ルーシー・モード・モンゴメリ作


『赤毛のアン。』


第一章 レイチェル・リンド夫人、驚く

レイチェル・リンド夫人の家は、アヴォンリーの本道が、ハンノキとレディース・イヤードロップの茂る小さなくぼ地へ下り、昔からカスバート家の土地の奥深い森に源を発する小川が横切る、ちょうどその場所にあった。その小川は、森を流れる上流では、深い淵や滝に暗い秘密を抱えた、入り組んだ激流なのだと評判だった。だがリンドの谷に達するころには、しとやかで行儀のよい細流になっていた。小川でさえ、レイチェル・リンド夫人の戸口の前を通るなら、礼儀と品位をわきまえずにはいられないのである。夫人が窓辺に座り、小川から子どもまで、通り過ぎるものすべてを鋭く見張っていることを、きっと小川も承知していたのだろう。そして何か妙なことや場違いなものを見つけようものなら、その理由を根ほり葉ほり突き止めるまで、夫人は決して気が済まないのであった。

アヴォンリーにもその外にも、自分の用事をなおざりにすることで、近所の用事にせっせと首を突っ込める人間は大勢いる。だがレイチェル・リンド夫人は、自分のことも他人のことも、ついでに見事に取り仕切れる有能な人種だった。夫人は名高い主婦で、家事はいつもきちんと、しかも申し分なく片づいていた。「裁縫会」を取り仕切り、日曜学校の運営を助け、教会扶助会と海外伝道補助会の最も頼もしい支柱でもあった。にもかかわらず夫人には、台所の窓辺に何時間も座り、「木綿経糸」のキルトを編みながら――アヴォンリーの主婦たちは畏敬の声で、夫人が十六枚も編んだのだと語っていた――くぼ地を横切り、その先の急な赤土の丘をうねうねと登る本道を、鋭く見張る時間がたっぷりあった。アヴォンリーは、両側を海に囲まれ、セントローレンス湾へ突き出した小さな三角形の半島を占めていた。そのため外へ出る者も中へ入る者も、必ずあの丘道を越えなければならず、つまりはレイチェル夫人の全知全能の目という、見えない関門を通過せずには済まなかった。

六月初めのある午後、夫人はそこに座っていた。窓からは、あたたかく明るい陽光が射し込んでいた。家の下の斜面にある果樹園は、無数の蜂の羽音に包まれながら、薄桃色と白の花で花嫁のように華やいでいた。トーマス・リンド――アヴォンリーの人々が「レイチェル・リンド夫人の夫」と呼ぶ、おとなしい小柄な男――は、納屋の向こうにある丘の畑で、遅まきのカブの種をまいていた。そしてマシュー・カスバートも、本来ならグリーン・ゲイブルズのはるか向こうにある大きな赤い小川の畑で、種をまいているはずだった。夫人がそう知っていたのは、前の晩にカーモディのウィリアム・J・ブレアの店で、マシューがピーター・モリソンに、翌日の午後にカブの種をまくつもりだと話すのを耳にしたからである。もちろん、ピーターが尋ねたのである。マシュー・カスバートは、生涯を通じて何事についても、自分から情報を口にしたことなど一度もなかった。

それなのに、忙しい日の午後三時半、当のマシュー・カスバートが、くぼ地を越え丘を登って、のんびり馬車を走らせているではないか。しかも白い襟を着け、よそ行きの一番よい服を着ている。これはアヴォンリーの外へ出かける、れっきとした証拠だった。軽馬車に栗毛の雌馬まで連れているとなれば、かなり遠くへ行くというしるしでもある。さて、マシュー・カスバートはどこへ行くのか。そして何のために行くのか。

相手がアヴォンリーのほかの男であれば、レイチェル夫人はあれこれの事情を巧みに組み合わせ、二つの問いにかなり正確な推測を下せただろう。だがマシューはめったに家を離れない。彼を出かけさせるほどなら、よほど差し迫った、尋常でない用事に違いない。生きている人間の中でいちばん人見知りで、知らない人の中へ出ることも、話をしなければならない場所へ行くことも大嫌いな男だった。白い襟を着け、軽馬車に乗ったマシューなど、そうそう見られるものではない。どれほど考えても夫人には見当がつかず、午後の楽しみはすっかり台なしになった。

「お茶のあとでグリーン・ゲイブルズへ行って、マリラに、どこへ何をしに出かけたのか聞いてこよう」と、ついにこの立派な婦人は決意した。「あの人はこの時季にはたいてい町へ行かないし、訪問なんて絶対にしない。カブの種が足りなくなっただけなら、着飾って軽馬車で買いに行くわけがないし、お医者様を呼びに行くにしては、あまりにゆっくり走っていた。なのに昨夜から今日までの間に、あの人を出かけさせる何かが起きたに違いない。まったく、さっぱりわからないよ。今日、マシュー・カスバートをアヴォンリーの外へ連れ出したものが何なのか知るまで、あたしは一分たりとも心安らかにも、良心安らかにもしていられない。」

そこでお茶のあと、レイチェル夫人は出発した。行く先は遠くない。カスバート兄妹の住む、大きくて入り組んだ、果樹園に抱かれた家は、リンドの谷から道を四分の一マイル(約四百メートル)も登れば着く場所にあった。もっとも、長い私道をたどるため、実際にはずっと遠く感じられた。マシュー・カスバートの父親も、息子に劣らず内気で無口な人間だった。開拓農地を築く際、森へ逃げ込まずに済むぎりぎりのところまで、他人から離れて暮らせる場所を選んだのである。グリーン・ゲイブルズは、その開墾地のいちばん奥の端に建てられ、今に至るまでそこにあった。本道からはかろうじて見えるほどで、ほかのアヴォンリーの家々がみな社交的に道沿いへ建っているのとは大違いだった。レイチェル・リンド夫人に言わせれば、そんな場所での暮らしは、暮らしとは呼べなかった。

「ありゃただの“居残り”さ」と、野ばらの茂みに縁どられ、深い轍の跡が走る草道を進みながら夫人は言った。「あんな奥地で二人きりで暮らしてりゃ、マシューもマリラも少し変わり者になるのも当然だよ。木なんて、ろくな話し相手にはならないからね。もっとも、相手になるなら、ありあまるほど生えてはいるけどさ。あたしなら人間を眺めているほうがずっといい。まあ、あの二人はそれで満足してるみたいだけど、慣れたんだろうね。慣れようと思えば何にだって慣れるもんさ。アイルランド人が言ったように、首を吊られることにだってね。」

そう言いながら、レイチェル夫人は私道を抜けてグリーン・ゲイブルズの裏庭へ入った。庭は実に緑濃く、整然として、寸分の狂いもなく整えられていた。片側には大きな古い柳が並び、反対側にはきちんとしたポプラ並木が立っている。落ち枝も石ころもひとつ見当たらない――あったなら、レイチェル夫人が見逃すはずがなかった。夫人は内心、マリラ・カスバートは家の中を掃くのと同じくらい頻繁に、この庭も掃いているに違いないと思っていた。地面の上で食事をしたところで、ことわざにいう一ペック[訳注:約九リットル]の土すら口に入るまいと思えるほどだった。

レイチェル夫人は台所の戸をきびきびと叩き、入るよう声がかかると中へ入った。グリーン・ゲイブルズの台所は明るい部屋だった――いや、あまりにも痛々しいほど清潔で、使われていない客間のように見えさえしなければ、明るい部屋だっただろう。窓は東と西を向いている。裏庭を望む西窓からは、柔らかな六月の陽光があふれ込んでいた。一方、左手の果樹園に咲く白い桜や、小川のそばのくぼ地で揺れる細い白樺が見える東窓は、からみ合う蔓草に覆われ、緑の薄闇をつくっていた。マリラ・カスバートは、座るときにはいつもここに座った。日光というものを、真剣に生きるべきこの世にはあまりに浮かれすぎた、無責任なものと少し信用していなかったからだ。今も編み物をしており、背後の食卓には夕食の支度が整っていた。

レイチェル夫人は、まだ戸を完全に閉め切らないうちに、テーブルの上のものをすべて頭の中に記録していた。皿は三人分並んでいる。ということは、マリラはマシューと一緒に誰かがお茶に帰ってくるのを待っているのだろう。だが食器は普段使いのものだし、出ているのはクラブアップルのジャムと一種類のケーキだけだ。待っている客は、特別な客ではなさそうだった。それにしても、マシューの白い襟と栗毛の雌馬はどう説明するのか。静かで謎などないはずのグリーン・ゲイブルズに起きたこの異例の謎に、レイチェル夫人はすっかり目を回しそうだった。

「こんばんは、レイチェル」とマリラは手早く言った。「本当に気持ちのいい晩ねえ。座ったら? ご家族は皆さんお元気?」

マリラ・カスバートとレイチェル夫人の間には、ほかに適切な名がなければ友情とでも呼ぶしかないものが、昔から存在していた。二人の性格が似ていないにもかかわらず――いや、似ていないからこそ、そうだったのかもしれない。

マリラは背が高く痩せていて、曲線というものがなく、角ばっていた。黒髪にはいくらか白い筋が混じり、いつも後ろで固い小さな髷にまとめられ、二本の針金の髪留めが攻撃的に突き刺さっていた。経験の乏しい、融通のきかない良心の持ち主に見えたし、実際そうだった。だが口もとには救いとなる何かがあり、もしそれがもう少しだけ発達していれば、ユーモアの感覚の表れと見なされたかもしれなかった。

「みんな、まあ元気だよ」とレイチェル夫人は答えた。「でも、あんたの具合が悪いんじゃないかと少し心配したんだよ。今日マシューが出かけるのを見たからね。医者へ行くのかと思ったのさ。」

マリラの唇が、わけを知ったようにぴくりと動いた。レイチェル夫人が来るだろうことは予想していた。理由もわからずマシューが馬車で出かけるところを見せられては、隣人の好奇心には耐えられまいと、わかっていたのである。

「いいえ、私は元気よ。昨日はひどい頭痛がしたけれど」とマリラは言った。「マシューはブライト・リバーへ行ったの。ノバスコシアの孤児院から男の子を一人もらうことにしてね。今夜、列車で来るのよ。」

マリラが、マシューはオーストラリアからカンガルーを迎えにブライト・リバーへ行ったのだと言ったとしても、レイチェル夫人はこれ以上驚かなかっただろう。夫人は五秒間、文字どおり声を失った。マリラが自分をからかうなど考えられない。だがレイチェル夫人は、ほとんどそうとしか思えなかった。

「本気なの、マリラ?」ようやく声を取り戻すと、夫人は問い詰めた。

「ええ、もちろんよ」とマリラは答えた。まるでノバスコシアの孤児院から男の子をもらうことが、どこのきちんとしたアヴォンリーの農家でも春にする普通の仕事であり、前代未聞の出来事ではないかのようだった。

レイチェル夫人は、頭を強く殴られたような衝撃を受けた。頭の中では感嘆符ばかりが飛び交った。男の子! よりによってマリラとマシュー・カスバートが男の子を養子にする! 孤児院から! まったく、世界が逆さまになったに違いない! これから先、何が起ころうと驚くものか! 何にも! 

「いったいどうして、そんな考えが頭に浮かんだの?」夫人は不賛成の声で尋ねた。

自分に相談もなく行われたことなのだから、当然、反対しなくてはならなかった。

「しばらく前から考えていたのよ――実を言うと、冬じゅうずっと」とマリラは答えた。「クリスマス前に、アレクサンダー・スペンサー夫人がここへいらしてね。春になったらホープトンの孤児院から女の子を一人もらうつもりだって、おっしゃったの。夫人の従姉妹があちらに住んでいて、スペンサー夫人は訪ねたことがあるから、事情をよくご存じなのよ。それからずっと、マシューと時々話し合ってきた。私たちは男の子をもらおうと思ったの。マシューも年を取ったでしょう――六十歳だし、昔ほど身軽でもない。心臓もずいぶん悪いのよ。それに、雇い人を見つけるのがどれほど大変か、あなたも知っているでしょう。いるのは、愚図で半人前のフランス系の少年ばかり。ようやくこちらのやり方に慣れさせて、何かを教え込んだと思ったら、ロブスターの缶詰工場かアメリカへ行ってしまう。最初、マシューは救貧院の子をもらえばいいと言ったの。でも私はきっぱり断ったわ。『みんなが悪いとは言わないけれど、ロンドンの浮浪児はごめんだわ』って。『せめてこの土地で生まれた子にしてちょうだい。誰をもらっても危険はあるでしょうけど、生まれながらのカナダ人なら、少しは気が楽だし夜もよく眠れるわ』とね。それで結局、スペンサー夫人が女の子をもらいに行くとき、一人選んでくださるようお願いすることにしたの。先週、夫人が行かれると聞いたから、カーモディにいるリチャード・スペンサーのご家族を通じて、十歳か十一歳くらいの利口そうでしっかりした男の子を連れてきてほしいと伝えたのよ。その年頃がいちばんよいと思ったの。すぐ家の手伝いができるくらいには大きく、それでいて、ちゃんとしつけられるくらいには幼いでしょう。よい家庭と教育を与えるつもりなの。今日、アレクサンダー・スペンサー夫人から電報が来たわ――郵便屋さんが駅から届けてくれたの。今夜五時半の列車で来るそうよ。それでマシューは、その子を迎えにブライト・リバーへ行ったの。スペンサー夫人がそこで子どもを降ろしてくださる。夫人ご自身は、もちろんホワイト・サンズ駅まで行かれるのよ。」

レイチェル夫人は、いつでも思ったことを口にするのを誇りとしていた。この驚くべき知らせを聞いて、気持ちの整理をつけると、さっそく思いを口にした。

「まあ、マリラ。はっきり言わせてもらうけど、あたしはとんでもなく馬鹿なことをしてると思うよ――危ないことさ。何を引き取るのか、あんたたちは何も知らない。見知らぬ子どもを家に入れるのに、その子がどんな気性かも、どんな親から生まれたのかも、どう育つ見込みなのかも、何ひとつわからないじゃないか。つい先週も新聞で読んだよ。島の西側に住む夫婦が孤児院から男の子をもらったら、その子が夜中に家へ火をつけたんだって――わざと、だよ、マリラ。寝ていた夫婦は危うく丸焼けになるところだったそうだ。それに、養子にした男の子が卵を吸って食べる癖があって、どうしてもやめさせられなかった話も知ってる。もしこの件であたしに相談してくれていたら――してくれなかったけどね、マリラ――どうかそんなことは考えないでおくれ、と言ったよ。間違いなくね。」

ヨブの慰め手のようなこの言葉にも、マリラは腹を立てるでも、怖がるでもなかった。手を休めずに編み続けていた。

「あなたの言うことにも一理あるわ、レイチェル。私だって少し不安だったもの。でも、マシューがひどく望んだのよ。それがわかったから、私も譲ったの。マシューが何かを欲しがることなんて滅多にないから、そういうときは譲るのが私の役目だと思うのよ。それに危険というなら、この世で人間のすることのほとんどすべてに危険はあるでしょう。自分の子どもを持つことにだって、危険はあるのよ――必ずしも立派に育つわけではないもの。ノバスコシアは島のすぐ近くだし、イギリスやアメリカからもらうのとは違う。その子だって、私たちとそう変わらないはずよ。」

「まあ、うまくいくといいけどね」とレイチェル夫人は、痛ましい疑いを隠しもしない口調で言った。「ただ、もしグリーン・ゲイブルズを焼き払ったり、井戸にストリキニーネを入れたりしたら、あたしが警告しなかったとは言わないでおくれよ。ニューブランズウィックで、孤児院の子がそんなことをして、家族全員が恐ろしい苦しみの末に死んだ例を聞いたことがあるんだから。もっとも、そのときは女の子だったけどね。」

「私たちは女の子をもらうんじゃないわ」とマリラは言った。まるで井戸に毒を入れるのは純粋に女性的な才能であり、男の子なら恐れる必要がないかのようだった。「女の子を育てるためにもらうなんて、私には思いもよらないことよ。アレクサンダー・スペンサー夫人がそうなさるのは、不思議だと思うけれど。まあ、夫人なら、思いついたら孤児院まるごと養子にすることだって、ためらわないでしょうね。」

レイチェル夫人としては、マシューが遠方から連れて帰る孤児を見るまで残っていたかった。だが、到着までには少なくとも二時間はかかると考え、ロバート・ベルの家へ行ってこのニュースを伝えることにした。きっと大変な騒ぎになるだろうし、レイチェル夫人は騒ぎを起こすことがこのうえなく好きだった。そこで夫人は去っていった。マリラは少しほっとした。レイチェル夫人の悲観論を聞くうちに、自分の不安と恐れまでまた頭をもたげてきたからである。

「まあ、これまでにあったことも、これからあることも、みんなひっくるめたって!」と、無事に私道まで出たレイチェル夫人は叫んだ。「まるで夢でも見てるみたいだよ。ああ、あのかわいそうな子には本当に同情するね。マシューもマリラも子どものことなんか何も知らないんだから。あの子に祖父がいたとしても、その祖父より賢く、落ち着いていることを期待するに決まってる。もっとも祖父なんていたかどうかも怪しいけどね。グリーン・ゲイブルズに子どもがいるなんて、どうにも薄気味悪いよ。あそこにはこれまで一人もいなかったんだから。新しい家が建ったときには、マシューもマリラももう大人だった――あの二人を見ていると、子ども時代なんて本当にあったのか信じがたいけれど。あたしなら、その孤児の身には何があってもなりたくない。まあ、かわいそうにね、本当に。」

レイチェル夫人は、胸に満ちた思いを野ばらの茂みに向かってこう語った。だが、そのときまさにブライト・リバー駅で辛抱強く待っている子どもの姿を見ていたなら、夫人の同情はさらに深く、さらに痛切なものになっただろう。


第二章 マシュー・カスバート、驚く

マシュー・カスバートと栗毛の雌馬は、八マイル(約十三キロメートル)の道を心地よく揺られながら、ブライト・リバーへ向かった。道は美しかった。居心地のよさそうな農家の間を通り、ときおり芳香を放つモミの林を抜け、野生のスモモが薄絹のような花を垂らすくぼ地を横切る。空気にはたくさんのリンゴ園の息吹が甘く満ち、牧草地は遠くで真珠色と紫色の地平の靄へと傾斜していた。そして、

「小鳥たちは歌っていた、まるでそれが
一年じゅうでただ一日の夏であるかのように。」

マシューは、女性に出会って会釈をしなければならないときを除けば、自分なりにこの道中を楽しんでいた。プリンス・エドワード島では、道で出会う人には、知り合いかどうかを問わず、誰にでも会釈をするものと決まっていたのである。

マシューは、マリラとレイチェル夫人を除くあらゆる女性を恐れていた。あの不可思議な生き物たちは、陰で自分を笑っているのではないかという、居心地の悪い思いがあった。そう考えるのも、まったく根拠がないわけではなかったかもしれない。彼は不格好な体つきで、長い鉄灰色の髪が猫背の肩に触れ、二十歳のころから伸ばし続けている豊かで柔らかな茶色の髭をたくわえた、風変わりな姿をしていた。実のところ、白髪が少なかったことを別にすれば、二十歳のときから六十歳の今まで、ほとんど同じように見えていたのである。

ブライト・リバーに着くと、列車の姿はまだなかった。早く着きすぎたと思い、町の小さなホテルの厩に馬をつなぎ、駅舎へ向かった。長いホームにはほとんど人影がなく、見える生き物は端のほうに積まれた屋根板の上へ座っている一人の少女だけだった。マシューは、それが少女だと辛うじて気づいただけで、目を向けずに、できるだけ急いで横をすり抜けた。もし目を向けていたなら、その姿勢と表情が示す緊張した硬さと期待を、見逃すことはできなかっただろう。少女は何か、あるいは誰かを待っていた。そして今は、座って待つほかに何もできないのだから、力の限り座り、力の限り待っていたのである。

切符売り場に鍵をかけ、夕食を食べに帰ろうとしていた駅長に出会うと、マシューは五時半の列車がじきに来るかどうか尋ねた。

「五時半の列車なら、三十分前に着いて、もう行っちまいましたよ」と、そのきびきびした駅員は答えた。「でも、あなた宛てに乗客が一人降りた――小さな女の子です。あそこで屋根板の上に座っていますよ。婦人待合室に入るよう言ったんですが、外にいたいと厳かに言いましてね。『想像の余地がもっとありますから』だそうです。なかなかの子ですよ。」

「女の子を迎えに来たんじゃないんですが」とマシューは呆然として言った。「迎えに来たのは男の子です。ここにいるはずなんです。アレクサンダー・スペンサー夫人が、ノバスコシアから私のために連れてくることになっていました。」

駅長は口笛を吹いた。

「何か手違いがあったんでしょうね」と言った。「スペンサー夫人はあの子と一緒に列車を降りて、私に預けました。あなたと妹さんが孤児院からあの子を引き取ることになっていて、じきに迎えに来るとおっしゃいました。それしか知りませんよ――それに、近くにほかの孤児を隠しているわけでもありません。」

「わけがわかりません」とマシューは途方に暮れて言った。こんな状況を片づけるために、マリラがそばにいてくれたらと願った。

「じゃあ、あの子に聞くのがいいでしょう」と駅長は無頓着に言った。「説明できるかもしれません――自分の舌をしっかり持っている子なのは、確かですから。欲しい種類の男の子が、もういなかったのかもしれませんよ。」

彼は空腹だったので、足取りも軽く去っていった。哀れなマシューに残されたのは、獅子の巣穴へ乗り込んで立ち向かうより難しいことだった――少女に、しかも見知らぬ少女に、孤児の少女に近づき、なぜ男の子でないのかを尋ねることである。マシューは心の中でうめきながら、向きを変え、そっと足を引きずるようにホームを少女のほうへ歩いた。

少女はマシューが自分の前を通り過ぎたときからずっと見ており、今も目を離さずにいた。マシューは少女を見ていなかったし、仮に見ていたとしても、その子が本当はどんな子なのか見抜けなかっただろう。しかし普通の観察者なら、こう見ただろう。十一歳ほどの子どもで、黄灰色のウィンシー[訳注:厚手の毛織物]でできた、ひどく短く、ひどくきつく、ひどく醜い服を着ている。色あせた茶色の水兵帽をかぶり、その下から背中へ、ひどく豊かで、疑いようもなく赤い二本の三つ編みが垂れている。顔は小さく、白く、痩せていて、雀斑がひどく多い。口も大きく、目も大きい。その目は、光の加減や気分によって緑にも灰色にも見えた。

普通の観察者にはそこまでだろう。だが非凡な観察者であれば、顎がとても尖って目立つこと、大きな目には気概と生気が満ちていること、口もとは愛らしく表情豊かなこと、額は広く豊かなことに気づいたかもしれない。つまり、見抜く力を持つ非凡な観察者なら、内気なマシュー・カスバートがばかばかしいほど恐れている、この迷子のような女の子の身体には、決してありふれた魂など宿っていないと結論しただろう。

だがマシューは、先に話しかけるという試練から救われた。少女は、自分のもとへ来るのだとわかるとすぐ立ち上がり、痩せた茶色の手で、みすぼらしい昔風の旅行鞄の取っ手を握った。もう一方の手を、彼に差し出した。

「グリーン・ゲイブルズのマシュー・カスバートさんですね?」少女は、妙に澄んだ甘い声で言った。「お会いできて本当にうれしいです。もう迎えに来てくださらないんじゃないかって心配になりかけていて、何が起きたら来られなくなるのか、いろいろ想像していたんです。もし今夜来てくださらなかったら、線路をあの曲がり角の大きな野生の桜の木まで歩いて行って、そこへ登って一晩過ごそうと決めていました。ぜんぜん怖くありませんよ。月明かりの中で、真っ白な花をつけた野生の桜の木に寝るなんて、すてきじゃありませんか? 大理石の御殿に住んでいると思えばいいでしょう? 今夜来てくださらなくても、朝になれば、きっと迎えに来てくださるって思っていました。」

マシューはその骨ばった小さな手を、不器用に自分の手で取った。そしてその場で、どうすべきか決めた。この燃えるような目をした子に、手違いだったとは言えなかった。家へ連れて帰り、マリラに言わせればよい。どんな手違いであろうと、ブライト・リバーにこの子を残していくことはできない。ならば、グリーン・ゲイブルズへ無事に帰るまで、質問も説明も先延ばしにするのがよかった。

「遅くなってすまなかったね」とマシューは恥ずかしそうに言った。「さあ、おいで。馬はあそこの厩にいる。鞄を貸しなさい。」

「まあ、自分で持てます」と子どもは明るく答えた。「重くありません。これには私の全財産が入っているんですけど、重くないんです。それに、決まった持ち方をしないと取っ手が抜けちゃうんです。だから私が持ったほうがいいんです――どんなふうに持てばいいか、ちゃんとわかっていますから。ものすごく古い旅行鞄なんです。ああ、迎えに来てくださって、本当にうれしいです。野生の桜の木で眠るのもすてきだったでしょうけどね。ずいぶん長い道を行くんでしょう? スペンサー夫人が八マイル(約十三キロメートル)だっておっしゃいました。うれしいです、馬車に乗るのが大好きですから。ああ、あなたと一緒に暮らして、あなたの家の子になれるなんて、すばらしいことです。私はこれまで、誰のものにもなったことがないんです――本当の意味では。でも孤児院は最悪でした。いたのは四か月だけですけど、それで十分でした。きっと、孤児院の孤児になったことはないでしょうから、どんなところかわかるはずがありません。想像できるどんなことよりも、ずっとひどいんです。スペンサー夫人は、そんなふうに言うのは悪いことだとおっしゃったけれど、悪く言うつもりなんてなかったんです。知らないうちに悪い子になるのって、とても簡単でしょう? 孤児院の人たちはいい人でした。でも孤児院には、想像の余地がほとんどないんです――ほかの孤児のことを除けば。あの子たちについて何かを想像するのは、なかなか面白かったです。たとえば隣に座っている女の子は、じつは帯剣伯爵の娘で、赤ん坊のときに残酷な乳母にさらわれ、乳母は告白する前に死んでしまったのかもしれない、とか。昼間は時間がないから、夜に寝ないでそんなことを想像していたんです。だからこんなに痩せているんだと思います――私、ひどく痩せていますよね? 骨に肉がぜんぜんついていないんです。丸々としていて、肘にえくぼがある自分を想像するのが大好きです。」

ここでマシューの連れは話すのをやめた。息が切れたのと、軽馬車のところへ着いたのと、両方のためだった。村を出て、急な小さな坂を下り始めるまで、少女は一言も口をきかなかった。その道は柔らかな土に深く掘り込まれており、花咲く野生の桜や細い白樺に縁どられた両側の土手は、二人の頭より数フィート(約一メートル)も高かった。

少女は手を伸ばし、馬車の脇をかすめた野生のスモモの枝を一本折った。

「きれいでしょう? あの土手から身を乗り出している、白くてレースみたいな木を見て、何を思いませんでした?」と尋ねた。

「さあなあ、わからんね」とマシューは言った。

「花嫁ですよ、もちろん――白い服を着て、霧のように美しいベールをかぶった花嫁です。一度も見たことはありませんけど、どんなふうか想像できます。私自身は、花嫁になるなんてとても思えません。あまりに不器量だから、誰も結婚してくれないでしょう――外国伝道師でもないかぎりは。外国伝道師なら、あまり選り好みをしないかもしれません。でも、いつか白い服を持てたらいいなと思っています。それが地上で得られる幸福の最高の理想なんです。きれいな服が大好きなんですもの。覚えているかぎり、人生で一度もきれいな服を着たことがありません――でも、そのぶん楽しみに待つものがあるってことですよね? それに、豪華な服を着ている自分を想像できます。今朝、孤児院を出るとき、このひどい古いウィンシーの服を着なくちゃならなくて、とても恥ずかしかったんです。孤児はみんな着なければならなかったんです。去年の冬、ホープトンの商人が孤児院へウィンシーを三百ヤード(約二百七十メートル)寄付したんです。売れなかったから寄付したんだって言う人もいましたけど、私は心からの親切だったと信じたいです。そう思いませんか? 列車に乗ったときは、みんなが私を見て、かわいそうに思っているんじゃないかという気がしました。でも私はすぐに想像を始めたんです。いちばん美しい淡青色の絹のドレスを着ていると――想像するなら、価値のあるものを想像したほうがいいでしょう? ――それに、花と揺れる羽飾りがいっぱいの大きな帽子、金時計、子山羊革の手袋とブーツも。すぐに元気になって、島までの旅を思いきり楽しみました。船でも少しも船酔いしなかったんです。スペンサー夫人もそうでした。いつもは船酔いなさるのに。私が海に落ちないよう見ているのに忙しくて、酔っている暇がなかったっておっしゃいました。あんなにうろうろする子は見たことがないって。でも、それで夫人が船酔いしなくて済んだなら、うろうろしてよかったんですよね? 船で見られるものは、見られる限りぜんぶ見たかったんです。二度と機会がないかもしれないでしょう? ああ、桜の木がいっぱい、みんな花盛りです! この島は、世界でいちばん花の咲く場所です。もうすっかり大好きですし、ここに住めるなんて本当にうれしいです。プリンス・エドワード島は世界でいちばん美しい場所だと、いつも聞いていました。ここに住んでいる自分をよく想像していたけれど、本当にそうなるなんて、期待したことはありませんでした。想像したことが本当になるのって、すてきでしょう? でも、この赤い道はおかしいですね。シャーロットタウンで列車に乗って、赤い道が流れ始めたとき、なぜ赤いのかスペンサー夫人に聞いたんです。そうしたら、ご自分も知らないから、お願いだからもう質問しないでっておっしゃいました。もう千も質問したって。でも、物事を知りたければ質問しないでどうやってわかるんでしょう? それに、道を赤くしているものって、いったい何なんですか?」

「さあなあ、わからんね」とマシューは言った。

「では、それもいつか調べることの一つですね。知るべきことがこんなにたくさんあると思うと、すばらしいでしょう? 生きていてよかったって、うれしくなります――とても面白い世界ですもの。もし何もかも知っていたら、世界は半分も面白くないでしょう? そのときには想像の余地なんてありませんものね? でも私、しゃべりすぎていますか? いつもそう言われるんです。しゃべらないほうがいいですか? そうおっしゃるなら、やめます。決心すれば、やめられます――難しいことですけど。」

マシューは自分でも驚くほど、楽しんでいた。静かな人間の多くがそうであるように、自分で話してくれて、こちらに話の役目を期待しないおしゃべりな人間が好きだった。だが小さな女の子との交際を楽しむとは、これまで思いもしなかった。女性だけでも十分困るのに、小さな女の子はさらに困る。彼が少しでも言葉を発したら一口で食べられてしまうのではないかと恐れているように、横目でちらちら見ながら、おずおず脇をすり抜けるあの様子が、彼は嫌いだった。それがアヴォンリーにおける、行儀のよい少女の型だった。だが、この雀斑だらけの小魔女はまるで違った。鈍い自分の頭では、彼女の素早い思考についていくのは少し難しかったが、この子のおしゃべりが「なんだか好きだ」と思った。

だから、いつものように恥ずかしそうに言った。

「好きなだけ話していいよ。わしは気にしない。」

「まあ、よかった。私たち、きっととても仲よくなれます。しゃべりたいときにしゃべってもよくて、子どもは見られても聞かれるべきじゃない、なんて言われないのは、本当にほっとします。それなら一度でいいのに、私は百万回くらいそう言われてきました。それに、大きな言葉を使うからって、みんな私を笑うんです。でも大きな考えを持っていたら、それを表すには大きな言葉を使わなくちゃならないでしょう?」

「さあ、それはもっともらしいね」とマシューは言った。

「スペンサー夫人は、私の舌は真ん中で吊ってあるに違いないっておっしゃいました。でもそんなことありません――片方の端にしっかりくっついています。スペンサー夫人は、あなたの家はグリーン・ゲイブルズという名前だっておっしゃいました。いろいろ聞いたんです。家のまわりには木がいっぱいあるって。だから、もっともっと嬉しくなりました。木が大好きなんですもの。孤児院には木なんてぜんぜんなかったんです。前に、小さな白塗りの柵みたいなものに囲まれた、かわいそうなちびっこい木が何本かあっただけです。あの木たち、まるで孤児みたいに見えました。見ると泣きたくなったんです。私はいつも木にこう言いました。『ああ、かわいそうな子たち! 大きな森の中で、ほかの木に囲まれて、根もとには小さな苔や六月の鈴蘭が生えていて、近くには小川が流れ、枝には鳥が歌っていたら、あなたたちも大きくなれるでしょう? でも、ここでは育てないのよね。あなたたちの気持ち、私にはよくわかるわ、小さな木たち』って。今朝、置いてくるのは悲しかったです。あんなものにも、とても愛着がわくでしょう? グリーン・ゲイブルズの近くに、小川はありますか? スペンサー夫人に聞くのを忘れていました。」

「あるよ。家のすぐ下にね。」

「まあ! 小川の近くに住むのは、ずっと私の夢の一つだったんです。でも、本当になるなんて期待していませんでした。夢はめったに叶わないでしょう? 叶ったらすてきなのに。でも今の私は、ほとんど完全に幸せです。完全に幸せにはなれないんですけれど――あの、それは何色と呼ぶんですか?」

少女は、長く艶やかな三つ編みの一方を痩せた肩から前へ引き寄せ、マシューの目の前に掲げた。女性の髪の色合いを決めることに慣れていないマシューだったが、この場合は疑いようもなかった。

「赤い、だろう?」と彼は言った。

少女は三つ編みを落とした。ため息は足の指先から出て、ありとあらゆる時代の悲しみを吐き出したかのようだった。

「ええ、赤いんです」と、あきらめたように言った。「これで、なぜ完全に幸せになれないかわかったでしょう。赤毛の人間は、誰だって完全に幸せにはなれません。ほかのことは、それほど気にしないんです――雀斑も、緑色の目も、痩せていることも。そんなものは想像で消せます。私はバラの花びらみたいにきれいな肌と、星のようなすみれ色の目を持っているんだって想像できます。でも、赤い髪だけは、どうしても想像で消せないんです。一生懸命やってみるんですよ。『さあ、私の髪は見事な黒。鴉の翼のように黒い』って自分に言うんです。でもずっと、ただの赤毛だってわかっているから、心が張り裂けそうになります。これは一生の悲しみです。小説で、一生の悲しみを持つ女の子を読んだことがあります。でも、その子の悲しみは赤毛じゃありませんでした。髪は雪花石膏の額から、純金のように波打って流れていたんです。雪花石膏の額って何ですか? ずっと調べてもわからなかったんです。教えてくださいます?」

「うーん、残念だが、わしにもわからんね」とマシューは言った。少し目が回り始めていた。無鉄砲な少年時代、ピクニックで別の少年に誘われて回転木馬へ乗ったときのような気分だった。

「まあ、何であれ、その子は神々しいほど美しかったんですから、きっとすてきなものでしょう。神々しいほど美しいって、どんな感じか想像したことはあります?」

「うーん、いや、ないね」とマシューは素直に認めた。

「私は何度もあります。選べるとしたら、どれになりたいですか――神々しいほど美しい人、それとも目もくらむほど賢い人、それとも天使のように善良な人?」

「うーん、わしは――よくわからんね。」

「私もです。決められたことがありません。でも実際には、あまり違いはありません。どれになれる見込みもないんですから。天使のように善良には、絶対になれません。スペンサー夫人が――ああ、カスバートさん! ああ、カスバートさん! ああ、カスバートさん!」

それはスペンサー夫人が言ったことではなかった。少女が馬車から転げ落ちたのでも、マシューが何か驚くことをしたのでもない。ただ道の曲がり角を回ると、二人は「並木道」に出たのである。

ニューブリッジの人々がそう呼ぶ「並木道」は、何年も前に風変わりな老農夫が植えた、巨大で枝を大きく広げるリンゴの木が完全にアーチをつくる、四百か五百ヤード(約三百七十〜四百六十メートル)の道だった。頭上には、雪のように白く香る花が、果てしない天蓋のように連なっていた。枝の下の空気は紫のたそがれで満たされ、ずっと前方には、夕焼け色の空が、大聖堂の身廊の果てにある大きな薔薇窓のようにのぞいていた。

その美しさは、少女から言葉を奪ったようだった。軽馬車の背にもたれ、痩せた手を胸の前で組み、白い壮麗さをうっとりと見上げている。並木道を出て、ニューブリッジへ下る長い坂に差しかかっても、少女は動きも話しもしなかった。恍惚とした顔のまま、燃える背景を横切って壮麗に行き交う幻を見ている目で、夕焼けの西の彼方を見つめていた。犬が吠えかかり、少年たちがからかいの声を上げ、好奇心に満ちた顔が窓からのぞく、にぎやかな小村ニューブリッジを通り抜けても、二人は沈黙していた。さらに三マイル(約五キロメートル)進んでも、少女は口を開かなかった。おしゃべりと同じほどの力を込めて、黙っていることもできるらしかった。

「ずいぶん疲れて、お腹も空いたろうね」とマシューはようやく思い切って言った。長い沈黙の理由として、自分に思いつくのはそれだけだった。「でも、もうあまり遠くないよ――あと一マイル(約一・六キロメートル)だけだ。」

少女は深いため息とともに夢想から戻り、星に導かれて遠くをさまよっていた魂のような、夢見る目で彼を見た。

「ああ、カスバートさん」と少女はささやいた。「さっき通ったところ――あの白い場所――あれは何というんですか?」

「うーん、並木道のことだろうね」と、マシューはしばらく深く考えてから言った。「なかなかきれいな場所だ。」

「きれい? ああ、“きれい”はぴったりの言葉じゃありません。“美しい”でも足りません。言葉が届かないんです。ああ、すばらしかった――すばらしかったです。想像で少しもよくできないものを、私が見たのは初めてです。ここが満たされたんです」少女は片手を胸に当てた。「変で不思議な痛みがしたけれど、心地よい痛みでした。カスバートさん、そんな痛みを感じたことがあります?」

「うーん、そんなことはなかったと思うね。」

「私は何度もあります――王様のように美しいものを見ると、いつも。でもあんなにすてきな場所を、並木道なんて呼んではいけません。そんな名前には意味がありません。あそこは、そうですね――“歓喜の白い道”と呼ぶべきです。想像力のあるすてきな名前でしょう? 場所や人の名前が気に入らないときには、いつも新しい名前を想像して、心の中ではそう呼ぶんです。孤児院にはヘプジバ・ジェンキンズという子がいましたけれど、私はいつもロザリア・デヴィアだと思っていました。ほかの人たちはあの場所を並木道と呼んでもいいけれど、私はいつも歓喜の白い道と呼びます。家まで本当にあと一マイルだけなんですか? うれしいし、悲しいです。この馬車の旅がとても楽しかったから、悲しいんです。楽しいことが終わると、いつも悲しくなります。そのあとに、もっと楽しいことが来るかもしれません。でも、そんなことは決してわかりません。たいていは、もっと楽しくなかったりするんです。少なくとも、私の経験では。でも家に着くと思うとうれしいです。覚えているかぎり、本当の家を持ったことがないんですもの。本当の本当に家へ行くんだと思うだけで、またあの心地よい痛みがします。ああ、あれはなんてきれいなの!」

二人は丘の頂を越えた。下には、あまりに長く曲がりくねっているため、ほとんど川のように見える池があった。池の中ほどには橋が架かり、そこから下流の端までは、琥珀色の砂丘の帯が、向こうの濃い青の湾と隔てていた。水面は移り変わる無数の色の栄光だった――クロッカスの紫、薔薇色、空気のように淡い緑、そしてまだ誰も名を見つけていない、ほかのとらえどころのない色合い。橋より上では、池はモミとカエデの林の縁へ入り込み、揺れる影の下で暗く透き通っていた。ところどころ、野生のスモモが、白衣の少女が自分の姿を映そうと爪先立ちしているように、岸から身を乗り出していた。池の上流に広がる湿地からは、蛙たちの澄んだ、もの悲しく甘い合唱が聞こえた。向こうの斜面には、白いリンゴ園の陰から小さな灰色の家がのぞいていた。まだすっかり暗くはなっていなかったが、その窓の一つには灯がともっていた。

「あれがバリー家の池だ」とマシューは言った。

「ああ、その名前も気に入りません。そうですね――“輝く湖水”と呼びます。ええ、それがぴったりの名前です。ぞくぞくしたから、わかるんです。ぴったりの名前を思いつくと、ぞくぞくするんです。何かを見て、ぞくぞくすることはあります?」

マシューは考え込んだ。

「うーん、あるよ。キュウリ畑を掘り返すと出てくる、あの醜い白い幼虫を見ると、いつもぞっとするね。あれは見るのも嫌いだ。」

「まあ、それはまったく同じ種類のぞくぞくではない気がします。そう思いません? 幼虫と輝く湖水には、あまりつながりがないように思えます。でも、なぜほかの人たちはバリー家の池と呼ぶんですか?」

「バリーさんが、あの家に住んでいるからだろうね。あの家は果樹園の丘という名前だ。後ろの大きな茂みがなければ、ここからグリーン・ゲイブルズが見えるんだがね。でも橋を渡って道を回らなきゃならんから、あと半マイル(約八百メートル)近くある。」

「バリーさんには、小さな女の子がいますか? まあ、そんなに小さくなくてもいいです――私くらいの子。」

「十一歳くらいの子が一人いる。ダイアナという名前だ。」

「ああ!」少女は長く息を吸い込んだ。「なんて完全にすてきな名前でしょう!」

「うーん、わしには少し異教徒みたいな響きがするね。ジェーンとかメアリーとか、そんな分別のある名前のほうがいい。だがダイアナが生まれたとき、そこに下宿していた教師がいてね、その人に名前をつけてもらったんだ。それでダイアナになった。」

「私が生まれたときにも、そんな教師が近くにいてくれたらよかったのに。ああ、橋ですね。目をぎゅっと閉じます。橋を渡るのはいつも怖いんです。橋の真ん中に差しかかったとたん、折り畳みナイフみたいにぱたりと折れて、私たちを挟むんじゃないかと、どうしても想像してしまうんです。だから目を閉じるんです。でも、真ん中に近づいたと思うと、必ず開けずにはいられません。だって、もし橋が本当に折れたら、折れるところを見たいでしょう? なんて愉快なごろごろ音でしょう! この音のところがいつも好きです。世の中には好きになれるものがこんなにたくさんあって、すばらしいと思いません? ほら、渡りました。では、振り返ってみます。おやすみなさい、愛しい輝く湖水。私は大好きなものには、誰にでもするようにおやすみを言うんです。きっと喜んでくれると思います。この水、私に向かって微笑んでいるみたい。」

向こう岸の丘を登り、曲がり角を回ると、マシューは言った。

「もう家のすぐ近くだ。あれがグリーン・ゲイブルズ――」

「まあ、言わないでください」少女は息をのんで遮り、彼が半ば上げた腕をつかみ、指した先が見えないよう目を閉じた。「当てさせてください。きっと正しく当てられます。」

少女は目を開け、あたりを見回した。二人は丘の頂にいた。日没からはしばらく経っていたが、柔らかな残光の中で風景はまだはっきり見えた。西には、濃い影の教会の尖塔が、金盞花色の空を背に立っていた。下には小さな谷があり、その向こうには、緩やかに登る長い斜面があって、居心地よさそうな農家が点々と散らばっている。少女の目は、期待と憧れをこめて一軒から次の一軒へ走った。やがて左手の、道からずっと奥まった一軒に目が留まった。周りの森の夕闇の中、花咲く木々の間で、ぼんやり白く見える家だった。その上の汚れのない南西の空には、一つの大きな水晶のように白い星が、導きと約束の灯のように輝いていた。

「あれですね?」少女は指さして言った。

マシューは喜び、栗毛の背に手綱をぴしゃりと当てた。

「うーん、当たったよ! だがスペンサー夫人が、わかるように説明してくれたんだろう。」

「いいえ、していません――本当に、していません。夫人がおっしゃったことは、ほかの家のどれについても言えそうなことばかりでした。どんな家なのか、本当には想像できませんでした。でも見たとたん、ここが家だと感じたんです。ああ、夢の中にいるみたいです。今日、何度も腕をつねったので、肘から上はきっと青あざだらけです。ときどき、恐ろしく気持ちの悪い感じがして、これがみんな夢じゃないかって怖くなったんです。それで本物かどうか確かめるために、つねったんです――でも急に、夢だとしても、できるだけ長く夢を見続けたほうがいいって思いついたので、つねるのをやめました。でも本当なんです。そして、もうすぐ家です。」

少女は恍惚のため息とともに、また沈黙した。マシューは落ち着かなく身じろぎした。世界からはみ出したこの子に、待ち望んだ家は結局この子のものにはならないと告げるのが、自分でなくマリラであることをありがたく思った。二人はリンドの谷を通った。そこはもうかなり暗かったが、レイチェル夫人が有利な窓辺から二人を見ることができないほどではなかった。丘を登り、グリーン・ゲイブルズの長い私道へ入った。家に着くころには、近づく真実を告げることから、マシューは自分でも理解できないほど強く身を縮めていた。考えていたのはマリラや自分のことでも、この手違いが二人に起こすだろう面倒のことでもなかった。子どもの失望のことだった。あの恍惚とした光が目から消えることを思うと、何かを殺す手助けをするような、居心地の悪い気持ちになった――子羊や子牛、ほかの罪のない小さな生き物を殺さなければならないときに感じるのと、ほとんど同じ気持ちだった。

庭へ曲がり込むと、あたりはすっかり暗く、ポプラの葉が周囲で絹のようにさやさや鳴っていた。

「眠りながら木たちがお話ししているのを聞いてください」と、マシューが少女を地面へ下ろすと、少女はささやいた。「どんなすてきな夢を見ているのでしょうね!」

それから「全財産」の入った旅行鞄をしっかり抱え、少女は彼の後について家の中へ入った。


第三章 マリラ・カスバート、驚く

マシューが戸を開けると、マリラはきびきびと前へ出た。だが、固く醜い服を着て、長い赤い三つ編みを垂らし、期待に輝く目をした奇妙な小さな姿へ目を落とすと、驚愕のあまりぴたりと立ち止まった。

「マシュー・カスバート、その子は誰?」と叫んだ。「男の子はどこなの?」

「男の子はいなかったんだ」とマシューは惨めそうに言った。「いたのは、この子だけだ。」

彼は、まだ名前すら聞いていなかったことを思い出しながら、少女のほうへうなずいた。

「男の子がいない? でも男の子がいるはずでしょう」とマリラは言い張った。「私たちはスペンサー夫人に、男の子を連れてくるよう伝えたのよ。」

「だが、夫人は連れてこなかった。この子を連れてきた。駅長に聞いたんだ。それで、連れて帰るしかなかった。どこで手違いが起きたにしろ、あの子をあそこに置いてはこられなかった。」

「これはまた、ずいぶんなことになったものね!」とマリラは叫んだ。

このやり取りのあいだ、少女は黙っていた。目を二人の間にさまよわせながら、顔から生気がすっかり消えていった。やがて急に、言われたことの意味を完全に理解したらしかった。大切な旅行鞄を落とし、一歩前へ飛び出して、両手を組んだ。

「私なんか要らないんですね!」と叫んだ。「男の子じゃないから、私なんか要らないんですね! そうなると思っていました。誰も私なんか欲しがったことはなかったんです。あまりに美しすぎて、続くわけがないって、わかっていたはずでした。誰も本当には私を欲しがっていないって、わかっていたはずでした。ああ、どうすればいいの? 泣いてしまいそう!」

そして実際に泣き出した。テーブル脇の椅子に座り、両腕をテーブルへ投げ出して、顔をうずめ、嵐のように泣き始めた。マリラとマシューは、ストーブをはさんで、申し訳なさそうに顔を見合わせた。二人とも、何を言えばよいのか、何をすればよいのかわからなかった。ついにマリラが、不器用ながらこの窮地を埋めようとした。

「まあまあ、そんなに泣くことはないでしょう。」

「あります!」

子どもはすばやく顔を上げた。涙で汚れた顔と震える唇が現れた。「あなたが孤児で、ここが家になると思って来たのに、男の子じゃないから要らないと言われたら、あなたも泣きます! ああ、これは私に起きた中でいちばん悲劇的なことです!」

長い間使われずに錆びついていたような、ためらいがちな笑みが、マリラの厳しい表情を少し和らげた。

「まあ、もう泣かないで。今夜、あなたを外へ放り出すわけではないの。このことを調べるまで、ここに泊まらなければならないわ。名前は何というの?」

子どもは少しの間ためらった。

「コーデリアと呼んでいただけませんか?」と、期待をこめて言った。

「コーデリアと“呼ぶ”? それがあなたの名前なの?」

「いいえ――正確には私の名前じゃありません。でも、コーデリアと呼ばれたらいいなとずっと思っていたんです。完璧に上品な名前ですもの。」

「いったい何を言っているのかわからないわ。コーデリアがあなたの名前でないなら、名前は何なの?」

「アン・シャーリーです」と、その名前の持ち主はしぶしぶ口にした。「でも、どうかコーデリアと呼んでください。ここには少しの間しかいないんですから、何と呼んでもあなたには大した違いはないでしょう? それにアンなんて、とてもロマンチックじゃない名前です。」

「ロマンチックじゃないなんて、ばかばかしい!」と、冷淡なマリラは言った。「アンは実にいい、素直で分別のある名前よ。恥ずかしがる必要なんてないわ。」

「恥ずかしいわけではないんです」とアンは説明した。「ただ、コーデリアのほうが好きなだけです。自分の名前はコーデリアだって、いつも想像していました――少なくとも、ここ数年はずっと。小さいころはジェラルディンだと想像していましたけれど、今はコーデリアのほうが好きです。でもアンと呼ぶなら、どうかEのつくアンにしてください。」

「綴りがどう違うというの?」マリラはもう一度錆びついた笑みを浮かべながら、急須を手に取った。

「まあ、ものすごく違います。見た目がずっといいんです。名前を聞くと、印刷されているみたいに、いつも頭の中で綴りが見えませんか? 私には見えます。A-n-nはひどく見えますが、A-n-n-eはずっと気品があります。Eのつくアンと呼んでくださるなら、コーデリアと呼ばれないことも、なんとかあきらめようと思います。」

「では、Eのつくアン。この手違いがどうして起きたのか、話せるかしら? 私たちはスペンサー夫人に男の子を連れてくるよう伝えたの。孤児院には男の子がいなかったの?」

「まあ、いました。たくさんいました。でもスペンサー夫人は、あなた方が十一歳くらいの女の子を欲しがっているって、はっきりおっしゃったんです。そして院長先生は、私がいいだろうと思ったんです。どんなにうれしかったかわかりません。昨夜はうれしくて眠れなかったんです。ああ」と、アンはマシューのほうを向き、恨めしげに付け加えた。「駅で、私なんか要らないって言って、置いていってくださればよかったのに。歓喜の白い道と輝く湖水を見ていなければ、こんなにつらくなかったでしょうに。」

「いったい何のことを言っているの?」と、マリラはマシューを見つめて尋ねた。

「そ、それは道中で話したことを、いくつか言っているだけだ」とマシューは急いで言った。「マリラ、わしは馬を厩に入れてくる。戻るまでにお茶の用意をしておいてくれ。」

「スペンサー夫人は、あなたのほかにも誰か連れてこられたの?」マシューが出て行くと、マリラは尋ね続けた。

「ご自分のために、リリー・ジョーンズを連れていらっしゃいました。リリーは五歳で、とてもきれいで、栗色の髪をしていました。もし私がとてもきれいで、栗色の髪だったら、私を置いてくださいます?」

「いいえ。私たちが欲しいのは、農場でマシューを手伝う男の子よ。女の子では役に立たないわ。帽子を脱ぎなさい。鞄と一緒に、玄関ホールのテーブルに置いてあげる。」

アンはおとなしく帽子を脱いだ。やがてマシューが戻り、三人は夕食の席についた。しかしアンは食べられなかった。パンとバターを少しかじり、皿のそばに置かれた小さな波形のガラス皿から、クラブアップルのジャムをつついてみたが、まったく食が進まなかった。

「何も食べていないじゃないの」とマリラは、重大な欠点でも見つけたように鋭く見ながら言った。アンはため息をついた。

「食べられないんです。私は絶望のどん底にいるんですもの。絶望のどん底にいるときに、食べられます?」

「絶望のどん底にいたことがないから、何とも言えないわ」とマリラは答えた。

「なかったんですか? では、絶望のどん底にいると想像してみたことはあります?」

「ないわ。」

「それなら、どんな感じかわからないと思います。とても不快な気持ちなんです。食べようとすると、喉のところに塊がせり上がってきて、何も飲み込めないんです。チョコレート・キャラメルだとしても。二年前に一度、チョコレート・キャラメルを食べたことがあります。ものすごくおいしかったです。それからよく、たくさんのチョコレート・キャラメルを持っている夢を見るんですけれど、食べようとしたちょうどそのとき、いつも目が覚めてしまうんです。食べられなくても、気を悪くなさらないでください。何もかもとてもおいしいんですけれど、それでも食べられないんです。」

「疲れているんだろう」と、納屋から戻ってから一言も話していなかったマシューが言った。「マリラ、寝かせたほうがいい。」

マリラは、アンをどこに寝かせればよいか考えていた。期待していた男の子のためには、台所の上の部屋に寝床を用意してあった。しかし、そこはきちんと清潔ではあるものの、女の子を寝かせる場所にはどうも思えなかった。かといって、こんな流れ者の孤児を客間へ寝かせるなど論外である。残るのは東側の切妻部屋だけだった。マリラは蝋燭に火をつけ、アンに付いてくるよう言った。アンは元気なく従い、通りがかりにホールのテーブルから帽子と旅行鞄を取った。ホールは恐ろしいほど清潔で、やがて入った小さな切妻部屋は、さらに清潔に思えた。

マリラは三本脚の三角テーブルに蝋燭を置き、ベッドの掛け布団をめくった。

「寝間着はあるのでしょうね?」と尋ねた。

アンはうなずいた。

「ええ、二枚あります。孤児院の院長先生が作ってくださったんです。ひどく丈が短いです。孤児院にはいつだって物が十分にないから、何もかも小さく作られているんです――少なくとも、私たちみたいな貧しい孤児院では。でも丈の短い寝間着は嫌いです。けれど、首もとにフリルがついた、裾を引くようなすてきな寝間着と同じように、それでも夢は見られます。それが一つの慰めです。」

「できるだけ早く服を脱いで、寝なさい。数分したら蝋燭を取りに戻るわ。自分で消させるわけにはいかないもの。きっと火事を起こすでしょうから。」

マリラが去ると、アンは切なそうに部屋を見回した。白く塗られた壁はあまりにむき出しで、見つめているようで、自分の裸同然の姿に痛みすら覚えているのではないかと思えた。床もまた、アンがこれまで見たことのない丸い編み敷物が中央に一枚あるほかは、何も敷かれていなかった。片隅には、低く反った四本の黒い柱を持つ、高い昔風のベッドがあった。もう一方の隅には、先ほどの三角テーブルがあり、どんなに勇敢な針でも先端を曲げてしまいそうなほど固い、太った赤いビロードの針山が載っていた。その上には、六インチ×八インチ(約十五×二十センチメートル)の小さな鏡が掛かっていた。テーブルとベッドの中ほどには窓があり、氷のように白いモスリンのフリルが垂れ、向かい側には洗面台があった。部屋全体に漂う硬直した感じは、言葉では表せないほどだったが、アンの骨の髄まで震えさせた。アンはすすり泣きながら急いで服を脱ぎ、丈の短い寝間着を着ると、ベッドへ飛び込んだ。うつ伏せになって枕へ顔を埋め、掛け布団を頭まで引き上げた。マリラが灯を取りに上がってきたとき、床にひどく乱雑に散らばった丈の短い衣服と、ベッドの嵐のあとのような様子だけが、マリラ以外の誰かがそこにいるしるしだった。

マリラはアンの服を一枚ずつ拾い上げ、黄色いきちんとした椅子へ整然と置いた。それから蝋燭を手にし、ベッドへ歩み寄った。

「おやすみ」と、少しぎこちなく、だが優しくないわけではない声で言った。

アンの白い顔と大きな目が、驚くほど突然に掛け布団の上から現れた。

「これまででいちばんひどい夜になるってわかっているのに、どうして“おやすみ”なんて言えるんですか?」と、恨めしげに言った。

それからまた、見えないところへ潜り込んだ。

マリラはゆっくり台所へ下り、夕食の皿を洗い始めた。マシューはパイプを吸っていた――心が乱れている確かな証拠だった。マシューは滅多に煙草を吸わなかった。マリラが不潔な習慣として反対していたからだ。だが時と場合によっては、どうしても吸わずにはいられなくなった。そのときマリラは、男というものにも感情のはけ口くらいは必要だと理解し、その習慣を見逃した。

「まったく、ひどいことになったものね」とマリラは怒って言った。「自分たちで行かず、伝言を頼んだからこうなるのよ。リチャード・スペンサーのご家族が、伝言をどうにか取り違えたんだわ。明日は私たちのどちらかが、スペンサー夫人のところへ行かなくてはならない。あの子は孤児院へ送り返すしかないわ。」

「うーん、そうだろうね」とマシューは気の進まなそうに言った。

「“そうだろうね”ですって! わからないの?」

「うーん、あの子は本当にいい子だよ、マリラ。ここにいたがっているのに、送り返すのは何だかかわいそうだ。」

「マシュー・カスバート、まさかあの子を置いておくべきだと思っているんじゃないでしょうね!」

マリラの驚きは、マシューが逆立ちをするのが好きだと言い出したとしても、これ以上にはならなかっただろう。

「うーん、いや、そういうわけじゃない――正確にはね」とマシューは、真意をはっきりさせろと追い詰められ、居心地悪そうにどもった。「わしらが――あの子を置いておくなんて、できるわけがないだろう。」

「もちろんですとも。私たちに何の役に立つというの?」

「わしらが、あの子の役に立てるかもしれない」とマシューは、突然、思いがけず言った。

「マシュー・カスバート、あの子はあなたに魔法をかけたんだわ! 置いておきたいと思っていること、見れば見るほどはっきりわかるわ。」

「うーん、あの子は本当に面白い子なんだ」とマシューは言い張った。「駅から来る途中で話すのを、聞かせてやりたかったよ。」

「話すのが速いことは、すぐわかったわ。それも長所ではないわね。あんなに口数の多い子どもは好きじゃない。私は孤児の女の子なんて欲しくないし、仮に欲しかったとしても、あの子みたいな子を選びはしない。何だか腑に落ちないところがあるのよ。いいえ、あの子はすぐにでも、もといた所へ送り返さなくては。」

「わしを手伝わせるために、フランス系の男の子を雇ってもいい」とマシューは言った。「あの子は、おまえの話し相手になる。」

「私は話し相手に困っていないわ」とマリラはそっけなく言った。「あの子を置いておくつもりはありません。」

「うーん、もちろん、おまえの言うとおりだよ、マリラ」とマシューは立ち上がり、パイプをしまいながら言った。「寝ることにする。」

マシューは寝床へ行った。食器を片づけ終えると、マリラも寝床へ行った。顔には、これでもかというほど頑固なしかめ面を浮かべて。そして二階の東側の切妻部屋では、心に家を、愛を飢え求める友なき子どもが、泣きながら眠りについた。

第十章 アンの謝罪

マリラはその晩、あの出来事についてマシューには何も話さなかった。だが翌朝になってもアンが頑として折れなかったため、朝食の席に姿を見せない理由を説明せざるを得なくなった。マリラは一部始終をマシューに話し、アンの振る舞いがいかにひどいものだったかを、これでもかというほど念を押した。

「レイチェル・リンドが叱られたのはいいことだ。あの人はおせっかいな噂好きの年寄りだからな」と、マシューは慰めるつもりで答えた。

「マシュー・カスバート、あきれたわ。アンのしたことがひどかったのは分かっているでしょうに、それでもあの子の肩を持つの? 次には、罰なんか与えなくていいと言い出すつもりじゃないでしょうね!」

「いや、まあ……そういうわけじゃない」と、マシューは落ち着かずに言った。「少しくらいは罰を受けるべきだと思うよ。でも、あんまり厳しくしないでやってくれ、マリラ。あの子には、正しいことを教えてくれる人が今までいなかったんだから。おまえ……食べるものは、ちゃんとやるんだろう?」

「私が人を飢えさせて、行儀よくさせるなんて、いつ聞いたことがあるの?」とマリラは憤然と言った。「食事はきちんと食べさせるし、私が自分で上に運ぶわ。でも、リンド夫人に謝る気になるまで、あの子はあの部屋にいさせます。それで決まりよ、マシュー。」

朝食も昼食も夕食も、ひどく静かな食事になった。アンは依然として意地を張っていたからだ。食事のたびにマリラはたっぷり料理を載せた盆を東側の切妻部屋へ運び、しばらくしてから、目立って減った様子もない盆を持ち下ろしてきた。最後の盆が下りてくるのを、マシューは不安そうな目で見つめた。アンは、いったい何か口にしたのだろうか。

その夕方、マリラが裏の牧草地へ牛を連れに出ると、納屋のあたりをうろつきながら様子をうかがっていたマシューは、泥棒のような身のこなしで家へ忍び込んだ。そしてそっと階段を上った。ふだんのマシューは台所と、廊下に面した小さな寝室のあいだを行き来するだけである。牧師が茶に来るときだけ、たまに居間か客間へ、居心地悪そうに足を踏み入れる程度だった。自分の家の二階に上がったことなど、四年前、マリラと客間の壁紙を張り替えた春以来、一度もなかった。

マシューは廊下をつま先立ちで進み、東の切妻部屋の扉の外に数分立ち尽くした。やがてようやく勇気を出して指先で軽く叩き、そっと扉を開けて中をのぞいた。

アンは窓辺の黄色い椅子に座り、悲しげに庭を見つめていた。あまりにも小さく、あまりにも不幸そうで、マシューの胸は痛んだ。彼は音を立てずに扉を閉め、つま先立ちでアンのところへ近寄った。

「アン」と、誰かに聞かれるのを恐れるように囁いた。「どうしてる、アン?」

アンは弱々しく微笑んだ。

「まあまあよ。いろいろ想像していると、時間が過ぎるの。もちろん、少し寂しいけれど。でも、どうせ慣れておいたほうがいいものね。」

アンはもう一度、勇敢に微笑んだ。これから先に待つ長い孤独な監禁生活を、まっすぐ見据えるように。

マシューは、マリラが早く戻ってくる前に、用件を急いで言わなければならないと思い出した。「あのな、アン。もう、やってしまって片をつけたほうがいいんじゃないか?」と囁いた。「遅かれ早かれ、やらなきゃならんことだ。マリラは恐ろしく頑固な女だからな――本当に頑固だ、アン。さっさとやって、終わらせるんだ。」

「リンド夫人に謝るってこと?」

「そうだ、謝るんだ――まさにその言葉だよ」とマシューは熱心に言った。「まあ、角を丸く収めるというか。わしが言いたかったのは、そういうことだ。」

「あなたのためなら、できると思うわ」とアンは考え深げに言った。「『ごめんなさい』と言うのは、今なら本当にそう思っているから、嘘ではないもの。昨夜は少しも悪いと思っていなかったわ。心の底から腹を立てていて、一晩じゅう怒っていたの。三度も目を覚ましたけれど、そのたびにものすごく怒っていたから、きっと本当にそうだったんだわ。でも今朝になったら、もうすっかり消えていたの。怒りっぽい気持ちはなくなったのに、そのかわり、なんだかひどく空っぽな感じが残ったの。それで自分がとても恥ずかしくなったわ。でも、リンド夫人のところへ行って、そんなことを言うなんて、とてもできなかった。あまりにも屈辱的だもの。あんなことをするくらいなら、一生ここに閉じこめられていたほうがましだって決めていたの。でも――あなたのためなら、何だってするわ――本当に望むなら。」

「もちろん望むさ。おまえがいないと、下はひどく寂しいんだ。行って、きれいに収めておいで――いい子だ。」

「分かったわ」とアンはあきらめたように言った。「マリラが帰ってきたらすぐ、反省したって言うわ。」

「それでいい、そうだよ、アン。でも、わしが何か言ったことはマリラに言うなよ。わしがおせっかいを出したと思うかもしれん。もう口出ししないと約束したんだからな。」

「野生の馬に引きずられても、この秘密は口にしないわ」とアンは厳かに約束した。「でも、野生の馬って、どうやって人から秘密を引き出すのかしら?」

だがマシューは、自分がうまくいきすぎたことに驚いて、もう去っていた。マリラが何をしていたのか疑わぬよう、彼は急いで馬の牧場のいちばん奥へ逃げていった。いっぽうマリラは家へ帰ると、手すり越しに「マリラ」と哀れっぽい声が呼ぶのを聞いて、うれしい驚きを覚えた。

「なに?」と、廊下へ出ながら言った。

「怒って失礼なことを言ったの、ごめんなさい。リンド夫人のところへ行って、そう言ってもいいわ。」

「そう。」

マリラはきっぱり言っただけで、胸の安堵は少しも顔に出さなかった。アンが折れなかったら、いったいどうすればよいのかと、ずっと考えていたのだ。「乳しぼりのあとで、連れて行くわ。」

こうして乳しぼりのあと、マリラとアンは小道を歩いていった。前者は背筋を伸ばし、勝ち誇った様子で。後者はうなだれ、沈み込んだ様子で。だが道の半ばまで来ると、アンの憂鬱は魔法のように消え去った。顔を上げ、軽やかに歩き、目は夕焼け空に注がれていた。身全体に、抑えきれない高揚が漂っている。マリラはその変化を不満そうに見た。これは、怒っているリンド夫人の前へ連れて行くべき、しおらしい罪人の姿ではない。

「何を考えているの、アン?」と鋭く聞いた。

「リンド夫人に何を言えばいいか、考えているの」とアンは夢見るように答えた。

これで満足すべきだった――少なくとも、そうあるべきだった。だがマリラは、自分の考えた罰のどこかが狂っているのではないかという思いを拭えなかった。アンがあんなに恍惚として、晴れやかであるはずがないのだ。

アンはリンド夫人の前へ出るまで、恍惚として晴れやかだった。リンド夫人は台所の窓辺で編み物をしていた。ところが、その瞬間、アンの輝きは消えた。代わりに、悲痛な悔悟が一つ一つの顔立ちに現れた。まだ一言も発せられないうちに、アンは驚くレイチェル夫人の前へ突然ひざまずき、懇願するように両手を差し出した。

「まあ、リンド夫人、私はこのうえなく申し訳なく思っています」と、声を震わせて言った。「どれほど悲しんでいるか、とても言い表せません――辞書を一冊まるごと使っても無理です。だから、どうか想像してください。私はあなたにひどいことをしました――しかも、男の子ではないのにグリーン・ゲイブルズに置いてくださった、親愛なるマシューとマリラまで恥ずかしい目に遭わせました。私は恐ろしく悪くて恩知らずな子で、罰せられて、一生まともな人たちから追放されても仕方がありません。あなたが本当のことを言ったからといって腹を立てたなんて、本当に悪いことでした。あなたのおっしゃったことは本当でした。一言残らず本当です。私の髪は赤く、そばかすだらけで、やせていて、醜いのです。私があなたに言ったことも本当でしたけれど、言うべきではありませんでした。まあ、リンド夫人、どうか、どうか許してください。もし許してくださらなければ、かわいそうな孤児の女の子は一生悲しみ続けるでしょう――たとえ、その子がひどいかんしゃく持ちだったとしても。あなたなら、そんなことはなさらないと信じています。どうか、許すと言ってください、リンド夫人。」

