェストボーン・パーク地区やセント・パンクラスでも、西と北のキルバーン、セント・ジョンズ・ウッド、ハムステッドでも、東のショーディッチ、ハイベリー、ハガーストン、ホクストンでも、いや実際には、イーリングからイースト・ハムに至るロンドンの広大な全域で――人々が目をこすり、窓を開けて外を見つめ、意味のない問いを投げ、恐怖という来たる嵐の最初の息吹が通りを吹き抜けるなか、慌ただしく服を着ていた。それは大恐慌の夜明けだった。日曜の夜には何も知らず、鈍く眠りについたロンドンが、月曜未明、危険を生々しく悟って目覚めたのである。
窓からは何が起きているのか分からず、弟は階下へ降りて通りへ出た。ちょうど家々の胸壁のあいだの空が、早暁の薔薇色に染まりはじめていた。徒歩や車で逃げる人々は、刻一刻と数を増していった。「黒い煙だ!」と人々が叫ぶのを聞いた。そしてまた「黒い煙だ!」
これほど一致した恐怖が伝染するのは避けられなかった。弟が戸口でためらっていると、別の新聞売りが近づいてくるのが見え、すぐに一部を手に入れた。その男はほかの者たちと一緒に逃げながら、走りつつ新聞を一部一シリングで売っていた――利益と恐慌が奇怪に混ざり合っていた。
そしてその新聞で、弟は総司令官による破局的な電報を読んだ。
「火星人はロケットにより、黒く有毒な蒸気の巨大な雲を放出することができる。 彼らは我が砲台を窒息させ、リッチモンド、キングストン、ウィンブルドンを破壊し、 ロンドンへ向けてゆっくり前進中であり、進路上のすべてを破壊している。 彼らを止めることは不可能である。黒い煙から身を守る手段は、ただちに逃げる以外にない。」
それがすべてだった。だが、それで十分だった。六百万の大都市の全人口が動き出し、すべり、走っていた。まもなくそれは一団となって北へ押し寄せることになる。
「黒い煙だ!」声々が叫んだ。「火事だ!」
近くの教会の鐘が耳障りな騒音を立て、乱暴に走らされた荷車が、悲鳴と罵声のなか、通りの先の水飲み桶に激突した。家々の中では病的な黄色い明かりが行き来し、通り過ぎる辻馬車のいくつかは消し忘れたランプをこれ見よがしに揺らしていた。そして頭上では、夜明けがいっそう明るく、澄みきって、揺るぎなく、静かに広がっていた。
背後の部屋の中や階段の上り下りに、足音が行き交うのが聞こえた。下宿の女主人が、部屋着とショールを乱雑にまとって戸口に現れた。夫がそのあとから、声を上げながら続いた。
弟はこれらすべての意味を理解しはじめると、急いで自分の部屋へ戻り、手元にある金――全部で十ポンドほど――をポケットに入れ、また通りへ出ていった。
第十五章 サリーで起きたこと
司祭がハリフォード近くの平らな牧草地の生け垣の下で、私に向かってあれほど取り乱して話していたころ、そして弟がウェストミンスター橋を越えて流れていく避難民を見ていたころ、火星人たちは攻勢を再開していた。公にされた矛盾する報告から確かめられる限りでは、その大多数はその夜九時までホーセルの穴で準備に忙殺され、巨大な量の緑色の煙を放つ何らかの作業を急いでいた。
しかし三体は確かに八時ごろ姿を現し、ゆっくりと慎重に前進して、バイフリートとパイフォードを抜け、リプリーとウィブリッジへ向かい、そうして沈みゆく太陽を背に、待ち構える砲台の視界に入った。これらの火星人は一団となって進んだのではなく、横一列に並んでいた。それぞれ隣の者からおそらく一マイル半(約2.4キロ)ほど離れていた。彼らはサイレンのような遠吠えで互いに連絡を取り、一つの音から別の音へ、音階を上下させていた。
アッパー・ハリフォードで私たちが聞いたのは、この遠吠えと、リプリーおよびセント・ジョージズ・ヒルの砲撃音だった。リプリーの砲手たちは、未熟な砲兵志願兵で、本来ならそのような位置に置かれるべきではなかった。彼らは荒々しく、早すぎ、無効な一斉射撃を放つと、火星人が熱線を使うこともなく、彼らの砲を悠然とまたぎ、注意深くそのあいだを歩き、前を通り過ぎていくあいだに、馬でも徒歩でも、無人の村を抜けて逃げ去った。そしてその火星人は思いがけずペインシェル・パークの砲に出くわし、それを破壊した。
しかしセント・ジョージズ・ヒルの兵たちは、指揮がよかったのか、胆力が違ったのか、よりましだった。松林に隠れていたため、彼らはもっとも近い火星人にまったく気づかれていなかったらしい。彼らは閲兵式の場にいるかのように落ち着いて砲を照準し、およそ千ヤード(約914メートル)の距離から発砲した。
砲弾は火星人の周囲で閃き、火星人は数歩進み、よろめき、倒れるのが見えた。誰もが一斉に叫び、砲は狂ったような速さで再装填された。倒れた火星人が長く尾を引くうなり声を上げると、すぐに、彼に応えるように第二のきらめく巨人が南の木々の上に現れた。トライポッドの脚の一本が砲弾で砕かれたようだった。第二斉射はすべて、地上の火星人から大きく外れ、同時にその二体の仲間が熱線を砲台へ向けた。弾薬が爆発し、砲の周囲の松は一斉に火を噴き、すでに丘の稜線を越えて逃げ出していた一、二人だけが助かった。
このあと、三体は互いに相談して立ち止まったらしく、彼らを監視していた斥候たちは、その後三十分間、完全に静止していたと報告している。倒された火星人は、面倒そうに覆いから這い出した。その小さな褐色の姿は、その距離から見ると奇妙にも病斑の一点を思わせ、どうやら自分の支持部の修理に取りかかっていた。九時ごろにはそれを終えていた。というのも、そのとき再び彼の頭巾が木々の上に見えたからだ。
その夜九時を数分過ぎたころ、この三体の番兵に、さらに四体の火星人が加わった。それぞれが太い黒い管を携えていた。同じような管が先の三体にも渡され、七体はセント・ジョージズ・ヒル、ウィブリッジ、そしてリプリー南西のセンド村のあいだに、弧を描く線上へ等間隔に散らばっていった。
彼らが動きはじめるとすぐ、前方の丘々から十数発の信号ロケットが飛び出し、ディトンとエッシャー周辺で待機していた砲台に警告した。同時に、同じように管で武装した四台の戦闘機械が川を渡った。そのうち二台は、西の空を背に黒く浮かび上がり、ハリフォードから北へ走る道を、疲れきり、苦しみながら急いでいた私と司祭の目に入った。私たちには、それらが雲の上を動いているように見えた。乳白色の霧が野を覆い、その高さの三分の一まで立ちのぼっていたからだ。
その光景を見て、司祭は喉の奥でかすかな叫びを上げ、走りはじめた。だが私は、火星人から走って逃げても無駄だと知っていたので、道を外れ、露に濡れたイラクサと野ばらをくぐって、道端の広い溝へ這い込んだ。司祭は振り返り、私が何をしているかを見て、こちらに加わろうと向きを変えた。
二体は停止した。私たちに近いほうは立ったままサンベリーを向き、遠いほうはステインズ方面、宵の明星の方角に、灰色のぼんやりした影となっていた。
火星人の断続的な遠吠えはやんだ。彼らは自分たちの円筒を囲む巨大な三日月形の配置につき、完全な沈黙に包まれていた。その三日月の両端は十二マイル(約19キロ)離れていた。火薬が考案されて以来、戦いの始まりがこれほど静かだったことは一度もない。私たちにとっても、リプリー付近の観察者にとっても、その効果はまったく同じだっただろう。細い月と星、日光の名残、そしてセント・ジョージズ・ヒルとペインシェルの森からの赤い照り返しだけに照らされた薄暗い夜を、火星人だけが独占しているように見えた。
だが、その三日月に対峙するように、あらゆる場所で砲が待ち構えていた。ステインズ、ハウンズロウ、ディトン、エッシャー、オッカム、川の南の丘と森の陰、そして北側の平らな牧草地を越えたところ、木立や村の家々が十分な遮蔽を与える場所ならどこにでも。信号ロケットが夜空で弾け、火花を降らせて消えた。そして見守る砲台すべての精神は、張り詰めた期待へと高まっていった。火星人が射線に踏み込めば、その瞬間、じっと動かぬ黒い人影たち、宵闇の中に鈍く光る砲は、雷鳴のような戦闘の怒りへと爆発するはずだった。
疑いなく、そうした警戒に満ちた千もの心の中で最も大きかった考えは、私の心を占めていたのと同じ謎だった――彼らは我々のことをどれほど理解しているのか。彼らは、我々数百万が組織され、訓練され、協力して動いていることを理解しているのか。それとも我々の火の噴出、砲弾の突然の刺すような痛み、彼らの野営地をじわじわ包囲する我々の動きを、我々が荒らされた蜂の巣の激しい一斉攻撃を見るように解釈しているのか。彼らは我々を絶滅できると夢想しているのか。(その時点では、彼らがどんな食物を必要とするのか誰も知らなかった。)その巨大な番兵の姿を見つめながら、私の心の中では百もの問いがせめぎ合っていた。そして心の奥底には、ロンドン方面にある未知で隠された巨大な諸力の感覚があった。落とし穴は用意されているのか。ハウンズロウの火薬工場は罠として準備されているのか。ロンドン市民に、自らの強大な家屋の領地を、より大きなモスクワ[訳注:ナポレオン軍の侵攻時にモスクワが焼かれた故事への言及]に変えるだけの意志と勇気があるのか。
それから、私たちには果てしなく長く思えた時間が過ぎ、生け垣越しに身を縮めてのぞき込んでいると、遠い砲の衝撃のような音が聞こえた。もう一つ、今度はより近く。そしてまた一つ。すると私たちのそばの火星人が管を高く掲げ、大砲のようにそれを発射した。重い轟音とともに地面が持ち上がるほどだった。ステインズ方面の一体がそれに応えた。閃光も煙もなかった。ただ、重く詰まった爆発音だけだった。
私は、その重い分時砲のような音が次々と続くことにあまりに興奮し、自分の安全も、火傷した手のことも忘れて、生け垣によじ登り、サンベリーの方を凝視した。そのとき二度目の轟音が続き、大きな弾体が頭上をうなりながらハウンズロウへ飛んでいった。私は少なくとも煙か火か、その働きの何らかの証拠を見るものと思っていた。だが見えたのは、頭上の濃い青空に一つだけ光る星と、その下に広く低く広がる白い霧だけだった。衝突音も、応じる爆発もなかった。沈黙が戻った。一分は三分へと延びた。
「何が起きたのです?」司祭が私のそばに立ち上がって言った。
「天のみぞ知るだ」と私は言った。
コウモリがちらりと飛んで消えた。遠くで叫び声の騒ぎが始まり、やがてやんだ。私は再び火星人を見た。すると彼は、すでに川岸に沿って東へ、素早く転がるような動きで進んでいた。
私は今にも、どこか隠れた砲台の火が彼に襲いかかるものと予期していた。だが夕べの静けさは破られなかった。火星人の姿は遠ざかるにつれて小さくなり、まもなく霧と濃くなる夜が彼を呑み込んだ。私たちは同じ衝動に駆られて、さらに高くよじ登った。サンベリーの方には、円錐形の丘が突然そこに出現し、向こうの土地を隠してしまったかのような暗いものが見えた。そしてさらに遠く、川の向こうのウォルトンの上にも、同じような頂が見えた。私たちが見つめているあいだに、この丘のような形は低く、広くなっていった。
突然思いついて北を見ると、そこにも第三の黒い雲のコピエ[訳注:南アフリカ語由来の語で、小丘・丘陵を指す]が立ち上がっているのが分かった。
すべてが急にひどく静まり返った。はるか南東の方で、その静寂を際立たせるように、火星人たちが互いに鳴き交わす声が聞こえ、それから空気は再び、彼らの砲の遠い鈍い音で震えた。だが地球側の砲兵は何も応えなかった。
その時点では私たちはこれらのことを理解できなかった。だが後に、夕闇の中に集まっていったあの不吉なコピエの意味を知ることになる。私が述べた大きな三日月形に立っていた火星人たちは、それぞれ携えた砲のような管を使い、自分の前方にたまたまある丘、雑木林、家々の集まり、その他砲を隠せそうな場所の上へ、巨大な筒状の弾を発射したのだった。一つだけ撃った者もいれば、二つ撃った者もいた――私たちが見た一体のように。リプリーの一体はその時、少なくとも五つを発射したと言われている。これらの筒は地面にぶつかると砕けた――爆発はしなかった――そしてたちまち膨大な量の重く墨のような蒸気を放ち、それは渦を巻きながら上方へ噴き出し、巨大な漆黒の積雲、すなわち周囲の土地へゆっくり沈み広がる気体の丘となった。その蒸気に触れること、その刺激臭のある筋を吸い込むことは、呼吸するすべてのものにとって死だった。
その蒸気は重かった。もっとも濃い煙よりも重く、最初の衝撃による激しい噴き上がりと流出が終わると、空気中を沈み、気体というよりむしろ液体のように地表を流れ、丘を見捨て、谷や溝や水路へ流れ込んだ。火山の裂け目から流れ出る炭酸ガスがそうするものだと私が聞いているのと同じだった。そして水に触れると何らかの化学作用が起こり、その表面はたちまち粉状の泡で覆われた。その泡はゆっくり沈み、さらに別の泡に道を譲った。泡はまったく溶けなかった。そしてガスの即効性を思うと奇妙なことだが、それを濾し取った水は飲んでも害がなかった。この蒸気は真の気体のようには拡散しなかった。塊となってまとまり、土地の傾斜をのろのろ下り、風の前に渋々押し流されながら、非常にゆっくりと霧や空気中の湿気と結びつき、塵の形で地上へ沈んだ。スペクトルの青い部分に四本の線からなる一群を与える未知の元素が関わっていることを除けば、私たちは今なおこの物質の性質をまったく知らない。
拡散時の激しい噴き上がりが終わると、黒い煙は、沈殿する前でさえ、あまりにも地面にへばりついていた。そのため地上五十フィート(約15メートル)の空中、高い家の屋根や上階、大きな木の上では、その毒を完全に逃れる可能性があった。このことは、その夜のうちにストリート・コブハムとディトンで証明された。
前者の場所で助かった男は、その渦巻く流れの奇怪さについて驚くべき話をしている。彼は教会の尖塔から見下ろし、村の家々がその墨のような虚無から幽霊のように立ち上がっているのを見たという。一日半のあいだ、彼はそこに留まった。疲れ、飢え、日光に焼かれながら。青空の下、遠くの丘の眺めを背景に、地上はビロードのような黒い広がりとなり、赤い屋根、緑の木々、そして後には黒い覆いをかぶった灌木や門、納屋、離れ、壁などが、ところどころ日光の中へ突き出していた。
だがそれは、黒い蒸気が自然に地中へ沈むまで放置されたストリート・コブハムでのことだった。通常、火星人はそれが目的を果たすと、その中へ踏み入り、蒸気の噴流を向けて、再び空気を晴らした。
彼らは私たちの近くの蒸気の塊に対してもそうした。私たちは、戻ってきたアッパー・ハリフォードの無人の家の窓から、星明かりの中でそれを見た。そこからはリッチモンド・ヒルとキングストン・ヒルの探照灯が行き来するのが見え、十一時ごろ、窓ががたがた鳴り、そこに据えつけられた巨大な攻城砲の音を聞いた。それらは十五分ほど断続的に続き、ハンプトンとディトンの見えない火星人へ向けて当てずっぽうに砲撃していたが、やがて電灯の青白い光線は消え、明るい赤い輝きに取って代わられた。
その後私が知ったところでは、そのとき第四の円筒が、鮮やかな緑の流星となってブッシー・パークに落下した。リッチモンドとキングストンの丘陵線に置かれた砲が撃ち始める前、はるか南西で断続的な砲撃があった。黒い蒸気が砲兵たちを覆いつくす前に、でたらめに砲が撃たれたためだと私は考えている。
こうして、まるで人間がスズメバチの巣をいぶし出すように几帳面に、火星人たちはこの奇妙な窒息性の蒸気を、ロンドン方面の地域に広げていった。三日月の両端はゆっくりと離れていき、ついにはハンウェルからクーム、モールデンへ至る線を形作った。一晩中、彼らの破壊的な管は前進した。セント・ジョージズ・ヒルの火星人が倒されて以後、彼らが砲兵にほんのわずかな機会でも与えたことは一度もなかった。砲が見えない場所に据えられる可能性があれば、そこへ新しい黒い蒸気の筒が発射され、砲がむき出しに配置されている場所には熱線が向けられた。
真夜中までには、リッチモンド・パークの斜面に沿って燃え上がる木々と、キングストン・ヒルの赤い照り返しが、黒い煙の網目を照らし出していた。それはテムズの谷全体を塗りつぶし、見渡すかぎり広がっていた。そしてその中を二体の火星人がゆっくり歩き、シューシュー音を立てる蒸気噴流をあちらこちらへ向けていた。
その夜、彼らは熱線の使用を控えめにしていた。熱線を作り出す材料の供給が限られていたからか、あるいは土地を破壊するつもりはなく、ただ自分たちに抵抗してきた勢力を粉砕し、威圧したかっただけなのか。その後者の目的において、彼らは間違いなく成功した。日曜の夜は、彼らの移動に対する組織的抵抗の終わりだった。その後、彼らに立ち向かう部隊はなかった。あまりに望みのない企てだったからだ。テムズ川を遡って速射砲を運び込んだ水雷艇や駆逐艦の乗組員でさえ、留まることを拒み、反乱を起こして、再び川を下った。その夜以後、人間が試みた唯一の攻勢行動は地雷や落とし穴の準備だったが、それすらも熱狂的で断続的な努力にすぎなかった。
エッシャー方面の砲台の運命は、想像できる限り想像するほかない。生存者はいなかった。秩序だった期待、警戒する将校たち、待機する砲手、手近に積まれた弾薬、馬や弾薬車とともにいる前車の兵、許される限り近くに立つ民間の見物人の群れ、夕べの静けさ、ウィブリッジから来た火傷と負傷の兵を収容する救急車と野戦病院の天幕――それらを思い描くことはできる。そして火星人が発射した弾の鈍い響き、不格好な弾体が木々や家々の上を旋回し、近くの野原で砕ける様子も。
また、注意が突然移る瞬間も思い描ける。黒いものが渦巻き、膨れ上がりながら急速に広がって猛進し、天に向かってそびえ、黄昏を手で触れられるような闇へ変えていく。奇妙で恐るべき蒸気の敵が犠牲者へ大股で迫り、その近くの人馬がかすかに見え、走り、悲鳴を上げ、真っ逆さまに倒れる。狼狽の叫び、突然捨てられる砲、地面で窒息し身をよじる兵たち、そして不透明な煙の円錐が急速に広がっていく。そして夜と消滅――死者を隠す、貫きがたい蒸気の静かな塊だけが残る。
夜明け前には黒い蒸気がリッチモンドの通りを流れ、政府という組織は崩壊しつつありながらも、最後の息絶えるような努力で、ロンドンの住民に避難の必要を呼びかけていた。
第十六章 ロンドン脱出
これで分かるだろう。月曜の夜明けと同時に、世界最大の都市を恐怖の咆哮する波が押し流したのである。逃走の流れは急速に奔流となり、鉄道駅の周囲で泡立つ混乱となって荒れ狂い、テムズ川の船舶をめぐって恐ろしい争奪となって堰き止められ、利用できるあらゆる道筋を通って北へ、東へと急いだ。十時までに警察組織は、正午までには鉄道組織さえも、まとまりを失い、形と効率を失って、揺らぎ、柔らかくなり、ついには社会という身体の急速な液状化の中へ流れ込んでいった。
テムズ川の北側にあるすべての鉄道路線と、キャノン・ストリートのサウス・イースタン鉄道関係者には、日曜の真夜中までに警告が届いており、列車は乗客を詰め込み始めていた。二時でさえ、人々は客車の立ち場所をめぐって獣のように争っていた。三時には、リバプール通り駅から二百ヤード(約180メートル)以上離れたビショップスゲート通りでさえ、人々が踏みつけられ、押し潰されていた。リボルバーが発砲され、人々は刺され、交通整理のために派遣された警官たちは、疲れ果て、怒り狂って、本来守るべき人々の頭を叩き割っていた。
そして日が進み、機関士と火夫たちがロンドンへ戻ることを拒むようになると、逃走の圧力は人々を駅から押し出し、ますます濃くなる群衆として北へ走る街道へ流していった。正午までに火星人がバーンズで目撃され、ゆっくり沈む黒い蒸気の雲がテムズ川に沿って、さらにランベスの低地を越えて流れ、緩慢な前進で橋を渡るすべての逃げ道を断った。別の煙の塊はイーリングを越え、キャッスル・ヒルに生き残った小さな人々の島を取り囲んだ。彼らは生きてはいたが、逃げることはできなかった。
チョーク・ファームで北西鉄道の列車に乗り込もうとしても無駄だったあと――貨物 yard で乗客を詰め込んだ列車の機関車は悲鳴を上げる人々を押し分けて進み、十二人ほどの屈強な男たちが、群衆が機関士を火室に押しつけて潰すのを防ごうと戦っていた――弟はチョーク・ファーム・ロードへ出た。急ぐ車両の群れをかわして横切り、自転車店の略奪に真っ先に加われたのは幸運だった。手に入れた自転車は、窓から引きずり出す際に前輪のタイヤがパンクしたが、それでも彼は乗って走り出した。負傷は手首の切り傷だけだった。ハヴァーストック・ヒルの急なふもとは、何頭もの馬が倒れていたため通れず、弟はベルサイズ通りへ入った。
そうして彼は恐慌の狂乱から抜け出し、エッジウェア通りを迂回して、七時ごろエッジウェアに着いた。何も食べず疲れてはいたが、群衆よりかなり先んじていた。街道沿いでは、人々が車道に立ち、好奇心と驚きに満ちていた。何人もの自転車乗り、数人の騎馬の者、二台の自動車が弟を追い越していった。エッジウェアから一マイル(約1.6キロ)のところで車輪の縁が壊れ、自転車は乗れなくなった。彼はそれを道端に置き去りにし、村を歩いて抜けた。町の大通りでは店が半分開いており、人々は歩道や戸口や窓に群がり、始まりつつあるこの異常な避難民の行列を驚いて見つめていた。弟は宿屋で何とか食べ物を手に入れた。
しばらくのあいだ、彼はエッジウェアに留まり、次に何をすべきか分からずにいた。逃げてくる人々は数を増していた。その多くは、弟と同じように、その場所でぐずぐずしていたい様子だった。火星からの侵略者についての新しい知らせはなかった。
そのころ街道は混雑していたが、まだ身動きできないほどではなかった。その時間の避難民の大半は自転車に乗っていたが、やがて自動車、二輪辻馬車、馬車が急ぎ走るようになり、セント・オールバンズへ向かう道には厚い塵の雲が垂れこめた。
弟がついに東へ向かう静かな小道に入ったのは、チェルムスフォードへ行こうという漠然とした考えがあったからかもしれない。そこには彼の友人が何人か住んでいた。まもなく踏み越し段に出くわし、それを越えて北東へ向かう小道をたどった。いくつかの農家や、名前を知ることのなかった小さな集落の近くを通った。ハイ・バーネットへ向かう草の小道で二人の婦人に出会うまで、避難民はほとんど見なかった。その二人は弟の同行者となった。弟は、まさに彼女たちを救うぎりぎりのところで出くわしたのである。
悲鳴を聞き、角を急いで回ると、二人の男が、彼女たちの乗っていた小さなポニー馬車から彼女たちを引きずり下ろそうともみ合っており、三人目が怯えたポニーの頭を苦労して押さえているのが見えた。婦人の一人、白い服を着た小柄な女性は、ただ悲鳴を上げていた。もう一人、色黒でほっそりした女性は、空いた手に持った鞭で、自分の腕をつかんでいる男を打っていた。
弟は即座に状況を理解し、叫びながら争いの場へ駆け寄った。男の一人が手を止めて弟の方へ向き直った。弟は相手の顔つきから喧嘩は避けられないと悟り、熟練のボクサーだったので、すぐに懐へ飛び込み、馬車の車輪に向かって相手を殴り倒した。
拳闘の騎士道を気取っている場合ではなかった。弟は蹴りを入れて男を静かにさせ、ほっそりした婦人の腕を引っ張っている男の襟首をつかんだ。蹄の音が聞こえ、鞭が弟の顔を打ち、三人目の敵が眉間を殴りつけた。弟がつかんでいた男は身を振りほどき、自分たちが来た方向へ小道を逃げていった。
