フランケンシュタイン、または現代のプロメテウス
Frankenstein; or, the modern prometheus
- 出版年
- 1818年
- 作者
- メアリー・シェリー
- 翻訳
- 開原 藍誠
- 概要
- 禁忌の術で生命を創造した科学者が、その被造物の醜悪さと孤独による憎しみに翻弄される物語である。創造主と被造物が互いに絶望し、破滅へと向かう悲劇的な追走劇が描かれる。
あるいは、現代のプロメテウス
メアリー・ウルストンクラフト(ゴドウィン)・シェリー著
第一書簡
イングランド、サヴィル夫人へ。
サンクトペテルブルク、一七――年十二月十一日。
不吉な予感を抱いておられた私の事業が、何の災難にも見舞われずに始まったと知れば、あなたも喜んでくださるでしょう。昨日こちらに到着しました。まずは愛する姉に、私が元気でいること、そして計画の成功をますます確信していることをお伝えします。
ここはすでにロンドンからはるか北です。サンクトペテルブルクの街を歩くと、冷たい北風が頬をなで、身が引き締まると同時に歓喜が湧いてきます。この気持ちがわかりますか。私の目指す土地から吹いてきた風が、氷に閉ざされた世界をひと足先に感じさせてくれるのです。希望を運ぶその風に励まされ、白昼夢はいっそう熱く鮮やかになります。極地は霜と荒廃の地だと自分に言い聞かせようとしても、無駄です。私の心にはいつも、美と喜びの国として現れます。マーガレット、あの地では太陽が絶えず見え、広い円盤を地平線すれすれに浮かべて、永遠に光を注いでいるのです。あの地では――姉さん、先人の航海者たちの言葉を少しは信じさせてください――雪も霜も消え、穏やかな海を渡った先に、人の住むこの地球上でこれまで発見されたどの土地よりも、不思議と美しさに満ちた国があるかもしれません。まだ知られていないあの孤絶した地では、天体の現象が類例のないものであるように、産物も地形も類を見ないものでしょう。永遠の光の国に、何が待っていないと言えるでしょうか。磁針を引きつける驚くべき力を発見できるかもしれないし、この航海さえ果たせば、今は不規則に見える幾千もの天体観測の結果を、矛盾なく説明できるかもしれません。まだ誰も訪れたことのない世界の一角を目にし、人の足跡ひとつない土地を踏むことで、燃えるような好奇心を満たせるのです。こうした魅力の前では、危険も死も恐れるに足りません。故郷の川を探検しようと、休日に仲間と小舟に乗り込む子どものような喜びで、この苦難に満ちた航海に出られます。たとえ推測がすべて外れても、極地の近くに航路を発見し、今は到達するのに何か月もかかる国々への道を開けば、末代まで全人類に計り知れない恩恵をもたらすでしょう。あるいは、磁力の秘密を突き止めるだけでも同じことです。それが可能だとすれば、私のような試みによるほかありません。
こうして考えているうちに、手紙を書き始めたときの心の揺れは消え、胸は天にも昇る熱情で満たされました。人の心を鎮めるのに、確固とした目的――精神の目を据える一点――ほど役立つものはありません。この探検は幼いころからの夢でした。極地を囲む海を通り、北太平洋に到達しようとした数々の航海記を、夢中で読んだものです。トーマス叔父さんの蔵書といえば、探検航海の記録ばかりだったことを覚えておいででしょう。私の教育はおろそかにされましたが、本を読むのはたまらなく好きでした。昼も夜も読みふけるうちに、父が臨終の際、私を船乗りにさせてはならないと叔父さんに言い残したと知った幼い日の悔しさが、いっそう募っていきました。
けれども、心を奪われ、魂を天へ引き上げてくれる詩人たちの作品を初めて読んだとき、その夢は薄れました。私も詩人になり、一年間、自分で作り出した楽園に暮らしたのです。ホメロスやシェイクスピアの名が祀られる殿堂に、私にも居場所が得られるかもしれないと夢見ました。失敗に終わり、私がどれほど落胆したかはご存じのとおりです。ですが、ちょうどそのころ、いとこの遺産を受け継ぎ、心は再び昔の夢へと向かいました。
今の計画を決意してから、六年が過ぎました。この大事業に身を捧げようと決めた瞬間を、今でも覚えています。まずは体を苦労に慣らしました。捕鯨船に同行して北海へ幾度も出かけ、寒さ、飢え、渇き、睡眠不足に進んで耐えました。昼は普通の水夫以上に働き、夜は数学、医学理論、そして航海者に実際の役に立つ自然科学を学びました。グリーンランドへ向かう捕鯨船に二度、下級航海士として雇われ、見事に務めを果たしました。船長が私の働きを高く買い、船で二番目の地位を与えて熱心に引き留めてくれたときには、正直なところ、少し誇らしく思いました。
さて、愛するマーガレット、私にも何か偉業を成し遂げる資格はあると思いませんか。安楽で贅沢な暮らしもできたのに、富が差し出すどんな誘惑よりも、私は栄光を選んだのです。誰か、そうだと励ましてくれる声があれば! 勇気と決意は揺らぎません。けれども希望は浮き沈みし、気持ちが沈むこともたびたびあります。これから長く困難な航海に出ます。どんな非常事態にも、持てる忍耐力のすべてが必要でしょう。皆の士気を奮い立たせるだけでなく、皆が気力を失ったときには、自分自身の心も支えねばなりません。
今はロシアを旅するには最もよい季節です。人々は橇で雪の上をすばやく駆けていきます。乗り心地もよく、イングランドの駅馬車よりずっと快適です。毛皮を着込めば寒さも厳しすぎません。私もすでにそうしています。甲板を歩き回るのと、何時間も座ったまま動かず、血が凍るのを防ぐ運動もできないのとでは、わけが違いますから。サンクトペテルブルクからアルハンゲリスクへの街道で命を落としたいとは思いません。
二、三週間後にはアルハンゲリスクへ向かいます。そこで船主のために保険料を払って船を借り、捕鯨に慣れた船乗りのなかから、必要な人数を雇うつもりです。出航は六月まで待ちます。では、帰るのはいつか。ああ、姉さん、どう答えればよいのでしょう。成功すれば、再会まで何か月も、ひょっとすると何年もかかります。失敗すれば、すぐに会えるか、二度と会えないかです。
さようなら、愛する立派なマーガレット。天があなたに恵みを降り注ぎ、私を守ってくださいますように。そして、あなたの愛情と優しさへの感謝を、何度でも伝えられますように。
愛する弟より R・ウォルトン
第二書簡
イングランド、サヴィル夫人へ。
アルハンゲリスク、一七――年三月二十八日。
霜と雪に囲まれたこの地では、時の流れがなんと遅いことでしょう。それでも計画は一歩前進しました。船を借り、今は乗組員を集めています。すでに雇った者たちは頼りになりそうで、勇気も申し分ありません。
けれども、これまで満たされたことのない、そして今やひどくつらく感じられる欠落があります。マーガレット、私には友人がいません。成功に胸を躍らせても喜びを分かち合う人はなく、失望に打ちのめされても、沈んだ心を支えてくれる人はいないのです。思いは紙に書きつけられますが、感情を伝えるにはあまりに頼りない手段です。気持ちを分かち合い、目と目で語り合える相手が欲しい。夢見がちだと思われるかもしれませんが、友人がいないことが身にしみてつらいのです。優しく勇敢で、教養があり、心が広く、趣味も私に近い人がそばにいれば、計画のよいところを認め、誤りを正してくれるでしょう。そんな友がいれば、この哀れな弟の欠点をどれほど補ってくれることか。私は実行に移すと熱くなりすぎ、困難にも辛抱が利きません。それに、独学で育ったことはもっと大きな弱みです。十四歳になるまで野原を駆け回り、読んだのはトーマス叔父さんの航海記だけ。そのころになって祖国の名高い詩人を知りましたが、外国語を学ぶ必要に気づいたのは、そこから得られる最大の恩恵を受けるには遅すぎる年齢になってからでした。今は二十八歳ですが、実際には十五歳の少年たちより無学かもしれません。考えることは多く、夢も彼らより大きく壮麗です。ただ、画家のいう調和が欠けているのです。夢想家だと見下さずにいてくれる分別と、私の心を整えようとしてくれる愛情を持った友が、どうしても必要です。
とはいえ、嘆いても仕方ありません。広い海で友人を見つけることは、まずないでしょう。ここアルハンゲリスクの商人や船乗りのなかでも同じです。それでも、荒々しい胸の内にも、人間の卑しい部分とは無縁の感情は息づいています。たとえば副長は、並外れた勇気と冒険心の持ち主です。名声を、いや、もっと彼らしく言えば、仕事で身を立てることを熱烈に望んでいます。イングランド人で、教育によって和らげられていない国民的・職業的な偏見を持ちながら、人間の最も気高い資質をいくつか保っています。初めて会ったのは捕鯨船の上でした。この街で仕事に就いていないと知り、たやすく探検への参加を頼めました。
船長もたいへん立派な人物で、穏やかな人柄と、優しい船員の扱い方で知られています。誠実で勇敢だという評判もあり、ぜひ雇いたいと思いました。私は孤独な少年時代を送り、その後も大切な年月をあなたの優しい世話のもとで過ごしたせいか、船で当たり前に行われる乱暴な扱いには、どうしても強い嫌悪を覚えます。あれが必要だと思ったことはありません。心が優しく、しかも船員から敬われ、よく従われている船乗りがいると聞き、その人を迎えられたのは幸運だと思いました。彼のことを初めて聞いたのは、人生の幸福を彼に負っているという一人の女性からです。少々物語めいた話でした。かいつまんでお伝えします。数年前、彼はさほど裕福ではないロシア人の若い女性を愛していました。自分は賞金をかなり蓄えていたので、娘の父親も結婚に同意しました。ところが式の前に会うと、娘は涙に暮れ、彼の足元に身を投げて、どうか結婚を許してほしいと訴えたのです。別に愛する人がいるが、その人は貧しく、父親は結婚を認めてくれない、と。心の広い彼は娘を安心させ、相手の名を聞くと、ただちに身を引きました。すでに残りの人生を過ごすための農場を買っていましたが、それを丸ごと恋敵に譲り、残っていた賞金も家畜を買う資金として渡しました。そのうえ自ら娘の父親を訪ね、二人の結婚を認めるよう頼んだのです。しかし老人は、彼への義理を通さねばならないと考えて断固拒みました。説得できないとわかると彼は国を離れ、かつての恋人が望みどおりの相手と結婚したと聞くまで帰りませんでした。「なんて気高い人!」とあなたは言うでしょう。そのとおりです。ただ、教育をまったく受けておらず、トルコ人のように無口で、どこか無知ゆえの無頓着さがあります。だからこそ行いはいっそう驚くべきものですが、本来なら寄せられるはずの関心や共感が、そのぶん薄れてしまうのです。
少し愚痴をこぼし、得られそうもない慰めを夢見たからといって、決意が揺らいだとは思わないでください。決意は運命のように固く、出航を遅らせているのは天候だけです。冬はひどく厳しかったものの、春の訪れは早そうで、例年になく早い春だと言われています。予想より早く出航できるかもしれません。無謀なことはしません。人の命を預かるとき、私がどれほど慎重に考えるかは、よくご存じでしょう。
出発が近づいた今の気持ちは、とても言葉にできません。喜びと恐れが半ばずつ入り交じり、身が震えるような思いで準備しています。未踏の地、「霧と雪の国」へ向かうのです。ですが、アホウドリを殺すことはありません。私の身を案じたり、「老水夫の歌」の老水夫のように、やつれ果てて戻るのではと心配したりしないでください。
この引用には笑うでしょうが、秘密を打ち明けます。海の危険な神秘にこれほど心を奪われるのは、近代で最も想像力豊かなあの詩人の作品のせいではないかと、たびたび思います。自分でも理解できない何かが、胸の奥で働いているのです。私は実務では勤勉で、骨身を惜しまず、粘り強く働きます。けれども、それだけではありません。驚異への愛と信念が、あらゆる計画に織り込まれ、人の通る道から私を連れ去り、荒れた海や、これから探検する人跡未踏の地へと駆り立てるのです。
もっと大切なことに話を戻しましょう。広大な海を渡り、アフリカかアメリカの最南端を回って、再びあなたに会えるでしょうか。そこまでの成功を望む勇気はありません。かといって、失敗の姿を思い浮かべるのも耐えられません。当分は機会あるごとに手紙をください。いちばん心の支えが必要なとき、届くかもしれません。心からあなたを愛しています。もし二度と便りがなくなっても、愛情をもって私を思い出してください。
愛する弟より ロバート・ウォルトン
第三書簡
イングランド、サヴィル夫人へ。
一七――年七月七日。
愛する姉さんへ。
無事に、そして順調に航海を進めていることを、取り急ぎお知らせします。この手紙はアルハンゲリスクから帰国する商船に託します。何年も故国を見られないかもしれない私より、幸運な船です。それでも私は意気軒昂です。船員たちは勇敢で、決意も固いようです。私たちの進む先に危険があることを示す流氷の板が絶えず通り過ぎますが、彼らは少しもひるみません。すでに相当な高緯度に達しました。今は盛夏で、イングランドほど暖かくはないものの、目指す岸辺へ船をぐんぐん運ぶ南風には、思いがけないほど生気を取り戻させる温もりがあります。