アンは両手を組み、頭を垂れ、審判の言葉を待った。

その誠意は疑いようがなかった――声の調子のすべてに、それが息づいていた。マリラもリンド夫人も、その紛れもない響きを聞き取った。だがマリラは愕然として理解した。アンは実際、この屈辱の谷間を楽しんでいる――自分を徹底的に卑しめることに、酔いしれているのだ。マリラが誇らしく思っていた、健全な罰はいったいどこへ行ったのか。アンはそれを、積極的な喜びの一種に変えてしまった。

善良なリンド夫人は、洞察力があり余るほどではなかったので、それには気づかなかった。アンがたいへん心のこもった謝罪をしたことだけを理解し、親切ではあるが少々おせっかいな心から、すべての憤りが消えた。

「ほらほら、立ちなさい、坊や」と、心からの調子で言った。「もちろん許すとも。私だって、少しきつく当たりすぎたかもしれないね。でも私は、思ったことをずけずけ言う性分なんだよ。気にしないことだね、そうすればいい。髪がひどく赤いのは否定できないけれどね、昔、学校で一緒だった女の子がいたんだよ――若いころの髪は、あんたと同じくらい真っ赤だった。でも大人になると、ほんとうに見事な赤褐色になったものさ。あんたの髪もそうなるかもしれないよ――十分あり得るとも。」

「まあ、リンド夫人!」

アンは立ち上がりながら、大きく息を吸った。「希望をくださったのですね。これからずっと、あなたを恩人だと思います。ああ、大人になったとき髪が美しい赤褐色になると思えるなら、どんなことでも耐えられます。髪が美しい赤褐色なら、よい子でいることも、ずっと容易になると思いません? それから、あなたとマリラがお話しなさっているあいだ、庭に出てリンゴの木の下のベンチに座っていてもいいですか? 外のほうが、想像力を働かせる余地がずっとありますから。」

「まあ、いいとも、行っておいで。隅にある白い六月百合を、花束にしてもいいよ。」

アンが出ていき、扉が閉まると、リンド夫人はきびきびと立ち上がり、ランプをつけた。

「まったく変わった子だね。マリラ、この椅子におかけよ。あんたのより楽だよ。そっちの椅子は、雇い男が座るために置いてるんだ。ええ、あの子は確かに変わっているけれど、結局、なんだか人を引きつけるところがあるね。あんたとマシューがあの子を置いていることも、最初ほど不思議には思わなくなったし、あんたたちが気の毒だとも思わなくなった。案外、ちゃんと育つかもしれないよ。もちろん、話し方は妙だし――少し、そうね、少々きつすぎるところはある。でも文明人のなかで暮らすようになったんだから、そのうち直るだろう。それに、気が短いようだけれど、安心できることも一つある。すぐかっとなって、すぐ冷める子は、陰険だったり、嘘つきだったりすることはまずない。陰険な子だけはごめんだよ。全体としては、マリラ、私はあの子が少し好きになったね。」

マリラが帰るとき、アンは果樹園の香るたそがれから、白いスイセンの束を抱えて出てきた。

「私、なかなか上手に謝ったでしょう?」と、帰りの小道でアンは誇らしげに言った。「しなければならないなら、徹底的にしようと思ったの。」

「徹底的だったわね、たしかに」とマリラは答えた。思い出すと笑いそうになる自分に、マリラは戸惑った。あんなに上手に謝ったことを叱るべきではないか、という落ち着かない気持ちもあった。だが、そんなのはばかげている。そこで良心と折り合いをつけるように、厳しい声で言った。

「これからは、あんな謝罪を何度もすることにならないよう願っています。気性を抑える努力をなさい、アン。」

「みんなが私の見た目のことをからかわなければ、それほど難しくはないわ」とアンはため息をついた。「ほかのことでは腹を立てないの。でも髪のことをからかわれるのには、もううんざりしていて、それだけで煮えくり返ってしまうの。大人になったら、本当に私の髪はきれいな赤褐色になると思う?」

「見た目のことばかり考えてはいけないわ、アン。あなたはとても虚栄心の強い子なんじゃないかしら。」

「自分が醜いと分かっているのに、どうして虚栄心なんか持てるの?」とアンは抗議した。「きれいなものが大好きなの。だから鏡を見て、きれいじゃないものが映っていると、嫌になるの。醜いものを見たときと同じように、悲しくなる――美しくないから、かわいそうに思うのよ。」

「人の値打ちは行いで決まるものよ」と、マリラは格言を引いた。

「前にもそう言われたことはあるけれど、私は少し疑っているわ」と、懐疑的なアンはスイセンの香りをかいだ。「まあ、この花、なんて甘い香りでしょう! リンド夫人がくださったなんて、すてきだわ。もうリンド夫人に悪い感情なんかないの。謝って許してもらうと、すてきで心地よい気分になるでしょう? 今夜は星が明るいわね。星のなかに住めるとしたら、どれを選ぶ? 私は、あの暗い丘の上にある、あそこに遠く見える、あの大きくて澄んだ星がいいな。」

「アン、いいかげん黙ってちょうだい」と、アンの思考の旋回についていくのにすっかり疲れ果てたマリラは言った。

家の小道へ曲がるまで、アンはそれ以上何も言わなかった。若い露にぬれたシダの、ぴりっとした香りをたっぷり運んだ小さなジプシー風が、二人を迎えに小道を吹き下りてきた。はるか上の影のなか、グリーン・ゲイブルズの台所からの明るい灯が、木々の間を通して陽気に輝いていた。アンは急にマリラへ寄り添い、その細い手を年上の女の硬い手のひらへ滑り込ませた。

「帰る場所があって、そこが家だと分かっているのって、すてきね」と言った。「もうグリーン・ゲイブルズが大好き。今まで、どんな場所も好きになったことなんてなかったわ。どこも家のようには思えなかった。ああ、マリラ、私はとても幸せ。今すぐお祈りしても、少しも難しくないと思う。」

その細い小さな手に触れられて、マリラの心には温かく快いものが湧き上がった――おそらく、これまで味わえずにいた母性の鼓動だった。それはあまりにも不慣れで、あまりにも甘美だったから、マリラを動揺させた。彼女はいつもの落ち着きを取り戻そうと、急いで教訓を説いた。

「よい子でいれば、いつも幸せでいられるわ、アン。それに、お祈りを口にするのを難しいと思ってはいけません。」

「お祈りを唱えることと、祈ることは、まったく同じではないわ」とアンは考え深く言った。「でも私は、あの木の梢で吹いている風になったつもりになるの。木に飽きたら、今度はここにあるシダのあいだを、そっと揺らす風になる――それからリンド夫人の庭へ飛んでいって、花を踊らせるの――そして大きくひと吹きしてクローバー畑を越える――それから輝く湖水の上を吹き渡って、湖面を小さなきらきらした波でいっぱいにするの。ああ、風には想像力を働かせる余地が、なんてたくさんあるんでしょう! だから、もうしばらくは何も話さないわ、マリラ。」

「それは神様に感謝だわ」とマリラは、心からほっとして息をついた。


第十一章 アンの日曜学校の印象

「さて、どう? 気に入った?」とマリラは言った。

アンは切妻部屋に立ち、ベッドの上に並べられた三着の新しいドレスを、厳粛な顔で見つめていた。一着は、前年の夏、丈夫そうだったので行商人からつい買ってしまった、くすんだ茶色のギンガム。一着は、冬に特売台で安く手に入れた黒白格子のサテン地。そしてもう一着は、その週にカーモディの店で買った、醜い青色のごわごわしたプリント地だった。

マリラが自分で仕立てたもので、どれもまったく同じ形だった。飾り気のない胴着に、細かくギャザーを寄せた簡素なスカート。袖も胴着やスカートと同じく飾りはなく、できるかぎりぴったり細く作られていた。

「気に入ったと思うことにするわ」とアンは重々しく言った。

「想像して気に入ってほしいんじゃないわ」とマリラは気を悪くした。「ああ、気に入らないのね! 何が悪いの? きちんとしていて、清潔で、新品じゃないの。」

「ええ。」

「じゃあ、どうして好きじゃないの?」

「だって――だって、きれいじゃ――ないもの」とアンはしぶしぶ言った。

「きれいですって!」

マリラは鼻を鳴らした。「あなたのためにきれいな服を選ぼうなんて、考えもしなかったわ。虚栄心を甘やかすのはよくないと、最初にはっきり言っておくわね、アン。その服は、飾りやひらひらなんかない、よくて、分別があって、丈夫な服です。この夏はそれだけで我慢してもらいます。茶色のギンガムと青いプリント地は、学校へ行くようになったら着なさい。サテンは教会と日曜学校用よ。きちんと清潔にして、破かないように。今まで着ていた、あんな小さくてみすぼらしいウィンシーの服のあとなら、何をもらっても感謝すべきだと思うけれどね。」

「感謝しているわ」とアンは抗議した。「でも、もし――もしそのうち一着だけでも、パフスリーブにしてくださったら、もっとずっと感謝したと思う。今はパフスリーブがとても流行しているの。パフスリーブの服を着るだけで、胸がどきどきするのよ、マリラ。」

「そのどきどきは、なしで我慢しなさい。パフスリーブに使う布なんて余っていなかったもの。私はあんなもの、どうせ馬鹿らしく見えると思っているわ。飾り気のない、分別のある袖のほうが好きよ。」

「でも、みんながそうしているなら、私一人だけ地味で分別があるより、馬鹿らしく見えるほうがいいわ」とアンは悲しげに言い張った。

「いかにもあなたらしいわね! さあ、そのドレスをクローゼットへ丁寧に掛けて、それから座って日曜学校の課題を覚えなさい。ベルさんから季刊教材をもらっておいたから、明日は日曜学校へ行くのよ」とマリラは、ひどく腹を立てて下へ降りていった。

アンは両手を組み、ドレスを見つめた。

「白くて、パフスリーブのが一着あるといいなと思っていたのに」と、しょんぼり囁いた。「そういうのをくださいってお祈りしたけれど、そのせいで手に入るとはあまり思っていなかったわ。神様が、小さな孤児の女の子のドレスなんか気にかける暇があるとは思わなかったもの。マリラに頼るしかないって分かっていたの。まあ幸い、どれか一着が、きれいなレース飾りと三段のパフスリーブがついた、雪のように白いモスリンだと想像することはできるわ。」

翌朝、マリラは頭痛がひどくなりそうだったため、アンと一緒に日曜学校へ行けなかった。

「リンド夫人のところまで行って、一緒に行ってもらいなさい、アン」と言った。「正しいクラスに入れてくれるでしょう。いいこと、ちゃんと行儀よくするのよ。あとで説教も聞いて、リンド夫人に私たちの席を教えてもらいなさい。献金用に一セントあげるわ。人をじろじろ見ないこと、そわそわしないこと。帰ったら、説教の聖句を言ってもらいますからね。」

アンは、非の打ちどころのない姿で出かけていった。黒白格子の硬いサテンのドレスは、丈も十分で、けちけちした作りでもなかったが、やせた身体の角ばったところをことごとく際立たせていた。帽子は小さく平らで、つやのある新しいセーラーハットだった。そのあまりの地味さにも、リボンや花をひそかに夢見ていたアンは大いに失望していた。

だが大通りへ出る前、小道の半ばで、風に揺れるキンポウゲの黄金の狂騒と、野バラの見事な咲き誇りに出会うと、アンはさっそくそれらをたっぷり摘み、帽子に重々しい花冠を作った。ほかの人々がどう思おうと、アン自身はその出来栄えに満足だった。ピンクと黄色で飾られた赤い頭を誇らしく掲げ、陽気に道を跳ねるように進んでいった。

リンド夫人の家に着くと、その婦人はすでに出かけていた。アンは少しもひるまず、一人で教会へ向かった。玄関ポーチには、白、青、ピンクの服でそれぞれに華やかに装った小さな女の子たちが集まっていた。皆、異様な頭飾りをつけたこの見知らぬ子を、好奇心いっぱいの目で見つめていた。

アヴォンリーの少女たちは、すでにアンについて奇妙な話を聞いていた。リンド夫人は、あの子はひどいかんしゃく持ちだと言っていた。グリーン・ゲイブルズの雇い男ジェリー・ブオートは、あの子は気違いのように、いつも自分自身や木や花と話していると言っていた。少女たちは季刊教材の陰でひそひそ囁いた。誰もアンに親しく声をかけなかった。最初の式が終わり、アンがミス・ロジャーソンのクラスに入ってからも、それは同じだった。

ミス・ロジャーソンは中年の婦人で、二十年間日曜学校のクラスを教えてきた。彼女の教え方は、季刊教材に印刷された質問を読み上げ、その答えを言うべきだと思う少女を、教材の端越しに厳しく見るというものだった。アンを頻繁に指名した。そしてアンはマリラに仕込まれていたおかげで、すぐに答えた。だが質問も答えも、どれほど理解していたかは疑わしい。

アンはミス・ロジャーソンを好きになれそうになかった。ひどく惨めだった。クラスのほかの女の子は皆、パフスリーブを着ていた。パフスリーブなしでは、人生など本当に生きる価値がないように思えた。

「日曜学校はどうだった?」

アンが帰宅すると、マリラは聞いた。アンの花冠はしおれていたため、小道で捨ててきた。よってマリラは、しばらくのあいだその件を知らずに済んだ。

「少しも好きじゃなかった。ひどかったわ。」

「アン・シャーリー!」とマリラはたしなめた。

アンは長いため息をつきながら揺り椅子に座り、ボニーの葉を一枚に口づけ、花の咲いたフクシアへ手を振った。

「私がいないあいだ、寂しかったかもしれないもの」と説明した。「さて、日曜学校のことだけれど。あなたのおっしゃったとおり、ちゃんと行儀よくしたわ。リンド夫人はいなかったけれど、一人でそのまま行ったの。教会へ入ると、ほかの小さな女の子たちがたくさんいて、最初の式が終わるまで、窓際の会衆席の隅に座っていたの。ベルさんは、ものすごく長いお祈りをしたわ。あの窓のそばに座っていなかったら、終わる前にひどく退屈していたでしょうね。でも窓からは輝く湖水がよく見えたから、それを眺めながら、いろいろすばらしいことを想像していたの。」

「そんなことをしてはいけなかったわ。ベルさんのお話を聞くべきでした。」

「でも、ベルさんは私に話していたんじゃないもの」とアンは抗議した。「神様に話していたのよ。でも、ベルさん自身もそれほど熱心そうには見えなかった。神様があまりに遠くにいると思っていたのかしら。湖の上には白樺が長く並んで枝を垂れていて、日光がそのあいだから、ずっと、ずっと下の水の深いところまで落ちていたの。ああ、マリラ、まるできれいな夢だったわ! 胸がどきどきして、私は小さな声で『神様、ありがとう』って二、三度言ったの。」

「声に出してじゃないでしょうね?」とマリラは不安そうに聞いた。

「いいえ、もちろん。息をひそめて言っただけ。とうとうベルさんのお祈りが終わって、私はミス・ロジャーソンのクラスと一緒に教室へ行くことになったの。そのクラスには、ほかに九人の女の子がいた。みんなパフスリーブだったわ。私の袖もパフスリーブだって想像しようとしたけれど、できなかった。どうしてかしら? 一人で東の切妻部屋にいるときには、パフスリーブだと想像するなんて簡単だったのに、本物のパフスリーブを着ている子たちのなかでは、ひどく難しかったの。」

「日曜学校で袖のことなど考えるべきではなかったわ。課題に集中するべきだったの。ちゃんと分かっていたのでしょうね。」

「ええ、もちろん。たくさん質問に答えたわ。ミス・ロジャーソンは、ものすごくたくさん質問したの。彼女ばかりが質問するのは公平じゃないと思う。私だって彼女に聞きたいことがたくさんあったけれど、同類の魂じゃないと思ったから、遠慮したの。それから、ほかの女の子はみんな聖歌の言い換え詩を暗唱したわ。私にも何か知っているかと聞かれたから、知らないけれど、よければ『主人の墓のそばの犬』なら暗唱できると言ったの。『第三王室読本』に載っているの。ほんとうの宗教詩ではないけれど、とても悲しくて憂鬱だから、宗教詩といってもよさそうなものなのに。けれど駄目だって言われて、来週までに第十九番の言い換え詩を覚えなさいと言われたの。あとで教会で読んでみたら、すばらしかったわ。とくに二行、とても胸が震えるところがあるの。

「『討たれた部隊が、たちまち倒れ伏す
 ミディアンの邪悪な日に』。」

「『部隊』が何のことかも、『ミディアン』が何かも分からないけれど、
とても悲劇的な響きなの。次の日曜が来て暗唱するのが、待ちきれないくらい。
一週間ずっと練習するわ。日曜学校のあと、リンド夫人が遠くにいらしたから、
ミス・ロジャーソンに、私たちの席を教えてくださいと頼んだの。できるだけ
じっと座っていたわ。聖句は『ヨハネの黙示録』第三章の第二節と第三節だった。
とても長い聖句ね。私が牧師だったら、短くてぴりっとしたものを選ぶわ。
説教もものすごく長かった。牧師さんは、聖句の長さに合わせなければ
ならなかったのだと思う。少しも面白い人だとは思わなかったわ。あの人に
足りないのは、想像力だと思う。あまり聞いていなかったの。考えを自由に
走らせたら、ものすごく驚くようなことをいろいろ考えついたわ。」

マリラは、こうしたことは断固として叱るべきだと、どうしようもなく感じた。だがアンの言ったことのうち、牧師の説教やベル氏の祈りについての感想などは、とりわけ、自分自身が長年心の奥で思いながら一度も口にしたことのない考えでもあった。この、率直にものを言う、ないがしろにされてきた小さな人間のかたまりが、自分の秘密の、口に出されない批判的な思いを、突然目に見える責めの形へ変えて現したようにさえ思えた。


第十二章 厳かな誓いと約束

花冠をつけた帽子の話をマリラが聞いたのは、その次の金曜日になってからだった。リンド夫人の家から帰ると、マリラはアンを問いただした。

「アン、レイチェルが、先週の日曜、バラとキンポウゲでばかばかしいほど飾り立てた帽子をかぶって教会へ行ったって言っていたわ。いったい何を思って、そんなふざけたことをしたの? さぞ見苦しい姿だったでしょうね!」

「あら、ピンクと黄色が私に似合わないのは分かっています」とアンは言い始めた。

「似合うなんて、ばかばかしい! 何色であろうと、そもそも帽子に花をつけたことが馬鹿らしかったのよ。あなたほど人をいらいらさせる子はいないわ!」

「服に花をつけるより、帽子に花をつけることのほうが、どうして馬鹿らしいのか分からないわ」とアンは抗議した。「教会には、ドレスに花束を留めている女の子がたくさんいたもの。何が違うの?」

マリラは、安全で具体的な話から、あやふやな抽象論へ引き込まれるつもりはなかった。

「そんなふうに言い返さないで、アン。あんなことをしたのは、とても愚かでした。二度とそんな真似をするところを見つけさせないで。レイチェルは、あなたがあんな格好で入ってきたのを見たとき、床の下へ沈んでしまいたかったと思ったそうよ。花を取るように言えるほど近くへ行く前に、もう手遅れになったんですって。みんなひどく話題にしたそうよ。私が、あなたをあんなふうに飾り立てて出すほど分別のない女だと思われたに違いないわ。」

「ごめんなさい」とアンは、目に涙をためて言った。「あなたが気になさるとは思わなかったの。バラもキンポウゲも、とても甘くてきれいだったから、帽子に飾ったらすてきだと思ったの。ほかの小さな女の子たちは、帽子に造花をつけていたわ。私、あなたにとって本当に大変な子になりそうね。孤児院へ返したほうがいいのかもしれない。それは恐ろしいことだわ。私にはとても耐えられないと思うし、たぶん肺病になってしまうわ。ご覧のとおり、今でもこんなにやせているもの。でも、あなたの重荷になるよりは、そのほうがいいでしょう。」

「ばかばかしい」とマリラは言った。自分が子供を泣かせてしまったことに腹を立てていた。「孤児院へ返すつもりなんて、もちろんないわ。ただ、ほかの女の子のように振る舞って、自分を笑いものにしないでほしいだけ。もう泣かないで。知らせがあるのよ。ダイアナ・バリーが今日の午後、帰ってきたの。私はバリー夫人のところへ、スカートの型紙を借りに行くつもりなの。よければ一緒に来て、ダイアナと知り合う?」

アンは両手を組んで立ち上がった。涙はまだ頬にきらめいていた。縁をかがっていた皿拭きは、気にも留められず床へ落ちた。

「まあ、マリラ、怖いわ――実際にその時が来たら、本当に怖くなってきた。あの子が私を好きになってくれなかったらどうしよう! それは私の人生で、いちばん悲劇的な失望になるわ。」

「さあ、取り乱さないの。それから、そんな長い言葉は使わないでほしいわ。小さな女の子が言うと、とてもおかしく聞こえるのよ。ダイアナは、あなたを十分好きになるでしょう。気にしなくちゃならないのは、母親のほうよ。ダイアナがどれほど好きでも、バリー夫人があなたを好きにならなければだめ。リンド夫人にかんしゃくを起こした話や、帽子にキンポウゲをつけて教会へ行った話を聞いていたら、何と思うか分からない。礼儀正しく、行儀よくするのよ。それから、驚くようなことは言わないで。まあ、なんてこと、ほんとうに震えているじゃないの!」

アンは、まさに震えていた。顔は青ざめ、こわばっていた。

「自分の親友になってくれるかもしれない女の子に会いに行くのに、その子のお母さんには嫌われるかもしれないんだったら、マリラだって興奮するわ」と、帽子を取りに急ぎながら言った。

二人は小川を渡り、モミの木の生えた丘の林を登る近道で、果樹園の丘へ向かった。マリラが戸を叩くと、バリー夫人が台所の戸口へ出てきた。黒い目、黒い髪の背の高い女性で、口元には非常に強い意志が表れていた。子供たちをとても厳しく育てるという評判だった。

「ごきげんよう、マリラ」と、親しげに言った。「どうぞお入りなさい。それで、この子が引き取った女の子ね?」

「ええ、アン・シャーリーです」とマリラは言った。

「Eのつくアンです」と、アンはあえぐように付け加えた。震え、興奮していても、その大切な点で誤解されることだけは断じて避けたかったのだ。

バリー夫人は聞こえなかったか、意味が分からなかったらしく、ただ握手して優しく言った。

「お元気?」

「身体は元気ですけれど、心はかなり乱れています。ありがとうございます、奥様」とアンは厳粛に言った。続けてマリラへ、聞こえるほどの小声で、「今の、驚くようなことではなかったでしょう、マリラ?」と言った。

ダイアナはソファに座って本を読んでいたが、客が入ってくると落とした。母親譲りの黒い目と髪、ばら色の頬、父親から受け継いだ陽気な表情を持つ、とてもかわいらしい少女だった。

「この子が娘のダイアナよ」とバリー夫人は言った。「ダイアナ、アンを庭へ連れていって、花を見せてあげなさい。本を読んで目を悪くするより、そのほうがいいわ。この子は本を読みすぎるのよ――」少女たちが外へ出てから、マリラへ向かって続けた。「でも父親がそれを助長するから、止められないの。本ばかり読んでいるのよ。遊び相手ができそうでよかったわ――もう少し外に出るようになるかもしれない。」

西側にそびえる古い暗いモミの木々を通って、柔らかな夕日が満ちる庭で、アンとダイアナは豪華な鬼百合の茂みを隔て、恥ずかしそうに見つめ合っていた。

バリー家の庭は、花々に覆われた木陰のような野生の庭だった。この瞬間ほど運命がかかったときでなければ、いつだってアンの心を喜ばせたに違いない。巨大な古い柳と高いモミの木が庭を囲み、その足もとでは日陰を好む花々が育っていた。貝殻できちんと縁取られた、直角に曲がる几帳面な小道が、湿った赤いリボンのように庭を横切っていた。その間の花壇では、昔ながらの花々が咲き乱れていた。

桃色のケマンソウ、豪華な深紅のボタン。白く香り高いスイセン、とげのある甘いスコットランドバラ。桃色、青、白のオダマキ、薄紫のバウンシング・ベッツ。ヨモギギク、縞葉草、ミントの株。紫のアダムとイヴ、ラッパスイセン、そして繊細で香り高い羽毛のような穂をつけた白いスイートクローバーの群れ。整然とした白いジャコウソウの上へ、炎の槍を放つように咲く真紅のリヒニス。日光が長居し、蜂が羽音を立て、足を止めるよう誘惑された風が、かすかに唸り、葉をさやがせる庭だった。

「ダイアナ」と、やがてアンは両手を組み、ほとんど囁くように言った。「私を少しでも好きになれそう? 親友になれるくらいには?」

ダイアナは笑った。ダイアナは話す前に、いつも笑うのだった。

「なれると思うわ」と、率直に言った。「あなたがグリーン・ゲイブルズに住むことになって、とてもうれしい。一緒に遊ぶ人ができるなんて、楽しいもの。近くに、遊べるくらいの年の女の子はほかにいないし、大きな姉妹もいないんだもの。」

「ずっと、永遠に私の友達でいるって誓ってくれる?」とアンは熱心に尋ねた。

ダイアナは驚いたようだった。

「誓うなんて、ひどく悪いことよ」と、たしなめるように言った。

「いいえ、私の言う誓いは違うの。誓いにも二種類あるのよ。」

「一種類しか聞いたことがないわ」とダイアナは不安そうに言った。

「ほんとうに、もう一種類あるの。少しも悪いことじゃないわ。ただ、厳かに誓って約束するという意味なの。」

「それなら、してもいいわ」とダイアナは安心して答えた。「どうするの?」

「手をつなぐの――こうして」とアンは厳かに言った。「ほんとうは流れる水の上でするべきなの。この小道を流れる水だと思うことにしましょう。最初に私が誓いを繰り返すわ。私は、太陽と月が続くかぎり、親友ダイアナ・バリーに忠実でいることを、厳かに誓います。次はあなたが、私の名前を入れて言うのよ。」

ダイアナは笑いながら、その「誓い」を最初から最後まで繰り返した。それから言った。

「アン、あなたって変わった子ね。前から変わっているって聞いていたわ。でも、私はあなたをとても好きになりそう。」

マリラとアンが家へ帰るとき、ダイアナは丸太橋のところまで一緒に来た。二人の少女は互いの肩に腕を回して歩いた。小川のところで別れ、翌日の午後を一緒に過ごす約束を、何度も交わした。

「それで、ダイアナは同類の魂だった?」と、グリーン・ゲイブルズの庭を上がりながらマリラは尋ねた。

「ええ、そうよ」と、マリラの皮肉に少しも気づかず、アンは幸福そうにため息をついた。「ああ、マリラ、今この瞬間、私はプリンス・エドワード島でいちばん幸せな女の子よ。今夜は心からお祈りするわ、きっと。ダイアナと私は、明日、ウィリアム・ベルさんの白樺林に遊び小屋を作るの。薪小屋にある、あの割れた食器のかけらをもらってもいい? ダイアナの誕生日は二月で、私のは三月なの。とても不思議な偶然だと思わない? ダイアナは、読む本を貸してくれるの。完全にすばらしくて、ものすごくわくわくする本ですって。森の奥に、ライスリリーが咲く場所があるから、そこも見せてくれるの。ダイアナの目って、とても魂がこもっていると思わない? 私も魂のこもった目がほしいわ。ダイアナは『ハシバミ谷のネリー』という歌を教えてくれるの。それから私の部屋に飾る絵をくれるのよ。薄青い絹のドレスを着た、美しい女の人の絵なんですって。ミシンの販売員さんがくれたらしいの。私もダイアナに何かあげるものがあればいいのに。私はダイアナより一インチ(約2.5センチメートル)背が高いけれど、ダイアナのほうがずっと太っている。彼女は、やせているほうがずっと優雅だからやせたいって言うけれど、私の気を慰めるためだけに言ったのかもしれない。いつか海岸へ行って、貝殻を集めるの。丸太橋のそばの泉は、二人で木の精の泉って呼ぶことにしたの。完璧に優雅な名前でしょう? 昔、その名前の泉が出てくるお話を読んだの。ドライアドは、大人になった妖精みたいなものだと思う。」

「とにかく、ダイアナを話疲れさせないでくれればいいけれど」とマリラは言った。「でも、計画を立てるときにはこれを覚えておきなさい、アン。いつも遊んでばかり、まして大半を遊んで過ごすわけにはいかないの。あなたには仕事があるし、仕事を先に終わらせるのよ。」

アンの幸福の杯はすでに満ちていたが、マシューがそれをあふれさせた。彼はカーモディの店から、ちょうど帰ったところだった。気恥ずかしそうにポケットから小さな包みを取り出すと、マリラに申し訳なさそうな目を向けながら、アンへ差し出した。

「チョコレート菓子が好きだと言っていたのを聞いたから、少し買ってきた」と言った。

「ふん」とマリラは鼻を鳴らした。「歯も胃も悪くなるわ。ほらほら、そんなにしょんぼりした顔をしないの。マシューがせっかく買ってきたんだから、食べてもいいわ。ペパーミントにすればよかったのに。そっちのほうが健康的よ。いっぺんに全部食べて、具合を悪くしないことよ。」

「ええ、もちろん、そんなことしないわ」とアンは熱心に言った。「今夜は一つだけ食べるわ、マリラ。それから半分をダイアナにあげてもいい? 半分あげたら、残りの半分は私には二倍おいしく感じられると思う。あげるものがあるなんて、うれしいわ。」

アンが切妻部屋へ行ってから、マリラは言った。「あの子のことで言えば、けちじゃないのは確かね。よかったわ。子供の欠点のなかでも、けちなのは私がいちばん嫌いだから。まあ、来てからまだ三週間なのに、まるでずっとここにいたみたい。あの子のいないこの家なんて、もう想像できないわ。さあ、だからといって、ほら見たことかという顔をしないで、マシュー。女でも嫌なものだけれど、男にされるなんて耐えられないわ。あの子を置くのに同意してよかったし、あの子が好きになってきたことも、私は認めるつもりよ。でも、得意になって言わないでちょうだい、マシュー・カスバート。」


第十三章 期待の喜び

「アンが入ってきて縫い物をする時間だわ」と、マリラは時計を見てから、暑さのなかであらゆるものが眠たげにしている、八月の黄色い午後を眺めて言った。「ダイアナと遊んでいて、許した時間より半時間以上も長くいたのよ。そのうえ今は、するべき仕事があるとよく分かっているのに、薪の山にとまってマシューと、ものすごい勢いでおしゃべりしている。もちろんマシューは、まったくのばかみたいに聞いているんでしょう。あんなに夢中になっている男は見たことがないわ。あの子が話せば話すほど、そして変なことを言えば言うほど、あの人はますます喜んでいるらしいの。アン・シャーリー、今すぐここへ入りなさい、聞こえた?」

西側の窓を、短く鋭く何度も叩く音がした。するとアンは、目を輝かせ、頬をほのかにピンクに染め、ほどけた髪を明るい滝のようになびかせて、庭から飛び込んできた。

「まあ、マリラ」と、息を切らして叫んだ。「来週、日曜学校のピクニックがあるの――ハーモン・アンドルーズさんの畑で、輝く湖水のすぐそばよ。それで、ベル校長夫人とレイチェル・リンド夫人がアイスクリームを作るのよ――考えてみて、マリラ――アイスクリームよ! ああ、マリラ、行ってもいい?」

「時計を見てごらんなさい、アン。何時に入りなさいと言ったの?」

「二時――でも、ピクニックってすてきでしょう、マリラ? お願い、行ってもいい? ああ、私、ピクニックへ行ったことがないの――ピクニックの夢は見たけれど、一度も――」

「ええ、二時に入りなさいと言ったわ。そして今は二時四十五分。なぜ言いつけを守らなかったのか、聞きたいものね、アン。」

「守るつもりだったわ、マリラ、できるかぎり強く。でも、アイドルワイルドがどんなに魅力的か、あなたには分からないわ。それにもちろん、ピクニックのことをマシューに話さなくちゃならなかった。マシューは、とても共感して聞いてくれるの。お願い、行ってもいい?」

「アイドルなんとかの魅力には、抵抗することを覚えなさい。ある時間に入りなさいと言ったら、その時間のことであって、半時間後のことではないのよ。それに途中で、共感して聞いてくれる人とおしゃべりして立ち止まる必要もないでしょう。ピクニックについては、もちろん行っていいわ。あなたは日曜学校の生徒なんだし、ほかの女の子たちが皆行くのに、私があなただけ行かせないなんてことはないでしょう。」

「でも――でも」とアンはためらった。「ダイアナが言うには、みんな食べ物を入れたバスケットを持って行かなくちゃならないの。私は料理ができないでしょう、マリラ、それで――それで――パフスリーブなしでピクニックへ行くことは、もうそれほど気にしないけれど、バスケットなしで行かなくちゃならないなら、ひどく恥ずかしいと思う。ダイアナに聞いてからずっと、心配でたまらなかったの。」

「もう心配しなくていいわ。あなたのためにバスケットいっぱい焼いてあげる。」

「まあ、なんて親愛なる、なんてすばらしいマリラ。まあ、私にこんなに親切にしてくださるなんて。まあ、本当にありがとうございます。」

「まあ」を言い終えると、アンはマリラの腕のなかへ飛び込み、うっとりしてその青白い頬に口づけた。子供の唇が自分の顔に自分から触れたのは、マリラの生涯で初めてだった。あの突然の、驚くほど甘い感覚が、また彼女を震わせた。アンの衝動的な愛撫を、内心では非常にうれしく思った。それがおそらく、ぶっきらぼうにこう言った理由だった。

「ほらほら、キスなんかいいの。私は、言いつけをきちんと守るあなたを見るほうがいいわ。料理については、そのうち教えるつもりよ。でもあなたはあまりにもおっちょこちょいだから、始める前に、少し落ち着いて、しっかりできるようになるか見ていたの。料理では気をしっかり持っていなくちゃならないわ。途中で考えが世界中をさまよい出したら困るのよ。さあ、パッチワークを出して、お茶の時間までに一枚仕上げなさい。」

「パッチワークは好きじゃないわ」とアンは悲しげに言った。裁縫箱を探し出し、赤と白の菱形の小片の前に座ってため息をついた。「縫い物のなかには好きになれそうなものもあると思う。でもパッチワークには、想像力を働かせる余地がないの。一つの縫い目の次にまた一つ縫うだけで、少しも先へ進んでいるように思えない。でももちろん、何もせず遊ぶだけのどこかのアンより、パッチワークを縫うグリーン・ゲイブルズのアンであるほうがいいわ。ダイアナと遊んでいるときみたいに、時間が早く過ぎればいいのに。ああ、私たち、とても優雅な時間を過ごしているのよ、マリラ。想像の大部分は私が用意しなければならないけれど、それは十分できるわ。ダイアナは、ほかの点では完璧なの。小川の向こう、私たちの農場とバリーさんの農場のあいだに細長く伸びている土地を知っているでしょう。ウィリアム・ベルさんの土地なの。その隅に小さな白樺の輪があるのよ――いちばんロマンティックな場所なの、マリラ。ダイアナと私の遊び小屋はそこにあるの。アイドルワイルドって呼んでいるのよ。詩的な名前でしょう? 思いつくまで、ずいぶん時間がかかったわ。考え出す前の夜なんて、ほとんど一晩じゅう起きていたの。眠りに落ちかけたとき、ひらめきのように浮かんだの。ダイアナは聞いたとき、大喜びだったわ。家はとても優雅に整えてあるの。見に来てちょうだい、マリラ――来てくれる? 苔で覆われた大きな石を椅子にして、木から木へ板を渡して棚にしてあるの。それに、そこへ食器を全部置いている。もちろん、みんな割れているけれど、完全な食器だと想像するなんて、世界でいちばん簡単なことよ。赤と黄色のツタの模様がある皿のかけらがあって、とくにきれいなの。それは客間に置いてあるの。それから妖精のグラスも、そこにある。妖精のグラスは夢のように美しいわ。ダイアナが、鶏小屋の後ろの森で見つけたの。虹でいっぱいなの――まだ大きく育っていない、小さな若い虹よ。ダイアナのお母さんは、昔あった吊りランプから割れ落ちたものだと言った。でも、ある晩、妖精たちが舞踏会を開いたときに落としていったんだと思ったほうがすてきだから、妖精のグラスと呼んでいるの。マシューがテーブルを作ってくださるのよ。ああ、バリーさんの畑にある小さな丸い池は、柳の湖と名づけたの。ダイアナが貸してくれた本から取った名前よ。あれは胸躍る本だったわ、マリラ。主人公の女の人には恋人が五人いたの。私は一人で満足だと思うけれど、マリラはどう? 彼女はとてもきれいで、大変な苦難をいろいろ味わうの。簡単に気を失えるのよ。私も気を失えるようになりたいわ、マリラ、そう思わない? とてもロマンティックだもの。でも、こんなにやせていても、私は本当に健康なの。少し太ってきたと思うわ。そう思わない? 毎朝起きると、肘にえくぼができていないか確かめるの。ダイアナは肘までの袖の新しい服を作ってもらっているの。ピクニックに着ていくのよ。来週の水曜日、どうか晴れますように。ピクニックへ行けないようなことが起きたら、その失望には耐えられないと思う。たぶん生きてはいくでしょうけれど、一生の悲しみになるのは確かよ。そのあと百回ピクニックに行っても、今回を逃した埋め合わせにはならないわ。輝く湖水にはボートが出るのよ――それに、言ったでしょう、アイスクリームもあるの。私はアイスクリームを味わったことがないの。ダイアナはどんなものか説明しようとしたけれど、アイスクリームはきっと、想像力を超えたものの一つなのね。」

「アン、時計で測ってちょうど十分間、しゃべり続けたわ」とマリラは言った。「では好奇心から聞くけれど、同じ十分間、口を閉じていられるかしら。」

アンは言われたとおり、口を閉じた。だがその週の残りは、ピクニックを話題にし、ピクニックを考え、ピクニックの夢を見た。土曜日には雨が降った。水曜日まで、そして水曜日にも雨が降り続けたらどうしようと、アンがあまりにも取り乱したので、マリラは神経を落ち着かせるために、余分に一枚パッチワークを縫わせた。

日曜日、教会から帰る途中、アンは牧師が説教壇からピクニックを告知したとき、興奮で本当に全身が冷たくなったのだとマリラに打ち明けた。

「背中を上へ下へ走った、あのぞくぞくする感じったら、マリラ! そのときまで、私はピクニックが本当にあるなんて、実は信じきれていなかったのだと思う。自分が想像しただけじゃないかって、怖くてたまらなかった。でも牧師さんが説教壇から言ったことなら、信じるしかないでしょう。」

「あなたは物事に、あまりにも心をかけすぎるのよ、アン」とマリラはため息をついた。「人生には、あなたを待っている失望がずいぶん多いのではないかと心配だわ。」

「まあ、マリラ、物事を楽しみに待つのは、その喜びの半分よ」とアンは叫んだ。「実際に手に入らないことはあるかもしれない。でも、楽しみに待つ楽しさまで、誰にも奪えないわ。リンド夫人は『何も期待しない者は幸いである。その人は失望しないから』って言う。でも、失望するより何も期待しないほうが悪いと思うの。」

その日もマリラは、いつものようにアメジストのブローチを教会へ着けていった。マリラはいつだって、教会へはアメジストのブローチを着けていった。それを着けずに行くことなど、聖書や献金の十セント硬貨を忘れるのと同じくらい、不敬なことだと思っただろう。

そのアメジストのブローチは、マリラがいちばん大切にしている持ち物だった。船乗りだった伯父がマリラの母へ贈り、母がマリラへ遺したものだ。古風な楕円形で、母の髪を編んだものが中に収められ、その周りを非常に質のよいアメジストが縁取っていた。マリラは宝石についてほとんど知識がなかったので、そのアメジストがいかに上等かは分かっていなかった。だがとても美しいと思っており、見えなくても、上質な茶色のサテンのドレスの上、喉もとで紫にきらめく感触を、いつも心地よく意識していた。

アンは初めてそのブローチを見たとき、歓喜に打たれたように見入った。

「まあ、マリラ、完璧に優雅なブローチね。それを着けていて、どうして説教やお祈りに集中できるのか分からないわ。私には無理だと思う。アメジストって、本当にすてき。昔、ダイヤモンドってこういうものだと思っていたの。ずっと前、本物のダイヤモンドを見たことがなかったころ、ダイヤモンドについて読んで、どんなものか想像したの。きれいにきらめく紫の石だと思ったわ。ある日、女の人の指輪で本物のダイヤモンドを見たとき、あまりにがっかりして泣いてしまった。もちろん、とてもきれいだったけれど、私の思っていたダイヤモンドではなかったの。マリラ、ブローチを一分だけ持たせてくれる? アメジストって、よいスミレの魂かもしれないと思わない?」


第十四章 アンの告白

ピクニック前の月曜日の夕方、マリラは困った顔で自室から下りてきた。

「アン」と、台所のきれいなテーブルのそばでエンドウ豆をさやから出しながら、ダイアナの教えぶりを見事に示す勢いと表情で『ハシバミ谷のネリー』を歌っていた小さな人物へ言った。「私のアメジストのブローチを見なかった? 昨日の夕方、教会から帰ったとき、針山に留めたと思うのだけれど、どこにもないのよ。」

「きょうの午後、あなたが教会扶助会へ出かけていたときに見たわ」と、アンは少しゆっくり答えた。「あなたの部屋の前を通ったら、クッションの上にあったから、見に入ったの。」

「触ったの?」とマリラは厳しく聞いた。

「は、はい」とアンは認めた。「取って、胸に留めて、どう見えるか少し見てみたの。」

「そんなことをしてはいけなかったわ。小さな女の子が人のものをいじるのは、とても悪いことよ。まず私の部屋に入るべきではなかったし、次に自分のものではないブローチに触るべきではなかった。どこへ置いたの?」

「まあ、鏡台へ戻したわ。ほんの一分も着けていなかった。ほんとうに、いじるつもりだったのではないの、マリラ。部屋へ入ってブローチを着けてみるのが悪いことだなんて、考えもしなかった。でも今は悪かったと分かるし、二度としないわ。そこが私のよいところよ。同じ悪いことを二度は決してしないの。」

「戻していないわ」とマリラは言った。「そのブローチは鏡台のどこにもない。持ち出したか、何かしたのでしょう、アン。」

「戻したわ」とアンはすぐに言った――生意気に、とマリラは思った。「針山に留めたのか、中国風の盆に置いたのか、はっきり覚えていないだけ。でも、戻したことは完全に確かよ。」

「もう一度探してみるわ」とマリラは、公平であろうと決めて言った。「あなたが戻したなら、まだそこにあるはずよ。なければ、戻していないと分かるだけです!」

マリラは自室へ行き、鏡台の上だけでなく、ブローチがありそうな場所をすべて徹底的に探した。だが見つからず、台所へ戻った。

「アン、ブローチはなくなっているわ。あなた自身が認めたとおり、最後にそれを触ったのはあなたよ。さあ、何をしたの? 今すぐ本当のことを言いなさい。持ち出して、なくしたの?」

「いいえ、していないわ」とアンは厳かに答え、マリラの怒った目をまっすぐ見返した。「私はブローチをあなたの部屋から持ち出していないわ。それは、たとえそのために断頭台へ連れていかれるとしても本当よ――もっとも、断頭台がどんなものか、あまりよく分からないけれど。だから、そういうことよ、マリラ。」

アンの「だから、そういうことよ」は、ただ自分の言葉を強めるつもりだっただけだ。しかしマリラは、それを反抗の表れと受け取った。

「あなたは嘘をついていると思うわ、アン」と鋭く言った。「いいえ、そうだと分かっている。さあ、全部本当のことを言う気がないなら、もう何も言わないで。部屋へ行って、告白する気になるまで、そこにいなさい。」

「エンドウ豆も持っていく?」とアンはおとなしく聞いた。

「いいえ、私がさやから出し終えるわ。言われたとおりになさい。」

アンが去ると、マリラは非常に心を乱しながら、夕方の仕事にかかった。大切なブローチが心配だった。アンがなくしてしまったらどうしよう。そして、持ち出したことを認めないなんて、なんて悪い子だろう。見れば誰だって、アンが持ち出したに違いないと分かるのに。あんな無邪気な顔をして。

「こんなことになるくらいなら、ほかに何が起きてもよかったのに」と、神経質にエンドウ豆をさやから出しながらマリラは考えた。「もちろん、盗もうとしたわけではないと思う。あの子は、遊びに使うか、あの想像力を助けるために持ち出しただけなのよ。持ち出したのは明白だわ。あの子が部屋にいたあと、今夜私が行くまで、誰もあの部屋には入っていないのだから。しかもブローチはない。これ以上確かなことはないわ。きっとなくして、罰を受けるのが怖くて認められないのね。あの子が嘘をつくなんて、考えるだけで恐ろしい。かんしゃくを起こしたことより、ずっと悪いことよ。信用できない子を家に置くなんて、恐ろしい責任だわ。ずるさと不誠実――あの子が見せたのはそれよ。ブローチのことより、そのほうがずっとつらい。もし本当のことを言ってくれさえすれば、こんなに気にしなかったのに。」

マリラは夕方じゅう何度も自室へ行って、ブローチを探したが、見つからなかった。寝る前に東の切妻部屋へ行っても、結果は同じだった。アンはブローチについて何も知らないと言い張った。だがそのために、マリラはかえって、アンが知っていると確信を深めた。

翌朝、マリラはマシューに一部始終を話した。マシューは混乱し、当惑した。アンへの信頼をそう簡単に失うことはできなかったが、事情がアンに不利なのは認めざるを得なかった。

「鏡台の後ろに落ちたんじゃないか、確かか?」と、彼が言えたのはそれだけだった。

「鏡台は動かしたし、引き出しも全部出して、隅から隅まで見たわ」とマリラは断言した。「ブローチはなくなって、あの子は持ち出して嘘をついた。それが、見たくなくても見なければならない、明白で醜い真実よ、マシュー・カスバート。」

「それで、どうするつもりだ?」

マシューは心細そうに聞いた。この状況に対処しなければならないのが自分でなくマリラであることに、心の奥では感謝していた。今度こそ、おせっかいを出す気にはなれなかった。

「告白するまで、部屋にいさせるわ」とマリラは、前の件でこの方法が成功したことを思い出して、冷たく言った。「それから考えます。どこへ持って行ったか言えば、ブローチも見つかるかもしれない。でもどちらにしても、厳しく罰しなければならないわ、マシュー。」

「それなら、罰するのはおまえだな」とマシューは帽子に手を伸ばした。「わしは関係ない、覚えているだろう。おまえ自身が、わしは手を出すなと言ったんだから。」

マリラは皆に見捨てられたように感じた。リンド夫人に相談しに行くことさえできなかった。非常に深刻な顔で東の切妻部屋へ上がり、それよりさらに深刻な顔で戻ってきた。アンは頑として告白しなかった。ブローチを持ち出していないと、あくまで言い張った。子供が泣いたことは明らかで、マリラは哀れみの痛みを感じたが、厳しく押し殺した。夜までには、本人の言葉どおり「すっかりくたくた」になっていた。

「告白するまで、この部屋にいるのよ、アン。そのつもりでいなさい」と、きっぱり言った。

「でも、ピクニックは明日よ、マリラ」とアンは叫んだ。「あれまで行かせないなんて、そんなことしないでしょう? 午後だけは出してくださるでしょう? そのあとは、どれだけ長くここにいろと言われても、喜んでいるわ。でも、ピクニックには絶対に行かなくちゃならないの。」

「告白するまで、ピクニックにも、ほかのどこへも行かせません、アン。」

「まあ、マリラ」とアンは息をのんだ。

だがマリラは出ていき、扉を閉めた。

水曜日の朝は、まるでピクニックのために注文して作られたかのように、明るく美しく明けた。鳥たちはグリーン・ゲイブルズの周りで歌い、庭のマドンナリリーは香りを放った。その香りは目に見えない風に乗って、すべての戸口と窓から入り、祝福の精霊のように廊下と部屋をさまよった。くぼ地の白樺は、東の切妻部屋から聞こえるいつもの朝の挨拶を待ちわびるように、喜びの手を振っていた。だがアンは窓辺にいなかった。

マリラが朝食を運ぶと、アンはベッドにきちんと座っていた。青白く、決意に満ち、唇を固く結び、目を光らせていた。

「マリラ、告白する準備ができたわ。」

「まあ。」

マリラは盆を置いた。またしてもこの方法は成功したのだ。だがその成功は、ひどく苦かった。「では、言いたいことを聞きましょう、アン。」

「アメジストのブローチを取ったわ」とアンは、覚えた課題を繰り返すように言った。「あなたのおっしゃるとおり、取ったの。部屋へ入ったときには、取るつもりなんてなかった。でも、胸に留めたとき、とてもきれいに見えたから、抑えられない誘惑に負けてしまったの。アイドルワイルドへ持って行って、コーデリア・フィッツジェラルド夫人になったつもりで遊んだら、どんなに胸がどきどきするだろうと思ったの。本物のアメジストのブローチを着けていれば、コーデリア夫人だと思い込むのが、ずっと簡単になるもの。ダイアナと私はノイバラの実でネックレスを作るけれど、ノイバラの実なんてアメジストに比べたら何だというの? だからブローチを取ったの。あなたが帰る前に戻せると思った。時間を延ばすために、遠回りして道を歩いたの。輝く湖水にかかる橋を渡っているとき、もう一度見たくなってブローチを外したの。まあ、日光のなかでなんと輝いたでしょう! そして橋から身を乗り出したとき、指からするりと抜けて――こうして――下へ、下へ、下へ、紫色にきらめきながら落ちていって、永遠に輝く湖水の底へ沈んだの。これが、私にできるいちばんよい告白よ、マリラ。」

マリラの心には、また熱い怒りがこみ上げた。この子は大切なアメジストのブローチを持ち出してなくし、今になって少しの悔恨も反省も見せず、その詳細を平然と語っている。

「アン、これはひどいことよ」と、落ち着いて言おうと努めながら言った。「あなたは、私が聞いたなかでいちばん悪い子だわ。」

「ええ、たぶんそうね」とアンは平然と同意した。「罰を受けなくちゃならないことも分かっている。私を罰するのは、あなたの義務よ、マリラ。心に重荷を残さずピクニックへ行きたいから、どうかすぐに済ませてくださらない?」

「ピクニックですって! 今日はどんなピクニックにも行かせませんよ、アン・シャーリー。それがあなたの罰です。あなたのしたことに比べれば、それでも半分も厳しくないくらいよ!」

「ピクニックへ行けないの!」

アンは跳ね起き、マリラの手にすがりついた。「でも、行っていいって約束してくださった! ああ、マリラ、ピクニックへ行かなくちゃならないの。だから告白したのよ。ほかの罰なら、どんなものでもいい。でもそれだけはだめ。ああ、マリラ、お願い、お願いだから行かせて。アイスクリームのことを考えて! 何が起きるか分からないのだから、これから先、二度とアイスクリームを味わう機会がないかもしれないのよ。」

マリラは、アンのしがみつく手を石のように冷たく振りほどいた。

「頼んでも無駄よ、アン。ピクニックには行かせません。それで終わり。もう一言も聞きません。」

アンは、マリラの決心を変えられないと悟った。両手を組み、鋭い叫び声を上げると、ベッドへうつぶせに倒れ込んだ。そして失望と絶望に完全に身を任せ、泣き、身をよじった。

「まあ、なんてこと!」とマリラは息をのみ、急いで部屋を出た。「あの子は気が変になっているんじゃないかしら。正気の子なら、あんなふうにはしないわ。そうでなければ、救いようもなく悪い子よ。まあ、レイチェルは最初から正しかったのかもしれない。でも私はもう鋤に手をかけたのだから、後ろを振り返りません。」

その朝は暗かった。マリラは激しく仕事をした。ほかにすることが見つからなくなると、ポーチの床を磨き、乳製品置き場の棚をこすった。棚もポーチも、磨く必要などなかった――だがマリラには必要だった。それから外へ出て、庭を熊手でならした。

昼食の支度ができると、マリラは階段へ行ってアンを呼んだ。涙の筋のついた顔が、手すり越しに悲劇のようにのぞいた。

「昼食を食べに下りていらっしゃい、アン。」

「昼食なんていらないわ、マリラ」とアンはすすり泣いた。「何も食べられないもの。心が壊れてしまったの。いつかその心を壊したことを、あなたは良心の呵責で悔いるでしょうね、マリラ。でも私はあなたを許すわ。その時が来たら、私が許していることを思い出して。でも、何か食べろとは言わないで。とくに、ゆで豚肉と青菜なんて。苦しみのなかにいる人には、ゆで豚肉と青菜はあまりにもロマンティックじゃないもの。」

いらいらして、マリラは台所へ戻り、正義感とアンへの不当な同情のあいだで惨めになっているマシューに、苦しみを訴えた。

「まあ、ブローチを取るべきではなかったし、それについて嘘をつくべきでもなかった、マリラ」とマシューは認めた。アンと同じように、感情の危機にはふさわしくない食べ物だと思うかのように、ロマンティックではない豚肉と青菜の皿を悲しげに眺めた。「でも、あんな小さい子だ――あんなに興味深い小さい子なんだ。あれほど楽しみにしているピクニックへ行かせないのは、少しきつすぎると思わないか?」

「マシュー・カスバート、あなたには驚くわ。私はあの子を、まったく甘く扱いすぎたと思っている。それに、自分がどれだけ悪いことをしたか、少しも分かっているように見えない――いちばん心配なのはそこよ。本当に悪かったと思ってくれたなら、まだましだったのに。あなたも、それを分かっていないようね。いつも心のなかであの子の言い訳をしているでしょう――見れば分かるわ。」

「まあ、あんな小さい子なんだ」とマシューは弱々しく繰り返した。「大目に見るべきこともある、マリラ。あの子は今まで、ろくにしつけを受けたことがないんだ。」

「今、受けているわ」とマリラは言い返した。

その返答は、マシューを納得させはしなかったが、黙らせた。その昼食は非常に暗い食事だった。唯一陽気だったのは雇い男のジェリー・ブオートで、マリラは彼の陽気さまで個人的な侮辱のように感じた。

食器を洗い、パン種を仕込み、鶏に餌をやると、マリラは月曜日の午後、教会扶助会から帰ってきたとき、最上等の黒レースの肩掛けに小さな裂け目があるのを見つけたことを思い出した。

繕いに行こうと思った。肩掛けはトランクの箱に入っていた。マリラが取り出すと、窓に濃く絡んだつる草を通して差し込んだ日光が、肩掛けに引っかかっているものへ当たった――紫の光の面をきらきらと輝かせるものへ。マリラは息をのんで、さっと手を伸ばした。レースの糸に留め金を引っかけたアメジストのブローチだった! 

「まあ、なんてこと」とマリラは呆然と言った。「これはどういうこと? バリー家の池の底にあると思っていたブローチが、ここにちゃんとあるわ。あの子は、取ってなくしたなんて、どういうつもりで言ったの? まったく、グリーン・ゲイブルズは魔法にかかっているんじゃないかしら。そういえば、月曜の午後、肩掛けを外したとき、少しのあいだ鏡台の上へ置いたのを思い出した。きっとそのとき、ブローチがどこかに引っかかったのね。まあ!」

マリラはブローチを手に、東の切妻部屋へ向かった。アンは泣き尽くし、意気消沈して窓辺に座っていた。

「アン・シャーリー」とマリラは厳かに言った。「たった今、私の黒レースの肩掛けに引っかかっているブローチを見つけました。今朝あなたが私に話した、あの長ったらしい作り話は何だったのか、知りたいわ。」

「だって、告白するまでここに置いておくとおっしゃったでしょう」とアンは疲れた声で答えた。「だからピクニックへ行くために、告白することに決めたの。昨夜ベッドに入ってから告白を考えて、できるだけ面白く作ったのよ。それから忘れないように、何度も何度も繰り返した。でも結局、ピクニックへ行かせてくださらなかったから、私の苦労は全部無駄だったわ。」

マリラは、思わず笑わずにはいられなかった。だが良心がちくりと痛んだ。

「アン、あなたときたら、まったく! でも私が悪かった――今は分かるわ。あなたが今まで嘘をついたことなど一度もないのに、言葉を疑うべきではなかった。もちろん、していないことを告白するのは正しくなかった――とても悪いことだった。でも、そうさせたのは私よ。だから、あなたが私を許してくれるなら、私もあなたを許す。二人とも帳消しにして、やり直しましょう。さあ、ピクニックの支度をなさい。」

アンはロケットのように飛び上がった。

「まあ、マリラ、もう遅くない?」

「いいえ、まだ二時よ。集まったばかりのはずだし、お茶までは一時間あるわ。顔を洗って、髪をとかして、ギンガムの服を着なさい。私がバスケットをいっぱいにしてあげる。家には焼いたものがたくさんあるもの。それからジェリーに栗毛馬をつなげさせて、ピクニックの場所まで送らせるわ。」

「まあ、マリラ」と、洗面台へ飛んでいきながらアンは叫んだ。「五分前には、生まれてこなければよかったと思うほど惨めだったのに、今は天使とだって場所を替わりたくないわ!」

その夜、完全に幸福で、すっかり疲れ切ったアンは、言い表せない至福の状態でグリーン・ゲイブルズへ帰ってきた。

「まあ、マリラ、完全に最高の時間を過ごしたわ。『最高』って、今日覚えた新しい言葉なの。メアリー・アリス・ベルが使うのを聞いたのよ。とてもぴったりの言葉でしょう? 全部すてきだったわ。すばらしいお茶を食べて、それからハーモン・アンドルーズさんが、六人ずつ輝く湖水でボートに乗せてくださったの。それでジェーン・アンドルーズが、もう少しで船から落ちそうになったの。睡蓮を摘もうとして身を乗り出していたら、アンドルーズさんがぎりぎりのところで帯をつかまなかったら、落ちて、たぶん溺れていたわ。私だったらよかったのに。もう少しで溺れるなんて、とてもロマンティックな経験だもの。話すにも胸躍るお話になるわ。それからアイスクリームも食べたの。あのアイスクリームを表すには、言葉が足りないわ。マリラ、あれは崇高だったと保証するわ。」

その晩、マリラは靴下かごをそばに置き、マシューへ一部始終を話した。

「自分が間違えたことは認めます」と、率直に結んだ。「でも教訓は得たわ。アンの『告白』を思い出すと笑ってしまうの。もっとも、本当は笑うべきでないのでしょうね、実際には嘘だったのだから。でも、何となく、あの子が本当にしたと思ったことほど悪くは感じられないし、いずれにしても責任は私にある。あの子は、ある点では理解しにくいわ。でも、きっとちゃんと育つと思う。そして確かなことが一つある。あの子がいる家は、決して退屈にはならないわ。」


第十五章 学校の茶碗のなかの嵐

「なんてすばらしい日なの!」とアンは大きく息を吸って言った。「こんな日に生きているだけで、すばらしいと思わない? まだ生まれていない人たちが、この日を逃すのが気の毒だわ。もちろん、あの人たちにもよい日はあるでしょう。でも、この日は決して持てないのよ。それに、こんなにすてきな道を通って学校へ行けるなんて、もっとすばらしいと思わない?」

「大通りを回るより、ずっといいわね。あっちはほこりっぽくて暑いもの」とダイアナは現実的に言った。そして昼食のかごをのぞき込み、そこに入っている、汁気たっぷりでおいしそうなラズベリータルト三つを十人の少女で分けたら、一人あたり何口になるか、頭のなかで計算していた。

アヴォンリー学校の少女たちは、いつも昼食を持ち寄って分け合った。ラズベリータルトを三つ、一人で食べたり、親友一人としか分けなかったりすれば、そんなことをした少女は永遠に「ものすごく意地悪」と呼ばれることになった。けれど十人で分ければ、じらされる程度しか食べられない。

アンとダイアナが学校へ通う道は、まさに美しかった。ダイアナと一緒に学校へ行き帰りする散歩は、想像力を使ってさえ、これ以上よくはできないとアンは思った。大通りを回るのは、あまりにロマンティックではない。しかし恋人たちの小径、柳の湖、スミレの谷、白樺の小道を通るのなら、これ以上なくロマンティックだった。

恋人たちの小径は、グリーン・ゲイブルズの果樹園の下から森の奥へ、カスバート家の農場の端まで長く延びていた。牛を裏の牧草地へ連れていく道であり、冬には薪を運び帰る道でもあった。アンはグリーン・ゲイブルズへ来て一か月も経たないうちに、この道を恋人たちの小径と名づけていた。

「恋人たちが本当にあそこで歩くわけではないの」と、マリラへ説明した。「でもダイアナと私は、完璧にすばらしい本を読んでいて、そのなかに恋人たちの小径があるの。だから私たちにもほしいのよ。それに、とてもきれいな名前でしょう? すごくロマンティック! 恋人たちがいると想像することはできないけれどね。あの小径が好きなのは、そこでなら、気違いだと呼ばれずに声に出して考えられるから。」

朝、一人で出かけるアンは、小川まで恋人たちの小径を下りていった。そこでダイアナと落ち合い、二人の少女はカエデの葉のアーチの下を進んだ――「カエデはとても社交的な木なの」とアンは言った。「いつも、あなたにささやいたり葉を鳴らしたりしているの」――やがて素朴な橋まで来た。そこで小径を離れ、バリー家の裏の畑を横切り、柳の湖のそばを通った。

柳の湖の先にはスミレの谷があった。アンドルー・ベル氏の大きな森の影にある、小さな緑のくぼみだった。「もちろん、今はスミレなんてないわ」とアンはマリラに言った。「でもダイアナによれば、春には何百万本も咲くんですって。ああ、マリラ、見えると想像できない? 本当に息が止まりそうよ。私がスミレの谷と名づけたの。ダイアナは、場所に空想的な名前をつけることでは、私ほどの人は見たことがないって言うの。何か一つでも賢いことができるのは、すてきでしょう? でも白樺の小道と名づけたのはダイアナよ。彼女がそうしたがったから譲ったの。でも、ただの白樺の小道より、私ならもっと詩的な名前を見つけられたと思う。あんな名前は誰でも考えられるもの。でも、白樺の小道は世界でいちばんきれいな場所の一つなの、マリラ。」

実際そうだった。偶然そこへ行き着いた人々は、アン以外でも皆そう思った。ベル氏の森をまっすぐ通って、長い丘を下っていく、細く曲がりくねった小道だった。そこには幾重ものエメラルド色の幕を通して濾された光が落ち、ダイヤモンドの芯のように一点の曇りもなかった。

白い幹としなやかな枝を持つ細い若い白樺が、道の全長にわたって縁取っていた。シダ、ハコベ、野生のスズラン、真紅のコケモモが、その両側に濃く育っていた。空気にはいつも心地よい香気があり、鳥の呼び声の音楽と、頭上の木々で森の風がつぶやき笑う音がした。静かにしていれば、ときどき道を跳んで横切るウサギが見えたかもしれない――もっとも、アンとダイアナが静かにしていることなど、めったになかったが。

谷の下で小道は大通りへ出る。そこからはトウヒの丘を登るだけで学校だった。

アヴォンリー学校は、軒が低く、窓が幅広い白塗りの建物だった。中には、開け閉めできる、丈夫で快適な昔ながらの机が備えられていた。机の蓋には、三世代にわたる生徒たちの頭文字や象形文字が、全面に彫り込まれていた。校舎は道から少し奥まったところにあり、後ろには暗いモミの森と小川があった。子供たちは朝、ミルク瓶をその小川に入れ、昼食まで冷たく新鮮に保っていた。

マリラは九月の最初の日、アンが学校へ出かけるのを、ひそかな不安をたくさん抱きながら見送った。アンはあまりにも変わった子だ。ほかの子供たちとうまくやれるだろうか。そして学校にいるあいだ、いったいどうすれば口を閉じていられるのだろう。

だが、事態はマリラの恐れよりもよく進んだ。その晩、アンは上機嫌で帰宅した。

「ここの学校、好きになりそうよ」と言った。「でも先生のことは、あまり何とも思わないわ。いつも口ひげをくるくる巻いて、プリッシー・アンドルーズに色目を使っているの。プリッシーはもう大人でしょう。十六歳で、来年シャーロットタウンのクイーン学院の入学試験を受ける勉強をしているの。ティリー・ボウルターが言うには、先生は彼女に首ったけなんですって。彼女はとてもきれいな肌で、茶色の巻き毛を、とても優雅に結っているの。後ろの長い席に座っていて、先生もほとんどいつもそこに座っているのよ――課題を説明するためですって。でもルビー・ギリスは、先生が彼女の石板に何か書いているのを見たの。それを読んだプリッシーは、ビートみたいに真っ赤になって、くすくす笑ったのよ。ルビー・ギリスは、課題とは何の関係もないことだったと信じているわ。」

「アン・シャーリー、二度と先生のことをそんなふうに話すのを聞かせないで」とマリラは厳しく言った。「先生を批判するために学校へ行くのではないでしょう。先生にも、あなたに教えられることはあるでしょうし、あなたの仕事は学ぶことです。それから最初にはっきり分からせておくけれど、先生についての告げ口をして帰ってきてはいけません。私はそんなことを助長しないわ。よい子でいたのでしょうね。」

「もちろんよ」とアンは気楽に言った。「思うほど難しくなかったわ。ダイアナと座っているの。私たちの席は窓のすぐそばで、輝く湖水が見下ろせるのよ。学校には、いい女の子がたくさんいて、昼休みには最高に楽しく遊んだわ。小さな女の子たちがたくさんいて、一緒に遊べるのはすてき。でももちろん、私はダイアナがいちばん好きだし、いつまでもそうよ。ダイアナを崇拝しているの。私はほかの子よりずいぶん遅れているわ。みんな第五読本なのに、私は第四読本だけ。少し恥ずかしいことだと思う。でも想像力なら、私ほどある子は一人もいないって、すぐ分かった。きょうは読本、地理、カナダ史、書き取りをしたの。フィリップス先生は、私の綴りは恥ずべきほどひどいと言って、皆に見えるよう、間違いだらけの石板を持ち上げたの。とても恥ずかしかったわ、マリラ。見知らぬ子には、もう少し丁寧にしてもよかったと思う。ルビー・ギリスはリンゴをくれたし、ソフィア・スローンは『家まで送ってもいい?』と書いてある、きれいなピンクのカードを貸してくれたの。明日返すことになっている。それからティリー・ボウルターは午後じゅう、ビーズの指輪を貸してくれた。屋根裏にある古い針山から、真珠のビーズを少し取って、自分の指輪を作ってもいい? それから、まあ、マリラ。ジェーン・アンドルーズが言ったのだけれど、ミニー・マクファーソンがジェーンに言って、さらにプリッシー・アンドルーズがサラ・ギリスに言うのを聞いたらしいのだけれど、私にはとてもきれいな鼻があるんですって。マリラ、それは生まれて初めて受けた褒め言葉なの。どんな不思議な気持ちになったか、想像できないでしょう。マリラ、私、本当に鼻がきれいなの? あなたなら本当のことを言ってくれると分かっているわ。」

「鼻は、まあ悪くないわ」とマリラはそっけなく言った。内心では、アンの鼻は驚くほどきれいだと思っていた。だが、そんなことを本人に言うつもりはなかった。

それは三週間前のことだった。それ以来、すべては順調に進んでいた。そして今、この澄んだ九月の朝、アンとダイアナは白樺の小道を陽気に歩いていた。二人はアヴォンリーでいちばん幸せな少女たちだった。

「今日はギルバート・ブライスが学校へ来ると思うわ」とダイアナは言った。「夏のあいだずっとニューブランズウィックのいとこのところへ行っていて、土曜の夜に帰ってきたの。すごく格好いいのよ、アン。でも女の子をひどくからかうの。私たちを、さんざん困らせるのよ。」

その声からは、ダイアナが、困らされないよりは困らされることのほうを少し好んでいるらしいことが分かった。

「ギルバート・ブライス?」とアンは言った。「ポーチの壁に、ジュリア・ベルの名前と一緒に書かれていて、その上に大きく『ご注目』ってある子?」

「ええ」とダイアナは頭をつんと上げた。「でも、ギルバートがジュリア・ベルをそんなに好きだとは思わないわ。彼、ジュリアのそばかすで九九を覚えたって言っているのを聞いたもの。」

「お願いだから、そばかすの話はしないで」とアンは頼んだ。「私にはあんなにたくさんあるのだから、気遣いがないわ。でも、男の子と女の子の名前を一緒にして、壁にご注目なんて書くのは、今まででいちばんばかばかしいことだと思う。私の名前を男の子と一緒に書くなんて、そんな勇気のある人がいたら見てみたいわ。もちろん」と、急いでつけ加えた。「そんな人はいないでしょうけれど。」

アンはため息をついた。名前など書かれたくない。だが、書かれる心配がまったくないと知っているのは、少し屈辱的でもあった。

「ばかね」とダイアナは言った。アヴォンリー学校の男子生徒の心を、黒い目とつややかな髪で大いにかき乱してきたので、彼女の名前はポーチの壁に半ダースほどの「ご注目」として書かれていた。「ただの冗談よ。それに、自分の名前が絶対に書かれないなんて、あまり確信しないことね。チャーリー・スローンはあなたに夢中なのよ。彼、自分のお母さんに――お母さんに、よ――あなたは学校でいちばん頭のいい女の子だって言ったの。きれいだと言われるより、いいでしょう。」

「いいえ、よくないわ」とアンは、女の子らしさの芯から答えた。「頭がいいより、きれいなほうがいい。私はチャーリー・スローンが嫌い。ぎょろ目の男の子は耐えられない。誰かが私の名前をあの子と一緒に書いたら、絶対に立ち直れないわ、ダイアナ・バリー。でも、クラスで一番でいられるのは、すてきなことね。」

「これからは、クラスにギルバートがいるわ」とダイアナは言った。「あの子はクラスの一番でいることに慣れているの、よく分かっているでしょう。もうすぐ十四歳なのに、第四読本にいるだけだけれど。四年前、お父さんが病気になって療養のためアルバータへ行かなくてはならなくなって、ギルバートも一緒に行ったの。三年間あちらにいて、戻るまでギルはほとんど学校へ行かなかったの。これからは、一番を保つのがそんなに簡単ではないわよ、アン。」

「うれしいわ」とアンはすぐに言った。「九歳か十歳の小さな男の子や女の子に勝ち続けても、本当は誇らしい気持ちになれなかったもの。昨日、『ebullition』の綴りで一番になったの。ジョジー・パイが一番だったけれど、あの子、本をのぞいたのよ。フィリップス先生は見ていなかった――プリッシー・アンドルーズを見ていたから――でも私は見たわ。氷のような軽蔑の目を向けたら、あの子はビートみたいに赤くなって、結局間違えたの。」

「パイ家の女の子たちは、皆そろってずるいのよ」と、大通りの柵を越えながらダイアナは憤然と言った。「ガーティー・パイは昨日、私の場所に自分のミルク瓶を置いたのよ。そんなことするなんて! もう話してあげない。」

フィリップス先生が教室の後ろでプリッシー・アンドルーズのラテン語を聞いているとき、ダイアナはアンへ囁いた。「アン、通路を挟んであなたの真向かいに座っているのが、ギルバート・ブライスよ。見てごらん。格好いいと思わない?」

アンは言われたとおり見た。十分見る機会があった。問題のギルバート・ブライスは、前の席に座っているルビー・ギリスの長い金髪のお下げを、その椅子の背へこっそり留めることに夢中だったのだ。背の高い少年で、茶色の巻き毛、いたずらっぽい薄茶の目、からかうように歪んだ口元をしていた。

やがてルビー・ギリスが、先生のところへ計算問題を持っていこうと立ち上がった。だが、髪を根元から引き抜かれたと思い、小さな悲鳴を上げて席に倒れ込んだ。皆が彼女を見た。フィリップス先生がひどく厳しい目を向けたので、ルビーは泣き出した。

ギルバートはピンをすばやく隠し、世界でいちばん真面目な顔で歴史を読んでいた。だが騒ぎが収まると、アンを見て、言い表せないほどおどけた調子で片目をつぶった。

「あなたのギルバート・ブライス、格好いいと思うわ」とアンはダイアナに打ち明けた。「でも、とても大胆だと思う。知らない女の子に片目をつぶるなんて、礼儀じゃないわ。」

しかし、本当に事が起き始めたのは午後だった。

フィリップス先生は教室の後ろで、プリッシー・アンドルーズに代数の問題を説明していた。ほかの生徒たちは、青いリンゴを食べたり、ささやいたり、石板に絵を描いたり、ひもをつけてつないだコオロギを通路で走らせたりして、ほとんど好き勝手に過ごしていた。

ギルバート・ブライスは、アン・シャーリーに自分を見させようとしていた。だがまったく成功しなかった。なぜならそのときのアンは、ギルバート・ブライスの存在どころか、アヴォンリー学校のほかのすべての生徒の存在すら、まったく意識していなかったからだ。両手であごを支え、西の窓から見える輝く湖水の青い一片を見つめながら、壮麗な夢の国のはるか彼方にいた。自分自身の驚くべき幻以外、何も見ず、何も聞いていなかった。

ギルバート・ブライスは、女の子に自分を見させようと骨を折り、失敗することには慣れていなかった。あの赤毛のシャーリーの子は、自分を見なければならない。小さく尖ったあごと、アヴォンリー学校のほかのどの少女とも違う大きな目を持つ、あの子は。

ギルバートは通路を越えて手を伸ばし、アンの長い赤いお下げの端を取り、腕いっぱいに持ち上げ、鋭い囁き声で言った。

「ニンジン! ニンジン!」

そのとき、アンは復讐のごとく彼を見た。

見ただけではなかった。治ることのない破滅へ、明るい空想を落とされて、彼女は跳ね起きた。怒りにきらめいた目でギルバートを一瞥した。その火花は、同じほど怒った涙によって、たちまち消された。

「意地悪な、憎らしい子!」と、激情にかられて叫んだ。「よくもそんなことを!」

そして――ぴしゃり! アンは石板をギルバートの頭へ振り下ろし、真っ二つに割った――割れたのは石板であって、頭ではない――見事に真横から。

アヴォンリー学校は、いつでも騒ぎを楽しんだ。これは格別に楽しい騒ぎだった。皆が恐怖まじりの喜びで「あっ」と言った。ダイアナは息をのんだ。少しヒステリー気味のルビー・ギリスは泣き出した。トミー・スローンは口を開けてその光景を見つめ、コオロギの一団を完全に逃がしてしまった。

フィリップス先生は通路を大股で下り、アンの肩に重く手を置いた。

「アン・シャーリー、これはどういうことだ?」と怒って言った。アンは答えなかった。学校中の前で、ニンジンと呼ばれたのだとは、とても口にできなかった。

代わりに、ギルバートが勇敢に口を開いた。

「僕が悪いんです、フィリップス先生。僕がからかったんです。」

フィリップス先生はギルバートに注意を払わなかった。

「私の生徒が、このようなかんしゃくと執念深い心を見せるとは、残念だ」と、まるで彼の生徒であるというだけで、小さく不完全な人間の心からあらゆる悪い情念が根こそぎ消えるべきだと言わんばかりに、厳粛な声で言った。「アン、午後の残りの時間、黒板の前の壇上に立っていなさい。」

繊細な心が鞭で打たれるように震えるこの罰より、アンはむしろ鞭打ちを受けるほうを、はるかにましと思っただろう。顔を真っ白に強ばらせて従った。フィリップス先生はチョークを取り、アンの頭の上の黒板に書いた。

「アン・シャーリーは、とても悪い気性をしている。アン・シャーリーは、自分の気性を抑えることを学ばなければならない。」

そして、書き文字を読めない初等読本組の子供たちにまで分かるよう、声に出して読み上げた。

アンは午後の残りを、その文言の下で立ち続けた。泣きもせず、頭も垂れなかった。心にはまだ怒りが熱く燃えており、屈辱の苦しみのなかで彼女を支えていた。恨みに満ちた目と、激情で赤くなった頬で、ダイアナの同情的な視線にも、チャーリー・スローンの怒ったうなずきにも、ジョジー・パイの悪意ある笑みにも、同じように立ち向かった。

ギルバート・ブライスについては、見ることすらしなかった。もう二度と絶対に見ない! 二度と話さない! 