半ば気絶した弟は、自分が馬の頭を押さえていた男と向き合っているのに気づいた。そして馬車が小道を揺れながら遠ざかり、中の女性たちが振り返っているのが見えた。目の前の男はがっしりした粗暴な男で、間合いを詰めようとしたが、弟は顔面への一撃でそれを止めた。すると、自分が見捨てられたと悟った男は、身をかわして馬車のあとを小道へ逃げ出した。屈強な男がすぐ後ろにつき、先ほど逃げた男も、向きを変えて遠くから追ってきた。
突然、弟はつまずいて倒れた。すぐ後ろの追跡者も頭から転び、弟が立ち上がると、また二人の敵を相手にしていた。ほっそりした婦人が非常に勇敢にも馬車を止め、助けに戻ってこなければ、弟に勝ち目はほとんどなかっただろう。彼女はこの間ずっとリボルバーを持っていたらしい。ただし彼女と連れが襲われた時、それは座席の下にあった。彼女は六ヤード(約5.5メートル)の距離から発砲し、危うく弟に当てそうになった。強盗のうち臆病なほうが逃げ出し、仲間もその臆病を罵りながら続いた。二人は小道の見えるところで止まった。そこには三人目の男が意識を失って倒れていた。
「これを持って!」ほっそりした婦人が言い、弟にリボルバーを渡した。
「馬車へ戻って」と弟は言い、裂けた唇の血を拭った。
彼女は何も言わずに向きを変えた――二人とも息を切らしていた――そして白い服の婦人が怯えたポニーを必死に抑えているところへ戻った。
強盗たちは明らかにもう十分だった。弟が再び見ると、彼らは退却していた。
「よければ、ここに座ります」と弟は言い、空いている前の座席へ乗った。婦人が肩越しに振り返った。
「手綱をください」と彼女は言い、ポニーの脇へ鞭を当てた。次の瞬間には、道の曲がり角が三人の男を弟の視界から隠した。
こうしてまったく思いがけず、弟は息を切らし、口を切り、顎に打撲を負い、拳を血に染めたまま、この二人の女性とともに、見知らぬ小道を馬車で進むことになった。
彼女たちは、スタンモアに住む外科医の妻とその妹だった。外科医は未明、ピナーの危険な患者のところから戻る途中で、どこかの駅で火星人の進撃を聞いたという。彼は急いで帰宅し、女性たちを起こした――召使いは二日前に彼女たちのもとを去っていた――食料をいくらか詰め、リボルバーを座席の下に置き――弟にとっては幸運だった――エッジウェアへ行け、そこで列車に乗るつもりで、と言った。彼自身は近所に知らせるため後に残った。午前四時半ごろには追いつくと言っていたが、今はもう九時近く、彼の姿はまったく見ていなかった。エッジウェアは通行が増していたため止まれず、それでこの脇道へ入ったのだという。
彼女たちが弟に断片的にその話をしたのは、まもなくニュー・バーネットに近いところで再び止まった時だった。弟は、少なくとも彼女たちがどうすべきか決められるまで、あるいは行方の分からない男が到着するまで一緒にいると約束した。そして彼女たちを安心させるため、自分には馴染みのない武器であるそのリボルバーの名手だと称した。
彼らは道端に一種の野営を作り、ポニーは生け垣の中で落ち着いた。弟はロンドンから自分が逃れてきたこと、そして火星人とそのやり方について知っているすべてを話した。太陽は空高く上り、しばらくすると彼らの会話は途絶え、不安な期待の状態に取って代わられた。何人かの通行人が小道をやって来て、弟は彼らからできる限りの知らせを集めた。得られた断片的な答えはどれも、人類に降りかかった大災厄についての印象を深め、この逃走を直ちに続けなければならないという確信を強めた。弟はそのことを彼女たちに強く説いた。
「お金はあります」とほっそりした女性が言い、ためらった。
彼女の目が弟の目と合い、そのためらいは終わった。
「私にもあります」と弟は言った。
彼女は、五ポンド紙幣のほかに、金貨で三十ポンドほど持っていると説明し、それがあればセント・オールバンズかニュー・バーネットで列車に乗れるかもしれないと言った。弟は、列車に押し寄せるロンドン市民の狂乱を見ればそれは望み薄だと考え、自分の案――エセックスを横切ってハロウィッチへ向かい、そこから国を脱出する――を切り出した。
エルフィンストーン夫人――白い服の女性の名はそうだった――はどんな理屈にも耳を貸さず、「ジョージ」と呼び続けた。だが義妹のほうは驚くほど静かで慎重で、ついには弟の提案に同意した。そこでグレート・ノース・ロードを横切るつもりで、彼らはバーネットへ向かった。弟はできるだけポニーを疲れさせないよう、手綱を取って歩いた。太陽が空を上るにつれ、日はひどく暑くなり、足元では厚い白っぽい砂が焼けつき、目をくらませたため、彼らはごくゆっくりとしか進めなかった。生け垣は塵で灰色だった。そしてバーネットへ進むにつれ、騒然としたざわめきが強まっていった。
彼らはより多くの人々に出会いはじめた。その大半は、前方を見つめ、ぼそぼそと曖昧な問いをつぶやき、疲れ、やつれ、汚れていた。夜会服の男が一人、地面に目を落として歩いて通り過ぎた。彼の声が聞こえ、振り返って見ると、片手で髪をつかみ、もう片方の手で見えない何かを打っていた。怒りの発作が終わると、彼は一度も振り返らずに歩き続けた。
弟たち一行がバーネット南の十字路へ進んでいくと、左手の野を横切って道へ向かってくる女性が見えた。子どもを一人抱き、さらに二人の子どもを連れていた。その後、汚れた黒服の男が通り過ぎた。片手には太い杖、もう片方には小さな旅行鞄を持っていた。それから小道の角を曲がり、大通りとの合流点を守るように立つ別荘風の家々のあいだから、汗をかいた黒いポニーに引かれた小さな荷車が現れた。御者台には山高帽をかぶった浅黒い若者がいて、塵で灰色になっていた。荷車には三人の娘、イースト・エンドの工場娘たちと、小さな子ども二人がぎゅうぎゅうに乗っていた。
「これでエッジウェアへ回れるか?」御者が、目をぎらつかせ、顔を白くして尋ねた。弟が、左へ曲がれば行けると告げると、彼は礼も言わずにすぐ鞭を入れた。
弟は前方の家々のあいだから淡い灰色の煙か霞が立ちのぼり、別荘の裏手のあいだに見える道路の向こうにあるテラスの白い正面を覆っているのに気づいた。エルフィンストーン夫人が突然、彼らの前方の家々の上へ、煙を含んだ赤い炎の舌が熱い青空を背景にいくつも跳ね上がるのを見て叫んだ。騒然とした音は今や、多くの声の乱れた混合、多くの車輪のきしみ、荷車の軋み、蹄のスタッカートへと分かれて聞こえるようになった。小道は十字路から五十ヤード(約46メートル)もないところで急に曲がっていた。
「なんてこと!」エルフィンストーン夫人が叫んだ。「私たちをどこへ連れて行くつもりなのです?」
弟は立ち止まった。
大通りは、人々の沸き返る流れだった。北へ押し寄せる人間の奔流が、互いに押し合っていた。太陽の照りつける中で白く輝く大きな塵の層が、地上二十フィート(約6メートル)以内のすべてを灰色で不明瞭にしていた。そしてそれは、密集した馬と、徒歩の男女の急ぐ足、ありとあらゆる車両の車輪によって絶えず新たに巻き上げられていた。
「道を空けろ!」弟は声々が叫ぶのを聞いた。「道を空けろ!」
小道と大通りの合流点に近づくのは、火事の煙の中へ乗り込むようだった。群衆は火のように轟き、塵は熱く刺激的だった。そして実際、道の少し先では別荘が燃え、黒い煙の渦を道の上へ送り出し、混乱に拍車をかけていた。
二人の男が彼らのそばを通り過ぎた。続いて、重い包みを抱えて泣いている汚れた女が通った。迷い犬のレトリバーが、舌を垂らし、怯え惨めな様子で、ためらいがちに彼らの周りを回ったが、弟が脅すと逃げていった。
右手の家々のあいだに見えるロンドン方面の道は、汚れ、急ぐ人々の騒然とした流れで、両側の別荘のあいだに閉じ込められていた。黒い頭、押し合う姿は、角へ急いでくるにつれ輪郭をはっきりさせ、通り過ぎると、後退する群衆の中で再び個性を失い、ついには塵の雲に呑み込まれた。
「進め! 進め!」声々が叫んだ。「道を! 道を!」
ある男の手が、別の男の背を押していた。弟はポニーの頭のところに立っていた。抗いがたいものに引きつけられるように、彼は一歩また一歩と、ゆっくり小道を下っていった。
エッジウェアは混乱の場であり、チョーク・ファームは騒乱の渦だった。だがこれは、まるごとの住民の移動だった。その大群を想像するのは難しい。それ自体に固有の性格はなかった。人影は角を過ぎて流れ出し、小道の中の一行に背を向けて遠ざかっていった。端のほうでは、車輪に脅かされた徒歩の者たちが、溝につまずき、互いにぶつかりながら進んでいた。
荷車や馬車は互いにぎっしり詰まり、機会があるたびに前へ飛び出そうとする、より速く、より焦った車両のためにわずかな道を開けていた。それらは人々を別荘の柵や門へ散らした。
「押せ!」という叫びがあった。「押せ! 奴らが来る!」
ある荷車の上には、救世軍の制服を着た盲目の男が立ち、曲がった指を振り回しながら、「永遠だ! 永遠だ!」と叫んでいた。
その声はかすれ、非常に大きかったので、姿が塵の中に消えた後もしばらく、弟には聞こえていた。荷車にぎゅう詰めになった人々のなかには、愚かしく馬に鞭を打ち、ほかの御者と口論する者もいた。惨めな目で虚空を見つめたまま身じろぎもしない者もいた。喉の渇きに手をかじる者、車の底に倒れ伏す者もいた。馬の銜は泡で覆われ、目は血走っていた。
辻馬車、馬車、店の荷車、荷馬車は数え切れなかった。郵便馬車、セント・パンクラス教区会と記された道路清掃車、粗暴な男たちでいっぱいの巨大な材木運搬車もあった。醸造所の荷馬車が、片側二つの車輪に新しい血をはね散らしながら、ごろごろと通り過ぎた。
「道を空けろ!」声々が叫んだ。「道を空けろ!」
「永ー遠だ! 永ー遠だ!」という声が道の向こうから響いてきた。
悲しげでやつれた女性たちが、とぼとぼ歩いていた。身なりはよく、泣きながらつまずく子どもを連れていたが、その上品な服は塵にまみれ、疲れた顔は涙で汚れていた。そうした女性たちの多くには男たちが付き添っていた。助けになる者もいれば、陰気で荒々しい者もいた。彼らと肩を並べて押し合いながら、色あせた黒いぼろをまとった疲れた街の落伍者たちが進んでいた。目を見開き、大声で、口汚かった。たくましい労働者たちが道を押し開き、書記や店員のような服を着た哀れで乱れた男たちが、発作的にあがいていた。弟は負傷兵に気づいた。鉄道ポーターの服を着た男たち、寝巻きの上に上着を羽織った惨めな者もいた。
だがその構成がどれほど多様であっても、その大群には共通するものがあった。顔には恐怖と苦痛があり、背後には恐怖があった。道の先で騒ぎが起き、荷車の場所をめぐる争いが起こると、その大群全体が歩みを速めた。膝が折れそうなほど怯え、打ちひしがれた男でさえ、その瞬間だけは電気を流されたように再び動き出した。暑さと塵はすでにこの群衆に働きかけていた。肌は乾き、唇は黒くひび割れていた。皆が喉を渇かせ、疲れ、足を痛めていた。さまざまな叫びの中には、口論、非難、疲労と倦怠のうめきが聞こえた。ほとんどの声はかすれ、弱々しかった。そのすべてを貫いて、一つの反復句が流れていた。
「道を! 道を! 火星人が来る!」
その流れから立ち止まり、脇へ出る者はほとんどいなかった。小道は狭い開口部で斜めに大通りへ開いており、ロンドンの方向から来ているように錯覚させる見かけをしていた。それでも人々の渦のようなものがその入口へ押し込まれてきた。流れからはじき出された弱者たちで、その大半はほんの一瞬休むだけで、また流れへ飛び込んでいった。小道を少し下ったところには、二人の友人がかがみ込んでいるそばで、片脚をむき出しにした男が横たわっていた。脚には血のついた布が巻かれていた。友人がいるだけ、その男は幸運だった。
灰色の軍人風の口ひげを生やし、汚れた黒いフロックコートを着た小柄な老人が、足を引きずって出てきて罠馬車のそばに座り、靴を脱いだ――靴下は血で汚れていた――小石を振り出し、またよろよろと歩き出した。すると八、九歳の小さな女の子が、たった一人で、弟のすぐ近くの生け垣の下に身を投げ出して泣き出した。
「もう歩けない! もう歩けない!」
弟は驚きの麻痺から覚め、優しく声をかけながらその子を抱き上げ、エルフィンストーン嬢のところへ運んだ。弟が触れた途端、その子は怯えたようにすっかり静かになった。
「エレン!」群衆の中で、涙を帯びた声の女が悲鳴を上げた。「エレン!」
すると子どもは突然、弟の腕から飛び出し、「お母さん!」と叫んだ。
「奴らが来る」と、小道を馬で通り過ぎる男が言った。
「そこをどけ!」高い位置から御者が怒鳴り、弟は閉じた馬車が小道へ曲がってくるのを見た。
人々は馬を避けようと互いに押し潰し合った。弟はポニーと馬車を生け垣の中へ押し戻し、その男は通り過ぎて、道の曲がり角で止まった。それは二頭立て用の棹がついた馬車だったが、引き綱につながれていたのは一頭だけだった。弟は塵を通してぼんやりと、二人の男が白い担架の上の何かを持ち上げ、イボタノキの生け垣の下の草の上にそっと置くのを見た。
男の一人が弟のところへ駆け寄ってきた。
「水はどこにありますか?」彼は言った。「急速に死にかけています。ひどく喉が渇いている。ガリック卿です。」
「ガリック卿!」弟は言った。「首席判事の?」
「水を」と彼は言った。
「どこかの家に水栓があるかもしれません」と弟は言った。「私たちは水を持っていません。連れを置いては行けません。」
男は群衆を押し分け、角の家の門へ向かった。
「進め!」人々は彼を押しながら言った。「奴らが来る! 進め!」
そのとき弟の注意は、髭を生やした鷲のような顔の男にそらされた。男は小さな手提げ鞄を引きずっていたが、弟の目がそれに留まったまさにその瞬間、鞄が裂け、大量のソブリン金貨を吐き出した。金貨は地面に落ちるとばらばらの硬貨となって散らばるように見えた。それらは人と馬のもみ合う足のあいだを、あちこちへ転がった。男は立ち止まり、その山を呆然と見つめた。辻馬車の車軸が彼の肩に当たり、よろめかせた。彼は悲鳴を上げて後ろへ身をかわし、荷車の車輪が危うくかすめた。
「道を!」周りの男たちが叫んだ。「道を空けろ!」
辻馬車が通り過ぎるやいなや、男は両手を開いて硬貨の山に飛びつき、つかめるだけつかんでポケットへ押し込みはじめた。馬が彼のすぐそばで立ち上がり、次の瞬間、半ば起き上がった彼は馬の蹄の下に押し倒された。
「止まれ!」弟は叫び、邪魔な女を押しのけて、馬の銜をつかもうとした。
だが届く前に、車輪の下で悲鳴が聞こえ、塵の中で車輪の縁が哀れな男の背中を越えていくのが見えた。荷車の御者は弟に鞭を振るい、弟は荷車の後ろへ回り込んだ。無数の叫びが耳を混乱させた。男は散らばった金の中で塵にまみれ、身をよじっていた。立ち上がれなかった。車輪が背骨を折り、下半身は力なく死んだように横たわっていた。弟は立ち上がって次の御者に叫び、黒い馬に乗った男が助けに来た。
「道から出せ」と彼は言った。弟は空いている手で男の襟首をつかみ、横へ引きずった。だが男はなお自分の金をつかもうとし、弟を激しい目でにらみ、金貨を握った手で弟の腕を叩いた。「進め! 進め!」背後で怒った声が叫んだ。「道を! 道を!」
馬車の棹が、黒馬の男が止めた荷車にぶつかり、激しく砕ける音がした。弟が顔を上げると、金を持った男は頭をひねり、自分の襟首をつかむ弟の手首に噛みついた。衝撃があり、黒馬が横によろめき、荷馬がそのそばへ押し寄せた。蹄が弟の足を紙一重で外れた。弟は倒れた男から手を放し、後ろへ跳んだ。地面の哀れな男の顔に浮かんだ怒りが恐怖へ変わるのを見たが、次の瞬間には彼は隠れ、弟は後ろへ押し流され、小道の入口を過ぎるところまで運ばれ、そこへ戻るため奔流の中で必死に戦わねばならなかった。
弟はエルフィンストーン嬢が目を覆っているのを見た。そして小さな子どもが、子ども特有の同情的想像力の欠如で、大きく見開いた目を、転がる車輪の下で踏みにじられ、潰され、黒く静かに横たわる塵まみれの何かに向けていた。「戻ろう!」弟は叫び、ポニーの向きを変えはじめた。「これは渡れない――地獄だ」と彼は言い、彼らは来た道を百ヤード(約91メートル)ほど戻り、争う群衆が見えなくなるところまで行った。小道の曲がり角を過ぎるとき、弟はイボタノキの下の溝にいる死にかけの男の顔を見た。死のように白く、引きつり、汗に光っていた。二人の女性は座席に身を縮め、震えながら黙って座っていた。
それから曲がり角を越えた先で、弟は再び止まった。エルフィンストーン嬢は白く青ざめ、義姉は泣いていた。あまりの惨めさに、もう「ジョージ」と呼ぶことさえできなかった。
弟は恐怖し、途方に暮れていた。だが退いた途端、この横断を試みることがいかに緊急で避けがたいかを悟った。彼は突然決然としてエルフィンストーン嬢の方を向いた。
「あの道を行くしかありません」と彼は言い、再びポニーを回した。
その日二度目に、この娘は自分の気質を証明した。人々の奔流へ道をこじ開けるため、弟は交通の中へ飛び込み、辻馬車の馬を押さえた。そのあいだに彼女はポニーをその頭の前へ横切らせた。荷馬車が一瞬車輪を絡ませ、馬車から長い木片を裂き取った。次の瞬間、彼らは流れに捕まり、前へ押し流された。弟は、顔と手に御者の鞭の赤い痕をつけたまま馬車へよじ登り、彼女から手綱を受け取った。
「後ろの男にリボルバーを向けてください」と彼はそれを彼女に渡しながら言った。「押してくるようなら。いや――馬に向けて。」
それから彼は道を右へ寄っていく機会をうかがいはじめた。だが一度流れに入ると、自分の意志を失い、この塵まみれの敗走の一部になってしまったようだった。彼らは奔流とともにチッピング・バーネットを押し流され、町の中心をほぼ一マイル(約1.6キロ)過ぎてから、ようやく道の反対側へ渡りきった。それは言い表しがたい騒音と混乱だった。だが町の中とその先で道は何度も分岐しており、そのため圧力はいくらか和らいだ。
彼らはハドリーを抜けて東へ進んだ。そこでは道の両側で、またさらに先の別の場所でも、大勢の人々が小川の水を飲んでいた。中には水にたどり着こうと争う者もいた。さらに先、イースト・バーネット近くで一息ついた時、彼らは二本の列車が信号も指示もなく、互いの後をゆっくり走っているのを見た。列車は人であふれ、機関車の後ろの石炭の中にまで男たちがいた。グレート・ノーザン鉄道に沿って北へ向かっていた。弟は、それらはロンドンの外で満員になったに違いないと考えている。そのころには、人々の狂った恐怖のため、中心部の終着駅は使用不可能になっていたからだ。
この近くで、彼らは午後の残りの時間を過ごすために止まった。その日の激烈な出来事で、三人ともすでに完全に疲れ果てていたからだ。彼らは空腹の兆しに苦しみはじめた。夜は寒く、誰ひとり眠る勇気がなかった。そして夕方には、多くの人々が彼らの休んでいる場所の近くの道を急いで通り過ぎていった。前方にある名も知れぬ危険から逃れ、弟が来た方向へ向かっていた。
XVII. 「サンダーチャイルド。」
火星人がただ破壊だけを狙っていたなら、月曜日にはロンドンの全住民を、近郊諸州へゆっくり広がっていくそのさなかに、皆殺しにできたはずだ。バーネットを抜ける街道だけではない。エッジウェア、ウォルサム・アビーを通る道にも、東へサウスエンド、シューベリーネスへ向かう道にも、テムズ川の南でディールやブロードステアーズへ至る道にも、同じ狂乱の敗走が押し寄せていた。もしその六月の朝、気球に乗ってロンドン上空の燃えるような青空に浮かぶことができたなら、絡み合う街路の迷宮から北へ東へ延びるあらゆる道は、流れ出す避難民によって黒い点描で埋められて見えただろう。その一点一点が、恐怖と肉体的苦痛にあえぐ一人の人間だった。前章で弟がチッピング・バーネットへ向かう道で見たことを詳しく述べたのは、この黒い点の群れが、当事者の一人の目にどう映ったかを読者に知ってもらうためである。世界の歴史上、これほどの人間の大群が、これほど一斉に移動し、苦しんだことはかつてなかった。伝説に残るゴート人やフン族の大軍も、アジアが生んだ最大の軍勢も、その奔流の中では一滴にすぎなかっただろう。しかもこれは統制された行軍ではない。殺到だった。巨大で恐ろしい殺到。秩序も目的地もなく、武器も食糧も持たない六百万の人々が、なだれを打って逃げていた。文明の敗走、人類虐殺の始まりだった。
気球乗りの真下には、広く果てしなく街路の網が見えただろう。家々、教会、広場、半月形の街並み、庭園――すでに見捨てられたそれらが、巨大な地図のように広がり、南の方では染みになっていた。イーリング、リッチモンド、ウィンブルドンの上には、まるで怪物じみたペンが地図の上にインクをぶちまけたかのように見えたに違いない。黒い染みは一つ一つ、休むことなく着実に大きく広がり、あちらこちらへ枝を伸ばし、ときには高まりに押し止められ、ときには尾根を越えて新たに見つけた谷へすばやく流れ込んだ。まさに吸い取り紙の上にインクの滴が広がっていくそのものだった。
その先、川の南に盛り上がる青い丘陵の上では、きらめく火星人たちが行き来し、落ち着き払って、整然と、毒雲をこの土地へ、ついであの土地へと広げていた。用が済むと蒸気噴射でそれをまた押さえ込み、征服した土地を占領していく。彼らの狙いは殲滅というより、完全な士気崩壊とあらゆる抵抗の破壊にあったようだ。見つけた火薬の貯蔵所はすべて爆破し、電信線をすべて切断し、鉄道をあちこちで破壊した。人類の脚を断ち切っていたのである。彼らは作戦範囲を広げることに急いでいる様子はなく、その一日、ロンドン中心部から外へは出てこなかった。月曜の朝を通じて、ロンドンでは相当数の人々が家に留まっていた可能性がある。多くの者が自宅で黒い煙に窒息して死んだことだけは確かだ。
正午頃まで、ロンドン・プール[訳注:ロンドン橋下流のテムズ川港湾部]は驚くべき光景だった。汽船やありとあらゆる船がそこに停泊していた。避難民が差し出す法外な金額に釣られたのだという。そうした船へ泳ぎ着こうとした多くの者が、ボートフックで押し返され、溺れ死んだとも言われている。午後一時頃、薄く残った黒い蒸気の雲がブラックフライアーズ橋のアーチの間に現れた。その瞬間、ロンドン・プールは狂乱と乱闘と衝突の場に変わった。しばらくの間、多数の小舟や荷船がタワー・ブリッジ北側のアーチに詰まり、船乗りやはしけ人足たちは、川岸から船へ群がってくる人々を相手に、凄まじい勢いで戦わねばならなかった。実際、上から橋脚を伝って降りてくる者までいた。
その一時間後、時計塔の向こうに火星人が現れ、川を渡って歩いてくると、ライムハウスより上流に浮いていたのは残骸だけだった。
第五の円筒の落下については、まもなく語ることになる。第六の星はウィンブルドンに落ちた。弟は草地で、四輪馬車の中の女たちのそばに立って見張りをしており、丘陵のはるか向こうでその緑の閃光を見た。火曜日、小さな一行はなお海を渡るつもりで、人々が群がる土地を抜け、コルチェスターへ向かった。火星人が今やロンドン全域を掌握したという知らせは確認された。彼らはハイゲートで目撃され、ニーズデンにさえ現れたと言われていた。だが弟の視界に火星人が入ったのは翌日のことだった。
その日、散り散りになった群衆は、食糧の緊急性を悟り始めた。飢えが増すにつれ、所有権など顧みられなくなった。農夫たちは武器を手に、牛小屋、穀倉、実りかけた根菜畑を守ろうとしていた。今や弟と同じように東へ顔を向ける者が多く、食べ物を手に入れようとロンドンへ戻っていく決死の者までいた。そうした者の多くは北部郊外から来た人々で、黒い煙については噂でしか知らなかった。弟は、政府構成員のおよそ半数がバーミンガムに集まり、ミッドランド諸州一帯に自動地雷として用いるため、大量の高性能爆薬が準備されていると聞いた。