手紙に書くほどの事件は、まだ起きていません。強風が一、二度吹いたり、船に水漏れが生じたりする程度なら、経験豊かな航海者は記録にも残しません。航海中、これ以上のことが起こらなければ十分です。
さようなら、愛するマーガレット。あなたのためにも自分のためにも、むやみに危険へ飛び込むことはしません。冷静に、粘り強く、慎重に進みます。
けれども、努力は必ず成功に結びつけてみせます。なぜできないことがありましょう。道なき海に安全な航路を見いだし、ここまで来たのです。星々さえ、私の勝利の証人です。荒々しくも船に道を譲る海を、なぜこの先も進めないでしょう。固い決意を抱く人の心と意志を、何が止められるでしょうか。
胸が高ぶり、思わず言葉があふれました。もう筆を置きます。天が愛する姉さんを祝福してくださいますように。
R・W
第四書簡
イングランド、サヴィル夫人へ。
一七――年八月五日。
ひどく奇妙な出来事がありました。おそらくこの手紙が届くより先に、あなたに会えるでしょう。それでも書き留めずにはいられません。
先週の月曜日、七月三十一日、船は氷にほとんど取り囲まれ、浮いているのがやっとというほど、四方から迫られました。濃霧にも包まれ、いささか危険な状況でした。そこで天候の変化を待ち、船を止めました。
午後二時ごろ霧が晴れると、どこまでも続く、起伏に富んだ広大な氷原が現れました。船員の何人かがうめき、私も不安を覚えて警戒していたところ、突然奇妙な光景が目に入り、皆の関心は船の危険からそちらへ移りました。半マイルほど先を、犬に引かれた橇に載せた低い乗り物が、北へ走っていたのです。乗って犬を操るのは人の姿をしていますが、どうやら巨人のようでした。望遠鏡で追いましたが、やがて遠くの氷の起伏に紛れ、見えなくなりました。
誰もがただただ驚きました。陸地からは何百マイルも離れているはずです。ところがあの姿を見ると、実際は思ったほど遠くないのかもしれません。しかし氷に閉じ込められた船では、注意深く見届けた橇の跡を追うことはできませんでした。
二時間ほどすると、氷の下でうねる海の音が聞こえ、夜までには氷が割れて船は自由になりました。それでも、割れて漂う大きな氷塊に暗闇でぶつかるのを恐れ、朝まで停泊しました。私もその間に数時間休みました。
夜が明けて甲板に出ると、船員が片側に集まり、海上の誰かと話しているようでした。見れば、前に見たものと同じような橇が、大きな氷片に乗って夜の間に流れ着いていたのです。生き残った犬は一頭だけでしたが、橇には人間もいて、船員たちは船に乗るよう説得していました。先の旅人のように、未知の島の住人と思しき者ではありません。ヨーロッパ人です。私が姿を見せると、船長が言いました。「こちらがうちの船の指揮官です。大海原であなたを見殺しにはしませんよ。」
私を見ると、見知らぬ男は外国訛りのある英語で尋ねました。「船に乗せていただく前に、行き先を教えてもらえませんか。」
驚きました。命が尽きようとしている男が、そんなことを聞くのです。地上のどんな財宝と引き換えにもできない救いの船に違いない、と思っていたのに。それでも私は、北極を目指す探検航海だと答えました。
男は納得したように船に乗りました。ああ、マーガレット! 救助を前にして条件を確かめたその姿を見たら、あなたも心底驚いたことでしょう。手足はほとんど凍り、疲労と苦痛で体はひどくやせ細っていました。あれほど惨めな有様の人を見たことはありません。船室へ運ぼうとしましたが、外気から離れたとたんに気を失いました。甲板へ戻し、ブランデーで体をさすって少し飲ませると、息を吹き返しました。毛布でくるみ、調理用の暖炉のそばへ寝かせました。少しずつ回復してスープを口にすると、驚くほど元気を取り戻しました。
話せるようになるまで二日かかり、苦痛のために正気を失ったのではと、何度も心配しました。多少回復してからは私の船室へ移し、仕事が許すかぎり世話をしました。あれほど心を引かれる人物は見たことがありません。目にはたいてい荒々しさ、時には狂気さえ宿っています。ですが、誰かが優しくしたり、ほんの些細な手助けをしたりすると、顔じゅうが、このうえなく温かく優しい光に照らされるように輝くのです。とはいえ、普段は沈み込み、絶望に暮れています。苦しみの重みに耐えかねるかのように、歯ぎしりすることもあります。
少し回復すると、船員たちがあれこれ聞きたがり、遠ざけるのに苦労しました。心身の回復には完全な休息が必要なのですから、好奇心で苦しめたくありません。一度だけ、副長が尋ねました。なぜあんな妙な乗り物で、氷の上をそこまで遠くへ来たのか、と。
男の顔はたちまち深い陰に覆われました。「逃げた者を追っていたのです。」
「追っていた男も、同じように旅をしていたのですか。」
「ええ。」
「なら、我々はその男を見たようです。あなたを助ける前の日、犬に橇を引かせ、氷原を行く男を見ました。」
たちまち男は身を乗り出し、彼の呼ぶところの「悪魔」がたどった道筋を、立て続けに尋ねました。その後、二人きりになると、こう言いました。「皆さんも、あなたも、私のことが気になっているでしょう。ですが、あなたは思いやりがあって、問い詰めようとはなさらない。」
「もちろんです。好奇心からお話をせがむのは、無作法で非情なことでしょう。」
「それでも、あなたは危険な場所から私を救い、親切に命を取り戻させてくださいました。」
その少し後、割れた氷にもう一台の橇が巻き込まれたと思うかと尋ねられました。確かなことは言えないと答えました。氷が割れたのは真夜中近くですから、それまでに安全な場所へ着いていたかもしれません。判断する術はありません。
それからというもの、衰えきった体に新たな生気が宿ったようです。前に見た橇を探すため、しきりに甲板へ出たがります。冷たい外気に耐えられる体ではないので船室にとどまるよう説得し、誰かに見張らせ、何か見えたらすぐ知らせると約束しました。
これが、今日までに起きた奇妙な出来事の記録です。男の体調は徐々によくなりましたが、ひどく無口で、私以外が船室に入ると落ち着かないようです。それでも物腰があまりに穏やかで優しいため、ほとんど言葉を交わしていない船員たちも、皆、彼を気にかけています。私自身は、兄弟のような愛情を感じ始めています。絶えず深い悲しみに沈む姿を見ると、同情と哀れみが湧いてきます。これほど打ちひしがれてなお魅力に満ちているのですから、幸福だったころはさぞ気高い人だったのでしょう。
マーガレット、広い海に友人は見つからないだろうと、以前の手紙に書きました。ですが、悲しみに心を砕かれる前に出会っていたら、魂の兄弟と呼ぶことを喜んだであろう人に、出会ったのです。
新しい出来事があれば、折々に記録を続けます。
一七――年八月十三日。
客人への愛情は日ごとに深まります。驚くほど強い敬意と哀れみを、同時に感じます。あれほど気高い人が不幸に押し潰されるのを見て、痛みを覚えずにいられるでしょうか。優しく、しかも賢い。深い教養の持ち主で、口を開けば、言葉を美しく選びながらもよどみなく、並ぶもののない雄弁さで語ります。
病からはかなり回復し、今ではしょっちゅう甲板で、先を行った橇を探しています。それほど不幸を抱えながら、自分の苦しみだけに囚われず、他人の計画にも深い関心を寄せます。私の探検についてもたびたび話し合い、私は包み隠さず打ち明けました。成功の見込みを説く私の言葉にも、成功のために講じた細かな方策にも、熱心に耳を傾けてくれました。その共感に促され、私は胸の内をさらけ出しました。財産も命も、あらゆる希望も、この事業のためなら喜んで捧げる。求める知識を手に入れ、人類を脅かす自然の力を支配して、その力を後世に伝えられるなら、一人の人間の生死など安い代償だ――燃える思いのままに、そう語ったのです。すると、聞いていた男の顔に暗い影が広がりました。初めは感情を抑えようとしているようでしたが、両手で目を覆うと、指の間から涙が次々にこぼれました。それを見て、私の声は震え、途切れました。彼の胸からうめき声が漏れました。私が言葉を止めると、やがて途切れがちにこう言ったのです。「不幸な人だ! あなたも私と同じ狂気に囚われているのですか。あの酔わせる酒を飲んだのですか。話を聞いてください。私の物語を聞けば、その杯を唇からたたき落とすでしょう!」
当然、好奇心を強くかき立てられました。しかし悲しみが激しくこみ上げ、衰弱した体には耐えきれなくなっていました。落ち着きを取り戻すには、長い休息と穏やかな会話が必要でした。
感情の高ぶりを抑えると、情に流された自分を恥じたようです。絶望を振り払い、再び私自身の話へと誘いました。若いころのことを尋ねられたので、手短に話しましたが、それをきっかけにさまざまな思いが湧きました。友人が欲しいこと、心から通じ合える相手を求めていること、そうした恵みを知らない人は幸福とは言えないと思うことを語りました。
「同感です」と彼は答えました。「自分より賢く、立派で、いとおしい人――友とはそういうものでしょう――の助けを借りて弱さや欠点を補わなければ、私たちは半分しか作られていない、未完成な存在です。私にもかつて、人間のなかで最も気高い友がいました。だから友情について語る資格はあります。あなたには希望があり、未来が広がっている。絶望する理由はありません。しかし私は……すべてを失い、人生をやり直すこともできません。」
その顔には、静かで揺るぎない悲しみが浮かび、胸を打たれました。それきり黙って、船室へ戻っていきました。
心が砕かれた今でさえ、自然の美を感じ取る力では、誰にも劣りません。星空も、海も、この不思議な土地のあらゆる景色も、なお彼の魂を地上から引き上げる力を持っています。ああいう人は、二つの生を生きているのでしょう。不幸に苦しみ、失望に打ちひしがれても、内なる自分に立ち戻れば、光輪をまとう天の霊のようになる。その輪の中へは、悲しみも愚かさも入り込めません。
この神々しい放浪者を熱く語る私を、あなたは笑うでしょうか。実際に会えば笑いません。あなたは読書と世間から離れた暮らしによって感性を磨き、少々目も厳しくなっています。だからこそ、この人の並外れた美点をいっそう深く理解できるはずです。知るかぎりの誰よりも彼を高みに置くものは何なのか、考えることがあります。直感的な洞察力、すばやく正確な判断力、物事の原因を明晰に見抜く力ではないでしょうか。それに、思いを自在に言葉にする才能と、抑揚を変えるだけで魂を揺さぶる、音楽のような声があります。
一七――年八月十九日。
昨日、客人が言いました。「ウォルトン船長、私が並外れた不幸を味わったことは、お気づきでしょう。かつては、その記憶を墓まで持っていこうと決めていました。ですが、あなたと出会って考えが変わりました。あなたは、かつての私と同じように知識と知恵を求めています。願いが叶ったとき、それが私の場合のように、あなたを刺す蛇とならないことを心から祈ります。私の災難を話して役に立つかどうかはわかりません。しかし、あなたが私と同じ道を進み、私をこうしてしまった危険に身をさらしていることを思えば、私の話から教訓を得られるかもしれない。事業が成功したときの道しるべに、失敗したときの慰めになるかもしれません。これから、世間では信じがたいと思われる出来事を話します。穏やかな土地でなら、あなたに信じてもらえないこと、あるいは笑われることを恐れたでしょう。ですが、この荒々しく神秘に満ちた土地では、自然の無限に変化する力を知らない者なら笑い飛ばすようなことも、起こりうると思えるはずです。私の話には、出来事が真実であることを示す筋道が、おのずと通っているとも思います。」
申し出がうれしかったのは言うまでもありません。一方で、不幸を語らせて再び悲しませるのは忍びなく思いました。好奇心から、そしてできることなら運命を少しでも和らげたいという強い願いから、話を聞きたくてたまりませんでした。その気持ちを伝えました。
「お気遣いには感謝します」と彼は答えました。「ですが、もう遅い。私の運命は、ほとんど終わっています。あと一つの出来事を待つだけです。それが済めば安らかに眠れます。あなたのお気持ちはわかります」私が口を挟もうとしたのを見て続けました。「ですが、友よ――そう呼ぶことを許してください――あなたは思い違いをしています。私の運命を変えることはできません。話を聞けば、いかに取り返しがつかないか、おわかりになるでしょう。」
翌日、私の手が空いたときに話し始めると約束してくれました。私は心から礼を言いました。今後は仕事に差し支えないかぎり、毎晩、その日聞いた話を、できるだけ彼の言葉どおりに書き留めようと決めました。忙しい夜にも、少なくとも覚え書きは残します。この手記は、あなたにもきっと興味深いでしょう。まして彼を知り、その口から直接話を聞く私が、いつの日か読み返すなら、どれほどの思いと共感を覚えることでしょう。今、筆を執るだけでも、豊かに響く声が耳に蘇ります。輝く目が、悲しみと優しさをたたえて私を見つめる。細い手を熱を込めて上げ、心の光が顔を照らす姿が見えます。彼の物語は奇怪で、胸を引き裂くものでしょう。勇敢な船を進路から襲い、ついには打ち砕いた嵐とは、どれほど恐ろしいものだったのでしょう!