学校が終わると、アンは赤い頭を高く掲げて出ていった。ギルバート・ブライスは、ポーチの戸口で彼女を呼び止めようとした。

「髪のことをからかって、本当にごめん、アン」と後悔した声で囁いた。「本当だよ。ずっと怒ったままでいないでくれ。」

アンは、見ることも聞こえたそぶりも見せず、軽蔑しきって通り過ぎた。「まあ、どうしてそんなことができたの、アン?」と、道を下りながらダイアナは、半ば非難し、半ば感心して囁いた。ダイアナには、自分ならギルバートの頼みを拒めなかったように思えた。

「私はギルバート・ブライスを、決して許さないわ」とアンは断言した。「それにフィリップス先生は、私の名前をEなしで書いたの。心の奥まで鉄が食い込んだわ、ダイアナ。」

ダイアナにはアンの意味が少しも分からなかったが、何か恐ろしいことを言っているのは理解した。

「ギルバートが髪をからかっても、気にしてはいけないわ」と慰めた。「だって、あの子はどの女の子もからかうもの。私の髪は黒すぎるって笑うのよ。カラスって、もう十回以上も呼ばれたわ。それに、あの子が何かを謝るのなんて、今まで一度も聞いたことがないもの。」

「カラスと呼ばれるのと、ニンジンと呼ばれるのは、まったく違うわ」とアンは威厳をもって言った。「ギルバート・ブライスは、私の感情を耐えがたいほど傷つけたのよ、ダイアナ。」

もしほかに何も起こらなければ、事はそれ以上苦しいものにならず、収まったかもしれない。だが、物事が起こり始めるときは、続けざまに起こるものだ。

アヴォンリー学校の生徒たちは、よく昼休みに、丘を越え、大きな牧草地を横切った先にあるベル氏のトウヒ林で、モミヤニを採った。そこからなら、先生が下宿しているイーベン・ライトの家を見張ることができた。フィリップス先生が家から出てくるのを見れば、子供たちは校舎へ走った。しかし距離はライト家の小道の三倍ほどもあったため、皆、息を切らせながら三分ほど遅れて到着するのが常だった。

翌日、フィリップス先生は突発的な改革熱に取りつかれ、昼食へ帰る前に、生徒全員が自分の席に座っていることを、戻ったときに期待すると告げた。遅れて入った者は罰する、と。

男の子たち全員と、女の子の一部は、いつものようにベル氏のトウヒ林へ行った。もちろん、ほんの少し「かじる分」を採るだけのつもりだった。

だがトウヒ林には人を誘惑するものがあり、黄色いモミヤニの粒は人を引きつけた。子供たちは採り、ぶらぶらし、さまよった。そしていつものように、時の過ぎるのを思い出させたのは、大木の古いトウヒのてっぺんからジミー・グローヴァーが叫んだ、「先生が来るぞ!」という声だった。

地面にいた女の子たちは先に走り出し、ぎりぎりで学校へ着いた。木から急いで身をよじり下ろさなければならなかった男の子たちは、遅れた。そして、モミヤニなど少しも採らず、林のいちばん奥で、ワラビのなかを腰まで埋もれて幸せそうに歩き、髪にはライスリリーの冠をつけ、影深い場所の野の女神のように小さく歌っていたアンは、いちばん遅かった。

もっともアンは、鹿のように走ることができた。実際に走った。そしていたずらな運命の結果、校門で男の子たちに追いつき、フィリップス先生が帽子を掛けようとしているちょうどそのとき、男の子たちと一緒に校舎へ押し流れ込んだ。

フィリップス先生の短い改革熱は、もう消えていた。十二人も罰する面倒はごめんだった。だが自分の言葉を保つためには、何かしなければならない。そこで生贄を探し、アンを見つけた。アンは息を切らしながら席へ落ち着いたところで、忘れられていた百合の花冠が片方の耳に斜めにかかり、ひどく不良っぽく、乱れた様子に見えた。

「アン・シャーリー、君は男の子の仲間がずいぶん好きなようだから、きょうの午後はその好みに応じてあげよう」と、皮肉に言った。「髪からその花を取りなさい。そしてギルバート・ブライスの隣に座りなさい。」

ほかの男の子たちはくすくす笑った。ダイアナは哀れみで青ざめ、アンの髪から花冠を外して手を握った。アンは石にされたように先生を見つめた。

「今、私が言ったことを聞いたか、アン?」とフィリップス先生は厳しく聞いた。

「はい、先生」とアンはゆっくり答えた。「でも、本気でおっしゃったのだとは思わなかったのです。」

「本気だったとも」――子供たちが皆、そしてとくにアンが嫌う、傷口を撫でるような皮肉な調子で。「すぐ従いなさい。」

一瞬、アンは従わないつもりに見えた。だがどうしようもないと悟り、傲然と立ち上がった。通路を渡り、ギルバート・ブライスの隣に座ると、机に腕を組んで顔をうずめた。その顔が伏せられる瞬間をちらりと見たルビー・ギリスは、帰り道でほかの子たちに、「あんなもの、ほんとうに見たことがないわ――すごく白くて、そこにひどく小さな赤い斑点があったの」と語った。

アンにとって、これは万事の終わりだった。同じように罪を犯した十二人のなかから、自分だけ選ばれて罰されるだけでも十分ひどい。男の子の隣に座らされるのは、さらにひどい。だが、その男の子がギルバート・ブライスだったことは、耐えがたいほどの侮辱を傷口へ重ねることだった。アンには耐えられないと感じられた。耐えようとしても無駄だった。全身が恥辱と怒りと屈辱で煮えたぎっていた。

初めは、ほかの生徒たちが見て、囁き、くすくす笑い、肘でつつき合っていた。だがアンは一度も顔を上げず、ギルバートは魂のすべてが分数だけに集中しているかのように問題を解いていたため、皆すぐ自分の仕事へ戻り、アンのことは忘れられた。

フィリップス先生が歴史の組を前に呼んだとき、アンも出るべきだった。だがアンは動かなかった。そして、生徒を呼ぶ前に「プリシラへ」という詩を書いていたフィリップス先生は、まだ言うことを聞かない韻のことを考えていて、アンがいないことに気づかなかった。

一度、誰も見ていないとき、ギルバートは机から小さなピンクのキャンディーのハートを取り出した。金文字で「あなたは甘い」と書かれていた。それをアンの腕の曲線の下へ滑り込ませた。するとアンは立ち上がり、ピンクのハートを指先でつまみ、床へ落とし、かかとで粉々に踏み砕いた。そしてギルバートへ一瞥すら与えることなく、元の姿勢に戻った。

学校が終わると、アンは机のところへ行き、その中のものをすべて、わざと目立つように取り出した。本、書き取り帳、ペンとインク、新約聖書、算数書。それらを割れた石板の上に、きちんと積み上げた。

「どうしてそんなものを全部、家へ持って帰るの、アン?」

道へ出てから、ダイアナは尋ねた。それまでは、聞く勇気がなかったのだ。

「もう学校へは来ないわ」とアンは言った。ダイアナは息をのんで、アンが本気かどうか見つめた。

「マリラが家にいさせてくれるの?」と聞いた。

「そうせざるを得ないわ」とアンは言った。「私は二度と、あの男の学校へは行かない。」

「まあ、アン!」

ダイアナは泣き出しそうだった。「あなたって意地悪だと思う。私はどうすればいいの? フィリップス先生は、きっとあの嫌なガーティー・パイと私を座らせるわ――あの子は一人で座っているから、絶対にそうよ。戻ってきて、アン。」

「ダイアナ、あなたのためなら、世界中のほとんど何でもするわ」とアンは悲しげに言った。「あなたの役に立つなら、手足を引き裂かれてもいいと思う。でも、これはできない。だから、どうか頼まないで。魂の底まで苦しめられるの。」

「逃してしまう楽しみを、少し考えてみて」とダイアナは悲しげに言った。「私たち、小川のそばにいちばんすてきな新しい家を作るつもりなの。それから来週はボール遊びをするのよ。あなたはボール遊びをしたことがないでしょう、アン。ものすごくわくわくするの。それに新しい歌を覚えるの――ジェーン・アンドルーズが今、練習しているわ。アリス・アンドルーズは来週、新しい『パンジー』の本を持ってくるの。皆で小川のそばに座って、一章ずつ声に出して読むのよ。アン、あなたは声に出して読むのが大好きでしょう。」

それでもアンは少しも動かなかった。決心は固かった。フィリップス先生の学校へは行かない。家へ帰ると、マリラにもそう告げた。

「ばかばかしい」とマリラは言った。

「少しもばかばかしくないわ」とアンは、厳粛で責めるような目でマリラを見つめて言った。「マリラ、分からないの? 私は侮辱されたのよ。」

「侮辱なんて、ばかばかしい! 明日はいつものように学校へ行きなさい。」

「いいえ。」

アンは穏やかに頭を振った。「戻らないわ、マリラ。家で勉強するし、できるだけよい子にするし、できるならずっと口を閉じている。でも学校へは戻らないと、はっきり申し上げるわ。」

マリラは、アンの小さな顔に、驚くほど頑固で譲らないものがのぞいているのを見た。それを曲げさせるには苦労するだろうと理解した。しかし賢明にも、その時はこれ以上何も言わないことにした。

「今晩、レイチェルのところへ行って相談しよう」と考えた。「今のアンに理屈を言っても無駄だわ。興奮しすぎている。それに、思い込んだら恐ろしく頑固な子になれる気がする。話から判断するかぎり、フィリップス先生は少し横柄にやりすぎている。でも、あの子にそんなことは言えない。レイチェルと相談するだけにしよう。あの人は十人の子供を学校へやったのだから、何か知っているはずよ。この話も、もう全部聞いているでしょう。」

マリラが行くと、リンド夫人はいつものように熱心に、陽気にキルトを縫っていた。

「何のことで来たか、お分かりでしょう」とマリラは少し気まずそうに言った。

レイチェル夫人はうなずいた。

「アンが学校で起こした騒ぎのことでしょう」と言った。「ティリー・ボウルターが学校から帰る途中に寄って、話してくれたの。」

「どうすればいいのか分からないわ」とマリラは言った。「あの子は学校へ戻らないと言い張っているの。あんなに興奮している子は見たことがない。学校へ行き始めたときから、いつか問題が起こると思っていたの。あまりに順調すぎて、いつまでも続くはずがないと分かっていた。あの子は神経が鋭すぎるのよ。レイチェル、あなたならどうするよう勧める?」

「まあ、私の助言を求めるのなら、マリラ」とリンド夫人は愛想よく言った――リンド夫人は助言を求められるのが何より好きだった――「最初は少し、あの子の気持ちを立ててあげるのがいいと思うよ。フィリップス先生が間違っていたと、私は思う。もちろん、子供たちにそう言ってはいけないけれどね。そして昨日、かんしゃくを起こしたあの子を罰したことは、先生は正しかったよ。でも今日は違う。遅れたほかの子たちも、アンと同じように罰されるべきだった。女の子を男の子の隣へ罰として座らせるなんて、私は賛成しない。慎みがないもの。ティリー・ボウルターは本当に憤慨していたよ。ずっとアンの味方をして、ほかの生徒も皆そうだったと言っていた。どういうわけか、アンは生徒たちにはとても人気があるようだね。あの子があんなに好かれるとは思わなかった。」

「それじゃ、本当に家にいさせるほうがいいと思うの?」とマリラは驚いて言った。

「そうね。つまり、あの子自身が学校のことを言い出すまで、こちらから学校へ行けとは言わないことだよ。信じていい、マリラ。一週間かそこらで頭も冷えて、自分から戻りたがるようになるさ。ところが今すぐ無理に戻したら、次にはどんな変なことやかんしゃくを起こすか分からないし、もっと大変なことになるだけだ。私の考えでは、騒ぎは小さいほどいい。学校へ行かなくても、あの子はそれほど何かを逃しはしないよ。フィリップス先生は、まったくよい先生ではない。あの人が保っている規律はひどいものだし、小さい子たちを放っておいて、クイーン学院へ行かせる大きな生徒たちにばかり時間をかけている。叔父が学務委員でなければ、もう一年学校を任されることなんかなかったさ――それもあの学務委員だよ。ほかの二人を鼻で引き回しているんだから。まったく、この島の教育がどうなっていくのか分からないね。」

レイチェル夫人は、もし自分が州の教育制度の頂点にさえいれば、物事はずっとよく運営されるだろうと言いたげに、首を振った。

マリラはレイチェル夫人の助言に従い、アンに学校へ戻ることについて、もう一言も言わなかった。アンは家で勉強し、仕事をこなし、冷たく紫がかった秋のたそがれにはダイアナと遊んだ。しかし道でギルバート・ブライスに会っても、日曜学校で出会っても、彼の明らかな和解の望みなど少しも溶かせない、氷のような軽蔑をもって通り過ぎた。ダイアナが仲直りさせようとしても無駄だった。アンは、生涯の終わりまでギルバート・ブライスを憎むと決めたようだった。

だがギルバートを憎むのと同じほど、アンはダイアナを愛していた。好き嫌いのどちらにも同じほど激しい、情熱的な小さな心をあげて。ある夕方、リンゴのかごを持って果樹園から入ってきたマリラは、東の窓のそばに一人で座り、たそがれのなかで激しく泣いているアンを見つけた。

「今度は何があったの、アン?」と聞いた。

「ダイアナのことなの」とアンは、涙にうっとり浸りながらすすり泣いた。「私はダイアナをとても愛しているの、マリラ。あの子なしでは、とても生きられない。でも大人になったら、ダイアナは結婚して、どこかへ行って、私を置いていくことはよく分かっている。ああ、私はどうすればいいの? 私はダイアナの夫が嫌い――ものすごく、激しく嫌いよ。全部想像してしまったの――結婚式も、何もかも。ダイアナはベールをかぶり、雪のような服を着て、女王みたいに美しく堂々としている。私は花嫁介添人で、私もきれいなドレスを着て、パフスリーブだけれど、微笑む顔の下には壊れた心を隠しているの。そしてダイアナにさよならを言うの――」

ここでアンは完全に泣き崩れ、いっそう激しく泣いた。

マリラは、引きつる顔を隠すため急に背を向けた。しかし無駄だった。いちばん近い椅子へ崩れ込むと、あまりにも心からの、あまりにも珍しい大笑いを始めたので、庭を横切っていたマシューは驚いて立ち止まった。マリラがあんなふうに笑うのを、これまでにいつ聞いたことがあっただろう? 

「まあ、アン・シャーリー」と、やっと話せるようになってからマリラは言った。「心配ごとを借りるなら、お願いだからもっと手近なところから借りなさい。あなたには確かに、すごい想像力があるわ。」


第十六章 ダイアナ、悲劇的な結果を伴うお茶に招かれる

十月のグリーン・ゲイブルズは美しい月だった。くぼ地の白樺は日光のような黄金色になり、果樹園の後ろのカエデは王者のような深紅に染まった。小道沿いの野生の桜は、いちばん美しい濃い赤と青銅色の緑をまとい、畑は刈り跡の草のなかで日を浴びていた。

アンは周りの色彩の世界に酔いしれた。

「まあ、マリラ」と、ある土曜の朝、見事な枝を両腕いっぱい抱えて踊るように入ってきて叫んだ。「十月のある世界に住んでいて、私は本当によかったと思う。九月から十一月へ飛んでしまうだけだったら、恐ろしいでしょう? このカエデの枝を見て。胸がどきどきしない? 一度どころか何度も? 部屋をこれで飾るの。」

「散らかるものね」と、美的感覚がとくに発達していないマリラは言った。「あなたは外のものを部屋に持ち込みすぎて、ひどく散らかしているわ、アン。寝室は眠るためにあるのよ。」

「夢を見るためでもあるわ、マリラ。それに、きれいなもののある部屋では、ずっとよい夢を見られるの。この枝を古い青い水差しに入れて、机の上に置くわ。」

「それなら、葉を階段じゅうに落とさないようにね。きょうの午後はカーモディの教会扶助会の集まりへ行くの、アン。暗くなる前には、たぶん帰れないでしょう。マシューとジェリーの夕食を作らなくちゃならないから、この前みたいに、食卓に座るまでお茶を入れるのを忘れないようにね。」

「忘れたのはひどいことだったわ」とアンは謝るように言った。「でもあの午後は、スミレの谷の名前を考えようとしていて、ほかのことが全部頭から押し出されてしまったの。マシューはとても親切だった。少しも叱らなかったわ。自分でお茶を入れて、少し待ったっていいじゃないかと言ったの。それで待っているあいだ、私はすてきな妖精のお話をしたの。だからマシューは、ちっとも長く感じなかったのよ。きれいな妖精のお話だったわ、マリラ。終わりのところを忘れてしまったから、自分で結末を作ったの。マシューは、どこからつなぎ目なのか分からなかったと言ったわ。」

「あなたが夜中に起き出して夕食を食べたいと言っても、マシューならよいと思うでしょうね、アン。でも今度は、しっかり気をつけなさい。それから――自分が正しいことをしているのか分からないわ――あなたを今まで以上にぼんやりさせるかもしれないけれど――ダイアナを呼んで、一緒に午後を過ごして、お茶を食べてもいいわ。」

「まあ、マリラ!」

アンは両手を組んだ。「なんて完璧にすてきなの! あなたは結局、物事を想像できるのね。そうでなければ、私がずっとそれをどれほど望んでいたか、分かるはずがないもの。とても気持ちよく、大人っぽく思えるでしょう。お客がいるのに、お茶を入れるのを忘れる心配なんてないわ。まあ、マリラ、バラのつぼみ模様のお茶セットを使ってもいい?」

「もちろんだめよ! バラのつぼみのお茶セットですって! 次には何を言い出すの? あれは牧師さんか教会扶助会の人たちにしか使わないと、分かっているでしょう。古い茶色のお茶セットを出しなさい。でも、小さな黄色い壺のサクランボの砂糖煮を開けてもいいわ。いずれ使う時期だったのよ――発酵し始めているんじゃないかと思うの。それからフルーツケーキを切って、クッキーとジンジャースナップも出していいわ。」

「私がテーブルの上座に座って、お茶を注ぐところを想像できるわ」とアンは恍惚として目を閉じた。「それでダイアナに、砂糖は入れる? って聞くの! 彼女が入れないのは知っているけれど、もちろん知らないみたいに聞くわ。それからフルーツケーキをもう一切れ、砂糖煮をもう一皿と勧めるの。ああ、マリラ、考えるだけで、なんてすばらしい気分でしょう。ダイアナが来たら、帽子を脱ぐために客間へ案内してもいい? それから居間へ入って座るの?」

「いいえ。あなたとお客には居間で十分よ。でも、この前の教会の集まりで残ったラズベリーのコーディアルが、半分ほど瓶に入っているの。居間の戸棚の二段目にあるわ。よければ午後のあいだに、ダイアナとそれを飲んで、クッキーを一枚食べなさい。マシューはジャガイモを船へ運んでいるから、お茶には遅れて帰るでしょうしね。」

アンはダイアナをお茶に招くため、木の精の泉を過ぎ、くぼ地を下り、トウヒの小道を登って、果樹園の丘へ飛んでいった。

その結果、マリラがカーモディへ出かけたすぐあと、ダイアナは二番目によいドレスを着て、まさにお茶に招かれた女の子らしい姿でやって来た。普段ならノックもせず台所へ走り込んでくるのだが、今はきちんと表玄関を叩いた。そして二番目によい服を着たアンが、同じくきちんと扉を開けると、二人の少女は、まるで初対面であるかのように厳粛に握手をした。

この不自然な厳粛さは、ダイアナが帽子を脱ぐために東の切妻部屋へ案内され、そのあと居間で、つま先をそろえた姿勢で十分間座っているまで続いた。

「お母様はお元気?」とアンは、まるでその朝、バリー夫人がとても元気にリンゴを摘んでいるのを見ていなかったかのように、丁寧に尋ねた。

「とても元気よ、ありがとう。カスバートさんは今日の午後、ジャガイモを百合の浜へ運んでいらっしゃるのよね?」とダイアナは言った。その朝、彼女はマシューの荷車に乗ってハーモン・アンドルーズ氏の家まで行ったのだった。

「ええ。今年のジャガイモはとてもよくできたの。あなたのお父様の作物もよいといいけれど。」

「まあまあよ、ありがとう。リンゴはもうたくさん摘んだの?」

「ああ、とてもたくさん」と、アンは威厳を忘れて勢いよく立ち上がった。「果樹園へ行って、レッド・スイーティングを何個か取りましょう、ダイアナ。マリラが、木に残っているものは全部食べていいって言ったの。マリラはとても気前のよい人よ。お茶にはフルーツケーキとサクランボの砂糖煮を出してよいと言った。でもお客に、何を食べさせるかを言うのは行儀がよくないから、飲み物は何を出してよいと言われたかは言わないわ。ただ、RとCで始まる、明るい赤い色の飲み物よ。私は明るい赤の飲み物が大好き。ほかの色のものより二倍おいしいでしょう?」

大きく広がった枝が実の重みで地面まで垂れ下がる果樹園は、とても楽しかった。少女たちは午後の大半をそこで過ごした。霜がまだ緑を奪っていない草の隅に座り、柔らかな秋の日差しが温かくとどまるなか、リンゴを食べ、できるかぎり熱心に話し続けた。

ダイアナには、学校で起きたことをアンに話すことがたくさんあった。ガーティー・パイと一緒に座らされて、ひどく嫌だったこと。ガーティーはいつも鉛筆をきいきい鳴らし、それを聞くとダイアナの血が凍るような気がしたこと。ルビー・ギリスは、小川のそばの老メアリー・ジョーからもらった魔法の小石を使って、いぼを全部消してしまったこと。新月のとき、その石でいぼをこすり、それから左肩越しに石を投げ捨てれば、いぼはみんな消えるのだという。

チャーリー・スローンの名前がエム・ホワイトの名前と一緒にポーチの壁に書かれ、エム・ホワイトがものすごく怒っていること。サム・ボウルターが授業中にフィリップス先生へ口答えをして、先生に鞭で打たれ、サムの父親が学校へ来て、もう一度自分の子に手を出してみろとフィリップス先生へ言ったこと。

マティー・アンドルーズは新しい赤い頭巾と、房のついた青い肩掛けを持っていて、そのことで見せびらかす態度が吐き気がするほどだったこと。リジー・ライトは、メイミー・ウィルソンの姉がリジー・ライトの姉の恋人を奪ったので、メイミー・ウィルソンと口を利かないこと。皆がアンをとても恋しがり、また学校へ来てほしいと願っていること。そしてギルバート・ブライス――

だがアンは、ギルバート・ブライスのことなど聞きたくなかった。急いで立ち上がり、ラズベリーのコーディアルを飲みに入ろうと言った。

アンは居間の食品戸棚の二段目を見たが、ラズベリーのコーディアルの瓶はなかった。探すと、ずっと奥の上段にあった。アンは盆に載せ、コップとともにテーブルへ置いた。

「さあ、どうぞご自由に飲んで、ダイアナ」と丁寧に言った。「私は今は飲まないことにするわ。あんなにリンゴを食べたあとだから、結局あまり飲みたくないの。」

ダイアナはコップいっぱいに注ぎ、その鮮やかな赤を感心して眺めてから、上品にひと口飲んだ。

「とてもおいしいラズベリーのコーディアルね、アン」と言った。「ラズベリーのコーディアルが、こんなにおいしいなんて知らなかった。」

「気に入ってくれて本当にうれしい。欲しいだけ飲んでね。私は火を少したいてくる。家を預かっていると、心配しなければならないことがたくさんあるでしょう?」

アンが台所から戻ってくると、ダイアナは二杯目のコーディアルを飲んでいた。そしてアンに勧められると、三杯目を飲むことにも、とくに異議を唱えなかった。コップはたっぷり入るもので、ラズベリーのコーディアルは確かにとてもおいしかった。

「今まで飲んだなかで、いちばんおいしいわ」とダイアナは言った。「リンド夫人のより、ずっとおいしい。あの人は自分のをあんなに自慢するけれど。少しもあの味じゃないもの。」

「マリラのラズベリーのコーディアルのほうが、たぶんリンド夫人のよりずっとおいしいと思うわ」とアンは忠実に言った。「マリラは有名なお料理上手だもの。私にも料理を教えようとしているけれど、保証するわ、ダイアナ、とても骨が折れる仕事よ。料理には想像力を働かせる余地がほとんどないの。ただ決まりどおりにしなければならないのよ。この前ケーキを作ったときなんて、小麦粉を入れるのを忘れたの。ダイアナ、あなたと私の、とてもすてきな話を考えていたのよ。あなたが天然痘にかかってひどく病気になり、皆が見捨てたけれど、私は勇敢にあなたの枕元へ行き、看病して命を助けるの。そして今度は私が天然痘にかかって死んで、墓地のあのポプラの木の下に埋められる。あなたは私の墓のそばにバラの木を植え、涙で水をやる。そして、自分のために命を犠牲にした若いころの友達を、決して、決して忘れないの。ああ、とても哀れなお話だったわ、ダイアナ。ケーキを混ぜながら、涙が頬を雨のように流れたの。でも小麦粉を忘れたから、ケーキは惨めな失敗になった。ケーキには小麦粉が絶対に必要なの、分かるでしょう。マリラはとても怒ったわ。怒るのももっともよ。私はあの人にとって大変な子なの。先週は、プディングのソースのことで、ひどく恥をかかせたの。火曜日の昼食にプラムプディングを食べたのだけれど、プディングが半分と、ソースが水差しいっぱい残ったの。マリラは、もう一度昼食に出せるだけあるから、食品庫の棚に置いてふたをしなさいと言ったの。私は、できるだけ強くふたをするつもりだったのよ、ダイアナ。でも運んでいるとき、自分は尼僧だと想像していたの――もちろん私はプロテスタントだけれど、カトリックの尼僧になって、傷ついた心を修道院の孤独のなかへ葬るため、誓願を立てるところだと想像していたの。だからプディングのソースにふたをすることを、すっかり忘れた。翌朝思い出して、食品庫へ走ったの。ダイアナ、プディングのソースにネズミが溺れているのを見つけたときの、私の恐怖を想像できる? スプーンでネズミをすくい出して庭へ投げ、スプーンは三度水を替えて洗ったの。マリラは乳しぼりに出ていたから、帰ってきたらソースを豚にやってよいか聞こうと思っていた。でもマリラが帰ってきたとき、私は霜の妖精になって森を通り、木々を望むままに赤や黄色に染めているところを想像していたの。だから、プディングのソースのことをまた忘れて、マリラは私をリンゴ摘みに出したの。すると、スペンサーベールのチェスター・ロス夫妻が、その朝ここへいらしたの。二人はとてもおしゃれな人でしょう、とくにチェスター・ロス夫人は。マリラが私を昼食に呼びに来たときには、昼食は全部できていて、皆テーブルについていた。私はできるだけ礼儀正しく、上品にしようとしたの。きれいではなくても、淑女らしい女の子だとチェスター・ロス夫人に思ってほしかったのよ。すべて順調だった――片手にプラムプディング、もう片手に温め直したプディングソースの水差しを持って、マリラが入ってくるまでは。ダイアナ、あれは恐ろしい瞬間だったわ。全部思い出して、席から立ち上がると、大声で叫んだの。『マリラ、そのプディングソースを使ってはいけないわ。ネズミが溺れていたの。前に言うのを忘れたの』って。ああ、ダイアナ、百歳まで生きても、あの恐ろしい瞬間は決して忘れないわ。チェスター・ロス夫人は、ただ私を見ただけだった。それで私は恥ずかしさのあまり、床の下へ沈んでしまいたかった。あの人は完璧な主婦だから、私たちのことを何と思ったでしょう。マリラは火のように赤くなったけれど、そのときは一言も言わなかった。ただソースとプディングを持ち出し、イチゴの砂糖煮を持ってきたの。私にも勧めてくれたけれど、一口も飲み込めなかった。頭に火の炭を積まれるみたいだった。チェスター・ロス夫人が帰ってから、マリラは私をひどく叱ったわ。まあ、ダイアナ、どうしたの?」

ダイアナはひどく不安定に立ち上がった。それからまた座り、両手を頭に当てた。

「わ、私、すごく気分が悪いの」と、少し舌の回らない声で言った。「わ、私は――すぐに帰らなくちゃ。」

「お茶を食べずに帰るなんて、考えてもいけないわ」とアンは困って叫んだ。「すぐに用意する――今この瞬間にお茶を入れてくるわ。」

「帰らなくちゃ」とダイアナは、ぼんやりしながらも決意して繰り返した。

「せめておやつを持っていって」とアンは懇願した。「フルーツケーキを少しと、サクランボの砂糖煮をあげるわ。しばらくソファに横になっていれば、よくなるわ。どこが悪いの?」

「帰らなくちゃ」とダイアナは言った。それ以外は何も言わなかった。アンがどれほど頼んでも無駄だった。

「お茶を食べずに帰るお客なんて、聞いたことがないわ」とアンは悲しんだ。「ああ、ダイアナ、もしかして本当に天然痘になりかけているのかしら? もしそうなら、私が看病に行くわ、頼りにしていいわ。決して見捨てない。でも、せめてお茶のあとまでいてくれたらいいのに。どこが悪いの?」

「すごく目が回るの」とダイアナは言った。

実際、彼女はひどくふらつきながら歩いた。アンは失望の涙を目にため、ダイアナの帽子を取って、バリー家の庭の柵まで一緒に行った。それからグリーン・ゲイブルズへ帰るまで、ずっと泣いた。残ったラズベリーのコーディアルを悲しげに食品庫へ戻し、マシューとジェリーのためにお茶を用意した。その仕事からは、すっかり楽しみが消えていた。

翌日は日曜日で、夜明けから日暮れまで土砂降りの雨が降ったため、アンはグリーン・ゲイブルズから一歩も外へ出なかった。月曜日の午後、マリラは用事を頼んで、アンをリンド夫人のところへ行かせた。すると、ほんの短い時間でアンは涙を頬に流しながら、小道を飛ぶように帰ってきた。台所へ駆け込み、苦悶のあまりソファへうつぶせに倒れた。

「今度は何が悪くなったの、アン?」とマリラは疑いと困惑のなかで尋ねた。「またリンド夫人に生意気なことを言ったんじゃないでしょうね。」

アンは答えず、さらに涙を流し、激しくすすり泣くだけだった。

「アン・シャーリー、私が質問したら答えてほしいのよ。今すぐ座り直して、何を泣いているのか言いなさい。」

アンは起き上がった。悲劇そのものだった。

「リンド夫人が今日、バリー夫人のところへ行ったの。それでバリー夫人は、とてもひどい状態だったの」と泣き叫んだ。「私が土曜日にダイアナを酔わせて、恥ずかしい状態で帰したと言っているの。それに、私は完全に悪くて意地の悪い女の子で、もう二度とダイアナを私と遊ばせないと言っているの。ああ、マリラ、私は悲しみに打ちのめされているわ。」

マリラは呆然と見つめた。

「ダイアナを酔わせたですって!」と、やっと声が出るとき言った。「アン、あなたかバリー夫人のどちらかが気が変なの? いったい何を飲ませたの?」

「ラズベリーのコーディアル以外、何も」とアンはすすり泣いた。「ラズベリーのコーディアルで人が酔うなんて、思わなかったの、マリラ――ダイアナが飲んだみたいに、大きなコップで三杯飲んだとしても。ああ、まるで――トーマス夫人のご主人みたいに聞こえる! でも、酔わせるつもりなんてなかったの。」

「酔うなんて、ばかばかしい!」とマリラは言い、居間の食品庫へ歩いていった。そこには、彼女がすぐ見分けた瓶があった。アヴォンリーでは有名な、三年ものの自家製スグリ酒の瓶だった。ただしバリー夫人をはじめとする、より厳格な人々は、その酒を強く非難していた。そして同時にマリラは、ラズベリーのコーディアルを、アンに言ったように食品庫ではなく地下室へしまったことを思い出した。

彼女はワインの瓶を手に、台所へ戻った。顔は自分でも抑えられないほど引きつっていた。

「アン、あなたには本当に、面倒を起こす天才があるわね。ラズベリーのコーディアルのかわりに、ダイアナへスグリ酒をあげたのよ。自分で違いが分からなかったの?」

「味見はしなかったわ」とアンは言った。「コーディアルだと思ったの。とても――とても――もてなしたかったのよ。ダイアナはすごく具合が悪くなって、帰らなくちゃならなかった。バリー夫人はリンド夫人に、ダイアナは完全に酔っぱらっていたと言ったの。お母さんがどうしたのか尋ねたとき、ただ馬鹿みたいに笑って、眠り込んで、何時間も眠ったの。お母さんは息の匂いをかいで、酔っていると分かったの。昨日一日じゅう、ものすごく頭が痛かったの。バリー夫人はとても怒っている。私がわざとしたのでないとは、絶対に信じないわ。」

「何であろうと、あんなものを三杯も飲むほど欲張ったダイアナを罰すればいいのよ」とマリラはそっけなく言った。「あの大きなコップで三杯も飲めば、ただのコーディアルでも気分が悪くなるわ。まあ、この話は、私がスグリ酒を作ることをあれほど非難する人たちには、格好の口実になるでしょうね。牧師さんが賛成していないと知ってから三年間、一度も作っていないのに。あの瓶は病気のときのために取っておいただけよ。ほらほら、泣かないで。起きてしまったことは残念だけれど、あなたが悪いとは思わないわ。」

「泣かなくちゃならないわ」とアンは言った。「心が壊れているもの。星々までが、定められた軌道で私に逆らっているのよ、マリラ。ダイアナと私は永遠に引き裂かれた。ああ、マリラ、最初に友情の誓いを立てたとき、こんなことになるなんて少しも思わなかった。」

「ばかなことを言わないの、アン。あなたが悪くないと分かれば、バリー夫人も考え直すわ。きっと、つまらない冗談か何かのために、わざとしたと思っているのよ。今晩、上がっていって、事情を話すといいわ。」

「傷ついたダイアナのお母さんに会うと思うと、勇気がくじけるわ」とアンはため息をついた。「マリラに行ってほしい。あなたは私よりずっと威厳があるもの。私より早く、あなたのお話なら聞いてくださるかもしれない。」

「分かった、私が行くわ」とマリラは、そのほうが賢明な手段だろうと考えて言った。「もう泣かないで、アン。大丈夫よ。」

しかしマリラが果樹園の丘から戻るころには、大丈夫だという考えは変わっていた。アンは帰りを待ち構えていて、ポーチの戸口へ飛んでいった。

「まあ、マリラ、顔を見れば、無駄だったと分かるわ」と悲しげに言った。「バリー夫人は私を許してくださらないのね?」

「バリー夫人ですって!」とマリラはぴしゃりと言った。「今まで会ったなかで、あれほど理屈の通じない女の人はいないわ。全部誤解で、あなたに非はないと話したのに、まったく信じなかった。それに私のスグリ酒のことを、これでもかと責め立てた。いつも、誰にも少しも影響しないと言っていたくせにって。だから私は、スグリ酒というものは大きなコップで三杯も飲むためのものではないし、もし私の子がそんなに欲張りなら、しっかりお尻を叩いて酔いを覚まさせると言ってやったわ。」

マリラはひどく心を乱して台所へ入っていき、ポーチには、非常に取り乱した小さな魂を残した。やがてアンは帽子もかぶらず、冷たい秋の夕暮れへ出た。枯れたクローバー畑をまっすぐ下り、丸太橋を渡り、トウヒ林を通って登った。西の森の上には、低く淡い小さな月がかかっていた。

バリー夫人が、控えめなノックに応じて扉を開けると、玄関には青白い唇と切実な目をした願い人が立っていた。

夫人の顔は固くなった。バリー夫人は強い偏見と嫌悪を抱く女性で、その怒りは、克服するのがもっとも難しい、冷たく陰鬱な種類のものだった。公平に言えば、アンが計画的な悪意からダイアナを酔わせたと、本気で信じていた。そしてそんな子と親しくつき合うことの悪影響から、かわいい娘を守りたいと、正直に思っていたのだ。

「何の用?」と硬い声で言った。

アンは両手を組んだ。

「まあ、バリー夫人、どうか許してください。私はダイアナを――酔わせるつもりなどありませんでした。そんなこと、できるはずがあるでしょうか。考えてみてください。親切な人に引き取られた、かわいそうな孤児の女の子で、世界じゅうに親友が一人しかいなかったとしたら、その親友をわざと酔わせると思います? 私はラズベリーのコーディアルだと思ったの。ラズベリーのコーディアルだと、固く信じていたの。どうか、ダイアナをもう私と遊ばせないなんて言わないでください。そんなことをなさったら、私の人生は悲しみの暗い雲に覆われてしまいます。」

善良なリンド夫人の心なら、たちまち和らげたに違いないこの言葉も、バリー夫人をいっそう苛立たせただけだった。彼女はアンの大げさな言葉や劇的な身振りを怪しみ、この子は自分をからかっているのだと思った。そこで冷たく、残酷に言った。

「あなたはダイアナがつき合うのにふさわしい女の子だとは思わない。家へ帰って、きちんとしていなさい。」

アンの唇は震えた。

「お別れを言うために、一度だけダイアナに会わせてくださらない?」と懇願した。

「ダイアナは父親とカーモディへ行ったわ」とバリー夫人は言い、中に入って扉を閉めた。

アンは絶望のなかで平静になり、グリーン・ゲイブルズへ戻った。

「最後の希望も消えたわ」とマリラに言った。「自分でバリー夫人のところへ行ったのに、とても侮辱的に扱われた。マリラ、私はバリー夫人は育ちのよい女性ではないと思う。もうお祈りするしかないけれど、それもあまり役に立たないと思う。だってマリラ、バリー夫人のように頑固な人には、神様御自身でさえ、あまりできることはないと思うの。」

「アン、そんなことを言ってはいけないわ」とマリラはたしなめた。自分のなかに芽生えているのを見つけて困惑している、不敬な笑いの衝動を抑えながら。実際、その夜マシューへ一部始終を話すと、アンの災難を思ってマリラは心から笑った。

だが寝る前に東の切妻部屋へそっと入り、アンが泣き疲れて眠っているのを見ると、マリラの顔には見慣れない優しさが浮かんだ。

「かわいそうな子」と呟き、子供の涙の跡が残る顔から、ほどけた髪の房を持ち上げた。それから身をかがめ、枕の上の赤い頬に口づけた。


第十七章 人生への新たな関心

翌日の午後、台所の窓辺でパッチワークを縫っていたアンは、ふと外を見て、木の精の泉のそばにダイアナが立ち、謎めかしく手招きしているのを見た。たちまちアンは家を飛び出し、驚きと希望を表情豊かな目に戦わせながら、くぼ地へ駆け下りた。だがダイアナの沈んだ顔を見ると、希望は消えた。

「お母様は、まだ許してくださらないの?」と息をのんで聞いた。

ダイアナは悲しげに頭を振った。

「ええ。ああ、アン、もう二度とあなたと遊んではいけないって言うの。私は泣いて泣いて、あなたのせいではないと話したけれど、無駄だった。ここへ下りてきて、お別れを言うことだけでも許してもらうのに、ものすごく苦労したのよ。十分だけしかいてはいけないって。時計で時間を測っているの。」

「永遠のお別れを言うには、十分なんて長くないわ」とアンは涙声で言った。「ああ、ダイアナ、どれほど大切な友達に愛されるようになっても、若いころの友達である私を決して忘れないと、忠実に約束してくれる?」

「もちろんよ」とダイアナはすすり泣いた。「もう親友なんか作らない――作りたくないわ。あなたほど、誰かを愛することなんてできないもの。」

「まあ、ダイアナ」とアンは両手を組んで叫んだ。「あなた、私を愛しているの?。」

「ええ、もちろん。知らなかったの?」

「いいえ。」

アンは大きく息を吸った。「私のことを好きだとは、もちろん思っていた。でも、愛しているなんて、決して期待していなかった。ダイアナ、誰も私を愛せないと思っていたの。物心がついてから、誰にも愛されたことがなかったもの。ああ、これはすばらしいわ! あなたと引き裂かれた道の暗闇を、これからずっと照らす一条の光よ、ダイアナ。ああ、もう一度言って。」

「心からあなたを愛しているわ、アン」とダイアナはしっかり言った。「そしてこれからもずっと愛するわ。絶対にそうよ。」

「私も、いつもあなたを愛するわ、ダイアナ」とアンは厳かに言い、手を差し出した。「これから先の年月、あなたの思い出は、あの最後に一緒に読んだお話にあるように、私の孤独な人生の上で星のように輝くの。ダイアナ、別れのしるしに、その漆黒の髪を一房、永遠の宝としてくれる?」

「切るものを持っているの?」と、アンの心打つ言葉にまた流れ出した涙を拭い、現実へ戻りながらダイアナは尋ねた。

「幸い、エプロンのポケットにパッチワークのはさみがあるわ」とアンは言った。そして厳かにダイアナの巻き毛を一房切った。「さようなら、愛する友よ。これからは隣り合って生きても、私たちは見知らぬ者同士でいなければならない。でも私の心は、いつまでもあなたに忠実よ。」

アンはダイアナの姿が見えなくなるまで立って見送り、ダイアナが振り返るたびに、悲しげに手を振った。それから家へ戻った。このロマンティックな別れによって、そのときばかりは少なからず慰められていた。

「すべて終わったわ」とマリラに報告した。「もう二度と友達はできない。今までより本当に悪い状態よ。もうケイティ・モーリスもヴィオレッタもいないのだから。いたとしても同じじゃないわ。どういうわけか、実際の友達を持ったあとでは、小さな夢の少女たちでは満足できないの。ダイアナと私は、泉のそばでとても感動的なお別れをしたわ。それは永遠に私の記憶のなかで神聖なものよ。思いつくかぎり悲しい言葉を使って、『汝』や『そなた』を使ったの。『あなた』より『汝』や『そなた』のほうが、ずっとロマンティックに思えるの。ダイアナは髪を一房くれたから、小さな袋に縫い込んで、一生首にかけているわ。私と一緒に埋められるように、どうか気をつけてね。私はあまり長く生きられないと思うから。冷たく死んだ私が目の前に横たわっているのを見たら、バリー夫人も自分のしたことを後悔して、ダイアナを私のお葬式へ来させてくださるかもしれない。」

「話せるかぎり、悲しみで死ぬ心配はあまりないと思うわ、アン」とマリラは同情なく言った。

次の月曜日、アンは腕と腰に本のかごを抱え、決意で唇を一直線に結んで、部屋から下りてきたので、マリラを驚かせた。

「学校へ戻るわ」と宣言した。「友達を無慈悲に引き裂かれた今、人生に残されたものはそれだけよ。学校なら、ダイアナを見て、過ぎ去った日々を思いながら物思いに沈めるもの。」

「物思いに沈むより、課題と計算に心を向けなさい」とマリラは、この展開を喜んでいることを隠して言った。「学校へ戻るなら、人の頭の上で石板を割るだの、あんな騒ぎを起こすだのという話は、もう聞かないことを願うわ。きちんと振る舞って、先生のおっしゃることに従いなさい。」

「模範生になろうと努めるわ」とアンは沈んだ声で同意した。「あまり楽しくはないと思う。フィリップス先生は、ミニー・アンドルーズが模範生だと言ったけれど、あの子には想像力も生気も少しもないもの。ただ鈍くてのろくて、楽しい時間を過ごしているようには、決して見えない。でも私はとても落ち込んでいるから、今なら簡単にできるかもしれない。大通りを回って行くわ。一人で白樺の小道を通るなんて、とても耐えられない。通ったら、苦い涙を流してしまうでしょう。」

アンは学校で両腕を広げるように歓迎された。遊びでは彼女の想像力が、歌では彼女の声が、昼休みに本を声に出して読むときには彼女の演技力が、ひどく恋しがられていた。

新約聖書を読む時間に、ルビー・ギリスは彼女のところへ青いプラムを三つこっそり渡した。エラ・メイ・マクファーソンは、花のカタログの表紙から切り取った大きな黄色のパンジーをくれた――アヴォンリー学校では非常に珍重された、机の飾りの一種だった。ソフィア・スローンは、エプロンの飾りにぴったりの、完全に優雅な新しい編みレースの模様を教えてあげると申し出た。ケイティ・ボウルターは、石板を洗う水を入れておく香水瓶をくれた。

そしてジュリア・ベルは、縁を波形に切った淡いピンクの紙に、次の詩を丁寧に書き写してくれた。

「アンへ

 たそがれが幕を下ろし
 星でそれを留めるとき
 遠くへさすらい行こうとも
 友がいることを忘れないで。」

「大切にされるのって、とてもすてきね」と、その晩アンは恍惚としてマリラにため息をついた。

彼女を「大切にした」のは、女の子たちだけではなかった。昼休みのあと、アンは自分の席へ行った――フィリップス先生から、模範生ミニー・アンドルーズと座るよう言われていた――すると机の上には、大きくてみずみずしい「イチゴリンゴ」が置いてあった。

アンは一口かじろうと、すぐ手に取った。だがアヴォンリーでイチゴリンゴが育つ場所は、輝く湖水の反対側にある古いブライス家の果樹園だけだと思い出した。アンは、そのリンゴが真っ赤に焼けた石炭であるかのように落とし、わざと見せつけるようにハンカチで指を拭いた。

リンゴは翌朝まで机の上に手つかずで置かれていた。学校の掃除と火起こしをする小さなティモシー・アンドルーズが、自分の役得の一つとして手に入れた。

だがチャーリー・スローンが、昼休みのあと彼女へ届けた石板用の鉛筆は、もっと好意的に受け取られた。普通の鉛筆が一セントなのに二セントもした、赤と黄色の縞紙で華やかに飾られたものだった。アンは優雅に受け取り、贈り主へ微笑みを報いた。その微笑みは、夢中の少年をたちまち歓喜の第七天へ上らせた。彼は書き取りで恐ろしいほどの間違いをしたので、フィリップス先生は放課後に残し、書き直させた。

だが、

シーザーの行列からブルータスの胸像が失われれば
かえってローマの最良の子を、より強く思い出させるように、

ガーティー・パイと座るダイアナ・バリーから、何の贈り物も、認める
しるしもないことが、アンの小さな勝利を苦くした。

「ダイアナ、一度くらい私に微笑んでくれてもよかったと思うわ」と、その晩アンはマリラに悲しんだ。だが翌朝、恐ろしいほど複雑にねじられ、折り畳まれた手紙と、小さな包みがアンへ渡された。

「親愛なるアンへ」と、その手紙にはあった。「お母さんが、あなたと遊んでも
いけないし、学校でも話してはいけないと言うの。私のせいではないから、怒らないでね。
私は今までどおりあなたを愛しているわ。秘密を何でも話す相手がいなくて、とても
寂しいし、ガーティー・パイは少しも好きじゃないわ。赤い薄紙で新しいしおりを
一つ作ったの。今とても流行していて、学校では三人の女の子しか作り方を知らないの。
それを見るときには、思い出してね。」

あなたの本当の友達 ダイアナ・バリー。

アンは手紙を読み、しおりに口づけ、すぐに返事を書いて学校の反対側へ送った。

私だけの愛するダイアナへ――  
  お母様に従わなくてはならないからといって、もちろん私はあなたに怒っていないわ。
私たちの魂は語り合えるもの。あなたのすてきな贈り物は、永遠に大切にするわ。
ミニー・アンドルーズはとてもよい女の子よ――想像力はないけれど――でも、
ダイアナの親友だったあとでは、私はミニーの親友にはなれない。綴りはまだあまり
上手でなくて、たくさん間違いがあるかもしれないけれど、どうか許してね。ずいぶん
じょうずになったのよ。

死が私たちを分かつまで、あなたの アン、またはコーデリア・シャーリー。

追伸 今夜はあなたのお手紙を枕の下に入れて眠るわ。

A. または C.S.

マリラは、アンがまた学校へ行き始めたので、さらに面倒が起こると悲観的に予想していた。しかし何も起こらなかった。おそらくアンはミニー・アンドルーズから、いくらか「模範生」の精神を受け取ったのだろう。少なくとも、それ以来フィリップス先生とは非常にうまくいった。

アンは勉強に心身を投じ、どの科目でもギルバート・ブライスに負けないと決意した。二人の競争関係は、すぐに明らかになった。ギルバートの側では完全に気立てのよい競争だった。しかしアンについても同じことが言えるかは、非常に疑わしい。アンには、恨みを抱き続けるという、褒められない粘り強さが確かにあったからだ。愛するときと同じほど、憎むときにも激しかった。

アンは、学校の勉強でギルバートと張り合うつもりだとは、決して認めなかった。認めることは、彼の存在を認めることになるからだ。アンは一貫してギルバートを無視していた。それでも競争は存在し、栄誉は二人のあいだを行き来した。

あるときはギルバートが綴りの組で一番だった。次にはアンが長い赤毛のお下げを振り、彼を綴りで負かした。ある朝、ギルバートが計算を全部正しく解き、名誉名簿として黒板に名前を書かれた。翌朝には、前の晩じゅう小数と激しく格闘したアンが一番になる。

恐ろしいある日には二人が同点になり、名前を並べて書かれた。それは「ご注目」と同じくらい悪いことだった。アンの恥ずかしさは、ギルバートの満足と同じほど明らかだった。

月末ごとに筆記試験が行われるとき、緊張は恐ろしいものだった。最初の月は、ギルバートが三点差で勝った。二か月目には、アンが五点差で彼を負かした。しかしギルバートが学校中の前で、心から彼女を祝福したため、勝利は台なしになった。彼が敗北の痛みを感じてくれたほうが、アンにはずっと甘美だったに違いない。

フィリップス先生は、あまりよい教師ではなかったかもしれない。しかしアンのように、頑として学ぼうとする生徒なら、どんな教師のもとでも進歩を免れなかっただろう。学期末までにアンとギルバートは、ともに第五組へ進級し、「上級科目」の初歩を学び始めることを許された――つまりラテン語、幾何学、フランス語、代数のことだった。

幾何学でアンはワーテルローを迎えた。

「完璧にひどいものよ、マリラ」とうめいた。「どうしても、何が何だか分かるようにはならないと思う。想像力を働かせる余地なんて、少しもないの。フィリップス先生は、私ほど幾何学でひどい劣等生は見たことがないって言うわ。それにギル――つまり、ほかの子たちはとても得意なの。ものすごく恥ずかしいわ、マリラ。

「ダイアナでさえ、私よりうまくやっている。でもダイアナに負けるのは気にしない。今は見知らぬ者同士として会っても、私はあの子を消えることのない愛で愛しているもの。あの子のことを考えると、とても悲しくなることもある。でも本当に、マリラ、こんなに興味深い世界では、いつまでも悲しんでいることなんてできないでしょう?」

第十八章 アン、救援に向かう

大きな出来事はすべて、小さな出来事と結びついている。一見したところ、あるカナダ首相がプリンス・エドワード島を政治遊説の旅程に加える決断と、グリーン・ゲイブルズにいる小さなアン・シャーリーの運命とは、何の関係もなさそうに思える。だが、実際には大いに関係があった。

首相がやって来たのは一月のことだった。シャーロットタウンで開かれる大規模な民衆集会で、忠実な支持者たちと、出席を希望する非支持者たちに向けて演説するためである。アヴォンリーの住民の大半は首相と同じ政党を支持していた。そこで集会の晩には、ほとんどの男たちと、かなりの数の女たちが、三十マイル(約48キロメートル)離れた町へ出かけていった。レイチェル・リンド夫人もその一人だった。レイチェル夫人は筋金入りの政治好きで、自分とは反対の党派の集会とはいえ、自分なしで政治集会が首尾よく進むはずがないと思っていた。そこで町へ出かけ、馬の世話に役立つだろうと夫のトーマスも連れていき、さらにマリラ・カスバートまで同行させた。マリラ自身にも政治へのひそかな関心があったし、生身の首相を見る機会などこれきりかもしれないと思ったので、すぐさま誘いを受けた。そして翌日帰るまで、家の留守をアンとマシューに任せたのである。

こうして、マリラとレイチェル夫人が大集会を心ゆくまで楽しんでいるあいだ、アンとマシューはグリーン・ゲイブルズの明るい台所を二人占めしていた。昔ながらのウォータールー・ストーブには赤々と火が燃え、窓ガラスには青白い霜の結晶が光っていた。マシューはソファで『ファーマーズ・アドヴォケート』を読んだまま居眠りし、アンはテーブルで、断固たる気持ちで勉強していた。もっとも時計棚の上には、ジェーン・アンドルーズがその日貸してくれたばかりの新しい本が置かれており、アンは何度も恋しげな目をそちらへ向けていた。ジェーンによれば、その本は何度でもぞくぞくするほど面白い、という保証つきだった。アンの指先は本を手に取りたくてうずうずしていた。しかし読めば、翌日ギルバート・ブライスを勝たせることになる。アンは時計棚に背を向け、そこには何もないのだと思い込もうとした。

「マシュー、学校に行っていたころ、幾何を習ったことはある?」

「いや、いや、ないな」マシューはびくりとして目を覚ました。

「あったらよかったのに」とアンはため息をついた。「そうしたら、わたしの気持ちにちゃんと同情してくれたでしょうから。習ったことがなければ、ほんとうの意味では同情できないもの。幾何のせいで、わたしの人生全体に暗雲がかかっているのよ。わたし、幾何はとんでもない落第生なの、マシュー。」

「いや、そんなことはあるまいよ」とマシューはなだめた。「おまえは何をやっても大丈夫だろう。先週カーモディのブレアさんの店で、フィリップス先生が言っていたよ。おまえは学校で一番利口な生徒で、めきめき上達しているって。『めきめき上達している』って、それが先生の言葉だった。テディ・フィリップスは大した先生じゃない、なんて言う人もいるが、悪くない先生だと思うよ。」

アンを褒める者なら、マシューには誰でも「悪くない人」だった。

「先生が文字を変えさえしなければ、幾何ももっと進歩するのに」とアンは不満を言った。「命題を暗記していくのに、先生は黒板に書くとき本とは違う文字を使うんですもの。そうすると頭の中がすっかりこんがらがるのよ。先生があんな意地悪なやり方をするのは、ずるいと思わない? いま農業も習っていて、どうして道が赤いのか、ついにわかったの。とても安心したわ。マリラとリンド夫人は、どんなに楽しんでいるかしら。リンド夫人は、オタワの政治のやり方ではカナダは破滅へ向かっている、選挙民への恐ろしい警告だって言っていたわ。女にも投票権があれば、すぐにありがたい改革が見られるのにって。マシューはどちらの党に投票するの?」

「保守党だ」マシューは即答した。保守党に投票することは、マシューの信仰の一部だった。

「それならわたしも保守党よ」とアンはきっぱり言った。「よかった。だってギル――学校の男の子の何人かは自由党支持なんですもの。フィリップス先生も自由党支持だと思うわ。プリッシー・アンドルーズのお父さんがそうだし、ルビー・ギリスが言うには、男の人は求愛中には、宗教では女の子のお母さんに、政治ではお父さんに、いつも意見を合わせなくちゃいけないんですって。本当なの、マシュー?」

「いや、わしにはわからんな。」

「マシューは、求愛したことがある?」

「いや、たぶん、したことはないな」マシューは答えた。生涯を通じて、そんなことを考えたことなど一度もなかったのである。

アンは両手にあごをのせて考え込んだ。

「求愛って、なかなか面白そうだと思わない、マシュー? ルビー・ギリスは大人になったら、たくさんの恋人を引き連れて、みんなを自分に夢中にさせるんですって。でも、わたしには刺激が強すぎると思うわ。正気の人が一人だけいてくれたほうがいい。でもルビー・ギリスはお姉さんがたくさんいるから、そういうことにはとても詳しいのよ。それにリンド夫人は、ギリス家の娘たちは飛ぶようにお嫁に行ったって言っているわ。フィリップス先生はほとんど毎晩、プリッシー・アンドルーズのところへ行くの。勉強を見てあげるためだと言っているけれど、ミランダ・スローンもクイーン学院の勉強をしているでしょう。プリッシーよりずっと頭が悪いから、もっと助けが必要なはずなのに、先生は夜に彼女を教えに行ったりしないのよ。この世には、わたしにはよくわからないことがとてもたくさんあるわ、マシュー。」

「わしにも、全部は理解できないな」マシューは認めた。

「さて、勉強を終えなくちゃ。ジェーンが貸してくれた新しい本は、勉強が終わるまでは絶対に開かないって決めたの。でも、ひどい誘惑だわ、マシュー。背を向けても、そこにあるのがはっきり見えるの。ジェーンは読んで泣きすぎて病気になったんですって。わたし、泣かせてくれる本が大好き。でもあの本は居間へ持っていって、ジャムの戸棚に鍵をかけてしまうわ。そして鍵はマシューに預けるの。勉強が終わるまで、絶対に渡さないでね、マシュー。ひざまずいてお願いしても駄目よ。誘惑に負けるな、なんて言うのは簡単だけれど、鍵が手に入らなければ、ずっと抵抗しやすいもの。それから地下室に降りて、ラセットりんごを取ってこようか、マシュー? ラセットりんご、食べたくない?」

「そうだな、食べてもいいかな」マシューは言った。自分ではラセットりんごを食べたことがなかったが、アンがそれをどれほど好むかは知っていた。

アンが皿いっぱいのラセットりんごを抱えて、得意満面で地下室から現れたちょうどその時、外の凍った板敷きの通路を、駆け飛ぶような足音が響いた。次の瞬間、台所の扉が勢いよく開き、白い顔をして息を切らし、急いで頭にショールを巻いたダイアナ・バリーが飛び込んできた。驚いたアンは、ろうそくも皿も取り落とした。皿、ろうそく、りんごは一緒になって地下室の階段を転げ落ち、翌日マリラが地下で見つけたときには、溶けたろうに埋まっていた。マリラはそれを拾い集め、家が火事にならなかったことを神に感謝した。