また、ミッドランド鉄道会社は初日のパニックで逃げ出した人員を補充し、運行を再開しており、近郊諸州の混雑を緩和するため、セント・オールバンズから北行きの列車を走らせているとも聞かされた。さらにチッピング・オンガーには、北部の町々に大量の小麦粉があり、二十四時間以内に近隣の飢えた人々へパンが配給されると告げる掲示もあった。しかしこの情報も、弟が立てた脱出計画を思いとどまらせはしなかった。三人は一日中東へ進み、パンの配給についてはこの約束以上のことを聞かなかった。実際、ほかの誰もそれ以上を耳にすることはなかった。その夜、第七の星が落ち、プライムローズ・ヒルに落下した。弟と交代で見張りをしていたエルフィンストーン嬢が、それを目撃した。彼女は見たのだ。
水曜日、三人の逃亡者は――未熟な麦畑で一夜を明かしていた――チェルムスフォードに着いた。そこで住民の一団が「公共補給委員会」と称してポニーを食糧として徴発し、翌日その分け前を与えるという約束以外、何も代償を与えなかった。ここではエッピングに火星人がいるという噂があり、また侵略者の一体を爆破しようとしたむなしい試みの中で、ウォルサム・アビー火薬工場が破壊されたという知らせもあった。
このあたりでは、人々が教会の塔から火星人を見張っていた。弟にとっては幸運なことに、三人ともひどく空腹だったにもかかわらず、食糧を待つより、すぐ海岸へ向かう方を選んだ。正午までに一行はティリンガムを通過した。奇妙なことにそこは、食糧を探す少数のこそこそした略奪者を除けば、まったく静まり返り、無人のように見えた。ティリンガムの近くで、彼らは突然海を目にした。そして想像し得る限り最も驚くべき、あらゆる種類の船の群れも。
というのも船乗りたちは、もはやテムズ川を遡れなくなると、人々を運び出すためにエセックス海岸へ、ハロウィッチ、ウォルトン、クラクトンへ、さらにその後ファウルネス、シューベリーへとやって来たからである。船団は巨大な鎌形の曲線を描いて停泊し、その先はついにザ・ネイズの方角の霧の中へ消えていた。岸近くには無数の漁船があった。イングランド、スコットランド、フランス、オランダ、スウェーデンの漁船。テムズ川から来た蒸気ランチ、ヨット、電気艇。その向こうには、さらに大きな積載量の船がいた。汚れきった石炭船の大群、こぎれいな商船、家畜運搬船、客船、石油タンカー、外航不定期船、古びた白い輸送船まであり、サウサンプトンやハンブルクから来た白と灰色の端正な定期船も見えた。そしてブラックウォーター川の向こう、青い海岸沿いには、浜辺の人々と値段交渉をしている密集した小舟の群れを、弟はぼんやりと見分けることができた。その群れはブラックウォーター川を遡り、ほとんどモールドン近くまで続いていた。
およそ二マイル(約三・二キロ)沖に、一隻の装甲艦が、船体を非常に低く水に沈めて停泊していた。弟の目には、ほとんど浸水した船のように見えた。これが衝角艦サンダーチャイルドだった。見える範囲でただ一隻の軍艦だったが、右手のはるか遠く、なめらかな海面の上には――その日は完全な凪だった――黒煙の蛇が横たわり、英海峡艦隊の次の装甲艦群の所在を示していた。火星人による征服のさなか、艦隊はテムズ河口を横切るように長い戦列を張り、蒸気を上げ、戦闘準備を整えて待機していた。警戒していながら、それを防ぐ力はなかった。
海を見た途端、エルフィンストーン夫人は義妹の慰めにもかかわらず、恐慌に屈した。彼女はこれまでイングランドの外へ出たことがなく、異国で頼る人もなく身を任せるくらいなら死んだ方がましだ、などと言い募った。哀れなことに、夫人はフランス人と火星人が大差ないものに思えていたらしい。二日間の旅のあいだ、彼女はますますヒステリックになり、怯え、落ち込んでいった。彼女の頭を占めていたのはスタンモアへ帰ることだった。スタンモアでは、いつだって物事はうまくいき、安全だった。スタンモアへ行けばジョージが見つかるはずだ……。
彼女を浜辺まで連れていくには、最大限の苦労を要した。そこでやがて弟は、テムズ川から来た外輪汽船の男たちの注意を引くことに成功した。彼らはボートを寄こし、三人で三十六ポンドという取り決めをした。その汽船はオステンドへ向かうのだと男たちは言った。
弟が桟橋で船賃を払い、連れの二人とともに無事汽船へ乗り込んだのは、およそ二時頃だった。船内には食べ物があったが、途方もない値段だった。それでも三人は船首側の座席の一つで、どうにか一食にありついた。
船にはすでに四十人ほどの乗客が乗っており、その中には通行券を得るために最後の金を使い果たした者もいた。それでも船長は午後五時までブラックウォーター川沖に留まり、着席甲板が危険なほど混み合うまで乗客を拾い続けた。もしその頃、南の方で砲声が鳴り始めなかったなら、おそらくさらに長く留まっていただろう。それに応じるように、沖合の装甲艦が小砲を一発撃ち、旗の列を掲げた。煙突から煙の噴流が噴き出した。
乗客の中には、この砲撃はシューベリーネスから来ているのだと言う者もいた。だが音が大きくなっていることに気づき、その意見は揺らいだ。同時に、南東のはるか遠く、黒煙の雲の下から、三隻の装甲艦のマストと上部構造物が次々と海上に姿を現した。しかし弟の注意はすぐ、南の遠い砲声へ戻った。彼には、遠く灰色の靄の中から煙の柱が立ち上っているように見えた。
小さな汽船は、すでに巨大な船団の三日月形の外側を東へぱたぱたと進んでおり、低いエセックスの海岸は青く霞み始めていた。その時、ファウルネスの方角から泥深い海岸沿いに進んでくる火星人が一体、遠い彼方に小さく、かすかに現れた。それを見て、船橋の船長は、自分がぐずぐずしていたことへの恐怖と怒りで、声の限りに悪態をついた。外輪までその恐怖に感染したかのようだった。船上のすべての人間が舷側や座席に立ち、内陸の木々や教会の塔よりも高く、人間の歩幅をのんびり茶化すように進んでくる遠い姿を見つめた。
それは弟が初めて見た火星人だった。彼は恐怖よりも驚きに打たれ、この巨人が船団へ向かって、海岸線が遠ざかるにつれますます深く水へ踏み込みながら、ゆっくり近づいてくるのを見守った。すると、はるかクラウチ川の向こうにもう一体が現れ、丈の低い木々をまたいで歩いてきた。さらにもう一体、もっと遠く、海と空の中ほどに掛かっているような光る干潟を深く渡っていた。彼らはいずれも海へ向かって歩いていた。ファウルネスとザ・ネイズのあいだにひしめく無数の船の逃走を阻もうとしているかのようだった。小さな外輪船のエンジンが脈打つように奮闘し、車輪が後方へ泡を撒き散らしているにもかかわらず、その不吉な進行から船が遠ざかる速度は、ぞっとするほど遅かった。
弟が北西へ目をやると、巨大な三日月形の船団は、近づく恐怖にすでに身もだえしていた。ある船が別の船の背後を通り、別の船は舷側を向けていたのを船首を向けるように回頭し、汽船は汽笛を鳴らして大量の蒸気を吐き、帆が広げられ、ランチがあちらこちらへ駆け回っていた。弟はこの光景と、左手から忍び寄る危険に心を奪われ、沖合には目もくれなかった。すると汽船が急に動き――衝突を避けるため急旋回したのだ――弟は立っていた座席から真っ逆さまに投げ出された。周囲には叫び声、足音の踏み鳴らし、そしてかすかに応じられたような歓声があった。汽船は傾き、弟を両手をついた姿勢へ転がした。
弟は跳ね起きた。右舷側、激しく傾き揺れる船から百ヤード(約九十一メートル)もないところに、鋤の刃のような巨大な鉄の塊が水を裂いて突き進み、その両側に大波となった泡を跳ね上げていた。その波は汽船へ飛びかかり、外輪を無力に空中へ投げ出させ、それから甲板をほとんど喫水線まで吸い下げた。
飛沫の奔流が一瞬、弟の目をくらませた。視界が戻ると、怪物はすでに通り過ぎ、陸へ向かって疾走していた。突進する構造物の上には大きな鉄の上部構造物がそびえ、そこから二本の煙突が突き出て、火を交えた煙の噴出を吐いていた。魚雷衝角艦サンダーチャイルドだった。全速力で突き進み、危機に瀕した船団を救いに来たのだ。
揺れる甲板で舷側につかまり足場を保ちながら、弟は突進するリヴァイアサンの向こうに、再び火星人たちを見た。三体は今や互いに近づき、海へかなり入っていたため、三脚の支柱はほとんど水没していた。そうして沈み込み、遠近の中で眺めると、彼らは、汽船がその航跡でどうしようもなく揺さぶられている巨大な鉄の塊ほどには恐ろしく見えなかった。火星人たちはこの新たな敵を驚いて見ているようだった。彼らの知性にとって、この巨人もまた自分たちと同類の何かに見えたのかもしれない。サンダーチャイルドは砲を撃たず、ただ全速力で彼らへ向かって突進した。おそらく砲撃しなかったからこそ、あれほど敵へ接近できたのだ。火星人たちはこの船をどう捉えればいいのかわからなかった。一発でも砲弾を撃っていれば、彼らはただちに熱線で沈めていたに違いない。
その速度はすさまじく、一分もたたぬうちに汽船と火星人との中間まで達したように見えた。エセックス海岸の水平に広がる遠景を背に、黒い巨体がしだいに小さくなっていく。
突然、先頭の火星人が管を下げ、黒いガスの容器を装甲艦へ向けて放った。それは左舷に命中し、墨のような噴流となってはね返り、海の方へ転がっていった。広がる黒い煙の奔流だったが、装甲艦はそこを抜け出した。水面近く、しかも太陽を正面に受けていた汽船の見張る者たちには、装甲艦はすでに火星人たちの間へ入り込んだように見えた。
彼らは、痩せた姿がばらばらになり、岸へ退きながら水中から立ち上がるのを見た。その一体が、カメラのような熱線発生器を持ち上げた。それを斜め下へ向けると、触れた水面から蒸気の堤が湧き上がった。その光線は、白熱した鉄棒が紙を貫くように、船腹の鉄を貫いたに違いない。
立ち上る蒸気の中から炎がちらりと上がり、次の瞬間、火星人はよろめき、ふらついた。そのまた次の瞬間には斬り倒され、大量の水と蒸気が高く空へ噴き上がった。サンダーチャイルドの砲声が悪臭の霧を通して響き、一発また一発と放たれた。そのうち一発は汽船のすぐそばで高く水柱を上げ、北へ逃げる他の船へ向かって跳弾し、一隻の漁船を木片同然に打ち砕いた。
だがそれを気にかける者はほとんどいなかった。火星人が崩れ落ちるのを見て、船橋の船長は言葉にならない声で叫び、汽船の船尾に詰めかけた乗客たちは一斉に叫んだ。そしてまた叫んだ。白い混沌の向こうから、長く黒いものがうねるように現れ、その中央部から炎をなびかせ、通風筒と煙突から火を噴きながら突進してきたからだ。
船はまだ生きていた。操舵装置は無事で、エンジンも動いていたらしい。まっすぐ第二の火星人へ向かい、百ヤード(約九十一メートル)以内に迫ったところで熱線が照準を合わせた。次の瞬間、激しい轟音と目もくらむ閃光とともに、甲板が、煙突が、上へ跳ね上がった。爆発の凄まじさに火星人はよろめき、そのまた次の瞬間、なお速度の勢いで前進する燃える残骸が彼に衝突し、紙細工のように押し潰した。弟は思わず叫んだ。沸騰する蒸気の混沌が、再びすべてを隠した。
「二体だ!」船長が叫んだ。
誰もが叫んでいた。汽船全体が端から端まで熱狂的な歓声に震え、その歓声は、海へ向かって逃げる無数の船や小舟の群れの中で、まず一隻が受け、やがてすべてが受け継いだ。
蒸気は何分ものあいだ水面に垂れ込め、第三の火星人も海岸も完全に覆い隠した。そのあいだずっと、船は着実に外輪を動かし、海へ、戦場から離れて進んでいた。ようやく混乱が晴れた時、漂う黒い蒸気の帯が間に入り、サンダーチャイルドの姿は何も見分けられず、第三の火星人も見えなかった。だが沖合の装甲艦群は今やかなり近づき、汽船のそばを過ぎて岸へ向かっていた。
小船はなお海へ向かって進み続け、装甲艦群は、まだ蒸気と黒いガスが入り混じり、奇妙に渦巻き結び合った大理石模様の蒸気の壁に隠れた海岸へ、ゆっくり遠ざかっていった。避難民の船団は北東へ散っていた。いくつかの漁船が装甲艦と汽船のあいだを帆走していた。しばらくして、沈みかけた雲の帯に達する前に、軍艦群は北へ針路を変え、それから突然反転して、濃くなる夕靄の中を南へ入っていった。海岸はかすみ、やがて沈む太陽の周りに集まる低い雲の帯の中で見分けがつかなくなった。
すると突然、夕日の黄金の靄の中から砲声の震動が届き、黒い影の形が動いた。誰もが汽船の手すりへ殺到し、目を焼く西の炉の中を凝視したが、はっきり見分けられるものはなかった。煙の塊が斜めに立ち上り、太陽の面を横切った。汽船は果てしない不安の中、鼓動を打つように進み続けた。
太陽は灰色の雲の中へ沈み、空は赤く染まって暗くなり、宵の明星が震えるように姿を現した。船長が叫んで指さした時には、もう深い薄暮だった。弟は目を凝らした。灰色の中から何かが空へ駆け上がった――西の空、雲の上にある明るく澄んだ領域へ、斜め上に、非常な速さで駆け上がった。平たく幅広く、きわめて大きなものが、巨大な弧を描いて回り、小さくなり、ゆっくり沈み、夜の灰色の謎の中へ再び消えた。そして飛びながら、それは大地へ闇を降らせていた。
第二部 火星人支配下の地球
I. 足下で
第一部では、私は自分自身の体験から大きく逸れ、弟の経験を語りすぎた。そのため前二章のあいだずっと、私と司祭は、黒い煙を逃れてたどり着いたハリフォードの空き家に潜んだままだった。そこへ話を戻そう。私たちはその日曜の夜から翌日――あの恐慌の日――まで、世界の他の場所から黒い煙によって切り離された、小さな昼光の島の中に留まっていた。あの二日間、私たちにできることは、痛むほどの無為の中で待つことだけだった。
私の心は妻への不安で占められていた。レザヘッドにいる妻が、怯え、危険にさらされ、私をすでに死んだものとして嘆いている姿が目に浮かんだ。私は部屋を歩き回り、妻から切り離されていること、私の不在のあいだ妻に起こり得るあらゆることを思って、声を上げて泣いた。従弟はどんな非常時にも十分勇敢だと知っていたが、危険をすばやく悟り、即座に立ち上がるような男ではなかった。今必要なのは勇敢さではなく、慎重さだった。私にとって唯一の慰めは、火星人たちはロンドン方面へ、妻から離れて進んでいるのだと信じることだった。こうした漠然とした不安は、心を過敏にし、苦しませる。司祭の絶え間ない嘆きの声に、私はひどく疲れ、いら立った。彼の利己的な絶望を見ているのも嫌になった。何度か効果のない抗議をした後、私は彼から離れた。地球儀、長椅子、書き取り帳のある部屋――明らかに子供の教室――にこもった。彼がそこまでついてくると、私は家の最上階の物置部屋へ行き、痛むような苦悩と二人きりになるため、内側から鍵を掛けた。
その日一日と翌朝、私たちは黒い煙に絶望的に閉じ込められていた。日曜の夕方には隣家に人の気配があった。窓辺の顔、動く明かり、やがて扉の激しく閉まる音。だがその人々が誰だったのか、その後どうなったのかは知らない。翌日、彼らの姿は何も見なかった。黒い煙は月曜の朝を通じてゆっくり川の方へ漂い、しだいに私たちに近づき、ついには私たちを隠している家の外の道路を伝って流れていった。
正午頃、一体の火星人が野を横切って現れ、過熱蒸気の噴流でその物質を押さえ込んでいった。その蒸気は壁に当たって音を立て、触れた窓をすべて砕き、前の部屋から逃げ出す司祭の手を火傷させた。ようやく水浸しの部屋を這うように横切り、再び外をのぞくと、北の田園はまるで黒い吹雪が過ぎた後のようだった。川の方を見ると、焦げた牧草地の黒の中に、説明のつかない赤みが混じっているのを見て驚いた。
しばらくのあいだ、この変化が私たちの状況にどう影響するのか、黒い煙への恐怖から解放されたこと以外にはわからなかった。しかしやがて、もはや閉じ込められてはいない、今なら逃げられるのだと気づいた。脱出路が開けていると悟るやいなや、行動への思いが戻ってきた。だが司祭は無気力で、聞き分けがなかった。
「ここなら安全です」彼は繰り返した。「ここなら安全です。」
私は彼を置いていく決心をした――そうしていればよかったのだ! 砲兵の教えで前より賢くなっていた私は、食べ物と飲み物を探した。火傷に使う油とぼろ布を見つけ、寝室の一つで見つけた帽子とフランネルのシャツも持っていった。私が一人で行くつもりだと、そして一人で行く覚悟を決めたと彼にはっきりわかると、彼は突然我に返ったように、一緒に行くと言い出した。そして午後のあいだずっと静かだったので、五時頃だったと思うが、私たちは黒く焦げた道をサンベリーへ向けて出発した。
サンベリーにも、その道沿いのあちこちにも、ねじれた姿勢の死体が転がっていた。人間だけでなく馬もいた。ひっくり返った荷車や荷物も、すべて厚い黒い塵に覆われていた。その煤けた粉の覆いは、私が読んだポンペイの滅亡を思い出させた。私たちは災難に遭うことなくハンプトン・コートへ着いた。目にするものの奇妙で見慣れない様子で頭はいっぱいだった。ハンプトン・コートでは、息詰まる漂流を免れた緑の一画を見つけ、目が救われる思いがした。私たちはブッシー・パークを抜けた。栗の木の下を鹿が行き来し、遠くでは何人かの男女がハンプトンへ急いでいた。こうしてトウィッケナムへ着いた。これが私たちの見た最初の人々だった。
道の向こう遠く、ハムとピーターシャムの先の森はまだ燃えていた。トウィッケナムは熱線にも黒い煙にも害されておらず、このあたりには人も多かったが、誰も私たちに知らせを与えることはできなかった。大半は私たちと同じように、小康状態を利用して居場所を移している者たちだった。ここではまだ多くの家に、恐怖に取り憑かれ、逃げることすらできない住民が残っていたように思う。ここでもまた、慌ただしい敗走の痕跡は道沿いに豊富だった。とりわけ鮮明に覚えているのは、壊れた自転車が三台ひとかたまりになり、後続の荷車の車輪に踏みつけられて道路へ叩き込まれていた光景だ。私たちは八時半頃、リッチモンド橋を渡った。もちろん、むき出しの橋の上は急いで渡ったが、私は流れを下っていくいくつもの赤い塊に気づいた。中には数フィート(数メートル)にも及ぶものがあった。それが何なのかはわからなかった――詳しく見る時間はなかった――そして私は実際以上に恐ろしい解釈をしてしまった。ここでもサリー側には、かつて煙だった黒い塵と死体があった。駅へ向かう道の近くには死体の山があった。だがバーンズ方面へかなり進むまで、火星人の姿は見なかった。
黒くなった遠景の中で、三人の人影が脇道を川へ向かって走っていくのが見えたが、それ以外は無人のようだった。丘の上ではリッチモンドの町が盛んに燃えていた。リッチモンドの町の外には、黒い煙の痕跡はなかった。
すると突然、キューへ近づいた時、多くの人々が走って来た。そして火星人の戦闘機械の上部構造物が、家々の屋根越しに姿を現した。私たちから百ヤード(約九十一メートル)も離れていなかった。私たちは危険に愕然として立ち尽くした。もし火星人が見下ろしていたら、私たちは即座に死んでいただろう。恐怖のあまり先へ進む勇気が出ず、脇へ逸れて庭の小屋に身を隠した。そこで司祭はうずくまり、声もなく泣き、もう動こうとしなかった。
だがレザヘッドへ行くという固い思いは私を休ませず、薄暮の中で再び外へ出ることにした。低木の茂みを抜け、敷地内に立つ大きな家の脇の通路を進み、キューへ向かう道へ出た。司祭は小屋に残してきたが、彼は慌てて私の後を追ってきた。
この二度目の出発は、私の人生で最も無謀な行為だった。火星人が周囲にいるのは明らかだったからだ。司祭が私に追いつくやいなや、私たちは先ほど見た戦闘機械か、あるいは別の一体かが、キュー・ロッジの方角、草地の向こうはるかにいるのを見た。四つか五つの小さな黒い人影が、緑がかった灰色の野をその前で急いで横切っており、すぐにその火星人が彼らを追っているのだとわかった。三歩で火星人はその者たちの中へ入り、彼らはその足元から四方八方へ逃げ散った。火星人は熱線で彼らを殺しはせず、一人ずつ拾い上げた。どうやら作業員の籠が肩に掛かるように背後へ突き出た大きな金属製の運搬器へ、彼らを放り込んでいるようだった。
敗北した人類に対して、火星人が破壊以外の目的を持つかもしれないと私が悟ったのは、これが初めてだった。私たちは一瞬石のように固まり、それから向きを変えて背後の門を抜け、塀に囲まれた庭へ逃げ込み、見つけたというより幸運な溝へ転がり落ちた。そして星が出るまで、互いに囁くことすらほとんどできず、そこに横たわっていた。
私たちが再び出発する勇気を集めたのは、おそらく十一時近くだったと思う。もはや道へ出ることはせず、生け垣沿いや植え込みの中を忍び歩いた。闇の中を鋭く見張り、右は彼が、左は私が、周囲のいたるところにいるように思える火星人を警戒した。ある場所で私たちは、焦げて黒くなり、今は冷えて灰になった一帯に踏み込んだ。そこには人間の死体がいくつも散らばっていた。頭と胴をひどく焼かれていたが、脚と靴はほとんど無事だった。死んだ馬もいた。さらにおそらく五十フィート(約十五メートル)ほど後方には、四門の引き裂かれた大砲と砕かれた砲車が一列に並んでいた。
シーンは破壊を免れたようだったが、そこは静まり返り、無人だった。ここでは死体に出くわさなかった。ただ、夜が暗すぎて、その場所の脇道まで見ることはできなかった。シーンで、同行者が突然、気が遠くなりそうだ、喉が渇いたと訴えたため、私たちはどこかの家に入ってみることにした。
最初に入った家は、窓に少し手間取ったあと侵入した小さな半戸建てのヴィラだった。そこには、黴びたチーズ以外に食べられるものは何も残っていなかった。ただし飲み水はあった。そして私は、次に家をこじ開ける際に役立ちそうな手斧を持ち出した。
それから道がモートレイクへ曲がる場所へ渡った。そこには塀に囲まれた庭の中に白い家が立っており、その家の食料室で私たちは食糧の蓄えを見つけた。鍋に入ったパン二斤、生のステーキ、半分のハムである。私がこの目録をこれほど正確に挙げるのは、後にわかったことだが、私たちは次の二週間、この蓄えで生き延びる運命にあったからだ。棚の下には瓶ビールが置かれ、インゲン豆の袋が二つ、しおれたレタスもいくつかあった。この食料室は洗い場のような台所に通じており、そこには薪があった。また戸棚もあり、その中には一ダース近いブルゴーニュワイン、缶入りのスープと鮭、ビスケットの缶が二つあった。
私たちは隣の台所で、明かりをともす勇気がなかったので暗闇のまま、パンとハムを食べ、同じ瓶からビールを飲んだ。司祭はなお臆病で落ち着かなかったが、不思議なことに今度は先へ進みたがった。私が食べて体力を保てと彼を促していた時、私たちを閉じ込めることになる出来事が起こった。
「まだ真夜中ではないはずだ」私がそう言った。すると、鮮烈な緑の光が目もくらむほど輝いた。台所のすべてが緑と黒の中にはっきり浮かび上がり、また消えた。続いて、私はそれ以前にも以後にも聞いたことのない衝撃音が響いた。その直後、ほとんど同時と思えるほど続けざまに、私の背後でどすんという音がし、ガラスが砕け、周囲で石材が崩れ落ちる轟音とがらがらいう音が起こり、天井の漆喰が私たちの上へ落ちてきて、頭上で無数の破片に砕けた。私は床を真っ直ぐ吹き飛ばされ、かまどの取っ手にぶつかって気絶した。司祭によれば、私は長いあいだ意識を失っていたという。気がつくと、再び暗闇の中におり、司祭が私に水をぽんぽんとかけていた。後でわかったことだが、彼の顔は額の切り傷から出た血で濡れていた。