第一章
私はジュネーヴに生まれました。わが家は共和国でも屈指の名家です。先祖は長年、参事官や行政長官を務め、父もいくつもの公職で立派な評判を築きました。誠実で、公務に倦むことなく励む人として、知る者すべてから敬われていました。若いころは国の仕事に忙しく、さまざまな事情で結婚が遅れ、家庭を持ったのは人生も暮れかかったころでした。
父の人柄を知っていただくためにも、結婚の経緯をお話しします。父の親友の一人に、度重なる不運から、繁栄を失って貧しくなった商人がいました。ボーフォートという名のその人は、誇り高く、頑固な性格でした。かつて身分と豪奢な暮らしで名を知られた同じ土地で、貧しく忘れられて生きることに耐えられなかったのです。借金を立派に返し終えると、娘を連れてルツェルンへ移り、人知れず困窮のうちに暮らしました。父はボーフォートを心からの友として愛し、その不幸と隠遁を深く悲しみました。二人を結ぶ友情を信じず、誤った誇りから立ち去ったことを、ひどく残念がっていました。そして、自分の信用と助力で再出発するよう説得しようと、すぐに捜し始めました。
ボーフォートは巧みに身を隠していたため、父が住まいを突き止めるまで十か月かかりました。喜び勇んでロイス川に近い貧しい通りの家へ向かったものの、そこで迎えたのは悲惨と絶望ばかりでした。破産後に残った金はごくわずかでしたが、数か月は食べていける額で、その間に商館でまともな仕事を見つけるつもりだったのです。ところが何もせずに時が過ぎ、考える暇があるほど悲しみは深く膿んでいきました。とうとう三か月後には病床に伏し、働くこともできなくなりました。
娘はこまやかに看病しましたが、乏しい蓄えはみるみる減り、ほかに暮らしを支える当てもありません。それでもキャロライン・ボーフォートは並外れた気丈さを持ち、逆境の中で奮い立ちました。針仕事を引き受け、麦わらを編み、さまざまな手立てで、かろうじて命をつなげるほどの金を稼ぎました。
こうして数か月が過ぎました。父親の病は悪くなり、娘は看病にいっそう時間を取られ、暮らしの糧も減りました。そして十か月目、父親は娘の腕の中で息を引き取り、彼女は身寄りも金もない孤児になりました。最後の打撃に耐えられず、ボーフォートの棺のそばにひざまずいて激しく泣いていたとき、私の父が部屋に入ったのです。貧しい娘には、守護の天使が現れたようだったでしょう。彼女は父に身を委ねました。友を埋葬した後、父は彼女をジュネーヴへ連れ帰り、親戚の保護のもとに置きました。それから二年後、キャロラインは父の妻になりました。
両親の年は大きく離れていましたが、その違いは、ひたむきな愛情で二人をいっそう固く結んだようです。父は公正な人で、心から愛するには、まず相手を深く尊敬せずにいられませんでした。かつて愛した人に、後になって相応しくない面が見つかり、傷ついた経験があったのかもしれません。そのため、試練を経て証明された美徳をなおさら大切にしたのでしょう。母への愛には感謝と敬慕があり、年老いてからの盲目的な溺愛とはまるで違いました。母の美徳を尊び、味わった苦しみを少しでも償いたいという思いが、母に接する態度を言いようもなく美しいものにしていました。父は何事も母の望みと都合を優先しました。庭師が異国の美しい花を荒い風から守るように母を守り、優しく慈悲深い心を喜ばせるもので周囲を満たそうとしました。母はそれまでの苦労で健康を損ね、揺るがぬ心の安らぎさえ失いかけていました。結婚前の二年間に父は公職を徐々に退き、結婚するとすぐ、母の弱った体を癒やすため、穏やかな気候と、新しい景色に心を躍らせる旅を求めてイタリアへ向かいました。
イタリアからはドイツとフランスを訪れました。長男の私はナポリで生まれ、赤ん坊のころから旅について回りました。その後、何年も一人っ子でした。両親は互いを深く愛しながらも、尽きることのない愛情を、泉から汲むように私へ注いでくれました。最初の記憶は、母の優しい抱擁と、私を見つめる父の喜びに満ちた笑顔です。私は二人の遊び相手であり、宝物であり、それ以上の存在――天から授かった、無垢で無力なわが子でした。その子を善良に育て、幸せに導くか不幸にしてしまうかは、自分たちの務めの果たし方にかかっていると、両親は深く自覚していました。二人とも愛情深かったのです。ですから幼い私は、忍耐と思いやりと自制を日々教わりながらも、絹の糸で導かれるように優しく育てられ、すべてを喜びの連なりとして感じていました。
長いこと、両親の関心は私一人に注がれました。母は娘も欲しがっていましたが、子どもは私だけでした。五歳ごろ、イタリアの国境を越えて旅に出た両親は、コモ湖畔で一週間を過ごしました。二人は思いやりから、貧しい人の小屋をよく訪ねていました。母にとっては義務以上の、どうしてもせずにはいられないことでした。自分が苦しみ、助けられた経験があるだけに、今度は苦しむ人の守護天使になりたかったのです。ある散歩の途中、谷間に一軒の貧しい小屋を見つけました。ひときわ荒れ果てた様子で、周りにはろくに服も着ていない子どもが何人もおり、ひどい窮乏ぶりがうかがえました。父が一人でミラノに出かけた日、母は私を連れてその家を訪ねました。働きづめで苦労に身を曲げた農夫と妻が、飢えた五人の子に、乏しい食事を分けていました。そのなかに、母の目をひときわ引く女の子がいました。ほかの子とは生まれが違うように見えたのです。四人は黒い目をした丈夫そうな腕白たちでしたが、その子はやせて肌がとても白い。髪は生き生きと輝く黄金色で、粗末な服を着ていても、頭に気品ある冠を載せているようでした。広く澄んだ額、曇りのない青い目、感受性と優しさのにじむ唇と顔立ち。誰が見ても、天から遣わされ、顔の隅々に天上のしるしを宿した、ほかの子とは違う存在と思うほどでした。
農夫の妻は、母がその美しい子に驚きと賛嘆の目を注いでいるのに気づき、進んで身の上を話しました。その子は実の娘ではなく、ミラノの貴族の娘でした。ドイツ人の母親は、産後に亡くなりました。当時は暮らし向きのよかったこの夫婦が、乳飲み子を預かったのです。結婚して間もなく、長子が生まれたばかりでした。預かった娘の父親は、イタリアの古い栄光を胸に育ち、祖国の自由を求めて闘った人でした。schiavi ognor frementi[訳注:イタリア語で「絶えず憤る奴隷たち」の意]の一人です。しかし祖国の力が及ばず、犠牲になりました。亡くなったのか、今もオーストリアの牢獄にいるのか、わかりません。財産は没収され、娘は孤児同然の貧しい身となりました。それでも養い親のもとに残り、粗末な家で、暗い葉の茨のなかの庭の薔薇より美しく育っていたのです。
父がミラノから帰ると、別荘の広間には、絵に描いた天使より美しい子が私と遊んでいました。顔から光を放ち、山のカモシカより軽やかに動くように見えたそうです。事情はすぐにわかりました。母が父の許しを得て、農夫夫婦に娘を譲ってもらったのです。二人も愛らしい孤児をかわいがり、その子がいることを恵みだと感じていました。けれども、これほど頼もしい保護を受けられるのに、貧しい暮らしに引き留めるのは娘のためになりません。村の司祭にも相談した結果、エリザベス・ラヴェンツァはわが家に迎えられました。姉妹以上に近しく、私のすることすべて、楽しむことすべてを分かち合う、美しく愛しい伴侶となったのです。
誰もがエリザベスを愛しました。皆が寄せる熱烈で、ほとんど敬愛にも似た思いを私も分かち合い、誇らしく幸せでした。彼女が家へ来る前の晩、母は冗談めかして言いました。「ヴィクターに素敵な贈り物があるの。明日あげるわね。」
翌日、約束の贈り物として紹介されたエリザベスを、私は子どもらしい真面目さで、本当に自分のものだと思いました。守り、愛し、大切にするのは私なのだ、と。彼女への賛辞も、自分の大切なものが褒められたかのように受け取りました。私たちは親しみを込めて互いを「いとこ」と呼びました。けれども、私たちの関係を言い表せる言葉などありませんでした。彼女は姉妹以上の存在で、死が二人を分かつまで、ただ私のエリザベスであるはずだったのです。
第二章
私たちは一緒に育ち、年の差は一歳にも満ちませんでした。不和や喧嘩とは無縁でした。二人を結ぶのは調和であり、性格の違いは、かえって私たちを近づけました。エリザベスは穏やかで、一つのことに心を向ける性格でした。一方、熱しやすい私には、いったん夢中になれば深く没頭する力があり、知識への渇望も強かったのです。彼女は詩人たちの空想の世界を追い、スイスのわが家を囲む雄大で不思議な景色――山々の崇高な姿、季節の移ろい、嵐と静けさ、冬の沈黙、活気とざわめきに満ちたアルプスの夏――に、心ゆくまで感嘆と喜びを見いだしました。彼女が自然の壮麗な姿を落ち着いて眺めるあいだ、私は、それがなぜ起こるのかを探ることを好みました。世界は解き明かしたい秘密だったのです。好奇心、自然の隠された法則を知ろうとする熱心な探究、謎が明かされるときの歓喜にも似た喜び。それが、私の覚えている最も古い感情の一つです。
私より七歳下の弟が生まれると、両親は旅暮らしをやめ、故国に落ち着きました。ジュネーヴに家があり、市街から一リーグあまり離れた湖の東岸、ベルリーヴにも別荘がありました。主に別荘で、人づきあいの少ない暮らしをしました。私も大勢で過ごすより、少数の人と強く結ばれる性分でした。学校の仲間にもたいていは無関心でしたが、一人とは固い友情を結びました。ジュネーヴの商人の息子、ヘンリー・クラヴァルです。並外れた才能と想像力を持つ少年でした。冒険を愛し、苦労や危険さえ、それ自体を好みました。騎士道物語や恋愛譚を読み込み、英雄の歌を作り、魔法や騎士の冒険物語をいくつも書きかけました。また、私たちを芝居や仮装遊びに誘いました。登場人物は、ロンスヴォーの英雄、アーサー王の円卓の騎士、そして異教徒の手から聖墳墓を取り戻すために血を流した騎士たちでした。
私以上に幸福な子ども時代を過ごした人はいないでしょう。両親は優しさと寛大さにあふれていました。気まぐれに子どもの運命を支配する人ではなく、私たちが味わう数多くの喜びを生み出してくれる人たちでした。ほかの家族と接するようになって、自分がどれほど恵まれているかをはっきり知り、感謝とともに両親への愛も深まりました。
私は時に短気で、感情も激しく燃え上がりました。ただ、性質ゆえか、それは子どもらしい遊びではなく、何かを学びたいという欲求に向かいました。それも、何でもよかったわけではありません。言語の仕組みも、政府の制度も、各国の政治も、私には魅力がありませんでした。知りたかったのは天地の秘密です。物の外に見える姿であれ、自然の内に息づくもの、人間の謎めいた魂であれ、私が探し求めたのは世界の形而上の、あるいは最も深い意味での自然の秘密でした。
その一方でクラヴァルは、いわば人と人との道徳的な結びつきに心を向けました。人々が行き交う人生の舞台、英雄の美徳、人間の行いが、彼の関心事でした。物語に名を残す、勇敢で冒険心に富み、人類に尽くす人間になることを夢見ていました。エリザベスの清らかな魂は、穏やかなわが家で、聖堂にともる灯のように輝いていました。彼女は私たちに心を寄せ、笑顔と柔らかな声、天上のような目の優しいまなざしで、いつも私たちを励まし、祝福してくれました。愛を体現する彼女がいたからこそ、私は和らぎ、人に心を向けられたのです。さもなければ、研究にのめり込んで不機嫌になり、激しい気性のまま粗野な人間になっていたかもしれません。クラヴァルの気高い心に、悪いものが入り込むはずはないでしょう。それでも彼の冒険への情熱が、あれほど思いやりに満ち、優しく寛大なものになったのは、善をなすことの本当の美しさをエリザベスが教え、彼の大きな志の目標にしてくれたからだと思います。
不幸に心を汚され、人の役に立つ明るい夢が暗く狭い自省に変わる前の、幼い日々を思い出すのは、とても楽しいことです。それだけでなく、後の悲惨な物語へ知らず知らず私を導いた出来事も、語ることになります。のちに私の運命を支配した情熱がどこから生まれたのかをたどると、山の川が取るに足らない、忘れられかけた源から始まるように思えます。流れるうちに水を増し、ついには希望も喜びも押し流す奔流となったのです。
私の運命を定めたのは自然哲学でした。ですから、その学問を好むようになった経緯をお話しします。十三歳のとき、皆でトノン近郊の温泉へ遊びに行き、悪天候のため一日宿に閉じ込められました。そこで偶然、コルネリウス・アグリッパの著作を一冊見つけました。気乗りしないまま開いたものの、説かれる理論や驚くべき事例を読むうちに、熱中し始めました。頭の中に新たな光が差したようでした。私は喜び勇んで父に発見を伝えました。父は表紙をちらりと見て言いました。「ああ、コルネリウス・アグリッパか。ヴィクター、そんなものを読んで時間を無駄にしてはいけない。ひどいがらくただよ。」