「どうしたの、ダイアナ?」アンは叫んだ。「ついにお母さんの気持ちが変わったの?」

「アン、お願い、すぐ来て」ダイアナはおびえた声で頼んだ。「ミニー・メイがとても悪いの――クループなの。若いメアリー・ジョーが言うには――お父さんもお母さんも町へ行っていて、お医者様を呼びに行く人がいないの。ミニー・メイはすごく悪いし、若いメアリー・ジョーはどうしていいかわからないの――ああ、アン、わたし怖い!」

マシューは一言も発せず、帽子と外套を手に取った。ダイアナの脇をすり抜け、暗い庭へ出ていった。

「栗毛の牝馬に馬具をつけて、カーモディまでお医者様を呼びに行ったのよ」と、頭巾と上着を急いで身につけながらアンは言った。「言わなくてもわかるわ。マシューとわたしは魂の友だから、言葉がなくても考えていることが読めるの。」

「カーモディにお医者様はいないと思うわ」ダイアナは泣きじゃくった。「ブレア先生は町へ行ったと聞いたし、スペンサー先生も行ってしまったと思うの。若いメアリー・ジョーはクループの子を見たことがないし、リンド夫人も留守なの。ああ、アン!」

「泣かないで、ダイ」とアンは明るく言った。「クループの治し方なら、わたし、ちゃんと知っているわ。ハモンド夫人が双子を三組も産んだこと、忘れたの? 三組の双子の世話をすれば、自然に経験がたくさん積めるものよ。あの子たちはいつもクループになっていたの。吐根シロップの瓶を取ってくるまで待っていて――あなたの家にはないかもしれないわ。さあ、行きましょう。」

二人の小さな少女は手を取り合って外へ出て、恋人たちの小径を抜け、その向こうの雪の固い野原を急いだ。近道の森は雪が深すぎて通れなかったのだ。アンはミニー・メイを心から気の毒に思っていたが、この状況のロマンチックさと、再び魂の友とそのロマンスを共有できる喜びを、まったく感じずにはいられなかった。

夜は晴れ、鋭く冷え込んでいた。影は黒檀のように濃く、雪の斜面は銀のように光っていた。静かな野原の上には大きな星が輝き、ところどころに、雪を枝にまぶした尖ったモミの木が立ち、風がそのあいだを笛のように吹き抜けていた。長く疎遠になっていた親友とともに、こんな神秘と美しさのなかを滑るように進むのは、実に素晴らしいことだとアンは思った。

三歳のミニー・メイは、本当にひどく具合が悪かった。熱にうかされて落ち着かず、台所のソファに横たわっていた。かすれた呼吸音は家じゅうに聞こえた。バリー夫人が留守中、子供たちの世話をさせるため雇っていた若いメアリー・ジョーは、川辺から来た、ふくよかで幅広い顔のフランス系の娘だったが、途方に暮れておろおろするばかりで、何をすべきか考えることも、考えつけば実行することもできなかった。

アンは素早く、手際よく動き始めた。

「ミニー・メイは間違いなくクループよ。かなり悪いけれど、もっと悪い子も見たことがあるわ。まずお湯をたくさん沸かさなければ。まあ、ダイアナ、やかんには一杯分くらいしか入っていないじゃない! ほら、いっぱいにしたわ。メアリー・ジョー、ストーブに薪を入れてちょうだい。気を悪くしないでほしいけれど、想像力が少しでもあれば、もっと早くこれに気づいたでしょうに。さあ、ミニー・メイの服を脱がせて寝かせるから、ダイアナは柔らかいフランネルの布を探して。まず吐根シロップを飲ませるの。」

ミニー・メイは吐根シロップを喜んでは飲まなかったが、アンも双子三組を育ててきたわけではない。長く不安な夜のあいだ、二人の少女は苦しむミニー・メイを根気よく看病した。吐根シロップは一度どころか何度も飲まされた。若いメアリー・ジョーは、できる限りのことをしようと誠実に努め、クループの赤ん坊がいる病院一軒分にも足りるほどの湯を沸かし、火を勢いよく燃やし続けた。

マシューがお医者を連れて戻ったのは午前三時だった。スペンサーベールまで行かなければ医者が見つからなかったのだ。しかし、切迫した危機はすでに去っていた。ミニー・メイはずっとよくなり、ぐっすり眠っていた。

「もう絶望してしまいそうでした」とアンは説明した。「どんどん悪くなって、ハモンド家の双子たちよりも、最後の組の双子よりも悪くなったんです。窒息して死んでしまうのではないかと思いました。あの瓶にあった吐根シロップを一滴残らず飲ませて、最後の一匙を飲ませたとき、自分に向かって言ったんです――ダイアナや若いメアリー・ジョーには言いませんでした。あの子たちをこれ以上心配させたくなかったから。でも気持ちを落ち着けるために、自分には言わずにいられませんでした。『これが最後のかすかな望み。でも、むだかもしれない』って。でも三分ほどすると痰を吐いて、すぐによくなり始めたんです。先生、どんなに安心したか、想像してください。言葉では表せません。言葉では表せないこともあるでしょう。」

「ええ、わかります」医者はうなずいた。そして、言葉にできない何かをアンについて考えているような目で彼女を見た。しかし後になって、その考えをバリー夫妻に語った。

「カスバート家にいるあの赤毛の小娘は、まったく大したものです。あの子が赤ん坊の命を救ったんですよ。わたしが着くまで待っていたら手遅れでした。あの年齢の子供とは思えないほど、見事な手際と落ち着きを持っている。あの子が症状を説明しているときの目ほど、印象的なものを見たことがありません。」

アンは、白く霜に包まれた素晴らしい冬の朝、家へ帰っていった。寝不足で目は重かったが、長い白い野原を横切り、恋人たちの小径のカエデがつくる、きらめく妖精のアーチの下を歩きながら、マシューに飽きることなく話し続けた。

「ああ、マシュー、なんて素晴らしい朝でしょう! 世界が、神様がご自分の楽しみのために、いま思いついたばかりのものみたいに見えない? あの木々、息を吹きかけたら消えてしまいそう――ふうっ! 白い霜のある世界に住んでいて、ほんとうによかったと思うわ。マシューもそうでしょう? それにハモンド夫人が結局、双子を三組産んでくれてよかった。そうでなければミニー・メイをどうしたらいいかわからなかったかもしれないもの。双子を産むハモンド夫人に腹を立てたこと、ほんとうに悪かったと思う。でも、ああ、マシュー、眠くてたまらないわ。学校には行けない。目を開けていられないし、ひどく鈍くなってしまうもの。でも休むのはいや。ギル――ほかの子たちが首席になってしまうでしょうし、いったん抜かれると、また上がるのはとても大変なの――もちろん、難しいほど、上がれたときの満足も大きいのでしょうけれど、そうじゃない?」

「大丈夫、きっとうまくやれるさ」とマシューは、白い小さな顔と目の下の濃い隈を見ながら言った。「すぐ寝て、ぐっすり眠るんだ。仕事はわしがする。」

そこでアンは寝床に入り、あまりにも長く深く眠ったので、目を覚まして台所へ下りたときには、白と薔薇色に染まった冬の午後もかなり過ぎていた。すでに帰宅していたマリラは、台所で編み物をしていた。

「ああ、首相を見たの?」アンはすぐ叫んだ。「どんな顔をしていた、マリラ?」

「顔のおかげで首相になったわけではなさそうだったよ」とマリラは言った。「あの鼻ときたら! でも話はうまい。保守党員であることを誇らしく思ったよ。もちろん自由党員のレイチェル・リンドは、首相などまるで評価していなかったけどね。アン、夕食はオーブンに入っているよ。食料庫からブループラムの砂糖煮を出して食べなさい。お腹が空いているだろう。マシューから昨夜の話は聞いた。何をすべきかわかっていたのは幸運だったね。わたしならまるで見当がつかなかったよ。クループの子など見たことがなかったから。さあ、食べ終わるまで話すんじゃないよ。顔を見れば、演説したくてたまらないのがわかるけど、話は逃げないからね。」

マリラにはアンに話すことがあった。しかし、その時には言わなかった。話せばアンの興奮は、食欲や夕食といった現実的な事柄など、はるかに飛び越えてしまうとわかっていたからである。アンがブループラムを一皿食べ終えるまで、マリラは口を開かなかった。

「今日の午後、バリー夫人が来たよ、アン。あんたに会いたがっていたけど、起こさなかった。ミニー・メイの命を救ってくれたと言っていた。それからカラント酒の件であんな態度をとったことを、とても悪かったと思っているそうだ。ダイアナを酔わせるつもりなどなかったと、いまではわかっているって。許して、またダイアナと仲良くしてほしいそうだよ。よければ今晩、向こうへ行っておいで。昨夜ひどい風邪を引いたから、ダイアナは家の外へ出られないんだって。アン・シャーリー、お願いだから空へ飛び上がらないでおくれ。」

その注意は必要ないものではなかった。アンは立ち上がると、魂の炎に照らされた顔で、まるで空中へ舞い上がりそうな様子だった。

「ああ、マリラ、いま行ってもいい? お皿を洗わないで? 帰ってきたら洗うわ。でも、こんな胸躍る瞬間に、皿洗いなんてロマンチックでないことに縛られていられないもの。」

「ええ、ええ、行っておいで」とマリラは甘く言った。「アン・シャーリー――気でも狂ったのかい? すぐ戻ってきて、何か羽織りなさい。風に呼びかけるほうがましだね。帽子も上着もなしで行ってしまった。髪をなびかせて果樹園を突っ走っているのを見なさい。風邪で死ななければありがたいくらいだよ。」

アンは、紫色に染まる冬のたそがれのなか、雪の上を踊るように帰ってきた。遠い南西の空には、淡い金色と空気のような薔薇色の空を背景に、夕星が真珠のようなきらめきを放っていた。白く光る雪原と、暗いトウヒの谷間の上である。雪の丘の向こうから聞こえるそりの鈴は、凍った空気を通して妖精の鐘のように鳴っていた。しかし、その音楽よりも甘い歌が、アンの心と唇にはあった。

「ここにいるのは、完全に幸福な人間よ、マリラ」とアンは宣言した。「わたし、完全に幸福――ええ、赤毛にもかかわらずね。いまのわたしの魂は、赤毛なんて超越しているの。バリー夫人はわたしにキスして泣いて、とても悪かった、どんなにしても恩を返せないって言ったわ。ひどくきまりが悪かったけれど、できるだけ礼儀正しくこう言ったの。『バリー夫人、あなたに恨みはありません。ダイアナを酔わせるつもりなど、わたしにはなかったことを、これで完全に保証いたします。過去は忘却のマントで覆いましょう』って。とても威厳のある言い方だったでしょう、マリラ?」

「バリー夫人の頭の上に、燃える炭火を積んでいる気持ちだったわ。それからダイアナと、素敵な午後を過ごしたの。ダイアナはカーモディにいる叔母様から習った、新しいレース編みの模様を見せてくれたわ。アヴォンリーで知っているのは、わたしたち二人だけ。それを誰にも明かさないと、厳かな誓いを立てたの。ダイアナは薔薇の花輪と詩の書かれたきれいなカードをくれたわ。」

「あなたがわたしを愛するように、わたしもあなたを愛するなら
死のほかには、二人を分かつものはない。」

「そして本当にそうなの、マリラ。わたしたち、学校でまた隣同士に座らせて
くださいってフィリップス先生にお願いするつもり。ガーティー・パイはミニー・
アンドルーズと座ればいいわ。それから素晴らしいお茶をごちそうになったの。
バリー夫人は一番上等の食器を出してくださったのよ、マリラ。まるでわたしが
本当のお客様みたいに。どんなに胸がどきどきしたか、言葉では言えないわ。
わたしのために一番いい食器を使ってくれた人なんて、今まで誰もいなかったもの。
フルーツケーキにパウンドケーキ、ドーナツ、それに砂糖煮が二種類もあったのよ、
マリラ。それからバリー夫人は、紅茶を飲むかと聞いてくださって、『お父さん、
アンにビスケットを回してあげたら?』っておっしゃったの。大人になるのって
素敵に違いないわ、マリラ。大人みたいに扱ってもらうだけで、こんなに素敵なんだもの。」

「それはどうだかねえ」とマリラは短くため息をついた。

「まあ、いずれにしても、大人になったら」とアンはきっぱり言った。「小さな女の子にも、大人みたいに話しかけるつもりよ。それから難しい言葉を使っても、絶対に笑わない。どんなに気持ちが傷つくか、悲しい経験でよく知っているもの。お茶のあと、ダイアナとタフィーを作ったの。あまりおいしくはできなかったと思うわ。二人とも作ったことがなかったから。ダイアナが皿にバターを塗っているあいだ、わたしがかき混ぜていたんだけど、うっかり焦がしてしまったの。それから冷ますためにポーチへ出したら、猫が一皿の上を歩いてしまって、それは捨てなくちゃならなかった。でも作るのは最高に楽しかったわ。それから帰るとき、バリー夫人はできるだけしょっちゅう遊びに来てねと言ってくださった。ダイアナは窓に立って、恋人たちの小径までずっと、わたしにキスを投げてくれたのよ。マリラ、今夜はお祈りしたい気持ちよ。それも、この機会を記念する特別な、まったく新しいお祈りを考えるつもり。」


第十九章 演奏会、大失敗、そして告白

「マリラ、ほんの少しだけダイアナのところへ行ってもいい?」二月のある晩、アンは息を切らして東側の切妻部屋から駆け下りてきて尋ねた。

「暗くなってから、何をそんなに出歩きたいんだい」とマリラはそっけなく言った。「あんたとダイアナは、学校から一緒に帰ってきたのに、そのあと雪のなかでさらに三十分も立ち話をしていたじゃないか。そのあいだじゅう、口がかちかち止まらなかった。だから、また会えないからって、そうひどく困っているとは思えないね。」

「でもダイアナが、わたしに会いたがっているの」とアンは頼んだ。「とても大切なことを話したいんですって。」

「どうしてそれがわかるんだい?」

「さっき窓から合図をしてくれたの。ろうそくと厚紙で合図する方法を決めたのよ。窓枠にろうそくを置いて、厚紙を前後に動かして光を点滅させるの。点滅の回数で意味が違うのよ。これはわたしの考えなの、マリラ。」

「そうだろうと思ったよ」とマリラは断言した。「そのうち、その馬鹿げた合図遊びでカーテンに火をつけるんだろうね。」

「とても気をつけているわ、マリラ。それにすごく面白いの。二回は『そこにいる?』、三回は『はい』、四回は『いいえ』。五回は『大切な秘密があるから、できるだけ早く来て』って意味よ。ダイアナはいま五回合図したの。何なのか知りたくて、ほんとうに苦しいわ。」

「それなら、もう苦しまなくていいよ」とマリラは皮肉に言った。「行ってもいい。でも十分で帰ってくるんだよ、忘れるんじゃないよ。」

アンは忘れなかった。そして決められた時間内に帰ってきた。もっとも、ダイアナの重大な知らせについての話を、十分間に抑え込むのにどれほどの苦労が要ったかは、たぶん誰にもわからないだろう。しかし少なくとも、その十分を最大限に活用した。

「ああ、マリラ、どう思う? 明日はダイアナのお誕生日でしょう。お母さんが、学校から一緒に帰って、ダイアナの家に泊まっていいって言ってくださったの。それにニューブリッジのいとこたちが、大きな箱そりでやって来て、明日の夜、ホールである討論会の演奏会に行くのですって。そしてダイアナとわたしも、演奏会に連れていってくれるの――マリラが許してくださればだけど。許してくれるでしょう、マリラ? ああ、わたし、とても興奮しているわ。」

「それなら落ち着くんだね。行かせないから。自分の家のベッドで寝るほうがいいし、討論会の演奏会なんて、まったくくだらない。小さな女の子をあんな場所に行かせるべきじゃないよ。」

「討論会は、とても立派な集まりだと思うわ」とアンは頼んだ。

「立派でないなんて言っていないよ。でも演奏会だの何だのと出歩いて、夜中まで帰らないなんてことを始めさせるつもりはない。子供にはふさわしくない行いだよ。バリー夫人がダイアナを行かせるのにも驚くね。」

「でも、とても特別な機会なのよ」とアンは泣きそうになりながら嘆いた。「ダイアナのお誕生日は一年に一度しかないの。お誕生日がありふれたものだったら違うけれど、そうじゃないでしょう、マリラ。プリッシー・アンドルーズが『今宵、消灯ラッパを鳴らすな』を朗読するのよ。とても教訓的な作品だから、聞けばわたしにも大いにためになると思うわ。それに聖歌隊は、讃美歌にほとんど劣らない、素敵で悲しい歌を四曲歌うの。そして、ああ、マリラ、牧師様も出演するのよ。本当よ、演説をなさるの。ほとんど説教と同じでしょう。お願い、行かせてくださらない?」

「わたしの言ったことを聞いたかい、アン? さあ靴を脱いで寝なさい。もう八時過ぎだよ。」

「あと一つだけ、マリラ」とアンは、武器庫の最後の一発を取り出すような様子で言った。「バリー夫人は、客用寝室のベッドで寝てもいいと言ってくださったのよ。小さなアンが客用寝室のベッドに寝かせてもらえる名誉を、考えてみて。」

「その名誉なしで我慢するんだね。寝なさい、アン。これ以上、一言も聞きたくないよ。」

涙を頬に流しながらアンが悲しげに階上へ行くと、会話のあいだずっとソファでぐっすり眠っていたらしいマシューが目を開け、きっぱり言った。

「マリラ、アンを行かせてやるべきだと思うな。」

「わたしはそう思わないね」とマリラは言い返した。「この子を育てているのは、マシュー、あんたかい、それともわたしかい?」

「それは、まあ、おまえだな」マシューは認めた。

「だったら口を出さないでおくれ。」

「いや、口を出しているわけじゃない。自分の意見を持つことは、口出しではない。そしてわしの意見は、アンを行かせるべきだということだ。」

「アンが行きたいと言えば、月へだって行かせるべきだと思うんだろうね、きっと」とマリラは愛想よく返した。「ダイアナの家に泊まるだけなら、行かせてもよかったかもしれない。でもこの演奏会の計画は気に入らない。行けば風邪を引くかもしれないし、頭のなかをくだらない興奮でいっぱいにしてしまう。一週間は落ち着かなくなるよ。あの子の気質も、何があの子にいいかも、マシュー、あんたよりわたしのほうがよくわかっている。」

「アンを行かせるべきだと思う」マシューは頑固に繰り返した。議論は得意ではなかったが、自分の意見を持ち続けるのは得意だった。マリラは途方に暮れたように息をのみ、沈黙へ逃げ込んだ。翌朝、アンが食料庫で朝食の皿を洗っていると、マシューは納屋へ行く途中に立ち止まり、またマリラに言った。

「アンを行かせるべきだと思う、マリラ。」

しばらくマリラは、口に出してはならないような顔をしていた。それから避けられないことに屈し、つんとした声で言った。

「いいとも。ほかにあんたを満足させるものがないなら、行かせるよ。」

アンは濡れたふきんを手にしたまま、食料庫から飛び出した。

「ああ、マリラ、マリラ、あのありがたい言葉をもう一度言って。」

「一度で十分だよ。これはマシューの仕業で、わたしは手を洗うからね。知らないベッドで寝て肺炎になったり、真夜中にあの暑いホールから出て風邪を引いたりしても、わたしを責めるんじゃないよ。マシューを責めるんだ。アン・シャーリー、脂っこい水を床じゅうに垂らしているじゃないか。こんなに不注意な子は見たことがないよ。」

「ああ、わたしがマリラにとって、どんなに大変な子かはわかっているわ」とアンは反省して言った。「失敗ばかりするもの。でも、してもおかしくないのに、しないでいる失敗がどれだけあるかも考えてみて。学校へ行く前に砂をまいて、汚れたところをこすっておくわ。ああ、マリラ、あの演奏会に行くことだけが楽しみだったの。一度も演奏会へ行ったことがなくて、学校でほかの子たちがその話をすると、わたしだけ仲間外れみたいに感じるのよ。わたしがどんな気持ちだったか、マリラにはわからなかったでしょう。でもマシューにはわかったの。マシューはわたしを理解してくれるもの。理解してもらえるのは、とても素敵なことよ、マリラ。」

その朝の学校で、アンは興奮のあまり勉強に実力を発揮できなかった。ギルバート・ブライスに綴り字で負かされ、暗算でははるか後ろに置いていかれた。しかし演奏会と客用寝室のベッドを思えば、その屈辱も本来ほどには苦しくなかった。アンとダイアナは一日じゅう演奏会の話ばかりしていたので、フィリップス先生より厳しい先生だったなら、二人は間違いなくひどい罰を受けていただろう。

演奏会へ行けなかったなら、アンには耐えられなかったに違いない。その日学校で話題になったのは、ほかでもない演奏会だったからである。冬のあいだ二週間ごとに開かれるアヴォンリー討論会は、これまでにも小さな無料の催しをいくつか行っていた。しかし今度は大がかりな催しで、図書館のために入場料十セントを取ることになっていた。アヴォンリーの若者たちは何週間も練習を重ね、出演する兄や姉がいるため、生徒たちもことさらに関心を寄せていた。九歳以上の学校の子供たちは、夜の演奏会に小さな女の子を出すべきではないというマリラと同意見の父を持つキャリー・スローンを除き、みな行くつもりだった。キャリー・スローンは午後じゅう文法書の上で泣き、人生は生きるに値しないと思った。

アンにとって本当の興奮は、学校が終わった時から始まり、だんだん高まり、演奏会そのものでは、まさに歓喜の爆発となって頂点に達した。二人は「完全にすばらしいお茶」をいただいた。そして次には、二階にあるダイアナの小部屋で着替えるという、うっとりする仕事が待っていた。ダイアナはアンの前髪を流行のポンパドール風に整え、アンは特別な手際でダイアナのリボンを結んだ。二人は後ろ髪のまとめ方を、少なくとも半ダースは試した。ついに準備が整ったとき、頬は真っ赤で、目は興奮に輝いていた。

たしかにアンは、黒い地味なタム帽と、形の悪いきつい袖の手製の灰色コートを、ダイアナのしゃれた毛皮帽と小粋な上着と比べて、少し胸が痛んだ。しかし自分には想像力があり、それを使えるということを、間に合ううちに思い出した。

やがてニューブリッジのマレー家のいとこたちが来た。皆で大きな箱そりに乗り込み、藁と毛皮の敷物のなかに身を埋めた。滑らかな絹のような道を進み、そりの滑走板の下で雪がきゅっきゅっと鳴る。アンはホールまでの道のりを心から楽しんだ。壮麗な夕焼けだった。雪の丘とセントローレンス湾の濃い青の海は、酒と炎で満たされた巨大な真珠とサファイアの鉢の縁取りのように、その輝きを囲んでいた。そりの鈴の音と、森の妖精たちの笑い声のような遠い笑い声が、あらゆる方角から聞こえてきた。

「ああ、ダイアナ」とアンは毛皮の敷物の下で、手袋をしたダイアナの手をぎゅっと握り、ささやいた。「全部が美しい夢みたいじゃない? わたし、ほんとうにいつものわたしと同じ顔をしている? とても違った感じがするから、見た目にも表れている気がするの。」

「すごく素敵に見えるわ」とダイアナは言った。いとこの一人から今しがた褒め言葉をもらったので、それを誰かに返すべきだと思ったのだ。「とてもきれいな顔色よ。」

その夜のプログラムは、少なくとも観客の一人にとっては「ぞくぞくすること」の連続だった。そしてアンがダイアナに保証したとおり、次の感動は前の感動よりさらに大きかった。新しい桃色の絹のブラウスを着て、滑らかな白い首には真珠の首飾り、髪には本物のカーネーションを飾ったプリッシー・アンドルーズが――その花は先生が彼女のために、わざわざ町から取り寄せたという噂だった――「一筋の光もない暗闇のなか、ぬめる梯子を登った」と朗読すると、アンは贅沢な共感に身を震わせた。聖歌隊が「優しいヒナギクよりはるか上で」を歌うと、アンは天井が天使のフレスコ画で飾られているかのように見上げた。サム・スローンが「ソッカリーが雌鶏を抱かせた方法」の説明と実演を始めると、アンは大笑いしたので、近くに座っていた人々まで笑い始めた。それはアヴォンリーでさえ少々古びた出し物だったが、面白さよりもアンにつられたのである。そしてフィリップス先生が、心を揺さぶる調子で、死んだシーザーの前でのマーク・アントニーの演説を朗読し――文の終わりごとにプリッシー・アンドルーズを見つめながら――アンは、ローマ市民が一人でも先導してくれさえすれば、その場で反乱を起こせるような気がした。

ただ一つだけ、アンの興味を引かなかった演目があった。ギルバート・ブライスが「ライン河畔のビンゲン」を朗読したとき、アンはローダ・マレーの図書館の本を取り上げ、彼が終わるまで読み続けた。そして終わると、ダイアナが手のひらがじんじんするまで拍手しているあいだ、アンはこわばったまま、身じろぎもしなかった。

帰宅したのは十一時だった。皆、遊び疲れて満ち足りていたが、まだ演奏会についてたっぷり語り合うという、極上の楽しみが残っていた。家じゅう眠っているらしく、暗く静まり返っていた。アンとダイアナはつま先立ちで居間に入った。そこは細長い部屋で、客用寝室がそこから続いていた。暖炉の熾火がぼんやり照らし、心地よく暖かかった。

「ここで服を脱ぎましょう」とダイアナは言った。「暖かくて気持ちいいもの。」

「なんて楽しい時間だったのでしょう!」アンはうっとりため息をついた。「あそこで立って朗読するのって、きっと素晴らしいでしょうね。いつかわたしたちも、頼まれることがあるかしら、ダイアナ?」

「ええ、もちろん、いつかね。上級生にはいつも朗読をしてほしいの。ギルバート・ブライスなんてしょっちゅうするわ。わたしたちより二歳上なだけなのに。ああ、アン、あの子の朗読を聞かないふりなんて、どうしてできたの? あの子が、

『もう一人いる、姉妹ではないもう一人が。』

っていう行に来たとき、まっすぐあなたを見下ろしていたわ。」

「ダイアナ」とアンは威厳をもって言った。「あなたはわたしの親友だけれど、あの人物についてわたしに話すことは、あなたにだって許せないわ。もう寝る準備はできた? 競走しましょう。どちらが先にベッドに着くか。」

その提案はダイアナの気に入った。白い寝間着姿の二つの小さな影は、長い部屋を飛んでいき、客用寝室の扉を抜け、同時にベッドの上へ跳び乗った。すると――何かが、その下で動いた。息をのむ音、叫び声。そして誰かが、くぐもった声で言った。

「まあ、なんということ!」

アンとダイアナは、どうやってベッドから飛び下り、部屋を出たのか、ついに説明できなかった。ただ、必死の一目散の逃走のあと、二人が震えながらつま先立ちで階上にいることに気づいた、それだけだった。

「あれは誰――何だったの?」アンは寒さと恐怖で歯を鳴らしながらささやいた。

「ジョセフィンおば様よ」とダイアナは笑いに息を詰まらせながら言った。「ああ、アン、ジョセフィンおば様だったの。どうしてあそこにいらしたのかしら。ああ、きっとものすごく怒るわ。恐ろしいことよ――本当に恐ろしいけれど、こんなにおかしいことってある、アン?」

「ジョセフィンおば様って、どなた?」

「お父さんの叔母様で、シャーロットタウンに住んでいらっしゃるの。とてもお年寄り――少なくとも七十歳――で、きっと子供だったことなんて一度もないんじゃないかと思うわ。泊まりに来る予定ではあったけれど、こんなに早いとは思わなかった。とても堅苦しくてきちんとしていて、きっとひどく叱られるわ。仕方ないから、ミニー・メイと一緒に寝なくちゃ――あの子がどんなに蹴るか、想像もつかないでしょう。」

翌朝早く、ミス・ジョセフィン・バリーは朝食に姿を見せなかった。バリー夫人は二人の少女に優しく微笑んだ。

「昨夜は楽しかった? 帰ってくるまで起きていて、ジョセフィンおば様が来たから、やっぱり二階で寝なくてはいけないと伝えたかったのだけれど、疲れて眠ってしまったの。おば様を起こしたりしなかったでしょうね、ダイアナ?」

ダイアナは慎重に黙っていたが、アンと顔を見合わせ、食卓越しにこっそり罪深い笑みを交わした。アンは朝食後すぐ帰ったので、その後バリー家に起きた騒動については、午後遅くマリラのお使いでリンド夫人の家へ行くまで、幸せにも何も知らずにいた。

「それで昨夜、ダイアナと一緒に、かわいそうなミス・バリーを危うく死ぬほど驚かせたんだね?」リンド夫人は厳しく言ったが、目には笑いがあった。「さっきバリー夫人がカーモディへ行く途中で寄ったよ。すっかり心配していた。年老いたミス・バリーは今朝起きると、ひどい機嫌だったそうだよ。ジョセフィン・バリーの怒りなんて、冗談ではないからね。ダイアナには一言も口をきかなかったそうだ。」

「ダイアナのせいではありません」とアンは後悔して言った。「わたしのせいです。どちらが先にベッドへ入れるか競走しようって、わたしが言い出したんですもの。」

「やっぱりね!」リンド夫人は正解を当てた者の喜びで言った。「その考えはあんたの頭から出たと、わたしにはわかっていたよ。まったく、ずいぶんな騒ぎを起こしたものだね。年老いたミス・バリーは一か月滞在するつもりで来たのに、もう一日もいない、明日の日曜日だろうと町へ帰ると言い張っているそうだ。今日連れていけるなら、今日帰っただろうね。ダイアナの三か月分の音楽レッスン代を払う約束をしていたけれど、こんな男の子みたいな娘には、何もしてやらないと決めたそうだよ。ああ、今朝は大変な騒ぎだっただろうね。バリー家はさぞ困っているよ。年老いたミス・バリーはお金持ちだから、機嫌を損ねたくないんだろう。もちろんバリー夫人は、わたしにそこまでは言わなかったけどね。わたしは人間性を見る目があるんだよ。」

「わたしはなんて運の悪い子なの」とアンは嘆いた。「いつも自分で困ったことを起こすだけではなくて、心の血を流してもいいほど大切な親友たちまで、巻き込んでしまうの。なぜなんでしょう、リンド夫人?」

「注意が足りなくて、衝動的すぎるからだよ。立ち止まって考えないんだね――頭に浮かんだことは、言おうと思えばすぐ言い、やろうと思えばすぐやる。少しも考えないでね。」

「でも、それが一番いいところなの」とアンは抗議した。「わくわくすることが急に頭にひらめくと、すぐ口に出さずにはいられないの。じっくり考えたら、全部台無しになるわ。リンド夫人だって、そんなふうに感じたことはないの?」

いいえ、リンド夫人にはなかった。彼女は賢そうに首を振った。

「少しは考えることを覚えなさい、アン。あんたが従うべきことわざは、『転ばぬ先の杖』だよ――特に客用寝室のベッドに飛び乗る前にはね。」

リンド夫人は自分の軽い冗談に気持ちよく笑ったが、アンは沈んだ顔をしていた。アンには、この状況に笑うべきところなど一つも見えなかった。すべてが非常に重大に思われたのである。リンド夫人の家を出ると、アンは雪の固い野原を横切って果樹園の丘へ向かった。ダイアナが台所の戸口で出迎えた。

「ジョセフィンおば様は、とても怒っていたのでしょう?」アンはささやいた。

「ええ」ダイアナは閉まった居間の扉を心配そうに振り返りながら、笑いをこらえた。「怒りで踊り出しそうだったわ、アン。ああ、どんなに叱られたことか。わたしは今まで見たなかで一番行儀の悪い子で、両親はわたしの育て方を恥じるべきだって言ったの。もう滞在しないそうよ。わたしは別に構わないけれど、お父さんとお母さんは困っているわ。」

「どうして、わたしのせいだと言わなかったの?」アンは詰問した。

「わたしがそんなことをすると思う?」ダイアナは軽蔑して言った。「わたしは告げ口屋じゃないわ、アン・シャーリー。それに、わたしだってあなたと同じくらい悪かったもの。」

「では、わたしが中へ入って自分で言うわ」とアンは決意した。

ダイアナは目を見開いた。

「アン・シャーリー、まさか! どうして――生きたまま食べられてしまうわよ!」

「これ以上怖がらせないで」とアンは頼んだ。「大砲の口の前へ歩いていくほうがましだわ。でも、しなければならないの、ダイアナ。わたしのせいなんですもの、告白しなければ。幸い、告白する練習はしてあるわ。」

「まあ、居間にいらっしゃるわ」とダイアナは言った。「行きたければ行ってもいいけれど、わたしには無理。あなたが行っても、何もよくなるとは思わないわ。」

この励ましを受けて、アンは獅子の巣穴へ向かった――つまり、意を決して居間の扉まで行き、かすかにノックした。すると鋭い声で「お入り」と返ってきた。

細く、堅苦しく、姿勢の硬いミス・ジョセフィン・バリーは、暖炉のそばで激しく編み物をしていた。怒りは少しも収まらず、金縁の眼鏡の奥の目はぴかぴか光っていた。ダイアナが来たと思って椅子をくるりと回すと、そこには白い顔をした少女がいた。大きな目には、必死の勇気と縮み上がる恐怖が入り混じって、いっぱいにたたえられていた。

「あなたは誰?」ミス・ジョセフィン・バリーは遠慮なく尋ねた。

「グリーン・ゲイブルズのアンです」と小さな訪問者は震えながら言った。いつもの癖で手を組み合わせていた。「よろしければ、告白をしに参りました。」

「何を告白するの?」

「昨夜、おば様の上に飛び乗ったことは、すべてわたしの責任だったということです。言い出したのはわたしです。ダイアナなら、絶対にそんなことを思いつかなかったと思います。ダイアナはとても淑女らしい子です、ミス・バリー。だから、ダイアナを責めるのは不公平だと、おわかりになるでしょう。」

「まあ、そうなの? ダイアナだって、少なくとも半分は跳び乗っていたと思うけれどね。まったく、きちんとした家で何という騒ぎを!」

「でも、ただふざけていただけなんです」とアンは言い張った。「謝ったのですから、もう許してくださるべきだと思います、ミス・バリー。それに、とにかくダイアナを許して、音楽のレッスンを受けさせてあげてください。ダイアナは音楽のレッスンをとても楽しみにしているんです、ミス・バリー。何かを心から望んで、それを手に入れられない気持ちを、わたしはよく知っています。誰かに怒るなら、わたしに怒ってください。小さいころから人に怒られ慣れているから、ダイアナよりずっと我慢できます。」

このころには、老婦人の目から険しさの大半が消え、面白がるような光に変わっていた。それでも厳しい声で言った。

「ふざけていただけというのは、言い訳にならないと思うわ。わたしが子供のころには、女の子はそんなふざけ方をしなかったものよ。長くて疲れる旅のあと、ぐっすり寝ているところへ、大きな娘二人がどすんと飛び乗ってくる気持ちなんて、あなたにはわからないでしょう。」

わかりませんけれど、想像できます」アンは熱心に言った。「きっと、とても困ったことだったでしょう。でも、わたしたちの側の事情もあります。ミス・バリーには想像力がおありですか? もしあるなら、わたしたちの立場になってみてください。あのベッドに誰かいるなんて知りませんでしたし、わたしたちは死ぬほど驚いたんです。あのときの気持ちは、本当に恐ろしかった。しかも、約束されていた客用寝室に寝られなくなったんです。ミス・バリーは客用寝室で眠るのに慣れていらっしゃるでしょう。でも、そんな名誉を今まで一度も得たことのない小さな孤児の女の子だったら、どんな気持ちになるか想像してみてください。」

険しさは、すっかり消えてしまった。ミス・バリーは実際に笑った。その音を聞いた、台所で言葉もなく心配して待っていたダイアナは、大きく安堵の息をついた。

「想像力は少し錆びついているみたいね――使わなくなってずいぶん経つから」と彼女は言った。「あなたが同情を求める理由も、わたしの理由と同じくらい強いのでしょうね。物の見方次第だもの。ここに座って、自分のことを聞かせてちょうだい。」

「残念ですが、できません」とアンはきっぱり言った。「お話ししたいです。ミス・バリーは興味深いご婦人に見えますし、見たところはあまりそうではありませんけれど、魂の友でさえあるかもしれません。でも、ミス・マリラ・カスバートのところへ帰るのがわたしの務めです。ミス・マリラ・カスバートは、とても親切で、わたしをちゃんと育てようとしてくださる方です。最善を尽くしてくださっていますけれど、とても気の滅入る仕事です。わたしがベッドに飛び乗ったことで、マリラを責めないでください。でも行く前に、ダイアナを許して、アヴォンリーに予定どおり滞在してくださるか、教えていただきたいのです。」

「あなたが時々来て、わたしとお話ししてくれるなら、そうしようかしら」とミス・バリーは言った。

その晩、ミス・バリーはダイアナに銀の腕輪を贈り、家の大人たちにはスーツケースをほどいたと告げた。

「ただ、あのアンという子ともっと親しくなりたいから、滞在することにしたの」と彼女は率直に言った。「あの子はわたしを楽しませてくれる。この年になると、楽しませてくれる人は珍しいものよ。」

話を聞いたマリラの唯一の感想は、「だから言っただろう」だった。

これはマシューに向けた言葉だった。

ミス・バリーは一か月余り滞在した。アンが機嫌よくさせていたので、いつもよりずっと感じのよい客だった。二人は固い友情で結ばれた。

ミス・バリーは帰るときに言った。

「覚えておくのよ、アンという子。町へ来たら、わたしのところに泊まりなさい。そして一番の客用寝室の、一番の客用ベッドで眠らせてあげるわ。」

「ミス・バリーは、やっぱり魂の友だったのよ」とアンはマリラに打ち明けた。「見た目だけではそう思えないけれど、そうなの。マシューの場合みたいに、最初からすぐわかるわけではないけれど、しばらくするとわかってくるのよ。魂の友って、わたしが思っていたほど少なくないのね。世の中にはこんなにたくさんいると知るのは、素晴らしいことだわ。」


第二十章 想像力の困った暴走

春が再びグリーン・ゲイブルズへやって来た――美しく、気まぐれで、なかなか本気を見せないカナダの春。四月から五月にかけて、甘く新鮮で肌寒い日々を連ねながら、桃色の夕焼けと、復活と成長の奇跡をもたらしていた。恋人たちの小径のカエデには赤い芽がつき、木の精の泉のまわりには小さな巻いたシダが伸び始めていた。サイラス・スローン氏の家の裏に広がる荒地では、メイフラワーが茶色い葉の下で、甘い香りの桃色と白の星のように咲いていた。学校の子供たちは皆、ある黄金色の午後にそれを摘みに行き、澄んだ、こだまするたそがれのなか、腕にも籠にも花の戦利品をいっぱいにして帰ってきた。

「メイフラワーのない国に住んでいる人たちがかわいそう」とアンは言った。「ダイアナは、もっといいものがあるかもしれないと言うけれど、メイフラワーよりいいものなんてあるかしら、マリラ? それに、どんなものか知らなければ恋しく思わないとも言うの。でも、それが一番悲しいことだと思うの。メイフラワーがどんなものか知らず、それを恋しくも思わないなんて、悲劇的だわ、マリラ。メイフラワーって何だと思う? 去年の夏に死んだ花たちの魂で、ここがその天国なんじゃないかと思うの。でも、今日はとても楽しかったわ、マリラ。古い井戸のそばの、大きな苔むしたくぼ地で昼食を食べたの――とてもロマンチックな場所よ。チャーリー・スローンがアーティー・ギリスに、井戸を跳び越えてみろってけしかけたの。アーティーは挑戦を断れないから跳んだわ。学校では誰も断らないのよ。挑戦するのが、とても流行しているの。フィリップス先生は、見つけたメイフラワーを全部プリッシー・アンドルーズにあげて、『甘き者には甘き花を』って言っていたわ。きっと本から取った言葉ね。でも先生にも少しは想像力があるってわかるでしょう。わたしもメイフラワーをもらったけれど、軽蔑して断ったわ。誰からかは言えないの。決してその名前を口にしないと誓ったから。メイフラワーで花輪を作って帽子に飾り、帰る時間になると、花束と花輪を持って二人ずつ列になり、『丘の上の我が家』を歌いながら道を行進したの。ああ、とても胸が躍ったわ、マリラ。サイラス・スローンさんの家の人たちは、みんな飛び出して見に来たし、道で会う人は皆立ち止まって、わたしたちをじろじろ見送ったの。ほんとうに大評判だったわ。」

「そりゃそうだろう! なんて馬鹿らしいことを!」マリラは答えた。

メイフラワーのあとにはスミレが咲き、スミレの谷は紫に染まった。アンは学校へ行く道すがら、聖地を踏むような敬虔な足取りと、拝むような目でその谷を歩いた。

「なぜか」とアンはダイアナに言った。「ここを歩いているときは、ギル――誰かが授業でわたしより上になっても、あまり気にならないの。でも学校にいると、すっかり違って、前と同じくらい気になるのよ。わたしのなかには、いろんなアンがたくさんいるの。だから、わたしはこんなに手のかかる人間なのかもしれないと思うことがあるわ。アンが一人だけなら、もっとずっと楽だろうけれど、でも半分も面白くないでしょうね。」

六月のある晩、果樹園が再び桃色の花に覆われ、輝く湖水の源のあたりの湿地では蛙たちが銀のように甘く鳴き、空気がクローバー畑と香り高いモミの森の匂いで満ちていたころ、アンは切妻の窓辺に座っていた。勉強していたが、本が見えないほど暗くなったので、また花房の星をまとった雪の女王の枝越しに外を見つめ、目を大きく開いたまま夢想に沈んでいた。

本質的なところでは、小さな切妻部屋は変わっていなかった。壁は相変わらず白く、針山は相変わらず硬く、椅子は相変わらず黄色く直立していた。それでも部屋全体の性格は変わっていた。そこには、新しく生き生きと脈打つ人格が満ちていた。それは学校の本や服やリボン、さらにはテーブルの上でリンゴの花を生けた、ひびのある青い水差しとも独立して、この部屋に行き渡っているようだった。その鮮やかな住人が、眠りながらも目覚めながらも見るすべての夢が、物質ではないが目に見える姿を取り、虹と月光の素晴らしく薄い織物で、殺風景な部屋を飾っているかのようだった。やがてマリラが、アイロンをかけたばかりのアンの学校用エプロンを持って、きびきびと入ってきた。椅子に掛けると、短いため息をついて座った。その午後は頭痛があり、痛みは去ったものの、本人の言葉どおり、弱りきって疲れていた。アンは澄んだ同情の目で彼女を見た。

「マリラの代わりに、わたしが頭痛になれたら本当によかったのに。マリラのためなら、喜んで耐えたわ。」

「仕事をして、わたしを休ませてくれたんだから、それで十分役目を果たしたよ」とマリラは言った。「まあ、いつもより失敗も少なく、なかなかうまくやったようだね。もちろん、マシューのハンカチに糊をつける必要はなかったけれど! それに昼食のためにパイを温めようとオーブンに入れたら、普通の人なら熱くなったときに取り出して食べるものだよ。カリカリに焦がすまで入れっぱなしにはしない。それが、あんたのやり方らしいけれどね。」

頭痛のあと、マリラはいつも少し皮肉になった。

「ああ、ごめんなさい」とアンは悔いて言った。「パイをオーブンに入れた瞬間から今まで、一度も思い出さなかったわ。昼食のテーブルで何か足りないと、本能的に感じてはいたんだけれど。今朝、マリラがわたしに家を任せて出かけたとき、何も想像せず、事実だけに考えを向けようと強く決心したの。パイを入れるまでは、かなりうまくいっていたの。でも入れたら、孤独な塔に閉じ込められ、真っ黒な馬に乗った美しい騎士が救いに来る、魔法をかけられた王女だと想像したい、抵抗できない誘惑がわいてきたの。それでパイを忘れたのよ。ハンカチに糊をつけたなんて知らなかったわ。アイロンをかけているあいだじゅう、ダイアナとわたしが小川の上流で見つけた新しい島の名前を考えていたの。一番うっとりする場所よ、マリラ。カエデの木が二本あって、小川がその島をぐるりと流れているの。とうとう、女王陛下のお誕生日に見つけたから、ヴィクトリア島と呼ぶのが素晴らしいと思いついたの。ダイアナもわたしも、とても忠誠心が強いから。でもパイとハンカチはごめんなさい。今日は記念日だから、特にいい子でいたかったの。去年の今日、何があったか覚えている、マリラ?」

「いいや、特別なことは何も思い出せないね。」

「ああ、マリラ、わたしがグリーン・ゲイブルズへ来た日よ。決して忘れないわ。人生の転換点だったもの。もちろん、マリラにはそんなに大切には思えないでしょうけれど。ここへ来て一年になるわ。とても幸せだった。もちろんつらいこともあったけれど、人はつらいことを乗り越えて生きられるもの。わたしを置いてよかったと思っている、マリラ?」

「いいや、悪かったとは言えないね」とマリラは答えた。アンがグリーン・ゲイブルズへ来る以前、どうして暮らしていたのだろうと思うことさえあった。「いいや、まったく思わないというわけではないけれどね。勉強が終わったなら、バリー夫人のところへ行って、ダイアナのエプロンの型紙を貸してもらえるか聞いてきておくれ。」

「あの――暗すぎるわ」アンは叫んだ。

「暗すぎる? まだたそがれじゃないか。それに、あんたは暗くなってからだって、何度も向こうへ行っているよ。」

「明日の早朝に行くわ」とアンは熱心に言った。「日の出と同時に起きて行くわ、マリラ。」

「今度は何を考えているんだい、アン・シャーリー? 今晩、新しいエプロンを裁つのに、その型紙がほしいんだよ。すぐ行って、さっさとしておいで。」

「それなら、道を回って行かなくちゃ」とアンはしぶしぶ帽子を取った。

「道を回って半時間も無駄にする気かい! そんなことをしたら承知しないよ。」

「お化けの森を通れないの、マリラ」アンは必死に叫んだ。

マリラは見つめた。

「お化けの森? 気でも狂ったのかい? そのお化けの森って何だい?」

「小川の向こうのトウヒの森よ」アンはささやいた。

「馬鹿馬鹿しい! お化けの森なんて、どこにもありはしないよ。誰があんたにそんな話をしたんだい?」

「誰も」とアンは白状した。「ダイアナとわたしで、あの森にはお化けがいるって想像しただけなの。このあたりの場所は、みんなあまりにも――あまりにも――ありふれているんですもの。自分たちの楽しみのために、考え出したの。四月から始めたのよ。お化けの森はとてもロマンチックでしょう、マリラ。トウヒの林を選んだのは、とても薄暗いから。ああ、ぞっとすることをいろいろ想像したのよ。ちょうどこんな夜の時間に、白い女の人が小川のそばを歩き、手をもみながら泣き叫ぶの。家族に死者が出るときに現れるのよ。それから、アイドルワイルドのそばの角には、殺された小さな子供の幽霊が出るの。後ろから忍び寄って、冷たい指を手に置くの――こんなふうに。ああ、マリラ、考えるだけで震えてしまうわ。それに首のない男が小道を行ったり来たりして、骸骨たちが枝のあいだから、こちらをにらむの。ああ、マリラ、今では暗くなってから、何があってもお化けの森を通れないわ。木の後ろから白いものが手を伸ばして、わたしをつかむに決まっているもの。」

「こんなことを聞いた人がいるかね!」マリラは、唖然として聞いていたが叫んだ。「アン・シャーリー、自分の想像で作り出した、あんな悪い馬鹿話を本気で信じていると言うのかい?」

まったく信じているわけではないの」とアンはしどろもどろに答えた。「少なくとも、昼間は信じていないわ。でも暗くなれば、マリラ、違うのよ。幽霊が歩くのは、その時間だもの。」

「幽霊なんてものはないんだよ、アン。」

「でも、いるのよ、マリラ」とアンは熱心に叫んだ。「見た人を知っているもの。みんな立派な人たちよ。チャーリー・スローンは、おばあさんが、亡くなって一年たったおじいさんが、ある晩牛を連れて帰るのを見たって言っているわ。チャーリー・スローンのおばあさんは、何があっても作り話なんてしないでしょう。とても信心深い方だもの。それにトーマス夫人のお父さんは、ある晩、首を皮一枚でぶら下げた火の子羊に、家まで追いかけられたのよ。それは兄弟の霊で、九日以内に自分が死ぬという警告だとわかったそうよ。九日以内には死ななかったけれど、二年後に亡くなったのだから、ほら、本当だったでしょう。それにルビー・ギリスが――」

「アン・シャーリー」とマリラは断固として遮った。「こんな話を二度とするのは聞きたくないよ。あんたの想像力には、ずっと前から疑いを持っていたんだ。これがその結果になるなら、そんなことを許すわけにはいかない。バリー家へ行っておいで。そして教訓と戒めのために、あのトウヒの林を通るんだよ。お化けの森について、あんたの口から二度と一言も聞かせないでおくれ。」

アンはいくら頼んでも泣いても――実際そうした。恐怖は本物だった。想像力が暴走してしまい、夜になるとトウヒの林を死ぬほど恐れていた。しかしマリラは容赦しなかった。震える幽霊見物人を泉まで連れていき、橋をまっすぐ渡って、泣く女や首のない亡霊が潜む、薄暗い向こう側へ進むよう命じた。

「ああ、マリラ、どうしてそんなに残酷なの?」アンは泣いた。「もし白いものが本当にわたしをつかんで、さらっていったら、どう思うの?」

「その危険は引き受けるよ」とマリラは冷たく言った。「わたしが言ったことは、いつも本気だと知っているだろう。場所に幽霊を想像して出す癖を治してあげるよ。さあ、行きなさい。」

アンは行った。つまり橋をよろめいて渡り、その先の恐ろしい薄暗い道を、震えながら進んだ。アンはこの道のりを決して忘れなかった。想像力にあれほど自由を与えたことを、苦々しく後悔した。自分の空想が生み出した妖怪たちは、どの影にも潜み、自分を呼び出した恐怖に震える小さな少女をつかもうと、冷たい肉のない手を伸ばしていた。林の茶色い地面の上を、くぼ地から白い白樺の皮が風に舞い上がったとき、心臓が止まりそうになった。古い二本の枝が擦れ合う、長く引き延ばされたうなり声を聞くと、額に汗の玉が浮かんだ。暗闇で頭上をコウモリが舞い降りるのは、この世ならぬ生き物の翼のようだった。ウィリアム・ベル氏の畑に出ると、白いものの軍隊に追われているかのように駆け抜け、バリー家の台所の戸口に着いたときには、エプロンの型紙を頼む言葉さえ、あえぎながらでなければ言えなかった。ダイアナは留守だったので、長居する口実もなかった。恐ろしい帰り道に向き合わなければならなかった。アンは目を閉じたまま戻った。白いものを見るくらいなら、枝に頭をぶつけて脳みそを打ち砕く危険を冒すほうがましだった。ついに丸太橋につまずいて渡ると、長く震えるような安堵の息を吐いた。

「で、何にもつかまれなかったのかい?」マリラは同情もなく言った。

「ああ、マ――マリラ」とアンは歯を鳴らした。「これからは、あ――ありふれた場所で満足するわ。」


第二十一章 香料をめぐる新機軸

「まあまあ、この世は出会いと別ればかりだわって、リンド夫人が言うとおりね」と、六月最後の日、学校から帰ったアンは、スレート板と本を台所のテーブルに置き、びしょぬれのハンカチで赤い目をぬぐいながら、悲しそうに言った。「今日、学校へ予備のハンカチを持っていって幸運だったでしょう、マリラ? 必要になる予感があったの。」

「フィリップス先生がいなくなるだけで、涙を拭くのにハンカチが二枚もいるほど、あんたが先生を好きだったとは思わなかったね」とマリラは言った。

「本当にあんなに先生が好きだったから泣いたのではないと思うわ」とアンは考えた。「みんなが泣いたから、わたしも泣いたのよ。最初はルビー・ギリスだったわ。ルビー・ギリスはずっとフィリップス先生が嫌いだと言っていたのに、先生がお別れの挨拶を始めようと立ち上がったとたん、泣き出したの。それから女の子たちが次々に泣き始めた。わたしは我慢しようとしたわ、マリラ。フィリップス先生が、わたしをギル――男の子と座らせたときのことや、黒板にわたしの名前をEなしで書いたときのことや、幾何では今まで見たなかで一番の馬鹿だと言って、綴り字を笑ったときのことや、ひどく意地悪で皮肉だったときのことを思い出そうとしたの。でもどうしても駄目で、わたしも泣かずにはいられなかったの。ジェーン・アンドルーズは、一か月も前からフィリップス先生がいなくなればどんなにうれしいか話していて、涙なんか一滴も流さないって言っていたわ。ところが、わたしたちの誰よりひどく泣いて、自分のハンカチを持っていなかったから――必要になると思わなかったのね――お兄さんから借りなくちゃならなかったの。もちろん男の子たちは泣かなかったわ。ああ、マリラ、胸が張り裂けそうだった。フィリップス先生は、『今、わたしたちは別れの時を迎えました』という、とても美しいお別れの演説をなさったの。とても感動的だったわ。先生の目にも涙があったのよ、マリラ。ああ、学校でおしゃべりしたり、スレート板に先生の絵を描いたり、先生とプリッシーをからかったりしたことが、ひどく悪く、申し訳なく思えたの。ミニー・アンドルーズみたいな模範生だったらよかったと思ったわ。あの子は良心にやましいことなんて何もないもの。女の子たちは学校から帰る道すがら、ずっと泣いていたわ。キャリー・スローンは数分おきに『今、わたしたちは別れの時を迎えました』って言って、そのたびに、元気になりかけていたわたしたちはまた泣き始めるの。とても悲しいわ、マリラ。でも、二か月の休暇が目の前にあるのに、完全な絶望の底に沈むことなんてできないでしょう、マリラ? それに駅から帰る新しい牧師様と奥様に会ったの。フィリップス先生がいなくなることでこんなに悲しくても、新しい牧師様には少し興味を持たずにはいられなかったの。奥様はとてもきれいよ。もちろん、女王のように美しいというほどではないわ――牧師様の奥様が女王のように美しかったら、悪い手本になるかもしれないから、たぶんよくないのでしょうね。リンド夫人はニューブリッジの牧師様の奥様は、流行に凝った服を着るから悪い手本だって言っているわ。新しい牧師様の奥様は、すてきなふくらみ袖の青いモスリンの服に、薔薇で飾った帽子をかぶっていたの。ジェーン・アンドルーズは、牧師様の奥様にはふくらみ袖は世俗的すぎると言ったけれど、わたしはそんな不親切なことを言わなかったわ、マリラ。ふくらみ袖をどんなに欲しがるものか、わたしにはわかるから。それに奥様は、牧師様の奥様になってまだ少ししか経っていないのだから、大目に見なくてはならないでしょう? 牧師館の準備ができるまで、リンド夫人の家に下宿なさるのですって。」

その晩マリラがリンド夫人のところへ行ったのは、前の冬に借りたキルト枠を返すという、公言した目的だけによるものではなかったかもしれない。しかし、それはアヴォンリーの住民の多くが共有している、好ましい弱点だった。リンド夫人が貸した物のうち、そのまま戻らないと思っていた物さえ、その晩は借り主たちの手で数多く戻ってきた。新しい牧師、それも妻を連れた牧師は、刺激の少ない静かな田舎の村では、当然ながら好奇心の対象だった。

アンが想像力に欠けると思った老ベントリー牧師は、十八年間アヴォンリーの牧師を務めていた。彼はやもめとして赴任し、滞在中、噂が毎年のようにあの人、この人と結婚させたにもかかわらず、やもめのままでいた。前年の二月、彼は職を辞して去り、信徒たちに惜しまれた。弁舌家としては欠点があったにもかかわらず、長年の付き合いから生まれた愛情を、多くの人が善良な老牧師に抱いていたのである。それ以来、アヴォンリー教会は、日曜ごとに試験説教に来るさまざまな候補者や代理牧師の話を聞くという、いささか宗教的な気晴らしを楽しんできた。彼らが評価されるか退けられるかは、教会の長老格の父母たちの判断によった。しかし、古いカスバート家の長椅子の隅におとなしく座る赤毛の小さな少女にも、彼らについての意見があり、それをマシューに余すところなく話していた。マリラは、どんな形であれ牧師を批評しないのが主義だった。

「スミス先生では駄目だったと思うの、マシュー」とアンは最終的にまとめた。「リンド夫人は話し方が下手だと言ったけれど、一番の欠点はベントリー先生と同じ――想像力がなかったことだと思うわ。テリー先生は想像力が多すぎたの。わたしがお化けの森のことで想像力を暴走させたように、先生も想像力に連れ去られてしまった。それにリンド夫人は、先生の神学は正統ではないと言っていたわ。グレシャム先生はとても善良で信心深い方だったけれど、面白い話をしすぎて、教会で人を笑わせたの。威厳がなかったわ。牧師様には、やはり多少の威厳が必要でしょう、マシュー? マーシャル先生は、明らかに魅力的だったと思う。でもリンド夫人は、特別に調べたけれど先生は結婚も婚約もしていない、アヴォンリーに若い独身の牧師様を置くのは絶対によくない、教会の女性と結婚したら面倒が起きるかもしれない、と言っているわ。リンド夫人はとても先見の明があるでしょう、マシュー? アラン先生を招いたのは、とてもよかったと思う。説教が面白かったし、ただ習慣だから祈っているみたいではなく、本気で祈っているように聞こえたから好きなの。リンド夫人は、完璧ではないけれど、年俸七百五十ドルで完璧な牧師様を望むことはできないでしょうと言っていたわ。でも神学は正統だそうよ。教義のあらゆる点について徹底的に質問したから。それに奥様のご実家を知っていて、とても立派な家柄だし、女の方は皆、家事が上手なんですって。牧師様の家庭には、男性の正統な教義と、女性の上手な家事が理想的な組み合わせだと、リンド夫人は言うの。」

新しい牧師とその妻は、若く、感じのよい顔をした夫婦だった。まだ新婚の最中で、選んだ生涯の仕事に対する善良で美しい熱意に満ちていた。アヴォンリーは最初から二人に心を開いた。高い理想を持つ率直で陽気な若者と、牧師館の女主人となった明るく優しい小柄な夫人を、老いも若きも好いた。アンはアラン夫人に、すぐさま心の底から恋をした。新たな魂の友を見つけたのである。

「アラン夫人は完全に素敵な方よ」と、ある日曜の午後、アンは発表した。「わたしたちのクラスを受け持ってくださっているのだけれど、素晴らしい先生なの。先生が全部の質問をするのは公平ではないと、最初からおっしゃったのよ。マリラ、わたしがいつもそう思っていたことと、まったく同じでしょう。どんな質問でもしていいと言ってくださったから、わたし、たくさん質問したわ。質問するのは得意なの、マリラ。」

「そうだろうとも」マリラは強調して言った。

「ほかに質問したのはルビー・ギリスだけで、今年の夏、日曜学校の遠足はあるのかしらって尋ねたの。あれは授業と関係がないから、あまりふさわしい質問ではないと思ったわ――授業はダニエルと獅子の穴についてだったもの。でもアラン夫人はただ微笑んで、あると思うわ、とおっしゃったの。アラン夫人は素敵な笑顔をなさるの。頬にとても優美なえくぼがあるのよ。わたしにもえくぼがあればいいのに、マリラ。ここへ来たときほど痩せてはいないけれど、まだえくぼはないわ。えくぼがあったら、人を善い方向へ導けるかもしれないのに。アラン夫人は、人に善い影響を与えるよう、いつも努めるべきだとおっしゃったわ。何もかも、とても素敵にお話しになるの。宗教がこんなに楽しいものだなんて、今まで知らなかった。なんとなく憂鬱なものだと思っていたけれど、アラン夫人の宗教は違うの。あんなふうになれるなら、わたしもキリスト教徒になりたいわ。ベル監督先生のようなキリスト教徒にはなりたくないけれど。」

「ベル先生について、そんなふうに言うのは悪いことだよ」とマリラは厳しく言った。「ベル先生は本当に善い方なんだからね。」

「もちろん善い方よ」とアンは同意した。「でも、善いことで少しも幸せそうに見えないの。もしわたしが善くなれたら、うれしくて一日じゅう踊って歌うわ。アラン夫人は踊ったり歌ったりするにはお年を召しているし、牧師様の奥様にはもちろん威厳に欠けるでしょう。でも、キリスト教徒であることを喜んでいらっしゃるし、キリスト教徒にならなくても天国へ行けるとしても、そうなさるだろうと、わたしには感じられるの。」

「近いうちに、アラン先生と奥様をお茶にお招きしなくてはいけないね」とマリラは考え込んだ。「ほとんどあちこちへ行ったのに、ここにはまだ来ていない。そうだね、次の水曜日がいいだろう。でもマシューには一言も言わないでおくれ。来ると知ったら、その日はどこかへ逃げる口実を見つけるだろうから。ベントリー先生には慣れていたから平気だったけれど、新しい牧師様と親しくなるのは難しいだろうし、新しい牧師様の奥様なんて、恐ろしくてたまらないだろうからね。」

「死者のように秘密を守るわ」とアンは保証した。「でも、ああ、マリラ、そのためのケーキを作らせてくれる? アラン夫人のために何かしたいの。いまでは、かなりおいしいケーキを焼けるでしょう。」

「層ケーキを作ってもいいよ」とマリラは約束した。

月曜と火曜、グリーン・ゲイブルズでは大準備が進められた。牧師様と奥様をお茶に招くことは、重大で重要な仕事だった。マリラはアヴォンリーのどの主婦にも見劣りしないと決めていた。アンは興奮と喜びで夢中だった。火曜日の夜、ダイアナと木の精の泉のそばの大きな赤い石に座り、小枝をモミの香油に浸して水面に虹を描きながら、たそがれのなかですべてを話し合った。

「すべて準備できたわ、ダイアナ。明日の朝に作るわたしのケーキと、お茶の直前にマリラが作るベーキングパウダー・ビスケットだけを除いてね。ダイアナ、マリラとわたしは、この二日間とても忙しかったのよ。牧師様のご一家をお茶に招くのは、大変な責任だもの。こんな経験は初めてだわ。食料庫を見たらいいのに。見るべき光景よ。ゼリー寄せの鶏肉に冷たい舌肉を出すの。ゼリーは赤と黄色の二種類、泡立てたクリーム、レモンパイ、チェリーパイ、クッキー三種類、フルーツケーキ、それにマリラが特に牧師様のために取っておく、有名な黄プラムの砂糖煮、パウンドケーキ、層ケーキ、さっき言ったビスケット。それから新しいパンと古いパンも両方。牧師様が消化不良で、新しいパンを食べられない場合のためにね。リンド夫人は牧師様は消化不良になるものだと言うけれど、アラン先生は牧師様になってまだ長くないから、悪い影響は受けていないと思うわ。層ケーキのことを考えるだけで、身がすくむの。ああ、ダイアナ、もしおいしくできなかったらどうしましょう! 昨夜、層ケーキを頭にした恐ろしい妖怪に、ずっと追いかけられる夢を見たの。」

「きっと大丈夫よ」とダイアナは保証した。ダイアナは、人を安心させる友人だった。「二週間前、アイドルワイルドで昼食に食べた、あのケーキの一切れは完全にすばらしかったもの。」

「でもケーキには、特においしくできてほしいときに限って、ひどく失敗する恐ろしい癖があるの」とアンはため息をつき、香油をたっぷりつけた枝を水に流した。「でも、神様にお任せして、小麦粉を入れるのを忘れないよう気をつけるしかないわ。あら、見て、ダイアナ、なんて素敵な虹でしょう! わたしたちが帰ったあと、木の精が出てきて、これをスカーフにするかしら?」

「木の精なんていないわ」とダイアナは言った。ダイアナの母はお化けの森のことを知り、かなり怒っていた。その結果、ダイアナはこれ以上、想像力を真似て羽ばたくことを控え、害のない木の精についてさえ、信じる気持ちを育てるのは慎重でなければならないと思っていた。

「でも、いると想像するのはとても簡単よ」とアンは言った。「毎晩寝る前に窓から見て、木の精が本当にここに座って、泉を鏡にして髪をとかしているのではないかと思うの。朝には、露のなかに足跡がないか探すこともあるわ。ああ、ダイアナ、木の精への信仰を捨てないで!」

水曜日の朝が来た。アンは興奮して眠れなかったので、日の出とともに起きた。前の晩に泉で水遊びをしたため、ひどい鼻風邪を引いていた。しかしその朝のアンの料理への関心を消せるのは、肺炎そのものくらいのものだった。朝食のあと、ケーキを作り始めた。ついにオーブンの扉を閉めると、長い息を吐いた。

「今度は何も忘れなかったと思うわ、マリラ。でも膨らむかしら? ベーキングパウダーが悪かったらどうしましょう? 新しい缶から使ったの。リンド夫人は、何でも混ぜ物をする今どきは、いいベーキングパウダーを手に入れたと確信することはできないって言うわ。政府が取り上げるべき問題だけれど、保守党政府がそんなことをする日なんて来ないとも言っているの。マリラ、あのケーキが膨らまなかったらどうしましょう?」

「なくても、ほかに十分あるよ」マリラは感情を交えずに答えた。

しかしケーキは膨らみ、金色の泡のように軽くふんわりと焼き上がった。喜びで頬を赤らめたアンは、ルビー色のゼリーを層にはさんで仕上げ、アラン夫人が食べて、ひょっとするともう一切れほしいとおっしゃるところまで、頭のなかで見ていた。

「もちろん、一番いいお茶のセットを使うのでしょう、マリラ」とアンは言った。「テーブルをシダと野薔薇で飾ってもいい?」

「そんなのはくだらないと思うね」とマリラは鼻を鳴らした。「大切なのは食べ物であって、飾り立てることじゃないよ。」

「バリー夫人はご自分のテーブルを飾っていたわ」と、蛇のような賢さをまったく持たないわけではないアンは言った。「牧師様は、とても上品なお褒めの言葉をくださったの。目にも口にもごちそうだとおっしゃったのよ。」

「好きにおし」とマリラは言った。バリー夫人にも誰にも負けるつもりは、まったくなかった。「ただし食器と食べ物を置く場所を、十分に残しておくんだよ。」

アンはバリー夫人の飾りなど比べものにならないほど、立派に飾りつけようと全力を尽くした。薔薇もシダもたくさんあり、自分でもとても芸術的な趣味を持っていたので、見事な茶会のテーブルを作り上げた。牧師と夫人が席につくと、その美しさに二人そろって感嘆の声をあげた。

「アンの仕業です」とマリラは、厳密に公正な言い方をした。そしてアラン夫人のほめるような微笑みは、アンにとってこの世にはあまりに大きな幸福に思われた。

マシューもそこにいた。どうやって彼を招待の席へ連れ出したのかは、神様とアンしか知らなかった。マシューはあまりに恥ずかしがって緊張していたので、マリラはもう諦めていた。しかしアンが非常にうまく面倒を見たので、今では一番いい服と白い襟をつけてテーブルに座り、牧師とかなり興味深く話していた。アラン夫人には一言も話さなかったが、それは仕方がなかったのかもしれない。