しばらくのあいだ、何が起きたのか思い出せなかった。それから物事がゆっくり戻ってきた。こめかみの打撲が存在を主張した。
「よくなりましたか?」司祭が囁いた。
ようやく私は答えた。身を起こした。
「動かないで」彼は言った。「床は食器棚から落ちた陶器の破片だらけです。音を立てずに動くなんて、とても無理です。それに、連中は外にいるような気がします。」
私たちは二人とも完全に黙り込んだ。互いの息遣いさえほとんど聞こえないほどだった。すべてが死んだように静まり返っているように思えたが、一度だけ、近くで何か――漆喰か壊れた煉瓦積み――が、ごろごろと音を立てて滑り落ちた。外のごく近くでは、金属的ながらがらいう音が断続的にしていた。
「あれです!」やがてまたその音がした時、司祭が言った。
「ああ」私は言った。「だが何だ?」
「火星人です!」司祭が言った。
私はもう一度耳を澄ませた。
「熱線とは違った」私は言った。そしてしばらくのあいだ、巨大な戦闘機械の一つが家にぶつかったのではないかと考えた。ちょうど、シェッパートン教会の塔に一体がよろめきぶつかるのを見たように。
私たちの状況はあまりに奇妙で理解しがたく、夜明けが来るまでの三、四時間、ほとんど身動きもしなかった。やがて光が差し込んできた。黒いままの窓からではなく、背後の壁にある梁と崩れた煉瓦の山との間の三角形の隙間からだった。私たちはその時初めて、台所の内部を灰色がかった光の中に見た。
窓は庭土の塊で押し破られており、その土は私たちが座っていた食卓の上へ流れ込み、足元まで広がっていた。外では土が家に高く盛り上がっていた。窓枠の上部には、根元から引き抜かれた排水管が見えた。床には砕けた金物類が散乱していた。台所の家側の端は壊れており、そこから日光が差し込んでいることから、家の大部分が崩壊したのは明らかだった。この破壊と鮮やかな対照をなして、流行の淡い緑に塗られたきちんとした食器棚があり、その下には銅や錫の器がいくつも並び、壁紙は青と白のタイルを模していた。台所レンジの上の壁には、色刷り付録が二枚ひらひらしていた。
夜明けがはっきりするにつれ、壁の隙間から、火星人の体が見えた。まだ赤熱している円筒の番をしていたのだろう。その姿を見た私たちは、できるかぎり慎重に、薄明の台所から洗い場の暗がりへ這い戻った。
その瞬間、正しい解釈が私の頭にひらめいた。
「第五の円筒だ」私は囁いた。「火星からの第五弾が、この家に当たって、私たちを瓦礫の下に埋めたんだ!」
しばらく司祭は黙っていた。それから彼は囁いた。
「神よ、どうかお慈悲を!」
やがて彼が一人でしくしく泣いているのが聞こえた。
その音以外、私たちは洗い場でじっとしていた。私などはほとんど息をする勇気もなく、台所の戸口のかすかな光を目で凝視して座っていた。司祭の顔が、ぼんやりした楕円形として、また襟と袖口がかろうじて見えた。外では金属を打つ音が始まり、次いで激しいほうほうという鳴き声、さらに静かな間を置いて、機関のようなシューッという音がした。これらの音は、大部分が正体不明だったが、断続的に続き、時がたつにつれてむしろ数を増していくようだった。やがて、規則的などすんどすんという音と振動が始まり、周囲のあらゆるものを震わせ、食料室の器を鳴らしてずらした。それは続き続けた。一度、光が遮られ、幽霊じみた台所の戸口が完全な闇になった。私たちは何時間もそこにうずくまり、黙って震えていたに違いない。やがて疲れきった注意力が途切れた……。
ついに私は目を覚まし、ひどく空腹であることに気づいた。その目覚めまでに、一日の大半を過ごしていたのではないかと思う。空腹は一気に耐えがたいものとなり、私を行動へ駆り立てた。私は司祭に、食べ物を探しに行くと言い、手探りで食料室へ向かった。彼は答えなかったが、私が食べ始めると、そのかすかな物音に刺激され、這って後を追ってくるのが聞こえた。
II. 廃屋から見たもの
食事の後、私たちは洗い場へ這い戻った。そこで私はまたうとうとしたに違いない。やがて見回すと、私は一人だった。どすんどすんという振動は、うんざりするほどしつこく続いていた。私は何度か司祭へ囁きかけ、ついに手探りで台所の戸口へ向かった。まだ日中で、彼は部屋の向こう側にいた。火星人のいる方をのぞける三角形の穴に身を寄せ、横になっていた。肩を丸めていたため、頭は私から見えなかった。
機関庫の中で聞くような物音がいくつも聞こえ、その打ちつけるようなどすんという音であたりは揺れていた。壁の穴からは、金色に染まった木の梢と、穏やかな夕空の暖かな青が見えた。一分ほど私は司祭を見ていたが、それから身をかがめ、床に散らばる割れた陶器の中をきわめて慎重に足を運んで進んだ。
司祭の脚に触れると、彼はあまりに激しくびくりとしたので、外側で漆喰の塊が滑り落ち、大きな音を立てて落下した。私は、彼が叫び声を上げるのではないかと恐れてその腕をつかみ、長いあいだ二人で身動きもせずうずくまっていた。それから私は、私たちの防壁がどれほど残っているか確かめようと振り向いた。漆喰が剥がれたことで、瓦礫の中に縦の隙間が開いていた。梁をまたいで慎重に体を持ち上げると、その隙間から外を見ることができた。そこは一夜前まで静かな郊外の道路だった場所である。私たちが目にした変化は、まことに甚大だった。
第五の円筒は、私たちが最初に訪れた家の真ん中へ落ちたに違いない。その建物は消えていた。衝撃によって完全に粉砕され、粉々になり、四散していた。円筒は今や元の基礎のはるか下にあった。深い穴の中にあり、その穴は私がウォーキングでのぞき込んだ穴よりすでにはるかに大きかった。周囲の土は、その凄まじい衝撃で跳ね飛ばされていた――「跳ね飛ばされた」としか言いようがない――そして山となって積もり、隣接する家々の塊を覆い隠していた。それは、槌の激しい一撃を受けた泥とまったく同じ挙動を示していた。私たちの家は後ろへ倒れ込んでいた。前方部分は一階でさえ完全に破壊されていた。偶然にも台所と洗い場は助かり、今は土と瓦礫の下に埋まり、円筒の方を除く四方を何トンもの土に囲まれて立っていた。その方向では、私たちは今、火星人たちが掘り進めている巨大な円形の穴のまさに縁にぶら下がっていた。重い打撃音は明らかに私たちのすぐ背後から来ており、ときおり明るい緑の蒸気が、のぞき穴の前をヴェールのように吹き上がった。
円筒はすでに穴の中央で開かれており、穴の向こうの縁には、砕かれ砂利に埋もれた低木林の中、乗り手のいない巨大な戦闘機械の一つが、夕空を背景に硬直したように高く立っていた。最初、私は穴と円筒にはほとんど注意を払わなかった。先にそれらを説明した方が都合がよかっただけで、私の目を奪ったのは、掘削作業に忙しく動く異様にきらめく機構と、その近くの盛り土の上を、ゆっくり苦しげに這っている奇妙な生き物たちだった。
私の注意を最初にとらえたのは、間違いなくその機構だった。それは後に作業機械と呼ばれるようになった複雑な構造物の一つであり、その研究はすでに地球の発明に途方もない推進力を与えている。最初にそれが私の目に姿を現した時、それは五本の節のある敏捷な脚を持つ金属の蜘蛛のようで、胴体の周囲には異常な数の関節のあるレバー、棒、伸びてつかむ触手が備わっていた。腕の大半は引き込まれていたが、三本の長い触手で、円筒の覆いを内張りし、おそらく壁を補強していた棒、板、支柱をいくつも釣り上げていた。それらを引き抜くたび、機械は持ち上げ、背後の平らな地面に置いていった。
その動きはあまりに速く、複雑で、完璧だったため、金属のきらめきにもかかわらず、最初はそれを機械として見られなかった。戦闘機械も驚くほど高い水準で統合され、生気を帯びていたが、これに比べられるものではなかった。こうした構造物を見たことがなく、芸術家の貧弱な想像による絵や、私のような目撃者の不完全な記述だけを頼りにする人々には、その生きているような質感はほとんど理解できない。
私は、戦争について一続きの説明を与えた最初期のパンフレットの一つに載っていた挿絵を、とりわけよく覚えている。その画家は明らかに戦闘機械の一つを急いで観察しただけで、知識はそこで尽きていた。彼はそれらを傾いた硬い三脚として描き、柔軟性も精妙さもなく、全体としてまったく誤解を招く単調な印象に仕上げていた。その図版を含むパンフレットはかなり流行した。私がここでそれに触れるのは、ただ、それらが読者に与えたかもしれない印象を警戒してもらうためである。私が実際に動くところを見た火星人とそれらの絵との隔たりは、オランダ人形と人間ほどもあった。私に言わせれば、そのパンフレットには絵などない方がよほどましだった。
初めに言ったように、作業機械は私に機械という印象を与えなかった。むしろ、きらめく外皮を持つ蟹のような生き物に見えた。その動きを操る火星人の繊細な触手は、蟹の脳に当たる部分のように思えた。だが次に、その灰褐色で光沢のある革のような外皮が、向こうに横たわる他のだらりとした体のものに似ていることに気づき、この器用な作業者の真の性質が私にわかった。その認識とともに、私の関心は他の生き物、本物の火星人たちへ移った。私はすでに彼らについて一瞬の印象を得ており、最初の吐き気はもはや観察を妨げなかった。加えて、私は隠れて身動きせず、ただちに行動する必要にも迫られていなかった。
今わかったことだが、彼らは想像し得る限り最もこの世ならぬ生き物だった。巨大な丸い胴体――というより、頭――で、直径はおよそ四フィート(約一・二メートル)、それぞれの体の前面に顔があった。この顔には鼻孔がなかった。実際、火星人には嗅覚がなかったらしい。しかし非常に大きな暗い色の目が一対あり、そのすぐ下に肉質の嘴のようなものがあった。この頭、または体――どう呼べばいいのか私にもよくわからない――の背後には、ぴんと張った単一の鼓膜状の面があり、後に解剖学的には耳だと判明したが、私たちの濃い大気中ではほとんど役に立たなかったに違いない。口の周囲には、細く、ほとんど鞭のような触手が十六本あり、八本ずつ二束に分かれていた。この二束は後に、著名な解剖学者ハウス教授によって、なかなか適切にも手と名づけられた。私が初めてこれらの火星人を見たその時でさえ、彼らはその手で身を起こそうとしているように見えた。だがもちろん、地球環境下の増大した重量のもとでは不可能だった。火星では、その手でいくらか容易に移動していたと考える理由がある。
ここで述べておけば、後の解剖が示したように、内部構造もまたほぼ同じくらい単純だった。構造の大部分は脳で、そこから目、耳、触覚を担う触手へ巨大な神経が伸びていた。そのほかには、口が開く大きな肺、そして心臓とその血管があった。濃い大気とより大きな重力によって引き起こされた肺の苦痛は、外皮の痙攣的な動きにはっきり現れていた。
これが火星人の器官のすべてだった。人間には奇妙に思えるかもしれないが、私たちの体の大部分を占める複雑な消化器官一式は、火星人には存在しなかった。彼らは頭だった。ただの頭だった。腸はなかった。彼らは食べず、まして消化などしなかった。その代わり、他の生き物の新鮮な生きた血を取り、それを自分の血管へ注入した。私は後に述べる場所で、それが行われるのを自分の目で見た。だが気弱に思われるかもしれないが、見続けることさえ耐えられなかったものを、描写する気にはなれない。まだ生きている動物、多くの場合は人間から得た血が、小さなピペットによって直接、受け手の管へ流し込まれた、と言うだけで十分だろう……。
そのことを考えるだけで、私たちには疑いなくぞっとするほど忌まわしい。だが同時に、私たちの肉食の習慣が、知性あるウサギにはどれほど忌まわしく思えるかを忘れるべきではないと思う。
注入という方法の生理学的利点は、食事と消化の過程が人間の時間とエネルギーにどれほど途方もない浪費をもたらしているかを考えれば、否定しがたい。私たちの体の半分は、異質な食物を血に変えるための腺と管と器官でできている。消化作用と、それが神経系に及ぼす反応は、私たちの力を奪い、心の色合いを左右する。人間は肝臓が健康か不健康か、胃腺が健全かどうかで幸福にも不幸にもなる。だが火星人は、気分や感情のこうした有機的な揺らぎを超越していた。
彼らが栄養源として人間を明らかに好んだことは、火星から食糧として持ち込んだ犠牲者の遺骸の性質によって、ある程度説明できる。人間の手に落ちたしなびた遺骸から判断すると、それらの生き物は、脆い珪質の骨格――珪質海綿のものにほとんど似ていた――と弱い筋肉組織を持つ二足歩行の生物で、身長はおよそ六フィート(約一・八メートル)、丸く直立した頭と、石のような眼窩に大きな目を備えていた。各円筒には二、三体が運ばれていたようだが、地球に到達する前にすべて死んでいた。彼らにとってはその方がよかった。というのも、私たちの惑星でただ直立しようとするだけで、体中の骨が折れていただろうからだ。
そしてこの描写をしているついでに、当時私たちにすべてが明らかだったわけではないが、これら不快な生き物について知らない読者がより明確な像を結べるよう、さらにいくつかの細部をここに加えておきたい。
彼らの生理は、さらに三つの点で私たちと奇妙に異なっていた。彼らの有機体は眠らなかった。人間の心臓が眠らないのと同じである。回復させるべき大規模な筋肉機構を持たなかったため、あの周期的な消滅は彼らには知られていなかった。疲労感はほとんど、あるいはまったくなかったようだ。地球上では努力なしに動くことはできなかったはずだが、それでも最後まで彼らは活動し続けた。二十四時間のうち二十四時間働いた。地球でも蟻ならそうかもしれないように。
次に、性を持つ世界では驚くべきことだが、火星人には完全に性がなく、したがって人間のあいだでその差異から生じる激しい感情もまったくなかった。戦争中、若い火星人が実際に地球上で生まれたことは、今や疑いようがない。それは親に付着し、若いユリの球根が芽分かれするように、あるいは淡水ポリプの幼体のように、部分的に出芽した状態で発見された。
人間においても、地球上のすべての高等動物においても、このような増殖法は消滅している。だがこの地球でさえ、それが原始的な方法だったことは確かである。下等動物の間では、脊椎動物のいとこ筋に当たるホヤ類に至るまで、二つの過程は並存している。しかし最終的には、有性の方法が競争相手を完全に取って代わった。ところが火星では、どうやらまったく逆のことが起きたらしい。
火星人侵入のはるか以前に、ある準科学的な評判を持つ思弁的な作家が、人間の最終形態として実際の火星人の状態にそう遠くないものを予言していたことは、注目に値する。記憶では、その予言は一八九三年十一月か十二月、とうに廃刊となった『ポール・モール・バジェット』に掲載され、私は火星以前の時代の定期刊行物『パンチ誌』に載ったその風刺画も覚えている。彼は――愚かでおどけた調子で書いていたが――機械器具の完成は最終的に四肢を不要にし、化学的装置の完成は消化を不要にすると指摘した。髪、外鼻、歯、耳、顎といった器官は、もはや人間の本質的な部分ではなく、自然選択の傾向は来たるべき時代を通じてそれらを着実に縮小させる方向に働くだろう、と。脳だけが根本的な必要物として残る。生き残る強い理由を持つ身体部位はほかにただ一つあり、それが手、「脳の教師にして代理人」だった。
身体の他の部分が縮む一方で、手は大きくなるというのである。
冗談の中にも真実は多い。そしてここ火星人において、私たちは有機体の動物的側面が知性によって抑圧された、そのような事態の実際の達成を、疑いなく目にしている。私には、火星人が私たちに似た存在から、身体の他の部分を犠牲にして脳と手を徐々に発達させることにより――後者はついに二束の繊細な触手を生じさせた――進化したのだと考えることは十分あり得るように思える。身体を持たなければ、脳は当然、人間の感情的な基盤をまったく欠いた、単なる利己的な知性になるだろう。
これらの生き物の仕組みが私たちと異なる最後の顕著な点は、一見するとごく些細に思えるものだった。地球上でこれほど多くの病と苦痛を引き起こす微生物は、火星には最初から現れなかったか、あるいは火星人の衛生科学が遠い昔に除去したかのどちらかである。人間生活のあらゆる発熱性疾患と感染症、肺病、癌、腫瘍その他の病的状態、そうした百の病は、彼らの生活体系には入り込まない。そして火星の生命と地球の生命の違いについて語るなら、ここで赤い草が示す奇妙な示唆にも触れておいてよいだろう。
どうやら火星の植物界では、支配的な色は緑ではなく、鮮やかな血の赤であるらしい。いずれにせよ、火星人が意図的にか偶然にか持ち込んだ種子は、いずれの場合も赤い成長物を生じさせた。ただし地球の形態との競争に足場を得たのは、一般に赤い草として知られるものだけだった。赤い蔓はまったく一時的な成長物で、それが生えているのを見た者は少ない。しかし一時期、赤い草は驚くべき勢いと繁茂で成長した。私たちが囚われて三日目か四日目には、それは穴の側面を這い上がり、サボテンのような枝が私たちの三角窓の縁に深紅の縁取りを作った。後に私は、それが国中に広く散っているのを見た。とりわけ水の流れがある場所ではそうだった。
火星人には聴覚器官と思われるものがあり、頭部体の後ろに単一の丸い鼓膜があった。また、視覚範囲は、フィリップスによれば青と紫が彼らには黒に見えたという点を除けば、私たちと大きく違わない目を持っていた。一般には、彼らは音と触手の身振りによって意思疎通したと考えられている。たとえば、私がすでに触れた、優れてはいるが急ごしらえのパンフレット――明らかに火星人の行動を目撃していない者が書いたもの――にもそう断言されており、それがこれまで彼らに関する主な情報源となってきた。だが、現存する人間の中で、私ほど多く火星人の行動を見た者はいない。私は偶然のことで自慢するつもりはないが、事実は事実である。そして私は、何度も彼らをつぶさに観察し、四体、五体、そして一度は六体が、音も身振りもなしに、きわめて精巧で複雑な作業を一緒にのろのろと行っているのを見たと断言する。彼ら特有のほうほうという声は、必ず摂食に先立っていた。抑揚はなく、私の考えでは、いかなる意味でも合図ではなく、吸引作業の前に空気を吐き出しているだけだった。私は心理学について少なくとも初歩的な知識を持つといえるだけのものはある。そしてこの点については、私が何かを確信するのと同じほど固く、火星人たちは物理的媒介なしに思考を交換していたと確信している。しかも私は、強い先入観に反してこの確信に至った。火星人侵入以前、ところどころにいる読者なら覚えているかもしれないが、私はテレパシー説に対してかなり激しく反対する文章を書いていた。
火星人は衣服を着なかった。装飾や礼儀についての観念は、当然私たちとは異なっていた。また彼らは明らかに私たちより温度変化をはるかに感じにくかっただけでなく、圧力の変化も彼らの健康にまったく深刻な影響を及ぼさなかったようだ。とはいえ、彼らは衣服を着なかったが、身体能力への他の人工的付加物にこそ、人間に対する大きな優越があった。自転車、ローラースケート、リリエンタール式滑空機、銃、杖その他を持つ私たち人間は、火星人が成し遂げた進化のほんの始まりにいるにすぎない。彼らは実質的に単なる脳となり、人間が服を着替え、急ぐ時には自転車を取り、雨なら傘を取るように、必要に応じて異なる身体を身にまとっているのである。そして彼らの器具の中で、人間にとっておそらく最も驚くべきことは、人間のほとんどすべての機械装置で支配的特徴となっているものが存在しないという奇妙な事実である。すなわち、車輪がない。彼らが地球へ持ち込んだすべてのものの中に、車輪を用いた痕跡も示唆もない。少なくとも移動には用いられると予想してよさそうなものだ。この関連で興味深いのは、この地球上でも自然は車輪に行き着かなかったか、あるいはその発達より他の手段を好んだということである。火星人は車輪を知らなかったのか――それは信じがたい――それとも使わなかったのか、とにかく彼らの装置では、固定軸、あるいは比較的固定された軸と、その周囲を一平面内に制限されて回る円運動は、驚くほどわずかしか用いられていない。機械のほとんどすべての関節は、小さいながら美しく湾曲した摩擦軸受の上を動く、複雑な滑動部品の体系を示している。そしてこの細部に触れるついでに述べれば、彼らの機械の長い梃子の動きは、多くの場合、弾性のある鞘の中にある円盤状の擬似筋肉によって作動していることが注目に値する。これらの円盤は電流が流れると分極し、密に、力強く引き寄せ合う。この方法によって、人間の観察者にこれほど強烈で不安を与えた、動物の動きとの奇妙な類似が達成されていた。そうした擬似筋肉は、私が初めて隙間からのぞいた時に円筒を荷ほどきしていた、蟹のような作業機械に豊富に見られた。それは、夕日の中でその向こうに横たわり、喘ぎ、役に立たない触手を動かし、宇宙を越える途方もない旅の後で弱々しく身じろぎしている本物の火星人たちより、限りなく生きているように見えた。
私がなお日光の中で彼らの鈍い動きを見つめ、その姿の奇妙な細部を一つ一つ観察していると、司祭が私の腕を乱暴に引っ張り、自分の存在を思い出させた。振り向くと、しかめ面と、声はないが雄弁な唇があった。彼は隙間を欲していた。そこからのぞけるのは一人だけだったので、私はしばらく観察を諦め、彼にその特権を譲らねばならなかった。
再び私がのぞいた時、忙しく働く作業機械は、円筒から取り出した装置の部品をいくつも組み合わせ、すでにそれ自身に紛れもなく似た形にしていた。そして左下には、小型の掘削機構がせわしなく姿を現し、緑の蒸気を噴き出しながら穴の周囲を回って進み、整然と、選別するように掘削と盛り土を行っていた。規則的な打撃音と、私たちの壊れかけた避難所を震わせ続けた律動的な衝撃を生んでいたのはこれだった。それは作業しながら、ピーピー、ヒューヒューと音を立てていた。私に見える限り、その機械には指揮する火星人がまったくいなかった。
III. 監禁の日々
二体目の戦闘機械が到着したため、私たちはのぞき穴から洗い場へ退いた。その高さから、火星人が障壁の背後にいる私たちを見下ろすかもしれないと恐れたからである。後になると、彼らの目に見つかる危険は少ないと感じるようになった。外のまぶしい日光の中にいる目には、私たちの隠れ場所は真っ黒な空白に見えたはずだからだ。だが初めのうちは、近づく気配がほんの少しでもあると、心臓を打ち鳴らしながら洗い場へ逃げ込んだ。それでも、私たちが冒していた危険がどれほど恐ろしいものであっても、のぞき見る誘惑は二人にとって抗いがたいものだった。そして今思い返すと、飢餓とそれよりさらに恐ろしい死との間に置かれ、無限とも思える危険の中にいながら、なお私たちがその忌まわしい視界の特権をめぐって激しく争い得たことに、一種の驚きを覚える。私たちは、見たいという焦りと、物音を立てる恐怖との間で滑稽なほど台所を駆け抜け、互いを打ち、押しのけ、蹴り合った。身を晒すまでほんの数インチ(数センチ)の場所で。