もし父がそこで手間を惜しまず、アグリッパの原理はすでに否定され、古い学問よりはるかに大きな力を持つ近代科学が生まれたこと、昔の力は空想だが、今の力は現実に使えるのだと説明してくれていたら、私はきっとアグリッパを脇に置いたでしょう。そして燃え上がった想像力を、以前の勉強にもっと熱心に向けたはずです。その後、破滅へとつながる方向に考えが動き出すこともなかったかもしれません。しかし本をちらりと見ただけの父が、中身を知っているとは思えず、私はますます貪るように読みました。
家へ帰ると、まずアグリッパの著作をすべて手に入れ、続いてパラケルススとアルベルトゥス・マグヌスの本も求めました。荒唐無稽な空想を喜んで読み込み、自分を含むごくわずかな人しか知らない宝を見つけた気でいました。私は昔から、自然の秘密を見抜きたいという強い思いを抱いていました。近代の学者が懸命に研究し、驚くべき発見を重ねているにもかかわらず、その本を読んだ後にはいつも満たされない思いが残りました。アイザック・ニュートン卿でさえ、果てしなく未知の真理の海辺で貝殻を拾う子どものような気分だと語ったそうです。私が知る各分野の後継者たちも、少年だった私の目にすら、同じように貝を拾う初心者に見えました。
学問のない農夫は、周囲の自然の力を見て、その使い道を知っています。最も博識な哲学者とて、大して多くを知るわけではありません。自然の顔を覆うヴェールを少しめくっただけで、その永遠の素顔はなお驚異と謎のままです。切り分け、解剖し、名前をつけることはできても、究極の原因はおろか、その次、さらに次の原因さえわかりません。私は、人間を自然の城塞から締め出しているように見える壁や障害を眺め、無知にも、それを嘆いていました。
ところが、ここにはもっと深くまで踏み込み、多くを知った人たちの本があります。私は彼らの言うことをすべて信じ、弟子になりました。十八世紀にこんなことが起きるのは奇妙でしょう。けれども、ジュネーヴの学校で普通の教育を受ける一方、好きな学問についてはほとんど独学でした。父は科学に詳しくありません。子どもの目の見えなさと、学ぶ者の知識への渇きを抱え、独りでもがくしかなかったのです。新たな師に導かれ、私は賢者の石と不老長寿の霊薬を懸命に探しましたが、ほどなく後者に心を奪われました。富など二の次です。もし人の体から病を追い払い、暴力的な死以外では命を奪われないようにできたなら、何という栄光でしょう。
夢はそれだけではありません。愛読する著者たちは、幽霊や悪魔を呼び出せるとも気前よく請け合っていました。私は熱心に試しました。呪文が一度も成功しなくても、師たちの知識や誠実さを疑うより、自分の未熟さや間違いのせいだと思いました。しばらくはそんな古びた学説に夢中になり、素人のように矛盾する理論を千も混ぜ合わせ、知識の泥沼でもがいていました。導き手は、熱い想像力と子どもじみた理屈だけです。やがてある出来事が、再び思考の流れを変えました。
十五歳ごろ、ベルリーヴの家に滞在していたとき、猛烈な雷雨に遭いました。ジュラ山脈の向こうから近づき、四方の空で恐ろしい音を立てて雷が鳴りました。私は嵐が続くあいだ、興味と喜びをもって眺めていました。戸口に立っていると、家から二十ヤードほどのところにある、美しい古い樫の木から、突然、火の筋が走りました。まばゆい光が消えたときには木も姿を消し、焼けただれた切り株だけが残っていました。翌朝見に行くと、木は奇妙な壊れ方をしていました。衝撃で木片に割れたのではなく、細い木の帯になるまで、すっかり引き裂かれていたのです。あれほど徹底的に破壊されたものは見たことがありません。
それまでにも電気のわかりやすい法則は知っていました。そのとき、自然哲学を深く研究している人が家にいて、この出来事に刺激され、電気とガルヴァニズム[訳注:電気刺激による筋肉の収縮などを研究した当時の学説]について独自に考えた理論を説明してくれました。私には新鮮で、驚くべき話でした。その説明の前では、私の想像の世界を支配していたアグリッパもアルベルトゥスもパラケルススも、すっかり色あせました。ところが運命のいたずらか、師たちが打ち倒されたことで、私はいつもの研究への興味まで失ったのです。何も知ることなどできない、これからもできないような気がしました。長く心を奪われてきたものが、突然くだらなく思えました。若いころにありがちな心の気まぐれから、私はそれまでの探究を一気に捨て、博物学とその関連分野を出来損ないの学問と決めつけました。本当の知識の入り口にすら届かないものを科学と称することに、強い軽蔑を覚えたのです。そして、確かな土台のある数学とその関連分野に向かいました。それなら取り組む価値があると考えたのです。
人の心の造りとは奇妙なもので、幸福と破滅の分かれ道には、これほど細い糸でつながれています。振り返れば、この驚くべき心変わりは、私の守護天使の導きだったように思えます。すでに星の上で待ち構え、私を呑み込もうとしていた嵐を避けるために、身を守る力が最後に試みたことだったのでしょう。かつて熱中し、やがて苦しみの種となった研究を捨てると、かつてない心の静けさと喜びが訪れました。それが天使の勝利のしるしでした。あの研究には不幸が、離れることには幸福が結びつくと、教えられていたのです。
善なる力の懸命な働きでした。しかし、無駄に終わりました。運命の力は強く、変わることのない掟は、私の完全で恐ろしい破滅をすでに定めていたのです。
第三章
十七歳になると、両親は私をインゴルシュタット大学へ入れることにしました。それまではジュネーヴの学校で学んでいましたが、教育を仕上げるには故国とは違う習慣に触れる必要がある、と父は考えたのです。出発は早い時期に決まりました。けれどもその日を迎える前に、後の不幸の前触れともいえる、人生最初の災難が起こりました。
エリザベスが猩紅熱にかかり、命が危ぶまれるほどの重症になったのです。母が看病しようとするのを、皆で必死に止めました。初めは頼みを聞き入れましたが、愛する娘の命が危ないと聞くと、不安を抑えられませんでした。病床につき、心を尽くして看病した甲斐あって、エリザベスは助かりました。しかし、その無理が母の命を奪いました。三日後に母が発病し、熱とともにひどく不吉な症状が現れました。医師たちの顔を見れば、最悪の結果が予想できました。このうえなく立派な母は、死の床でも気丈さと慈愛を失いませんでした。エリザベスと私の手を取り、重ねて言いました。「あなたたちが結ばれる日を、私は何よりの幸せとして楽しみにしていたの。その望みが、これからはお父さまの慰めになるでしょう。エリザベス、愛しい子、幼い子たちの母親代わりになってあげて。ああ、あなたたちを置いて逝くのはつらい。こんなに幸せで、愛されてきた私が、皆と別れなければならないなんて。でも、こんなことを考えていてはいけないわね。穏やかに死を受け入れて、いつか別の世界で再会できると信じます。」
母は静かに亡くなり、死後も顔には愛情が残っていました。かけがえのない絆を死に断ち切られた者の心、そこに広がる空白や、顔に浮かぶ絶望を、ことさら説明する必要はないでしょう。毎日見ていた人、その存在が自分の一部とさえ思えた人が永遠に去ったとは、なかなか信じられません。愛する目の輝きが消え、聞き慣れた大切な声が二度と聞けなくなったなど、すぐには受け入れられないのです。初めの数日はそんな思いに囚われます。時が過ぎ、死が現実だと思い知らされてから、悲しみの真の苦さが始まります。それでも、あの無情な手に大切な人を奪われたことのない人がいるでしょうか。誰もが味わい、いつか味わう悲しみを、なぜ私がこと細かく語る必要があるでしょう。やがて、悲しむことが必要というより、悲しみに身を委ねる時期が来ます。唇に笑みが戻り、それを不謹慎と感じながらも、消えることはありません。母は亡くなりましたが、残された私たちには果たすべき務めがありました。ほかの人々とともに生き続け、死に奪われずに残った人がいることを、幸せと思わねばなりませんでした。
母の死で延期されたインゴルシュタット行きの日取りが、改めて決まりました。私は父に頼み、数週間の猶予をもらいました。喪に沈み、死にも似た静けさに包まれた家をすぐに離れ、賑やかな世の中へ飛び込むのは、冒瀆のように思えたのです。初めて知る悲しみは、なおさら恐ろしいものでした。残された家族のそばを離れたくありません。何より、優しいエリザベスが少しでも慰められるのを見届けたかったのです。
エリザベスは悲しみを胸に隠し、皆を慰めようと努めていました。生きていくことをまっすぐに見つめ、勇気と熱意をもって、その務めを引き受けました。叔父やいとこと呼ぶよう教えられてきた私たちに、献身的に尽くしました。笑顔を取り戻し、惜しまず私たちに向けてくれたそのころほど、彼女が魅力的だったことはありません。私たちに悲しみを忘れさせようとして、自分の悲しみさえ忘れていたのです。
ついに出発の日が来ました。前の晩はクラヴァルも一緒に過ごしました。父親を説得して私と同じ大学へ行こうとしていましたが、許されませんでした。父親は視野の狭い商人で、息子の志や野心を、怠け心と破滅への道としか見なかったのです。幅広い教育を受けられないことを、ヘンリーは深く悲しんでいました。多くは語りませんでしたが、話すときの輝く目と生き生きした表情からは、商売の細々とした仕事に一生縛られはしないという、抑えながらも固い決意が読み取れました。
私たちは夜遅くまで一緒にいました。離れがたく、「さようなら」の一言がなかなか言えなかったのです。
ついに別れを告げ、休むふりをして、それぞれの部屋へ退きました。ほかの者は本当に眠ると思っていたのでしょう。けれども夜明け、馬車へ向かって下りていくと、皆がそこにいました。父はもう一度祝福し、クラヴァルはもう一度手を握りました。エリザベスは手紙をたくさん書いてと改めて頼み、幼なじみであり友でもある私に、最後までこまやかに気を配ってくれました。
乗り込むと、憂鬱な思いに沈みました。これまではいつも愛すべき人々に囲まれ、互いを喜ばせようとしてきたのに、今は一人です。行く先の大学では、自分で友を作り、自分で自分を守らなくてはなりません。家族に囲まれた静かな暮らしが長かったため、見知らぬ顔には強い抵抗がありました。弟たちも、エリザベスも、クラヴァルも愛しています。皆、「昔から見慣れた顔」です。知らない人とうまくつきあえるとは、とても思えませんでした。旅の初めはそんなことばかり考えていましたが、進むにつれて心は明るくなり、希望が湧きました。知識を手に入れたいと強く願っていたのです。故郷にいたころは、若いあいだ一か所に閉じこもるのがつらく、広い世界へ出て、人々の中で自分の居場所を見つけたいと幾度も思いました。その願いが叶ったのに、後悔するのは愚かです。
インゴルシュタットまでの長く疲れる旅のあいだ、そんなことをはじめ、さまざまな思いを巡らせる時間は十分にありました。やがて町の高い白い尖塔が見えました。馬車を降り、一人で暮らす部屋に案内され、その晩は思い思いに過ごしました。
翌朝は紹介状を渡しに、主だった教授を何人か訪ねました。最初に会ったのは、自然哲学のクレンペ教授でした。偶然、いや、父の家から後ろ髪を引かれつつ踏み出したときから私を支配していた、破滅をもたらす悪しき力の導きだったのでしょう。教授は無骨な人ですが、専門の奥義には通じています。自然哲学に関わる各分野をどれほど学んだか、いくつか質問されました。私は投げやりに答え、軽蔑も半ば込めて、これまで主に読んだのは錬金術師たちの著作だと言いました。教授は目を丸くしました。「本当に、そんな馬鹿げたものの勉強に時間を費やしたのかね。」
そうです、と答えました。「無駄にした一分一秒が」と教授は語気を強めました。「まるまる失われた時間だ。否定され尽くした学説と、役に立たない名前で頭をいっぱいにしたのだよ。なんということだ。いったいどんな荒野で暮らしていたら、君が夢中で吸収した空想は千年も昔のもので、その古さにふさわしく黴が生えている、と教えてくれる人が一人もいないのかね。この科学の進んだ時代に、アルベルトゥス・マグヌスやパラケルススの弟子に会うとは思わなかった。君は勉強を一からやり直さねばならん。」
教授はそう言うと、手に入れるべき自然哲学の本を何冊か書き出しました。そして、翌週初めから自身が自然哲学全般の講義を始め、講義のない日には同僚のヴァルトマン教授が化学を教えると告げ、私を帰しました。