アンの層ケーキが回されるまでは、すべて結婚式の鐘のように陽気に進んだ。すでに目が回るほどいろいろなものを取り分けてもらっていたアラン夫人は、ケーキを辞退した。しかしアンの顔に失望が浮かぶのを見て、マリラは微笑んで言った。

「これはぜひ一切れ召し上がってください、アラン夫人。アンが奥様のために特別に作ったんですから。」

「それなら味見をしなくてはね」とアラン夫人は笑い、ふっくらした三角形を一切れ取った。牧師とマリラも同じく取った。

アラン夫人は一口食べると、きわめて奇妙な表情を浮かべた。しかし何も言わず、黙々と食べ続けた。マリラはその表情を見て、急いでケーキを味見した。

「アン・シャーリー!」彼女は叫んだ。「いったいこのケーキに何を入れたんだい?」

「レシピに書いてあったもの以外、何も入れていないわ、マリラ」とアンは苦悶の表情で叫んだ。「ああ、何か悪いの?」

「悪い? ひどいなんてもんじゃないよ。アラン先生、食べようとなさらないでください。アン、自分で味見してごらん。何の香料を使ったんだい?」

「バニラよ」とアンは、ケーキを味見して恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら言った。「バニラだけ。ああ、マリラ、きっとベーキングパウダーだわ。わたし、あのベーキングパウダーには疑いを――」

「ベーキングパウダーなんて馬鹿馬鹿しい! 使ったバニラの瓶を持ってきなさい。」

アンは食料庫へ飛んでいき、茶色い液体が半分ほど入った小瓶を持って戻った。黄色くなったラベルには、「最高級バニラ」と書かれていた。

マリラはそれを取り、栓を抜き、匂いをかいだ。

「まあ、なんてこと、アン。このケーキは鎮痛用塗り薬で香りをつけたんだね。先週、塗り薬の瓶を割って、残りを古い空のバニラ瓶に移したんだよ。わたしにも少し責任がある――注意すべきだったけれど――でもお願いだから、どうして匂いをかがなかったんだい?」

この二重の恥辱に、アンは泣き崩れた。

「かげなかったの――ひどい風邪だったから!」そしてアンは、慰めようのない人のように泣きながら、切妻部屋へ逃げていった。ベッドに身を投げ出し、激しく泣いた。

やがて軽い足音が階段に響き、誰かが部屋へ入ってきた。

「ああ、マリラ」とアンは顔を上げずに泣いた。「わたしは永遠に恥をかいたわ。絶対にこのことを忘れられない。噂になるわ――アヴォンリーでは、物事はいつも噂になるもの。ダイアナはケーキがどうだったか聞くでしょうし、わたしは本当のことを言わなくちゃならないわ。鎮痛用塗り薬でケーキに香りをつけた女の子として、いつまでも指をさされるのよ。ギル――学校の男の子たちは、いつまでも笑うわ。ああ、マリラ、キリスト教徒としての哀れみが少しでもあるなら、こんなあとに下りて皿を洗わなければならない、なんて言わないで。牧師様と奥様がお帰りになってから洗うわ。でも、もうアラン夫人の顔を見ることなんてできない。わたしが毒を盛ろうとしたと思われるかもしれないわ。リンド夫人は、恩人に毒を盛ろうとした孤児の女の子を知っているって言っていた。でも塗り薬は毒ではないわ。内服用なの――ケーキに入れるものではないけれど。アラン夫人にそう言ってくださらない、マリラ?」

「自分で起き上がって、そう言ってみたらどう?」陽気な声が言った。

アンは飛び起きた。ベッドのそばにはアラン夫人が立ち、笑う目でアンを見ていた。

「かわいい子、こんなふうに泣いてはいけません」と、アンの悲劇的な顔を心から心配して、彼女は言った。「ただの面白い間違いよ。誰にでも起こり得ることだわ。」

「いいえ、こんな間違いをするのはわたしだけよ」とアンは悲しげに言った。「アラン夫人のために、あのケーキをとてもおいしく作りたかったのに。」

「ええ、わかっているわ、かわいい子。そして、ちゃんとおいしくできたのと同じくらい、あなたの親切と思いやりに感謝しているわ。もう泣かないで、わたしと一緒に下りて、あなたのお花畑を見せてちょうだい。カスバートさんから、あなた専用の小さな花壇があると聞いたの。わたしは花にとても興味があるから、見たいのよ。」

アンは手を引かれて下り、慰められるままになった。アラン夫人が魂の友だったのは、まったく神の摂理だったと思った。塗り薬ケーキについては二度と何も言われず、客が帰ると、あの恐ろしい事件を考えれば予想以上に、その夜を楽しんだことにアンは気づいた。それでも深いため息をついた。

「マリラ、明日はまだ失敗の一つもない新しい日だと思うと、素敵じゃない?」

「きっと、たっぷり失敗を作るだろうね」とマリラは言った。「アン、あんたほど失敗を作る子は見たことがないよ。」

「ええ、よくわかっているわ」とアンは悲しげに認めた。「でも、わたしについて一つ、励みになることに気づいたことはない、マリラ? わたし、同じ失敗を二度はしないの。」

「いつも新しい失敗を作っているなら、それがどれほど役に立つのかね。」

「ああ、わからないの、マリラ? 一人の人間ができる失敗には、きっと限りがあるでしょう。そしてその終わりまで行けば、失敗とはおしまいになるの。とても慰めになる考えだわ。」

「まあ、そのケーキは豚にやりなさい」とマリラは言った。「人間が食べるものではないよ。ジェリー・ブオートでさえね。」


第二十二章 アン、お茶に招かれる

「まあ、何だい、その目を頭から飛び出させそうにして。今度はまた魂の友を見つけたのかい?」郵便局まで走って帰ってきたばかりのアンに、マリラは尋ねた。

興奮は衣服のようにアンを包み、目に光り、顔の一つ一つの表情を燃やしていた。八月の夕べのやわらかな陽光とゆるい影のなか、風に吹かれた妖精のように、小道を踊りながら上ってきたのである。

「違うの、マリラ。でも、ああ、どう思う? 明日の午後、牧師館へお茶に招かれたの! アラン夫人が郵便局に、わたし宛てのお手紙を置いてくださったの。見て、マリラ。『グリーン・ゲイブルズ、アン・シャーリー嬢』って。わたしが『嬢』と呼ばれたのは初めてよ。どんなに胸がどきどきしたか! 一番大切な宝物のなかに、永遠にしまっておくわ。」

「アラン夫人は、日曜学校のクラスの子を一人ずつ順番にお茶へ招きたいと、わたしに言っていたよ」とマリラは、すばらしい出来事をひどく冷静に扱った。「そんなに熱を出すんじゃないよ。何事も落ち着いて受け止めることを覚えなさい、子供。」

アンにとって物事を落ち着いて受け止めることは、自分の本性を変えることだった。まさに「魂と炎と露」でできているようなアンには、人生の喜びも悲しみも三倍の強さで訪れた。マリラはそれを感じ、漠然と心配していた。この衝動的な魂は、人生の浮き沈みにおそらくひどく傷つけられるだろうと思ったからである。そして、同じほど大きな喜びを感じる力が、それを補って余りあるかもしれないことを、十分には理解していなかった。そこでマリラは、踊る陽光が小川の浅瀬にとどまることほど、アンには不可能で異質な、平静で均一な気質を身につけさせるのが自分の務めだと考えた。自分でも悲しく認めていたように、ほとんど進歩はなかった。大切な希望や計画が崩れると、アンは「悲嘆の深み」へ沈んだ。

それが実現すると、めまいがする喜びの領域へ舞い上がった。マリラは、世間から流れ着いたこの子を、控えめな作法と堅い身のこなしを備えた理想の少女に仕立て上げることなど、もうほとんど望めないと思い始めていた。そして、実は今のままのアンのほうがずっと好きだということも、信じようとはしなかった。

その夜、マシューが風は北東寄りで、明日は雨になるかもしれないと言ったため、アンは口もきけないほど悲しい気持ちで寝床に入った。家のまわりでポプラの葉がざわめく音は、雨粒がぱたぱた落ちる音のように聞こえて心配だった。ふだんなら、その不思議で朗々とした忘れがたいリズムを愛し、喜んで聞く、遠くから満ちて響く湾の轟きも、晴れてほしいと強く願う小さな少女には、嵐と災難の前触れのように思われた。アンには、朝が永遠に来ないように思えた。

しかし、牧師館でお茶に招かれている前夜でさえ、すべてのものには終わりがある。マシューの予想に反して、朝は晴れた。アンの気分は最高に高まった。「ああ、マリラ、今日は誰に会っても、みんなを愛してしまいそうな気持ちがわたしのなかにあるの」と、朝食の皿を洗いながら叫んだ。「どんなにいい気分か、マリラにはわからないわ! これがずっと続けば素敵でしょうね。毎日お茶に招かれさえすれば、模範的な子供になれると思う。でも、ああ、マリラ、これは厳粛な機会でもあるの。とても心配だわ。ちゃんと行儀よくできなかったらどうしましょう? 牧師館でお茶をいただくのは初めてだから、礼儀作法の規則を全部知っているか自信がないの。ここへ来てからずっと、『ファミリー・ヘラルド』の礼儀作法欄に載っている規則を勉強しているけれど。馬鹿なことをしたり、すべきことを忘れたりするのが、とても怖いわ。とても欲しかったなら、何かを二度取るのは、よい作法かしら?」

「アン、あんたの困ったところは、自分のことばかり考えすぎることだよ。アラン夫人のことと、どうすればあの方にとって一番気持ちよく、喜ばしいかを考えればいいんだよ」とマリラは言った。それは生涯で一度、非常に的確で簡潔な助言だった。アンはすぐに理解した。

「そのとおりだわ、マリラ。自分のことは少しも考えないようにしてみる。」

アンは礼儀作法の重大な違反をすることなく、どうやら訪問を終えたらしかった。たそがれのなか、サフラン色と薔薇色の雲の帯に栄光を与えられた、大きく高い空の下を帰ってきたとき、至福の気持ちで、疲れた巻き毛の頭をマリラのギンガムの膝にのせ、台所の戸口にある大きな赤砂岩の石板に座って、幸せそうにすべてを話した。

西のモミに覆われた丘の端から、長い収穫後の畑を越えて、涼しい風が吹き下ろし、ポプラの木々を鳴らしていた。果樹園の上には明るい星が一つかかり、恋人たちの小径では蛍が、シダとざわめく枝のあいだを飛び交っていた。アンは話しながらそれを眺め、風も星も蛍も、言葉にできないほど甘く魅惑的な何かに、すべて絡み合っているように感じた。

「ああ、マリラ、とても魅惑的な時間だったわ。わたしは無駄に生きたのではないと感じるし、もう二度と牧師館のお茶に招かれなくても、ずっとそう感じると思う。着いたとき、アラン夫人が戸口で迎えてくださったの。何段ものフリルとひじ丈の袖がついた、淡い桃色のオーガンジーの、とても愛らしいドレスを着ていらして、熾天使みたいだった。大きくなったら、牧師様の奥様になってもいいと思うわ、マリラ。牧師様なら、世俗的なことを考えないから、わたしの赤毛も気になさらないかもしれない。でももちろん、自然に善い人でなければならないでしょう。わたしは絶対にそうなれないから、考えても仕方ないわね。生まれつき善い人もいれば、そうでない人もいるの。わたしは後者よ。リンド夫人は、わたしには原罪がいっぱいだと言うわ。どんなに善くなろうと努力しても、自然に善い人ほど成功できないの。幾何と少し似ていると思うわ。でも、あんなに一生懸命努力することも、何かに数えてもらえるべきだと思わない? アラン夫人は、生まれつき善い人の一人よ。心から愛しているわ。マシューやアラン夫人みたいに、苦労しなくてもすぐ愛せる人がいるでしょう。それからリンド夫人みたいに、一生懸命努力しなくては愛せない人もいるの。いろいろ知っていて、教会でもとても活動しているから、愛すべきだとはわかっているのよ。でもいつも自分にそう言い聞かせていないと、忘れてしまうの。牧師館には、ホワイト・サンズの日曜学校から来た、ローレット・ブラッドリーという小さな女の子もお茶に来ていたわ。とてもいい子だった。魂の友ではないけれど、それでもとてもいい子よ。すばらしいお茶で、礼儀作法の規則もかなりよく守れたと思う。お茶のあと、アラン夫人がピアノを弾いて歌ってくださって、ローレットとわたしにも歌わせてくださったの。わたしはいい声をしているから、これから日曜学校の聖歌隊で歌わなくてはならない、とおっしゃったわ。考えただけで、どんなに胸が高鳴ったか想像もつかないでしょう。ダイアナみたいに日曜学校の聖歌隊で歌いたいと、ずっと願っていたの。でも、わたしには望むことすらできない名誉だと思っていたの。ローレットは早く帰らなくてはならなかった。今夜ホワイト・サンズ・ホテルで大きな演奏会があって、お姉さんがそこで朗読するから。ホテルにいるアメリカ人たちが、シャーロットタウン病院のために二週間ごとに演奏会を開いて、ホワイト・サンズの人たちをたくさん朗読に招くのですって。ローレットもいつか招かれるだろうと思うと言っていたわ。わたしは畏敬の目で見つめることしかできなかった。ローレットが帰ったあと、アラン夫人と心から話し合ったの。トーマス夫人のこと、双子のこと、ケイティー・モーリスやヴィオレッタのこと、グリーン・ゲイブルズへ来たこと、それから幾何で困っていることまで、何もかも話したの。信じられる、マリラ? アラン夫人も幾何では落第生だったとおっしゃったの。それがどんなに励みになったか、わからないでしょう。帰る少し前に、リンド夫人が牧師館へ来たの。そして、どう思う、マリラ? 委員の方たちが新しい先生を雇ったの。女の先生よ。ミス・ミュリエル・ステイシーというお名前。ロマンチックなお名前でしょう? リンド夫人は、アヴォンリーで女の先生を迎えるのは初めてで、危険な新機軸だと思うと言っているわ。でも女の先生が来るなんて素晴らしいことだと思う。学校が始まるまでの二週間を、どうやって生き延びればいいのかしら。早くお会いしたくてたまらないわ。」


第二十三章 アン、名誉のために災難に遭う

結果として、アンは二週間以上を生き延びなければならなかった。塗り薬ケーキの事件からほぼ一か月が過ぎており、そろそろ何か新しい困りごとに巻き込まれてよいころだった。もちろん、うっかり豚用のバケツではなく食料庫の毛糸玉の籠へ脱脂乳を一鍋空けてしまったとか、想像にふけりながら丸太橋の端から小川へ真っ逆さまに落ちたとかいう、小さな失敗は数えるほどのことではなかった。

牧師館でのお茶から一週間後、ダイアナ・バリーがパーティーを開いた。

「小さくて、選ばれた集まりよ」とアンはマリラに保証した。「同じクラスの女の子だけ。」

皆とても楽しく過ごし、お茶の後、バリー家の庭に出るまでは何も起こらなかった。遊びも少し飽きて、何か魅力的ないたずらが目の前に現れれば、すぐに飛びつきそうな気分になっていた。やがてそれは、「挑戦」という形を取った。

当時、挑戦はアヴォンリーの子供たちの流行の娯楽だった。男の子たちのあいだで始まったが、すぐに女の子たちへも広がった。その夏、挑戦されたからという理由でアヴォンリーで行われた、ありとあらゆる馬鹿げたことを書けば、一冊の本になるだろう。

まずキャリー・スローンがルビー・ギリスに、玄関前の巨大な古い柳の木を、ある高さまで登ってみろとけしかけた。その木には太った緑色の毛虫がたくさんついていたし、新しいモスリンの服を破ったら母親に叱られるという恐れもあった。それでもルビー・ギリスは身軽に登り、キャリー・スローンを悔しがらせた。次にジョジー・パイはジェーン・アンドルーズに、途中で止まらず、右足を地面につけずに、左足だけで庭を一周跳ねてみろと挑戦した。ジェーン・アンドルーズは勇敢に試みたが、三つ目の角で力尽き、負けを認めなければならなかった。

ジョジーの勝ち誇り方は、よい趣味が許す以上に目立っていた。そこでアン・シャーリーは、庭の東側を囲む板塀の上を歩いてみろと彼女に挑戦した。板塀の上を「歩く」には、試したことのない人が思う以上の技術と、頭と足の安定がいる。しかしジョジー・パイは、人気者になる資質にはいくつか欠けていたものの、板塀歩きの生まれつきの才能を持ち、それを十分に磨いていた。ジョジーは、こんな小さなことが挑戦する価値などないとでも言うような、軽やかな無関心さでバリー家の塀を歩いた。

ほかの女の子たちは、塀を歩こうとして自分たちもいろいろ苦労した経験があったので、多くはその手並みに感心した。ジョジーは勝利に顔を赤らめながら塀から下り、アンに挑むような視線を向けた。

アンは赤いお下げを振った。

「低い板塀の上を少し歩くことが、そんなにすごいことだとは思わないわ」と言った。「メアリーズヴィルで、屋根の棟木の上を歩ける女の子を知っているもの。」

「信じないわ」とジョジーはきっぱり言った。「屋根の棟木の上を歩ける人なんていないもの。少なくとも、あなたにはできないわ。」

「できないですって?」アンは軽率にも叫んだ。

「それなら、やってみなさいよ」とジョジーは挑戦的に言った。「バリーさんの台所の屋根へ登って、棟木の上を歩いてみなさいよ。」

アンは青ざめた。しかし、するべきことは明らかに一つしかなかった。台所の屋根に梯子がかけてある家のほうへ歩いていった。五年生の女の子たちは皆、興奮と不安の入り混じった声で「ああ!」と言った。

「やめて、アン」とダイアナは頼んだ。「落ちて死んでしまうわ。ジョジー・パイなんて気にしないで。あんな危ないことを、誰かに挑戦させるなんて不公平よ。」

「しなければならないわ。名誉がかかっているもの」とアンは厳かに言った。「ダイアナ、わたしはあの棟木を歩くか、試みて死ぬかよ。もし死んだら、真珠の玉の指輪はあなたにあげる。」

アンは息をのむような静けさのなかで梯子を登り、棟木へたどりついた。危なっかしい足場の上で体をまっすぐに保つと、歩き始めた。世界のなかで不快なほど高い場所にいること、そして棟木歩きは想像力があまり助けてくれないことを、くらくらしながら意識していた。それでも大惨事が起きるまでに、何歩か進むことができた。だが、そこで体が揺れ、バランスを失い、つまずき、よろめき、落ちた。太陽に焼かれた屋根を滑り落ち、その下に絡みつくアメリカヅタの茂みを突き破って落下した――下の娘たちが一斉に恐怖の叫びをあげるよりも早い出来事だった。

アンが登った側の屋根から落ちていたなら、ダイアナはその場で真珠の玉の指輪を相続したことだろう。幸い、アンは反対側へ落ちた。そちらでは屋根がポーチの上まで、ほとんど地面に届くほど低く伸びていたため、落下はずっと軽く済んだ。それでもダイアナたちが家のまわりを必死に駆けていくと――ルビー・ギリスだけは地面に根を張ったように動けず、ヒステリーを起こしていた――アメリカヅタの残骸のなかに、白くぐったりと横たわるアンを見つけた。

「アン、死んだの?」ダイアナは友人のそばにひざまずき、叫んだ。「ああ、アン、かわいいアン、一言だけ話して。死んだのかどうか言って!」

女の子たち全員、特に想像力に乏しいにもかかわらず、アン・シャーリーの早すぎる悲劇的な死の原因となった娘として、生涯烙印を押される未来を恐ろしく思い描いていたジョジー・パイが、ほっとしたことに、アンはくらくらしながら身を起こし、不確かな声で答えた。

「いいえ、ダイアナ、死んではいないわ。でも、気を失っているのだと思う。」

「どこが?」キャリー・スローンは泣きながら聞いた。「どこなの、アン?」

アンが答える前に、バリー夫人が現れた。アンはその姿を見ると立ち上がろうとしたが、痛みに鋭く小さく叫び、また倒れ込んだ。

「どうしたの? どこを痛めたの?」バリー夫人は尋ねた。

「足首です」とアンはあえいだ。「ああ、ダイアナ、お父様を探して、わたしを家まで連れていってくださるよう頼んで。とても歩いて帰れないわ。ジェーンが庭を一周も跳べなかったのだから、片足であんな遠くまで跳んで帰ることも、絶対にできないもの。」

マリラは、夏りんごを一皿分摘むため果樹園に出ていた。バリー氏が丸太橋を渡り、坂を上ってくるのが見えた。隣にはバリー夫人、後ろには小さな女の子の行列がついていた。バリー氏は、頭をぐったりと肩にもたせかけたアンを腕に抱いていた。

その瞬間、マリラは悟った。心臓を貫いた突然の恐怖のなかで、アンが自分にとってどれほどの存在になっていたか、理解したのである。アンが好きだということは認めていただろう――いや、とても可愛がっていることさえ認めただろう。しかし今、坂を狂ったように駆け下りながら、アンがこの世の何よりも大切だと知った。

「バリーさん、この子に何があったんです?」マリラはあえいだ。何年ものあいだ、冷静で分別あるマリラがこれほど青ざめ、取り乱したことはなかった。

アン自身が頭を上げて答えた。

「そんなに怖がらないで、マリラ。棟木の上を歩いていて落ちたの。足首を捻挫したのだと思う。でも、マリラ、首を折ったかもしれないのよ。物事は明るい面を見ることにしましょう。」

「パーティーへ行かせれば、あんたがこんなことをしでかすだろうとは思っていたよ」と、マリラは安堵のあまり鋭く、意地悪な声で言った。「中へ運んで、ソファに寝かせてください、バリーさん。まあ、この子、気を失ってしまったよ!」

それは本当だった。怪我の痛みに耐えられなくなり、アンはまた一つ望みをかなえてもらった。完全に気を失ったのである。

急いで収穫中の畑から呼ばれたマシューは、すぐさま医者を呼びに行かされた。医者がやがて来て調べると、怪我は皆が思ったよりひどかった。アンの足首は折れていた。

その晩、マリラが東の切妻部屋へ行くと、白い顔の少女が横たわっていた。ベッドから悲しげな声がした。

「マリラ、わたしがとてもかわいそうだと思わない?」

「自分のせいだよ」とマリラは言い、ブラインドを下ろしてランプをつけた。

「だからこそ、かわいそうだと思ってくれるべきなの」とアンは言った。「全部自分のせいだと思うことが、一番つらいのよ。誰かのせいにできたら、もっと楽なのに。でもマリラ、誰かに棟木を歩けと挑戦されたら、マリラならどうした?」

「しっかりした地面にとどまって、勝手に挑戦させておくよ。なんて馬鹿馬鹿しい!」マリラは言った。

アンはため息をついた。

「でも、マリラには強い意志があるもの。わたしにはないわ。ジョジー・パイに軽蔑されるのを、どうしても我慢できないと思ったの。あの子は一生、わたしを見下して自慢したでしょう。それに、もう十分罰を受けたと思うから、マリラ、あまり怒らないで。気を失うのは、少しも気持ちいいものではないわ。それにお医者様が足首を直すとき、とても痛かったの。六週間か七週間は歩けないし、新しい女の先生にも会えないわ。学校へ行けるようになるころには、もう新しい先生ではなくなってしまうもの。それにギル――みんなが授業でわたしより上になるわ。ああ、わたしは苦しみ多い人間よ。でも、マリラが怒らないでいてくれさえすれば、勇敢に耐えるようにするわ。」

「さあさあ、怒ってはいないよ」とマリラは言った。「あんたは運の悪い子で、それは間違いないね。でも言うとおり、苦しむのはあんたなんだから。さあ、夕食を食べてみなさい。」

「想像力があって幸運だったわね」とアンは言った。「きっと素晴らしく助けてくれると思う。想像力のない人たちは、骨を折ったとき、どうするのかしら、マリラ?」

続く退屈な七週間、アンが想像力を祝福する理由は、何度も何度もあった。しかし想像力だけに頼っていたわけではない。訪問客も多く、一日として、アヴォンリーの子供たちの世界で起きたことを話し、花や本を持って、学校の女の子たちの一人か二人が訪れない日はなかった。

「みんな、とても善くて親切だったわ、マリラ」と、初めて床をびっこを引きながら横切れた日、アンは幸せそうにため息をついた。「寝込むのはあまり楽しくないけれど、明るい面もあるのよ、マリラ。自分に友達が何人いるか、わかるもの。ベル監督先生までお見舞いに来てくださったの。実はとても立派な方よ。もちろん魂の友ではないけれど、それでも好きだし、先生のお祈りを批評したことをとても悪かったと思うの。今では、本当に心を込めてお祈りしていらっしゃると思う。ただ、そう思っていないみたいに言う癖がついてしまっただけ。その気になれば直せるわ。わたし、かなりはっきりと遠回しに言ったの。自分の小さな個人的な祈りを、面白いものにしようとどんなに努力しているか話したのよ。先生は男の子のころ足首を折ったときのことを、すっかり話してくださった。ベル監督先生が男の子だったなんて、とても不思議な感じ。想像力にも限界があるから、わたしにはそれは想像できないわ。男の子だった先生を想像しようとすると、白いひげと眼鏡をつけて、日曜学校にいるときと同じ姿をした、小さい先生が見えるの。でもアラン夫人が小さな女の子だったことなら、簡単に想像できるわ。アラン夫人は十四回もお見舞いに来てくださったの。誇りに思っていいことでしょう、マリラ? 牧師様の奥様は、お時間を求められることがたくさんあるのに! お見舞いに来ていただくには、とても楽しい方なの。自分のせいだとか、これをきっかけにもっといい子になってほしいとか、決して言わないの。リンド夫人はお見舞いに来ると、いつもそう言ったわ。それに、わたしがいい子になることを望んではいるかもしれないけれど、本当になれるとは信じていないような言い方なの。ジョジー・パイまでお見舞いに来たのよ。棟木を歩けと挑戦したことを悪く思っているのだと思うから、できるだけ丁寧に迎えたわ。もしわたしが死んでいたら、一生、後悔という暗い重荷を背負わなくてはならなかったもの。ダイアナは忠実な友達だった。毎日、寂しい枕元を元気づけに来てくれたわ。でも、学校へ行けるようになるのが、ほんとうに待ち遠しい。新しい先生について、とてもわくわくすることを聞いたもの。女の子たちは皆、先生は完全に素敵だと思っているの。ダイアナは、先生には一番美しい金色の巻き毛と、すごく魅力的な目があると言っているわ。服装もすばらしくて、袖のふくらみはアヴォンリーの誰よりも大きいのですって。一週おきの金曜の午後には朗読会があって、皆、詩か何かを暗唱するか、対話劇に出なければならないの。ああ、考えるだけで素晴らしいわ。ジョジー・パイは嫌いだと言っているけれど、それはジョジーには想像力がほとんどないからよ。ダイアナとルビー・ギリスとジェーン・アンドルーズは、次の金曜日のために『朝の訪問』という対話劇を準備しているの。そして朗読会のない金曜の午後には、ミス・ステイシーが皆を『野外』学習の日として森へ連れていき、シダや花や鳥を勉強させるの。それに毎朝と毎晩、体操もするの。リンド夫人は、そんなことは聞いたことがない、全部女の先生を置いたせいだと言っているわ。でも、素晴らしいことに思えるし、ミス・ステイシーは魂の友だとわかると思うの。」

「一つはっきりわかることがあるよ、アン」とマリラは言った。「バリー家の屋根から落ちても、あんたの舌は少しも怪我をしなかったってことだね。」


第二十四章 ミス・ステイシーと生徒たち、演奏会を企画する

アンが学校へ戻る準備ができたころには、また十月になっていた――赤と金に満ちた、輝かしい十月だった。秋の精霊が、太陽に飲み干させるため注ぎ込んだかのように、谷間が繊細な霧で満たされる、穏やかな朝。紫水晶、真珠、銀、薔薇色、煙青色の霧だった。露は非常に重く、野原は銀布のように輝いていた。幹がいくつにも分かれた森のくぼ地には、乾いた葉が山のように積もり、その上をかさかさと駆け抜けることができた。白樺の小径は黄色い天蓋となり、そこに沿ってシダは枯れ、茶色くなっていた。空気そのものに、かたつむりとは違い、速く、喜んで学校へ急ぐ小さな少女たちの心を奮い立たせる、ぴりりとした香気があった。そしてダイアナの隣の小さな茶色い机へ戻り、通路の向こうではルビー・ギリスがうなずき、後ろの席からはキャリー・スローンが手紙を渡し、ジュリア・ベルがガムを一かみ分前へ回してくるのは、実に楽しかった。鉛筆を削り、絵葉書を机のなかに並べながら、アンは幸福の長い息をついた。人生は、たしかにとても面白かった。

新しい先生のなかに、アンは真の、頼りになる友を見つけた。ミス・ステイシーは明るく思いやりのある若い女性で、生徒たちの愛情を得て保ち、その知性と道徳性にある最善のものを引き出す、幸せな才能を持っていた。アンはこの健やかな影響のもとで花のように開き、感心しているマシューと批判的なマリラに、学校の授業や目標について、輝くような話を持ち帰った。

「ミス・ステイシーを、心の底から愛しているわ、マリラ。とても淑女らしくて、声もとても優しいの。先生がわたしの名前を発音なさるとき、本能的に、Eをつけて綴ってくださっていると感じるわ。今日の午後は朗読会だったの。『スコットランド女王メアリー』を朗読するのを、マリラにも聞いてほしかったわ。魂のすべてを込めたのよ。ルビー・ギリスは帰り道で、わたしが『今こそ父の腕へ――我が女の心よ、さらば』という行を言ったとき、血が凍るほどだったと言ったわ。」

「いつか納屋で、わしにも朗読してくれるといいな」とマシューは提案した。

「もちろんするわ」とアンは考えながら言った。「でも、きっとあんなに上手にはできないと思う。学校中の子供たちが、息をのんで言葉を待っている前で朗読するほど、わくわくはしないもの。マシューの血を凍らせることは、きっとできないわ。」

「リンド夫人は、先週の金曜、男の子たちがベルさんの丘にある大きな木のてっぺんまで登って、カラスの巣を取りに行くのを見て、自分の血が凍るかと思ったそうだよ」とマリラは言った。「ミス・ステイシーがそんなことを勧めるなんて、驚きだね。」

「自然研究のために、カラスの巣がほしかったの」とアンは説明した。「あれは野外学習の午後だったの。野外学習の午後は素晴らしいわ、マリラ。それにミス・ステイシーは、何もかもとても美しく説明してくださるの。野外学習の午後には作文を書かなくてはならないのだけれど、わたしが一番いい作文を書くの。」

「自分でそんなことを言うなんて、ずいぶんうぬぼれているね。先生に言ってもらったほうがいいよ。」

「でも先生がおっしゃったのよ、マリラ。それに本当にうぬぼれているわけではないわ。幾何ではあんなに落第生なのに、どうしてうぬぼれられる? もっとも、幾何もちょっとずつわかり始めているの。ミス・ステイシーは、とてもわかりやすくしてくださるから。それでも、決して得意にはならないでしょうし、それは本当に謙虚にならなくてはならない考えよ。でも作文を書くのは大好き。ほとんどの場合、ミス・ステイシーは題を自分で選ばせてくださるの。でも来週は、何か注目すべき人物について作文を書かなくてはならないの。これまで生きた、あまりにもたくさんの立派な人物から選ぶのは難しいわ。すごい人物になって、死んだあとに自分について作文を書いてもらえるなんて、素晴らしいでしょうね? ああ、わたし、とても立派な人物になりたい。大きくなったら看護師になって、赤十字の方々と戦場へ行き、慈悲の使者になろうと思うの。外国の宣教師にならなければ、だけれど。そちらもとてもロマンチックでしょう。でも宣教師になるには、とても善い人でなくてはならないから、それが障害だわ。毎日、体操もするのよ。優雅になって、消化もよくなるんですって。」

「消化なんて馬鹿馬鹿しい!」マリラは言った。本心から、全部くだらないことだと思っていた。

しかし、野外学習の午後も朗読会の金曜日も、体操の曲げ伸ばしも、十一月にミス・ステイシーが持ち出した計画の前には色あせた。それは、アヴォンリー学校の生徒たちが、学校旗の代金を払うという立派な目的のために、クリスマスの夜にホールで演奏会を開こうというものだった。生徒たちは全員この計画を喜んで受け入れ、ただちにプログラムの準備が始まった。そして、出演予定者のなかで、マリラの不賛成という妨げがありながらも、アン・シャーリーほど興奮して、心身ともにこの企画へ飛び込んだ者はいなかった。マリラは、全部まったくの馬鹿げたことだと思っていた。

「頭のなかをくだらないことでいっぱいにして、勉強に使うべき時間を取られているだけだよ」と彼女は不満を言った。「子供が演奏会を開いたり、練習へ走り回ったりするのは賛成できない。うぬぼれ屋で生意気で、出歩くことが好きになる。」

「でも、立派な目的を考えてみて」とアンは頼んだ。「旗は愛国心を育てるわ、マリラ。」

「馬鹿馬鹿しい! あんたたちの誰の考えにも、愛国心なんてほとんどないよ。楽しいことがしたいだけだろう。」

「愛国心と楽しさを一緒にできるなら、それでいいでしょう? もちろん演奏会を作るのは、本当に素敵よ。合唱が六曲あって、ダイアナは独唱するの。わたしは『噂話撲滅協会』と『妖精の女王』という二つの対話劇に出るわ。男の子たちも対話劇をするの。それに、わたしは朗読を二つするのよ、マリラ。考えると震えてしまうけれど、いい意味でぞくぞくする震えなの。最後には『信仰、希望、慈愛』という活人画もするの。ダイアナとルビーとわたしが出て、皆白い布をまとい、髪を流すの。わたしは希望の役。手をこう組んで、目を上に向けるの。屋根裏で朗読を練習するつもりよ。うめき声が聞こえても心配しないで。朗読の一つで、心が張り裂けるようにうめかなくてはならないの。でも、芸術的に上手なうめき声を出すのは、本当に難しいわ、マリラ。ジョジー・パイは、対話劇で欲しかった役をもらえなくて、すねているの。妖精の女王になりたかったんですって。それはおかしいわ。ジョジーくらい太った妖精の女王なんて、誰が聞いたことがある? 妖精の女王は細くなくてはいけないの。女王はジェーン・アンドルーズで、わたしは侍女の一人なの。ジョジーは赤毛の妖精も太った妖精と同じくらいおかしいと言うけれど、ジョジーの言うことは気にしないことにしているの。髪には白い薔薇の花輪をつけて、ルビー・ギリスがスリッパを貸してくれるの。自分のを持っていないから。妖精にはスリッパが必要でしょう。ブーツを履いた妖精なんて、想像できないもの。特に銅のつま先つきのブーツなんてね? ホールは這うトウヒで飾り、モミの枝で作った標語には桃色の薄紙の薔薇を飾るの。そして観客が席についたあと、エマ・ホワイトがオルガンで行進曲を弾くなか、皆で二人ずつ入場するの。ああ、マリラ、わたしほど熱心ではないのはわかっているけれど、小さなアンが立派にやってくれるよう願ってくれない?」

「わたしが願うのは、あんたがちゃんと行儀よくすることだけだよ。この騒ぎが早く終わって、あんたが落ち着けるようになれば、心からうれしいね。今のあんたは、頭が対話劇やうめき声や活人画でいっぱいで、まるで役に立たない。舌にいたっては、すり減ってなくならないのが不思議なくらいだよ。」

アンはため息をつき、裏庭へ出ていった。葉の落ちたポプラの枝の向こう、リンゴ緑色の西の空には、若く新しい月が輝いていた。マシューは薪を割っていた。アンは薪割り台に腰掛け、演奏会についてマシューと話した。少なくともこの場合には、感心し共感して聞いてくれる人がいると確信していた。

「まあ、きっとなかなかいい演奏会になるだろう。そしてアンは、自分の役を見事にやると思うよ」マシューは、熱心で生き生きとした小さな顔を見下ろして微笑みながら言った。アンも彼に微笑み返した。この二人は最高の友達だった。そしてマシューは、アンを育てる役目が自分になくてよかったと、何度も星に感謝していた。それはマリラだけの務めだった。もし自分の役目だったなら、気持ちと義務のあいだのたび重なる衝突に、きっと悩んだことだろう。だが今の彼は、好きなだけアンを「甘やかす」――マリラの言い方では――自由があった。しかし結局のところ、それはそれほど悪い取り決めではなかった。少しの「認めてあげること」は、世の中の良心的な「しつけ」のすべてと同じくらい、時には善い結果をもたらすものなのである。


第二十五章 マシュー、ふくらみ袖を主張する

マシューは苦しい十分間を過ごしていた。冷たく灰色の十二月の夕暮れ、台所へ入って薪箱の隅に腰を下ろし、重い長靴を脱いでいた。アンと学校の女友達たちが居間で『妖精の女王』の練習をしていることには、まるで気づかなかった。やがて娘たちは、笑いながら楽しそうに話し、廊下を通って台所へ出てきた。彼女たちは、薪箱の向こうの影へ、片手に長靴、もう片方に靴脱ぎを持って恥ずかしそうに縮こまったマシューに気づかなかった。そして帽子や上着を身につけ、対話劇や演奏会について話しているあいだ、マシューはその十分間、彼女たちをひそかに見守っていた。アンはほかの娘たちと同じように、目を輝かせ、生き生きと立っていた。しかしマシューは突然、アンには友達とは違う何かがあると意識した。そしてマシューを悩ませたのは、その違いが、あってはならないもののように思われたことだった。アンはほかの娘たちより明るい顔をし、大きく星のような目を持ち、顔立ちも繊細だった。恥ずかしがり屋で観察力のないマシューでさえ、そういうことには気づくようになっていた。しかし彼を不安にさせた違いは、そうした点にあるのではなかった。では、何なのか? 

娘たちが腕を組み、凍りついた長い小道を帰っていったあとも、アンが本に向かったあとも、マシューはその問いに取りつかれていた。マリラには相談できなかった。マリラなら、アンとほかの娘たちの違いは、ほかの娘たちが時には口を閉じているのに、アンは決してそうしないことだけだ、と軽蔑して鼻を鳴らすだろうと感じたからである。それでは何の助けにもならない。

その夜、マシューは考えをまとめるためにパイプを取り出した。マリラは大いに嫌がった。二時間の喫煙と真剣な思案の末、マシューは問題の答えにたどりついた。アンは、ほかの娘たちのような服を着ていないのだ。

考えれば考えるほど、アンはグリーン・ゲイブルズへ来てからずっと、一度もほかの娘たちのように服を着たことがなかったと確信した。マリラはアンに、みな同じ変わらない型で作られた、地味で暗い色の服を着せていた。マシューが服に流行というものがあると知っていたとしても、それが知識のすべてだった。しかしアンの袖が、ほかの娘たちの袖とはまるで違うことだけは、はっきりわかっていた。その晩アンのまわりにいた小さな娘たちの群れを思い出した――赤、青、桃色、白の華やかな上着を着ていた娘たち。そして、なぜマリラはいつもアンに、こんなに地味で質素な服ばかり着せるのだろうと思った。

もちろん、きっとそれでよいのだろう。マリラが一番よく知っており、マリラがアンを育てているのだ。たぶん、何か賢明で不可解な理由があるのだろう。しかし、子供に一着くらいきれいな服を持たせても、害はないはずだ――ダイアナ・バリーがいつも着ているような服を。マシューは一着贈ろうと決めた。そんなことなら、余計な口出しだと反対されることもないはずだった。クリスマスまで二週間しかない。新しい素敵なドレスは、贈り物にぴったりだった。満足のため息をつき、マシューはパイプを片づけて寝た。マリラは家じゅうの扉を開け、空気を入れた。

翌晩にはもう、マシューはドレスを買いにカーモディへ向かった。いやなことを早く終わらせてしまおうと決意していた。それはきっと、並大抵ではない試練になると思われた。マシューにも買えるものはあり、なかなかの値切り上手だと示せることもあった。しかし女の子のドレスを買うとなれば、店員の言いなりになるだろうと、よくわかっていた。

長く考えた末、マシューはウィリアム・ブレアの店ではなく、サミュエル・ローソンの店へ行くことにした。たしかにカスバート家は、いつもウィリアム・ブレアの店へ行っていた。それは長老派教会へ通い、保守党に投票するのと同じくらい、彼らには良心の問題だった。しかしウィリアム・ブレアの二人の娘が、よく客の相手をしていた。マシューは彼女たちを心の底から恐れていた。何をほしいか正確にわかり、それを指させるなら何とかできたが、今回のように説明や相談が必要な買い物では、カウンターの向こうに男がいることを、絶対に確かめなければならないと思った。だからローソンの店へ行くことにした。サミュエルか、その息子が相手をするはずだった。

哀れなことに、マシューはサミュエルが商売を広げた際、女の店員も雇ったことを知らなかった。店員は妻の姪で、巨大に垂れたポンパドールの髪、大きくくるくるした茶色の目、そして非常に広く人を惑わせる笑顔を持つ、たいへん華やかな若い女性だった。非常におしゃれな服を着て、何本もの腕輪をつけていた。その腕輪は、手を動かすたびにきらきら光り、がちゃがちゃ、ちりんちりんと鳴った。そこに彼女がいるだけで、マシューは恥ずかしさに包まれた。そしてあの腕輪が、一撃で彼の理性を完全に打ち砕いた。

「カスバートさん、今晩は何をお探しですか?」

ミス・ルシラ・ハリスは、両手でカウンターを軽く叩きながら、てきぱきと愛想よく尋ねた。

「その――その――ええと、庭の熊手はありますかな?」マシューはどもった。

十二月の真ん中に、男が庭の熊手を尋ねるのを聞き、ミス・ハリスは当然ながら少し驚いた顔をした。

「一、二本残っていると思います」と彼女は言った。「でも上の材木置き場です。見てまいります。」

彼女がいないあいだに、マシューは散らばった感覚を集め、次の試みに備えた。

熊手を持ってミス・ハリスが戻り、明るく「ほかに何かありますか、カスバートさん?」と聞いたとき、マシューは勇気を振り絞って答えた。

「そうですな、せっかくお勧めですから、ついでに――その――ええと、干し草の種を見せてもらい――買ってもよいかと。」

ミス・ハリスは、マシュー・カスバートは変わり者だと聞いていた。今、彼は完全に気が狂っているのだと結論づけた。

「干し草の種を置くのは春だけです」と彼女はもったいぶって説明した。「今はありません。」

「ああ、もちろん――もちろん――おっしゃるとおりです」哀れなマシューはどもり、熊手をつかんで戸口へ向かった。敷居に来て、代金を払っていないことを思い出し、みじめな気持ちで戻った。ミス・ハリスが釣り銭を数えているあいだ、最後の絶望的な試みのために、彼は力を奮い起こした。

「その――もしご面倒でなければ――ついでですから――ええと、砂糖を――砂糖を少し見せていただきたい。」

「白砂糖ですか、黒砂糖ですか?」ミス・ハリスは辛抱強く尋ねた。

「ああ――ええと――黒砂糖を」マシューは弱々しく答えた。

「あちらに一樽ありますよ」とミス・ハリスは、腕輪を鳴らしながらそれを指した。「あるのはそれだけです。」

「二十ポンド(約9キログラム)いただこう」マシューは額に汗の玉を浮かべて言った。

家へ向かう途中、半分ほど馬車を走らせてから、マシューはようやく自分を取り戻した。それは恐ろしい体験だった。しかし、よその店へ行くという異端を犯した罰だから当然だと思った。家に着くと熊手は道具小屋に隠したが、砂糖はマリラのところへ運び込んだ。

「黒砂糖ですって!」マリラは叫んだ。「いったい何を思って、こんなにたくさん買ったんだい? わたしは雇い男のポリッジか、黒いフルーツケーキにしか使わないよ。ジェリーはもういないし、ケーキもずっと前に作った。砂糖もよくないね――粗くて色が濃い。ウィリアム・ブレアの店には、ふつうこんな砂糖は置いてないよ。」

「いつか役に立つかと思って」マシューは言い、逃げ出した。

よく考えてみると、この状況に対処するには女が必要だと、マシューは判断した。マリラは問題外だった。計画にすぐ水を差すだろうと、マシューには確信があった。残るのはリンド夫人だけだった。アヴォンリーのほかの女には、助言を求める勇気などマシューにはなかった。そこでリンド夫人のもとへ行くと、善良な夫人はすぐに、この困り果てた男の手から問題を引き取った。

「アンに贈るドレスを選んでほしい? もちろんいいとも。明日カーモディへ行くから、わたしがやってあげるよ。何か特別に考えているものがあるのかい? ない? それなら、わたしの判断で選ぶよ。アンには、きれいな濃い茶色がよく似合うと思うね。ウィリアム・ブレアの店には、なかなかきれいな新しいグロリア布が入っている。マリラが作れば、アンはすぐ気づいて、驚かせる楽しみがなくなるかもしれないから、わたしが仕立ててあげようか? いいとも、やるよ。少しも面倒ではない。縫い物は好きなんだ。姪のジェニー・ギリスに合わせて作るよ。体つきなら、ジェニーとアンは瓜二つだからね。」

「いや、ありがたいです」とマシューは言った。「それから――わしにはよくわからんが――今どきは、袖の作り方が昔とは違うようでして。もし頼みすぎでなければ――新しい形にしていただきたい。」

「ふくらみ袖ね? もちろんよ。もう少しも心配しなくていいよ、マシュー。最新流行の形にしてあげる」とリンド夫人は言った。マシューが帰ったあと、心のなかで付け加えた。

「かわいそうな子が、たまにはまともなものを着るのを見るのは、本当に気持ちがいいだろうね。マリラの服の着せ方は、まったくおかしいよ。何度も面と向かって言いたかった。でも口を閉じていたんだ。マリラは助言を望んでいないし、独身なのに、自分のほうが子育てをよく知っていると思っているのがわかるからね。でもいつもそうなんだよ。子供を育てたことのある人間は、どの子供にも当てはまる決まった方法なんてないと知っている。でも育てたことのない人は、三数法みたいに明白で簡単だと思っている――三つの数を決まった形に並べれば、答えは正しく出るってね。でも生身の人間は算数の範囲には入らない。そこがマリラ・カスバートの間違いなんだろう。あんな服を着せることで、アンに謙虚な心を育てようとしているのかもしれない。でも育つのは、ねたみと不満のほうだろうよ。あの子だって、自分の服とほかの娘たちの服の違いを感じているはずだ。でもマシューがそれに気づいたとはね! あの男は、六十年以上眠っていたあと、ようやく目を覚ましたんだよ。」

翌二週間、マリラは、マシューが何か考えていることを知っていた。しかし何のことか見当もつかなかった。クリスマス・イヴに、リンド夫人が新しいドレスを持ってくるまで。

「これが、二週間もマシューが妙に秘密めかして、一人でにやにやしていた理由なのかい?」マリラは少し硬いが寛大な口調で言った。「何か馬鹿なことを企んでいるとは思っていたよ。まあ、アンにこれ以上ドレスが必要だとは思わないね。この秋、暖かくて丈夫なドレスを三着も作ってやったんだから、これ以上はまったくのぜいたくだよ。あの袖の布だけで、上着が一枚できるほどあるじゃないか。まったく、そうだよ。マシュー、あんたはアンのうぬぼれを甘やかすだけだよ。あの子は今でも孔雀みたいにうぬぼれているんだからね。まあ、これでようやく満足してくれればいい。ふくらみ袖が流行してからずっと欲しがっていたのは知っているよ。最初のあと、一言も言わなかったけれどね。ふくらみはだんだん大きく、ばかげたものになっている。今では風船くらいだ。来年それを着る人は、横向きでなければ戸口を通れないだろうね。」

クリスマスの朝は、美しい白い世界に明けた。十二月は非常に穏やかで、人々は緑のクリスマスになると思っていた。しかし夜のあいだに、ちょうどよいだけの雪が静かに降り、アヴォンリーを一変させた。アンは霜のついた切妻の窓から、喜びの目で外をのぞいた。お化けの森のモミはみな、羽毛のようにふわふわと素晴らしかった。白樺と野生の桜は真珠色に縁取られ、耕された畑は雪のえくぼの広がりだった。空気には、たまらなくすがすがしい鋭さがあった。アンは声がグリーン・ゲイブルズじゅうに響くほど歌いながら、階下へ駆け下りた。

「メリー・クリスマス、マリラ! メリー・クリスマス、マシュー! なんて素敵なクリスマスでしょう! 白いクリスマスでよかった。ほかのクリスマスなんて本物に思えないでしょう? 緑のクリスマスは好きではないわ。緑なんかではなくて、汚い色あせた茶色と灰色なだけよ。どうして人は緑と呼ぶのかしら? まあ――まあ――マシュー、それはわたしのため? ああ、マシュー!」

マシューは、紙の包みからドレスを恥ずかしそうに取り出し、マリラの顔を遠慮がちに見ながら差し出していた。マリラは軽蔑したように茶を注いでいるふりをしていたが、目の端からはかなり興味深そうに、その光景を見ていた。

アンはドレスを受け取り、敬虔な沈黙のなかで見つめた。なんてきれいなのだろう――絹のような光沢を持つ、柔らかな美しい茶色のグロリア布。スカートには繊細なフリルとギャザーがあり、上着には当世風の細かいピンタックがたくさん入り、首元には薄いレースの小さなひだ飾りがついていた。しかし袖――袖こそが最高の栄光だった! 長いひじまでのカフス、その上にはギャザーの列と茶色い絹リボンの蝶結びで区切られた、二つの美しいふくらみがあった。

「それはクリスマスの贈り物だよ、アン」とマシューは恥ずかしそうに言った。「その――その――アン、気に入らないのかい? いや、いや。」

アンの目に、突然涙があふれたからである。

「気に入らないですって! ああ、マシュー!」

アンはドレスを椅子に置き、両手を組んだ。「マシュー、完全に素晴らしいわ。どうお礼を言えばいいのかわからない。見て、この袖を! ああ、幸せな夢を見ているに違いないわ。」

「さあさあ、朝食にしよう」とマリラは遮った。「アン、あんたにこのドレスが必要だったとは思わないけれど、マシューが買ってくれたのだから、大切にするんだよ。リンド夫人が、髪のリボンも置いていった。ドレスに合わせた茶色だよ。さあ、座りなさい。」

「こんなに胸が躍るときに、どうやって朝食を食べればいいのかわからないわ」とアンはうっとり言った。「朝食なんて、あまりにありふれているもの。ドレスを眺めて目のごちそうにしていたい。ふくらみ袖がまだ流行していて、ほんとうによかった。ふくらみ袖のドレスを手に入れる前に流行が終わったら、絶対に立ち直れないと思っていたもの。決して完全に満足できなかったでしょう。リンド夫人がリボンまでくださるなんて、素敵だったわ。これからは本当に、とてもいい子にならなくてはならないと感じる。こういうときには、模範的な少女でないことが残念で、これからはそうなろうといつも決心するの。でも、抵抗できない誘惑が来ると、決心を実行するのはなぜか難しいのよ。それでも、これからは特別に努力するわ。」

ありふれた朝食が終わると、ダイアナがくぼ地の白い丸太橋を渡って現れた。深紅のアルスター・コートを着た、陽気な小さな姿だった。アンは坂を飛び下りて迎えた。

「メリー・クリスマス、ダイアナ! ああ、素晴らしいクリスマスよ。あなたに見せたい素敵なものがあるの。マシューがとてもきれいなドレスをくださったの、あんな袖のついたね。これより素敵なものなんて、想像すらできないわ。」

「もっと素敵なものを持ってきたわ」とダイアナは息を切らして言った。「ほら、この箱。ジョセフィンおば様が、いろいろなものの入った大きな箱を送ってくださったの――そしてこれはあなたのもの。昨夜持ってきたかったけれど、届いたのが暗くなってからだったの。今では暗くなったお化けの森を通るのは、あまり気持ちよくないもの。」

アンは箱を開け、中をのぞいた。最初に、「アンという子へ、メリー・クリスマス」と書かれたカード。そして、玉飾りのつま先に、サテンの蝶結びと光るバックルがついた、もっとも繊細な小さな子山羊革のスリッパが一足入っていた。

「ああ」とアンは言った。「ダイアナ、これはあまりにもすごすぎるわ。夢を見ているに違いない。」

「神様の思し召しよ」とダイアナは言った。「これでルビーのスリッパを借りなくてもいいし、それは幸運だわ。あなたには二サイズも大きいから、妖精が足を引きずって歩くなんて、ひどいことになるもの。ジョジー・パイは大喜びするわよ。そうそう、ロブ・ライトが一昨日の練習の晩、ガーティー・パイを家まで送っていったの。あんな話、聞いたことがある?」

その日、アヴォンリーの生徒たちは皆、興奮で熱を出していた。ホールを飾りつけ、最後の大リハーサルをしなければならなかったからである。

夜に演奏会が開かれ、大成功を収めた。小さなホールは満員で、出演者は皆とてもよくできた。しかしアンは、この催しのひときわ輝く星だった。ジョジー・パイという形を取ったねたみさえ、それを否定する勇気はなかった。

「ああ、なんて輝かしい夜だったのでしょう!」すべてが終わり、暗く星空の下をダイアナと一緒に歩いて帰りながら、アンはため息をついた。

「何もかもうまくいったわね」とダイアナは実際的に言った。「十ドルくらいは儲かったと思うわ。アラン先生が、その記事をシャーロットタウンの新聞へ送るそうよ。」

「ああ、ダイアナ、わたしたちの名前が印刷されるの? 考えるだけでぞくぞくするわ。ダイアナの独唱は完全にすばらしかった。アンコールが起きたとき、あなたよりわたしのほうが誇らしかったと思う。心のなかで、『あんな名誉を受けているのは、わたしの大切な親友なの』と言ったのよ。」

「でもアン、あなたの朗読こそ、会場を沸かせたわ。あの悲しい朗読は、ただただ素晴らしかった。」

「ああ、とても緊張したの、ダイアナ。アラン先生がわたしの名前を呼んだとき、どうやってあの舞台へ上がれたのか、本当にわからない。百万人の目がわたしを見て、わたしのなかまで見通しているように感じたの。そして恐ろしい一瞬、絶対に始められないと思った。でも、素敵なふくらみ袖のことを思い出して、勇気を出したの。あの袖にふさわしくならなくてはと思ったの、ダイアナ。それで始めたのだけれど、声はずっと遠くから出てくるようだった。まるでオウムみたいだったわ。屋根裏であの朗読をあんなに何度も練習したのは、神様の思し召しだったのよ。そうでなければ、最後までできなかった。うめき声はうまく出た?」

「ええ、ほんとうに素敵にうめいたわ」とダイアナは保証した。

「座ったとき、年老いたスローン夫人が涙をぬぐっているのを見たの。誰かの心を動かしたと思うと、素晴らしかった。演奏会に出るのって、とてもロマンチックでしょう? ああ、ほんとうに忘れられない機会だったわ。」

「男の子たちの対話劇も立派だったでしょう?」ダイアナは言った。「ギルバート・ブライスは素晴らしかった。アン、あなたがギルにあんな態度を取るのは、ひどく意地悪だと思うわ。聞いて。妖精の対話劇のあと、あなたが舞台を走り下りたとき、髪の薔薇が一輪落ちたの。ギルが拾って胸ポケットに入れるのを見たわ。ほら。あなたはとてもロマンチックだから、きっと喜ぶべきだと思う。」

「あの人物が何をしようと、わたしには関係ないわ」とアンは高慢に言った。「あの人のために考えを浪費することなんて、絶対にないの、ダイアナ。」

その夜、二十年ぶりに演奏会へ出かけたマリラとマシューは、アンが寝たあと、しばらく台所の火のそばに座っていた。

「まあ、わしらのアンは、誰にも負けないほどよくやったと思うな」とマシューは誇らしげに言った。

「ええ、そうだったね」とマリラは認めた。「賢い子だよ、マシュー。それに、とてもきれいに見えた。この演奏会の計画には、少し反対だったけれど、結局は本当に悪いことはないのだろうね。とにかく今夜はアンを誇らしく思ったよ。でも本人には言うつもりはない。」

「わしは誇らしく思ったし、二階へ行く前にそう言ったよ」とマシューは言った。「いつか、あの子のために何ができるか考えなくてはいかんな、マリラ。いずれアヴォンリー学校だけでは足りなくなるだろう。」

「そんなことを考える時間はまだ十分あるよ」とマリラは言った。「三月になっても、まだ十三歳だ。もっとも今夜は、ずいぶん大きな娘になったと思った。リンド夫人はあのドレスを少し長く作りすぎたね。だからアンがとても背が高く見える。覚えも早いし、しばらくしたらクイーン学院へやるのが一番いいことだと思う。でもあと一、二年は、その話をする必要はないよ。」

「いや、ときどき考えておいても害はない」とマシューは言った。「そういうことは、たくさん考えておくほどいいんだ。」

第二十六章 物語クラブの結成

アヴォンリーの子どもたちは、また平凡な毎日に落ち着くのが難しかった。とりわけアンには、何週間も興奮という杯を味わい続けたあとでは、何もかもがひどく味気なく、色あせ、つまらなく思えた。あの演奏会以前の、遠い昔の静かな楽しみに戻れるだろうか。最初のうち、ダイアナに言ったように、アンはとても戻れそうにないと思っていた。

「ダイアナ、昔とまったく同じような人生には、もう二度と戻れないって、わたし確信してるの」と、まるで少なくとも五十年も前の時代について語るような悲しげな声で言った。「そのうち慣れるのかもしれないけれど、演奏会って人をふだんの暮らしに向かなくさせるんじゃないかしら。だからマリラは演奏会が好きじゃないのよ、きっと。マリラは本当に分別のある女の人だもの。分別があるほうが、ずっといいんでしょうね。でも、わたし自身が分別のある人になりたいかというと、そうでもないの。だって、そういう人はあまりロマンチックじゃないんですもの。リンド夫人は、わたしがそんな人になる心配なんてないって言うけれど、先のことなんてわからないわ。今のわたし、いつかは分別のある大人になるかもしれないような気がするの。でも、ただ疲れているからかもしれない。昨夜は、いつまでたっても眠れなかったのよ。目を開けたまま、あの演奏会のことを何度も何度も思い描いていたの。ああいう催しのすばらしいところはね、あとになって思い返すのがとても楽しいことよ。」

しかしやがて、アヴォンリー学校は元の調子を取り戻し、以前からの関心事へ戻っていった。もっとも、演奏会は痕跡を残していた。舞台上の座席の順番をめぐって言い争ったルビー・ギリスとエマ・ホワイトは、もう同じ机に座らなくなり、三年続いた有望な友情は壊れてしまった。ジョジー・パイとジュリア・ベルは三か月も口をきかなかった。ジョジーがベッシー・ライトに、ジュリアが朗読のために立ち上がるときのお辞儀は首をぴくぴくさせる鶏みたいだと言い、ベッシーがそれをジュリアに伝えたからである。ベル家の人々は、スローン家の子どもたちとは一切つき合おうとしなかった。ベル家が、スローン家は出し物の出番が多すぎると断言し、スローン家が、ベル家は自分たちに任されたわずかな役目さえろくに果たせないとやり返したからだった。ついには、ムーディー・スパージョン・マクファーソンが、アン・シャーリーは朗読で気取っていると言ったため、チャーリー・スローンと殴り合いになった。ムーディー・スパージョンは「やっつけられた」ので、妹のエラ・メイは冬じゅうずっとアン・シャーリーと口をきかなかった。こうしたささいな摩擦を除けば、ミス・ステイシーの小さな王国での仕事は、規則正しくなめらかに進んでいた。

冬の数週間は過ぎていった。例年になく暖かな冬で、雪もほとんど降らなかったから、アンとダイアナはほぼ毎日、白樺の小径を通って学校へ行けた。アンの誕生日、二人はその道を軽やかに歩いていた。おしゃべりに夢中になりながらも、目と耳は油断なく働かせていた。近いうちに「冬の森の散歩」という作文を書かなければならない、とミス・ステイシーに言われており、よく観察しておく必要があったからである。

「考えてみて、ダイアナ。今日でわたし、十三歳よ」とアンは畏れを含んだ声で言った。「自分が十代になったなんて、ほとんど信じられないわ。今朝目が覚めたときには、何もかも違っているに違いないって思えたの。あなたはもう一か月も十三歳だったから、わたしほど新鮮には感じないでしょうけれど。人生がずっと面白くなった気がするわ。あと二年で、ほんとうに大人になるのよ。そのころには大きな言葉を使っても笑われないって思うと、すごく慰められるわ。」

「ルビー・ギリスは、十五歳になったらすぐ恋人を作るつもりだって言ってたわ」とダイアナが言った。

「ルビー・ギリスは恋人のことしか考えてないのよ」とアンは軽蔑したように言った。「あんなに怒ったふりをするくせに、誰かが注意書きに自分の名前を書いたりすると、ほんとうは大喜びしてるんだから。でも今のは、思いやりのない言い方だったわね。アラン夫人は、思いやりのないことを言ってはいけないっておっしゃるの。でも、考える前につい口から出てしまうことが多いのよね? ジョジー・パイのことは、思いやりのないことを言わずに話せないから、わたしはまったく話題にしないの。気づいていたでしょう。わたし、できるだけアラン夫人のようになろうとしているのよ。あの方は完璧だと思うから。アラン先生もそう思っていらっしゃるのよ。リンド夫人は、先生は奥さんの踏んだ地面まで崇拝しているって言って、牧師さんが人間にあんなに愛情を傾けるのは正しくないんじゃないかしらっておっしゃるの。でもダイアナ、牧師さんだって人間で、誰にでもあるような弱点を持っているのよ。先週の日曜の午後、アラン夫人と弱点について、とても興味深いお話をしたの。日曜日に話してもよいことはほんの少しだけれど、これはその一つなのよ。わたしの弱点は、想像しすぎて、自分の義務を忘れてしまうこと。それを克服しようと一生懸命がんばっているの。もうほんとうに十三歳になったんだから、これからはもっとよくなるかもしれないわ。」

「あと四年したら、髪を結い上げてもいいのよ」とダイアナが言った。「アリス・ベルはまだ十六歳なのに、もう結い上げているけれど、あれはばかげていると思うわ。わたしは十七歳まで待つつもり。」

「もしわたしがアリス・ベルみたいな曲がった鼻だったら」とアンはきっぱり言ってから、「――まあ、いいわ。今言おうとしたことは言わない。ものすごく思いやりがないことだったもの。それに、自分の鼻と比べていたんだから、それは虚栄心よ。ずっと前に鼻をほめられてから、鼻のことを考えすぎている気がする。あの言葉は、わたしにとってほんとうに大きな慰めなの。あ、ダイアナ、見て、ウサギよ。森の作文に覚えておくことが増えたわ。冬の森も夏と同じくらい美しいと思うの。真っ白で静かで、眠っていて、きれいな夢を見ているみたい。」

「作文の時期が来たら、森について書くのはいやじゃないわ」とダイアナはため息をついた。「森ならどうにか書けるけれど、月曜日に出す作文はひどいの。ミス・ステイシーったら、自分の頭で物語を書きなさいなんて!」

「まあ、目をつぶってでも書けるわ」とアンは言った。

「あなたには想像力があるから簡単なのよ」とダイアナは言い返した。「でも、生まれつき想像力がなかったら、どうするの? あなたはもう作文を書き終えているんでしょう?」

アンは、善良で満足そうな顔をしないよう懸命に努めながら、ひどく失敗して、うなずいた。

「先週の月曜の晩に書いたの。題は『嫉妬深い恋敵、または死しても離れず』。マリラに読んで聞かせたら、くだらないばかげた話だって言ったわ。それからマシューに読んで聞かせたら、すばらしいって言ったの。わたしの好きな批評家は、ああいう人よ。悲しくて、甘美な物語なの。書きながら、子どもみたいに泣いてしまったわ。同じ村に住んで、心から愛し合っていたコーデリア・モンモランシーとジェラルディン・シーモアという、二人の美しい乙女のお話よ。コーデリアは、真夜中のような髪を冠のように戴いた、威厳ある黒髪の美女で、ほの暗く輝く目をしていたの。ジェラルディンは、紡いだ金のような髪と、ビロードのような紫の瞳を持つ、女王のような金髪の美人だったわ。」

「紫色の目の人なんて、わたし見たことないわ」とダイアナは疑わしそうに言った。

「わたしもないわ。ただ想像したの。ありふれたものじゃないものが欲しかったのよ。ジェラルディンには雪花石膏の額もあったの。雪花石膏の額って何か、わたし調べたのよ。十三歳になる利点の一つだわ。十二歳のときより、ずっとたくさんのことを知っているんですもの。」

「それで、コーデリアとジェラルディンはどうなったの?」と、二人の運命に少し興味を覚え始めたダイアナが聞いた。

「二人は寄り添うように美しく成長して、十六歳になったの。そこへバートラム・ドヴィアが故郷の村へやって来て、美しいジェラルディンに恋をしたのよ。彼女の馬車が暴走したとき、彼が命を救ったの。ジェラルディンは彼の腕のなかで気を失って、彼は三マイル(約4.8キロメートル)も彼女を抱いて家まで運んだの。馬車は完全に壊れてしまっていたからよ。求婚の場面を考えるのはかなり難しかったわ。参考にできる経験なんてないんですもの。わたし、ルビー・ギリスに男の人がどうやって求婚するか知っているか尋ねたの。姉妹がたくさん結婚しているから、この件では権威だと思ったのよ。ルビーは、マルコム・アンドレスが姉のスーザンに求婚したとき、廊下の食器棚に隠れていたんですって。マルコムはスーザンに、父親が農場を自分名義でくれたんだと言ってから、『かわいいお嬢さん、この秋に一緒にならないかい?』って言ったそうよ。するとスーザンは、『ええ――いいえ――わからないわ――ちょっと考えさせて』って答えて、それだけですぐ婚約したんですって。でも、そんな求婚はあまりロマンチックじゃないと思ったから、結局、できるだけ想像して書くしかなかったの。とても華やかで詩的なものにして、バートラムはひざまずいたわ。ルビー・ギリスは、今どきそんなことはしないって言ったけれど。ジェラルディンは一ページもある演説で承諾したの。その演説には、とても苦心したのよ。五回書き直したし、わたしの最高傑作だと思っているわ。バートラムは彼女にダイヤモンドの指輪とルビーの首飾りを贈って、結婚旅行にはヨーロッパへ行こうと言ったの。ものすごくお金持ちだったから。でも、ああ、二人の道には暗い影が落ち始めたの。コーデリアはひそかにバートラムを愛していたのよ。ジェラルディンに婚約を告げられると、首飾りとダイヤの指輪を見たこともあって、ただもう怒り狂ったわ。ジェラルディンへの愛情は苦い憎しみに変わり、彼女をバートラムと決して結婚させないと誓ったの。でも今までどおりジェラルディンの友だちのふりをしていた。ある夕方、二人は激しく荒れ狂う川にかかる橋の上に立っていたの。そしてコーデリアは、二人きりだと思って、野性的で嘲るように『ハ、ハ、ハ!』と叫びながら、ジェラルディンを崖下へ突き落としたの。でもバートラムはすべてを見ていて、すぐに流れへ飛び込み、『わが比類なきジェラルディン、私は汝を救う』と叫んだのよ。けれど、ああ、彼は自分が泳げないことを忘れていたの。それで二人は抱き合ったまま溺れ死んだわ。まもなく遺体が岸へ流れ着いたの。二人は同じ墓に葬られ、葬儀はほんとうに壮麗だったのよ、ダイアナ。お話は結婚式より葬式で終えるほうが、ずっとロマンチックだわ。コーデリアはといえば、後悔のあまり狂気に陥って精神病院に閉じ込められたの。あれこそ彼女の罪にふさわしい、詩的な報いだと思ったわ。」