実のところ、私たちの性質と思考、行動の習慣はまったく相容れず、危険と孤立はその不一致をいっそう際立たせるだけだった。ハリフォードにいた頃から、私は司祭の無力な叫び癖、愚かな心の硬直を憎むようになっていた。終わりのないぶつぶつとした独白は、行動方針を考え抜こうとする私のあらゆる努力を損ない、こうして閉じ込められて緊張が増す中、ときおり私をほとんど狂気の縁まで追いやった。彼は愚かな女のように自制を欠いていた。何時間も泣き続け、私は本当に、最後の最後までこの人生に甘やかされた子供は、自分の弱々しい涙が何かの効力を持つと思っていたのだと信じている。私は暗闇に座り、彼のしつこさのせいで彼のことを頭から追い払えなかった。彼は私より多く食べた。私たちが生き延びる唯一の望みは、火星人が穴での用を終えるまで家に留まることであり、その長い忍耐の中で、やがて食糧が必要になる時が来るかもしれないのだと指摘しても無駄だった。彼は長い間隔を置いて、衝動的に大食し、大飲みした。眠ることは少なかった。
日が過ぎるにつれ、彼の何事にも配慮しない態度は、私たちの苦境と危険をあまりに増大させた。そのため、どれほど嫌悪を覚えようとも、私は脅しに訴えざるを得ず、ついには殴打に及んだ。それでしばらくは彼も正気に戻った。だが彼は、誇りのない弱い生き物、臆病で、貧血気味で、憎むべき魂だった。ずるい狡知に満ち、神にも人にも向き合わず、自分自身にさえ向き合わない者だった。
こうしたことを思い出し、書くのは不快である。だが私の物語に欠けるものがないよう、記しておく。人生の暗く恐ろしい側面を免れてきた者たちには、私の残酷さ、最後の悲劇における怒りの閃きは、いかにも非難しやすいだろう。彼らは何が間違っているかなら誰と同じくらい知っているが、苦しめられた人間に何が起こり得るかは知らないからだ。だが影の下にいた者、ついには根源的なものまで降りていった者は、より広い慈悲を持つだろう。
そして内部で私たちが、囁き、奪い合う食べ物と飲み物、つかむ手と殴打による暗くぼんやりした争いを繰り広げている一方、外では、あの恐ろしい六月の容赦ない日光の中で、穴の中の火星人たちの奇妙な驚異、見慣れぬ日常があった。私の最初の新たな経験へ戻ろう。長い時間をおいて、私は再びのぞき穴へ戻った。すると、新しく来た者たちには、少なくとも三体の戦闘機械の乗員が加わっていた。彼らは新たな器具をいくつか持参し、それらは円筒の周囲に整然と置かれていた。第二の作業機械は今や完成しており、大型機械が運んできた新奇な装置の一つに仕えて忙しく働いていた。それは全体の形が牛乳缶に似た胴体で、その上では梨形の容器が揺れ、そこから白い粉の流れが下の円形の鉢へ流れ落ちていた。
その揺動は、作業機械の一本の触手によって与えられていた。作業機械は二本のへら状の手で粘土の塊を掘り出し、上の梨形容器へ投げ込んでいた。一方、別の腕で周期的に扉を開け、機械の中央部から錆びて黒くなった鉱滓を取り出していた。さらに別の鋼の触手が、鉢から出る粉を、私からは青みがかった塵の山に隠れて見えない受け器へ向け、畝のある溝に沿って導いていた。その見えない受け器からは、緑の煙の細い糸が静かな空気の中へ垂直に立ち上っていた。私が見ていると、作業機械はかすかな音楽的なちりんという音を立てて、ほんの一瞬前には鈍い突起にすぎなかった触手を望遠鏡のように伸ばし、その先端を粘土の山の背後へ隠した。次の瞬間、それはまだ曇り一つなく眩しく輝く白いアルミニウムの棒を持ち上げ、穴の脇に積み上がりつつある棒の山へ置いた。日没から星明かりまでのあいだに、この器用な機械は粗い粘土から百本以上のそのような棒を作ったに違いない。そして青みがかった塵の山は着実に高くなり、ついには穴の縁を超えた。
これら装置の素早く複雑な動きと、その主人たちの不活発で喘ぐ不器用さとの対照は強烈だった。何日ものあいだ、私は後者こそがこの二つのうち本当に生きているものなのだと、自分に繰り返し言い聞かせねばならなかった。
最初の人間たちが穴へ運ばれてきた時、隙間を占有していたのは司祭だった。私は下に座り、身を丸め、全神経を耳に集中していた。彼は突然後ろへ身を引き、私たちが見つかったのではないかと恐れた私は、恐怖の発作に身を縮めた。彼は瓦礫を滑り降り、暗がりの中で私のそばへ這ってきた。言葉にならないまま身振りをし、その一瞬、私も彼の恐慌を共有した。彼の身振りは、隙間を譲るという意味に見えた。しばらくすると好奇心が私に勇気を与え、私は立ち上がり、彼をまたいでそこへよじ登った。初め、彼があれほど取り乱した理由は何も見えなかった。すでに薄暮になっており、星は小さくかすかだったが、穴はアルミニウム製造から来るちらつく緑の火に照らされていた。全体の光景は、緑の閃きと移ろう錆びた黒い影からなる揺らめく構図で、目に奇妙な負担をかけた。その上を、そしてその中を、蝙蝠がまったく気にせず飛んでいた。だらりとした火星人たちの姿はもはや見えなかった。青緑の粉の山が高くなり、彼らを視界から覆い隠していた。そして一体の戦闘機械が、脚を縮め、折り畳み、短くした状態で、穴の一角をまたいで立っていた。すると機械の轟音のただ中に、人間の声らしきものが漂ってきたように思えた。最初私はそう感じたが、すぐに打ち消した。
私は身をかがめ、この戦闘機械をじっと見つめ、初めてその覆いの中に本当に火星人がいるのだと確信した。緑の炎が持ち上がると、その外皮の油じみた光沢と、目の輝きが見えた。すると突然、叫び声が聞こえ、一本の長い触手が機械の肩越しに伸び、背中にうずくまった小さな檻へ向かうのを見た。それから何か――激しくもがく何か――が空高く持ち上げられた。星明かりを背にした、黒く曖昧な謎だった。そしてその黒い物体が再び下りてきた時、緑の明るさの中で、それが一人の男だとわかった。一瞬、彼ははっきり見えた。肥えた、赤ら顔の、中年の男で、身なりはよかった。三日前なら、彼は世の中を歩く、それなりに重要な人物だったに違いない。見開いた目、シャツの飾りボタンや時計鎖に反射する光が見えた。彼は山の背後へ消え、一瞬沈黙があった。それから絶叫が始まり、火星人たちの持続する陽気なほうほうという声が続いた。
私は瓦礫を滑り降り、もがくように立ち上がり、両手で耳を塞ぎ、洗い場へ逃げ込んだ。司祭は両腕で頭を覆い、黙ってうずくまっていたが、私が通り過ぎると顔を上げ、彼を見捨てるのかとかなり大きな声で叫び、私の後を追って走ってきた。
その夜、私たちは洗い場に潜みながら、恐怖と、のぞき見ることが持つ恐ろしい魅惑との間で揺れていた。私は切迫した行動の必要を感じていたが、脱出の計画を思いつこうとしても無駄だった。しかしその後、二日目には、自分たちの状況をかなり明晰に考えることができた。司祭は、まったく議論に堪えない状態だった。この新たで頂点をなす残虐行為が、彼から理性や先見の痕跡をすべて奪い去っていた。事実上、彼はすでに動物の水準に沈んでいた。だが、俗に言うように、私は両手で自分自身をつかんだ。事実に向き合えるようになると、私たちの状況がどれほど恐ろしいものであっても、まだ絶望しきる正当な理由はないという考えが、私の中でしだいに大きくなった。主な望みは、火星人たちがその穴を一時的な野営地以上のものにはしない可能性にあった。あるいは、たとえ彼らがそこを恒久的に維持するとしても、警備の必要はないと考えるかもしれず、その場合、私たちに脱出の機会が与えられるかもしれない。穴から離れる方向へ掘って出る可能性も、私は非常に慎重に検討した。だが初めのうちは、出口が見張りの戦闘機械の視界内に出てしまう危険があまりに大きいように思えた。それに掘削はすべて私一人でやらねばならなかっただろう。司祭は間違いなく私の役に立たなかったはずだ。
記憶が正しければ、少年が殺されるのを見たのは三日目だった。私が実際に火星人の摂食を見たのは、その一度だけである。その経験の後、私はその日の大半、壁の穴を避けた。洗い場へ行き、扉を外し、手斧でできるだけ静かに何時間も掘った。だが二フィート(約六十センチ)ほどの穴を作ったところで、緩い土が音を立てて崩れ、私は続ける勇気を失った。心が折れ、長いあいだ洗い場の床に横たわり、動く気力すらなかった。その後、私は掘削による脱出の考えを完全に捨てた。
人間の努力によって火星人が打倒され、それによって私たちが救われるという希望を、初めの私はほとんど、あるいはまったく抱かなかった。それほど火星人が私に与えた印象は強かった。だが四日目か五日目の夜、私は重砲のような音を聞いた。
それは夜もかなり更けた時で、月が明るく輝いていた。火星人たちは掘削機械を運び去っており、穴の遠い土手に立つ戦闘機械と、のぞき穴の真下の穴の隅に埋もれて私の視界から隠れていた作業機械を除けば、その場所に彼らの姿はなかった。作業機械からの淡い光と、白い月明かりの棒や斑点を除き、穴の中は暗く、作業機械のちりんという音を除けば完全に静かだった。その夜は美しい静穏に満ちていた。一つの惑星を除けば、月が空を独り占めしているように見えた。犬の遠吠えが聞こえた。その聞き慣れた音こそが、私に耳を澄ませさせた。すると、大砲の音にそっくりな轟きが、はっきり聞こえた。私は六つの明確な発射音を数え、長い間隔の後にまた六つ数えた。それだけだった。
IV. 司祭の死。
幽閉されて六日目、私が最後にのぞき見をしたのはその日だった。そしてほどなく、私はひとりになっていた。司祭は私にぴったり張りついて覗き穴から押しのけようとする代わりに、流し場へ戻っていた。ふいにある考えがひらめいた。私はすばやく、音を立てずに流し場へ引き返した。暗闇の中で、司祭が何かを飲んでいる音が聞こえた。私は闇に手を伸ばし、指先がブルゴーニュ酒の瓶をつかんだ。
数分のあいだ、もみ合いになった。瓶が床に当たって割れ、私は手を引いて立ち上がった。私たちは息を切らし、互いを脅し合いながら向かい合った。結局、私は司祭と食料のあいだに身を置き、これから規律を始めると告げた。食料庫にある食べ物を、十日もつように配給分に分けた。その日はもう、それ以上食べさせないことにした。午後、司祭は食べ物に手を伸ばそうと弱々しく試みた。私はうとうとしていたが、一瞬で目が覚めた。その日一日、そして一晩中、私たちは向かい合って座りつづけた。私は疲れ果てながらも決然としており、司祭は泣き、いまにも飢え死にすると訴えていた。たしかにそれは一昼夜だった。だが私には――いま思い返しても――果てしなく長い時間に思えた。
こうして、広がりきった私たちの不和は、ついに露骨な衝突へと至った。巨大な二日間、私たちは低い声で言い争い、取っ組み合った。私が狂ったように司祭を殴り、蹴ったこともあった。なだめ、説得したこともあった。一度など、雨水ポンプから水は得られるので、最後のブルゴーニュ酒の瓶を餌に買収しようとしたこともある。だが力も優しさも役に立たなかった。司祭はもはや理性の及ぶところにいなかった。食料への攻撃をやめようともせず、ひとりでうるさくぶつぶつ喋るのもやめようとしなかった。幽閉をなんとか耐えられるものにするための、ごく初歩的な用心さえ守ろうとしなかった。私はゆっくりと、司祭の知性が完全に崩壊していることを悟りはじめた。この閉ざされた病んだ暗闇で、私のただ一人の伴侶は、狂人なのだと。
ぼんやりした記憶のいくつかから察するに、私自身の心も時折さまよっていたのだと思う。眠るたびに、奇怪でおぞましい夢を見た。逆説めいて聞こえるが、司祭の弱さと狂気が私に警告を与え、私を引き締め、正気の人間に保ってくれていたのだと思う。
八日目になると、司祭はささやく代わりに声を出して喋りはじめ、私が何をしてもその声を抑えられなくなった。
「正しいのです、ああ神よ!」司祭は何度も何度もそう言った。「正しいのです。罰は私と、私に連なる者に下されるべきなのです。私たちは罪を犯し、至らなかった。貧困があり、悲しみがあった。貧しい者たちは塵の中に踏みにじられ、私は黙っていた。私は聞き心地のよい愚かしさを説いた――わが神よ、なんという愚かしさ! ――命を落とすことになろうとも立ち上がり、悔い改めよと叫ぶべきだったのに――悔い改めよ! ……貧しき者、乏しき者を虐げる者どもよ! ……神の酒ぶねが!」
すると司祭は突然、私が与えずにいる食料の話へ戻り、祈り、懇願し、泣き、最後には脅しはじめるのだった。声を張り上げはじめたので、私はやめてくれと頼んだ。司祭は私の弱みを悟った――大声で叫んで火星人を呼び寄せてやると脅したのだ。しばらくのあいだ、それは私を怯えさせた。だが少しでも譲れば、脱出の可能性は計り知れないほど縮まる。私は司祭に逆らった。司祭が本当にそうするかもしれないという不安は消えなかったが、それでも退かなかった。とはいえ、少なくともその日は、司祭は実行しなかった。八日目と九日目の大半を通じて、司祭は声をじりじり高めながら喋りつづけた。脅し、哀願、そして神への奉仕という空疎なまがい物への、半ば正気でいつも泡立つような悔悟の奔流。それは私に同情を催させるものだった。それから司祭はしばらく眠り、力を取り戻してまた始めた。あまりに大声だったので、私はどうしてもやめさせねばならなかった。
「静かにしろ!」
私は懇願した。
司祭は膝立ちになった。暗闇の中、銅釜の近くに座っていたのだ。
「私はあまりにも長く沈黙してきた」司祭は、穴の底にまで届いたに違いない声で言った。「だから今こそ証しを立てねばならぬ。この不信の都に災いあれ! 災いあれ! 災いあれ! 災いあれ! 災いあれ! ラッパのほかの声のゆえに、地に住む者どもに――」
「黙れ!」
私は立ち上がって言った。火星人に聞かれるのではないかという恐怖にかられていた。「頼むから――」
「いやだ」司祭も立ち上がり、両腕を広げ、声の限りに叫んだ。「語れ! 主の言葉が私に臨んでいる!」
三歩で司祭は台所へ通じる戸口に達した。
「私は証しを立てねばならぬ! 行く! すでにあまりにも長く遅らせてしまった!」
私は手を伸ばし、壁に掛けられていた肉切り包丁に触れた。次の瞬間、私は司祭を追っていた。恐怖で荒れ狂っていた。司祭が台所を半分も横切らぬうちに、私は追いついた。最後に残った人間らしさで、刃を返し、柄のほうで殴った。司祭は頭から前へ倒れ、地面に伸びた。私はその体につまずき、息を切らして立ち尽くした。司祭は動かなかった。
突然、外で音がした。崩れ落ちる漆喰が滑り、砕ける音。そして壁の三角形の隙間が暗くなった。見上げると、取り扱い機械の下部が、穴をゆっくり横切ってくるのが見えた。その把持肢の一本が瓦礫の中で巻き、別の肢が現れて、落ちた梁の上を探るように進んできた。私は石になったように立ち尽くし、見つめた。すると機体の縁近くにあるガラス板のようなもの越しに、いわば顔と呼べるもの、そして火星人の大きな黒い目がのぞき込んでいるのが見えた。ついで、長い金属の蛇のような触手が、穴からゆっくり探るように入ってきた。
私は必死に身を返し、司祭につまずきながら、流し場の戸口で立ち止まった。触手はすでに部屋の中へかなり入り込んでおり、二ヤード(約一・八メートル)かそれ以上はあった。奇妙な急な動きで、こちらへあちらへと、ねじれ、向きを変えていた。しばらく私は、そのゆっくりした気まぐれな前進に魅入られて立っていた。それから、かすれた低い叫びを漏らし、無理やり流し場を横切った。体が激しく震え、まっすぐ立っていることもほとんどできなかった。石炭室の戸を開け、暗闇の中に立って、かすかに明るい台所への戸口を見つめ、耳を澄ました。火星人は私を見たのか。いま何をしているのか。
そこでは何かが、とても静かに行ったり来たりしていた。ときおり壁に当たってこつんと音を立て、あるいは割り輪についた鍵が動くような、かすかな金属音を響かせて動き出した。それから重いもの――何であるかはあまりにもよく分かっていた――が、台所の床を引きずられ、開口部のほうへ運ばれていった。抗いがたく引き寄せられ、私は戸口へ忍び寄って台所をのぞいた。外の明るい日差しが作る三角形の中に、火星人が、ブリアレオスのような取り扱い機械の中で、司祭の頭を詳しく調べているのが見えた。私が司祭に与えた打撃の跡から、私の存在を推測するのではないかとすぐに思った。
私は石炭室へ這い戻り、戸を閉め、闇の中でできる限り音を立てず、そこにある薪と石炭のあいだに身をできるだけ埋めはじめた。ときどき私は体を硬直させて止まり、火星人が再び触手を隙間から差し込んでいないか耳を澄ませた。
やがて、かすかな金属のじゃらつく音が戻ってきた。私はそれが台所をゆっくり探っているのを耳で追った。まもなく音は近づいた――私の判断では流し場に入ったのだ。その長さでは私に届かないかもしれないと思った。私は必死に祈った。それは地下室の戸をかすかにこすりながら通り過ぎた。耐えがたいほど長い緊張の時が流れた。すると、掛け金をまさぐる音が聞こえた! 戸を見つけたのだ! 火星人は戸を理解していた!
おそらく一分ほど掛け金に手こずり、それから戸が開いた。
暗闇の中で、私はそのものをかろうじて見ることができた――何よりも象の鼻に似ていた――それが私のほうへ揺れ、壁、石炭、木、天井に触れ、調べていた。盲いた頭を左右に揺らす黒い虫のようだった。
一度など、私の靴の踵に触れた。叫び出しそうになり、私は自分の手を噛んだ。しばらくのあいだ、触手は静かだった。引き抜かれたのではないかと思えた。やがて、不意にかちりという音を立てて何かをつかんだ――私が捕まったのだと思った! ――そして地下室の外へ出ていくようだった。一分ほど、私は確信が持てなかった。どうやら調べるために石炭の塊を持っていったらしい。
私は、こわばった姿勢をほんの少し変える機会をつかみ、それから耳を澄ませた。無事を求めて、熱に浮かされたような祈りをささやいた。
すると、あのゆっくりした、意図的な音が、また私のほうへ這い寄ってくるのが聞こえた。ゆっくり、ゆっくりと近づいてきて、壁を引っかき、家具を叩いた。
私がなお疑っているうちに、それは地下室の戸をぴしりと叩き、戸を閉めた。食料庫へ入っていく音が聞こえ、ビスケット缶ががたがた鳴り、瓶が割れ、それから地下室の戸に重い衝突音がした。やがて、無限に延びていくような緊張の沈黙が訪れた。
行ったのだろうか。
ついに私は、行ったのだと判断した。
それはもう流し場へ入ってこなかった。だが私は十日目のあいだずっと、息の詰まる暗闇の中、石炭と薪に埋もれて横たわり、渇望してやまない飲み物を取りに這い出すことさえできなかった。安全な隠れ場からそこまで離れる勇気が出たのは、十一日目になってからだった。
V. 静寂。
食料庫へ入る前に私が最初にしたことは、台所と流し場のあいだの戸に鍵をかけることだった。だが食料庫は空だった。食べ物は一かけらも残っていなかった。どうやら火星人が前日にすべて持ち去ったらしい。その発見で、私は初めて絶望した。十一日目も十二日目も、食べ物も飲み物も口にしなかった。
最初、口と喉はからからに乾き、力が目に見えて衰えていった。私は流し場の暗闇の中、打ちひしがれた惨めさの中で座っていた。頭の中は食べることばかりだった。穴のほうからいつも聞こえていた動きの物音が完全に止んでいたので、耳が聞こえなくなったのではないかと思った。音を立てずに覗き穴まで這っていく力はないと感じた。もし力があれば、そこへ行っただろう。
十二日目には喉があまりに痛んだので、火星人を警戒させる危険を承知で、流し台のそばにあるきしむ雨水ポンプに取りつき、黒ずんで悪臭のする雨水をグラス二杯ほど得た。それで大いに生き返ったし、私のポンプの音に続いて探る触手が来なかったことに勇気づけられた。
この数日のあいだ、私はとりとめもなく、結論も出ないまま、司祭のことと、その死に方について多くを考えた。
十三日目、私はさらに水を飲み、うとうとしながら、食べ物のことや、漠然とした実現不可能な脱出計画について、ばらばらに考えた。うとうとするたびに、おぞましい幻影、司祭の死、あるいは豪勢な晩餐の夢を見た。だが眠っていても起きていても、私は鋭い痛みに突き動かされ、何度も何度も水を飲んだ。流し場に差し込む光は、もはや灰色ではなく赤かった。乱れた私の想像には、それが血の色に思えた。
十四日目、私は台所へ行き、赤い草の葉状体が壁の穴をすっかり横切って伸び、その場の薄明かりを深紅の薄闇へ変えているのを見つけて驚いた。
十五日目の早朝、台所で奇妙だが聞き慣れた一連の音を耳にした。耳を澄ませると、それは犬が鼻を鳴らし、爪で引っかく音だと分かった。台所へ行くと、赤みを帯びた葉状体の裂け目から、犬の鼻がこちらをのぞいているのが見えた。私は大いに驚いた。私の匂いを嗅ぎつけると、犬は短く吠えた。
もし犬を静かに中へ誘い込めれば、殺して食べることもできるかもしれないと思った。いずれにせよ、その動きが火星人の注意を引かないよう、殺しておくのが賢明だった。
私は「いい子だ」とごくやわらかく言いながら這い寄った。だが犬は突然頭を引っ込め、姿を消した。
私は耳を澄ませた――耳が聞こえないわけではなかった――しかし確かに穴は静まり返っていた。鳥の羽ばたきのような音と、しわがれた鳴き声が聞こえたが、それだけだった。
長いあいだ私は覗き穴のすぐそばに横たわっていたが、そこを覆っている赤い植物を押しのける勇気はなかった。一、二度、はるか下の砂の上を犬の足があちこち歩くような、かすかなぱたぱたという音を聞き、鳥に似た音もさらにしたが、それだけだった。ついに、静寂に励まされ、私は外を見た。
穴の隅では、火星人が食べた死者たちの骨の上で多数のカラスが跳ね、争っていたが、それを除けば、穴の中に生き物はひとつもいなかった。
私は自分の目が信じられず、あたりを見回した。すべての機械が消えていた。一隅に積もる灰青色の粉の大きな山、別の隅にあるいくつかのアルミニウムの棒、黒い鳥たち、そして殺された者たちの骨を除けば、そこは砂地に開いた空の円形の穴にすぎなかった。
私はゆっくりと赤い草を押し分けて外へ出て、瓦礫の山に立った。背後、北の方角を除けばどちらも見渡せたが、火星人も火星人の痕跡も見えなかった。穴は足元から切り立って落ち込んでいたが、少し先では瓦礫が廃墟の頂まで登れる斜面を作っていた。脱出の機会が来たのだ。私は震えはじめた。
しばらくためらったのち、絶望的な決意が突風のように湧き、心臓を激しく打たせながら、私は長らく埋もれていたその山の頂へよじ登った。
もう一度あたりを見回した。北のほうにも、火星人の姿はなかった。
昼の光の中で私が最後にこのシーンの一帯を見たとき、そこは快適な白や赤の家々がまばらに続く通りで、豊かな木陰を作る樹々が点在していた。いま私が立っているのは、砕けた煉瓦、粘土、砂利の山の上だった。その上を、赤いサボテンめいた植物が膝の高さまで群がって覆い、地球の植物はただの一本も、その足場を争おうとしていなかった。近くの樹々は枯れて茶色くなっていたが、少し離れたところでは、まだ生きている幹を赤い糸の網が這い上がっていた。
近隣の家々はすべて破壊されていたが、焼けたものはなかった。壁は、ときには二階まで残り、窓は砕け、扉は壊れていた。屋根のない部屋の中では、赤い草が荒々しく生い茂っていた。私の下には大きな穴があり、その廃物をめぐってカラスが争っていた。ほかにもいくつもの鳥が廃墟の間を跳ね回っていた。遠くでは、痩せた猫が身を低くして壁沿いに忍び歩くのが見えた。だが人間の痕跡はなかった。
最近の幽閉と比べれば、その日はまばゆいほど明るく、空は燃えるような青だった。そよ風が、空いた地面の隅々まで覆う赤い草をやさしく揺らしていた。そして、ああ! 空気のなんと甘いことか!