私は落胆しませんでした。教授がこき下ろした著者たちを、私も長く無益だと考えていたからです。けれども、その分野をどんな形であれ再び学びたいという気持ちは、少しも起こりませんでした。クレンペ教授は背が低くずんぐりして、声はがらがら、顔つきも取っつきにくい。教師に好感が持てず、その学問にも心を引かれなかったのです。若いころ自然哲学についてどんな結論に至ったか、今まで少々筋道立てて、哲学的に語りすぎたかもしれません。子どもの私は、近代の自然科学者が約束する成果には満足できませんでした。若さゆえの考えの混乱と、教え導く人がいなかったことから、学問の歴史を逆へとたどり、新しい発見を忘れ去られた錬金術師の夢と取り替えてしまったのです。それに、近代自然哲学の用途を軽く見ていました。かつて学問の師たちが不死や力を求めていたころは違います。無益であっても、その志は壮大でした。しかし時代は変わり、今の研究者の野心は、私が科学に引かれた理由である夢を打ち消すことにしか向いていないように思えました。果てしなく壮大な空想を、取るに足らない現実と取り替えろと言われている気がしたのです。
インゴルシュタットでの最初の二、三日は、新しい土地や主だった住人を知ろうと歩き回りながら、そんなことを考えていました。次の週になると、クレンペ教授から聞いた講義のことを思い出しました。あの小柄なうぬぼれ屋が教壇から偉そうに語るのを聞く気はしませんが、まだ会ったことのないヴァルトマン教授の話を思い出したのです。それまで町を離れていて、訪ねることができませんでした。
好奇心と暇つぶしから講義室へ行くと、ほどなく教授が現れました。同僚とはまるで違う人でした。五十歳ほどに見え、顔には深い慈愛が浮かんでいました。こめかみには白髪が少しありましたが、後頭部の髪はほとんど黒いまま。小柄でも姿勢はひどくよく、声はこれまで聞いたどの声よりも柔らかでした。まず化学の歴史と、各時代の学者が重ねた進歩を振り返り、優れた発見者の名を熱を込めて語りました。それから学問の現状を大まかに説明し、基本的な用語をいくつも解説しました。簡単な実験をいくつか見せた後、近代化学を称える言葉で締めくくりました。その言葉は生涯忘れられません。
「この学問の昔の師たちは、不可能なことを約束して何も成し遂げなかった。今の大家は多くを約束しない。金属を別の金属に変えることはできず、不老長寿の霊薬も空想にすぎないと知っている。だが、手を汚して標本をいじり、顕微鏡や坩堝をのぞくことしかできないように見えるこの人々こそ、奇跡を起こしたのだ。自然の奥深くに分け入り、隠れたところで何が起きているかを示してくれる。天に昇り、血液の巡り方を解き明かし、私たちが吸う空気の性質を知った。ほとんど限りない、新しい力を手に入れたのだ。天の雷を操り、地震をまね、姿なき世界をその影でからかうことさえできる。」
それは教授の言葉――いや、私を滅ぼすために告げられた運命の言葉でした。聞いているうちに、魂が目に見える敵と取っ組み合っているように感じました。私という存在を動かす鍵が次々に押され、琴線が一本ずつ鳴らされ、やがて心はただ一つの考え、ただ一つの目的で満たされました。これほど多くを成し遂げたのなら、私はもっと、はるかに多くを成し遂げよう。先人の足跡を踏みながら新しい道を切り開き、未知の力を探り、創造の最も深い秘密を世界に明かそう――フランケンシュタインの魂が、そう叫んだのです。
その夜は一睡もできませんでした。心の中では何かが反乱を起こし、激しく渦巻いていました。そこから秩序が生まれると感じながら、自分で整えることはできませんでした。夜が明けてしばらくして、ようやく眠りました。目覚めると、前夜の思いは夢のようでした。残っていたのは、かつての研究に戻り、自分には生まれつき才能があると信じる学問に身を捧げようという決意だけでした。同じ日、ヴァルトマン教授を訪ねました。私生活での物腰は、講義中よりさらに穏やかで魅力的でした。教壇では威厳がありましたが、自宅では気さくで親切です。私は以前の研究について、同僚の教授に話したのとほぼ同じことを伝えました。教授は注意深く聞き、アグリッパやパラケルススの名には微笑みましたが、クレンペ教授のように軽蔑はしませんでした。そして言いました。「彼らのたゆまぬ熱意がなければ、近代の研究者が持つ知識の土台の多くはなかっただろう。彼らが苦心して明るみに出した事実に、新しい名をつけ、筋道立てて分類するという、より容易な仕事を我々に残してくれたのだ。天才たちの努力は、たとえ向かう方向を誤っても、いずれ人類に確かな利益をもたらすものだよ。」
気取りも尊大さもない話しぶりに耳を傾け、教授の講義で近代の化学者に対する偏見が消えたと伝えました。若い学生が教師に示すべき慎みと敬意をもって、落ち着いた言葉で話しました。これからの研究を思って燃える胸の内は、少しも見せませんでした。まだ世間を知らない私は、熱意をあらわにするのが恥ずかしかったのです。そして、どの本を買うべきか助言を求めました。
「弟子が一人増えてうれしいよ」とヴァルトマン教授は言いました。「才能に見合う努力をすれば、必ず成功する。化学は自然哲学のなかでも、これまで最も進歩し、今後も大きく進歩しうる分野だ。だから私も専門に選んだ。だが、ほかの分野をおろそかにしてはいない。化学しか知らない人間では、たいした化学者になれないからね。ちょっとした実験をするだけでなく、真の科学者になりたいなら、数学を含め、自然哲学のあらゆる分野を学びなさい。」
教授は私を実験室へ連れていき、いろいろな器具の使い方を説明し、自分で何をそろえるべきか教えてくれました。学問を十分に修めて器具を壊す心配がなくなれば、自分のものも使わせてくれるそうです。頼んだ本の一覧もいただき、私は礼を言って辞しました。
こうして、私にとって忘れがたい一日が終わりました。私の未来の運命を決めた日でした。
第四章
その日から、広い意味での自然哲学、なかでも化学が、ほとんど唯一の仕事となりました。近代の研究者がこれらの分野について書いた、才能と洞察に満ちた本を熱心に読みました。講義を受け、大学の学者たちとも親しくなりました。クレンペ教授でさえ、近寄りがたい顔つきや態度は相変わらずながら、確かな見識と豊かな知識を持っていることがわかりました。ヴァルトマン教授は真の友となりました。その優しさが独断に傾くことはなく、率直で温かな教え方には、学者ぶったところがまるでありません。さまざまな形で学びの道を歩きやすくしてくれ、ひどく難しい研究もわかりやすく説いてくれました。最初は気まぐれで定まらなかった勉強への熱意も、進むにつれて強くなり、やがて実験室に籠もったまま、夜明けの光に星が消えるのを迎えることも珍しくなくなりました。
それほど打ち込んだのですから、進歩が早かったのも当然です。私の熱意には学生が驚き、上達ぶりには教授たちが驚きました。クレンペ教授は意味ありげに笑って「コルネリウス・アグリッパの研究はどうだね」とよく尋ね、ヴァルトマン教授は私の進歩を心から喜んでくれました。そうして二年が過ぎ、その間ジュネーヴへは一度も帰らず、発見を目指す研究に心身を捧げました。科学の魅力は、身をもって知った人にしかわかりません。ほかの学問では、先人がたどり着いたところまで学べば、そこから先はありません。科学には、発見と驚きの糧が絶えずあります。並の能力でも一つの分野を深く追い続ければ、必ず大きく上達します。まして私は一つの目標だけを見つめ、それに没頭していたので、驚くほど進歩しました。二年の終わりには化学器具を改良する発見をいくつか成し遂げ、大学でも高い評価を受けました。教授から学べる自然哲学の理論と実践を身につけ、ここに住み続けてもそれ以上の進歩は望めないと感じました。故郷の友人たちのもとへ戻ろうと考えた矢先、ある出来事が滞在を引き延ばしたのです。
以前からとりわけ関心を引かれていたのは、人間をはじめ、生ある動物の体の造りでした。生命を生み出す根本の力はどこから来るのか、幾度も自分に問いかけました。大胆な問いですし、常に謎とされてきました。しかし、臆病さや怠慢さに探究を妨げられなければ、知ることのできることは、私たちのすぐそばにどれほどあるでしょう。そう考え、自然哲学のなかでも生理学に関わる分野を、特に研究することにしました。ほとんど超人的な熱意がなければ、その研究は煩わしく、耐え難いものだったでしょう。生命の原因を調べるには、まず死に向き合わねばなりません。解剖学を学びましたが、それだけでは足りません。人の体が自然に朽ち、腐っていく様子も観察する必要がありました。父は私を育てるうえで、超自然的な恐怖を植えつけないよう細心の注意を払いました。迷信じみた話に震えたり、幽霊を恐れたりした覚えはありません。暗闇は私の想像力を刺激せず、墓地も、かつて美と力を宿し、今は虫の餌となる命なき体の置き場所にすぎませんでした。その私が今や、腐敗が起こる理由と進み方を調べるため、昼夜を問わず地下の墓や納骨堂で過ごしました。人の繊細な感情には耐え難いものばかりを見つめました。美しい人の姿が崩れ、消えていくさま。生き生きとした頬が死の腐敗に取って代わられるさま。目や脳の驚くべき造りが虫のものとなるさま。私は立ち止まり、生から死へ、死から生へと移る過程に現れる原因を、細部まで調べ、分析しました。やがて暗闇のただ中に、突然光が差したのです。まばゆく驚くべき、それでいて単純な光でした。開かれた見通しの広大さに目まいを覚えるとともに、同じ学問を探究してきた幾多の天才のなかで、これほどの秘密を見つける者として自分だけが残されていたことに驚きました。
いいですか、狂人の幻を話しているのではありません。空に太陽が輝いているのと同じくらい、今語ることは確かな真実です。奇跡が関わっていたのかもしれませんが、発見までの道筋は明瞭で、理にかなっています。信じがたいほどの苦労を重ね、昼も夜も研究した末に、私は生殖と生命の原因を突き止めました。そればかりか、生命のない物質に命を吹き込む力をも手にしたのです。
初めに覚えた驚きは、すぐに歓喜へと変わりました。長い苦しい研究の果てに、望みの頂へ一気にたどり着いたのです。これ以上、努力が報われることはありません。しかし発見はあまりに大きく、圧倒的で、そこに至るまでの道筋は頭から消え、結果だけが見えていました。世界の始まり以来、最も賢い人々が研究し、求めてきたものが、今や私の手にあります。とはいえ、魔法の景色のように、すべてが一度に開けたわけではありません。得た知識は、目標をすでに達成した姿で示すものではなく、そこへ至るために何をすべきかを教えるものでした。死者とともに埋められ、かすかで頼りなげな光を頼りに、生き延びる道を見つけたアラビアの男のようでした。
友よ、あなたの熱心な様子と、驚きと希望に輝く目を見れば、私の知る秘密を聞きたがっているのがわかります。ですが、それは話せません。どうか最後まで辛抱して聞いてください。なぜこのことだけは口を閉ざすのか、きっとわかるでしょう。当時の私のように、無防備な熱意に駆られて破滅と逃れられない不幸へ向かわせるわけにはいきません。私の教えからでなくとも、せめて私の身の上から学んでください。知識を得ることがどれほど危険か。自分の故郷が世界のすべてだと思う人は、人間の限界を超えて偉大になろうとする人より、どれほど幸福かを。
これほど驚くべき力を手にしても、どう使うべきか、長いこと迷いました。命を与えることはできても、その受け皿となる体を、複雑に絡む繊維、筋肉、血管まで含めて作るのは、想像を絶する難事です。初めは自分と同じような人間にするか、もっと単純な体の生き物にするか迷いました。しかし、最初の成功に想像力を高ぶらせ、人間ほど複雑で驚異に満ちた動物にも命を与えられると信じて疑いませんでした。手元の材料では到底足りそうにありませんでしたが、いずれ成功するという確信はありました。何度も失敗し、結局は不完全なものしかできないかもしれません。それでも、科学と技術が日々進歩していることを思えば、今の試みが未来の成功の土台になると期待できました。計画が大がかりで複雑なことを、不可能だと決めつける理由にはしませんでした。こうして人間の創造に取りかかりました。細かな部分を作ると時間がかかるため、当初の考えを変え、身長八フィートほど、それに見合う大きな体を作ることにしました。数か月かけて材料を集め、整え、ついに作業を始めました。
成功への最初の熱狂が、どれほどさまざまな感情を嵐のように呼び起こし、私を先へと運んだか、誰にも想像できないでしょう。生と死の境は、人が考え出した壁にすぎず、私が初めて打ち破って、暗い世界へ光を奔流のように注ぐのだと思いました。新たな種族は、創造主であり命の源である私を祝福するでしょう。幸福で優れた存在が大勢、私に命を負うのです。どんな父親も、子からこれほどの感謝を受ける資格はありません。さらに考えました。命なき物に生命を与えられるなら、今は不可能でも、いつか死によって朽ちるはずだった体を蘇らせられるかもしれない、と。