「なんて、なんて素敵なの!」とダイアナはため息をついた。彼女はマシューと同じ流派の批評家だった。「自分の頭だけで、どうしてそんなにぞくぞくするお話を作れるの、アン。わたしの想像力も、あなたみたいによかったらいいのに。」

「育てさえすれば、きっとそうなるわ」とアンは励ました。「いいことを思いついたの、ダイアナ。あなたとわたしだけの物語クラブを作って、練習にお話を書きましょうよ。ひとりで書けるようになるまで、わたしが手伝ってあげる。想像力は育てるべきなのよ。ミス・ステイシーもそうおっしゃるもの。ただし、正しい方法でね。お化けの森のことを先生に話したら、あの件ではやり方を間違えたんだって言われたわ。」

こうして物語クラブは生まれた。はじめはダイアナとアンだけだったが、間もなくジェーン・アンドルーズ、ルビー・ギリス、それに想像力を育てる必要があると思った一、二人も加わった。男の子は入会禁止だった――ルビー・ギリスは、男の子を入れたほうがもっと面白くなるだろうにと言ったが――そして、会員は一週間に一作、物語を書かなければならなかった。

「ものすごく面白いのよ」とアンはマリラに話した。「一人ずつ、自分のお話を声に出して読んで、それからみんなで話し合うの。書いたものは全部、神聖にしまっておいて、子孫に読ませるつもりよ。みんな筆名で書くの。わたしの名前はロザモンド・モンモランシー。ほかの子たちも、なかなか上手よ。ルビー・ギリスはちょっと感傷的すぎるの。お話に恋愛を入れすぎるのよ。多すぎるのは少なすぎるより悪いでしょう。ジェーンはまったく入れないの。声に出して読まなくちゃならないとき、ばかみたいな気がするんですって。ジェーンのお話は、ものすごく分別があるわ。それからダイアナは、殺人を入れすぎるの。たいていは登場人物をどうしたらいいかわからなくなって、始末するために殺してしまうんですって。ほとんどいつも、わたしが何を書けばいいか教えてあげなくちゃならないけれど、それは難しくないわ。わたしには何百万ものアイデアがあるんですもの。」

「その物語を書くなんてこと、これまででいちばんばかげた遊びだわ」とマリラは鼻で笑った。「頭のなかがくだらないことでいっぱいになって、勉強に使うべき時間を無駄にするだけよ。物語を読むのだって十分悪いのに、書くなんてもっと悪い。」

「でも、どのお話にもちゃんと教訓を入れるように、みんなとても気をつけているのよ、マリラ」とアンは説明した。「そこはわたしが厳しく言っているの。善人はみんな報われ、悪人はみんなふさわしく罰せられるの。きっと健全な影響があるはずよ。教訓こそいちばん大切なの。アラン先生もそうおっしゃるわ。わたしのお話を一つ、先生とアラン夫人に読んで聞かせたら、二人とも教訓はすばらしいって賛成してくださったの。ただ、笑う場所が間違っていたの。人が泣いてくれるほうが、わたしは好き。ジェーンとルビーは、悲しい場面になるとほとんどいつも泣くわ。ダイアナが、わたしたちのクラブのことをジョセフィン伯母さんに書いたら、伯母さんからお話をいくつか送ってほしいって返事が来たの。それで、いちばんよくできたお話を四つ写して送ったの。ミス・ジョセフィン・バリーから、生まれてこのかた、これほど面白いものを読んだことはないってお返事が来たわ。それには少し困ってしまったの。だって、お話はどれもとても悲しくて、ほとんど全員が死んでしまうんですもの。でも、ミス・バリーが気に入ってくださってよかった。わたしたちのクラブも世の中で少しは役に立っているってことだわ。アラン夫人は、それが何をするにも目的であるべきだっておっしゃるの。ほんとうにそうしようと思っているけれど、楽しいときにはすぐ忘れてしまうの。大人になったら、少しでもアラン夫人のようになれたらいいな。見込みがあると思う、マリラ?」

「大いにあるとは言えないね」と、マリラは励ましになるはずの答えを返した。「アラン夫人が、あんたみたいにばかで忘れっぽい小娘だったことは、きっと一度もないだろうからね。」

「いいえ、でもアラン夫人だって、昔から今みたいに善良だったわけじゃないのよ」とアンは真剣に言った。「ご本人がおっしゃったの――つまり、女の子だったころはひどいいたずらっ子で、いつも困ったことを起こしていたって。それを聞いて、とても励まされたわ。ほかの人も悪い子や、いたずらっ子だったと聞いて励まされるなんて、わたし、とても悪いことかしら、マリラ? リンド夫人は悪いことだと言うの。どんなに小さいころのことでも、誰かが悪い子だったと聞くと、いつもぞっとするって。リンド夫人は、一度、牧師さんが子どものころ伯母さんの食料庫からイチゴのタルトを盗んだと告白するのを聞いたそうよ。それからその牧師さんを二度と尊敬できなくなったんですって。でも、わたしならそんなふうには思わないわ。告白したことをほんとうに立派だと思うし、悪いことをして後悔している今どきの小さな男の子たちにとっても、そんなことがあっても大人になれば牧師さんになれるかもしれないと知るのは、どんなに励みになるだろうと思うわ。わたしなら、そう感じるのよ、マリラ。」

「今の私が感じているのはね、アン」とマリラは言った。「食器を洗う時間がとっくに来ているということだよ。おしゃべりばかりして、予定より三十分も余計にかかった。まず働くことを覚えて、それから話すんだね。」


第二十七章 虚栄と心の悩み

四月も終わりに近いある夕方、扶助会の集まりから歩いて帰る途中、マリラは冬が終わり去ったことを悟った。春が若者にも陽気な者にも、そして老いた者にも悲しい者にも必ずもたらす、あの喜びの震えとともに。マリラは自分の考えや感情を主観的に分析するたちではなかった。自分では、扶助会のことや伝道用の箱、集会室の新しい敷物について考えているつもりだったかもしれない。しかし、その思いの底には、沈む陽のなかで淡い紫の霧へと煙る赤い畑、川向こうの牧草地に落ちる、先の尖ったモミの長い影、鏡のような森の池を囲む、深紅の芽をつけた静かなカエデ、灰色の土の下で目覚める世界と、ひそやかに脈打つ生命への、調和した感覚があった。春は大地に満ちており、その深く原初的な歓びのために、分別ある中年女のマリラの足取りまで軽く速くなっていた。

木々の網目越しにのぞき、窓から何筋もの栄光のきらめきを反しているグリーン・ゲイブルズを、マリラは愛情をこめて眺めた。湿った小道を慎重に歩きながら、アンがグリーン・ゲイブルズへ来る以前の扶助会の夜のように、冷えきったわびしい家へ帰るのではなく、ぱちぱちと元気に燃える薪火と、きちんと整えられた夕食の食卓へ帰れるのは、ほんとうに満足なことだと思った。

だからこそ、台所へ入ってみると火は完全に消え、アンの姿もどこにもないのを見て、マリラが当然のように失望し、腹を立てたのも無理はなかった。五時には必ずお茶の支度をしておくようアンに言っておいたのに、マシューが耕作から帰るまでに、自分で二番目にいい服を脱ぎ、急いで食事を作らなければならない。

「帰ってきたら、ミス・アンにはきっちり言ってやるよ」とマリラは険しく言った。彫刻刀で焚きつけを削る手には、必要以上の力がこもっていた。マシューはもう帰ってきていて、隅のいつもの席で辛抱強く夕食を待っていた。「ダイアナとどこかへ遊びに行って、物語を書いたり、台詞の練習をしたり、そんなばかげたことをしているんだろう。時間も自分の務めも、これっぽっちも考えちゃいない。こんなことは、急にぴしゃりと止めさせなければだめだ。アラン夫人が、今まで知ったなかでいちばん利口でかわいい子だと言ったって、私はかまわないよ。利口でかわいいかもしれないが、あの子の頭の中はくだらないことだらけで、次にどんな形で噴き出すか、見当もつかない。一つの奇行を卒業したと思えば、すぐまた別のを始めるんだから。でもまあ! 今日の扶助会でレイチェル・リンドが言ったからって、私があんなに腹を立てたのと、まったく同じことを今、自分で言っているじゃないか。アラン夫人がアンをかばってくださって、ほんとうによかった。そうでなかったら、みんなの前でレイチェルに、ひどくきついことを言っていたに違いない。アンには欠点がたくさんある、それは神様もご存じだし、私も否定する気はないよ。でも、あの子を育てているのは私であって、レイチェル・リンドじゃない。あの人なら、天使ガブリエルがアヴォンリーに住んでいたって、きっと欠点を見つけるだろうよ。とはいえ、午後は家にいて家のことを見ていなさいと言ったのに、こんなふうに出かけてしまうなんて、アンには許されない。欠点はいろいろあっても、これまで不従順だったり、信用できなかったりしたことはなかった。それが今は、そうだとわかって、本当に残念だよ。」

「まあ、まだわからんよ」とマシューが言った。辛抱強く、賢く、そして何より空腹だったマシューは、マリラの怒りを邪魔せずに吐き出させるのが最善だと考えていた。経験から、時機を誤った議論で邪魔されないほうが、マリラは目の前の仕事をずっと早く終えると学んでいたのである。「マリラ、あんまり早まってあの子を裁いているんじゃないか。言いつけを破ったと確かになるまで、信用できないなんて言うなよ。ちゃんと説明できることかもしれない――アンは説明するのが得意だからな。」

「家にいなさいと言ったのに、いないじゃないか」とマリラは言い返した。「それを私が納得するように説明するのは、難しいだろうね。もちろん、あんたがあの子の味方をするのはわかっていたよ、マシュー。でも、あの子を育てているのは私で、あんたじゃない。」

夕食の支度ができたころには暗くなっていたが、丸太橋を急いで渡ってくるアンの姿も、恋人たちの小径を息を切らして、義務を怠ったことを悔いながら上ってくるアンの姿も、まだ見えなかった。マリラは不機嫌に食器を洗い、片づけた。それから地下室へ降りる道を照らすろうそくが欲しくなり、いつもアンの机の上に置いてある一本を取りに東の切妻部屋へ上がった。それに火を灯して振り返ると、アン自身がベッドの上で、枕のなかにうつぶせになっているのが見えた。

「まあ、なんてこと」と驚いたマリラは言った。「アン、寝ていたのかい?」

「いいえ」と、くぐもった返事がした。

「じゃあ、具合が悪いのかい?」と心配して、マリラはベッドへ歩み寄った。

アンは、人の目から永遠に身を隠してしまいたいかのように、さらに深く枕へ顔を埋めた。

「いいえ。でもお願い、マリラ、行って。わたしを見ないで。わたし、絶望のどん底にいるの。もう、誰がクラスで一番になるとか、いちばんいい作文を書くとか、日曜学校の聖歌隊で歌うとか、そんなことはどうでもいいの。だってたぶん、わたしはもう二度とどこへも出かけられないでしょうから。わたしの生涯は終わったのよ。お願い、マリラ、行って。見ないで。」

「こんな話、聞いたことがあるかね?」と、わけがわからないマリラは言った。「アン・シャーリー、いったいどうしたというんだい? 何をしたの? 今すぐ起きて、話しなさい。今すぐだよ。さあ、何があったんだい?」

アンは絶望的な従順さで、床へ滑り降りた。

「わたしの髪を見て、マリラ」とアンはささやいた。

そこでマリラはろうそくを高く掲げ、アンの背中に重く流れ落ちる髪を注意深く見た。たしかに、ひどく奇妙なありさまだった。

「アン・シャーリー、髪に何をしたの? まあ、緑色じゃないか!」

もしそれが地上に存在する色だといえるなら、緑色だった――鈍く奇怪な青銅色の緑で、ところどころに元の赤毛の筋が残り、そのぞっとするような効果をいっそう強めていた。マリラは生涯で、あのときのアンの髪ほどグロテスクなものを見たことがなかった。

「ええ、緑色よ」とアンはうめいた。「赤毛ほどひどいものはないと思っていたわ。でも、緑色の髪はその十倍もひどいって、今はわかるの。ああ、マリラ、わたしがどれほど惨めか、あなたにはわからないわ。」

「どうしてこんなことになったのかは、私にはさっぱりわからないけれど、必ず聞き出すよ」とマリラは言った。「台所へおいで。ここは寒すぎる。何をしたのか、そっくり話しなさい。私はしばらく前から、また何か変わったことが起きると思っていたんだ。二か月以上も困った騒ぎを起こさなかったから、次がそろそろ来るに決まっていると思っていたよ。さあ、髪に何をしたの?」

「染めたの。」

「染めた? 髪を染めたっていうのかい! アン・シャーリー、そんなことは悪いことだと知らなかったのかい?」

「ええ、少し悪いことだとは知っていたわ」とアンは認めた。「でも、赤毛をなくせるなら、少しくらい悪いことをする価値はあると思ったの。代償は考えたわ、マリラ。それに、埋め合わせにほかのことでは特別いい子になるつもりだったの。」

「まあ」とマリラは皮肉に言った。「髪を染めるだけの価値があると私が決めたなら、少なくともまともな色に染めるだろうね。緑には染めないよ。」

「でも、緑に染めるつもりじゃなかったのよ、マリラ」とアンは打ちひしがれて抗議した。「悪いことをするなら、意味のある悪いことをするつもりだったの。あの人は、髪が美しい漆黒になるって言ったの――絶対にそうなるって請け合ったのよ。どうしてあの人の言葉を疑えたでしょう、マリラ? 自分の言葉を疑われる気持ちは、わたし知っているもの。それにアラン夫人は、嘘をついている証拠がないかぎり、誰かが真実を言っていないなんて疑ってはいけないっておっしゃるの。今は証拠があるわ――緑の髪は、誰にとっても十分すぎる証拠よ。でも、そのときはなかったの。だから、あの人の言ったことをすっかり信じたのよ。」

「誰が言ったの? 誰の話をしているんだい?」

「今日の午後に来た行商人よ。染め粉をその人から買ったの。」

「アン・シャーリー、あんなイタリア人を家に入れるなと、何度言ったと思っているの! あんな連中がこのあたりへ来るのを、そもそも助長するべきじゃないんだよ。」

「まあ、家には入れなかったわ。あなたの言ったことを覚えていたから、外へ出て、ちゃんとドアを閉めてから、玄関の段で品物を見たの。それに、あの人はイタリア人じゃなかったわ――ドイツ系ユダヤ人だったの。とても興味深い品物でいっぱいの大きな箱を持っていて、ドイツにいる奥さんと子どもたちをこちらへ呼び寄せるお金を稼ぐために、一生懸命働いているんだって言ったの。とても心をこめて話すものだから、胸を打たれたの。そんな立派な目的の助けになるよう、何か買いたくなったのよ。すると突然、髪染めの瓶が目に入ったの。行商人は、どんな髪でも美しい漆黒に染められるし、洗っても落ちないと保証してくれたわ。たちまち、美しい漆黒の髪をした自分が目に浮かんで、誘惑には逆らえなかったの。でも、瓶は七十五セントで、わたしには鶏を売ったお金の残りが五十セントしかなかった。行商人には、とても親切な心があったのだと思うわ。わたしだから五十セントで売ってあげる、それではただ同然だって言ってくれたの。だから買ったのよ。それで、その人が行ってしまうとすぐ、ここへ上がってきて、説明書どおり古いヘアブラシで塗ったの。瓶を一本全部使ったわ。そして、あの恐ろしい色に髪が変わるのを見たときには、悪いことをしたのを後悔したわ、ほんとうよ。それからずっと後悔しているの。」

「それが実のある後悔になるといいね」とマリラは厳しく言った。「虚栄心があんたをどこへ導いたか、目を開けてよく見たことを願うよ。いったいどうしたらいいものか。まずは髪をしっかり洗って、それで少しでもよくなるか見てみるしかないだろうね。」

そこでアンは石鹸と水で髪を洗い、激しくこすった。しかし、元の赤毛を磨いていたとしても、違いはなかっただろう。染め粉は洗っても落ちないという行商人の言葉だけは、ほかの点では誠実さを疑われようとも、まったく真実だったのだ。

「ああ、マリラ、どうすればいいの?」とアンは涙ながらに尋ねた。「こんなこと、絶対に忘れてもらえないわ。ほかの失敗――塗り薬入りのケーキのことも、ダイアナを酔わせたことも、リンド夫人にかんしゃくを起こしたことも、みんなもうだいたい忘れてくれた。でも、これは絶対に忘れないわ。わたしは品のない人間だと思われるわ。ああ、マリラ、『人を欺こうと織り始めれば、なんと複雑な網を織ることになるのだろう』。これは詩だけれど、本当のことよ。それに、ジョジー・パイはどんなに笑うでしょう! マリラ、わたし、どうしてもジョジー・パイに顔向けできない。わたしはプリンス・エドワード島でいちばん不幸な女の子よ。」

アンの不幸は一週間続いた。そのあいだ、どこへも出かけず、毎日髪を洗った。外部の人でこの致命的な秘密を知っていたのはダイアナだけだったが、絶対に誰にも言わないと厳かに約束し、ここで言っておくが、彼女は約束を守った。一週間が過ぎると、マリラはきっぱり言った。

「だめだよ、アン。これほど落ちない染め粉はないくらいだ。髪を切るしかない――ほかに方法はないよ。そんな髪では外へ出せない。」

アンの唇は震えたが、マリラの言葉が苦い真実であると理解していた。彼女は陰気なため息をつき、はさみを取りに行った。

「すぐに切って、終わらせて、マリラ。ああ、心が砕けた気がする。これはなんてロマンチックじゃない苦しみなの。物語の女の子たちは熱病で髪を失ったり、何かよいことをするお金のために売ったりするでしょう。そんなふうに髪を失うなら、わたし、こんなにつらくはないと思うの。でも、自分で恐ろしい色に染めたから髪を切られるなんて、何の慰めもないわね? 切っているあいだ、邪魔にならなければ、ずっと泣くつもりよ。あまりに悲劇的なことだもの。」

アンは切られているあいだ泣いた。しかしそのあと、二階へ上がって鏡を見ると、絶望のあまり静まり返っていた。マリラは徹底して仕事をしており、できるだけ短く刈り込まなければならなかったのである。控えめに言っても、その結果は似合うものではなかった。アンはすぐに鏡を壁へ向けた。

「髪が伸びるまで、二度と、二度と自分を見ないわ!」と、彼女は情熱的に叫んだ。

だがすぐに、鏡を元へ戻した。

「いいえ、見るわ。こんな悪いことをした罰を受けるの。部屋へ来るたびに鏡を見て、自分がどんなに醜いか確かめるわ。そして、想像で消してしまおうとも絶対にしない。まさか髪について虚栄心を持っていたなんて思わなかった。赤い髪だったのに。でも今は、長くて、豊かで、巻き毛だったから、わたし虚栄心があったんだってわかるの。次は鼻に何か起きるんじゃないかしら。」

短く刈られたアンの頭は、翌週月曜の学校で大騒ぎを引き起こした。しかし幸いなことに、ジョジー・パイでさえ、本当の理由を見当もつけなかった。もっともジョジーは、アンはまるで案山子みたいだと言うのを忘れなかった。

「ジョジーがそう言ったとき、わたしは何も言わなかったの」と、その晩、頭痛で長椅子に横になっているマリラにアンは打ち明けた。「それも罰の一部なんだから、辛抱強く耐えなくちゃと思ったの。案山子みたいだと言われるのはつらいし、何か言い返したかったわ。でも、言わなかった。ただ軽蔑した目で一度だけ見て、それから許してあげたの。人を許すと、とても徳の高い気持ちになるでしょう? これからは、全力をあげて善良になるつもり。そしてもう二度と美しくなろうとはしないわ。もちろん、善良でいるほうがいい。そうだとわかっているけれど、わかっていても信じるのが難しいことってあるわね。わたし、ほんとうに善良になりたいの、マリラ。あなたやアラン夫人やミス・ステイシーみたいに。そして大人になったら、あなたの名誉になる人になりたい。ダイアナは、髪が伸び始めたら、片側に大きなリボンを結んだ黒ビロードのリボンを頭に巻くといいって言うの。それならきっと似合うって。スヌードと呼ぶことにするわ――なんてロマンチックな響きでしょう。でも、わたし、話しすぎている? 頭にこたえる?」

「もう頭はよくなったよ。でも午後はひどかった。私の頭痛はますます悪くなっている。医者に診てもらわなければね。あんたのおしゃべりについては、気にならないとまでは言わないが――もうすっかり慣れたから。」

それが、マリラなりの、アンのおしゃべりを聞くのが好きだという言い方だった。


第二十八章 不運な百合の乙女

「もちろん、エレイン役はアンでなくちゃ」とダイアナが言った。「わたし、とてもじゃないけれど、あそこを流れていく勇気はないわ。」

「わたしも」とルビー・ギリスは身震いして言った。「平舟に二、三人で乗って座ったまま流れるなら平気よ。あれなら楽しいもの。でも横になって、死んだふりをするなんて――とてもできない。怖くて本当に死んでしまうわ。」

「もちろんロマンチックではあるわ」とジェーン・アンドルーズは認めた。「でも、じっとしていられないと思うの。どこにいるか、沖へ流されすぎていないか確かめるために、何分かごとに起き上がってしまうわ。そうしたら、効果が台なしでしょう、アン。」

「でも、赤毛のエレインなんて、ばかげているわ」とアンは嘆いた。「流れるのは怖くないし、エレインになれたらうれしい。でもやっぱりばかげているわ。ルビーがエレインになるべきよ。とても色白で、金色の長い髪がきれいなんですもの――エレインは『その明るい髪をすべて流していた』でしょう。それにエレインは百合の乙女よ。赤毛の人間は、百合の乙女にはなれないわ。」

「あなたの肌もルビーと同じくらい白いわ」とダイアナは熱心に言った。「それに髪は、切る前よりずっと濃い色になったわよ。」

「まあ、本当にそう思う?」とアンは嬉しさに敏感に頬を赤らめて叫んだ。「わたしも、ときどきそう思ったことがあるの――でも、そうじゃないって言われるのが怖くて、誰にも聞けなかったの。今なら、赤褐色の髪って呼べると思う、ダイアナ?」

「ええ、それにとてもきれいだと思う」とダイアナは言った。アンの頭を覆う短く絹のような巻き毛を、感心して眺めながら。その髪は、片側で大きく結んだ、とても粋な黒ビロードのリボンで押さえられていた。

彼女たちは果樹園の丘の下、池の岸に立っていた。白樺に縁取られた小さな岬が岸から突き出し、その先端には、釣り人や鴨撃ちをする人の便宜のため、水上へ張り出す小さな木の桟橋があった。ルビーとジェーンは、真夏の午後をダイアナと過ごすために来ており、アンも一緒に遊びに来ていた。

その夏、アンとダイアナは遊ぶ時間の大半を池の周辺で過ごした。アイドルワイルドは過去のものとなっていた。春にベル氏が、裏の牧草地にあった小さな木立の輪を容赦なく伐ってしまったのである。アンは切り株のあいだに座って泣いた――その姿のロマンチックさも、まったく意識しなかったわけではない。しかし、すぐに慰められた。何しろ、自分たちが言ったように、十四歳になろうとしている十三歳の大きな女の子には、ままごとの家のような子どもっぽい遊びはもう幼すぎたし、池のまわりにはもっと魅力的な遊びがあったのだ。橋の上からマスを釣るのはすばらしく楽しかったし、二人はバリー氏が鴨撃ち用に持っていた平底の小さなドリー舟を、自分たちで漕げるようになった。

『エレイン』を劇にしようと言い出したのはアンだった。彼女たちは前年の冬、学校でテニスンの詩を学んでいた。教育長が、プリンス・エドワード島の学校の英語課程に指定したのである。二人は詩を分析し、文法解析し、徹底的に解体してしまったので、そこに意味が少しでも残ったことが不思議なくらいだった。しかし少なくとも、美しい百合の乙女とランスロット、グィネヴィア、アーサー王は、二人にとって実在する人々になっていた。そしてアンは、自分がキャメロットに生まれなかったことを密かに残念がっていた。あの時代は今よりずっとロマンチックだった、とアンは言うのだった。

アンの計画は熱狂的に歓迎された。平舟を船着き場から押し出せば、流れに乗って橋の下を通り、最後には池の曲がり角に突き出た下流の岬へ流れ着くことを、少女たちは発見していた。これまでにも何度もそうして流れ下ったが、エレインごっこをするには、これ以上ないほど都合がよかった。

「じゃあ、わたしがエレインになるわ」とアンは、しぶしぶ譲った。主役を演じられたら喜んだだろうが、芸術的な感覚が役にふさわしい人を求めており、自分にはそれが不可能だと感じていたのである。「ルビーはアーサー王、ジェーンはグィネヴィア、ダイアナはランスロットね。でも最初は、あなたたちが兄たちと父親をやるのよ。老いた口のきけない召使いはいらないわ。誰か一人が横になると、平舟には二人分の場所がないもの。舟は全長にわたって、もっとも黒い絹布で覆わなくちゃ。お母さまの古い黒いショールが、ちょうどいいわよ、ダイアナ。」

黒いショールを用意すると、アンはそれを平舟に広げ、それから舟底に横たわった。目を閉じ、両手を胸の上で組んで。

「本当に死んでいるみたい」と、白樺のちらつく影の下にある、動かない白い小さな顔を見ながら、ルビー・ギリスは不安そうにささやいた。「なんだか怖くなってきたわ、みんな。こんなふうに演じるのって、本当に正しいことかしら? リンド夫人は、芝居なんてみんな、ひどく悪いことだって言うのよ。」

「ルビー、リンド夫人のことを話してはいけないわ」とアンは厳しく言った。「これはリンド夫人が生まれる何百年も前のお話なんだから、効果が台なしになるのよ。ジェーン、あなたが整えて。エレインは死んでいるんだから、話しているなんてばかげているわ。」

ジェーンは期待に応えた。掛け布団にする金織物はなかったが、黄色い日本製クレープの古いピアノ掛けが、みごとな代用品になった。白百合はそのとき手に入らなかったが、アンの組んだ手の片方に、背の高い青いアイリスを置くと、申し分のない効果が出た。

「さあ、準備完了よ」とジェーンは言った。「額に静かな口づけをして――ダイアナ、あなたは『妹よ、永遠にさらば』、ルビー、あなたは『さらば、愛しい妹よ』と言うの。二人とも、できるかぎり悲しそうにね。アン、お願いだから少し笑って。エレインは『笑んでいるかのように横たわっていた』でしょう。そう、もっといいわ。さあ、平舟を押し出して。」

そこで平舟は押し出されたが、その途中、底に打ち込まれていた古い杭に荒々しくこすれた。ダイアナ、ジェーン、ルビーは、平舟が流れにとらえられ、橋へ向かっていくのを見届けるとすぐ、森を駆け抜け、道を横切り、下流の岬へ走った。そこではランスロットとグィネヴィアと王として、百合の乙女を迎える準備をしているはずだった。

しばらくのあいだ、ゆっくり流れ下るアンは、自分の状況のロマンチックさを心ゆくまで楽しんでいた。ところが、まったくロマンチックではないことが起きた。平舟が水漏れを始めたのである。ほんの数分のうちに、エレインは飛び起き、金織物の掛け布団と、もっとも黒い絹布の覆いを拾い上げ、水が文字どおり流れ込んでいる舟底の大きな裂け目を、呆然と見つめなければならなくなった。船着き場の鋭い杭が、平舟に釘で留められていた詰め物の帯を引き裂いたのだった。アンはそのことを知らなかったが、自分が危険な状況にあることは、すぐに理解した。この調子では、下流の岬へ流れ着くよりずっと前に、平舟は水でいっぱいになって沈む。オールはどこ? 船着き場に置き忘れた! 

アンは息を呑むような小さな叫び声をあげたが、誰にも聞こえなかった。唇まで白くなったが、平静を失わなかった。望みは一つ――ただ一つだった。

「ひどく怖かったの」と、翌日アンはアラン夫人に話した。「平舟が橋へ流れていくあいだ、水が刻一刻と増していくのが、何年も続いたように思えたわ。アラン夫人、わたし、とても真剣にお祈りしたの。でも、お祈りのために目を閉じなかったの。神様がわたしを助けられる唯一の方法は、平舟が橋脚の一本に十分近づいて流れて、そこへよじ登らせてくださることだとわかっていたから。橋脚はただの古い木の幹でしょう。こぶや古い枝の切り株がたくさんあるのよ。お祈りするのは正しいことだったけれど、自分の役目も果たさなくちゃならないと、よくわかっていたの。『神様、どうか平舟を橋脚のそばへ寄せてください。あとはわたしがします』って、何度も何度も言ったわ。あんな場合には、飾り立てたお祈りを作ることなんて考えないものよ。でも、お祈りは聞き届けられたの。平舟が一瞬、橋脚にぶつかったから、わたしはスカーフとショールを肩にかけて、神様がくださった大きな枝の切り株によじ登ったの。それで、そこにいたの、アラン夫人。あの滑りやすい古い橋脚にしがみついて、上へも下へも行けなくなって。とてもロマンチックじゃない格好だったけれど、そのときはそんなこと考えなかった。水の墓場から逃れたばかりのときには、ロマンスのことなんてあまり考えないのよ。すぐに感謝のお祈りをして、それからは、しっかりつかまっていることに全力を注いだの。陸へ帰るには、たぶん人の助けを頼らなくてはならないって、わかっていたもの。」

平舟は橋の下へ流れ込み、それからすぐに川の真ん中で沈んだ。下流の岬で待っていたルビー、ジェーン、ダイアナは、それが目の前で消えるのを見て、アンも一緒に沈んだとしか思えなかった。悲劇への恐怖に凍りつき、顔を紙のように白くして、三人はしばらく立ち尽くした。それから声のかぎり叫びながら、森を通って上流へ向けて必死に走り出した。大きな道を横切るときにも、橋のほうを振り返ることはなかった。危うい足場に必死にしがみついていたアンには、走り去る三人の姿も、叫び声も聞こえた。助けはすぐ来るだろう。だがそのあいだ、アンの状況はきわめて不快だった。

数分が過ぎたが、不幸な百合の乙女には一時間にも思えた。なぜ誰も来ないの? 少女たちはどこへ行ったの? みんなそろって気を失ってしまったら? 誰も永遠に来なかったら? 疲れきって体がこわばり、もうつかまっていられなくなったら? アンは、長く油のような影が揺れる、意地悪な緑の深みを見下ろし、震えた。想像力は、ありとあらゆる恐ろしい可能性を彼女に示し始めた。

そのとき、腕と手首の痛みにもう一瞬も耐えられないと思ったまさにそのとき、ハーモン・アンドルーズのドリー舟を漕いだギルバート・ブライスが、橋の下へやって来た! 

ギルバートは見上げて、たいそう驚いたことに、大きな灰色の目に恐怖と軽蔑をともに浮かべながら、こちらを見下ろす小さな白い顔を見た。

「アン・シャーリー! いったい、どうしてそんなところにいるんだ?」と彼は叫んだ。

返事を待たずに橋脚へ舟を寄せ、手を差し出した。ほかに方法はなかった。アンはギルバート・ブライスの手にしがみつきながら、ドリー舟へ降りた。そこで、ずぶぬれで怒りに燃え、濡れたショールとクレープを腕いっぱいに抱えて船尾に座った。この状況で威厳を保つのは、たしかにひどく難しかった。

「何があったんだ、アン?」とギルバートはオールを取って尋ねた。

「エレインごっこをしていたの」と、アンは救助者を一度も見ずに、冷たく説明した。「わたしは舟――つまり平舟で、キャメロットまで流れていかなくてはならなかったの。平舟が水漏れを始めたから、橋脚へよじ登ったのよ。みんなは助けを呼びに行ったわ。船着き場まで漕いでいってくださる?」

ギルバートは親切にも船着き場まで漕いだ。アンは助けを軽蔑して、身軽に岸へ飛び降りた。

「どうもありがとう」と、彼女は高慢に言って背を向けた。だがギルバートも舟から飛び出し、彼女の腕を引き留めた。

「アン」と、彼は急いで言った。「ねえ。僕たち、仲よくできないかな? あのとき君の髪をからかったこと、本当に悪かったと思ってる。君を怒らせるつもりなんてなかったし、ただ冗談のつもりだったんだ。それに、もうずっと昔のことだ。今の君の髪はとてもきれいだと思う――本当だよ。友だちになろう。」

一瞬、アンはためらった。傷つけられた威厳の奥で、ギルバートの榛色の目に宿る、半ば恥ずかしげで半ば熱心な表情が、とても見ていてよいものだという、奇妙に新しく目覚めた意識があった。胸がすばやく、不思議に高鳴った。しかし、昔の恨みの苦さがすぐに彼女の揺らいだ決意を固くした。二年前のあの場面が、昨日のことのように鮮やかによみがえった。ギルバートは彼女を「にんじん」と呼び、学校全体の前で彼女に恥をかかせたのだ。その原因と同じくらい、ほかの年長者には笑うべきことに見えるかもしれないアンの怒りは、時が過ぎても少しも和らいでいなかった。彼女はギルバート・ブライスが大嫌いだった! 決して許すものか! 

「いいえ」と、彼女は冷たく言った。「わたしはあなたとは決して友だちにならないわ、ギルバート・ブライス。なりたくもないの!」

「わかったよ!」

ギルバートは頬を赤くして小舟へ飛び乗った。「もう二度と、友だちになろうなんて頼まないよ、アン・シャーリー。それに、僕だってかまわない!」

彼は反抗的にすばやくオールを漕ぎ、アンはカエデの下の、シダに覆われた急な小道を上った。頭は高く上げていたが、奇妙な後悔の気持ちを覚えていた。ギルバートには違う返事をすればよかったと、ほとんど思った。もちろん、彼はひどく彼女を侮辱したのだ。けれど――! どうにも、座り込んで思いきり泣いたら、少し楽になるだろうとアンは思った。恐怖と、長くしがみついていたことの反動が出て、彼女は本当にひどく動揺していた。

小道の半分まで上ったところで、アンはほとんど狂乱に近い状態で池へ駆け戻るジェーンとダイアナに出会った。果樹園の丘には誰もいなかった。バリー氏も夫人も出かけていたのである。そこでルビー・ギリスはヒステリーを起こし、どうにか自力で回復するように放っておかれ、ジェーンとダイアナはお化けの森を駆け抜け、川を渡ってグリーン・ゲイブルズへ飛んだ。しかしそこにも誰もいなかった。マリラはカーモディへ出かけ、マシューは裏の畑で干し草を作っていたのである。

「まあ、アン」とダイアナは息を切らし、ほとんどアンの首へ倒れ込むように抱きついて、安堵と喜びに泣いた。「アン――わたしたち、あなたが――溺れたと――思ったの――エレイン役を――あなたにさせたから――自分たちが殺したみたいに思ったの。ルビーはヒステリーなの――ああ、アン、どうやって助かったの?」

「橋脚の一本へよじ登ったの」とアンは疲れた声で説明した。「それから、ギルバート・ブライスがアンドルーズさんのドリー舟で来て、岸へ連れていってくれたの。」

「まあ、アン、なんてすばらしい人なの! なんてロマンチックなの!」と、ようやく話す息が戻ったジェーンが言った。「これからは、もちろん彼と口をきくのでしょう。」

「もちろん、きかないわ」と、アンは一瞬、昔の気性を取り戻して言い放った。「それに、ジェーン・アンドルーズ、わたし、もう二度と『ロマンチック』なんて言葉を聞きたくない。みんながあんなに怖がったこと、本当にごめんなさい。全部わたしのせいよ。わたし、不運な星の下に生まれたに違いないわ。わたしが何をしても、自分か、いちばん大切な友だちを困ったことに巻き込んでしまうの。お父さまの平舟を失くしてしまったわね、ダイアナ。それにもう、池で舟を漕ぐことは許されなくなるような予感がするわ。」

アンの予感は、予感というものにしては珍しく、当たった。その午後の出来事が知られると、バリー家とカスバート家は大騒ぎになった。

「アン、あんたはいつになったら分別を身につけるんだい?」とマリラはうめいた。

「きっと身につくと思うわ、マリラ」とアンは楽観的に答えた。東の切妻部屋のありがたい孤独のなかで、思いきり泣いたことで神経は落ち着き、いつもの明るさを取り戻していた。「分別のある人間になれる見込みは、今まででいちばん明るいと思うの。」

「どうしてそう思うのか、私にはわからないね」とマリラは言った。

「だって」とアンは説明した。「今日、新しくて価値のある教訓を学んだもの。グリーン・ゲイブルズへ来てからずっと、わたしは失敗ばかりしてきたけれど、どの失敗も、わたしの大きな欠点を一つずつ治してくれたの。アメジストのブローチの件は、自分のものではない物を勝手にいじる癖を治してくれた。お化けの森の失敗は、想像力を暴走させる癖を治してくれた。塗り薬入りケーキの失敗は、料理で不注意になる癖を治してくれた。髪を染めたことは、虚栄心を治してくれたわ。もう髪や鼻のことなんて考えない――少なくとも、めったに考えないの。そして今日の失敗は、ロマンチックすぎるところを治してくれるはずよ。アヴォンリーではロマンチックになろうとしても無駄だって、結論に達したの。何百年も前、塔のあるキャメロットではたぶん簡単だったのでしょうけれど、今はロマンスなんて評価されないのよ。この点では、わたしがまもなく大いに改善するのを、あなたもきっと見ることになるわ、マリラ。」

「そうなることを願っているよ」とマリラは疑わしげに言った。

だが、隅で黙って座っていたマシューは、マリラが出ていくと、アンの肩に手を置いた。

「ロマンスを全部捨てるなよ、アン」と彼は恥ずかしそうにささやいた。「少しくらいなら、いいものだ――もちろん、多すぎてはいけないが――少しは持っていなさい、アン。少しは持っていなさい。」


第二十九章 アンの人生の一時代

アンは恋人たちの小径を通って、裏の牧草地から牛を連れ帰っていた。九月の夕方で、森のすべての切れ間と空き地には、ルビー色の夕日の光が満ちていた。小径にもところどころ、その光が斑に落ちていたが、大半はすでにカエデの下でかなり影深く、モミの木の下の空間は、空気のように軽い葡萄酒を思わせる澄んだ紫の夕闇に満たされていた。風は木々の梢で鳴っていた。夕方のモミの木に風が奏でる音楽ほど、この世に甘美なものはない。

牛たちは穏やかに小径を進み、アンは夢見るようにそのあとを歩きながら、前年の冬に英語課程の一部として学び、ミス・ステイシーが暗記させた『マーミオン』の戦いの歌を声に出して繰り返していた。その疾走するような詩行と、槍のぶつかり合うイメージに心を躍らせながら。次の詩行まで来ると、

The stubborn spearsmen still made good
Their dark impenetrable wood,

彼女は恍惚として立ち止まり、あの英雄的な輪の一人である自分を、
よりよく想像するために目を閉じた。再び目を開けると、バリー家の畑へ通じる
門からダイアナが出てくるのが見えた。とても重大そうな顔をしていたので、
アンはただちに何か知らせがあると悟った。だが、あまりに熱心な好奇心を
見せるつもりはなかった。

「ダイアナ、この夕方、紫色の夢みたいじゃない? 生きているのがこんなにうれしくなるわ。朝には、朝がいちばん素敵だと思うの。でも夕方が来ると、夕方のほうがもっと美しいって思うのよ。」

「とてもきれいな晩ね」とダイアナは言った。「でも、ああ、アン、すごい知らせがあるの。あててみて。三回まであてていいわ。」

「シャーロット・ギリスが、やっぱり教会で結婚式をすることになって、アラン夫人がわたしたちに飾りつけを頼んだのね!」とアンは叫んだ。

「違うわ。シャーロットの恋人が反対したの。今まで教会で結婚した人はいないし、あまりにお葬式みたいに見えるって。ひどいわよね、あんなに楽しいのに。もう一度あてて。」

「ジェーンのお母さまが、誕生日会を開いてもいいって許してくださったの?」

ダイアナは首を振った。黒い目は楽しさに踊っていた。

「何のことだかわからないわ」とアンは絶望して言った。「まさか、昨晩の祈祷会のあと、ムーディー・スパージョン・マクファーソンがあなたを送って帰ったとか? そうなの?」

「まさか!」とダイアナは憤慨して叫んだ。「もしそうだったとしても、あんな嫌な子のことを自慢なんてしないわ! あなたにはあてられないと思ったの。今日、お母さまにジョセフィン伯母さんからお手紙が来て、来週の火曜日、あなたとわたしを町へ呼んで、博覧会のあいだ泊めてくださるんですって。ね!」

「まあ、ダイアナ」とアンはささやき、支えを求めるようにカエデの木にもたれかかった。「本当に言っているの? でも、マリラが行かせてくれないかもしれない。遊び歩くのを奨励するわけにはいかないって言うわ。先週、ジェーンがホワイト・サンズ・ホテルでのアメリカ人の演奏会へ、二人乗りの馬車で一緒に行こうって誘ってくれたときも、そう言ったもの。わたし、行きたかったのに、マリラは家で勉強しているほうが、わたしにもジェーンにもいいって言ったの。ものすごくがっかりしたわ、ダイアナ。とても悲しくて、寝るときお祈りもしなかったの。でも、そのことを後悔して、夜中に起きてお祈りしたわ。」

「いいことを思いついたわ」とダイアナが言った。「お母さまからマリラに頼んでもらいましょう。そうすれば、あなたを行かせてくれる可能性が高いわ。そして行けたら、わたしたち、生涯でいちばん楽しい時間を過ごせるわよ、アン。わたし、博覧会へ行ったことがないの。他の子たちが旅行の話をするのを聞くのは、ほんとうにじれったいわ。ジェーンとルビーは二回も行ったし、今年もまた行くのよ。」

「行けるかどうかわかるまで、まったく考えないことにするわ」とアンはきっぱり言った。「考えて、それからがっかりしたら、耐えられないもの。でも、もし行けるなら、そのころまでに新しい上着ができているからうれしいわ。マリラは、新しい上着なんて必要ないと思っていたの。古いのでもう一冬は十分だし、新しいドレスを買ってもらっただけで満足すべきだって。ドレスはとてもきれいよ、ダイアナ――紺色で、とても流行の形なの。マリラは今ではいつも、わたしのドレスを流行どおりに作ってくれるわ。マシューに、リンド夫人のところへ作ってもらいに行かせるつもりはないって言うの。とてもうれしい。服が流行の形だと、いい子でいるのがずっと簡単なのよ。少なくともわたしにはね。生まれつきいい人には、それほど違いはないのだと思うけれど。マシューが、新しい上着を買わなくちゃだめだと言ったから、マリラは素敵な青いブロードクロスを買って、カーモディの本当の仕立屋さんに作ってもらっているの。土曜の晩にはできるのよ。日曜日、新しい服と帽子で教会の通路を歩く自分を想像しないようにしているの。そんなことを想像するのは、正しくない気がするから。でも、どうしても頭に入り込んでくるのよ。帽子がとてもきれいなの。カーモディへ行った日に、マシューが買ってくれたの。金の紐と房がついた、今とても流行っている小さな青ビロードの帽子よ。あなたの新しい帽子も優雅で、とても似合うわ、ダイアナ。先週の日曜日、あなたが教会へ入ってくるのを見たとき、あなたがわたしのいちばん親しい友だちだと思うと、胸が誇りでいっぱいになったの。服のことをこんなに考えるのは、悪いことかしら? マリラは、とても罪深いことだと言うの。でも、こんなに面白い話題でしょう?」

マリラはアンが町へ行くことを許した。そして翌週の火曜日、バリー氏が少女たちを連れていくことになった。シャーロットタウンは三十マイル(約48キロメートル)離れており、バリー氏は同じ日に往復したかったので、朝早く出発する必要があった。しかしアンはすべてを喜びと数え、火曜の朝には日の出前に起きていた。窓から一目見ると、よい天気になるとわかった。お化けの森のモミの木の向こうの東の空は、雲ひとつなく銀色に輝いていた。木々の切れ間から、果樹園の丘の西側の切妻部屋に灯る明かりが見えた。それはダイアナも起きているしるしだった。

マシューが火を起こすころにはアンは身支度を終え、マリラが下りてくるころには朝食の用意までできていた。しかし興奮のあまり、自分ではほとんど食べられなかった。朝食後、粋な新しい帽子と上着を身につけると、アンは川を渡り、モミの木のなかを抜けて果樹園の丘へ急いだ。バリー氏とダイアナが待っており、ほどなく三人は道へ出た。

長い馬車の旅だったが、アンとダイアナは一瞬一瞬を楽しんだ。刈り取られた収穫畑を、朝の赤い日光が忍び寄るなか、湿った道をがたがた走るのは楽しかった。空気は新鮮で身が引き締まり、青い煙のような小さな霧が谷間を巻き、丘から漂い出していた。道はときに、カエデが緋色の旗を掲げ始めた森を通り、ときに、アンの肌を昔からの、半ば快い恐怖でぞくりとさせる橋で川を渡り、ときに、入り江の岸に沿って曲がり、風雨に灰色になった漁師小屋の小さな集まりを通り過ぎた。また、遠くまで連なる曲線を描く高地や、霧がかった青空を見渡せる丘へ上ることもあった。だが、どこを通っても話し合う興味深いものがたくさんあった。町に着き、「ビーチウッド」へたどり着いたのは、ほとんど正午だった。

それは緑のニレと枝を広げたブナに囲まれ、通りから奥まったところに立つ、立派な古い邸宅だった。ミス・バリーは鋭い黒い目をきらりとさせて、玄関で二人を迎えた。

「やっと私に会いに来たのね、アンの子」と彼女は言った。「まあまあ、ずいぶん大きくなったこと! 私より背が高いじゃないの。それに、以前よりずっときれいにもなったわ。まあ、言われなくてもわかっているでしょうけれど。」

「いいえ、まったくわかりませんでした」とアンは晴れやかに答えた。「前よりそばかすが減ったことは知っているから、それだけでも感謝すべきことはたくさんあるの。でも、ほかにもよくなったところがあるなんて、思いもよりませんでした。そう思ってくださるなんて、うれしいわ、ミス・バリー。」

ミス・バリーの家は、「非常に豪華に」整えられていたと、あとでアンはマリラに話した。ミス・バリーが食事の様子を見に行き、二人の田舎の少女を客間に残すと、彼女たちはその華麗さにやや気後れした。

「まるで宮殿みたいじゃない?」とダイアナはささやいた。「ジョセフィン伯母さんのお家に入ったのは初めてで、こんなにすごいとは思わなかった。ジュリア・ベルにこれを見せてあげたいわ――自分のお母さんの客間のことで、あんなに気取っているんですもの。」

「ビロードの絨毯」とアンはぜいたくそうにため息をついた。「それに絹のカーテン! こういうものを夢見たことがあるわ、ダイアナ。でもね、結局はあまり居心地よくない気がするの。この部屋には物がたくさんありすぎるし、どれも立派すぎて、想像力の入り込む余地がないのよ。貧しいことの慰めはそこね――想像できることがずっと多いの。」

二人にとって、町で過ごした日々は、何年も人生の基準となる出来事だった。最初から最後まで、喜びでいっぱいだった。

水曜日、ミス・バリーは二人を博覧会の会場へ連れていき、一日じゅうそこで過ごした。

「すばらしかったわ」と、あとでアンはマリラに語った。「あんなに面白いもの、想像したこともなかった。どの部門がいちばん面白かったか、本当にはわからないわ。馬と花と手芸品がいちばん好きだったと思う。ジョジー・パイは編みレースで一等賞を取ったの。わたし、本当にうれしかった。それに、うれしいと思えたこともうれしかったの。ジョジーの成功を喜べるなんて、わたしが進歩している証拠でしょう、マリラ? ハーモン・アンドルーズさんはグラヴェンシュタイン種のリンゴで二等賞、ベルさんは豚で一等賞を取ったの。ダイアナは、日曜学校の校長先生が豚で賞を取るなんてばかげていると言ったけれど、わたしにはどうしてかわからない。あなたはわかる? これから先、あの方がとても厳かにお祈りしていると、いつもそれを思い出してしまうって言うの。クララ・ルイーズ・マクファーソンは絵で賞を取ったし、リンド夫人は手製のバターとチーズで一等賞だった。アヴォンリーはかなりよく代表されていたでしょう? その日、リンド夫人もいらしていたの。知らない人ばかりのなかに、見慣れたあのお顔を見たら、自分が本当はどれほどリンド夫人を好きなのか、初めてわかったわ。何千人もの人がいたのよ、マリラ。自分がものすごく小さな存在に思えたわ。それからミス・バリーは、競馬を見るために観覧席へ連れていってくださったの。リンド夫人は行かなかった。競馬は忌まわしいものだし、教会員である自分は行かないことでよい手本を示す義務があるとおっしゃったの。でも、あんなにたくさんの人がいたから、リンド夫人がいないことなんて、誰も気づかなかったと思うわ。でも、わたしも競馬へあまり何度も行くべきではないと思うの。だって、本当に心を惹かれるものだもの。ダイアナはすっかり興奮して、赤い馬が勝つほうに十セント賭けないかって言ったの。わたしは勝たないと思ったけれど、賭けるのは断ったの。アラン夫人に何もかも話したかったし、そんなことを話すのはだめだと確信していたから。牧師夫人に話せないようなことをするのは、いつも悪いことよ。牧師夫人が友だちだと、良心が一つ増えたようなものなの。賭けなくて本当によかったわ。だって赤い馬が勝ったんだもの。十セント失っていたわ。だから、徳はそれ自体の報いになるのよ。気球に乗って上がっていく人も見たわ。わたし、気球に乗ってみたい、マリラ。きっとすごく胸が躍るわ。それから、占いを売っている人もいたの。十セント払うと、小鳥が運勢を一つ選んでくれるの。ミス・バリーはダイアナとわたしに十セントずつくださって、占ってもらわせてくださったの。わたしの運勢は、肌の色の濃い、とてもお金持ちの男の人と結婚して、海を越えて暮らすことになる、というものだったわ。それから見かける肌の色の濃い男の人をみんな注意して見たけれど、あまり好きになれそうな人はいなかった。それに、まだ探し始めるには早すぎるのでしょうね。ああ、絶対に忘れられない一日だったわ、マリラ。とても疲れて、夜は眠れなかったの。ミス・バリーは約束どおり、わたしたちを客用寝室に寝かせてくださった。それは優雅な部屋だったわ、マリラ。でもどういうわけか、客用寝室で眠ることは、昔思っていたほど素敵ではなかったの。それが大人になることの悪いところね。子どものころ、あんなに欲しかったものも、手に入ると半分もすばらしく思えないのよ。」

木曜日、少女たちは公園を馬車で回り、夜にはミス・バリーが、著名なプリマドンナ[訳注:オペラの主役級女性歌手]が歌う音楽アカデミーの演奏会へ連れていってくれた。アンにとってその夜は、きらびやかな歓びの幻だった。

「まあ、マリラ、言葉ではとても言い表せないわ。あまりに興奮して、話すことさえできなかったの。どんなにすごかったかわかるでしょう。わたし、うっとりして黙って座っていたの。セリツキー夫人は完璧に美しくて、白いサテンとダイヤモンドを身につけていた。でも歌い始めたら、ほかのことなんて何も考えなくなった。ああ、どんな気持ちだったか、言えないわ。でも、それから先は善良でいるのが決して難しくないように思えたの。星を見上げるときみたいな気持ちだった。涙が目に浮かんだけれど、ああ、とても幸福な涙だったの。すべて終わったときには、すごく悲しくなって、ミス・バリーに、これからどうやって平凡な生活へ戻ればいいのかわからないと言ったの。するとミス・バリーは、通りの向こうのレストランへ行ってアイスクリームを食べれば役に立つかもしれない、とおっしゃったの。それはとても散文的に聞こえたわ。でも驚いたことに、本当だった。アイスクリームはとてもおいしかったわ、マリラ。それに夜の十一時に、あそこでアイスクリームを食べているなんて、なんだかとてもすてきで放埒な気分だった。ダイアナは、自分は都会の生活のために生まれたんだと思うって言ったの。ミス・バリーは、わたしはどう思うかと聞いたけれど、ほんとうに思うことを話すには、まずとても真剣に考えなくちゃならないと答えたの。それで寝てから考えたわ。物事を考え抜くには、いちばんよい時間よ。そして結論に達したの、マリラ。わたしは都会生活のために生まれたんじゃないし、それでよかったと思う。ときどき夜の十一時に、きらびやかなレストランでアイスクリームを食べるのは素敵よ。でも、いつもなら、十一時には東の切妻部屋でぐっすり眠って、眠りながらでも、外に星が輝いていて、川向こうのモミの木に風が吹いているのを、どこかで知っているほうがいいわ。翌朝の朝食で、そうミス・バリーに言ったら、笑われた。ミス・バリーは、わたしが何を言っても、どんなに真面目なことを言っても、たいてい笑ったわ。わたし、あれはあまり好きじゃなかったと思う、マリラ。面白がらせようとして言ったわけじゃないもの。でも、ミス・バリーはとてももてなし上手なご婦人で、わたしたちを王侯のように扱ってくださったわ。」

金曜日は帰宅の日で、バリー氏が少女たちを迎えに来た。

「まあ、楽しく過ごせたならいいのだけれど」と、別れを告げながらミス・バリーは言った。

「ええ、もちろんです」とダイアナは答えた。

「アンの子、あなたは?」

「一瞬一瞬、すべて楽しかったです」とアンは言い、衝動的に老婦人の首へ腕を回し、しわの寄った頬に口づけた。ダイアナには、そんなことをする勇気は到底なく、アンの自由さに少し驚いた。しかしミス・バリーは喜び、ベランダに立って馬車が見えなくなるまで見送った。それから大きな家へ戻り、ため息をついた。あの若々しい命がなくなると、ひどく寂しく思えた。真実を言えば、ミス・バリーはやや自己中心的な老婦人で、自分以外の誰かをあまり気にかけたことがなかった。人は自分の役に立つか、楽しませてくれるかによってのみ、価値があった。アンは彼女を楽しませたから、老婦人の好意のなかで高い地位を占めたのだ。しかしミス・バリーは、アンの奇妙な言葉よりも、彼女の新鮮な熱意、隠しようのない感情、愛らしい小さなしぐさ、目と唇の甘やかさについて、しだいに考えるようになっていた。

「マリラ・カスバートが孤児院から女の子を引き取ったと聞いたときには、あの人はとんでもないばかだと思ったものだけれど」と、彼女は独り言を言った。「でも結局、それほど間違ってはいなかったようね。家にいつもアンみたいな子がいたら、私ももっとよい、もっと幸福な女になっていたかもしれない。」

アンとダイアナは、行きの旅と同じくらい楽しく、いや、旅の終わりに家が待っているという嬉しい意識があるぶん、それ以上に楽しく帰った。ホワイト・サンズを通り抜け、海岸道へ曲がったときは日没だった。向こうには、アヴォンリーの丘々がサフラン色の空を背景に暗く浮かんでいた。背後では、海から月が昇り、その光に照らされた海は、すべてが輝き、変容していた。曲がりくねった道沿いの小さな入り江はどれも、踊る波紋の驚異だった。波は下の岩に柔らかく砕け、強く新鮮な空気には海の香りがあった。

「生きていて、家へ帰れるなんて、なんて幸せなの」とアンは息をついた。

川にかかる丸太橋を渡ると、グリーン・ゲイブルズの台所の灯が、親しげに帰りを迎えてまばたいた。開いたドアからは暖炉の火が見え、冷たい秋の夜を横切って、温かな赤い輝きを放っていた。アンは楽しげに丘を駆け上り、台所へ飛び込んだ。食卓には温かい夕食が待っていた。

「帰ったのかい?」とマリラは編み物をたたみながら言った。

「ええ、ああ、帰ってこられてこんなにうれしいわ」とアンは喜びに満ちて言った。「時計にだってキスしたい気分よ。マリラ、焼いた鶏肉! まさかわたしのために作ってくれたの?」

「そうだよ」とマリラは言った。「長い馬車の旅のあとで、お腹がすくだろうし、食欲の出るものが必要だと思ってね。早く上着を脱いでおいで。マシューが入ってきたらすぐ夕食にしよう。あんたが帰ってきて、正直うれしいよ。あんたがいないと、ここはひどく寂しかったし、これほど長い四日はなかったね。」

夕食のあと、アンはマシューとマリラのあいだで火の前に座り、訪問のことを余すところなく話して聞かせた。

「すばらしい時間を過ごしたわ」と最後に幸福そうに言った。「人生の一時代を画する出来事だったと思う。でも、何よりよかったのは、家へ帰ってきたことよ。」


第三十章 クイーン学院組の結成

マリラは編み物をひざに置き、椅子の背にもたれた。目が疲れていた。近ごろ、目が疲れることが多いので、次に町へ行くときには眼鏡を替えなければならないと、ぼんやり考えた。

もうほとんど暗かった。十一月の濃い夕暮れがグリーン・ゲイブルズを包み、台所の光といえば、ストーブの中で踊る赤い炎だけだった。

アンはトルコ風に暖炉敷物の上で丸くなり、百の夏の陽光がカエデの薪から蒸留されているような、楽しい輝きを見つめていた。読書をしていたのだが、本は床へ滑り落ち、今は唇をわずかにほころばせ、夢を見ていた。活発な空想の霧と虹から、きらめくスペインの城が形づくられ、雲の国では不思議で胸躍る冒険が彼女に起きていた――それはいつでも見事に成功し、現実の人生のように彼女を困りごとへ巻き込むことは決してない冒険だった。

マリラは、暖炉の光と影が柔らかく交じり合うその暗さのなかでしか、決して表に出すことを許されない優しさをこめて、アンを見た。言葉や率直な眼差しで、愛情を容易に表すという教訓を、マリラはついに学べなかった。しかし、この細身で灰色の目をした少女を、表に出さないからこそいっそう深く強い愛情で愛することは学んでいた。その愛情のせいで、かえって甘やかしすぎることを恐れてもいた。アンに対して抱くほど、強く心を人間一人にかけるのは、どこか罪深いことではないかという不安な思いがあった。そして、そのための無意識の償いとして、少女がもっと愛しくなかった場合よりも、厳しく批判的に接していたのかもしれない。たしかにアン自身は、マリラがどれほど自分を愛しているか、少しも知らなかった。ときには、マリラはとても気難しく、共感も理解も明らかに足りないと、寂しく思うこともあった。だが、マリラにどれほど恩があるかを思い出し、すぐに自分をたしなめて、その考えを打ち消した。

「アン」とマリラは突然言った。「今日の午後、あんたがダイアナと出かけているあいだに、ミス・ステイシーが来たよ。」

アンは驚きとため息とともに、別の世界から戻ってきた。

「まあ、そうだったの? いなかったなんて、残念だわ。どうして呼んでくれなかったの、マリラ? ダイアナとわたしは、お化けの森にいただけなのよ。今の森はとても素敵。小さな森のもの――シダや、つやつやした葉っぱや、冬緑の実――はみんな、春まで葉の毛布の下にしまい込まれたみたいに眠っているの。先月の月明かりの夜に、虹色の肩掛けをした小さな灰色の妖精が、つま先でそっと歩いてきて、そうしたんだと思うわ。でもダイアナは、そのことについてあまり何も言わなかった。ダイアナは、お化けの森に幽霊を想像で作り出したことで、お母さまに叱られたのを忘れていないの。それはダイアナの想像力に、とても悪い影響を与えたわ。しぼませてしまったのよ。リンド夫人は、マートル・ベルはしぼんだ人間だって言うの。どうしてマートルがしぼんだのか、ルビー・ギリスに聞いたら、恋人に捨てられたからじゃないかしらって言ったわ。ルビー・ギリスは恋人のことしか考えないし、年を取るほどひどくなるの。若い男の人も、いるべきところにいるぶんには悪くないけれど、何にでも引っ張り出してくるのはよくないでしょう? ダイアナとわたし、真剣に約束しようと考えているの。決して結婚しないで、素敵な独身のおばあさんになって、一生一緒に暮らすって。でもダイアナは、まだ完全には決めていないの。もしかすると、野性的で、大胆で、悪い若い男の人と結婚して、立ち直らせるほうが、もっと気高いかもしれないと思うんですって。ダイアナとわたしは、今では真面目な問題についてたくさん話すのよ。前よりずっと大人になったんだから、子どもじみたことを話すのはふさわしくないと思っているの。もうすぐ十四歳になるなんて、厳粛なことよ、マリラ。先週の水曜日、ミス・ステイシーは十代の女の子をみんな川へ連れていって、そのことについて話してくださったの。十代にどんな習慣を身につけ、どんな理想を抱くか、どれほど慎重になっても慎重すぎることはないって。二十歳になるころには人格ができあがり、生涯全体の土台が築かれてしまうから。そして土台がぐらついていたら、その上に本当に価値のあるものは何も建てられない、とおっしゃったの。ダイアナとわたしは、学校から帰るときにその話をしたわ。ものすごく厳かな気持ちになったのよ、マリラ。そして、ほんとうに注意深くなって、立派な習慣を身につけ、できるだけたくさん学び、できるだけ分別のある人になろうと決めたの。そうすれば二十歳になるころには、人格がきちんとできあがっているでしょう。二十歳になるなんて考えるだけで、ぞっとするほど恐ろしいわ、マリラ。あまりに年を取って、大人みたいに聞こえるもの。でも、今日の午後、ミス・ステイシーは何のために来たの?」

「それをあんたに話したいんだよ、アン。私が一言口を挟む隙を、いつかくれればね。先生はあんたのことを話していたんだよ。」

「わたしのことを?」

アンは少しおびえたような顔をした。それから顔を赤らめ、叫んだ。

「ああ、先生が何を言ったかわかるわ。マリラ、ちゃんと話そうと思っていたのよ、本当よ。でも忘れてしまったの。昨日の午後、学校でカナダ史を勉強しなければならなかったのに、『ベン・ハー』を読んでいるところをミス・ステイシーに見つかったの。ジェーン・アンドルーズが貸してくれたのよ。昼休みに読んでいて、ちょうど戦車競走のところまで来たら、授業が始まってしまったの。どうなるか知りたくて、もうたまらなかったの――もちろん、ベン・ハーは勝つに決まっていると思ったわ。そうでなかったら詩的正義に反するもの――だから歴史の本を机のふたに開いて、それから『ベン・ハー』を机とひざのあいだに挟んだの。歴史を勉強しているように見せながら、実は『ベン・ハー』に夢中になっていたのよ。あまりに面白くて、ミス・ステイシーが通路をこちらへ来ているのに、ぜんぜん気づかなかった。ふと見上げると、先生が立っていて、悲しそうにわたしを見下ろしていたの。どんなに恥ずかしかったか、言えないわ、マリラ。特にジョジー・パイがくすくす笑うのを聞いたときには。ミス・ステイシーは『ベン・ハー』を取り上げたけれど、そのときは何もおっしゃらなかった。休み時間にわたしを残して、お話しくださったの。わたしは二つの点で、とても悪いことをしたと。まず、勉強に使うべき時間を無駄にしたこと。次に、物語本を読んでいるのに、歴史を読んでいるように見せかけて、先生をだましたこと。その瞬間まで、自分のしていたことが人をだますことだとは、わたし気づいていなかったの。ショックだったわ。ひどく泣いて、ミス・ステイシーに許してください、もう二度としませんと言ったの。それから罰として、一週間まるまる『ベン・ハー』を一度も見ないと申し出たの。戦車競走がどうなったか見るためにも、絶対に読まないって。でもミス・ステイシーは、そんなことを要求なさらず、気前よく許してくださったの。だから、そのことをわざわざここまで来て、あなたに話すなんて、あまり親切じゃないと思うわ。」

「ミス・ステイシーは、そんなことを一言も私に話していないよ、アン。あんたの悪い良心が騒いでいるだけだ。物語本を学校へ持っていってはいけないよ。あんたは、どうせ小説を読みすぎなんだから。私が子どものころは、小説なんて一目見ることさえ許されなかったものだよ。」

「でも『ベン・ハー』を、どうして小説なんて呼べるの? あんなに宗教的な本なのに」とアンは抗議した。「もちろん、日曜日に読むには少し興奮しすぎるから、平日にだけ読んでいるわ。今のわたしは、ミス・ステイシーかアラン夫人が、十三歳と四分の三の女の子にふさわしい本だと思うものしか、どんな本も読まないの。ミス・ステイシーとそう約束したの。ある日、『幽霊屋敷の恐るべき謎』という本を読んでいるのを先生に見つかったの。ルビー・ギリスが貸してくれたのだけれど、ああ、マリラ、とても面白くて不気味だった。血管のなかの血が凍るようだったの。でもミス・ステイシーは、とてもくだらなくて不健全な本だと言って、もうそれも、それに似た本も読まないように頼まれたの。似た本を読まないと約束するのは平気だったけれど、どう終わるのか知らないまま、あの本を返すのは苦しかったわ。でも、ミス・ステイシーを好きな気持ちは試練に耐えたの。ちゃんと返したわ。マリラ、本当に特定の人を喜ばせたいと願うなら、どんなことでもできるものよ。」

「ランプをつけて、仕事を始めようかね」とマリラは言った。「ミス・ステイシーが何を言ったかなんて、あんたは聞きたくないのがよくわかる。あんたは、自分のおしゃべりの音のほうが何より気になるんだから。」

「まあ、マリラ、もちろん聞きたいわ」とアンは反省して叫んだ。「もう一言も言わない――本当に一言も。自分がおしゃべりすぎることはわかっているし、直そうとしているの。まだ言いすぎてはいるけれど、わたしが言いたいのに言わないでいることがどれだけあるか、あなたが知っていたら、少しはほめてくれるでしょう。話して、マリラ。」

「ではね、ミス・ステイシーは、クイーン学院の入学試験を受けるつもりの上級生で、組を作りたいそうだよ。放課後一時間、特別授業をするつもりだそうだ。そして、あんたもその組に加わらせたいか、マシューと私に聞きに来たんだ。あんた自身はどう思う、アン? クイーン学院へ行って、教師になる試験に受かりたいかい?」

「まあ、マリラ!」

アンはひざ立ちになり、手を組んだ。「それはわたしの人生の夢だったの――つまり、ルビーとジェーンが入学試験の勉強をする話を始めた、ここ半年ほどのあいだは。でも、絶対に無駄だと思ったから、何も言わなかったの。先生になれたら、どんなにいいでしょう。でも、ものすごくお金がかかるんじゃない? アンドルーズさんは、プリッシーを卒業させるのに百五十ドルかかったって言っていたわ。プリッシーは幾何学が苦手だったわけでもないのに。」