VI. 十五日間の仕事。
しばらくのあいだ、私は自分の安全など忘れ、山の上でよろめきながら立っていた。抜け出してきたあの忌まわしい穴の中では、目先の安全のことだけを狭く激しく考えていた。世界に何が起きていたのかを理解しておらず、見知らぬものたちのこの衝撃的な光景を予想してもいなかった。私はシーンが廃墟になっているだろうとは思っていた――だが私の周囲にあったのは、異様で毒々しい、別の惑星の風景だった。
その瞬間、私は人間の通常の範囲を越えた感情に触れた。だがそれは、私たちが支配している哀れな獣たちなら、あまりにもよく知っている感情でもあった。巣穴へ戻った兎が、家の基礎を掘る十数人の土方の仕事に突然出くわしたときの気持ちは、きっとこうだろうと思った。やがて私の心の中ではっきり形をなし、何日も私を圧迫することになる感覚――王座から引きずり下ろされた感覚、私はもはや支配者ではなく、火星人の踵の下にいる、動物の中の一匹にすぎないという確信――その最初の兆しを私は感じた。私たちも彼らと同じになるのだ。潜み、見張り、走り、隠れる。人間の恐怖と帝国は過ぎ去ったのだ。
だがこの異様さを理解した途端、それは通り過ぎ、私を支配する動機は、長く陰鬱な断食から来る空腹になった。穴から離れる方角に、赤く覆われた壁の向こうに、埋もれていない庭の一角が見えた。それが私に手がかりを与え、私は膝まで、ときには首まで赤い草に沈みながら進んだ。草の密度は、私に隠れているという安心感を与えた。壁は六フィート(約一・八メートル)ほどの高さで、よじ登ろうとしたが、足を頂まで持ち上げることができなかった。そこで壁沿いに進み、角と築山にたどり着いた。そこから上へ出られ、欲していた庭へ転がり込むことができた。そこで若い玉ねぎ、グラジオラスの球根二つ、未熟なニンジンをかなり見つけ、すべて手に入れた。そして崩れた壁を乗り越え、緋色と深紅の樹々の中をキューへ向かって進んだ――それは巨大な血のしずくの並木道を歩くようだった――頭にあるのは二つのことだけだった。もっと食べ物を得ること。そして、体力の許す限り早く、遠くへ、この呪われた異界めいた穴の一帯から足を引きずってでも逃れること。
さらに少し先の草地にキノコの群れがあり、これも貪り食った。それから私は、かつて牧草地だったところに、褐色の薄い水が流れる一面を見つけた。こうしたわずかな滋養は、飢えをかえって鋭くするだけだった。はじめ私は、暑く乾いた夏にこの洪水が起きていることに驚いたが、のちにそれが赤い草の熱帯的な繁茂によるものだと知った。この異常な成長物は、水に触れた途端、たちまち巨大化し、比類ない繁殖力を示した。その種子はウェイ川とテムズ川の水へ流れ込み、急速に成長する巨人のような水中葉は、ほどなく両河川を詰まらせた。
のちに見たことだが、パトニーでは橋がこの草のもつれにほとんど埋もれ、リッチモンドでもまた、テムズ川の水はハンプトンとトウィッケナムの牧草地を越えて、広く浅い流れとなって注いでいた。水が広がるにつれて草もそれを追い、テムズ渓谷の荒れ果てた別荘群はしばらくのあいだ、この赤い沼の中に沈んだ。私はその縁をたどり、火星人がもたらした荒廃の多くは隠されていた。
結局、赤い草は広がったのとほとんど同じ速さで衰えた。ある種の細菌の作用によるものと思われる腐敗性の病が、ほどなくそれを襲ったのだ。自然淘汰の働きによって、地球の植物はすべて細菌性の病に対する抵抗力を獲得している――激しい戦いなしに屈することはない。だが赤い草は、すでに死んでいたもののように腐った。葉状体は白く色あせ、やがてしなび、もろくなった。わずかに触れただけで折れ、初期の成長を促した水が、その最後の痕跡を海へ運び去った。
この水にたどり着いて最初にしたことは、もちろん渇きを癒やすことだった。私は大量に飲み、衝動に動かされて赤い草の葉状体を少しかじった。だがそれは水っぽく、気分の悪くなる金属味がした。水は安心して渡れるほど浅いと分かったが、赤い草が少し足を妨げた。しかし洪水は明らかに川へ向かうほど深くなっていたので、私はモートレイクへ引き返した。別荘や柵、街灯の廃墟が時折残っているのを頼りに、なんとか道を見分け、やがてこの出水から抜け出して、ローハンプトンへ上る丘へ向かい、パトニー・コモンへ出た。
ここで風景は、奇怪で見知らぬものから、見慣れたものの残骸へと変わった。地面のあちこちには竜巻の devastation を思わせる荒廃があり、そこから数十ヤード(数十メートル)も行かぬうちに、まったく乱されていない場所に出くわすのだった。きちんとブラインドが下ろされ、戸が閉まった家々。まるで住人が一日だけ留守にしたか、あるいは中で眠っているかのようだった。赤い草は少なくなっていた。小道沿いの高い樹々には、赤い蔓が絡みついていなかった。私は樹々のあいだで食べ物を探したが何も見つからず、沈黙した家を二軒ほど荒らしたが、すでに侵入され、くまなく漁られていた。弱りきった体では進むには疲れすぎていたので、残りの昼の時間は低木の茂みで休んだ。
そのあいだずっと、人間の姿は見なかったし、火星人の痕跡もなかった。飢えたような犬に二匹出会ったが、どちらも私が近づくと遠回りに逃げていった。ローハンプトンの近くで、私は二体の人骨を見た――死体ではなく、きれいに肉を取られた骨だった――そして私のそばの林の中では、砕かれ散らばった数匹の猫と兎の骨、羊の頭蓋骨を見つけた。だがその一部を口の中でかじってみても、得られるものは何もなかった。
日没後、私はパトニーへ向かう道を苦労して進んだ。そこでは何らかの理由で熱線が使われたに違いないと思う。そしてローハンプトンの先の庭で、未熟なジャガイモをかなり手に入れ、飢えをしのぐには十分だった。この庭からは、パトニーと川を見下ろせた。薄暮の中のその眺めは、異様なほど荒涼としていた。黒焦げの樹々、黒ずんだ寂しい廃墟、そして丘の下には、草の色で赤く染まった、氾濫した川の水面。そしてすべての上に――沈黙があった。その荒廃の変化がどれほど急速に訪れたかを思うと、言い表しようのない恐怖に満たされた。
しばらく私は、人類は存在から一掃され、自分だけが、最後に残された人間としてそこに立っているのだと信じていた。パトニー・ヒルの頂近くで、私はまた別の骨格に出くわした。腕は脱臼し、胴体の残りから数ヤード(数メートル)離れたところに引き離されていた。進むにつれ、私のような迷い出た者を除けば、この世界のこの一帯では人類の絶滅はすでに完了したのだという確信がますます強まった。火星人は先へ進み、国土を荒廃させたまま、ほかで食料を探しているのだと思った。おそらく今ごろ、ベルリンやパリを破壊しているのかもしれない。あるいは北へ向かったのかもしれなかった。
VII. パトニー・ヒルの男。
その夜、私はパトニー・ヒルの頂に立つ宿屋で過ごした。レザヘッドへ逃げて以来、初めて整えられた寝床で眠った。その家に押し入るのに無駄な苦労をしたことは語るまい――あとになって玄関の戸は掛け金がかかっているだけだと分かった――また、絶望しかけるまで食べ物を求めて部屋という部屋を荒らし、使用人の寝室と思われる場所で、ようやく鼠にかじられたパンの皮とパイナップルの缶詰を二つ見つけたことも、詳しくは述べない。その場所はすでに探され、空にされていた。あとで酒場のほうで、見落とされていたビスケットとサンドイッチをいくらか見つけた。後者は腐りすぎていて食べられなかったが、前者は飢えをしのがせただけでなく、私のポケットを満たした。夜になって、火星人がロンドンのその一帯を食料探しにうろつくかもしれないと恐れ、ランプは灯さなかった。寝る前に落ち着かない時間があり、窓から窓へとうろついて、あの怪物たちの兆しを探して外をのぞいた。ほとんど眠れなかった。ベッドに横たわっていると、私は自分が筋道立てて考えていることに気づいた――司祭との最後の議論以来、そんなことをした覚えはなかった。そのあいだずっと、私の精神状態は、曖昧な感情状態が慌ただしく連続するものか、ある種の鈍い受容性にすぎなかった。だがその夜、食べたものによって力を取り戻したのだろう、私の頭は再び澄み、私は考えた。
私の心を占めようとして三つのことが争っていた。司祭を殺したこと、火星人の居場所、そして妻のあり得る運命である。最初のことを思い出しても、恐怖や後悔の感覚は生じなかった。私はそれを、ただ起こった事柄として見た。限りなく不快な記憶ではあるが、悔恨という性質はまったくなかった。当時の自分を、いまの自分を見るように見ていた。あの性急な一撃へ、一歩一歩追い込まれていった自分を。そこへ必然的に導いた一連の偶然の産物として。私は自分を断罪する気持ちはなかった。それでも、その記憶は静止したまま、進展することなく、私につきまとった。夜の沈黙の中、ときに静けさと闇の中で訪れる神の近さを感じながら、私は自分を裁いた。怒りと恐怖のあの瞬間について、私にとって唯一の裁きだった。司祭が私の渇きなど気にも留めず、私のそばにうずくまり、ウィブリッジの廃墟から立ちのぼる火と煙を指さしていたその時から、私たちの会話の一歩一歩をたどり直した。私たちには協力することができなかった――残酷な偶然はそんなことなど顧みなかった。もし予見していたなら、私は司祭をハリフォードに置いてきただろう。だが私は予見しなかった。そして犯罪とは、予見しながら行うことだ。私はこれを、この物語のすべてを記したのと同じように、ありのままに書き留める。目撃者はいなかった――これらのことはすべて隠すこともできた。だが私は記す。読者は望むままに判断すればよい。
そして努力して、倒れ伏した体の映像を脇へ押しやると、私は火星人の問題と妻の運命に向き合った。前者については何の手がかりもなかった。百通りのことを想像できた。そして不幸にも、後者についても同じだった。その夜は突然、恐ろしいものになった。気がつくと私はベッドの上に起き上がり、闇を見つめていた。熱線が妻を突然、痛みもなく存在から消し去ってくれていたならと祈っている自分に気づいた。レザヘッドから戻った夜以来、私は祈っていなかった。窮地に陥ったとき、異教徒が呪文をつぶやくように、祈りの言葉、まじないめいた祈りを口にしたことはあった。だが今、私は本当に祈った。神の闇と向かい合い、堅く、正気を保って懇願した。奇妙な夜だった! なかでも最も奇妙なのは、夜明けが訪れるやいなや、神と語ったこの私が、隠れ場を出る鼠のように家から這い出たことだ。鼠とほとんど変わらぬ大きさの生き物、劣った動物、私たちの主人たちの気まぐれひとつで狩られ殺される存在として。おそらく彼らもまた、神に確信をもって祈っているのだろう。少なくとも、この戦争が私たちに何も教えなかったとしても、憐れみだけは教えたはずだ――私たちの支配に苦しむ、知恵なき魂たちへの憐れみを。
朝は明るく晴れわたり、東の空は桃色に輝き、小さな金色の雲に縁取られていた。パトニー・ヒルの頂からウィンブルドンへ走る道には、戦闘が始まった日曜の夜にロンドン方面へ注ぎ込んだに違いない恐慌の奔流の、哀れな残滓がいくつもあった。車輪の壊れた小さな二輪荷車には「トーマス・ロブ、青果商、ニュー・モールデン」と書かれており、見捨てられたブリキの旅行箱があった。いまは固まった泥の中に踏み込まれた麦わら帽子があり、ウェスト・ヒルの頂には、ひっくり返った水飲み場の周囲に血に染まったガラスが散らばっていた。私の動きは鈍く、計画は極めて漠然としていた。妻がそこにいる可能性はきわめて低いと分かっていながら、レザヘッドへ行こうという考えがあった。確かに、突然死に襲われていない限り、従兄弟たちと妻はそこから逃げているはずだった。だがそこへ行けば、サリーの人々がどこへ逃げたかを見つけるか、知ることができるかもしれないと思えた。私は妻を見つけたいのだと分かっていた。妻と人間の世界を思って胸が痛んでいた。しかし、どうすれば見つけられるのか、はっきりした考えはなかった。いまでは自分の激しい孤独も痛切に意識していた。私は角から、樹木と茂みの藪に身を隠しながら、広々と伸びるウィンブルドン・コモンの縁へ向かった。
その暗い広がりは、ハリエニシダとエニシダの黄色い群れにところどころ照らされていた。赤い草は見えなかった。私が開けた場所の縁を、ためらいながらうろついていると、太陽が昇り、そのすべてを光と生命で満たした。樹々のあいだの湿地で、小さな蛙の忙しい群れに出くわした。私は立ち止まり、その生きようとする逞しい決意から教訓を引き出すように彼らを見た。やがて、見られているという奇妙な感覚に突然振り返ると、茂みの一群の中に何かが身をかがめているのが見えた。私はそれを見つめて立った。一歩近づくと、それは立ち上がり、短剣を持った男になった。私はゆっくり近づいた。男は黙って動かず、私を見ていた。
近づくにつれ、男は私自身と同じように埃まみれで汚れた服を着ていることが分かった。実際、暗渠の中を引きずられてきたように見えた。さらに近づくと、溝の緑色のぬめりが、乾いた粘土の薄いくすんだ色や、石炭めいた光る黒い斑点と混じっているのが見分けられた。黒髪は目にかかり、顔は黒ずんで汚れ、落ちくぼんでいたため、最初は彼だと分からなかった。顔の下半分には赤い切り傷が走っていた。
「止まれ!」私が十ヤード(約九メートル)以内に近づくと、男は叫び、私は止まった。声はしわがれていた。「どこから来た?」と男は言った。
私は男を見回しながら考えた。
「モートレイクから来た」と私は言った。「火星人が円筒の周りに作った穴のそばで埋もれていた。どうにか這い出して逃げてきたんだ。」
「このあたりに食べ物はない」と男は言った。「ここは俺の縄張りだ。この丘全部、川まで下って、クラパムへ戻り、コモンの端まで。食べ物は一人分しかない。どっちへ行く?」
私はゆっくり答えた。
「分からない」と私は言った。「十三日か十四日、家の廃墟の中に埋もれていた。何が起きたのか分からない。」
男は疑わしげに私を見た。それからはっとし、表情を変えて見つめた。
「ここに居座る気はない」と私は言った。「レザヘッドへ行こうと思う。妻がそこにいたから。」
男は指を突き出して私を指した。
「あんただ」と男は言った。「ウォーキングの男だ。ウィブリッジで死ななかったのか?」
その瞬間、私も彼だと気づいた。
「君は、私の庭へ来た砲兵だ。」
「ついてるな!」彼は言った。「俺たちは運のいい連中だ! まさかあんたとは!」
彼は手を差し出し、私はそれを取った。「俺は排水管を這って上がった」と彼は言った。「だが奴らは全員を殺したわけじゃなかった。奴らが行っちまったあと、俺は野原を越えてウォルトンのほうへ逃げた。だが――まだ全部で十六日にもならないのに、あんたの髪は白くなってる。」
彼は突然肩越しに振り返った。「ミヤマガラスだけだ」と言った。「このごろは、鳥にも影があるってことを覚えるようになる。ここは少し開けすぎている。あの茂みの下へ這い込んで話そう。」
「火星人を見たか?」
私は言った。「私が這い出してから――」
「奴らはロンドンを横切って行った」と彼は言った。「あっちにもっと大きな陣地を作ったんだと思う。夜になると、あそこ一帯、ハムステッドのほうの空が、奴らの光で生きてるみたいになる。まるで大都市だ。輝きの中で、奴らが動いているのがかろうじて見える。昼間は見えない。だがもっと近くでは――見てないな――」彼は指を折って数えた。「五日だ。そのときはハマースミスのほうを二体が何か大きなものを運んでいるのを見た。それから一昨日の夜――」彼は言葉を切り、重々しく言った。「光だけのことだったが、空中に何かあった。俺は奴らが飛行機械を作って、飛ぶことを学んでいるんだと思う。」
私たちは茂みに着いていたので、私は四つん這いのまま止まった。
「飛ぶ!」
「ああ」と彼は言った。「飛ぶんだ。」
私は小さな木陰へ入り、腰を下ろした。
「人類はもう終わりだ」と私は言った。「そんなことができるなら、奴らは世界中を回るだけでいい。」
彼はうなずいた。
「そうだろうな。だが――こっちは少し楽になる。それに――」彼は私を見た。「あんたは人類が終わったってことに納得してないのか? 俺はしてる。俺たちは負けた。叩きのめされたんだ。」
私はまじまじと見つめた。奇妙に思えるかもしれないが、私はこの事実にまだ到達していなかった――彼が口にした途端、完全に明白になる事実に。私はまだ漠然とした希望を抱いていた。むしろ、一生染みついた心の習慣を保っていたのだ。彼は言葉を繰り返した。「俺たちは負けた。」
その言葉には絶対的な説得力があった。
「全部終わりだ」と彼は言った。「奴らは一体を失った――たった一体だ。それで足場を固め、世界最大の力を無力にした。俺たちの上を歩いていったんだ。ウィブリッジであの一体が死んだのは事故だ。それに、こいつらは先遣隊にすぎない。まだ来続けていた。あの緑の星――ここ五、六日は見ていないが、毎晩どこかに落ちているに違いない。どうしようもない。俺たちは下だ! 負けたんだ!」
私は何も答えなかった。目の前を見つめ、対抗できる考えをどうにかひねり出そうとしたが、無駄だった。
「これは戦争じゃない」と砲兵は言った。「そもそも戦争じゃなかった。人間と蟻のあいだに戦争なんてないのと同じだ。」
突然、私は天文台での夜を思い出した。
「十発目のあと、奴らはそれ以上撃たなかった――少なくとも、最初の円筒が来るまでは。」
「どうして分かる?」砲兵が言った。私は説明した。彼は考えた。「大砲に何か不具合があったんだ」と言った。「だがそれがどうした? 奴らはまた直す。たとえ遅れがあったとしても、結末がどう変わる? 人間と蟻ってだけだ。蟻は都市を作り、生活し、戦争をし、革命を起こす。だが人間が邪魔だと思えば、蟻はどかされる。今の俺たちはそれだ――ただの蟻だ。ただ――」
「ああ」と私は言った。
「俺たちは食える蟻だ。」
私たちは互いに見つめ合った。
「それで奴らは私たちをどうする?」
私は言った。
「それを考えていたんだ」と彼は言った。「ずっとそれを考えていた。ウィブリッジのあと、俺は南へ行った――考えながらな。事態は見えていた。大半の連中は、喚き散らして興奮するのに必死だった。だが俺は喚くのはあまり好きじゃない。俺は一度や二度は死を目の前にしたことがある。飾り物の兵隊じゃない。最良でも最悪でも、死は――ただの死だ。そして考え続ける人間が生き残る。俺は皆が南へ流れていくのを見た。俺は言った、『このやり方じゃ食べ物はもたない』とな。そしてすぐ引き返した。雀が人間に向かっていくように、俺は火星人へ向かった。あたり一面」彼は地平線へ手を振った。「奴らは山ほど飢えて、逃げ出し、踏み合っている……」
彼は私の顔を見て、気まずそうに口をつぐんだ。
「金のある連中は大勢フランスへ逃げたに違いない」と彼は言った。謝るべきか迷っているように見えたが、私と目を合わせ、続けた。「このあたりには食べ物がいくらでもある。店には缶詰がある。ワイン、蒸留酒、ミネラルウォーターもある。水道本管も排水管も空だ。さて、俺が何を考えていたかを話していたな。『ここに知性あるものがいる』と俺は言った。『そしてどうやら奴らは俺たちを食べ物にしたいらしい。まず奴らは俺たちを叩き潰す――船、機械、大砲、都市、すべての秩序と組織。それらはみんな消える。もし俺たちが蟻の大きさなら、やり過ごせるかもしれない。だがそうじゃない。大きすぎて止められない。それが第一の確実なことだ』どうだ?」
私は同意した。
「そうだ。俺は考え抜いた。よし、次だ。今はまだ、奴らは欲しいときに俺たちを捕まえるだけだ。火星人は数マイル(数キロメートル)行くだけで、逃げ惑う群れを手に入れられる。ある日、ワンズワースの外れで一体が家をばらばらにし、残骸の中を荒らしているのを見た。だが奴らはいつまでもそんなことを続けはしない。こちらの大砲や船を全部片づけ、鉄道を壊し、あっちでやっていることをすべてやり終えたら、奴らは組織的に俺たちを捕まえはじめる。良いものを選び、檻や何かに蓄える。じきに奴らが始めるのはそれだ。まったく! 奴らはまだ俺たちに取りかかってすらいない。分からないのか?」
「取りかかっていない!」
私は叫んだ。
「取りかかっていない。ここまで起きたことは全部、俺たちが静かにしているだけの分別を持たなかったせいだ――大砲だのそんな馬鹿げたもので奴らを煩わせた。頭を失って、もといた場所と同じくらい安全でない場所へ群れになって突っ走った。奴らはまだ俺たちに手間をかけたくないんだ。奴らは自分たちのものを作っている――持って来られなかったものを全部作り、残りの仲間のために準備している。おそらく円筒がしばらく止まったのも、ここにいる奴らに当たるのを恐れてのことだろう。俺たちは、盲滅法に駆け回って泣きわめいたり、運任せにダイナマイトを手に入れて奴らを吹き飛ばそうとする代わりに、新しい状況に合わせて自分たちを整えなくちゃならない。俺はそう見ている。人間が自分の種のために望むこととは少し違うかもしれないが、事実が指しているのはだいたいそういうことだ。そして俺はその原則に従って動いた。都市、国家、文明、進歩――全部終わりだ。その遊びは終わった。俺たちは負けた。」
「だが、もしそうなら、生きる意味は何だ?」
砲兵は一瞬、私を見た。
「百万年くらいは、ありがたい演奏会なんてもうないだろうな。ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツも、レストランでの気の利いた小食事会もない。娯楽が欲しいなら、ゲームは終わりだと思う。応接間の作法だとか、ナイフで豆を食うのが嫌だとか、hを落とす発音が嫌だとかいうものを持っているなら、捨てたほうがいい。もう役には立たない。」
「つまり――」
「つまり、俺みたいな男は生き続ける――種のためにな。言っておくが、俺は生きることに本気だ。俺の見込み違いでなければ、あんたもじきに、自分の腹の中に何があるか見せることになる。俺たちは絶滅なんかしない。俺は捕まるつもりもない。飼い慣らされ、太らされ、繁殖させられる、馬鹿でかい牛みたいになるつもりもない。うえっ! あの茶色い這い虫どもを想像してみろ!」
「まさか君は――」
「そのまさかだ。俺は奴らの足元で生き続ける。計画はある。考え抜いた。俺たち人間は負けた。俺たちは十分に知らない。チャンスを得る前に学ばなければならない。そして学んでいるあいだ、生き続け、独立を保たなければならない。分かるか! やるべきことはそれだ。」
私は驚き、そしてその男の決意に深く揺さぶられて見つめた。
「偉大なる神よ!」私は叫んだ。「君こそ本物の男だ!」
そして突然、私は彼の手を握った。
「だろう!」彼は目を輝かせて言った。「俺は考え抜いたんだ、な?」
「続けてくれ」と私は言った。
「いいか、捕まるのを逃れるつもりの者は準備しなきゃならない。俺は準備している。覚えておけ、俺たち全員が野獣向きにできているわけじゃない。だが、そうならなきゃならない。だから俺はあんたを見張っていた。疑っていたんだ。あんたは細い。あれがあんただとは知らなかったし、どんなふうに埋もれていたのかも知らなかった。ここに住んでいたような連中、それにあっちのほうに住んでいた、あのいまいましい小役人どもは、まるで役に立たない。あいつらには気概がない――誇り高い夢も、誇り高い欲望もない。そしてそのどちらかを持たない男なんて――まったく! 怯えと用心以外の何だっていうんだ? あいつらはただ仕事へ逃げていっただけだ――俺は何百人も見た。朝飯の切れ端を手に、定期券の小さな列車に乗り遅れまいと、解雇されるのを恐れて、狂ったように走り、汗で光っていた。理解する手間を取ることさえ怖がっている商売に従事し、夕飯に間に合わないのを恐れてまた逃げ帰る。夕飯のあとは裏通りを恐れて家にこもり、欲しかったからではなく、世界を小さく惨めに逃げ回るうえで安全につながるわずかな金を持っていたから結婚した妻たちと眠る。事故を恐れて生命保険に入り、少し投資もする。そして日曜日には――来世への恐れだ。まるで地獄が兎のために作られたみたいにな! まあ、火星人はそういう連中にはまさに天の恵みだろう。広くて快適な檻、太る食べ物、慎重な繁殖、心配なし。空腹で一週間ほど野原や土地を追い回されたあとなら、あいつらは喜んで捕まりに来る。少しすればすっかり嬉しくなるだろう。火星人が世話をしてくれる前、人々はいったいどうしていたのかと不思議がるようになる。それから酒場にたむろする連中、気取り屋、歌い手たち――想像できる。俺には想像できる」彼は陰気な満足のようなものを浮かべて言った。「あいつらのあいだには、感傷と宗教がいくらでもあふれ出すだろう。ここ数日でようやくはっきり見えはじめたことが、俺がこの目で見てきたものの中には何百とある。物事をあるがまま受け入れる連中が大勢いる――太って愚かにな。何となくすべてが間違っている、自分たちは何かすべきだという気持ちに悩まされる連中も大勢いる。さて、多くの人間が何かすべきだと感じるような状況になると、弱い者や、複雑に考えすぎて弱っていく者は、いつも一種の何もしない宗教へ向かう。ひどく敬虔で、上等ぶっていて、迫害と主の御心に身を委ねる。あんたも同じものを見たことがあるだろう。あれは恐慌の嵐の中にあるエネルギーが、完全に裏返しになったものだ。これらの檻は詩篇と賛美歌と信心でいっぱいになる。そしてもう少し単純でない連中は、そこへ少しばかり――何というか――エロティシズムを混ぜる。」