そうした思いに支えられ、私は休みなく熱意を燃やし続けました。勉強で頬は青ざめ、閉じこもりきりで体もやせました。成功は確実だと思った寸前に失敗することもありましたが、翌日、あるいは次の一時間で叶うかもしれない希望に、なおしがみつきました。自分だけが知る秘密に、すべてを賭けたのです。夜中も息を詰めて自然の隠れ家を探り続ける私を、月が見下ろしていました。墓の冒瀆すべき湿気にまみれ、生きた動物を苦しめ、命なき土くれに命を与えようとする、ひそかな作業の恐ろしさを誰が思い描けるでしょう。思い出すだけで手足が震え、目がくらみます。それでも当時は、抗いがたい、ほとんど狂気じみた衝動に押され、前へ進みました。この一つの目的を除いて、魂も感覚も失ったようでした。それは一時の熱病でしたが、不自然な興奮が去っていつもの自分に戻ったときには、かえっていっそう鋭く苦痛を感じました。納骨堂から骨を集め、人の体の畏るべき秘密を不敬な指で暴きました。家の最上階、ほかの部屋とは廊下と階段で隔てられた独りきりの部屋――むしろ独房――を、汚らわしい創造の工房にしました。細部を見逃すまいと目を凝らし続け、眼球が飛び出しそうでした。解剖室や屠殺場からも材料を得ました。人としての心が何度も作業を嫌悪しましたが、募る一方の熱意に追われ、完成へと近づいていきました。
その仕事に心身を捧げるうちに、夏が過ぎました。実に美しい季節でした。畑はかつてないほど豊かに実り、葡萄も見事に熟したのに、自然の魅力は私の目に入りませんでした。周囲の景色を見なくなったのと同じように、遠く離れ、長いこと会っていない友人たちのことも忘れました。便りを出さずにいるので皆が心配しているのはわかっていました。父の言葉もよく覚えています。「自分に満足して元気に暮らしていれば、私たちを思い出し、決まって手紙をくれるはずだ。だから便りが途絶えたら、ほかの務めもおろそかにしているのではと思ってしまう。許しておくれ。」
父がどう感じているかはわかっていました。それでも、嫌悪すべき仕事に想像力を囚われ、心を引き離せませんでした。私という人間のあらゆる習慣を呑み込んだ大目標が達成されるまで、愛情に関わることはすべて後回しにしたかったのです。
当時は、便りがないことを私の悪徳や欠点のせいにするなら父は不当だと思いました。しかし今では、私にまったく非がなかったとは言えないとわかります。立派な人間は、いつも穏やかで平和な心を保ち、情熱や一時の欲望にその静けさを乱させてはならない。知識の探究も例外ではありません。研究によって愛情が弱まり、混じりけのないささやかな楽しみを味わえなくなるなら、その研究は人の心にふさわしくないものです。誰もがこの原則を守り、どんな仕事にも家庭の愛情の平穏を乱させなかったなら、ギリシャは征服されず、カエサルは祖国を傷つけず、アメリカの発見ももっとゆっくり進み、メキシコやペルーの帝国も滅ぼされなかったでしょう。
ですが、いちばん肝心なところで説教を始めてしまいましたね。あなたの目を見ると、先を話さねばと思います。
父は手紙で私を責めず、ただ以前より詳しく、毎日の過ごし方を尋ねました。働き続けるうちに冬、春、夏が過ぎました。かつてあれほど好きだった花や若葉の芽吹きにも、目を向けませんでした。その年の葉が枯れるころになって、ようやく仕事が完成に近づきました。成果は日ごとに明らかになりましたが、熱意は不安に抑えられていました。好きな仕事に励む創作者というより、奴隷として鉱山や体に悪い仕事場で働かされている人間のようでした。毎晩、長引く熱に苦しみ、神経は痛ましいほど過敏になりました。葉が一枚落ちる音にもおびえ、罪を犯した者のように人を避けました。自分の変わり果てた姿に恐ろしくなることもありましたが、目的を果たす意志だけが私を支えていました。もうすぐ仕事は終わる。その後で体を動かし、楽しみを見つければ、病の兆しも消えるはずだ。創造が完成したらそうしようと、自分に約束していました。
第五章
十一月の陰鬱な夜、ついに努力が実を結びました。苦悩にも近い不安のなか、足元に横たわる命なきものへ、存在の火花を吹き込むための器具を周囲にそろえました。午前一時を過ぎ、雨が窓ガラスを寂しげにたたき、ろうそくが燃え尽きようとしていました。その消えかけた光のもとで、怪物の濁った黄色い目が開くのを見ました。苦しげに息をし、手足が痙攣するように動いたのです。
その瞬間の気持ちを、どう説明できるでしょう。限りない苦労と注意を払って作ったあの哀れなものを、どう描けばよいのでしょう。手足の釣り合いは整え、美しい顔立ちを選びました。美しい? なんということだ! 黄色い皮膚は下の筋肉と動脈をかろうじて覆うばかり。髪は艶やかな黒で豊かに流れ、歯は真珠のように白い。しかし、その美点がかえって、濁った白っぽい眼窩とほとんど同じ色に見える水っぽい目、しなびた肌、まっすぐな黒い唇とのおぞましい対照を際立たせていました。
人生に起こるどんな変化も、人の感情の変わりようには及びません。二年近く、命なき体に生命を吹き込む、そのためだけに懸命に働き、休息も健康も犠牲にしました。度を越した熱意で望んだのです。それなのに成し遂げたとたん、夢の美しさは消え、息もできないほどの恐怖と嫌悪が胸を満たしました。自分の作ったものを見ていられず、部屋を飛び出して寝室を歩き回りました。気持ちが鎮まらず、眠れません。やがて疲労が勝り、服のまま寝台に倒れ込み、少しでも忘れようとしました。ですが無駄でした。眠りには落ちたものの、荒れ狂う夢に襲われました。元気なエリザベスが、インゴルシュタットの街を歩いているのです。うれしさと驚きで抱き寄せ、唇に初めて口づけすると、その唇は死者の色に変わりました。顔立ちが変化し、腕に抱いているのは亡き母の遺体になりました。体は経帷子に包まれ、その布のひだを墓の虫が這っていました。恐怖で飛び起きました。額は冷や汗に濡れ、歯は鳴り、手足が震えました。そのとき、鎧戸の隙間を抜けて差す黄色く薄い月明かりのなかに、哀れな怪物、自分の創造したものが見えたのです。寝台の帳を持ち上げ、目と呼べるならその目を私に据えていました。口を開いて意味のわからない音をつぶやき、頬をしわめて笑いました。何か話したのかもしれませんが、耳に入りませんでした。引き留めるように片手を伸ばしてきたので、私は逃げ、階段を駆け下りました。住んでいた建物の中庭へ逃げ込み、夜が明けるまで、激しく取り乱して行き来しました。どんな音にも耳を澄まし、惨めにも命を与えてしまった悪魔のような死体が近づく知らせではないかと、おびえたのです。
ああ、あの顔の恐ろしさには、誰も耐えられません。蘇ったミイラでも、あれほど醜くはないでしょう。未完成の姿も見ていました。そのときから醜かった。しかし筋肉と関節が動き出した姿は、ダンテにさえ想像できないものでした。
惨めな一夜でした。脈があまりに速く強く打ち、全身の動脈の鼓動を感じることもあれば、だるさと極度の衰弱で倒れそうになることもありました。恐怖に交じって、失望の苦さがありました。長いあいだ心の糧であり、安らぎでもあった夢が、今や地獄に変わったのです。なんと急で、徹底した転落だったことでしょう。
やがて、陰鬱な雨の朝が来ました。一睡もせず痛む目に、インゴルシュタットの教会と白い尖塔、そして六時を示す時計が見えました。門番が夜の避難所となった中庭の門を開けると、私は街へ飛び出しました。どの曲がり角にもあの怪物がいる気がして、避けるように足早に歩きました。部屋へ戻る勇気はありません。暗く重い空から降る雨にずぶ濡れになっても、歩き続けずにはいられませんでした。
体を動かせば心の重荷が軽くなるかと、しばらく歩き回りました。どこにいるのか、何をしているのかもわからないまま、街路を行きました。恐怖で胸が苦しくなるほど鼓動し、あたりを見る勇気もなく、乱れた足取りで急ぎました。
ひとり寂しい道を行き、
恐れおののく人のように。
一度振り向けば、先へ進んでも
二度と後ろを見はしない。
恐ろしい悪霊が背後から
迫ることを知っているから。
[コールリッジ『老水夫の歌』]
そうして歩くうちに、駅馬車がいつも止まる宿の前へ出ました。なぜか足を止め、通りの向こうから来る馬車を数分間、じっと見つめました。近づくと、スイスからの駅馬車だとわかりました。目の前で止まり、扉が開くと、ヘンリー・クラヴァルが見えました。私に気づくなり飛び降りてきました。「ヴィクター!」と叫びました。「会えてうれしいよ! 着いたちょうどそのときに、君がいるなんて!」
クラヴァルに会えた喜びは、何にもたとえられません。その姿を見て、父やエリザベス、懐かしい故郷のすべてが心に蘇りました。手を握ると、恐怖も不幸も一瞬忘れ、何か月ぶりかで穏やかな喜びを感じました。心から友を迎え、二人で私の通う大学へ歩きました。道すがらクラヴァルは、共通の友人たちのことや、インゴルシュタットへ来られるようになった幸運を話し続けました。「帳簿をつけるという立派な技術だけで、必要な知識がすべて身につくわけじゃないって父にわかってもらうのが、どれだけ大変だったか想像できるだろう。最後まで信じてもらえなかったと思うよ。何度頼んでも、『ウェイクフィールドの牧師』に出てくるオランダ人の教師と同じことを言うんだ。『ギリシャ語を知らずとも年に一万フロリン稼げるし、ギリシャ語を知らずとも腹いっぱい食える』ってね。でもついに僕への愛情が学問嫌いに勝って、知識の国への探検を許してくれたんだ。」
「会えて本当にうれしいよ。父や弟たち、エリザベスは元気かい。」
「元気で幸せだよ。君からの手紙が少ないのを、少し心配しているけどね。それについては僕からもお説教するつもりだ。でもヴィクター」彼は立ち止まって私の顔をまじまじと見ました。「さっきは気づかなかったけど、ひどく具合が悪そうだ。やせて、顔も青い。何日も眠っていないみたいだよ。」
「そのとおりだ。最近は一つの仕事に没頭して、ろくに休まなかった。でも、もう終わった。今度こそ、やっと自由になれたと思いたい。」
体がひどく震えました。前夜のことは考えるのも耐え難く、まして話題にすることなどできません。私は足を速め、すぐ大学に着きました。そこでふと、部屋に置いてきた怪物がまだ生きて、歩き回っているかもしれないと思い、ぞっとしました。自分が見るのも怖いけれど、ヘンリーに見られることのほうがもっと怖い。彼に階段の下で少し待つよう頼み、部屋へ駆け上がりました。扉の錠に手をかけたところで我に返り、立ちすくみました。冷たい震えが走りました。扉の向こうに幽霊がいると思う子どものように、勢いよく開けました。しかし、何も現れません。恐る恐る入ると、部屋は空でした。寝室にも、あのおぞましい客はいません。こんな幸運があるとは信じられませんでしたが、敵が本当に去ったと確かめると、喜びに手を打ち、クラヴァルのもとへ走りました。
二人で部屋へ上がり、召使いが朝食を運んできました。けれども私は気持ちを抑えられません。喜びだけではなく、神経が過敏になって全身の肌がひりつき、脈も速く打っていました。一瞬たりともじっとしていられず、椅子を飛び越え、手をたたき、大声で笑いました。初めクラヴァルは、再会がうれしいせいだと思ったようです。しかしよく見ると、私の目には説明のつかない狂おしい光があり、抑えの利かない、心のこもらぬ笑い声に、おびえ、驚きました。
「ヴィクター、いったいどうしたんだ!」と叫びました。「そんなふうに笑わないでくれ。ひどい顔色だ。何があった?」
「聞かないでくれ!」私は目を両手で覆って叫びました。恐ろしい姿が部屋へ滑り込んでくるのを見た気がしたのです。「あいつに聞いてくれ。ああ、助けて! 助けてくれ!」
怪物に捕まれたと思い、激しくもがいて、発作を起こして倒れました。
かわいそうなクラヴァル! どんな気持ちだったでしょう。楽しみにしていた再会が、こんなふうに苦いものに変わってしまったのです。けれども私は彼の悲しみを知りませんでした。意識を失い、長い、長いあいだ戻らなかったのです。
それが数か月も私を寝たきりにした、神経性の熱病の始まりでした。その間、看病してくれたのはヘンリー一人です。後で聞いたところ、年老いた父には長旅がつらく、エリザベスには私の重病が耐え難い苦しみになると思い、病状を隠してくれたそうです。自分ほど親切で心を配る看護人はほかにいないと知っており、私が回復すると固く信じていたため、二人を心配させないことが最も思いやりある行いだと考えたのです。
実際には私はひどい病で、友の限りない、休むことのない献身がなければ、命を取り留められなかったでしょう。自分が命を与えた怪物の姿が常に目の前にあり、絶えずそのことを口走りました。ヘンリーは驚いたに違いありません。初めは病によるうわごとだと思ったようですが、何度も同じことをしつこく繰り返すうちに、何か異常で恐ろしい出来事が病の原因なのではないかと考えるようになりました。