「その点は心配しなくていいと思うよ。マシューと私があんたを育てることにしたとき、できるかぎりのことをして、よい教育を受けさせようと決めたんだ。女の子は、実際に必要になるかどうかにかかわらず、自分で生計を立てられるように育てるべきだと私は思う。マシューと私がここにいるかぎり、グリーン・ゲイブルズにはいつでもあんたの家がある。でも、この先のわからない世の中で、何が起きるかは誰にもわからないから、備えておくほうがいい。だからクイーン学院組に入りたければ、入っていいよ、アン。」

「まあ、マリラ、ありがとう。」

アンはマリラの腰へ腕を回し、真剣にその顔を見上げた。「マシューにもあなたにも、心から感謝しているわ。一生懸命勉強して、あなたたちの名誉になるよう、最善を尽くす。幾何学にはあまり期待しないでほしいけれど、がんばれば、ほかのことでは誰にも負けないと思うの。」

「きっと、十分にやっていけるだろうね。ミス・ステイシーも、あんたは利口でよく勉強すると言っていたよ。」

ミス・ステイシーがアンについて何と言ったか、マリラはどんなことがあっても話さなかっただろう。それは虚栄心を甘やかすことになる。「本の勉強で自分を殺すほど、極端になる必要はないよ。急ぐことはない。入学試験を受けるまで、まだ一年半もある。でも、早く始めてしっかり基礎を固めるのはいいことだと、ミス・ステイシーは言っていた。」

「これからは、今まで以上に勉強が面白くなるわ」とアンは幸福そうに言った。「人生の目的ができたんですもの。アラン先生は、誰もが人生の目的を持って、忠実にそれを追い求めるべきだっておっしゃるの。ただ、まずそれが価値ある目的か確かめなければならないとも。ミス・ステイシーみたいな先生になりたいというのは、価値ある目的だと言えるでしょう、マリラ? とても気高い職業だと思うわ。」

やがてクイーン学院組が結成された。ギルバート・ブライス、アン・シャーリー、ルビー・ギリス、ジェーン・アンドルーズ、ジョジー・パイ、チャーリー・スローン、ムーディー・スパージョン・マクファーソンが加わった。ダイアナ・バリーは両親がクイーン学院へ行かせるつもりではなかったので、加わらなかった。アンには、それは災難以外の何物でもなかった。ミニー・メイがクループ[訳注:呼吸困難を伴う小児の急性喉頭炎]になった夜以来、アンとダイアナはどんなことでも離れたことがなかった。クイーン学院組が初めて放課後の特別授業に残った夕方、アンがダイアナがほかの生徒たちとゆっくり出ていき、白樺の小径とスミレの谷を一人で帰るのを見ると、席に座ったまま、衝動的に親友のあとを追いかけずにいるのが、やっとだった。のどが詰まり、目に浮かんだ涙を隠すため、持ち上げたラテン語文法書のページの陰へ、急いで顔を引っ込めた。ギルバート・ブライスやジョジー・パイに、その涙を見せるなど、世界の何にも代えられなかった。

「でも、ああ、マリラ。ダイアナが一人で出ていくのを見たとき、先週の日曜日の説教でアラン先生がおっしゃったように、死の苦しみを味わった気がしたの」と、その晩アンは悲しげに言った。「ダイアナも入学試験の勉強をするなら、どんなにすばらしかったでしょう。でも、リンド夫人が言うように、この不完全な世界で、すべてを完璧にはできないのよ。リンド夫人は、ときにはあまり慰めてくれる人ではないけれど、非常に本当のことをたくさん言うのは間違いないわ。それに、クイーン学院組は、とても面白くなりそう。ジェーンとルビーは、ただ先生になるために勉強するの。それが二人の野心の最高点よ。ルビーは卒業してから二年だけ教えて、それから結婚するつもりだって。ジェーンは一生を教育に捧げて、決して、決して結婚しないと言うの。先生をしていればお給料をもらえるけれど、夫は何も払ってくれないし、卵やバターを売ったお金を分けてほしいと言うと不機嫌になるからですって。ジェーンは、悲しい経験から話しているのだと思うわ。リンド夫人は、ジェーンのお父さまはまったくの変わり者で、二番搾りの脱脂乳よりけちだとおっしゃるもの。ジョジー・パイは、教育そのもののために学院へ行くつもりだと言うの。自分で生計を立てる必要はないからですって。もちろん慈善で暮らしている孤児は違う、あの子たちは自分でがんばらなくちゃならない、と言うのよ。ムーディー・スパージョンは牧師さんになるつもり。リンド夫人は、あんな名前にふさわしく生きるには、ほかの何者にもなれないだろうって言うの。悪いことだといいけれど、ムーディー・スパージョンが牧師さんになると思うと、わたしどうしても笑ってしまうわ。あの大きくて丸い顔、小さな青い目、ひらひらみたいに突き出た耳で、とてもおかしな子なんですもの。でも、大人になればもっと知的に見えるかもしれないわ。チャーリー・スローンは政治家になって、国会議員になるつもりだと言うけれど、リンド夫人は、絶対に成功しないと言うの。スローン家の人たちはみんな正直だからで、今どき政治で出世するのは悪党だけなのですって。」

「ギルバート・ブライスは何になるつもりなの?」と、アンが『カエサル』を開くのを見て、マリラは尋ねた。

「ギルバート・ブライスに人生の野心があるなら、それが何なのか、わたしはたまたま知らないわ」とアンは軽蔑して言った。

今では、ギルバートとアンのあいだには、公然とした競争があった。以前の競争はどちらかといえば一方的だったが、今やギルバートがアンと同じほど、クラスで一番になろうと決意しているのは疑いなかった。彼はアンにふさわしい好敵手だった。クラスのほかの生徒たちは、暗黙のうちに二人の優秀さを認め、彼らと競おうなどとは夢にも思わなかった。

池のほとりで、アンが彼の許しを求める言葉を聞くのを拒んだ日から、前述の断固とした競争を除けば、ギルバートはアン・シャーリーの存在をまったく認めないようにしていた。ほかの少女たちとは話し、冗談を言い、本やなぞなぞを交換し、授業や計画について語り、祈祷会や討論会の帰りには、ときどき誰か一人と家まで歩いた。しかし、アン・シャーリーだけは完全に無視した。そしてアンは、無視されるのは楽しくないことを知った。気にしない、と頭を振って自分に言い聞かせても無駄だった。移り気な少女らしい心の奥底で、彼女は自分が気にしていると知っていた。そして、もし輝く湖水のあの日をもう一度やり直せるなら、まったく違う返事をするだろうとも。どういうわけか突然、そして密かな狼狽とともに、彼に対して大切に抱いてきた昔の恨みが消えていることに気づいた――まさに、その恨みの支えを最も必要としていたときに。あの忘れがたい出来事の一つ一つと、そのときの感情を思い返し、昔の満足のいく怒りを感じようとしても無駄だった。池のそばのあの日に、怒りは最後の弱々しい炎を上げて消えていた。アンは知らぬあいだに許し、忘れてしまっていたと悟った。しかし、もう遅すぎた。

少なくともギルバートにも、ほかの誰にも、ダイアナにさえ、自分がどれほど後悔し、あんなに高慢でひどいことをしなければよかったと願っているか、決して気づかせない! 彼女は「自分の感情をもっとも深い忘却のなかに包み隠す」と決めた。そして、ここで言っておくが、アンはそれを実にうまく成し遂げたので、ギルバートは――彼も見かけほど無関心ではなかったのかもしれない――アンが自分の仕返しの軽蔑に傷ついているのだという考えから、慰めを得ることさえできなかった。彼にとって唯一の乏しい慰めは、アンがチャーリー・スローンを、容赦なく、絶えず、そして理由もなく冷たくあしらうことだった。

そのほかは、楽しい義務と勉強の連続のうちに冬が過ぎた。アンにとって、日々は年という首飾りに連なる金の玉のように滑っていった。幸福で、熱心で、興味に満ちていた。学ぶべき授業があり、勝ち取るべき名誉があった。読むべき楽しい本、新しく練習する日曜学校の聖歌隊の曲、アラン夫人と牧師館で過ごす楽しい土曜の午後もあった。そしてアンが気づかぬうちに、また春がグリーン・ゲイブルズへ来て、世界は再び花で満ちた。

そのころには、勉強はほんの少し色あせた。ほかの生徒たちが緑の小道、葉の茂る森の切り通し、牧草地の小径へ散っていくあいだ、学校に残るクイーン学院組は、窓の外を物欲しそうに眺めた。そしてラテン語の動詞もフランス語の練習問題も、凛とした冬の日々に持っていた味わいと魅力を、なぜか失っていることを知った。アンもギルバートも、だらけて無関心になった。学期が終わり、幸福な休暇の日々が薔薇色に目の前へ広がると、教師も生徒も同じように喜んだ。

「この一年、あなたたちはよくがんばりました」と、最終日の夕方、ミス・ステイシーは彼らに言った。「だから楽しく愉快な休暇を過ごすに値します。屋外の世界でできるだけ楽しく過ごして、来年を乗り切るための健康と活力と意欲を、たっぷり蓄えてください。来年は正念場ですよ――入学試験前の最後の一年なのですから。」

「ミス・ステイシー、来年も戻っていらっしゃるの?」とジョジー・パイが尋ねた。

ジョジー・パイは質問をためらわない。この場合、クラスのほかの生徒たちは彼女に感謝していた。誰もミス・ステイシーに尋ねる勇気はなかったが、全員が知りたかったからである。しばらく前から、ミス・ステイシーは来年戻らない――自分の故郷の学区にある上級学校から職を勧められ、引き受けるつもりらしい――という不安なうわさが学校中を駆け巡っていた。クイーン学院組は息を詰めて返事を待った。

「ええ、そうするつもりです」とミス・ステイシーは言った。「別の学校へ行こうかと思ったこともありました。でも、アヴォンリーへ戻ることに決めました。正直に言うと、ここの生徒たちにとても興味を持つようになって、離れることができないとわかったのです。だから残って、あなたたちを最後まで見届けます。」

「ばんざい!」とムーディー・スパージョンが言った。ムーディー・スパージョンが感情にこれほど突き動かされたことは、それまで一度もなかった。そのため一週間、思い出すたびに居心地悪そうに赤くなった。

「ああ、うれしい」とアンは目を輝かせて言った。「大好きなステイシー先生、もし戻っていらっしゃらなかったら、ほんとうに恐ろしいわ。別の先生がここへ来たら、わたし、勉強を続ける気力なんて持てないと思う。」

その晩、家へ帰ると、アンは教科書を全部屋根裏から下ろした古いトランクへしまい、鍵をかけ、その鍵を毛布箱のなかへ投げ込んだ。

「休暇中は、学校の本を一冊たりとも見ないつもりよ」とマリラに言った。「学期のあいだ、できるかぎり一生懸命勉強したし、あの幾何学は、文字が変わっていても第一巻の定理をすべて暗唱できるくらい読み込んだの。もう、分別のあるものすべてに疲れた気がする。夏のあいだは想像力を思いきり走らせるつもりよ。まあ、心配しないで、マリラ。常識的な範囲で暴れさせるだけよ。でも今年の夏は、ほんとうに楽しく愉快に過ごしたいの。だって、子どもでいられる最後の夏になるかもしれないもの。リンド夫人は、来年も今年みたいに背が伸び続けたら、もっと長いスカートをはかなくてはならないって言うの。わたしは脚と目ばかりが伸びているって。長いスカートをはくようになったら、それにふさわしく、とても威厳を持って暮らさなくちゃと思うわ。そうなったら、妖精を信じることさえできないかもしれない。だからこの夏は、心のすべてをあげて妖精を信じるつもり。とても楽しい休暇になりそうよ。ルビー・ギリスがもうすぐ誕生日会を開くし、日曜学校のピクニックも、来月には伝道演奏会もあるもの。それからバリーさんが、ある晩、ダイアナとわたしをホワイト・サンズ・ホテルへ連れていって、そこで夕食を食べさせてくださるって。あそこでは夜に夕食を出すでしょう。ジェーン・アンドルーズは去年の夏に一度行ったのだけれど、電灯や花や、とてもきれいなドレスを着たご婦人のお客さまを見るのは、目もくらむようだったって言うの。あれが自分の最初の上流社会の一瞥で、死ぬ日まで忘れないでしょうって。」

翌日の午後、リンド夫人は、なぜマリラが木曜の扶助会に出なかったのかを尋ねに来た。マリラが扶助会に来ないときには、グリーン・ゲイブルズで何か悪いことが起きていると、皆が知っていた。

「木曜日、マシューの心臓の発作がひどくてね」とマリラは説明した。「置いて出る気にはなれなかったんだよ。ああ、今はまたよくなったけれど、以前より発作が頻繁になって、心配なんだ。医者は興奮を避けるように気をつけなければならないと言っている。まあ、それは簡単だよ。マシューは興奮を探し歩くような人では、今までも決してなかったからね。でも、重い仕事もしてはいけないんだ。マシューに働くなと言うのは、息をするなと言うのと同じくらい無駄だけれど。上着を脱いでおいで、レイチェル。お茶を飲んでいくだろう?」

「そこまで強くおっしゃるなら、泊まっていってもいいでしょうね」とリンド夫人は言った。もちろん、彼女にはほかのことをする気など、最初からまったくなかった。

リンド夫人とマリラは、アンがお茶を入れ、リンド夫人の批評にさえ文句を言わせないほど、軽く白い温かいビスケットを焼いているあいだ、客間で心地よく過ごした。

「アンは、本当に利口な女の子になったと言わなくてはね」と、日没のころ、マリラが小道の端まで見送ると、リンド夫人は認めた。「あんたには大した助けでしょう。」

「そうだよ」とマリラは言った。「今では本当にしっかりしていて、頼りになる。以前は、あの軽はずみなところが一生直らないんじゃないかと心配したけれど、もう直った。今なら何を任せても不安はないよ。」

「三年前、私が初めてここへ来た日に、あの子があんなに立派になるとは思わなかったよ」とリンド夫人は言った。「まあまあ、あの子のかんしゃくを忘れる日が来るかしら! あの夜、家へ帰ってトーマスに言ったのよ。『トーマス、よく覚えておいでなさい。マリラ・カスバートは自分の取った行動を、いつか後悔することになるわ』って。でも、私の間違いだったし、間違っていて本当によかった。マリラ、私は自分の間違いを認められないような人間じゃないよ。いいえ、それは昔からの私のやり方じゃない、ありがたいことにね。私はアンを見誤った。でも無理もなかったのよ。あんなに変わっていて、予想のつかない、魔女みたいな子どもは、この世にほかにいなかったもの。ほかの子どもに通じる規則では、あの子を計算しきれなかった。この三年で、あの子があれほどよくなったのは、まったく驚くべきことだよ。でも、とりわけ見た目がね。本当にきれいな女の子になった。もっとも私は、あの青白くて目の大きいタイプが、特に好みというわけではないけれど。ダイアナ・バリーやルビー・ギリスみたいに、もっと生気と色のあるほうが好きだよ。ルビー・ギリスは目を引く容貌だしね。でもどういうわけか――私にもわからないけれど――アンとほかの子たちが一緒にいると、アンは半分も美人じゃないのに、あの子たちが少し平凡で、やりすぎみたいに見えるのよ。あの子が水仙って呼んでいる白い六月の百合と、大きな赤いシャクヤクを並べたようにね。」


第三十一章 川と海の出会うところ

アンは「よい」夏を過ごし、心から楽しんだ。アンとダイアナは、ほとんど屋外で暮らしていた。恋人たちの小径、木の精の泉、柳の湖、ヴィクトリア島が与える楽しみを、心ゆくまで味わった。マリラはアンの放浪に異議を唱えなかった。ミニー・メイがクループになった夜に来たスペンサーベールの医師が、休暇の初めのある午後、患者の家でアンに会った。彼はアンを鋭く見て、口をすぼめ、頭を振り、別の人を通じてマリラ・カスバートへ伝言を送った。

「その赤毛の女の子を、夏じゅう外気のなかで過ごさせなさい。そして、歩き方にもっと弾みが出るまで、本を読ませないこと。」

この伝言は、マリラを大いに恐れさせた。細心の注意を払って従わなければ、アンは肺病で死ぬと宣告されたように感じたのである。その結果、アンは自由と遊びに関しては、人生で最も黄金の夏を過ごした。歩き、舟を漕ぎ、ベリーを摘み、心ゆくまで夢を見た。そして九月が来ると、目を輝かせ、きびきびとした彼女は、スペンサーベールの医師も満足する足取りと、再び満ちた意欲と熱意を持っていた。

「全力で勉強したい気分よ」と、屋根裏から本を下ろしながら彼女は言った。「ああ、古くてよい友だち、またあなたたちの正直な顔に会えてうれしいわ――ええ、幾何学、あなたにもよ。完璧に美しい夏だったわ、マリラ。そして今は、先週日曜日にアラン先生がおっしゃったように、走るべき競走を前にした強い人のように喜んでいるの。アラン先生の説教は見事でしょう? リンド夫人は、先生は日々よくなっているし、そのうち都会の教会が先生をさらっていって、わたしたちは取り残され、また未熟な牧師さんを育てなくてはならなくなる、と言うの。でも、困りごとを先回りして迎える必要なんてないでしょう、マリラ? 今はアラン先生がいらっしゃることを、ただ楽しむほうがいいと思うわ。もしわたしが男だったら、牧師になったと思う。神学が正しければ、牧師さんはとてもよい影響を与えられるもの。それに、すばらしい説教をして聞き手の心を動かすなんて、胸が躍るに違いないわ。どうして女の人は牧師になれないの、マリラ? リンド夫人に聞いたら、びっくりして、とんでもないことだって言ったの。アメリカには女の牧師もいるかもしれないし、実際いると思うけれど、ありがたいことにカナダはまだそこまで来ていないし、これからも来ないことを願うって。でも、どうしてかしら。女の人だってすばらしい牧師になれると思う。社交会や教会のお茶会や、そのほかお金を集める行事を開くとなると、女の人が働かなければならないのよ。リンド夫人は、ベル校長先生に負けないくらいお祈りできると確信しているし、少し練習すれば説教だってできるに違いないわ。」

「そうだね、たぶんできるだろうね」とマリラは乾いた声で言った。「今だって、非公式の説教をずいぶんしているんだから。レイチェルが見張っているアヴォンリーでは、道を踏み外す機会なんて、誰にもほとんどないよ。」

「マリラ」と、アンは信頼をこめて言った。「話したいことがあるの。それについて、どう思うかも聞きたい。すごく悩んでいたのよ――日曜の午後に、特にそういうことを考えるときにね。わたしは本当に善良になりたい。そしてあなたやアラン夫人やミス・ステイシーと一緒にいると、ますますそう思って、あなたたちが喜んで、よいと思うことをしたいと思うの。でも、リンド夫人と一緒にいると、たいてい自分がひどく悪い人間みたいに感じて、夫人がしてはいけないと言うことを、わざとしに行きたくなるの。どうしてもそうしたくなる誘惑を感じるのよ。どうしてこんな気持ちになるのか、あなたはどう思う? わたしが本当に悪くて、救われていないからかしら?」

マリラはしばらく、どう答えるべきか迷うように見えた。それから笑った。

「もしあんたがそうなら、私もそうだろうね、アン。レイチェルは私にも、よく同じような気持ちを起こさせるから。あの人は、人に正しいことをしろと絶えず小言を言わなければ、もっとよい影響を与えられるんじゃないかと、ときどき思うよ。小言を言うな、という特別な戒めがあってもいいくらいだ。でも、こんなふうに言うべきじゃないね。レイチェルはよいキリスト教徒の女の人で、善意から言っているんだ。アヴォンリーにこれほど親切な人はいないし、自分の分の仕事を決して怠けたりしない。」

「あなたも同じように感じるとわかって、本当によかった」とアンはきっぱり言った。「とても励まされるわ。これからは、そのことであまり悩まないことにする。でも、ほかにも悩むことは出てくるのでしょうね。新しいことが、いつも次々に出てくるの――人を困らせることがね。一つの問題を解決すると、すぐあとに別の問題が来る。大人になり始めると、考え、決めなければならないことがたくさんあるの。ずっとそれを考えて、何が正しいか決めるので忙しいわ。大人になるのは、重大なことね、マリラ? でも、あなたとマシューとアラン夫人とミス・ステイシーという、こんなによい友だちがいるんだから、わたしはきっと立派に大人にならなくちゃ。もしそうならなければ、それは完全に自分のせいよ。わたしには、一度しか機会がないんですもの。正しく大人になれなければ、戻ってやり直すことはできないの。今年の夏、二インチ(約5センチメートル)背が伸びたのよ、マリラ。ルビーの誕生日会でギリスさんが測ってくださったの。新しいドレスの丈を長くしてくれて、うれしいわ。あの濃い緑のドレスはとてもきれいだし、フリルをつけてくれたのも素敵だった。もちろん、本当は必要じゃなかったとわかっているけれど、この秋はフリルがとても流行っているし、ジョジー・パイのドレスにはみんなフリルがついているの。フリルがあるおかげで、勉強ももっとよくできると思う。心の奥底で、あのフリルについてとても満足な気持ちになれるでしょうから。」

「それだけでも、価値はあるね」とマリラは認めた。

ミス・ステイシーはアヴォンリー学校に戻り、生徒たちがみな、また勉強に熱心になっているのを見た。とりわけクイーン学院組は戦いに備えて気を引き締めた。やがて来る年の終わりには、すでに彼らの道の上に暗く影を落としている「入学試験」という運命的なものが、迫っていたからである。もし受からなかったら! その考えは、その冬、日曜の午後も含め、道徳や神学の問題をほとんど完全に追い出して、目覚めているあいだのアンにつきまとった。悪夢を見るときには、ギルバート・ブライスの名が一番上に大書され、自分の名がどこにもない入学試験の合格者名簿を、悲しく見つめている自分を見出した。

だが、愉快で忙しく、幸福に飛び去る冬だった。学校の勉強も、クラス内の競争も、以前と同じように面白く、心を奪った。思考、感情、野心の新しい世界、未探検の知識の新鮮で魅力的な分野が、アンの熱心な目の前に開かれていくようだった。

“Hills peeped o’er hill and Alps on Alps arose.”

こうしたことの多くは、ミス・ステイシーの巧みで慎重な、広い心を持つ指導の
おかげだった。彼女は生徒たちを、自分で考え、探究し、発見するよう導いた。
そして、昔からの踏み固められた道を外れることを、かなりの程度まで奨励した。
それはリンド夫人や学校理事たちを大いに驚かせた。彼らは確立された方法への
あらゆる改革を、かなり疑わしいものとして見ていたのである。

勉強とは別に、アンは社交面でも成長した。スペンサーベールの医師の言葉を心に留めたマリラが、時おりの外出をもう禁じなかったからである。討論会は盛んで、いくつかの演奏会を開いた。大人の集まりに近いようなパーティーも一、二度あり、そり遊びやスケート遊びも数えきれないほどあった。

そのあいだにアンは成長した。あまりに急に背が伸びたので、ある日二人が並んで立ったとき、アンのほうが自分より背が高いと気づいて、マリラは驚いた。

「まあ、アン、ずいぶん大きくなったね!」と、ほとんど信じられないように言った。その言葉のあとには、ため息が続いた。マリラはアンの背丈が伸びたことに、奇妙な悲しみを感じた。愛するようになった子どもは、いつのまにか消えていた。その代わりに、考え深い額と誇らしく上げた小さな頭を持つ、背の高い、真剣な目をした十五歳の少女がいた。マリラは子どもを愛したのと同じほど、その少女を愛していた。しかし、奇妙に悲しい喪失感を覚えていた。その夜、アンがダイアナと祈祷会へ行くと、マリラは冬の薄明かりのなか一人で座り、弱さに負けて泣いた。ランタンを持って入ってきたマシューは、その姿を見つけ、あまりに仰天した顔で見つめたので、マリラは涙のなかで笑わなければならなかった。

「アンのことを考えていたんだよ」と彼女は説明した。「あの子はずいぶん大きな娘になった――来年の冬は、たぶん私たちのそばを離れていることになるだろう。ひどく寂しくなるよ。」

「きっと、しょっちゅう家へ帰ってこられるさ」と、マシューは慰めた。マシューにとってアンは、四年前の六月の晩、ブライト・リバーから連れ帰った、あの小さく熱心な少女のままであり、これからもずっとそうだった。「そのころには、支線の鉄道がカーモディまで通っているだろうから。」

「いつもここにいるのとは、同じじゃないよ」と、悲しみのぜいたくを慰められずに楽しもうと決めたマリラは、陰気にため息をついた。「まあ、男にはこういうことはわからないのさ!」

アンには、体の変化に劣らず本当の、ほかの変化もあった。一つには、ずっと静かになった。以前と同じくらい、あるいはそれ以上に考え、夢見ていたのかもしれない。しかし、たしかに話すことは減った。マリラもそれに気づき、言った。

「アン、以前の半分もおしゃべりしなくなったし、大きな言葉も半分しか使わなくなった。どうしたんだい?」

アンは、本を下ろして夢見るように窓の外を見ながら、少し赤くなって笑った。春の日差しの誘いに応じ、つる草には大きく太った赤い芽が開き始めていた。

「わからない――あまり話したくなくなったの」と、彼女は人差し指であごに思慮深いくぼみを作りながら言った。「大切できれいな考えは、宝物みたいに心のなかにしまっておくほうが素敵よ。笑われたり、珍しがられたりするのは好きじゃないの。それからどういうわけか、もう大きな言葉を使いたくない。今なら使いたければ使えるほど大きくなったのに、少し残念ね。もうすぐ大人になるのは、ある面では楽しいけれど、わたしが思っていたような楽しさじゃないわ、マリラ。学ぶこと、すること、考えることがあまりにたくさんあって、大きな言葉を使う暇なんてないの。それにミス・ステイシーは、短い言葉のほうがずっと強くてよいとおっしゃるの。作文はできるだけ簡潔に書くように、先生はわたしたちにおっしゃるの。最初は難しかった。思いつくかぎりの立派で大きな言葉を、詰め込むのに慣れていたから――思いつく言葉は、いくらでもあったのよ。でも今では慣れて、こちらのほうがずっといいとわかるわ。」

「物語クラブはどうなったんだい? ずいぶん長いこと、あんたが話すのを聞かないね。」

「物語クラブは、もうなくなったの。時間がなかったし――それに、たぶんみんな飽きてしまったのね。恋愛や殺人や駆け落ちや謎について書くなんて、ばかげていたわ。ミス・ステイシーは、作文の練習に物語を書かせることがあるけれど、自分の人生のなかでアヴォンリーに起こりうること以外は、絶対に書かせないの。そしてとても厳しく批評なさるし、自分たちで自分の作品を批評させるの。自分で欠点を探し始めるまで、作文にあんなにたくさんの欠点があるなんて、思わなかった。とても恥ずかしくて、全部やめたくなったけれど、ミス・ステイシーは、自分自身のいちばん厳しい批評家になるよう訓練すれば、上手に書けるようになるとおっしゃったの。それで、そうしようと努力しているの。」

「入学試験まで、あと二か月しかないね」とマリラは言った。「通れると思うかい?」

アンは身震いした。

「わからない。大丈夫だと思うときもある――でも、そうするとひどく怖くなるの。よく勉強したし、ミス・ステイシーは徹底的に鍛えてくださった。でも、それでも通れないかもしれない。みんな一つずつ、つまずく石があるの。わたしはもちろん幾何学、ジェーンはラテン語、ルビーとチャーリーは代数学、ジョジーは算数。ムーディー・スパージョンは、英国史には落ちる運命が骨のなかに感じるって言うの。六月に、ミス・ステイシーは本番の入学試験と同じくらい難しい試験をして、本番と同じくらい厳しく採点してくださるの。それで少しは見当がつくわ。早く全部終わればいいのに、マリラ。ずっと頭から離れないの。夜中に目が覚めて、もし受からなかったらどうしようって思うこともあるわ。」

「まあ、来年また学校へ行って、もう一度受ければいいじゃないか」とマリラは平然と言った。

「ああ、そんな気力はないと思う。落ちるなんて、とても恥ずかしいもの。特にギル――ほかの人たちが通ったらね。それに試験ではとても緊張するから、失敗してめちゃくちゃにしてしまいそう。ジェーン・アンドルーズみたいな神経があればいいのに。あの子は何にも動じないわ。」

アンはため息をつき、春の世界の魔法、そよ風と青空の誘う一日、庭に芽吹く緑から目を引きはがし、決然と本に埋もれた。春はまた来るだろう。しかし入学試験に通れなければ、アンは二度と春を楽しめるほど立ち直れないと、確信していた。


第三十二章 合格者名簿の発表

六月の終わりとともに、学期も、アヴォンリー学校におけるミス・ステイシーの時代も終わった。その夕方、アンとダイアナはひどく沈んだ気持ちで家へ歩いた。赤い目と湿ったハンカチは、ミス・ステイシーの別れの言葉が、三年前の同じ状況でのフィリップス先生の言葉と同じくらい、胸を打つものだったに違いないことを、はっきり物語っていた。ダイアナはトウヒの丘のふもとから校舎を振り返り、深いため息をついた。

「何もかも終わってしまったみたいね」と、彼女は悲しげに言った。

「あなたは、わたしほど悲しむべきじゃないわ」とアンは、ハンカチの乾いた場所をむなしく探しながら言った。「あなたは来年の冬、また戻ってくるでしょう。でもわたしは、運がよければ、あの懐かしい学校を永遠に去ったのだと思う。」

「同じにはならないわ。ミス・ステイシーもいないし、あなたも、たぶんジェーンもルビーもいないでしょう。わたしは一人で座らなくちゃならない。あなたのあとで、ほかの子と机を一緒にするなんて耐えられないもの。ああ、わたしたち、楽しい時間を過ごしたわね、アン? それが全部終わってしまったと思うと、ひどく悲しいわ。」

大きな涙が二つ、ダイアナの鼻のわきを転がり落ちた。

「あなたが泣くのをやめてくれたら、わたしも泣かずにいられるのに」とアンは頼むように言った。「わたしがハンカチをしまうと、あなたがまた涙をためるのが見えて、それでわたしもまた泣いてしまうの。リンド夫人が言うように、『明るくなれないなら、できるだけ明るくしなさい』よ。結局、来年もわたしは戻ってくるかもしれない。今は、きっと受からないとわかっているときの一つなの。そういうときが、心配になるくらい頻繁になっているわ。」

「でも、ミス・ステイシーの試験では、とても立派にできたじゃない。」

「ええ、でもあの試験では緊張しなかったもの。本当の試験のことを考えると、どれほど嫌な、冷たく震えるような気持ちが胸を締めつけるか、あなたには想像もできないわ。それに、わたしの番号は十三なの。ジョジー・パイは、とても不吉な番号だって言うのよ。わたしは迷信深くないし、番号なんて何の違いもないとわかっている。でも、やっぱり十三じゃなければよかったと思うわ。」

「あなたと一緒に町へ行けたらいいのに」とダイアナは言った。「どんなに優雅で楽しい時間を過ごせるでしょう。でも、あなたは夜に詰め込み勉強をしなくちゃならないでしょうね。」

「いいえ。ミス・ステイシーは本をまったく開かないと約束させたの。疲れて混乱するだけだから、外を散歩して、試験のことはまったく考えず、早く寝なさいって。よい助言だけれど、従うのは難しいと思う。よい助言はそういうものだと、わたし思うの。プリッシー・アンドルーズは、入学試験の週には毎晩、夜半まで起きて、必死に詰め込み勉強をしたって言ってた。わたし、少なくともプリッシーと同じくらい長く起きていようと決めていたのよ。ジョセフィン伯母さんが、町にいるあいだビーチウッドに泊まりなさいと言ってくださったのは、本当に親切だったわ。」

「町にいるあいだ、わたしに手紙を書いてね?」

「火曜の晩に書いて、一日目がどうだったか知らせるわ」とアンは約束した。

「水曜日は郵便局に張りつめているわ」とダイアナは誓った。

翌月曜日、アンは町へ行った。そして水曜日、約束どおりダイアナは郵便局へ張りつめて行き、手紙を受け取った。

「いとしいダイアナへ」とアンは書いていた。

「今は火曜日の晩で、ビーチウッドの図書室でこれを書いているの。昨夜は部屋に一人きりで、とても寂しかった。あなたが一緒にいてくれたらと、あんなに思ったことはないわ。ミス・ステイシーに約束したから『詰め込み』はできなかったけれど、歴史の本を開かないでいるのは、昔、宿題が終わる前に物語を読まずにいるのと同じくらい難しかったわ。

「今朝、ミス・ステイシーが迎えに来てくださって、一緒に学院へ行ったの。途中でジェーンとルビーとジョジーも拾ったわ。ルビーは自分の手を触ってみてと言ったのだけれど、氷みたいに冷たかった。ジョジーは、わたしが一睡もしていないように見えるし、仮に試験に通ったとしても、教師課程の苦労に耐えられるほど強いとは思えないと言ったの。ジョジー・パイを好きになることについて、わたしがまだあまり進歩していないと感じる時と場合が、今でもあるわ! 

「学院に着くと、島じゅうから来た何十人もの生徒がいた。最初に見かけたのは、階段に座ってぶつぶつ独り言を言っているムーディー・スパージョンだった。ジェーンが、いったい何をしているのと尋ねたら、神経を落ち着かせるために九九を何度も繰り返しているんだ、お願いだから邪魔しないでくれ、少しでも止めると怖くなって、知っていることをすべて忘れてしまう、でも九九を唱えていれば、覚えている事実が全部、正しい場所にしっかり収まるんだ、と言ったの! 

「試験室を割り当てられると、ミス・ステイシーはわたしたちを残して行かなくてはならなかった。ジェーンとわたしは一緒に座った。ジェーンはとても落ち着いていて、うらやましかった。善良で、しっかりしていて、分別のあるジェーンには、九九なんて必要ないのよ! 自分が感じているとおりに見えるのかしら、心臓がどきどきする音が部屋の向こうまで聞こえるのではないかしらと、わたしは思った。それから男の人が入ってきて、英語の試験問題を配り始めたの。紙を受け取ると、手が冷たくなり、頭が本当にぐるぐるした。ほんの一瞬だけ、恐ろしい瞬間――ダイアナ、四年前、グリーン・ゲイブルズにいてもいいかとマリラに尋ねたときと、まったく同じ気持ちだった――でも、そのあと心のなかがすっかり晴れ、心臓がまた動き始めたの――完全に止まっていたことを言い忘れたわ! ――だって、少なくともあの問題なら、何かできるとわかったもの。

「正午に昼食のため家へ帰り、午後はまた歴史の試験に戻ったの。歴史はかなり難しい問題で、年代がひどく混乱したわ。それでも、今日はかなりよくできたと思う。でも、ああ、ダイアナ、明日は幾何学の試験よ。それを考えると、ユークリッドを開かないでいるために、自分の決心のすべてが必要になるの。九九が少しでも役に立つと思えたら、今から明日の朝までずっと唱えるわ。

「今晩、ほかの子たちに会いに下へ行ったの。途中で、取り乱して歩き回っているムーディー・スパージョンに会った。歴史は絶対に落ちた、自分は両親をがっかりさせるために生まれたんだ、朝の汽車で帰る、いずれにしても牧師より大工になるほうが楽だ、と言うの。わたしは励まして、最後まで残るよう説得したわ。そうしなかったらミス・ステイシーに不公平だから。ときどき男の子に生まれればよかったと思うけれど、ムーディー・スパージョンを見ると、いつも女の子でよかった、あの子の妹じゃなくてよかったと思うの。

「彼女たちの下宿へ行くと、ルビーはヒステリーを起こしていた。英語の問題で、自分が恐ろしい間違いをしたと、たった今気づいたところだったの。落ち着いてから、わたしたちは町の中心へ行ってアイスクリームを食べた。あなたが一緒にいてくれたらと、どんなに思ったでしょう。

「ああ、ダイアナ、幾何学の試験さえ終わってしまえば! でも、リンド夫人なら言うでしょうね。わたしが幾何学で落ちても、太陽は昇り、沈み続ける、と。それは本当だけれど、特に慰めにはならないわ。もし落ちるなら、太陽も続けないほうがいいと思う! 

「心をこめて
 アンより。」

幾何学の試験も、ほかのすべての試験も、やがて終わった。アンは金曜の晩、少し疲れてはいたが、抑えられた勝利の表情を浮かべて帰宅した。到着したとき、ダイアナはグリーン・ゲイブルズに来ており、二人は何年も離れていたかのように会った。

「まあ、かわいい人、帰ってきてくれて本当にすばらしいわ。あなたが町へ行ってから、ものすごく長い時間が過ぎたみたい。ああ、アン、どうだったの?」

「幾何学以外は、かなりよくできたと思う。幾何学に通ったかどうかはわからないし、通らなかったという、ぞくぞくするような予感がするの。ああ、帰ってきてなんて素敵! グリーン・ゲイブルズは、世界でいちばん大切で、いちばん美しい場所よ。」

「ほかの子たちはどうだった?」

「女の子たちは、絶対に通らなかったと言っているけれど、かなりよくできたと思うわ。ジョジーは、幾何学なんて十歳の子どもにもできるほど簡単だったと言うの! ムーディー・スパージョンは、まだ歴史に落ちたと思っているし、チャーリーは代数に落ちたと言っている。でも、合格者名簿が出るまでは、本当のことは何もわからないの。二週間は出ないわ。そんな不安のなかで二週間も生きるなんて、想像してみて! 眠ってしまって、終わるまで目が覚めなければいいのに。」

ギルバート・ブライスがどうだったかを聞いても無駄だと、ダイアナにはわかっていた。だからただ言った。

「あなたなら、きっと通るわ。心配しないで。」

「名簿でかなり上のほうになれないなら、通らないほうがましよ」とアンは言った。それは、ギルバート・ブライスより上になれなければ、成功は不完全で苦いものだという意味であり、ダイアナにはそのことがわかっていた。

そのために、アンは試験中、すべての神経を張りつめていた。ギルバートも同じだった。二人は町の通りで何度も出会い、すれ違ったが、認め合うしるしは一切なかった。そしてそのたびにアンは、頭を少し高く上げ、ギルバートに友だちになろうと言われたときにそうしておけばよかったと、少し強く願い、試験では彼を上回ろうと少し強く誓った。アヴォンリーの子どもたち全員が、どちらが一番になるか気にしていることを知っていた。ジミー・グローヴァーとネッド・ライトが、そのことに賭けをしていることさえ知っていた。そしてジョジー・パイが、ギルバートが一番になるのは世界中の誰にも疑いようがない、と言ったことも知っていた。もし自分が失敗したら、その屈辱には耐えられないと感じた。

しかし、よい成績を望む理由は、もう一つ、もっと気高いものがあった。マシューとマリラのために「上位で合格」したかった――特にマシューのために。マシューはアンに、彼女なら「島じゅうの全員をやっつけられる」と確信していると言っていた。

最も荒々しい夢のなかでさえ、それを望むのはばかげているとアンは思った。しかし少なくとも十位以内に入れたらと、熱心に願った。そうすれば、マシューの優しい茶色の目が、自分の成功への誇りで輝くのを見られるだろう。それは、想像力を必要としない方程式と活用を、辛抱強く掘り進めてきたすべての努力への、甘美な報いになると感じた。

二週間が過ぎると、アンはジェーン、ルビー、ジョジーとともに、取り乱した仲間として郵便局へ「張りつめて」通うようになった。シャーロットタウンの日刊紙を、震える手と、入学試験の週に感じたのと同じほど冷たく沈み込む気持ちで開いた。チャーリーとギルバートも、これをしないほど平静ではなかった。しかしムーディー・スパージョンは、頑として近づかなかった。

「冷静な気持ちで、あそこへ行って新聞を見る度胸はないんだ」と彼はアンに言った。「誰かが来て、僕が通ったかどうかを突然教えてくれるまで待つつもりだよ。」

三週間たっても合格者名簿が出ないと、アンはもうこの緊張に耐えられないと感じ始めた。食欲はなくなり、アヴォンリーで起きることへの関心も薄れた。リンド夫人は、教育長の座に保守党員がいるのだから、ほかに何を期待できるというのかと聞いた。マシューは、アンの青ざめた顔と無関心な様子、毎日午後、郵便局から家へ戻る足取りが重いのを見て、次の選挙では自由党に投票したほうがよいのではないかと、真剣に考え始めた。

だが、ある晩、知らせが来た。アンは窓を開けて座り、試験の苦しみも世の中の心配もひととき忘れ、下の庭から漂う花の香りと、ポプラのざわめき、ささやきに満ちた夏の夕闇の美しさを飲み込んでいた。モミの木の上の東の空は、西の空の反射で淡い桃色に染まっていた。色彩の精霊もあんな姿をしているのだろうかと夢見心地に考えていると、ダイアナが新聞をひらひらさせながら、モミの林を駆け下り、丸太橋を越え、坂を駆け上がってくるのが見えた。

その新聞に何が載っているか、アンにはすぐわかった。合格者名簿が出たのだ! 頭はくらくらし、心臓は痛いほど打った。一歩も動けなかった。ダイアナが廊下を走り、あまりに興奮してノックさえせず部屋へ飛び込んでくるまでが、アンには一時間にも思えた。

「アン、通ったのよ!」とダイアナは叫んだ。「一番で通ったの――あなたとギルバートが二人とも――同点よ。でもあなたの名前が先。ああ、わたし、誇らしいわ!」

ダイアナは新聞を机の上へ投げ、自身はアンのベッドへ倒れ込んだ。息が完全に上がり、それ以上話す力もなかった。アンはランプに火をつけようとして、マッチ入れを倒し、震える手でその仕事を終えるまでに半ダースもマッチを使った。それから新聞をつかみ上げた。そう、合格していた――二百人の名が載る名簿の、まさに一番上に自分の名があった! 生きてきた価値のある瞬間だった。

「とても立派にできたわ、アン」と、座って話せる程度まで回復したダイアナは、息を弾ませて言った。星のような目をして夢中になったアンは、まだ一言も発していなかった。「お父さまが十分前にブライト・リバーから新聞を持って帰ってきたの――午後の汽車で出たから、郵便では明日まで来ないでしょう――合格者名簿を見ると、わたし、まるで気が違ったみたいに走ってきたの。みんな通ったわ、ムーディー・スパージョンも含めて全員。もっともあの子は歴史で補習つきだけれど。ジェーンとルビーはかなりよかった――真ん中あたりよ――チャーリーもそう。ジョジーは三点余裕を残して、かろうじて通ったの。でも、まるで一番だったみたいに気取るでしょうね。ミス・ステイシーは、どんなに喜ぶでしょう! ああ、アン、こんなふうに合格者名簿の一番上に自分の名前を見るって、どんな気持ち? わたしなら、喜びで気が狂うと思う。今のわたしも、ほとんど気が狂いそうよ。でもあなたは春の夕方みたいに、静かで落ち着いているのね。」

「心のなかでは、ただまぶしくてたまらないの」とアンは言った。「百のことを言いたいのに、それを言う言葉が見つからないわ。こんなこと、夢にも思わなかった――いいえ、一度だけ思ったわ! 一度だけ、『もし一番になったら?』と思ってしまったの。でも震えながらよ。島で一番になれるなんて考えるのは、あまりに虚栄心が強くて思い上がったことに思えたもの。少し失礼して、ダイアナ。マシューに知らせるため、畑へ走っていかなくちゃ。それから道を上って、ほかのみんなにも知らせましょう。」

二人は納屋の下の干し草畑へ急いだ。マシューはそこで干し草を束ねていた。そして幸いなことに、リンド夫人が小道の柵のところでマリラと話していた。

「まあ、マシュー」とアンは叫んだ。「通ったの、一番――または一番の一人よ! 虚栄心を持っているわけじゃないけれど、感謝しているわ。」

「ほらな、いつもそう言っていたんだ」とマシューは、喜んで合格者名簿を眺めながら言った。「あんたなら簡単に、みんなを負かせるとわかっていたよ。」

「アン、よくできたと言わなくてはね」とマリラは言った。リンド夫人の批判的な目から、アンへの並外れた誇りを隠そうと努めながら。しかし、あの善良な魂は心から言った。

「ええ、本当によくできたわ。私がそれを言うのをためらうなんて、そんなことは決してないよ。アン、あんたは友だちの誇りだ。それが本当で、みんなあんたを誇りに思っているの。」

その夜、牧師館でアラン夫人と真剣な小さな話をして、楽しい夕べを締めくくったアンは、月光の大きな輝きのなか、開いた窓のそばで静かにひざまずいた。そして、心からまっすぐ湧き出る感謝と願いの祈りをささやいた。そこには過去への感謝と、未来への敬虔な願いがあった。そして白い枕で眠るとき、彼女の夢は、少女時代が望みうるほど、清らかで、明るく、美しかった。


第三十三章 ホテルの演奏会

「ぜひ白いオーガンジーを着るべきよ、アン」と、ダイアナはきっぱり勧めた。

二人は東の切妻部屋にいた。外はまだたそがれ時――澄んだ青空に雲ひとつない、素敵な黄緑色のたそがれだった。淡い光から磨かれた銀色へ、ゆっくりと深みを増す大きな丸い月が、お化けの森の上にかかっていた。空気は甘い夏の音に満ちていた――眠たげな鳥のさえずり、気まぐれなそよ風、遠くから聞こえる声と笑い。しかしアンの部屋では、大切な身支度が行われていたので、ブラインドを下ろし、ランプに火が灯されていた。

東の切妻部屋は、四年前のあの夜、よそよそしい冷たさを伴う殺風景さが、心の芯までしみ込むようにアンを感じさせたころとは、まったく違う場所になっていた。マリラはあきらめながらも黙認し、変化は少しずつ加えられ、今では若い娘が望みうるほど、愛らしく上品な巣になっていた。

アンが幼いころに夢見た、ピンクの薔薇模様のビロード絨毯や、ピンクの絹のカーテンは、たしかに一度も現実にならなかった。しかし夢は成長とともに変わっており、アンがそれらを惜しんだとは思えない。床にはきれいな敷物が敷かれ、高い窓を柔らかく覆い、気ままな風に揺れるカーテンは、淡い緑色のアート・モスリンだった。金銀の錦織りの壁掛けではなく、繊細なリンゴの花模様の壁紙が貼られた壁には、アラン夫人がアンに贈った良い絵が数枚飾られていた。ミス・ステイシーの写真は最も目立つ場所にあり、アンはその下の棚にいつも生花を飾るのを、感傷的な務めとしていた。その晩は、白百合の一茎が、香りの夢のように部屋をほのかに香らせていた。「マホガニーの家具」はなかったが、本でいっぱいの白く塗られた本棚、クッション付きの籐の揺り椅子、白モスリンのフリルで飾られた化粧台、かつて客用寝室に掛けられていた、丸々とした桃色のキューピッドと紫の葡萄が弧を描く上部に描かれた、金縁の風変わりな鏡、そして低い白いベッドがあった。

アンはホワイト・サンズ・ホテルで開かれる演奏会のために身支度をしていた。宿泊客たちがシャーロットタウン病院への寄付を目的に企画し、近隣地区から手に入るかぎりのアマチュアの才能を探し出して協力を頼んだのである。ホワイト・サンズのバプテスト聖歌隊にいるバーサ・サンプソンとパール・クレイには二重唱を、ニューブリッジのミルトン・クラークにはバイオリン独奏を、カーモディのウィニー・アデラ・ブレアにはスコットランドのバラッドを、そしてスペンサーベールのローラ・スペンサーと、アヴォンリーのアン・シャーリーには朗読を頼んでいた。

かつてのアンなら、「人生の一時代を画する出来事」と言っただろう。それは実際そうであり、アンはその興奮に甘く震えていた。マシューは、自分のアンに与えられた名誉に満足した誇りの第七天にいたし、マリラもそれほど遠くはなかった。もっとも、それを認めるくらいなら死んだほうがましだと思い、責任ある大人も一緒にいないのに、若い子たちがホテルへ遊びに行くのは、あまりふさわしくないと言っていた。

アンとダイアナは、ジェーン・アンドルーズと兄のビリーが運転する二人乗りの馬車で行くことになっていた。ほかにも何人かのアヴォンリーの少女と少年が行く。町から来客の一団も来る予定で、演奏会のあとには出演者のために夕食会が開かれることになっていた。

「本当にオーガンジーがいちばんいいと思う?」とアンは心配そうに尋ねた。「青い花模様のモスリンほどきれいだと思わないし――それに、あちらほど流行の形でもないわ。」

「でも、あなたにはずっとよく似合うわ」とダイアナは言った。「柔らかくて、フリルがあって、体に沿うでしょう。モスリンは硬くて、少し着飾りすぎに見えるの。でもオーガンジーは、あなたのために生えたみたいに見えるわ。」

アンはため息をつき、譲った。ダイアナは服装に関して目立つほど趣味がよいという評判を得始めており、そうしたことについての助言を、多くの人から求められていた。この特別な夜、ダイアナ自身も、アンには永遠に似合わない野薔薇のような美しい桃色のドレスを着て、とてもかわいかった。しかし彼女は演奏会で何もしないので、見た目の重要さは二の次だった。彼女はすべての手間をアンに注いだ。アヴォンリーの名誉のために、アンは女王の好みにかなうよう、服も髪も飾りも完璧に整えなければならない、と彼女は断言した。

「そのフリルをもう少し引き出して――そう。さあ、帯はわたしが結ぶわ。次は靴ね。髪は太い三つ編みに二本編んで、真ん中あたりを大きな白いリボンで結ぶの――いいえ、額の上に巻き毛を一本も引き出さないで――柔らかい分け目だけにするの。髪はそうしているときが、いちばん似合うわ、アン。アラン夫人も、そう分けていると聖母みたいに見えるっておっしゃるの。この小さな白い家薔薇を、耳のすぐ後ろにつけるわね。うちの茂みには一輪だけあって、あなたのために取っておいたの。」

「真珠の首飾りをつけようかしら?」とアンは尋ねた。「先週、マシューが町から一連買ってきてくれたの。つけているのを見たら、きっと喜ぶと思うわ。」

ダイアナは唇をすぼめ、黒い頭を批評家のように傾け、ついに真珠をよしと決めた。それで真珠は、アンの細く乳のように白い首に結ばれた。

「アン、あなたにはすごく粋なところがあるわ」とダイアナは、ねたみのない感嘆をこめて言った。「頭の持ち方に、あんな雰囲気があるもの。たぶん、体つきのおかげね。わたしはただの団子よ。ずっとそうじゃないかと思っていたけれど、今では確かだとわかったわ。まあ、あきらめるしかないのでしょうね。」

「でも、あなたにはえくぼがあるでしょう」と、アンは自分のすぐそばにある、かわいく生き生きした顔へ愛情をこめて微笑んだ。「クリームにできた小さなくぼみみたいな、素敵なえくぼが。わたしはえくぼを持つ夢を、もうあきらめたの。わたしのえくぼの夢は決してかなわないわ。でも、たくさんの夢がかなったんだから、文句を言ってはいけないわね。もう準備はできた?」

「全部できたわ」と、戸口に現れたマリラを見てダイアナは保証した。マリラは昔より髪がさらに灰色になり、角張ったところは少しも減っていなかったが、顔はずっと柔らかくなっていた。「入ってきて、わたしたちの朗読家を見て、マリラ。素敵でしょう?」

マリラは鼻を鳴らすのと唸るのとの中間のような音を出した。

「きちんとしていて、ちゃんとしているよ。髪の整え方も、私は好きだね。でも、あのドレスでは、ほこりや露のなかを馬車で行ったら、きっとだめにするだろう。こんな湿った夜には、薄すぎるようにも見える。だいたいオーガンジーなんて、この世でいちばん役に立たない布だよ。マシューが買ったときもそう言ったんだ。でも今のマシューには、何を言っても無駄さ。昔は私の助言を聞いたものだが、今ではアンのためなら何でも、考えなしに買ってしまう。カーモディの店員も、何を売りつけてもいいとわかっているんだよ。きれいで流行の品だと言えば、マシューはすぐお金を出すんだから。スカートを車輪に巻き込まれないように気をつけて、アン。それから暖かい上着を着るんだよ。」

そう言うとマリラは階下へ下りていった。そして、

“One moonbeam from the forehead to the crown”

という姿で立つアンが、なんと愛らしいことかと誇らしく思い、
自分も演奏会へ行って、あの子の朗読を聞けたらよかったのにと
残念に思った。

「わたしのドレスには、本当に湿りすぎかしら」とアンは不安そうに言った。

「少しも」とダイアナは窓のブラインドを上げながら言った。「完璧な夜よ。露なんて降りないわ。月明かりを見て。」

「わたしの窓が、朝日の昇る東に面していてうれしいわ」と、アンはダイアナのそばへ行きながら言った。「あの長い丘の上から朝が上がって、鋭いモミの梢のあいだを輝きながら広がっていくのを見るのは、すばらしいことよ。毎朝、新しいの。そして最初の陽光のあの浴び場で、魂そのものを洗っているみたいに感じるの。ああ、ダイアナ、わたし、この小さな部屋を心から愛しているわ。来月、町へ行くことになったら、これなしでどうやって暮らすのか、わからない。」

「今夜は、あなたが行ってしまう話をしないで」とダイアナは頼んだ。「考えたくないの。とても悲しくなるもの。今夜は楽しく過ごしたいわ。何を朗読するの、アン? 緊張している?」

「少しも。人前で何度も朗読したから、もうぜんぜん気にならないわ。『乙女の誓い』を読むことに決めたの。とても悲しいお話よ。ローラ・スペンサーは滑稽な朗読をするそうだけれど、わたしは人を笑わせるより、泣かせるほうが好き。」

「アンコールされたら、何を朗読するの?」

「誰もわたしなんかにアンコールを求めるなんて思いつかないわ」と、アンは鼻で笑った。内心ではそうしてくれるという期待がまったくなかったわけではなく、翌朝の朝食でマシューにそのことを話す自分を、すでに思い描いていた。「ビリーとジェーンが来たわ――車輪の音が聞こえる。行きましょう。」

ビリー・アンドルーズは、アンが自分と前の座席へ乗るべきだと言い張った。それでアンは、しぶしぶ上がった。本当は、後ろで少女たちと一緒に座り、心ゆくまで笑い、おしゃべりしたかった。ビリーには笑いもおしゃべりも、あまりなかった。彼は二十歳の大柄で太った、鈍そうな若者で、丸く無表情な顔をしており、会話の才能が痛いほど不足していた。しかしアンを大いに崇拝しており、この細身で背筋の伸びた姿を隣に乗せてホワイト・サンズへ行けることに、誇りで膨らんでいた。

アンは肩越しに少女たちと話し、ときどきビリーにも礼儀という飴を一つ与えた――ビリーはにやにや、くすくすするだけで、返事を思いつくのはいつも遅すぎた――ので、にもかかわらず旅を楽しむことができた。楽しむための夜だった。道はホテルへ向かう馬車でいっぱいで、銀のように澄んだ笑い声が響き、反響していた。ホテルへ着くと、上から下まで光の洪水だった。演奏会委員の婦人たちが出迎え、その一人がアンを出演者の控室へ連れていった。そこにはシャーロットタウン交響楽団の団員が集まっていた。そのなかでアンは突然、恥ずかしく、怖く、田舎くさく感じた。東の切妻部屋ではあんなに上品できれいに見えたドレスが、今は周囲で輝き、衣擦れする絹やレースのなかで、素朴で地味に見えた――あまりに素朴で地味すぎると、彼女は思った。近くにいる大柄で美しい婦人のダイヤモンドに比べたら、自分の真珠は何だろう? ほかの人たちが身につけた温室の花々のそばで、一輪だけの小さな白薔薇は、どんなに貧弱に見えるだろう! アンは帽子と上着を置き、惨めな気持ちで隅に縮こまった。グリーン・ゲイブルズの白い部屋へ帰りたかった。

やがてホテルの大演奏会場の舞台に出ると、さらにひどかった。電灯は目をくらませ、香水の匂いとざわめきは頭を混乱させた。ダイアナとジェーンが座る客席の、ずっと後ろのほうに自分も座れたらと願った。二人はとても楽しそうに見えた。アンは桃色の絹のドレスを着た太った婦人と、白レースのドレスを着た背の高い、軽蔑したような顔の少女のあいだに挟まれていた。太った婦人はときどき顔をまっすぐアンのほうへ向け、眼鏡越しに彼女を眺めた。あんなふうにじろじろ見られることに敏感なアンは、声を上げて叫びたくなった。白レースの少女は隣の人に、客席にいる「田舎者」や「田舎の美女」について、聞こえる声で話し続け、演目にある地元の素人の才能が見せるものから、「とても面白いこと」を期待していると、気だるげに語っていた。アンは、その白レースの少女を生涯の終わりまで憎むだろうと思った。

アンにとって不運だったのは、ホテルにはプロの朗読家が泊まっており、朗読を引き受けていたことだった。彼女は、月光を織ったようなきらめく灰色の素晴らしいドレスを着、首にも黒い髪にも宝石を飾った、しなやかで黒い目の女性だった。驚くほど自在な声と、素晴らしい表現力を持っていた。聴衆は彼女の朗読に熱狂した。アンは一時、自分のことも悩みもすべて忘れ、うっとりして目を輝かせながら聞いた。しかし朗読が終わると、突然両手で顔を覆った。あのあとで、どうして自分が立って朗読などできるだろう――絶対にできない。自分が朗読できると思ったことがあっただろうか? ああ、グリーン・ゲイブルズへ帰れさえすれば! 