彼は口をつぐんだ。
「おそらく火星人は、その中の何人かをペットにするだろう。芸を仕込む――誰に分かる? ――育って殺さなきゃならなくなった愛玩少年に感傷を抱くかもしれない。そして、もしかしたら何人かは、俺たちを狩らせるために訓練するだろう。」
「いや」と私は叫んだ。「それはありえない! 人間が――」
「そんな嘘を続けて何になる?」砲兵は言った。「喜んでやる人間はいる。いないふりをするなんて、くだらない!」
そして私は彼の確信に屈した。
「奴らが俺を追ってきたら」と彼は言った。「まったく、奴らが俺を追ってきたら!」そして彼は厳しい黙想へ沈んだ。
私はそれらのことを考えながら座っていた。この男の理屈に反論できるものは何も見つからなかった。侵略以前なら、私の知的優位を疑う者はいなかっただろう――私は哲学的主題について著し、認められた書き手であり、彼は一介の兵士だった。にもかかわらず、彼は、私がほとんど理解していなかった状況をすでに定式化していた。
「君は何をしているんだ?」
私はやがて言った。「どんな計画を立てた?」
彼はためらった。
「つまり、こういうことだ」と彼は言った。「俺たちは何をしなければならない? 人間が生き、繁殖し、子供を育てるのに十分安全な、ある種の生活を作り出さなきゃならない。そうだ――少し待て、俺が何をすべきだと思っているか、もっとはっきりさせよう。飼い慣らされた連中は、すべての家畜と同じ道を行く。数世代のうちに、大きく、美しく、血色よく、愚かになる――くずだ! 危険なのは、野生を保つ俺たちが野蛮になることだ――大きな獰猛な鼠みたいに堕落することだ……分かるだろう、俺がどう生きるつもりか。地下だ。俺は排水管のことを考えていた。もちろん、排水管を知らない連中はひどいものを想像する。だがこのロンドンの下には何マイルも何マイルも――何百マイル(何百キロメートル)も――広がっているし、数日雨が降ってロンドンが空になれば、そこは気持ちよく清潔になる。幹線排水路は、誰が入っても十分な大きさと空気がある。それから地下室、貯蔵室、倉庫があり、そこから逃げ道を排水管へ通せる。鉄道トンネルや地下道もある。どうだ? 見えてきただろう? そして俺たちは一団を作る――身体が丈夫で、心の清い男たちだ。流れ着くくずを拾い上げるつもりはない。弱虫はまた外へ出す。」
「私をそうするつもりだったように?」
「まあ――交渉はしただろう?」
「そのことで争うつもりはない。続けてくれ。」
「残る者は命令に従う。丈夫で、心の清い女たちも必要だ――母親と教師だ。感傷的なご婦人はいらない――忌々しい潤んだ目などお断りだ。弱い者や愚かな者は置いておけない。人生はまた本物になった。役に立たず、重荷で、害をなすものは死ななければならない。死ぬべきなんだ。進んで死ぬべきだ。結局、生きて種を汚すのは一種の裏切りだ。それに、そういう連中は幸せにはなれない。そのうえ、死ぬこと自体はそんなに恐ろしいものじゃない。悪いのは怯えだ。そういう場所すべてに、俺たちは集まる。俺たちの地区はロンドンだ。見張りを置き、火星人が離れているときには開けた場所を走り回ることだってできるかもしれない。クリケットをすることだってな。そうやって種を救う。どうだ? 可能だろう? だが種を救うこと自体には意味はない。さっき言ったように、それだけでは鼠になるだけだ。大事なのは、知識を守り、それに加えることだ。そこで、あんたのような男が必要になる。本がある。模型がある。俺たちは深いところに大きく安全な場所を作り、手に入る限りの本を集めなければならない。小説や詩のたぐいの盗品じゃない。思想、科学書だ。そこで、あんたのような男が必要になる。大英博物館へ行って、それらの本を選り分けなきゃならない。とりわけ科学を保たなければならない――もっと学ぶんだ。俺たちは火星人を観察しなければならない。何人かはスパイとして行かなければならない。すべてが軌道に乗ったら、俺が行くかもしれない。つまり捕まるということだ。そして一番大事なのは、火星人を放っておくことだ。盗みさえしてはならない。邪魔になったら退く。俺たちは害意がないと示さなければならない。ああ、分かっている。だが奴らは知性あるものだ。欲しいものをすべて手に入れ、俺たちをただ無害な害獣だと思えば、狩り尽くそうとはしないだろう。」
砲兵は言葉を切り、日焼けした手を私の腕に置いた。
「結局、俺たちが学ばなきゃならないことは、それほど多くないかもしれない――想像してみろ。奴らの戦闘機械が四、五台、突然動き出す――熱線を左右に振りまきながら、しかも中に火星人はいない。中に火星人はいない。いるのは人間だ――操縦の仕方を学んだ人間だ。俺の生きているうちかもしれないぞ、その連中は。あの美しいやつを一台手に入れることを想像してみろ。熱線を自在に広々と振るえるんだ! それを掌握することを想像してみろ! そんな突撃の果てに粉々に砕け散ったとして、何だというんだ? 火星人はその美しい目を見開くだろうよ! 見えないか、なあ? 見えないか、奴らが急ぎ、急ぎ――息を吐き、吹き鳴らし、他の機械仕掛けのところへ警報を鳴らすのが? どれもこれもどこか故障している。そしてシュッ、ドン、ガラガラ、シュッ! 奴らがそれをまさぐっているまさにそのとき、シュッと熱線が来る。見よ! 人間が自分のものを取り戻したんだ。」
しばらくのあいだ、砲兵の想像力に満ちた大胆さと、彼がまとった確信と勇気の調子が、私の心を完全に支配した。私は人類の運命についての彼の予測と、驚くべき計画の実行可能性を、ためらいなく信じた。私を影響されやすい愚か者だと思う読者は、落ち着いて読み、主題について十分に思索しながらいる自分の立場と、茂みの中で恐ろしく身をかがめ、不安に乱されながら耳を傾けていた私の立場とを比べてほしい。私たちは早朝の時間をこのように語り合い、その後、茂みから這い出て、火星人がいないか空を見渡してから、彼が隠れ家にしていたパトニー・ヒルの家へ大急ぎで向かった。そこはその家の石炭室であり、彼が一週間かけた仕事を見たとき――それは長さ十ヤード(約九メートル)にも満たない穴で、パトニー・ヒルの幹線排水路まで到達させるつもりだというものだった――私は彼の夢と能力のあいだにある隔たりを初めてうっすら感じた。その程度の穴なら、私でも一日で掘れただろう。だが私は彼を十分に信じていたので、その朝じゅう、昼過ぎまで彼の掘削を手伝った。庭用の手押し車があり、掘り出した土を台所のレンジに向けて投げ込んだ。隣の食料庫から、ウミガメ風スープの缶詰とワインで元気をつけた。この着実な労働の中に、世界の痛ましい異様さからの奇妙な安堵を見いだした。働きながら、私は彼の計画を心の中で転がし、やがて異議や疑問が湧きはじめた。それでも、再び目的を持てたことが嬉しくて、午前中ずっとそこで働いた。一時間働いたころ、幹線下水に到達するまでどれほど進まなければならないのか、そもそもまったく外れてしまう可能性はどれくらいあるのかを考えはじめた。目下の疑問は、マンホールのひとつからすぐ排水管に入り、家へ向かって戻ってくることが可能なのに、なぜこの長いトンネルを掘らなければならないのか、ということだった。また、その家は場所の選び方が不便で、不要に長いトンネルを必要としているようにも思えた。そしてまさにその点に向き合いはじめたとき、砲兵は掘る手を止め、私を見た。
「よく働いているな」と彼は言った。彼は鋤を置いた。「少し休もう」と言った。「そろそろ屋根から偵察する時分だと思う。」
私は続けるつもりだった。彼は少しためらったあと、再び鋤を取った。すると突然、ある考えが私を打った。私は手を止め、彼もすぐに止まった。
「なぜ君はここにいないで、コモンを歩き回っていたんだ?」と私は言った。
「空気を吸いに」と彼は言った。「戻ってくるところだった。夜のほうが安全だ。」
「だが仕事は?」
「ああ、いつも働けるわけじゃない」と彼は言い、その瞬間、私はその男の姿をはっきり見た。彼は鋤を握ったままためらった。「今は偵察すべきだ」と彼は言った。「もし奴らが近くに来ていたら、鋤の音を聞きつけて不意に襲ってくるかもしれないからな。」
私はもう反対する気になれなかった。私たちは一緒に屋根へ上がり、梯子に立って屋根の戸から外をのぞいた。火星人は見えず、私たちは瓦の上へ出る冒険をし、胸壁の陰へ滑り込んだ。
この位置からは低木の茂みがパトニーの大部分を隠していたが、下の川は見えた。泡立つ赤い草の塊であり、ランベスの低地は水に浸かり赤くなっていた。赤い蔓は古い宮殿の周りの樹々を群がるように這い上がり、その枝はその房の中から、痩せて死んだように、しなびた葉をつけて伸びていた。この二つが、繁殖に流れる水へどれほど完全に依存しているかは奇妙だった。私たちの周囲では、どちらも根づいていなかった。キングサリ、桃色のサンザシ、スノーボール、ニオイヒバの樹々が、月桂樹やアジサイの中から立ち上がり、緑に輝いて陽光の中にあった。ケンジントンの向こうには濃い煙が立ち上り、それと青い霞が北の丘陵を隠していた。
砲兵は、まだロンドンに残っている人々の種類について話しはじめた。
「先週のある夜」と彼は言った。「馬鹿どもが電灯を復旧させた。リージェント・ストリートとサーカス一帯が明々と輝き、化粧をしたぼろぼろの酔っぱらいども、男も女もが押し寄せて、夜明けまで踊り、叫んでいた。そこにいた男から聞いた。そして夜が明けると、奴らはラングハムの近くに戦闘機械が立って、見下ろしているのに気づいた。そいつがどれだけ長くそこにいたかは神のみぞ知るだ。何人かは肝を冷やしたに違いない。そいつは道を下って奴らのほうへ来て、酔いすぎて、あるいは怖がりすぎて逃げられなかった者を百人近く拾い上げた。」
歴史が決して完全には語り尽くせない時代の、グロテスクな一閃である!
そこから、私の質問に答える形で、彼はまた誇大な計画へ戻っていった。彼は熱を帯びた。戦闘機械を捕獲する可能性についてあまりに雄弁に語ったので、私はまた半ば以上彼を信じてしまった。だが今や彼の性質をいくらか理解しはじめていたので、彼が軽率な行動を避けることにどれほど重きを置いているか察することができた。そして今では、彼自身がその巨大な機械を捕らえ、戦うという話ではなくなっていることにも気づいた。
しばらくして、私たちは地下室へ下りた。どちらも掘削を再開する気にはならないようで、彼が食事を提案したとき、私は少しも嫌ではなかった。彼は突然たいへん気前よくなり、食べ終えると、どこかへ行って上等な葉巻を持って戻ってきた。私たちはそれに火をつけ、彼の楽観主義は輝きを増した。彼は私の到来を大きな出来事と見なしたがっていた。
「地下室にシャンパンがある」と彼は言った。
「このテムズ河畔のブルゴーニュで十分掘れるさ」と私は言った。
「いや」と彼は言った。「今日は俺が主人だ。シャンパンだ! 偉大なる神よ! 俺たちの前には重い仕事がある! 休めるうちに休み、力を蓄えよう。この水ぶくれの手を見ろ!」
そして休日というこの考えに従い、食事のあと、彼はカードをしようと言い張った。彼は私にユーカーを教え、ロンドンを二人で分け、私が北側を、彼が南側を取り、教区を点数にして勝負した。冷静な読者にはグロテスクで愚かに思えるだろうが、これはまったくの真実であり、さらに奇妙なことに、私はそのカード遊びと、そのほかいくつかの遊びを非常に面白いと感じた。
人間の心とは奇妙なものだ! 私たちの種が絶滅、あるいは恐るべき堕落の瀬戸際にあり、目前には恐ろしい死の可能性以外に明確な見通しが何もないというのに、私たちはこの絵入りの厚紙の偶然を追い、「ジョーカー」を鮮烈な喜びとともに出しながら座っていられたのだ。その後、彼は私にポーカーを教え、私は厳しいチェスを三局打って彼を負かした。暗くなると、私たちは危険を冒すことに決め、ランプを灯した。
果てしなく続くような遊びのあと、私たちは夕食をとり、砲兵はシャンパンを飲み干した。私たちは葉巻を吸い続けた。彼はもはや、朝に出会った、自分の種を力強く再生しようとする男ではなかった。なお楽観的ではあったが、それは動的というより、より思索的な楽観主義だった。最後に彼が私の健康を祝して乾杯したのを覚えている。内容は乏しく、かなり途切れ途切れの演説だった。私は葉巻を一本取り、彼が語った、ハイゲートの丘沿いに緑に燃えるという光を見に二階へ上がった。
最初、私はロンドンの谷をぼんやり見渡した。北の丘陵は闇に包まれていた。ケンジントン近くの火は赤く輝き、ときおり橙赤色の炎の舌が立ち上がっては、濃紺の夜に消えた。ロンドンの残りすべては黒かった。すると、もっと近くで、私は奇妙な光に気づいた。淡い菫紫の蛍光の輝きが、夜風の下で震えていた。しばらく私はそれを理解できなかったが、やがて、このかすかな放射を発しているのは赤い草に違いないと悟った。その認識とともに、眠っていた驚異の感覚、物事の釣り合いを測る感覚が再び目覚めた。私はそこから、赤く澄んで西の高みに輝く火星へ目を移し、それからハムステッドとハイゲートの闇を長く、真剣に見つめた。
私は屋根の上にたいへん長く留まり、その日のグロテスクな変化に思いを巡らせた。真夜中の祈りから愚かなカード遊びまで、自分の精神状態を思い返した。激しい感情の反転が起こった。私はある種の浪費的な象徴として、葉巻を投げ捨てたのを覚えている。自分の愚かさが、ぎらぎらと誇張されて迫ってきた。私は妻と同胞に対する裏切り者のように思え、悔恨で満たされた。この奇妙な、規律のない偉大な夢想家を、酒と貪食のもとに残し、ロンドンへ向かおうと決めた。そこなら、火星人と同胞たちが何をしているかを知る最もよい機会があるように思えた。遅い月が昇ったとき、私はまだ屋根の上にいた。
VIII. 死せるロンドン。
砲兵と別れたあと、私は丘を下り、ハイ・ストリートを通って橋を渡り、フラムへ向かった。そのころ赤い草は荒れ狂うように繁茂し、橋の車道をほとんど塞いでいた。だがその葉状体には、まもなくこれを急速に駆逐することになる病が広がり、すでにところどころ白くなっていた。
パトニー・ブリッジ駅へ続く小道の角で、男が倒れているのを見つけた。黒い粉塵で煙突掃除夫のように真っ黒になっていた。生きてはいたが、どうしようもなく酔いつぶれ、口も利けない。私が引き出せたのは罵声と、こちらの頭めがけた狂暴な突きかかりだけだった。あの顔に浮かんだ野蛮な表情さえなければ、私はそばに残っていたかもしれない。
橋から先の車道には黒い粉塵が積もり、フラムに入るにつれてますます厚くなった。通りはぞっとするほど静まり返っていた。ここで私はパン屋に入り、食べ物を手に入れた。酸っぱく、硬く、黴びてはいたが、十分食べられるものだった。ウォルハム・グリーンへしばらく進むと、通りから粉塵は消え、火のついた白いテラス式住宅の前を通り過ぎた。燃える音が、かえって心底ありがたいほどだった。ブロンプトンへ向かって進むと、通りはまた静まり返った。
ここで私はふたたび、通りに積もった黒い粉と死体に出くわした。フラム・ロードを進むあいだに、全部で十数体は見た。死んでからもう何日も経っていたので、私は足早にそばを通り過ぎた。黒い粉がそれらを覆い、輪郭をぼかしていた。一、二体は犬に荒らされていた。
黒い粉のない場所は、奇妙なほどシティの日曜日に似ていた。閉ざされた店、施錠された家々、下ろされたブラインド、人けのなさ、そして静寂。ところどころで略奪者が働いた跡があったが、食料品店と酒屋以外はまれだった。ある場所では宝石商のショーウィンドーが破られていたが、どうやら盗人は途中で邪魔されたらしく、金の鎖が何本も、腕時計が一つ、舗道に散らばっていた。私は手を伸ばす気にもならなかった。さらに先では、ぼろをまとった女が玄関口の段に崩れるように倒れていた。膝から垂れた手には深い切り傷があり、錆びた茶色のドレスを伝って血が流れていた。砕けたシャンパンのマグナム瓶が舗道いっぱいに液だまりを作っていた。眠っているように見えたが、死んでいた。
ロンドンの奥へ踏み込むほど、静けさはいよいよ深くなった。だがそれは死の静寂というより、むしろ宙づりの、不安な期待の静寂だった。すでに大都市の北西の縁を焦がし、イーリングとキルバーンを消し去った破壊が、いつこの家々のあいだに落ち、煙を上げる廃墟へ変えてもおかしくなかった。ここは宣告を受け、打ち捨てられた都市だった……。
サウス・ケンジントンでは、通りから死体も黒い粉も消えていた。私が初めてあの遠吠えを聞いたのは、そのサウス・ケンジントンの近くだった。ほとんど気づかぬうちに、それは私の感覚へ忍び込んできた。二つの音がすすり泣くように交互に繰り返される。「ウラー、ウラー、ウラー、ウラー」と、絶え間なく続いていた。北へ延びる通りを横切ると音は大きくなり、家々や建物に遮られるとまた鈍り、途切れた。エキシビション・ロードを下って、その音は満潮のように押し寄せてきた。私は立ち止まり、ケンジントン・ガーデンズの方を見つめながら、この奇妙で遠い嘆きに驚いた。まるで、あの巨大な家々の砂漠が、恐怖と孤独に声を与えられたかのようだった。
「ウラー、ウラー、ウラー、ウラー」と、その人間離れした音が嘆いた。広く陽の当たる車道を、両側の高い建物のあいだを、巨大な音の波が押し流れていく。私は不思議に思いながら北へ向き直り、ハイド・パークの鉄門へ向かった。自然史博物館に押し入り、塔の頂まで登って公園の向こうを見渡そうかと、半ば本気で考えた。だが、すぐ隠れられる地上にいたほうがよいと判断し、そのままエキシビション・ロードを上った。道路の両側に並ぶ大邸宅はみな空っぽで静まり返り、私の足音が家々の壁に反響した。上りきったあたり、公園の門の近くで、奇妙な光景に出くわした。横転したバスと、きれいに肉を啄まれた馬の骨格だった。しばらくその意味を考え、それからサーペンタインに架かる橋へ進んだ。声はいよいよ強まっていったが、公園の北側の家並みの上には、北西に漂う煙の霞以外、何も見えなかった。
「ウラー、ウラー、ウラー、ウラー」と声は叫んでいた。私にはそれがリージェンツ・パークのあたりから来ているように思えた。その荒涼とした叫びが私の心に食い込んだ。私を支えていた気分は消えた。嘆き声が私を支配した。自分がひどく疲れ、足を痛め、また空腹と渇きに襲われていることに気づいた。
すでに正午を過ぎていた。なぜ私はこの死者の街をひとりでさまよっているのか。なぜ私はひとりなのか。ロンドン全体が黒い屍衣に包まれ、死者として安置されているというのに。耐えがたい孤独を感じた。何年も忘れていた昔の友人たちのことが頭に浮かんだ。薬屋にある毒薬のこと、酒商が蓄えている酒のことを考えた。そして、私の知るかぎり、この街を私と分け合っている二人の、絶望にふやけきった生き物たちを思い出した……。
私はマーブル・アーチのところからオックスフォード・ストリートに出た。ここにもまた黒い粉といくつかの死体があり、いくつかの家の地下室の格子からは、不吉で嫌な臭いが漂っていた。長い歩行の暑さのあとで、ひどく喉が渇いた。途方もない苦労の末にパブへ押し入り、食べ物と飲み物を手に入れた。食べると疲れが押し寄せ、私はバーの奥の客間に入り、そこにあった黒い馬毛張りのソファで眠った。
目が覚めると、まだあの陰鬱な遠吠えが耳に残っていた。「ウラー、ウラー、ウラー、ウラー」。
もう夕暮れだった。バーでビスケットとチーズをいくらか探し出したあと――肉用の金網戸棚もあったが、中身は蛆だけだった――私は静かな住宅広場を抜けてベイカー・ストリートへさまよった。名を挙げられるのはポートマン・スクエアだけだ。そしてついにリージェンツ・パークへ出た。ベイカー・ストリートの上端から出たとき、夕焼けの澄んだ光の中、木々のはるか彼方に、この遠吠えを発している火星人の巨人の覆いが見えた。私は恐怖を感じなかった。当然の成り行きのように、それに出くわしたのだ。しばらく見守っていたが、そいつは動かなかった。私には分からない理由で、立ったまま叫び続けているようだった。
私は行動計画を立てようとした。「ウラー、ウラー、ウラー、ウラー」という絶え間ない音が頭を乱した。恐怖を覚えるには、疲れすぎていたのかもしれない。たしかに、その単調な叫びの理由を知りたいという好奇心のほうが、恐怖より勝っていた。私は公園から背を向け、パーク・ロードへ入り、公園を回り込むつもりでテラスの陰をたどり、セント・ジョンズ・ウッドの方角から、動かず遠吠えするこの火星人を眺められる位置へ出た。ベイカー・ストリートから二百ヤード(約183メートル)ほど行ったところで、きゃんきゃんという犬の合唱が聞こえた。最初に、腐りかけた赤い肉片をくわえた犬がこちらへまっしぐらに走ってきたのが見え、続いて飢えた雑種犬の群れがその後を追っていた。その犬は私を避けるため大きく曲がった。まるで私が新たな競争相手になるかもしれないと恐れたようだった。きゃんきゃんという声が静かな道の向こうで消えると、「ウラー、ウラー、ウラー、ウラー」という嘆き声がまた勢いを取り戻した。
セント・ジョンズ・ウッド駅へ向かう途中で、私は破壊された作業機械に出くわした。初めは、家が道路に倒れ込んだのだと思った。だが瓦礫のあいだをよじ登っているうちに、この機械仕掛けのサムソン[訳注:旧約聖書に登場する怪力の英雄]が、自ら作り出した廃墟の中に横たわっているのを見て、私はぎょっとした。触手は曲がり、砕け、ねじれていた。前部は粉砕されていた。まるで目も見えぬまま真っすぐ家へ突っ込み、家が崩れるのに巻き込まれたかのようだった。そのとき私は、作業機械が火星人の制御を逃れてこうなったのかもしれないと思った。瓦礫をよじ登って確かめることはできなかったし、黄昏はもうずいぶん深まっていて、座席に塗りついた血も、犬たちが食い残した火星人のかじられた軟骨も、私の目には見えなかった。
見たものすべてへの驚きをいっそう深めながら、私はプライムローズ・ヒルへ進んだ。遠く、木々の切れ目を通して、二体目の火星人が見えた。最初のものと同じように動かず、動物園の方角の公園内に立っており、沈黙していた。砕けた作業機械の廃墟を少し越えたところで、また赤い草に出会い、リージェンツ運河が暗赤色の植物の海綿状の塊になっているのを見た。
橋を渡ると、「ウラー、ウラー、ウラー、ウラー」という音が止んだ。まるで断ち切られたようだった。静寂が雷鳴のように落ちてきた。
周囲の薄闇の家々は、おぼろに高く、ぼんやりと立っていた。公園の方の木々は黒くなりつつあった。あたり一面で赤い草が廃墟をよじ登り、薄暗がりの中で私の頭上へ出ようとのたうっていた。恐怖と神秘の母である夜が、私の上に降りてきつつあった。だがあの声が鳴っているあいだは、孤独も荒廃も耐えられた。その声のおかげで、ロンドンはまだ生きているように思え、周囲に生命があるという感覚が私を支えていた。それが突然、変化した。何かが去った――それが何かは分からない――そして、肌で感じられるほどの静寂が来た。この痩せ衰えた静けさだけが残った。
周囲のロンドンが、亡霊のように私を見つめていた。白い家々の窓は、頭蓋骨の眼窩のようだった。私の想像の中では、音も立てない千の敵があたりを動いていた。恐怖が私をつかんだ。自分の無謀さへの戦慄だった。前方の道路はタールを塗ったように真っ黒になり、歩道を横切って歪んだ形のものが横たわっているのが見えた。私はどうしても先へ進めなかった。セント・ジョンズ・ウッド・ロードへ折れ、この耐えがたい静寂から逃げるように、キルバーンへ向かってがむしゃらに走った。ハロウ・ロードの辻馬車御者用の小屋に身を潜め、夜と沈黙から逃れて、真夜中をずっと過ぎるまでそこにいた。だが夜明け前には勇気が戻り、星がまだ空に残っているうちに、私はふたたびリージェンツ・パークへ向かった。通りの中で道に迷い、やがて早朝の薄明の中、長い並木道の先にプライムローズ・ヒルの曲線が見えた。その頂上には、薄れゆく星々に向かってそびえる三体目の火星人が、他の二体と同じように直立し、動かずにいた。
狂気じみた決意が私を支配した。死んで終わりにしよう。そして自分で自分を殺す手間さえ省こう。私は無謀にもこの巨人へ向かって進んだ。すると近づき、明るさが増すにつれて、覆いのまわりを黒い鳥の大群が旋回し、群がっているのが見えた。その瞬間、心臓が跳ね上がり、私は道路を走り出した。