何度もぶり返して友を心配させながら、私はごくゆっくり回復しました。外のものを見て初めて喜びを感じられた日を、覚えています。落ち葉が消え、窓辺の木々には若い芽が出ていました。素晴らしい春で、季節の美しさが回復を大いに助けてくれました。胸には喜びと愛情も蘇り、暗い気持ちは消え、ほどなく、あの破滅的な情熱に襲われる前のような朗らかさを取り戻しました。
「ヘンリー、君はなんて優しい、いい人なんだ」と私は言いました。「勉強するはずだった冬を、丸ごと僕の病室で過ごさせてしまった。どうお返しをすればいいんだろう。君の期待を台無しにして、申し訳なく思っている。許してほしい。」
「気に病まずに、できるだけ早く元気になってくれたら、それで十分だよ。それほど機嫌がいいなら、一つ話をしてもいいかな。」
私は震えました。一つの話? いったい何でしょう。考えることさえ恐ろしい、あの存在のことでしょうか。
「落ち着いて」と顔色の変化に気づいたクラヴァルは言いました。「つらくなるなら言わない。でも、お父さんとエリザベスが、君の書いた手紙を受け取れたら、どんなに喜ぶだろう。これほど具合が悪かったとはほとんど知らないけど、長く便りがなくて心配しているんだ。」
「そのことだったのか、ヘンリー。大切な、あんなにも愛する人たちのことを、僕が真っ先に考えないはずがないじゃないか。」
「それなら、君宛てに数日前から届いている手紙を見たいだろう。エリザベスからだと思うよ。」
第六章
クラヴァルが私に渡したのは、エリザベスからの手紙でした。
「いちばん大切ないとこのヴィクターへ。
「あなたはずいぶんひどい病気だったそうね。優しいヘンリーが絶えず手紙をくれても、安心できません。手紙を書くどころか、ペンを持つことも禁じられているのでしょう。それでも、ヴィクター、あなたから一言だけでも届けば、私たちの不安は静まります。いつも、次の郵便にはあなたの手紙が入っているはずと思い、叔父さまがインゴルシュタットへ行こうとなさるのを引き留めてきました。長旅の苦労や危険から叔父さまを守れたけれど、自分で行けないことを何度悔やんだかしれません。どこかの、賃金目当ての年老いた看護婦があなたの世話をしているのでは、と想像してしまいます。そんな人に、あなたの望みを察したり、いとこの私のように愛情を込めて応えたりできるでしょうか。でも、もう大丈夫ね。ヘンリーによれば、確かによくなっているそうです。どうか近いうちに、ご自分の字でそう知らせてください。
「元気になって、私たちのところへ帰ってきて。明るく幸せな家と、あなたを心から愛する友人たちが待っています。お父さまはお元気です。あなたに会い、無事だとわかりさえすれば、優しいお顔に心配の影が差すこともなくなるでしょう。アーネストの成長を見たら、きっと喜ぶわ。もう十六歳で、元気いっぱいです。本物のスイス人らしく外国の軍で働きたいと言っていますが、少なくともお兄さんが帰るまでは、手放すわけにいきません。叔父さまも遠い国で軍人になることには反対です。でもアーネストには、あなたのように机に向かう辛抱強さがありません。勉強は嫌な束縛だと思っていて、山に登ったり、湖で舟を漕いだりと、外でばかり過ごしています。望む仕事に就かせてあげないと、怠け者になってしまいそうで心配です。
「あなたが家を離れてから、子どもたちが大きくなったほかには、大した変化はありません。青い湖も雪を頂く山々も、いつも同じ。穏やかな家と満ち足りた私たちの心も、同じ変わらぬ法則に守られているようです。私はささやかな仕事で日々を楽しく過ごし、周りの人の幸せそうな優しい顔を見れば、どんな骨折りも報われます。ただ、あなたが旅立ってから、わが家に一つだけ変化がありました。ジュスティーヌ・モリッツが家へ来たときのことを覚えていますか。きっと覚えていないでしょうから、手短にお話しします。母親のモリッツ夫人は未亡人で、四人の子のうち、ジュスティーヌは三番目でした。父親のお気に入りだったのに、不思議なほど母親には疎まれ、父親の死後はひどい扱いを受けました。それに気づいた叔母さまが、ジュスティーヌが十二歳のとき、わが家に住まわせてほしいと母親を説得したのです。共和国であるこの国では、周囲の大きな王国より暮らしぶりが質素で、幸福でもあります。身分の違いも小さく、貧しい人々も、それほど困窮したり見下されたりしません。だから振る舞いも洗練され、道徳心があります。ジュネーヴで召使いというとき、フランスやイングランドの召使いとは意味が違うのです。家族に迎えたジュスティーヌは、召使いとしての仕事を学びました。でも、この恵まれた国では、召使いだからといって無学である必要も、人間としての尊厳を犠牲にする必要もありません。
「ジュスティーヌは、あなたもとても気に入っていましたね。機嫌が悪くても、彼女をひと目見れば晴れると言ったのを覚えています。アリオストがアンジェリカの美しさを語るときのように、心の素直さと幸せが顔に表れているからだ、と。叔母さまも深くかわいがり、当初のつもりよりよい教育を受けさせました。ジュスティーヌはそれに十分応えました。あんなに感謝を知る子はいません。大げさに礼を口にするという意味ではありません。そんな言葉は聞いたことがないけれど、目を見れば、自分を守ってくれた叔母さまを敬愛しているのがわかりました。陽気で、時には無頓着なところもあったのに、叔母さまの一挙一動にはよく気を配りました。何より立派な人だと思い、言葉遣いや物腰をまねようとしたので、今でも彼女を見ると、叔母さまを思い出すことがよくあります。
「大切な叔母さまが亡くなったときは、誰もが自分の悲しみでいっぱいで、病中にあれほど心を込めて看病したかわいそうなジュスティーヌに、気を配れませんでした。彼女もひどく具合を悪くしました。でも、さらなる試練が待っていたのです。
「兄弟姉妹が一人、また一人と亡くなり、母親に残った子は、ずっと顧みなかったジュスティーヌだけになりました。良心が痛み、お気に入りの子たちの死は、自分のえこひいきを罰する天の裁きだと考えるようになりました。母親はカトリック教徒で、告解を聞く司祭にもその考えを強められたのだと思います。あなたがインゴルシュタットへ行って数か月後、悔いた母親がジュスティーヌを呼び戻しました。かわいそうに、家を出るときは泣いていました。叔母さまの死以来、彼女も変わりました。それまでの快活さに代わり、悲しみによって柔らかく、人を引きつける穏やかさが加わったのです。けれども実家での暮らしは、明るさを取り戻せるものではありませんでした。母親は後悔の気持ちさえ揺れ動き、ときには冷たくしたことを許してほしいと頼むのに、もっとたびたび、兄弟姉妹を死なせたのはお前だと責めました。くよくよと悩み続けた末、モリッツ夫人は衰弱して病に倒れ、初めはますます苛立つようになりましたが、今は永遠の安らぎを得ています。昨年の冬の初め、寒くなりかけたころに亡くなりました。ジュスティーヌは私たちのもとへ戻りました。私は彼女を心から愛しています。賢く優しく、とても美しい人です。前にも書いたように、姿や表情からは絶えず大切な叔母さまを思い出します。
「それから、かわいいウィリアムのことも少し書かなくては。会わせたいわ。年齢のわりに背が高く、笑みをたたえた青い目に黒いまつげ、髪は巻き毛です。笑うと、健康そうな赤い頬に小さなえくぼが二つずつできます。もう小さなお嫁さん候補が何人かいるようですが、いちばんのお気に入りは五歳のかわいいルイーザ・ビロンです。
「ねえヴィクター、ジュネーヴの人たちの噂話も聞きたいでしょう。美しいミス・マンスフィールドは、若いイングランド人紳士、ジョン・メルボルン氏との婚約のお祝いを、すでに受けています。容姿には恵まれない妹のマノンは、去年の秋、裕福な銀行家デュヴィラール氏と結婚しました。あなたの好きだった学校友達、ルイ・マノワールは、クラヴァルがジュネーヴを発ってからいくつも不運に見舞われました。でももう元気を取り戻し、活発で美しいフランス人のタヴェルニエ夫人と、間もなく結婚するそうです。彼女は未亡人で、マノワールよりずっと年上ですが、とても魅力的で、皆に好かれています。
「書いているうちに、私も元気が出てきました。でも、手紙を終えようとすると不安が戻ります。ヴィクター、どうか書いてください。一行でも一言でも、私たちには大きな慰めです。ヘンリーには、優しさと愛情、そして何通もの手紙に、どれほど感謝してもしきれません。では、いとしいいとこへ。体を大切に。そしてお願い、手紙をください!
「エリザベス・ラヴェンツァ
「ジュネーヴ、一七――年三月十八日。」
「大切なエリザベス!」
読み終えると、私は声を上げました。「すぐに返事を書いて、皆を安心させよう。」
手紙を書くだけでひどく疲れましたが、回復は始まっており、その後は順調でした。さらに二週間すると、部屋を出られるようになりました。
回復してまず果たすべき務めの一つは、クラヴァルを大学の教授たちに紹介することでした。しかし、それによって私は、傷ついた心にふさわしくない荒い扱いを受けることになりました。あの運命の夜、研究が終わり、不幸が始まって以来、自然哲学という名を聞くだけでも激しい嫌悪を覚えるようになっていました。健康がすっかり戻っても、化学器具を見ると、神経の苦しみがすべて蘇りました。ヘンリーはそれに気づき、器具を目の届かないところへ片づけてくれました。実験室だった部屋を嫌うようになったと察して、別の部屋へ移してもくれました。ですが教授たちを訪ねると、友の心遣いも役には立ちませんでした。ヴァルトマン教授は、私が科学で成し遂げた驚くべき進歩を親切に熱く褒め、私を苦しめました。私が話を嫌がっているのにはすぐ気づきましたが、本当の理由は思いも寄らず、謙遜しているのだと考えたのです。それなら話しやすくなるだろうと、私個人の進歩から学問そのものへ話題を移しました。どうすればよかったのでしょう。喜ばせようとしてくれているのに、拷問のようでした。いずれ私をゆっくり残酷に殺す道具を、一つずつ丁寧に目の前へ並べられている気がしました。言葉を聞くたびに身をよじりながら、苦痛は顔に出せませんでした。人の気持ちをすぐに察するクラヴァルが、自分はその分野にはまったく疎いからと言って話題を変えてくれ、会話はもっと一般的なものになりました。私は心の中で友に感謝しましたが、何も言いませんでした。彼が驚いたことはわかりました。それでも秘密を聞き出そうとはしません。私は限りない愛情と敬意をもって彼を思っていましたが、絶えず頭から離れないあの出来事を、打ち明ける気にはなれませんでした。口にすれば、記憶にいっそう深く刻まれてしまいそうだったのです。
クレンペ教授はそこまで気を配ってはくれませんでした。当時の私には耐え難いほど神経が過敏で、ぶっきらぼうな褒め言葉は、ヴァルトマン教授の善意の賛辞以上に苦痛でした。「まったく、こいつにはやられたよ!」教授は叫びました。「クラヴァル君、こやつは我々をすっかり追い抜いてしまった。驚いた顔をしても本当だ。数年前までアグリッパを聖書と同じくらい信じていた若造が、今では大学の先頭を走っている。早く引きずり下ろさないと、我々の立つ瀬がないぞ。おっと」私の苦しそうな顔を見て、教授は続けました。「フランケンシュタイン君は謙虚だ。若者には実によい資質だよ。若者は自分に自信を持ちすぎないほうがいい。クラヴァル君、私も若いころはそうだった。まあ、じきに抜けるものだがね。」
幸い、教授はそこから自分の自慢話を始め、つらい話題は終わりました。
クラヴァルは自然科学への私の関心には共感せず、好む学問もまるで違いました。大学へ来たのは東洋の言語を身につけ、思い描く人生への道を開くためでした。名誉のない生き方はしないと決め、冒険心を発揮できる場として東方に目を向けていたのです。ペルシア語、アラビア語、サンスクリット語を学び始め、私もすんなり加わりました。怠けているのは昔から苦手でしたし、今は考え込むことから逃れたく、以前の研究も嫌っていました。友と一緒に学ぶと大いに気が晴れ、東洋の著作からは知識だけでなく慰めも得ました。ただ、彼のように言葉を厳密に学ぶつもりはありませんでした。一時の楽しみが得られればよかったので、意味がわかる程度に読みました。それでも十分に報われました。その哀愁は心を慰め、喜びは心を高めてくれました。他国の著作では味わったことのない強さでした。読むと、人生は暖かな太陽と薔薇の庭、美しい恋人の微笑みとつれなさ、そして胸を焦がす炎から成るように思えます。ギリシャやローマの力強く英雄的な詩とは、なんと違うことでしょう!