こんな最悪の瞬間に、彼女の名が呼ばれた。どういうわけかアンは――白レースの少女が驚きに少し罪悪感を帯びてぴくりとしたのに気づかず、気づいてもそこに含まれた微妙な賛辞を理解しなかっただろうが――立ち上がり、ふらふらと前へ出た。あまりに青ざめていたので、客席のダイアナとジェーンは神経質な共感から、互いの手を握り合った。

アンは圧倒的な舞台恐怖に襲われていた。これまで何度も人前で朗読したが、こんな聴衆を前にしたことはなかった。そしてその光景は、彼女の力を完全に麻痺させた。何もかもがあまりに見知らぬもので、まぶしく、混乱させた――夜会服を着た婦人たちの列、批評的な顔、自分を取り巻く富と教養の空気のすべて。討論会の質素な長椅子に座る、親しみ深く同情的な友人や近所の人々の顔とは、まったく違っていた。この人たちは容赦ない批評家になるだろうと、アンは思った。白レースの少女のように、彼女の「田舎者らしい」努力を面白がるのを期待しているのかもしれない。どうしようもなく、助けようもなく、恥ずかしく惨めだった。ひざは震え、心臓は羽ばたき、恐ろしいめまいがした。一言も発せず、次の瞬間には、そうしたらその後ずっと受けることになるはずの屈辱にもかかわらず、舞台から逃げ出してしまいそうだった。

しかし突然、見開かれた恐怖の目で聴衆を見渡したとき、部屋の後ろのほうにいるギルバート・ブライスが見えた。身を乗り出し、顔に笑みを浮かべていた――その笑みはアンには、勝ち誇り、嘲っているように見えた。実際は、まったくそんなものではなかった。ギルバートはただ、全体としての催しと、特に椰子の木を背景にしたアンの細い白い姿と精神的な顔が作り出す効果を、感嘆して笑っていたのである。彼が馬車に乗せてきたジョジー・パイが隣に座っており、彼女の顔はたしかに勝ち誇り、嘲っていた。しかしアンはジョジーを見なかったし、見ていたとしても気にしなかっただろう。アンは長く息を吸い、誇らしく頭を上げた。勇気と決意が、電気ショックのように体じゅうを走った。ギルバート・ブライスの前で失敗するわけにはいかない――彼に笑わせてなど、絶対に、絶対にさせない! 恐怖も緊張も消え去った。そして朗読を始めた。澄んだ甘い声は、震えも途切れもなく、部屋のいちばん遠い隅まで届いた。完全に落ち着きを取り戻し、あの恐ろしい無力の瞬間からの反動で、これまでになく見事に朗読した。終えると、心からの拍手がどっと湧いた。恥ずかしさと喜びに赤くなって席へ戻ったアンは、桃色の絹の太った婦人に、手を力強く握られ、振られた。

「まあ、お嬢さん、すばらしかったわ」と彼女は息を弾ませた。「赤ん坊みたいに泣いてしまった、本当よ。ほら、アンコールよ――みんな、あなたにもう一度出てきてほしいのよ!」

「まあ、できません」とアンは困って言った。「でも――やらなくては。でないとマシューががっかりするわ。マシューは、きっとアンコールされると言ったもの。」

「なら、マシューをがっかりさせてはいけないわ」と桃色の婦人は笑って言った。

微笑み、赤くなり、澄んだ目をしたアンは、もう一度軽やかに出ていき、風変わりで愉快な短い作品を朗読した。それは聴衆をさらに魅了した。その夜の残りは、アンにとって小さな凱旋だった。

演奏会が終わると、アメリカの大富豪の妻である、太った桃色の婦人がアンを引き立て、皆に紹介して回った。そして皆がアンにとても親切だった。プロの朗読家であるエヴァンズ夫人も来て話をし、魅力的な声をしており、作品を美しく「解釈」していたとアンに言った。白レースの少女さえ、気だるげながら小さな賛辞をくれた。大きく美しく飾られた食堂で夕食を取った。ダイアナとジェーンも、アンと一緒に来たので招かれた。しかしビリーの姿はどこにもなかった。そんな招待を受けることへの死ぬほどの恐怖から、逃げ去っていたのである。もっとも、すべて終わったときには、彼は馬とともに待っていた。三人の少女は楽しげに、静かな白い月光の輝きへ出た。アンは深く息を吸い、モミの暗い枝の向こうにある澄んだ空を見上げた。

ああ、夜の清らかさと静けさのなかへ、また出られるのはなんてよいことだろう! 海の響きがそのなかを流れ、向こうの闇に沈む断崖が、魔法の海岸を守る厳しい巨人のように見えるなか、すべてはなんと大きく、静かで、不思議だったことか。

「完璧にすばらしい時間じゃなかった?」と、馬車が走り出すとジェーンはため息をついた。「わたし、お金持ちのアメリカ人になって、夏をホテルで過ごして、宝石や胸元の開いたドレスを身につけて、毎日毎日アイスクリームとチキンサラダを食べられたらいいのに。学校の先生をするより、ずっと楽しいに決まっているわ。アン、あなたの朗読は本当にすばらしかった。最初は、あなた、もう始めないんじゃないかと思ったけれど。エヴァンズ夫人よりよかったと思うわ。」

「まあ、ジェーン、そんなことを言わないで」とアンはすぐに言った。「ばかみたいに聞こえるもの。エヴァンズ夫人よりよいはずがないでしょう。あの方はプロで、わたしは朗読が少し得意なだけの女子生徒なんだから。みんながわたしの朗読を、まあまあ好きでいてくれたなら、それで十分満足よ。」

「あなたへの賛辞が一つあるの、アン」とダイアナは言った。「少なくとも、あの人の言い方からして、賛辞に違いないと思うの。一部は確かによ。ジェーンとわたしの後ろにアメリカ人が座っていたの――石炭みたいに黒い髪と目をした、とてもロマンチックな感じの男の人。ジョジー・パイは、有名な画家だと言っていた。ボストンにいるお母さんのいとこが、その人と昔同じ学校へ行った男の人と結婚しているんですって。それで、あの人がこう言うのを聞いたの――ねえ、ジェーン? 『あの、見事なティツィアーノ色の髪をした舞台上の少女は誰だ? あの顔は描いてみたい』って。ね、アン。でもティツィアーノ色の髪って、どういう意味?」

「解釈すれば、ただの赤毛という意味でしょうね」とアンは笑った。「ティツィアーノは、赤毛の女の人を描くのが好きだった、とても有名な画家よ。」

「ねえ、あのご婦人たちが身につけていたダイヤモンドを、見た?」とジェーンはため息をついた。「本当にまぶしかった。お金持ちになれたらいいと思わない、みんな?」

「わたしたち、お金持ちよ」とアンは断言した。「だって、十六年の人生があるし、女王みたいに幸福だし、みんなそれぞれに想像力を持っているもの。あの海を見て、みんな――銀と影と、目に見えないものの幻でできているみたい。何百万ドルと何連ものダイヤモンドを持っていたって、あの美しさをこれ以上楽しめはしないわ。なれるとしても、あのご婦人たちの誰かになりたいなんて思わないでしょう。生涯ずっと、世界を鼻であしらうために生まれたみたいな、不機嫌な顔をしている白レースの少女になりたい? それとも、親切でよい人ではあるけれど、あまりに太って背が低くて、本当に体つきなんてまったくない桃色の婦人に? あるいは、目にあんな悲しい、悲しい表情があるエヴァンズ夫人にさえ? あの方はきっと、いつかひどく不幸だったことがあるのよ。あんな表情をしているんですもの。あなたはなりたくないって、わかっているでしょう、ジェーン・アンドルーズ!」

わからないわ――はっきりとは」とジェーンは納得せずに言った。「ダイヤモンドがあれば、たいていのことは慰めになると思う。」

「まあ、わたしは生涯ダイヤモンドに慰められなくても、自分以外の誰にもなりたくないわ」とアンは宣言した。「真珠の首飾りをつけた、グリーン・ゲイブルズのアンでいられれば、十分満足よ。マシューは、桃色のご婦人の宝石に込められたのと同じくらい、いえ、それ以上の愛を、あの真珠に込めてくれたのだとわかっているもの。」

第三十四章 クイーン学院の女生徒

グリーン・ゲイブルズでは、次の三週間は忙しい日々となった。アンがクイーン学院へ行く支度をしており、縫い物もたくさんあれば、話し合い、整えなければならないことも山ほどあったからである。アンの持ち物は十分にそろい、しかも可愛らしいものだった。それはマシューが気を配ったおかげであり、マリラも今回ばかりは、彼が買った物にも提案したことにも、一切異議を唱えなかった。それどころか、ある晩には淡い緑色の繊細な生地を腕いっぱいに抱え、東の切妻部屋へ上がってきた。

「アン、これはあなたに軽やかな素敵なドレスを作るための布よ。本当は必要ないんでしょうけど、きれいなブラウスはたくさんあるものね。でも町で夜、どこかへ招かれたり、パーティーなんかへ行くことがあれば、少しは本格的にしゃれた服も欲しいんじゃないかと思って。ジェーンやルビーやジョジーは、いわゆる『夜会服』を持っているそうじゃない。あなたがあの子たちに遅れをとるようなことは、わたしがさせませんよ。先週町でアラン夫人に選ぶのを手伝ってもらったの。仕立てはエミリー・ギリスに頼みましょう。エミリーは趣味がいいし、あの子ほど体にぴったり仕立てられる人はいないわ。」

「まあ、マリラ、なんて素敵なの」とアンは言った。「本当にありがとう。でも、こんなに優しくしないでほしいくらい。グリーン・ゲイブルズを離れるのが、毎日ますますつらくなってしまうもの。」

緑のドレスには、エミリーの趣味が許す限りのタック、フリル、ギャザーが施された。ある晩アンは、マシューとマリラに見せるためそれを着て、台所で『乙女の誓い』を朗読した。明るく生き生きとした顔、優雅な身ぶりを見つめながら、マリラの思いはアンが初めてグリーン・ゲイブルズへ来た夜へと戻っていった。黄褐色の不格好なウィンシー[訳注:厚手の毛織物]の服を着た、奇妙で怯えた子ども。涙に濡れた目から、胸の張り裂けるような悲しみをのぞかせていたあの子の姿が、記憶の中に鮮やかによみがえった。その記憶に触れたせいで、マリラの目にも涙が浮かんだ。

「まあ、朗読でマリラを泣かせてしまったわ」とアンは陽気に言い、マリラの椅子に身をかがめて、その頬へ蝶のようなキスを落とした。「これは文句なしの大成功ね。」

「おまえの朗読で泣いたんじゃないよ」とマリラは言った。詩などというものに心を動かされて、そんな弱みを見せるなど、彼女には到底許せないことだった。「ただ、昔のおまえがどんな小さな子だったか、つい考えてしまったのさ、アン。そして、おまえのあの変わったところもひっくるめて、もう少し小さいままでいてくれたらよかったのにと思ったんだよ。おまえはもう大きくなって、出ていってしまう。そんな背が高くて、しゃれた格好をして、あのドレスを着ていると、まるでまるで、すっかり別人みたいだ――アヴォンリーの子じゃないみたいにね。それで、あれこれ考えたら寂しくなってしまったんだよ。」

「マリラ!」

アンはマリラの木綿のひざに腰を下ろし、しわの刻まれた顔を両手で包み、真剣で優しい目をマリラの目に向けた。「わたし、少しも変わっていないのよ――本当はね。ただ少し枝を払われて、外へ伸びただけ。ほんとうのわたしは――ここにいるわ――少しも同じよ。どこへ行こうと、見た目がどれほど変わろうと、心の中ではいつまでも、あなたとマシューと、大切なグリーン・ゲイブルズを、一日ごとにもっと深く愛していく、小さなアンのままでいるわ。」

アンはみずみずしい若い頬をマリラの色あせた頬に寄せ、片手を伸ばしてマシューの肩をやさしく叩いた。そのときマリラは、自分の気持ちを言葉にするアンの力を、どれほどでも手に入れたいと思った。しかし生まれつきと長年の習慣がそれを許さず、ただ両腕で少女を固く抱きしめ、二度と手放さずにすめばいいのにと願うことしかできなかった。

目に怪しい潤みを浮かべたマシューは立ち上がり、外へ出ていった。青い夏の夜、星明かりの下で、彼は落ち着かぬ足取りで庭を横切り、ポプラの下の門まで歩いた。

「いやはや、あの子はたいして甘やかされちゃいなかったらしいな」と、彼は誇らしげにつぶやいた。「ときどきわしが口を出したくらいじゃ、結局なんの害にもならなかったようだ。賢くて、きれいで、それに情が深い。そいつはほかの何よりいいことだ。あの子はわしたちの祝福だったんだ。スペンサー夫人の間違いほど幸運な間違いは、これまでなかった――もしあれが幸運だったならだがな。わしには、ただの幸運だったとは思えん。全能の神様が、わしたちにはあの子が必要だとお見通しで、そうしてくださったんだろう。」

ついに、アンが町へ行かなければならない日が来た。九月の晴れた朝、アンはマシューと馬車で出発した。ダイアナとは涙ながらの別れだったが、マリラとの別れは――少なくともマリラの側では――涙を見せない実際的なものだった。しかしアンが去ると、ダイアナは涙を拭き、カーモディの従兄弟たちとホワイト・サンズの浜辺でのピクニックへ出かけ、どうにかかなり楽しく過ごすことができた。一方マリラは、必要もない仕事へ激しく身を投じ、一日中、胸を焼き、かじり、たやすい涙では洗い流せない種類の苦痛を抱えながら働き続けた。だがその夜、廊下の突き当たりにある小さな切妻部屋に、もう鮮烈な若い命はおらず、柔らかな寝息も立てていないことを、痛いほど惨めに意識しながら寝床につくと、マリラは枕に顔を埋め、罪深い人間ひとりのためにこんなにも取り乱すなど、なんと罰当たりなことだろうと、我に返ったとき自分でも驚くほど激しく、少女のために泣きじゃくった。

アンとほかのアヴォンリーの生徒たちは、急いで学院へ向かうのにちょうど間に合う時刻に町へ着いた。初日は、新入生たちとの出会い、教授たちの顔を覚えること、学級への振り分けと編成という興奮の渦の中、なかなか楽しく過ぎていった。アンはミス・ステイシーの勧めに従い、二年課程を履修するつもりだった。ギルバート・ブライスも同じ道を選んだ。成功すれば二年ではなく一年で一級教員免許を取得できるが、それは同時に、はるかに多く、困難な勉強を意味した。ジェーン、ルビー、ジョジー、チャーリー、ムーディー・スポルジョンは、野心に心をかき立てられることもなく、二級課程で満足していた。五十人の生徒がいる教室で、自分の知っている者が、部屋の向こうにいる背の高い茶髪の少年ひとりしかいないと気づいたとき、アンは孤独の痛みを覚えた。その少年とは、あんなふうに知り合っているのだから、なんの慰めにもならない、と悲観的に考えた。それでも同じ学級になれたことは、間違いなくうれしかった。昔からの競争を続けられるし、それがなければどうしてよいかわからなかっただろう。

「これがなかったら、きっと落ち着かないわ」とアンは思った。「ギルバート、とても決意に満ちた顔をしている。ここで今、きっとメダルを取ると心に決めているんだわ。なんて立派なあごなのかしら。今まで気づかなかった。ジェーンとルビーも一級課程を選んでくれたらよかったのに。けれど知り合いができれば、知らない屋根裏に迷い込んだ猫みたいな気分も、少しは薄れるでしょうね。ここにいる女の子のうち、誰がわたしの友達になるのかしら。本当に興味深い想像だわ。もちろん、どんなに好きになっても、クイーン学院の女の子がダイアナほど大切になることはないって、ダイアナに約束した。でも、二番目に大切に思える気持ちは、たくさん持っているわ。茶色の目に深紅のブラウスを着た、あの子は好きになれそう。生き生きしていて、ばら色の雰囲気があるもの。あちらの窓の外を見つめている、青白くて金髪の子もいる。髪がとてもきれいで、夢のことなら少しくらい知っていそうな顔をしている。ふたりとも知りたい――仲よくなりたい――腕をその子たちの腰に回して歩いて、愛称で呼べるくらいに。でも今は、わたしはあの子たちを知らないし、あの子たちもわたしを知らない。たぶん、特に知りたいとも思っていないでしょう。ああ、寂しい!」

その晩、薄暮の中で寄宿舎の自室にひとりいると、アンはさらに寂しくなった。ほかの少女たちは皆、町に世話をしてくれる親類がいたため、アンだけが一緒に下宿することができなかった。ミス・ジョセフィン・バリーはアンをビーチウッドに下宿させたがったが、そこは学院からあまりにも遠く、話にならなかった。そこでミス・バリーは下宿を探し出し、マシューとマリラに、そこがアンにはうってつけの場所だと太鼓判を押した。

「家を切り盛りしているご婦人は、没落した良家の出身なのです」とミス・バリーは説明した。「ご主人はイギリスの将校でしたから、どんな下宿人を置くかにはとても慎重です。あの家の屋根の下で、アンが好ましくない人たちと顔を合わせることはありません。食事はよく、学院にも近く、静かな地区にあります。」

それはすべて本当だったし、実際そのとおりだった。だが、激しいホームシックに初めて襲われたアンにとっては、ほとんど慰めにならなかった。くすんだ壁紙に覆われ、絵もない狭い部屋、小さな鉄のベッドと空の本棚を、アンは沈んだ気持ちで見回した。そして、グリーン・ゲイブルズにある自分の白い部屋を思い出すと、ひどい息苦しさが喉を締めつけた。そこでは、静まり返った広大な緑の屋外がそばにあると楽しく感じられた。庭に咲くスイートピー、果樹園を照らす月光、丘の下を流れる小川、その向こうで夜風に揺れるトウヒの枝、果てしない星空、木立の切れ間から見えるダイアナの窓明かり――そんなものを意識できたのだ。ここにはそれが何もない。窓の外には固い舗装道路があり、電話線の網が空を遮り、知らない人々の足音が響き、見知らぬ顔の上に千の灯りがきらめいていることを、アンは知っていた。泣き出しそうだとわかり、必死にこらえた。

泣かない。ばかげているし――弱虫だわ――ほら、三粒目の涙が鼻の脇まで落ちてきた。まだ出てくる! 止めるために何か面白いことを考えなくちゃ。でも面白いことといったらアヴォンリーに関係することだけで、それではもっとひどくなる――四粒――五粒――来週の金曜日には帰れるけれど、それは百年も先みたい。ああ、マシューはもう家に近いころだわ――マリラは門のところで、あの人が帰ってくるのを小道の向こうに探している――六粒――七粒――八粒――ああ、数えてもだめ! もうすぐ洪水みたいに出てくるわ。元気になんかなれない――元気になりたくない。惨めでいるほうが、今はいいの!」

その涙の洪水は、きっと流れ出していただろう――その瞬間にジョジー・パイが現れなければ。見知った顔を見た喜びに、アンは自分とジョジーの間に、これまであまり愛情などなかったことを忘れた。アヴォンリーの一部なら、パイ家の娘でさえ歓迎だった。

「来てくれて本当にうれしいわ」とアンは心から言った。

「泣いていたのね」とジョジーは、癪にさわる同情を込めて言った。「ホームシックなんでしょう――そういうことに、まったく自制心のない人もいるのね。わたしはホームシックになるつもりなんか、ぜんぜんないわ。あんな退屈なアヴォンリーより、町のほうがずっと楽しいもの。あんなところで、どうしてあれほど長く暮らしていられたのかしら。泣かないほうがいいわよ、アン。似合わないもの。鼻も目も赤くなって、もう全身真っ赤に見えるわ。今日は学院ですっかり楽しい思いをしたの。フランス語の教授は、もう最高に素敵。あの口ひげを見たら、胸がどきどきして気が遠くなりそうよ。何か食べる物、ないの、アン? わたし、文字どおり飢え死にしそう。ああ、マリラがきっとケーキを山ほど持たせたと思ったの。だから寄ったのよ。そうでなければ、フランク・ストックリーと公園へ行って楽隊を聴いていたわ。同じ下宿にいるのだけれど、なかなか遊び好きな子なの。今日、授業であなたを見かけて、赤毛の女の子は誰だって聞くのよ。だから、カスバート家が引き取った孤児で、それ以前にどんな子だったかは誰もあまり知らない、と答えておいたわ。」

ひとりで泣いているほうが、ジョジー・パイと一緒にいるより結局は満足できるのではないかとアンが思い始めたとき、ジェーンとルビーが現れた。ふたりとも、クイーン学院の色――紫と緋色――のリボンを一インチほど、誇らしげに上着へ留めていた。ちょうどジョジーはジェーンと「口をきいていない」最中だったため、比較的害のない状態に引き下がるしかなかった。

「まあ」とジェーンはため息をついた。「今朝から、何か月も生きてきたような気分よ。本当なら家でウェルギリウスを勉強しなくちゃいけないの――あの嫌な年寄り教授、明日までに二十行やってくるようにですって。でも今夜は、どうしても勉強する気になれないわ。アン、涙の跡が見えるような気がする。泣いていたなら、どうか白状して。そうすればわたしの自尊心が戻るから。ルビーが来る前、わたしはさんざん泣いていたのよ。ほかにも泣き虫がいれば、自分がガチョウみたいでもそれほど気にならないわ。ケーキ? ほんのひとかけら、くれるでしょう? ありがとう。これには本物のアヴォンリーの味がするわ。」

テーブルの上にクイーン学院の予定表が置かれているのを見つけたルビーは、アンが金メダルを狙うつもりか尋ねた。

アンは頬を赤らめ、考えてはいるのだと認めた。

「ああ、そういえば」とジョジーが言った。「結局、クイーン学院にもエイヴリー奨学金がひとつ出るのよ。今日知らせが来たの。フランク・ストックリーが教えてくれたわ――あの子の叔父さん、理事のひとりでしょう。明日、学院で発表されるのよ。」

エイヴリー奨学金! アンの心臓は速く打ち始め、魔法にかけられたように、野心の地平は広がり、遠くへ移っていった。ジョジーが知らせる前まで、アンの最高の望みは、年末に一級の州教員免許を取ること、そしてできればメダルを得ることだった。しかしジョジーの言葉の余韻が消えないうちに、アンは自分がエイヴリー奨学金を獲得し、レッドモンド大学で文学課程を学び、ガウンと角帽を身につけて卒業する姿を、ありありと思い描いていた。エイヴリー奨学金は英語科のものだった。そしてアンは、この分野こそ自分の故郷の土を踏んでいる場所だと感じた。

ニューブランズウィックの裕福な製造業者が亡くなり、その財産の一部を、沿海諸州の高等学校や学院へ、それぞれの評価に応じて配分する多数の奨学金の基金に遺したのだった。クイーン学院にひとつ割り当てられるかどうかは長く不明だったが、ついに決定した。年末に英語と英文学で最高成績を収めた卒業生が、この奨学金を得る――レッドモンド大学で四年間、年二百五十ドルを受け取れるのである。その晩アンが、頬を熱くしながら寝床へ入ったのも無理はない。

「努力で取れるなら、必ずこの奨学金を取るわ」とアンは決心した。「わたしが文学士になれたら、マシューはどんなに誇らしく思うでしょう! ああ、野心を持てるって素晴らしい。こんなにたくさん持てて、本当によかった。そして野心には終わりがないみたい――そこがいちばんいい。ひとつの望みをかなえると、さらに高いところで別の望みがきらめいているのが見えるんですもの。人生って、本当に面白くなるわ。」


第三十五章 クイーン学院の冬

アンのホームシックは、週末ごとに家を訪ねることで大いに和らぎ、次第に消えていった。暖かい天候が続くあいだ、アヴォンリーの生徒たちは毎週金曜の晩、新しく開通した支線鉄道でカーモディまで帰った。ダイアナと数人のアヴォンリーの若者たちが、たいてい彼らを迎えに来ており、皆でにぎやかにアヴォンリーまで歩いた。秋の丘を、澄んだ黄金色の空気の中、遠くにアヴォンリーの家々の灯りをまたたかせながら歩く、そんな金曜の晩のさすらいが、一週間のうちで最もよく、最も愛しい時間だとアンは思った。

ギルバート・ブライスはほとんどいつもルビー・ギリスと歩き、彼女のかばんを持ってやった。ルビーは、今や自分を実際と同じくらい大人だと思っている、たいそう美しい娘だった。母親が許す限りスカートを長くし、町では髪を結い上げていたが、家へ帰るとほどかねばならなかった。大きく鮮やかな青い目、輝くような顔色、ふっくらと目を引く体つき。よく笑い、明るく気立てもよく、人生の楽しいものを素直に楽しんでいた。

「でも、ルビーはギルバートが好きになりそうなタイプには思えないわ」とジェーンはアンにささやいた。アンもそうは思わなかったが、エイヴリー奨学金をもらえるとしても、それを口にはしなかった。ギルバートのような友達がいて、冗談を言い、おしゃべりをし、本や勉強や野心について考えを交わせたら、さぞ楽しいだろう、とも思わずにはいられなかった。ギルバートには野心があることをアンは知っていた。そしてルビー・ギリスは、そうした話を実り豊かに語り合える相手には見えなかった。

ギルバートに対するアンの考えに、愚かな恋情はまったくなかった。少年とは、そもそも考えることがあれば、よき仲間になりうる存在にすぎなかった。もしアンとギルバートが友達だったなら、ギルバートにほかの友達が何人いようが、誰と歩こうが、アンは少しも気にしなかっただろう。アンには友情の才があった。女友達なら十分すぎるほどいた。しかし男の友情もまた、仲間というものの理解を完成させ、判断と比較の視野を広げてくれる、よいものかもしれないという、ぼんやりした自覚があった。もちろん、アン自身がこの思いをそこまで明確に言葉にできたわけではない。だが、もしギルバートが汽車から降りた自分と一緒に、きりりと冷えた野を横切り、シダの茂る脇道を通って家まで歩いてくれたなら、彼らの前に開かれつつある新しい世界や、その中での希望や野心について、楽しく興味深い会話をいくつも交わせただろうと思った。ギルバートは賢い少年だった。物事について自分なりの考えを持ち、人生から最上のものを引き出し、人生へ最上のものを与えようという決意があった。ルビー・ギリスはジェーン・アンドルーズに、ギルバート・ブライスの言うことは半分もわからない、と話していた。彼はアン・シャーリーが思索にふけるときのような話し方をする。自分からすれば、する必要もないのに本やら何やらのことで頭を悩ませるのは、少しも面白くない。フランク・ストックリーのほうがずっと派手で行動的だけれど、ギルバートほど見目よくはない。だからどちらがより好きか、本当に決められないのだ、と。

学院でアンは、少しずつ自分のまわりに小さな友人の輪を作っていった。彼女と同じように、思慮深く、想像力に富み、野心を持つ生徒たちである。「ばら色の少女」ステラ・メイナードと、「夢見る少女」プリシラ・グラントとは、すぐに親しくなった。青白く神秘的に見えるプリシラは、いたずらと悪ふざけと楽しさであふれかえっていることがわかった。一方、生き生きとした黒い目のステラは、アン自身のものと同じように、空のように軽やかで虹のように美しい、憧れと空想の夢を胸いっぱいに抱いていた。

クリスマス休暇が終わると、アヴォンリーの生徒たちは金曜に家へ帰ることをやめ、勉強に打ち込んだ。このころまでには、クイーン学院の生徒は皆、それぞれの集団の中で自分の居場所に落ち着き、各学級もはっきりと定まった個性の色合いを帯びていた。いくつかのことが、広く認められるようになっていた。メダルの候補者は、実質的にギルバート・ブライス、アン・シャーリー、ルイス・ウィルソンの三人に絞られたと見られていた。エイヴリー奨学金のほうは、六人ほどの誰が取ってもおかしくなく、さらに不確かだった。数学の銅メダルは、でこぼこの額と継ぎのあたった上着を持つ、太って愉快な田舎出身の少年が、もう取ったも同然と見なされていた。

ルビー・ギリスは、その年の学院でいちばん美しい少女だった。二年課程ではステラ・メイナードが美貌の栄冠を得たが、少数ながら批評眼の鋭い者たちは、アン・シャーリーを推していた。エセル・マーは、髪の結い方が最も流行にかなっていると、審美眼のある者すべてに認められていた。そして地味で、こつこつ努力する、良心的なジェーン・アンドルーズは、家政科で名誉をさらった。ジョジー・パイでさえ、クイーン学院に通う中で最も毒舌な娘という、ある種の卓越した地位を手に入れた。こうして、ミス・ステイシーのかつての生徒たちは、学院というより広い舞台でも、十分に存在感を示していたと言ってよい。

アンは地道に、熱心に勉強した。ギルバートとの競争は、アヴォンリー学校時代と変わらぬ激しさだった。ただし学級全体には知られていなかったし、どういうわけか、そこから苦々しさは消えていた。アンはもう、ギルバートを打ち負かすために勝ちたいとは思わなかった。むしろ、ふさわしい敵を相手に、立派に勝利を得たという誇らしい自覚のために勝ちたかった。勝てば価値がある。だが、勝てなくても人生が耐えがたいものになるとは、もはや思わなかった。

勉強の合間にも、生徒たちは楽しい時を過ごす機会を見つけた。アンは暇な時間の多くをビーチウッドで過ごし、日曜の昼食もたいていそこで取り、ミス・バリーと一緒に教会へ行った。ミス・バリーは自分でも認めているように年を取っていたが、黒い目は少しも曇らず、舌鋒の鋭さもまったく衰えていなかった。もっとも、その舌をアンに向けて研ぐことはなかった。アンは相変わらず、批評眼の厳しい老婦人の大のお気に入りだった。

「あのアンという子は、いつでもよくなっていく」と彼女は言った。「ほかの女の子には飽きてしまうのよ。腹立たしいほど、永遠に同じようなところがあるんですもの。アンには虹と同じだけの色合いがあって、どの色合いも、そのときにはいちばん美しい。子どもだったころほど愉快ではないかもしれないけれど、あの子はわたしに愛したいと思わせてくれる。人を愛したいと思わせてくれる人は好きよ。自分で苦労して愛そうとしなくていいからね。」

そして、誰もほとんど気づかぬうちに春が来た。アヴォンリーでは、雪の名残がまだ残る枯れ野に、メイフラワーがほのかな桃色の花をのぞかせ、森にも谷にも「緑の霧」がかかっていた。しかしシャーロットタウンでは、試験に追い立てられるクイーン学院の生徒たちは、試験のことだけを考え、話していた。

「学期がもう終わりかけているなんて、信じられないわ」とアンは言った。「去年の秋には、あんなに遠く思えたのに――勉強と授業だけの、まるまる一冬がね。それが今では、来週には試験が迫っている。みんな、試験がすべてのように思えることもあるけれど、あの栗の木に大きなつぼみがふくらんでいるのや、通りの果てのかすかな青空を見ると、試験なんて半分ほども大事には思えなくなるの。」

ふらりと訪ねてきていたジェーン、ルビー、ジョジーは、その見方をしなかった。彼女たちにとって、近づく試験は常に非常に重要だった――栗のつぼみや五月の霞より、はるかに重要だった。少なくとも合格は確実なアンが、試験を軽く見る瞬間があってもよい。しかし、自分たちの未来すべてが試験にかかっている――少女たちは本気でそう思っていた――なら、哲学的に眺めることなどできなかった。

「この二週間で七ポンド(約3.2キログラム)もやせたのよ」とジェーンはため息をついた。「心配するなと言われても無駄。わたしは心配するわ。心配すると少しは役に立つのよ――何かをしているような気がするもの。一冬クイーン学院に通って、あんなにお金を使ったのに、免許を取れなかったら恐ろしいわ。」

「わたしはどうでもいいわ」とジョジー・パイは言った。「今年通らなければ、来年また来ればいい。父にはそのくらい出せるもの。アン、フランク・ストックリーが言っていたけれど、トレメイン教授はギルバート・ブライスがメダルを取るのは確実で、エミリー・クレイがエイヴリー奨学金を取るだろうって話していたそうよ。」

「明日なら、その話を聞いて落ち込むかもしれないわ、ジョジー」とアンは笑った。「でも今は、グリーン・ゲイブルズの下の谷で、スミレが一面に紫の花を咲かせていて、恋人たちの小径では小さなシダが頭を出していると知っているかぎり、エイヴリーを取れるかどうかは、それほど大きな違いではないと本当に思えるの。わたしは最善を尽くしたし、『戦う喜び』という言葉の意味もわかり始めたわ。努力して勝つことの次にいいのは、努力して失敗することよ。みんな、試験の話はやめましょう! あの家並みの上にある淡い緑の空のアーチを見て、アヴォンリーの奥の濃い紫色のブナ林の上では、どんなふうに見えるか想像してごらんなさい。」

「卒業式には何を着るの、ジェーン?」とルビーは実際的に尋ねた。

ジェーンとジョジーは同時に答え、話はいつしか流行の衣服という脇道へ入っていった。しかしアンは、ひじを窓枠に置き、柔らかな頬を組み合わせた手にのせ、目を夢想で満たしたまま、町の屋根や尖塔の向こう、輝かしい夕空の大ドームをぼんやり眺めていた。そして若さ固有の楽観という黄金の織物から、ありうる未来の夢を紡いでいた。これから先のすべては、そこに潜むばら色の可能性とともにアンのものだった――来る年ごとに、約束のばらとなり、不滅の花冠へ織り込まれていくのである。


第三十六章 栄光と夢

すべての試験の最終結果が、クイーン学院の掲示板に張り出される朝、アンとジェーンは一緒に通りを歩いていた。ジェーンは微笑み、幸福そうだった。試験は終わり、少なくとも合格はしたと、心地よい確信を抱いていた。ジェーンはそれ以上のことに悩まされなかった。高く舞い上がるような野心がなく、したがってそれに伴う落ち着かなさにも苦しめられなかった。この世で手にするもの、受け取るものには、すべて代価がある。野心は持つだけの価値が十分にあるけれど、安く得られるものではない。努力と自己犠牲、不安と落胆という代価を求めるのである。アンは青白く、静かだった。あと十分もすれば、誰がメダルを取ったのか、誰がエイヴリーを得たのか、わかる。その十分の先には、今このとき、時間と呼ぶに値するものなど何もないように思えた。

「もちろん、どちらかは必ず取るわよ」とジェーンは言った。学院の先生たちが、そんなふうにならないよう不公平な決定を下せるはずがない、と彼女には思えた。

「エイヴリーには望みがないわ」とアンは言った。「エミリー・クレイが取るって、皆が言っているもの。それに、皆の前で掲示板まで歩いていって、見上げるなんてできない。そんな勇気はないの。わたしはまっすぐ女子の更衣室へ行くわ。発表を読んだら、ジェーン、来て教えてね。それも、昔からの友情にかけて、できるだけ早くお願い。もし落ちていたら、やわらげようとせず、そのまま言って。何をしてもいいけれど、わたしに同情だけはしないで。約束して、ジェーン。」

ジェーンは厳かに約束した。しかし結果として、その約束は必要にならなかった。クイーン学院の入口の階段を上ると、玄関ホールは少年たちでいっぱいだった。彼らはギルバート・ブライスを肩に担ぎ上げ、声の限り叫んでいた。

「ブライス万歳、メダル受賞者万歳!」

一瞬、敗北と失望の吐き気を催すような痛みが、アンを貫いた。自分はだめで、ギルバートが勝ったのだ! まあいい、マシューは残念がるだろう――あの人はアンが勝つと、あんなにも信じていたのだから。

そして――。

誰かが叫んだ。

「エイヴリー奨学金受賞者、シャーリー嬢に万歳三唱!」

「まあ、アン!」とジェーンは息をのんだ。二人が熱烈な歓声の中を女子更衣室へ逃げ込むと、「ああ、アン、わたし誇らしいわ! 素晴らしいじゃない!」

ほどなく少女たちが二人を取り囲み、アンは笑いと祝福の輪の中心にいた。肩を叩かれ、手を力強く握られた。押されたり引かれたり、抱きしめられたりする中で、アンはどうにかジェーンにささやいた。

「まあ、マシューとマリラはどんなに喜ぶでしょう! すぐ家へ知らせを書かなくちゃ。」

次に大切な出来事は卒業式だった。式は学院の大きな講堂で行われた。式辞が述べられ、作文が朗読され、歌が歌われ、卒業証書、賞、メダルの公開授与が行われた。

マシューとマリラもいた。ただひとり、舞台の上の生徒だけを、目と耳のすべてで追っていた。淡い緑のドレスを着て、頬をほのかに赤らめ、星のような目をした背の高い少女。最優秀の作文を読み、エイヴリー奨学金受賞者だと指さされ、ささやかれている少女を。

「あの子を引き取ってよかったと思っているんだろう、マリラ?」と、アンが作文を読み終えたとき、マシューは会場へ入ってから初めて口を開き、ささやいた。

「よかったと思ったのは、これが初めてじゃないよ」とマリラは言い返した。「本当に、あなたは人の鼻につけるのが好きなんだから、マシュー・カスバート。」

後ろの席にいたミス・バリーが身を乗り出し、日傘でマリラの背中をつついた。

「あのアンという子が誇らしくないのかい? わたしは誇らしいよ」と彼女は言った。

その晩、アンはマシューとマリラと一緒にアヴォンリーへ帰った。四月以来、家へ帰っていなかったので、これ以上一日も待てない気がした。リンゴの花が咲き、世界は新鮮で若かった。グリーン・ゲイブルズでは、ダイアナがアンを待っていた。窓辺には、マリラが咲いたばかりの鉢植えのバラを置いてくれた、自分の白い部屋で、アンはあたりを見回し、幸福の長い息を吐いた。

「ああ、ダイアナ、帰ってこられて本当にうれしい。あの尖ったモミの木が桃色の空に浮かぶのを見るのも――白い果樹園も、古いスノー・クイーンも。ミントの香りって、なんて素晴らしいのかしら! それにあのティーローズ――まあ、歌であり、希望であり、祈りでもあるのね。そして、またあなたに会えてうれしいわ、ダイアナ!」

「ステラ・メイナードのほうが、わたしより好きなんだと思っていたわ」とダイアナは恨めしそうに言った。「ジョジー・パイがそう言っていたもの。あなたは彼女に夢中なんですって。」

アンは笑い、花束のしおれた「六月のユリ」をダイアナに投げつけた。

「ステラ・メイナードは、この世でいちばんかわいい女の子よ――ただひとりを除いてね。そしてそのひとりが、あなたなの、ダイアナ」とアンは言った。「前よりずっとあなたを愛しているわ――話したいこともたくさんある。でも今は、ここに座ってあなたを見ているだけで、十分に幸せな気がする。疲れているのね、たぶん――勉強家で、野心家でいることに疲れたの。明日は少なくとも二時間、果樹園の草の上に寝転んで、何もかもすっかり考えないことにするわ。」

「すごいことを成し遂げたのね、アン。エイヴリーを取ったんだから、もう先生にはならないのでしょう?」

「ええ。九月にはレッドモンドへ行くの。素晴らしいと思わない? 三か月の輝かしい黄金の休暇を過ごしたら、まったく新しい野心をたっぷり仕入れて行くわ。ジェーンとルビーは先生になるの。ムーディー・スポルジョンもジョジー・パイも含めて、皆ちゃんと終えられたなんて、すごいと思わない?」

「ニューブリッジの委員たちは、もうジェーンに学校を任せると申し出たそうよ」とダイアナは言った。「ギルバート・ブライスも先生になるの。そうしなければならないのよ。お父さんは、結局来年あの子を大学へやる余裕がないから、自分で学費を稼ぐつもりなんですって。ミス・エイムズが辞めることになれば、この学校を任されるでしょうね。」

アンは、驚きと戸惑いの入り混じった、奇妙な小さな感覚を覚えた。そんなことは知らなかった。ギルバートもレッドモンドへ行くものと、当然のように思っていたのだ。彼女を励ましてきた競争相手がいなくて、どうすればよいのだろう? 共学の大学で、ちゃんとした学位を目指せるとしても、敵であり友である彼なしでは、勉強は少し味気ないものにならないだろうか。

翌朝、朝食のとき、アンはふとマシューの顔色がよくないことに気づいた。一年前より、ずっと白髪が増えているようだった。

「マリラ」と、マシューが出ていったあと、アンはためらいながら言った。「マシューは、本当に元気なの?」

「いいえ、元気じゃないよ」とマリラは心配そうな声で言った。「この春は心臓の具合がひどく悪くなることが何度かあったのに、少しも自分をいたわらないんだ。ずいぶん心配していたけれど、ここしばらくは少しよくなっているし、いい雇い人も来たから、少しは休んで元気を取り戻してくれると願っているよ。おまえが帰ってきた今なら、そうなるかもしれないね。おまえはいつでも、あの人を明るくしてくれるから。」

アンはテーブル越しに身を乗り出し、両手でマリラの顔を包んだ。

「マリラも、わたしが見たいと思うほどには元気そうじゃないわ。疲れて見える。働きすぎたんじゃないかと心配よ。わたしが帰ってきたのだから、休まなくちゃ。明日は一日だけ、大好きな昔の場所を訪ねて、昔の夢を探すために休むけれど、そのあとは、わたしが働くあいだ、マリラがのんびりする番よ。」

マリラは愛情をこめて、自分の少女に微笑んだ。

「仕事のせいじゃないんだよ――頭のせいさ。最近はよく痛むんだ――目の奥がね。スペンサー先生が眼鏡のことであれこれしてくれたけれど、何の役にも立たない。六月の終わりに、有名な眼科医が島へ来るそうで、先生はぜひ診てもらえと言うんだ。そうしなきゃいけないんだろうね。もう楽に読書も裁縫もできないんだよ。まあ、アン、クイーン学院では本当によくやったね。一年で一級免許を取って、エイヴリー奨学金まで得るなんて――まあまあ。リンド夫人は、慢心は身を滅ぼすと言っているし、女の高等教育など少しも信じちゃいないよ。女としての本分に向かなくなるってね。わたしは、そんなこと一言も信じないよ。レイチェルといえば思い出した――アビー銀行について、最近何か聞かなかったかい、アン?」

「経営が危ないらしいとは聞いたわ」とアンは答えた。「どうして?」

「レイチェルもそう言っていた。先週、ここへ来て、そんなうわさがあると言ったんだ。マシューはとても心配したよ。わたしたちが貯めたものは、全部あの銀行にある――一セント残らずね。最初から貯蓄銀行へ入れようと言ったんだけれど、老アビー氏は父さんの大の友人で、父さんはずっとあの人の銀行を使っていたんだ。マシューは、あの人が頭取なら、誰にとっても十分に安全な銀行だと言っていた。」

「アビー氏は、もう何年も名目上の頭取にすぎないと思うわ」とアンは言った。「とてもお年寄りでしょう。本当は甥御さんたちが銀行を取り仕切っているのよ。」

「それをレイチェルから聞いたとき、すぐにお金を引き出してほしいとマシューに言ったんだ。でも考えてみると言ってね。けれど昨日、ラッセル氏が銀行は大丈夫だと話したそうだよ。」

アンは、その日は屋外の世界を相手に、よい一日を過ごした。彼女はその日を決して忘れなかった。あまりに明るく、黄金に輝き、美しく、影ひとつなく、花々に惜しみなく満たされていたからである。アンはその豊かな時間の一部を果樹園で過ごし、木の精の泉、柳の湖、スミレの谷へ行った。牧師館を訪れ、アラン夫人と満ち足りた話をした。そして夕方には、恋人たちの小径を通り、裏の牧草地へ牛を迎えに行くマシューに同行した。森は夕日に満たされ、その暖かな輝きは西の丘の切れ間から流れ落ちていた。マシューは頭を垂れ、ゆっくり歩いた。背の伸びたアンは、まっすぐな姿勢で、弾むような歩みを彼に合わせた。

「今日は働きすぎたわ、マシュー」とアンはたしなめた。「どうしてもっと楽にしないの?」

「いや、どうもできないんだよ」と、牛を通すために牧場の門を開けながらマシューは言った。「年を取っただけなんだ、アン。それをいつも忘れてしまうんだよ。まあ、わしはいつもずいぶん働いてきたし、働いている最中に倒れるほうがいいんだ。」

「もしわたしが、あなたが頼んだ男の子だったなら」とアンは寂しそうに言った。「今ごろ、もっとたくさんあなたを助けて、いろんなことで楽をさせてあげられたのに。そのためだけなら、男の子だったらよかったのにと思えてしまうわ。」

「いや、アン、わしなら男の子十二人より、おまえひとりのほうがいい」とマシューは言い、アンの手を撫でた。「それだけは覚えておくんだ――男の子十二人よりだ。そういえば、エイヴリー奨学金を取ったのは男の子じゃなかったな? 女の子だった――わしの娘だ――わしが誇りに思う、わしの娘だった。」

彼は庭へ入っていく前、あの恥ずかしそうな微笑みをアンへ向けた。その夜、自分の部屋へ行ったアンは、その微笑みの記憶を胸に持ち帰った。開けた窓辺に長く座り、過去を思い、未来を夢見た。外では、スノー・クイーンが月光の中でかすかに白く輝き、果樹園の丘の向こうの沼地では蛙が鳴いていた。アンはその夜の、銀色の静かな美しさと、香り高い安らぎを、いつまでも覚えていた。それは悲しみが人生に触れる前の、最後の夜だった。一度あの冷たく、それでいて人を清める手が触れたなら、人生は二度とまったく同じものではなくなる。


第三十七章 死という名の刈り手

「マシュー――マシュー――どうしたの? マシュー、具合が悪いの?」

声を上げたのはマリラだった。短く途切れる一語一語に、恐怖がこもっていた。アンは白いナルシサスを両手いっぱいに抱え、廊下を通ってきた――それからずっと長いあいだ、アンは白いナルシサスの姿も香りも好きになれなかった――そして間に合うようにその声を聞き、玄関ポーチの戸口に立つマシューを見た。彼の手には折りたたまれた紙があり、顔は不思議なほど引きつり、灰色になっていた。アンは花を落とし、マリラと同時に台所を横切って彼へ駆け寄った。しかし、二人とも遅すぎた。届く前に、マシューは敷居の上へ倒れ込んだ。

「気を失ったんだわ」とマリラは息をのんだ。「アン、マーティンを呼んできて――早く、早く! 納屋にいるよ。」

ちょうど郵便局から馬車で帰ったばかりの雇い人マーティンは、すぐ医者を呼びに出かけた。その途中、オーチャード・スロープへ寄り、バリー夫妻を呼んでくれるよう頼んだ。用事でそこにいたリンド夫人も一緒に来た。皆が着くと、アンとマリラは我を失ったように、マシューを意識づかせようとしていた。

リンド夫人は二人をそっと脇へ押しのけ、脈を取り、耳を彼の胸へ当てた。そして不安げな二人の顔を悲しそうに見つめ、目に涙を浮かべた。

「ああ、マリラ」と彼女は重々しく言った。「もう――あの人にしてあげられることは、何もないと思うよ。」

「リンド夫人、まさか――そんな――マシューが――」アンにはその恐ろしい言葉を口にすることができなかった。吐き気がして、顔から血の気が引いた。

「そうなの、坊や。残念だけれど、そうだと思う。顔を見てごらん。わたしほど何度もあの顔を見れば、何を意味するかわかるようになるよ。」

アンは動かない顔を見た。そこには、大いなる存在の印が刻まれていた。

医者が来ると、死は瞬間的で、おそらく苦痛もなかっただろうと告げた。原因は、何か突然の衝撃だったに違いない。その衝撃の秘密は、マシューが手にしていた紙――その朝マーティンが郵便局から持ち帰った紙――の中に見つかった。それはアビー銀行の破綻を知らせる記事だった。

知らせはアヴォンリーじゅうに瞬く間に広がり、一日中、友人や近所の人々がグリーン・ゲイブルズへ押し寄せ、死者と生者のために親切な用事を果たしては、去っていった。内気で静かなマシュー・カスバートが、初めて皆の関心の中心にいる人物となった。死の白い威厳が彼の上に降り、王冠を戴く者のように、彼をほかの人々から分け隔てたのだった。

静かな夜がそっとグリーン・ゲイブルズを包むころ、古い家は物音ひとつなく、安らいでいた。客間には棺の中のマシュー・カスバートが横たわっていた。長い灰色の髪が穏やかな顔を縁取り、その唇には、楽しい夢を見てただ眠っているだけのような、小さな優しい笑みが浮かんでいた。彼のまわりには花があった――母親が花嫁だったころ、屋敷の庭に植えた昔ながらの甘い花々で、マシューがいつも密かに、言葉もなく愛していた花である。アンがそれを摘み、彼のもとへ持ってきた。苦悶に満ち、涙のない目を白い顔に燃やして。それがアンにできる、彼への最後のことだった。

その晩、バリー家の人々とリンド夫人が一緒にいてくれた。東の切妻部屋で、アンが窓辺に立っているところへ行き、ダイアナは優しく言った。

「アン、今夜、わたしが一緒に寝てあげましょうか?」

「ありがとう、ダイアナ。」

アンは友の顔を真剣に見つめた。「ひとりになりたいと言っても、あなたなら誤解しないと思う。怖いわけじゃないの。あのことがあってから、一分だってひとりになっていない――だから、ひとりになりたいの。まったく静かにして、落ち着いて、それが本当なんだとわかろうとしたいの。でも、わからない。半分の時間は、マシューが死んだなんてありえない気がする。残りの半分は、マシューがもうずっと前から死んでいて、このひどく鈍い痛みを、ずっと前から抱えていたように思えるの。」

ダイアナには、完全にはわからなかった。嵐のように押し寄せ、自然な控えめさも一生の習慣もすべて打ち破ったマリラの激しい悲嘆のほうが、アンの涙のない苦しみより理解しやすかった。しかしダイアナは優しく去り、悲しみと初めて夜を過ごすアンを、ひとりにしてくれた。

ひとりになれば涙が出るのではないかと、アンは思った。あれほど愛し、自分にあれほど優しかったマシューのために、一滴も涙を流せないのは恐ろしいことに思えた。昨夜、日没の中を一緒に歩き、今は下の薄暗い部屋で、額にあの恐ろしい平安をたたえて横たわっているマシュー。しかし最初は涙が出なかった。暗闇の中で窓辺にひざまずき、丘の向こうの星を見上げて祈ったときでさえ、涙はなかった。あるのはただ、悲惨な鈍い痛みだけだった。その痛みは、昼の苦痛と興奮に疲れ果てて眠りに落ちるまで、ずっと痛み続けた。

夜の中でアンは目を覚ました。静けさと闇に包まれ、その日のできごとが悲しみの波のように押し寄せた。最後の晩、門のところで別れたときにマシューが向けた微笑みが見えた――「わしの娘だ――わしが誇りに思う娘だ」と言った声が聞こえた。

すると涙が出た。アンは心ゆくまで泣いた。マリラはその声を聞き、そっと入ってきてアンを慰めた。

「まあまあ――そんなに泣くんじゃないよ。泣いてもあの人は帰らない。そんなに泣くのは――よくないことだよ。今日、わたしもそうわかっていたけれど、あのときはどうにもならなかった。あの人はいつだって、わたしにとてもよい、優しい兄だった――でも神様がいちばんよくご存じなんだ。」

「泣かせて、マリラ」とアンはすすり泣いた。「この涙は、あの痛みみたいにわたしを苦しめない。少しここにいて、こんなふうに腕で抱いていて。ダイアナにはいてもらえなかった。あの子は善良で、優しくて、かわいいけれど――これはあの子の悲しみじゃない。あの子は外側にいて、わたしの心の近くまで来て助けることはできないの。これはわたしたちの悲しみよ――あなたとわたしの。ああ、マリラ、あの人なしで、わたしたちはどうすればいいの?」

「わたしたちには、お互いがいるよ、アン。おまえがここにいなかったら――おまえが来てくれなかったら、わたしはどうすればいいかわからない。ああ、アン、わたしはおまえに、ずいぶん厳しく、きつくしたこともあったかもしれない。でも、だからといって、マシューに負けないくらいおまえを愛していたわけじゃないなんて、思ってはいけないよ。今なら言えるから、言っておきたい。心の中のことを言うのは、わたしにはいつも簡単じゃなかった。でも、こんなときには少し楽になる。おまえは、わたしの血を分けた子と同じくらい大切だよ。グリーン・ゲイブルズへ来てからずっと、おまえはわたしの喜びで、慰めだったんだ。」

二日後、マシュー・カスバートは生家の敷居を越え、耕した畑から、愛した果樹園から、自ら植えた木々から、運び去られた。そしてアヴォンリーはまたいつもの静けさへ戻り、グリーン・ゲイブルズでさえ、何もかも以前の習慣の溝に戻っていった。以前と同じように仕事がなされ、務めが規則正しく果たされた。ただ、いつものものすべての中に「失われたもの」があるという、痛む感覚だけは常にあった。

悲しみに慣れないアンは、それが可能だということが、ほとんど悲しく思えた――マシューなしでも、皆が以前のやり方で生きていけるということが。モミの木の向こうの朝焼けや、庭で開く淡い桃色のつぼみを見て、以前と同じ喜びが胸へ流れ込むことに気づいたとき、アンは恥と後ろめたさのようなものを感じた。ダイアナの訪問が楽しく、ダイアナの愉快な言葉やふるまいに笑みや笑い声がこぼれることにも。つまり、花と愛と友情に満ちた美しい世界が、自分の空想を喜ばせ、心を震わせる力を少しも失っていないこと、人生が今もさまざまな切実な声で自分を呼んでいることに気づいたのである。

「マシューがいなくなった今、こういうものに喜びを感じるなんて、なんだかあの人を裏切るような気がするの」と、ある晩、牧師館の庭で一緒にいたアラン夫人へ、アンは寂しそうに言った。「いつでも、あの人がいなくてとても寂しいのに――それでも、アラン夫人、世界も人生もわたしにはとても美しく、興味深く思えるの。今日、ダイアナが面白いことを言って、わたしは笑ってしまった。あのことが起きたときには、もう二度と笑えないと思ったのに。そして、笑ってはいけないような気がするの。」

「マシューがここにいたころ、あなたが笑うのを聞くのが好きだったし、まわりにある楽しいものをあなたが楽しんでいると知るのが好きだったのよ」とアラン夫人は優しく言った。「今はただ、あの人は遠くへ行っているだけ。そして今も同じように、あなたがそうしていると知るのが好きなのよ。自然が与えてくれる癒やしの力に、わたしたちは心を閉ざすべきではないと、わたしは思うわ。でもあなたの気持ちはわかる。皆、同じことを経験するのだと思う。愛する人が、喜びを分かち合うためにここにいなくなったのに、何かが自分を喜ばせるなどと考えるのは腹立たしい。そして、人生への関心が戻ってくると、悲しみに対して不実なのではないかと感じてしまうの。」

「今日の午後、墓地へ行って、マシューのお墓にバラの木を植えたの」とアンは夢見るように言った。「ずっと昔に、お母さんがスコットランドから持ってきた、小さな白いスコッチローズの枝を持っていったの。マシューはあのバラがいちばん好きだった――とげのある枝に、あんなに小さくて甘い花を咲かせるから。お墓のそばに植えられて、うれしかった。あの人のそばへ持っていくことで、あの人が喜ぶことをしているような気がしたの。天国にも、あんなバラがあるといいわ。何度もの夏にマシューが愛した、小さな白いバラたちの魂が、皆あちらであの人を迎えてくれたのかもしれない。もう帰らなくては。マリラがひとりだし、夕暮れどきは寂しくなるの。」

「あなたがまた大学へ行ってしまえば、マリラはもっと寂しくなるでしょうね」とアラン夫人は言った。

アンは答えなかった。おやすみを言い、ゆっくりグリーン・ゲイブルズへ戻った。マリラは玄関の階段に座っており、アンはその隣に腰を下ろした。二人の後ろの扉は開いていて、滑らかな内側の螺旋に海の夕焼けの気配を秘めた、大きな桃色の巻き貝によって押さえられていた。

アンは淡い黄色のスイカズラを数枝摘み、髪に挿した。動くたびに頭上に、空からの祝福のような甘い香りが漂うのが好きだった。

「あなたが出かけているあいだに、スペンサー先生が来たよ」とマリラは言った。「明日、例の専門医が町に来るそうで、ぜひ行って目を診てもらえと言うんだ。行って、早く片づけたほうがいいんだろうね。あの先生が、わたしの目に合うちゃんとした眼鏡をくれたら、これ以上ありがたいことはないよ。わたしがいないあいだ、ひとりで留守番しても平気かい? マーティンに町まで送ってもらわなければならないし、アイロンがけとパン焼きもあるんだ。」

「大丈夫よ。ダイアナが話し相手に来てくれるわ。アイロンがけもパン焼きも、見事にやってみせる――ハンカチにのりをつけたり、ケーキに塗り薬を入れたりしないから、心配しないで。」

マリラは笑った。

「あのころのおまえは、本当によく失敗をしたものだね、アン。いつも何か騒ぎを起こしていた。取りつかれているんじゃないかと思ったくらいだよ。髪を染めたこと、覚えているかい?」

「もちろんよ。決して忘れないわ」とアンは微笑み、形のよい頭に巻きつけた重い三つ編みに触れた。「昔、髪のことであんなに悩んでいたと思うと、今では少し笑ってしまうこともある――でも、あまり笑えないの。あのころは本当に深刻な悩みだったもの。髪とそばかすのことで、ひどく苦しんだわ。そばかすは本当に消えたし、皆、今ではわたしの髪を赤褐色だと言ってくれる――ジョジー・パイ以外はね。昨日あの子は、髪は前より赤くなったと本気で思う、少なくとも黒い服のせいでいっそう赤く見える、と教えてくれたの。それから、赤毛の人は赤毛でいることに慣れるのかしらって聞くのよ。マリラ、ジョジー・パイを好きになろうとするのは、もうあきらめようと思うの。昔なら英雄的な努力と呼んだような努力をして、あの子を好きになろうとした。でもジョジー・パイは、好きにならせてくれないの。」

「ジョジーはパイ家の子なんだから」とマリラはぴしゃりと言った。「感じが悪いのも仕方がないよ。ああいう人にも社会で何か役目があるんだろうけれど、アザミが何の役に立つのかわからないのと同じくらい、わたしにはわからないね。ジョジーも先生になるのかい?」

「いいえ、来年もクイーン学院へ戻るの。ムーディー・スポルジョンとチャーリー・スローンもそうよ。ジェーンとルビーは先生になるし、二人とも学校が決まった――ジェーンはニューブリッジ、ルビーは西のほうのどこかよ。」

「ギルバート・ブライスも先生になるんだろう?」

「ええ」アンはそっけなく答えた。

「なかなか感じのいい青年だね」と、マリラはぼんやり言った。「先週の日曜、教会で見かけたけれど、とても背が高く、男らしく見えたよ。同じ年ごろの父親によく似ている。ジョン・ブライスはいい少年だった。あの子とわたしは、ずいぶん仲がよかったんだ。皆、あの子をわたしの恋人だと言っていたよ。」

アンは素早く興味を示して顔を上げた。

「まあ、マリラ――それでどうなったの? ――どうして――」

「けんかをしたんだ。あの子が許してほしいと頼んだとき、わたしは許さなかった。しばらくしたら許すつもりだったよ――でも、すねて腹を立てて、まず少し罰してやりたかったんだ。あの子は二度と来なかった――ブライス家の人たちは皆、とても自尊心が強いからね。でも、いつも少し――残念に思っていた。機会があるうちに許していればよかったと、ずっと思っていたんだ。」

「マリラにも、人生にちょっとしたロマンスがあったのね」とアンは静かに言った。

「そう呼んでもいいんだろうね。わたしを見て、そう思うかい? でも人の外側だけでは、何もわからないものだよ。わたしとジョンのことは、皆もう忘れている。わたし自身も忘れていた。でも先週の日曜、ギルバートを見たら、全部戻ってきたんだ。」


第三十八章 曲がり角

翌日、マリラは町へ行き、夕方に帰ってきた。アンはダイアナとオーチャード・スロープへ行っており、帰ると、マリラが台所のテーブルのそばに座り、片手に頭をもたせかけているのを見つけた。そのうなだれた様子を見て、アンの心は冷たくなった。マリラがあんなふうに、力なく動かずに座っているところを見たことはなかった。

「とても疲れたの、マリラ?」

「ええ――いいえ――わからないよ」とマリラは疲れた声で言い、顔を上げた。「疲れているんだろうけれど、そんなことは考えていなかった。それじゃないんだ。」

「眼科医には会ったの? 何て言われたの?」とアンは不安そうに尋ねた。

「会ったよ。目を診てもらった。読書も裁縫も、目を使う仕事はどんなものでも、完全にやめて、泣かないように気をつけ、あの人がくれた眼鏡をかければ、目はこれ以上悪くならず、頭痛も治るかもしれないと言ったよ。でもそうしなければ、六か月以内に必ず完全に目が見えなくなるそうだ。盲目だよ! アン、考えてごらん!」

最初の驚きの叫びのあと、アンはしばらく黙っていた。言葉を出すことができないように思えたのだ。それから声を詰まらせながらも、勇気を出して言った。

「マリラ、考えないで。先生は希望をくださったでしょう。気をつけていれば、完全に視力を失うことはないわ。眼鏡で頭痛が治るなら、それは大きなことよ。」

「わたしには、大した希望とは思えないね」とマリラは苦々しく言った。「読書も裁縫も、そういうことが何もできなくなって、何のために生きるんだい? 盲目でも――死んでいても同じだよ。それに、寂しくなれば泣かずにはいられない。でも、話しても仕方ないね。お茶を一杯いれてくれたらありがたい。もうすっかり参っているんだ。このことは、しばらく誰にも言わないでおくれ。皆が質問したり、同情したり、あれこれ話したりするために、ここへ来るのは耐えられない。」

マリラが軽い食事を終えると、アンは寝床へ行くよう説得した。それからアン自身は東の切妻部屋へ行き、暗闇の中、窓辺に座った。涙と重い心をただひとり抱えて。家へ帰ってきた晩、ここに座っていたときから、どれほど悲しくものごとが変わってしまったことだろう。そのときには希望と喜びで満ち、未来はばら色の約束に輝いて見えた。あれから何年も生きたようにアンは感じた。しかし寝床に入る前には、唇にほほえみがあり、心には平安があった。自分の義務を勇気をもって正面から見つめ、そこに友を見いだしたのだ――義務とは、正直に向き合えば、いつもそういうものなのである。

数日後の午後、マリラは、訪ねてきた客と話していた前庭から、ゆっくり入ってきた。その男がカーモディのサドラーだと、アンは顔だけは知っていた。マリラの顔にあの表情をもたらすとは、彼は何を話していたのだろうとアンは思った。

「サドラーさんは、何の用だったの、マリラ?」

マリラは窓辺に座り、アンを見た。眼科医に禁じられているにもかかわらず、目には涙があった。そして言葉を発すると声が途切れた。

「わたしがグリーン・ゲイブルズを売るつもりだと聞いて、買いたいと言っているんだ。」

「買うですって! グリーン・ゲイブルズを?」

聞き間違えたのではないかとアンは思った。「まあ、マリラ、グリーン・ゲイブルズを売るつもりじゃないでしょう!」

「アン、ほかにどうすればいいのかわからないよ。よく考えたんだ。目が丈夫なら、ここにいて、よい雇い人と一緒に何とか世話をしてやっていける。でも今は無理だ。完全に目が見えなくなるかもしれない。それに、どうであれ、もう切り盛りはできない。まさか自分の家を売らなければならない日まで、生きるとは思わなかったよ。でもこのままでは、状況はどんどん悪くなって、誰も買いたがらなくなる。わたしたちのお金は一セント残らず、あの銀行に入っていた。それに、去年の秋、マシューが支払いのために振り出した手形もある。リンド夫人は、農場を売ってどこかに下宿しなさいと言う――たぶん、あの人のところにね。この農場は小さいし、建物も古いから、あまりの値にはならないだろう。でも、わたしが暮らすには十分だと思う。おまえに奨学金があるのは、本当にありがたいよ、アン。休暇に帰ってくる家がなくなるのは気の毒だけれど、それだけだ。おまえなら、どうにかやっていけるんだろうね。」

マリラはこらえきれず、激しく泣き出した。

「グリーン・ゲイブルズを売ってはいけないわ」とアンは断固として言った。

「ああ、アン、売らずにすめばいいんだけれど。でも、おまえにもわかるだろう。わたしはここにひとりではいられない。苦労と孤独で気が変になってしまう。それに目も悪くなる――きっとそうなる。」

「ひとりでいる必要なんてないのよ、マリラ。わたしが一緒にいる。レッドモンドには行かないわ。」

「レッドモンドへ行かない?」

マリラは疲れた顔を手から上げ、アンを見つめた。「どういうことだい?」

「言ったとおりよ。奨学金は受けない。町から帰ってきた翌日の夜に、そう決めたの。マリラ、あなたがわたしのためにしてくれたすべてを思えば、困っているあなたをひとりで残して行けるなんて、まさか思わないでしょう。考えて、計画を立てていたの。計画を聞いて。バリーさんが、来年はこの農場を借りたいと言っているの。だから、そのことであなたが苦労することはないわ。それから、わたしは先生になる。ここの学校へ応募したの――でも、委員たちはギルバート・ブライスに約束したと聞いているから、取れるとは思っていない。でもカーモディの学校なら手に入るわ――昨晩、店でブレアさんがそう言ってくれたの。もちろん、アヴォンリー学校のようによくも便利でもないでしょう。でも少なくとも暖かい時期なら、家から下宿して、自分でカーモディまで馬車を走らせて戻れる。冬でも金曜には帰ってこられるわ。そのために馬を一頭飼いましょう。ああ、全部考えてあるの、マリラ。本を読んであげるし、明るい気持ちでいられるようにする。退屈も孤独もさせないわ。二人でここにいて、本当に心地よく、幸せに暮らせるわ。」

マリラは夢を見ている女のように聞いていた。

「ああ、アン、おまえがここにいてくれれば、わたしは十分にやっていけるとわかっている。でも、おまえにわたしのため、そんな犠牲を払わせるわけにはいかないよ。とんでもないことだ。」

「ばかばかしい!」

アンは明るく笑った。「犠牲なんかじゃないわ。グリーン・ゲイブルズを手放すことより悪いことはない――わたしをそれ以上傷つけるものはないの。大切なこの家を守らなくちゃ。わたしの決心は固いのよ、マリラ。レッドモンドへは行かないし、ここに残って先生になる。わたしのことは、少しも心配しないで。」

「でも、おまえの野心は――」

「前と同じくらい野心的よ。ただ、野心の目指すものを変えただけ。よい先生になる――それからあなたの目を守る。おまけに、ここで家にいながら勉強して、自分だけの小さな大学課程をやるつもりなの。ああ、計画なら何十もあるわ、マリラ。一週間ずっと考えていたの。ここでの人生に最善を尽くす。そして人生もきっと、その最善をわたしに返してくれると信じている。クイーン学院を出たとき、未来はまっすぐな道のように目の前へ延びていた。ずっと先の道標まで見えると思った。でも今、その道には曲がり角がある。曲がり角の先に何があるのかはわからない。でも、最善のものがあると信じるつもりよ。その曲がり角には、それだけで不思議な魅力があるの、マリラ。その先の道はどう続いているのかしら――どんな緑の輝きが、どんな柔らかなまだらの光と影があるのか――どんな新しい風景が、どんな新しい美しさが――さらに先にはどんな曲がりくねりや丘や谷があるのかしら。」

「わたしには、おまえにそれをあきらめさせてよいようには思えないよ」とマリラは、奨学金のことを言った。

「でも止めることはできないわ。わたしは十六歳半で、リンド夫人に一度言われたように、『ラバみたいに頑固』なんだから」とアンは笑った。「ああ、マリラ、わたしをかわいそうに思わないで。かわいそうがられるのは好きじゃないし、そんな必要もないのよ。大切なグリーン・ゲイブルズに残れると思うだけで、心からうれしい。あなたとわたしほど、この家を愛せる人は誰もいない――だから、守らなければならないの。」

「おまえはなんて恵まれた子なんだろう!」とマリラは言い、譲った。「新しい命をもらった気がする。踏ん張って、おまえを大学へ行かせるべきなんだろうけれど――できないとわかっているから、やってみる気はないよ。でも、いつかきっと埋め合わせをするからね、アン。」

アン・シャーリーが大学へ行く考えを捨て、家に残って教師になるつもりだという話がアヴォンリーに広まると、ずいぶん議論になった。大半の善良な人々はマリラの目のことを知らなかったため、アンは愚かだと思った。アラン夫人はそうではなかった。彼女はアンへ、賛成の言葉をかけた。それは少女の目に、うれし涙を浮かべさせた。善良なリンド夫人も同様だった。ある晩、彼女はグリーン・ゲイブルズへ来て、アンとマリラが、暖かく香る夏の夕闇の中、玄関に座っているのを見つけた。二人は、たそがれが降り、庭に白い蛾が飛び、露を含んだ空気にミントの香りが満ちると、そこに座るのが好きだった。

レイチェル夫人は、背の高い桃色と黄色のタチアオイが列をなして育つ玄関脇の石のベンチに、そのしっかりした体を下ろした。そして疲れと安堵の入り混じった長いため息をついた。

「座れて本当にうれしいわ。今日は一日じゅう立ちっぱなしだったのよ。二百ポンド(約91キログラム)を二本の足で運ぶのは、なかなか大変なことですからね。太っていないのは大きな恵みよ、マリラ。感謝しているといいわ。ところでアン、大学へ行く考えをやめたそうね。聞いて本当によかったと思ったわ。女が気持ちよく身につけられる教育なんて、今あるだけで十分よ。男と一緒に大学へ行って、ラテン語だのギリシア語だの、そんなくだらないもので頭をいっぱいにするなんて、わたしは女の子には賛成できないね。」

「でも、ラテン語もギリシア語も勉強するつもりよ、リンド夫人」とアンは笑って言った。「グリーン・ゲイブルズにいながら文学課程を取るの。大学で学ぶものを、ぜんぶ勉強するつもり。」

リンド夫人は、心底ぞっとしたように両手を上げた。

「アン・シャーリー、おまえは自分を殺してしまうよ。」

「そんなことないわ。むしろ元気になる。ああ、無理はしないつもり。『ジョサイア・アレンの妻』が言うように、『ほどほど』にするわ。でも長い冬の晩には暇な時間がたくさんあるし、飾り縫いにはまるで向いていないの。カーモディで先生になるでしょう。」

「それは初耳ね。おまえはカーモディではなく、ここアヴォンリーで教えることになるよ。委員たちがおまえに学校を任せることに決めたんだから。」

「リンド夫人!」とアンは驚いて飛び上がった。「でも、ギルバート・ブライスに約束したんだと思っていたわ!」

「確かにそうだったよ。でも、ギルバートはおまえが応募したと聞くとすぐ、委員たちのところへ行ったんだ――昨晩、学校で委員会があったでしょう――それで自分の応募を取り下げ、おまえの応募を受け入れるよう勧めたの。ホワイト・サンズで教えることにしたと言っていたよ。おまえがマリラと一緒にいたがっていることを、あの子はもちろん知っていたんだね。まったく、なんて親切で、思いやりのあることだろうと、わたしも思うよ。本当に自己犠牲でもある。ホワイト・サンズでは下宿代を払わなければならないし、あの子は大学まで自分で学費を稼がなくてはならないと、皆知っているんだからね。だから委員たちはおまえを選んだの。トーマスが帰ってきて教えてくれたとき、わたしは飛び上がるほど喜んだよ。」

「引き受けていいのかしら」とアンはつぶやいた。「つまり――ギルバートに、わたしのためにそんな犠牲をさせてはいけないと思うの。」

「もう止めようがないだろうね。ホワイト・サンズの委員たちと契約書に署名しているんだから。だから今、おまえが断っても、あの子には何の得にもならない。もちろん学校を引き受けるんだよ。パイ家の子がもういないんだから、うまくやれるさ。ジョジーが最後だったし、それは結構なことよ。二十年間ずっと、何かしらのパイ家の子がアヴォンリー学校に通っていたけれど、あの一家の人生の使命は、地球が教師たちの住み家ではないと、学校の先生に思い知らせることだったんじゃないかと思うね。まあ! バリー家の切妻部屋で、あんなにまばたきしているのはどういうことだい?」

「ダイアナが、来てって合図しているのよ」とアンは笑った。「昔からの習慣を続けているでしょう。ちょっと走って、何の用か見てくるから失礼するわ。」

アンは鹿のようにクローバーの斜面を駆け下り、お化けの森のモミの影へ消えていった。リンド夫人は、愛情のこもった目でその後ろ姿を見送った。

「あの子には、まだ子どものところがずいぶん残っているね、ある意味では。」

「別の意味では、女らしいところがもっとずっとあるよ」とマリラは言い返した。一瞬だけ、昔のきびきびした調子が戻っていた。

しかし、もはやきびきびしたところは、マリラの特徴ではなかった。その晩、リンド夫人がトーマスに話したように。

「マリラ・カスバートは、丸くなったのよ。それだけのこと。」

翌晩、アンはマシューの墓に新しい花を供え、スコッチローズの木に水をやるため、アヴォンリーの小さな墓地へ行った。アンはそこにたそがれまでとどまった。低く親しげな話し声のようにざわめくポプラと、墓のあいだに思いのままに伸びるささやく草のある、小さな場所の平安と静けさが好きだった。ようやくそこを去り、輝く湖水へと傾斜する長い丘を下り始めたときには、日が沈んだあとだった。アヴォンリー全体が夢のような残照の中に横たわっていた――「古い平和の宿る場所」として。

空気には、蜜のように甘いクローバー畑の上を吹いてきた風の新鮮さがあった。家々の灯りが、屋敷の木々の間にここかしことまたたいていた。その向こうには、霧のように紫がかった海があり、心に残る絶え間ない響きを立てていた。西の空は柔らかな色彩が混じり合う輝きで、池はそれらをさらに淡い色合いにして、静かに映していた。そのすべての美しさがアンの心を震わせ、アンは感謝とともに魂の門を開いた。

「愛しい古い世界」と彼女はつぶやいた。「あなたはとても美しい。そして、あなたの中で生きていられることがうれしいわ。」

丘の中ほどで、ブライス家の屋敷の前の門から、背の高い少年が口笛を吹きながら出てきた。ギルバートだった。アンだと気づくと、口笛は唇で途切れた。彼は礼儀正しく帽子を上げたが、アンが立ち止まり、手を差し出さなければ、黙って通り過ぎただろう。

「ギルバート」と、頬を真っ赤にしながらアンは言った。「わたしのために学校を譲ってくれて、ありがとうと言いたいの。とても親切だったわ――そして、感謝していることを知ってほしいの。」

ギルバートは差し出された手を、熱心に取った。

「僕は、特に親切なことをしたわけじゃないよ、アン。君のために、ほんの少し役に立ててうれしかった。これから友達になれるかな? 昔のあやまちを、本当に許してくれたの?」

アンは笑い、手を引こうとしたが、うまくいかなかった。

「池の桟橋であったあの日、わたしはあなたを許していたのよ。でも自分では気づかなかった。なんて意地っ張りで、ばかな小娘だったんでしょう。わたしは――もうすっかり白状したほうがいいわね――あれからずっと、悪かったと思っていたの。」

「僕たちは最高の友達になるよ」とギルバートはうれしそうに言った。「アン、僕たちはよい友達になるために生まれてきたんだ。君はもう十分に運命を邪魔したよ。僕たちはいろんな意味で、互いに助け合えると思う。勉強は続けるんだろう? 僕も続ける。さあ、家まで一緒に歩こう。」

アンが台所へ入ると、マリラは興味深そうに見た。

「アン、一緒に小道を上ってきたのは誰だい?」

「ギルバート・ブライスよ」とアンは答え、自分が赤くなっているのに気づいて腹を立てた。「バリー家の丘で会ったの。」

「おまえとギルバート・ブライスが、門のところで半時間も立ち話をするほど仲のよい友達だとは思わなかったよ」とマリラは乾いた笑みを浮かべて言った。

「これまでは違ったの――よい敵同士だったのよ。でも、これからはよい友達になるほうが、ずっと分別があると決めたの。本当に半時間もいたの? ほんの数分に思えたわ。でもね、マリラ、取り戻さなければならない五年分の会話があるんですもの。」

その夜、アンは満ち足りた喜びを友として、長く窓辺に座っていた。風は桜の枝でやわらかく喉を鳴らし、ミントの香りが彼女のもとへ昇ってきた。谷間の尖ったモミの木の上で星がまたたき、古い木立の切れ間からダイアナの灯りが輝いていた。

クイーン学院から帰った晩、ここに座っていたときより、アンの地平は狭くなっていた。しかし、足元に与えられた道が狭いものだとしても、その道のそばには静かな幸福の花が咲くと、アンは知っていた。誠実な仕事の喜び、価値ある志、気の合う友情が彼女のものになる。空想という生まれながらの権利も、理想に満ちた夢の世界も、誰にも奪えはしない。そして、いつだって道には曲がり角があるのだ! 

「『神は天にあり、世はすべてよし』」と、アンはそっとささやいた。

公開日: 2026-07-18