私はセント・エドマンズ・テラスを塞いでいた赤い草の中を急いだ(水道施設からアルバート通りの方へ奔流が流れ下っており、私は胸の高さまで水に浸かって渡った)。そして日の出前に芝地へ出た。丘の頂の周囲には巨大な土塁が積み上げられ、丘全体を大きな堡塁にしていた――火星人が築いた最後の、そして最大の拠点だった――その土山の背後から、細い煙が空へ立ち上っていた。空の稜線を背景に、一匹の犬が勢いよく走り、姿を消した。私の頭に閃いた考えは、現実となり、信じられるものとなった。動かない怪物めがけて丘を駆け上がるとき、私は恐怖を感じなかった。ただ荒々しく、震えるほどの歓喜だけがあった。覆いの中からは茶色い痩せた裂け片が垂れ下がり、飢えた鳥たちがそれをついばみ、引き裂いていた。
次の瞬間、私は土の胸壁をよじ登ってその頂に立ち、眼下には堡塁の内部が広がっていた。そこは途方もない空間で、内部のあちこちに巨大な機械、膨大な物資の山、奇妙な避難所のようなものがあった。そしてそのあちこちに、あるものは横転した戦闘機械の中に、あるものは今や硬直した作業機械の中に、また十数体は裸のまま、静かに一列に横たわっていた。火星人たちは――死んでいた!――その身体が備えていなかった腐敗菌と病原菌に殺されたのだ。赤い草が殺されつつあったのと同じように殺されたのだ。人間のあらゆる工夫が失敗したあとで、神がその知恵においてこの地上に置いた最も卑しいものによって殺されたのだ。
実際、そういうことだった。恐怖と災厄で心を曇らされていなければ、私も、多くの人々も、見抜けたはずのことだった。これらの病原微生物は、万物の始まり以来、人類から代償を取り立ててきた――生命がここに始まって以来、人類以前の祖先からも取り立ててきた。だがこの種の自然選択によって、われわれは抵抗力を発達させた。われわれはどんな微生物にも戦わずして屈することはなく、また多くのもの――たとえば死んだ物質を腐敗させるものなど――に対して、われわれの生きた身体はまったく免疫をもっている。だが火星には細菌がいない。そしてこれらの侵略者が到着し、飲み、食べたその瞬間から、われわれの微小な同盟者たちは彼らを打ち倒す仕事を始めた。私が彼らを見たときにはすでに、彼らは取り返しのつかないほど運命づけられており、行き来しながらも死に、腐りつつあった。それは避けようがなかった。十億の死の代償によって、人間は地球という生得権を買い取ったのだ。それは誰が来ようと人間のものだ。火星人が今の十倍の力を持っていたとしても、なお人間のものだっただろう。人は生きるにも死ぬにも、決して無駄ではないからだ。
彼らは、自分たちが作ったその大きな窪地のあちこちに散らばっていた。全部で五十体近く、彼らにとっては死というものがどれほど不可解であり得るとしても、それと同じほど不可解に思えたに違いない死に追いつかれていた。そのときの私にとっても、この死は不可解だった。私に分かっていたのは、生きていて、人間にとってあれほど恐ろしかったものどもが死んでいる、ということだけだった。一瞬、セナケリブの破滅[訳注:旧約聖書で、アッシリア王セナケリブの軍勢が一夜にして滅ぼされた出来事]が繰り返されたのだ、神が思い直し、死の天使が夜のうちに彼らを討ったのだ、と私は信じた。
私は穴を見つめて立ち尽くした。昇る太陽が周囲の世界をその光で火のように染め上げるのと同時に、私の心は輝かしいほど軽くなった。穴の中はまだ闇に沈んでいた。巨大な機関――その力と複雑さにおいてあれほど偉大で驚嘆すべきもの、ねじくれた形状においてあれほどこの世ならぬもの――が、影の中から光へ向かって、不気味に、おぼろに、奇妙に立ち上がっていた。穴の奥深く、私のはるか下で、暗く横たわる死体をめぐって犬の大群が争っている音が聞こえた。穴の向こうの縁には、平たく、巨大で、奇妙な大飛行機械が横たわっていた。腐敗と死が彼らを止めるまで、彼らがわれわれのより濃い大気の中で実験していたものだった。死は一日として早すぎはしなかった。頭上でカアと鳴く声がして、私は見上げた。もう二度と戦うことのない巨大な戦闘機械があり、プライムローズ・ヒルの頂上の横転した座席へ、ぼろぼろになった赤い肉片が滴り落ちていた。
私は振り返り、丘の斜面を見下ろした。そこには、昨夜見た他の二体の火星人が、今は鳥の輪に包まれて立っていた。まさに死が彼らを捕らえたそのままに。一体は仲間に向かって叫んでいる最中に死んだのだ。おそらくそれが最後に死んだ個体で、その機械の力が尽きるまで声は絶え間なく続いていたのだろう。今や彼らは、害のない、輝く金属の三脚の塔として、昇る太陽の光の中できらめいていた。
穴の周囲には、永遠の破壊から奇跡のように救われた、偉大なる都市の母が広がっていた。煙という陰鬱な衣をまとったロンドンしか見たことのない人には、この沈黙した家々の荒野が露わにした澄み切った美しさを、ほとんど想像できないだろう。
東には、黒焦げになったアルバート・テラスの廃墟と、裂けた教会の尖塔の上に、澄んだ空で太陽がまばゆく燃え、ところどころ大きな屋根の荒野の面が光を受けて、白く激しく輝いていた。
北には、青く、家々で密集したキルバーンとハムステッドがあった。西では大都市が霞んでいた。そして南では、火星人たちの向こうに、リージェンツ・パークの緑の波、ランガム・ホテル、アルバート・ホールのドーム、帝国学院、ブロンプトン・ロードの巨大な邸宅群が、日の出の中でくっきりと小さく浮かび上がり、そのさらに向こうにはウェストミンスターのぎざぎざの廃墟が霞んで立っていた。はるか遠くにはサリーの丘陵が青く、クリスタル・パレスの塔が二本の銀の棒のようにきらめいていた。セント・ポール大聖堂のドームは日の出を背に黒く見え、そして初めて分かったことだが、西側に大きく口を開けた穴で傷ついていた。
そして私は、この広大な家々と工場と教会の広がりを眺めた。静まり、見捨てられたそれらを眺めた。この人間の礁を築くために注がれてきた無数の希望と努力、数えきれない命の群れを思った。そのすべての上に、いかに迅速で無慈悲な破滅が垂れかかっていたかを思った。そして影が退けられ、人々がなお通りで生きることができ、この愛しい、広大な、死せる我が都市が、ふたたび生き、力を取り戻し得るのだと悟ったとき、私は涙に近い感情の波に襲われた。
苦しみは終わった。その日からもう癒やしは始まるだろう。国中に散らばった生存者たち――指導者もなく、法もなく、食べ物もなく、羊飼いのいない羊のような人々――海へ逃れた幾千の者たちが、戻り始めるだろう。生命の脈動はしだいに強まり、空っぽの通りでふたたび打ち、無人の広場へ流れ込むだろう。どれほどの破壊がなされたとしても、破壊者の手は止められたのだ。丘の陽の当たる草地を陰惨に見つめていた、痩せた残骸、黒焦げの家々の骨格は、やがて修復者たちの槌の音に響き、鏝の叩く音に鳴り渡るだろう。そう思うと、私は両手を空へ差し伸べ、神に感謝し始めた。一年後には、と私は思った――一年後には……。
そのとき圧倒的な力で、私自身のこと、妻のこと、そして希望と優しい助け合いに満ち、永遠に終わってしまった昔の生活のことが胸に押し寄せてきた。
IX. 残骸。
さて、ここで私の物語の中でもっとも奇妙なことが来る。もっとも、まったく奇妙ではないのかもしれない。あの日、プライムローズ・ヒルの頂上で泣きながら神を讃えて立つまでに私がしたことは、すべて明瞭に、冷静に、鮮やかに覚えている。そしてその先は、忘れている。
次の三日間について、私は何も知らない。後になって知ったことだが、火星人の崩壊を最初に発見したのは私どころではなく、私のような放浪者が、前夜すでに何人かそれを見つけていた。一人――最初の男――はセント・マーティンズ・ル・グランドへ行き、私が辻馬車御者の小屋に身を潜めているあいだに、どうにかパリへ電報を打った。そこから喜ばしい報せは世界中へ閃くように広がった。凄惨な不安に凍りついていた千の都市が、突然、狂ったようなイルミネーションに輝いた。私があの穴の縁に立っていたころには、ダブリンでも、エディンバラでも、マンチェスターでも、バーミンガムでも、それを知っていた。すでに人々は、聞くところによれば喜びに泣き、叫び、仕事を止めて握手し、また叫びながら、クルーほど近いところでさえ、ロンドンへ押し寄せるための列車を編成していた。二週間前から鳴り止んでいた教会の鐘は突然この報せを受け取り、ついにはイングランド中が鐘の音に包まれた。痩せこけ、身なりの乱れた顔の男たちが自転車であらゆる田舎道を疾走し、思いもよらぬ解放を叫び、やつれ果てて見つめる絶望の人影へ叫んだ。そして食糧だ! 海峡を越え、アイリッシュ海を越え、大西洋を越えて、穀物、パン、肉がわれわれの救援へ突き進んできた。その数日間、世界中の船という船がロンドンへ向かっているようだった。だがこのすべてについて、私には記憶がない。私は漂っていた――錯乱した男として。三日目にセント・ジョンズ・ウッドの通りを、泣き、わめき、さまよっていたところを見つけてくれた親切な人々の家で、私は我に返った。後で聞いたところによると、私は「最後に生き残った男! 万歳! 最後に生き残った男!」という狂った戯れ歌のようなものを歌っていたらしい。
自分たちのことで手一杯だったにもかかわらず、この人々は――どれほど感謝を表したくとも、ここで名を出すことさえできない人々だが――それでも私という厄介者を引き受け、匿い、私自身から私を守ってくれた。どうやら私が正気を失っていた数日のあいだに、彼らは私から私の事情をいくらか聞き取っていたらしい。
私の心がふたたび安定したとき、彼らはとても穏やかに、レザヘッドの運命について知ったことを打ち明けてくれた。私が閉じ込められてから二日後、そこは住民もろとも火星人に破壊されていた。何の挑発もないまま、ただ力を弄ぶように、少年が蟻塚を踏み潰すように、彼はそこを存在ごと一掃したのだという。
私は孤独な男で、彼らは私にとても親切だった。私は孤独で悲しみに沈んだ男で、彼らは私を辛抱強く受け入れてくれた。回復してから四日間、私は彼らのもとに留まった。そのあいだずっと、過去にあれほど幸福で明るく見えていたささやかな生活の、残っているものをもう一度見たいという、ぼんやりした、しかし日増しに強まる渇望を感じていた。それは、自分の惨めさを味わいたいという、ただ絶望的な欲求にすぎなかった。彼らは私を思いとどまらせようとした。この病的な思いから私をそらすため、できるかぎりのことをしてくれた。だがついに私はその衝動に抗えなくなり、必ず戻ると固く約束し、正直に言えば、この四日間の友人たちと涙ながらに別れて、つい最近まであれほど暗く、奇妙で、空っぽだった通りへまた出ていった。
すでに通りは戻ってきた人々で慌ただしくなっていた。場所によっては店さえ開き、私は水飲み場から水が流れているのを見た。
ウォーキングの小さな家へ向かう陰鬱な巡礼の道すがら、日がどれほど嘲るように明るく見えたかを覚えている。通りがどれほど忙しく、周囲の動く生命がどれほど鮮やかだったかを。どこもかしこも人が外に出て、千もの用事に忙しくしていたので、人口の大部分が殺されたなどとは信じがたく思えた。だがそれから、すれ違う人々の肌がどれほど黄色いか、男たちの髪がどれほど伸び放題か、彼らの目がどれほど大きく輝いているか、そして二人に一人はまだ汚れたぼろを着ていることに気づいた。顔にはほとんど例外なく二つの表情のどちらかがあった。跳ねるような歓喜と活力、あるいは厳しい決意だ。顔つきを除けば、ロンドンは浮浪者の街のようだった。教区委員会は、フランス政府から送られたパンを無差別に配っていた。わずかに残った馬の肋骨は痛々しく浮き出ていた。白い徽章をつけたやつれた特別巡査が、あらゆる街角に立っていた。火星人がもたらした破壊は、ウェリントン・ストリートに着くまでほとんど見なかった。そこで私は、赤い草がウォータールー橋の扶壁をよじ登っているのを見た。
橋の角でもまた、あの異様な時代にありがちだった対照の一つを見た。赤い草の茂みに向かって一枚の紙がひらめき、棒に刺し貫かれてその場に留められていた。それは発行を再開した最初の新聞――デイリー・メール――の貼り出しだった。私はポケットにあった黒ずんだ一シリングで一部買った。大半は空白だったが、それを組んだたった一人の植字工は、裏面に広告の版下の戯画じみた構成を作って楽しんでいた。印刷された記事は感傷的だった。報道組織はまだ本来の姿を取り戻していなかった。新しく知ったことはほとんどなく、ただ一週間のうちに火星人の機構の調査がすでに驚くべき成果を上げたということだけだった。中でも記事は、当時の私には信じられなかったこと――「飛行の秘密」が発見されたということ――を断言していた。ウォータールーでは、人々を故郷へ運ぶ無料列車を見つけた。最初の殺到はすでに終わっていた。列車には人が少なく、私は気軽な会話をする気分ではなかった。ひとりで客室を占め、腕を組んで座り、窓の外を流れていく陽の当たる荒廃を灰色の気持ちで眺めていた。終着駅のすぐ外で、列車は仮設のレールの上をがたつきながら進み、線路の両側の家々は黒焦げの廃墟だった。クラパム・ジャンクションまでは、二日間の雷雨と雨にもかかわらず、ロンドンの顔は黒い煙の粉で煤けていた。そしてクラパム・ジャンクションでは線路がまた破壊されていた。失業した事務員や店員が何百人も、いつもの土木作業員と肩を並べて働いており、私たちは急ごしらえで敷き直された線路の上を揺られて進んだ。
そこから線路沿いに見える国土はずっと痩せ衰え、見慣れぬ姿になっていた。ウィンブルドンは特にひどい被害を受けていた。ウォルトンは、焼け残った松林のおかげで、線路沿いのどの場所よりも損害が少ないように見えた。ワンドル川も、モール川も、どんな小川も、肉屋の肉と酢漬けキャベツの中間のような見た目の赤い草の山になっていた。しかしサリーの松林は乾きすぎていて、赤い蔓草が花綱のように絡みつくには向かなかった。ウィンブルドンの向こう、線路から見える育苗地の一角には、第六の円筒の周囲に積み上がった土の塊があった。大勢の人がその周りに立ち、工兵たちがそのただ中で忙しく働いていた。その上ではユニオン・ジャックが、朝の風に陽気にはためいていた。育苗地はどこも赤い草で真紅に染まり、紫の影で切り分けられた広大な鉛色の色彩の広がりで、目にひどく痛かった。視線は、前景の焦げた灰色と陰鬱な赤から、東の丘陵の青緑の柔らかさへ移ると、限りない安堵を覚えた。
ウォーキング駅のロンドン側の線路はまだ修理中だったので、私はバイフリート駅で降り、メイベリーへ向かう道を取った。私と砲兵が軽騎兵たちと話した場所を過ぎ、さらに雷雨の中で火星人が私の前に現れた場所を通った。ここで好奇心に動かされ、道をそれて、絡み合う赤い葉の間に、歪み、壊れた犬用馬車と、散らばり、かじられた馬の白い骨を見つけた。しばらく私はその痕跡を見つめて立っていた……。
それから松林を戻った。ところどころで赤い草が首の高さまで茂っていた。スポッテッド・ドッグ亭の主人はすでに埋葬されていることが分かり、私はカレッジ・アームズの前を通って家へ戻った。開いた小屋の戸口に立っていた男が、通り過ぎる私に名を呼んで挨拶した。
私は一瞬、希望に胸を躍らせて自分の家を見たが、その希望はすぐに消えた。扉はこじ開けられていた。鍵はかかっておらず、私が近づくとゆっくり開いていった。
また音を立てて閉まった。書斎のカーテンが、開いた窓から外へはためいていた。私と砲兵が夜明けを見守った、あの窓だ。それ以来、誰も閉めていなかった。砕かれた灌木は、四週間近く前に私が残したままになっていた。私はよろめきながら玄関ホールへ入り、家が空っぽだと感じた。階段の絨毯は、あの破局の夜、雷雨でずぶ濡れになって私がうずくまっていた場所で乱れ、変色していた。私たちの泥の足跡が、まだ階段を上っているのが見えた。
私はその跡をたどって書斎へ行った。そして机の上にはまだ、円筒が開いた日の午後に置き去りにした仕事の紙が、セレナイトの文鎮に押さえられて横たわっていた。しばらく私は、自分の中断された論旨を読み返して立っていた。それは文明化の過程の発展に伴う道徳観念の発展の可能性についての論文だった。最後の文は予言の書き出しだった。「およそ二百年後には」と私は書いていた。「われわれは――」そこで文は唐突に途切れていた。まだ一か月も経っていないあの朝、自分の心をどうしても集中できなかったことを思い出した。そして新聞売りからデイリー・クロニクルを受け取るために筆を置いたことを思い出した。新聞売りがやって来るので庭の門まで下りていき、彼の「火星から来た人間たち」という奇妙な話に耳を傾けたことを思い出した。
私は階下へ降り、食堂に入った。そこには羊肉とパンがあり、今ではどちらもひどく腐敗していた。ビール瓶が倒れていたのも、私と砲兵が残したときのままだった。私の家は荒れ果てていた。長く抱いていたかすかな希望が愚かだったことを悟った。そのとき、奇妙なことが起こった。「無駄だ」と声が言った。「この家は捨てられている。ここ十日、誰も来ていない。ここにいて自分を苦しめるな。逃げ延びたのは君だけだ。」
私はぎょっとした。自分の考えを声に出してしまったのか。振り向くと、背後のフランス窓が開いていた。私は一歩そこへ近づき、外を見つめて立った。
そしてそこに、私が驚き恐れて立っていたのと同じように、驚き恐れていたのは、私の従妹と妻だった――妻は白い顔で、涙もなかった。妻がかすかな叫び声を上げた。
「来たの」と妻は言った。「分かってた――分かって――」
妻は手を喉に当て、よろめいた。私は一歩踏み出し、その身体を腕に受け止めた。
X. エピローグ。
さて物語を終えるにあたり、いまだ解決されていない多くの論争的な問題について、私がほとんど何も寄与できないことを残念に思わずにはいられない。ある一点については、私は確実に批判を招くだろう。私の専門領域は思弁哲学である。比較生理学についての知識は一、二冊の本に限られるが、火星人の急速な死の理由に関するカーヴァーの示唆は、ほとんど証明済みの結論と見なしてよいほど蓋然性が高いように思われる。私は自分の叙述の中でそれを前提としてきた。
いずれにせよ、戦後に調査された火星人のすべての遺体からは、すでに地球上の種として知られているもの以外の細菌は見つからなかった。彼らが死者を一切埋葬しなかったこと、そして彼らが行った無謀な殺戮もまた、腐敗過程について完全に無知だったことを示している。だが、そう思われる蓋然性が高いとはいえ、これは決して証明された結論ではない。
火星人があれほど致命的な効果をもって用いた黒い煙の組成も分かっておらず、熱線の発生装置も依然として謎である。イーリングとサウス・ケンジントンの研究所で起きた恐ろしい災害により、分析者たちは後者についてそれ以上の調査をためらうようになった。黒い粉のスペクトル分析は、緑の領域に鮮明な三本線の群を示す未知の元素の存在を、紛れもなく示している。そしてそれがアルゴンと結合し、血液中の何らかの成分にただちに致命的な作用を及ぼす化合物を形成する可能性がある。だが、この物語の読者である一般の人々にとって、こうした未証明の推測はほとんど興味を引かないだろう。シェッパートンの破壊後にテムズ川を流れ下った茶色い泡状のものは、当時まったく調べられず、今では入手することもできない。
徘徊する犬たちが可能に残してくれた範囲での火星人の解剖学的調査の結果については、すでに述べた。だが自然史博物館にアルコール漬けで保存されている、壮麗でほぼ完全な標本と、それをもとに作られた無数の図版については、誰もが知っている。そしてそれ以上に、彼らの生理や構造への関心は、純粋に科学的なものにすぎない。
より重大で、万人に関わる問題は、火星人による再度の攻撃の可能性である。この点について、十分な注意が払われているとは到底思えない。現在、火星は合[訳注:地球から見て太陽と同じ方向にある位置関係]にあるが、衝[訳注:地球から見て太陽と反対側にある位置関係]へ戻るたびに、少なくとも私は、彼らの冒険が再開されることを予期している。いずれにしても、われわれは備えておくべきである。弾体を発射する大砲の位置を特定し、その惑星の該当部分を継続的に監視し、次の攻撃の到着を予測することは可能であるように思われる。
その場合、円筒は火星人が出てこられるほど十分に冷える前に、ダイナマイトか砲撃で破壊できるかもしれない。あるいは、ねじ蓋が開いた瞬間に銃火で彼らを屠ることもできるかもしれない。最初の奇襲が失敗したことで、彼らは巨大な優位を失ったように私には思える。彼ら自身も、そう見ている可能性がある。
レッシングは、火星人が実際に金星への着陸に成功したと考えるべき優れた根拠を示している。今から七か月前、金星と火星は太陽と一直線上に並んだ。つまり金星上の観測者から見れば、火星は衝の位置にあったということである。その後、内惑星の照らされていない半球に、独特の明るく曲がりくねった模様が現れ、ほぼ同時に、火星円盤の写真にも同じように曲がりくねった性質を持つ淡い暗色の印が検出された。これらの現象の性質における驚くべき類似を十分に理解するには、その図を見なければならない。
いずれにせよ、われわれがさらなる侵略を予期するにせよしないにせよ、人類の未来に関する見方は、これらの出来事によって大きく修正されなければならない。われわれは今、この惑星を柵で囲まれた、人間にとって安全な住処と見なすことはできないと学んだ。宇宙の彼方から突然われわれに降りかかる、見えざる善悪を、もはや予想し尽くすことはできない。宇宙のより大きな設計においては、この火星からの侵略も、人間にとって究極的には利益なしではないのかもしれない。それは退廃の最も豊かな源である、未来への穏やかな自信をわれわれから奪った。人間の科学にもたらした贈り物は莫大であり、人類の公益という概念を促進するうえで大いに役立った。おそらく広大な宇宙の隔たりを越えて、火星人たちはこれら先駆者たちの運命を見守り、教訓を学んだのだろう。そして金星に、より安全な居住地を見出したのかもしれない。いずれにしても、今後何年ものあいだ、火星円盤への熱心な精査が緩むことは確かにないだろう。そして空の燃える投げ槍、流星は、落ちるたびに、すべての人の子らへ避けがたい不安を伴ってやって来るだろう。
その結果として生じた人間の視野の拡大は、どれほど強調してもしすぎることはない。円筒が落ちる前には、宇宙の深淵全体を通じて、われわれの微小な球体のちっぽけな表面以外に生命は存在しないという確信が広く行き渡っていた。今やわれわれは、より遠くを見る。火星人が金星へ到達できるなら、それが人間に不可能だと考える理由はない。そして太陽の緩慢な冷却によって、この地球がついには必ずそうなるように居住不能になったとき、ここに始まった生命の糸が外へ流れ出し、われわれの姉妹惑星をその網の中に捕らえることもあるかもしれない。
太陽系というこの小さな苗床から、生命が恒星間宇宙の無生物の広大さへゆっくり広がっていくという、私の心に呼び起こされた光景は、ぼんやりしていながらも驚異に満ちている。だがそれは遠い夢である。一方で、火星人の破滅は単なる執行猶予にすぎないのかもしれない。未来は、われわれではなく、彼らにこそ定められているのかもしれない。
あの時期の緊張と危険が、私の心に消えない疑いと不安の感覚を残したことを認めなければならない。私は書斎に座り、ランプの光で書いている。すると突然、眼下の癒えつつある谷が、のたうつ炎に彩られているのをふたたび見る。そして背後と周囲の家が、空っぽで荒れ果てているのを感じる。私はバイフリート・ロードへ出る。車が通り過ぎる。荷車に乗った肉屋の少年、客をいっぱい乗せた辻馬車、自転車の職人、学校へ行く子どもたち。すると突然、それらがぼんやりして現実味を失い、私はまた砲兵とともに、暑く、重く垂れ込めた静寂の中を急いでいる。夜には、黒い粉が静かな通りを暗く覆い、その層に包まれた歪んだ死体を見る。それらはぼろぼろで犬に噛まれた姿で私の前に立ち上がる。ぶつぶつと意味不明に呻き、ますます激しく、青白く、醜くなり、ついには人間性の狂った歪みとなる。そして私は、夜の闇の中で、冷たく惨めな気持ちで目を覚ます。
ロンドンへ行き、フリート・ストリートやストランドで忙しく動く群衆を見ると、ふと彼らは過去の幽霊にすぎないのではないかと思う。私が静まり、悲惨になった姿を見た通りに取り憑き、行き来する亡霊。死んだ都市に浮かぶ幻影。電気を流された身体に宿る生命のまがいもの。そして奇妙なことでもある。この最後の章を書く前日にもそうしたように、プライムローズ・ヒルに立つことは。煙と霧の霞の中に青くぼんやりした家々の大領域を眺め、それがついには曖昧な低い空へ消えていくのを見ること。丘の花壇のあいだを人々が行き来するのを見ること。今もそこに立つ火星人の機械の周りに見物人がいるのを見ること。遊ぶ子どもたちのざわめきを聞くこと。そして、あの最後の偉大な日の夜明けの下で、それらすべてを明るく、くっきりと、硬く、静まり返った姿で見たときのことを思い出すことは……。
そして何より奇妙なのは、妻の手をふたたび握り、私が妻を、そして妻が私を、死者の一人に数えていたのだと思うことだ。
公開日: 2026-07-02