こうして夏が過ぎ、秋も終わりに近づいたころ、ジュネーヴへ帰る予定でした。しかしいくつかの事情で遅れるうちに冬になり、雪が降り、道は通れないと言われて、出発は翌春まで延びました。故郷と愛する人々に会いたくてたまらず、延期はつらいものでした。それまで帰らずにいたのも、知り合いのできないうちに、見知らぬ土地へクラヴァルを残したくなかったからです。それでも冬は楽しく過ごしました。春の訪れは例年になく遅かったものの、やって来たときの美しさが、待った甲斐を感じさせてくれました。
五月に入り、帰る日取りを決める手紙がいつ届くかと待っていたころ、ヘンリーがインゴルシュタット近郊を歩こうと誘ってくれました。長く暮らした土地に、私自身の足で別れを告げられるようにと。喜んで応じました。私は体を動かすのが好きですし、故郷で散策するときも、クラヴァルはいちばん好きな連れでした。
二週間、二人で歩き回りました。健康も気力もすでに戻っていましたが、澄んだ空気、道中のさまざまな出来事、友との会話に、さらに力づけられました。それまでは研究に籠もって人を避けていましたが、クラヴァルが心のよい部分を呼び覚ましてくれました。自然の姿や、子どもたちの明るい顔を、もう一度愛することを教えてくれたのです。素晴らしい友よ。君はどれほど心から私を愛し、自分と同じ高みへ私の心を引き上げようとしてくれたことか。自分のことばかり追って心が縮こまっていた私を、君の優しさと愛情が温め、感覚を開いてくれました。数年前、誰もが愛し、私も誰もを愛していた、悲しみも心配もない幸福な人間に戻れたのです。幸せなときには、命なき自然もこのうえない喜びを与えてくれます。晴れた空と緑の野に、心が高揚しました。春の花が生け垣に咲き、夏の花はすでに蕾をつけた、本当に素晴らしい季節でした。前年のあいだ、振り払おうとしても重くのしかかっていた考えに、もう悩まされませんでした。
ヘンリーは私が明るくなったのを喜び、心から気持ちを分かち合ってくれました。私を楽しませようと努め、自分の心に満ちる思いも語ってくれました。その豊かな才知には驚かされました。会話は想像力にあふれ、ペルシアやアラビアの作家にならって、幻想と情熱に満ちた物語をその場で作ることもよくありました。私の好きな詩を暗唱することもあれば、巧みな議論を仕掛けて、私に応じさせることもありました。
日曜の午後、私たちは大学に戻りました。農夫たちが踊り、すれ違う誰もが楽しげで幸せそうでした。私も心が弾み、抑えきれない喜びのままに足取りも軽く進みました。
第七章
帰ると、父から次の手紙が届いていました。
「愛するヴィクターへ。
「帰る日を決める手紙を、心待ちにしていただろうね。私も初めは、迎える日だけを記した短い便りにしようと思った。だが、それは残酷な親切になる。そんなことはできない。幸せな再会を思い描いて帰ったお前が、涙と悲嘆に暮れる家族を見たら、どれほど驚くだろう。ヴィクター、どうやってこの不幸を伝えればよいのだろう。離れていても、私たちの喜びや悲しみに鈍くなったはずはない。長く留守にしている息子を、どうすれば傷つけずにすむだろう。悲しい知らせを受け止められるようにしたいが、無理なことはわかっている。お前はきっともう、この先に書かれた恐ろしい知らせを目で追っているだろう。
「ウィリアムが死んだ! あの笑顔で私の心を喜ばせ、温めてくれた、優しくて陽気な子が。ヴィクター、殺されたのだ!
「慰めの言葉を述べることはしない。ただ、何が起きたかを話そう。
「先週の木曜日、五月七日、私は姪とお前の二人の弟を連れて、プランパレへ散歩に出かけた。暖かく穏やかな夕べで、いつもより遠くまで歩いた。帰ろうと思ったときにはもう夕暮れで、先を歩いていたウィリアムとアーネストの姿が見えなくなっていた。そこで腰を下ろし、二人が戻るのを待った。やがてアーネストが来て、弟を見なかったかと尋ねた。一緒に遊んでいたが、ウィリアムが隠れようと走っていき、探しても見つからず、長いあいだ待っても戻らなかったというのだ。
「心配になって、夜まで捜し続けた。エリザベスが、家へ帰っているのではと言い、戻ってみたがいない。私のかわいい子が迷い、夜露にさらされていると思うとじっとしていられず、たいまつを持ってもう一度捜しに出た。エリザベスもひどく苦しんでいた。朝の五時ごろ、前の晩には元気に駆け回っていた愛しい子が、青ざめて動かず草の上に横たわっているのを見つけた。首には、殺した者の指の跡があった。
「家へ運ぶと、私の顔に浮かんだ苦しみで、エリザベスにもわかってしまった。どうしても遺体を見たいと言うので、初めは止めたが、聞かなかった。部屋に入るなり子の首を確かめ、両手を握りしめて叫んだ。『神さま! 私があの子を殺したのです!』
「彼女は気を失い、ようやく息を吹き返したが、それからは泣いてため息をつくばかりだった。その晩、ウィリアムにせがまれて、お前の母の肖像が描かれた、とても高価な小さな絵を身につけさせたという。その絵がなくなっている。犯人はそれを奪おうとしたのだろう。懸命に捜しているが、いまだ手がかりはない。たとえ見つけても、愛するウィリアムは帰ってこない。
「ヴィクター、どうか帰ってきておくれ。エリザベスを慰められるのはお前だけだ。絶えず泣き、自分のせいであの子が死んだと、いわれのない自責を重ねている。その言葉が私の胸を刺す。皆が不幸だ。だからこそ、息子よ、帰って私たちを支えてほしい。ああ、お前の母が生きていなくてよかったと、今は神に感謝する。末の子のむごく悲しい最期を見ずにすんだのだから。
「帰っておいで、ヴィクター。犯人への復讐に心を囚われず、私たちの傷を膿ませるのではなく、癒やす穏やかな気持ちで来てほしい。悲しみの家へ帰っておいで。敵への憎しみではなく、お前を愛する者たちへの優しさと愛情を携えて。
「お前を愛し、悲しみに暮れる父より アルフォンス・フランケンシュタイン。
「ジュネーヴ、一七――年五月十二日。」
手紙を読む私の顔を見ていたクラヴァルは、故郷からの便りを受け取った喜びが、絶望に変わるのを見て驚きました。私は手紙を机へ投げ、両手で顔を覆いました。
「ヴィクター」と、私が激しく泣くのを見てヘンリーが言いました。「どうして君は苦しんでばかりいるんだ。何があった?」
私は手紙を読むよう身振りで示し、ひどく取り乱して部屋を行ったり来たりしました。私の不幸を読み、クラヴァルの目からも涙があふれました。
「かける言葉がないよ」と彼は言いました。「取り返しのつかないことだ。これからどうする?」
「すぐジュネーヴへ帰る。ヘンリー、馬車を手配しに一緒に来てくれ。」
道を歩きながら、クラヴァルは慰めの言葉を探しましたが、心からの同情を伝えるのが精いっぱいでした。「かわいそうなウィリアム」と言いました。「愛らしいあの子は、今は天使のようなお母さんと一緒に眠っている。あんなに生き生きと輝く子を見た人なら、早すぎる死に泣かずにはいられないだろう。殺した者の手を感じながら、あれほどむごい死に方をするなんて! 無垢な子を殺せる犯人は、なんてひどい人間だ。かわいそうに。慰めが一つだけある。友人たちは泣き悲しむけれど、あの子自身は安らかに眠っている。苦痛は終わり、苦しみは永遠に消えた。土が優しい体を覆い、もう痛みを感じることはない。哀れむべきは、残された不幸な人たちだ。」
街を急ぐあいだ、クラヴァルはそう語り、その言葉は私の心に刻まれました。後に一人になったときも思い出しました。馬車が用意されると、私はすぐ乗り込み、友に別れを告げました。
悲しみに満ちた旅でした。初めは家族を慰め、ともに嘆きたくて急ぎましたが、故郷が近づくにつれ、進む足が鈍りました。さまざまな感情が押し寄せ、受け止めきれません。六年近く見ていなかった、若いころ馴染んだ景色を通りました。その間に、すべてがどれほど変わったでしょう。一つの突然の破滅的な変化がありました。ほかにも数えきれない小さな出来事が、少しずつ、それでも決定的な変化をもたらしているかもしれません。恐怖に呑まれました。名づけようもない不幸を幾千も想像し、震えながらも先へ進めませんでした。
そうした苦しい気持ちのまま、ローザンヌで二日を過ごしました。湖を眺めると、水は静かで、あたりも穏やかでした。雪を頂く「自然の宮殿」たる山々も変わっていません。天上のように静かな景色に少しずつ心を取り戻し、ジュネーヴへ旅を続けました。
道は湖に沿って走り、故郷の街に近づくにつれ、湖幅は狭まりました。ジュラ山脈の黒い山肌と、モンブランの輝く頂が、いっそうはっきり見えました。私は子どものように泣きました。「懐かしい山々よ、美しいわが湖よ。放浪から戻った私を、どう迎えてくれる? 峰は澄み、空も湖も穏やかな青だ。これは平和の前触れなのか。それとも私の不幸をあざ笑っているのか。」
友よ、こうした道中のことを長々と語れば、退屈させてしまうでしょう。ですが、それでも比較的幸せな日々でしたから、懐かしく思い出します。故郷、愛する故郷よ。川や山、何より美しい湖を再び見た喜びは、その地に生まれた者にしかわかりません。
しかし家が近づくと、悲しみと恐怖が再び私を襲いました。夜が迫り、暗い山々もほとんど見えなくなると、心もいっそう暗くなりました。景色は広大な、不吉な闇の舞台に見え、私は人間のなかで最も不幸な者になるのだと、ぼんやり予感しました。ああ、その予感は当たっていました。一つだけ間違っていたのは、想像して恐れた苦しみが、後に耐える苦痛の百分の一にも満たなかったことです。
ジュネーヴ近郊に着いたときには、すっかり暗くなり、町の門も閉じていました。市街から半リーグほどのセシュロンという村で、一夜を明かすほかありません。空は晴れていましたが、休む気にはなれず、かわいそうなウィリアムが殺された場所へ行くことにしました。町を通れないので、舟で湖を渡ってプランパレへ向かいました。短い船旅のあいだ、稲妻がモンブランの頂に美しい模様を描くのが見えました。嵐は急速に近づいているようでした。岸へ着くと小高い丘に登り、その様子を眺めました。空を雲が覆い、大粒の雨がぽつぽつと降り出し、まもなく激しくなりました。
丘を離れて歩き続けました。暗さも嵐も刻々と増し、頭上で雷鳴が恐ろしい音を立てました。サレヴ山、ジュラ山脈、サヴォア・アルプスからこだまが返ります。鮮やかな稲妻が湖を照らし、広大な炎の水面に変えると、まぶしさに目が慣れるまで、あたりは一瞬、墨を流したような闇に沈みました。スイスではよくあることですが、嵐は空のあちこちで同時に起きていました。最も激しい嵐は町の真北、ベルリーヴの岬とコペの村のあいだの湖にかかっていました。別の嵐は淡い稲妻でジュラ山脈を照らし、さらに別の嵐は湖の東の尖ったモル山を暗く包み、ときおり姿を浮かび上がらせました。
美しくも恐ろしい嵐を見ながら、私は足早に歩きました。天で繰り広げられる壮大な戦いに心が高揚し、両手を握りしめて声を上げました。「ウィリアム、愛しい天使よ! これがお前の葬儀であり、弔いの歌だ!」
そう言ったとき、そばの木立の陰から、人影が忍び出るのが見えました。立ち止まり、目を凝らしました。見間違いではありません。稲妻が姿をくっきり照らしました。巨人のような背丈、人間とは思えない醜さ。私が命を与えた、あの汚らわしい悪魔です。ここで何をしている? まさか弟を殺したのは――そう思うだけで震えました。しかしその考えが浮かんだ瞬間、真実だと確信しました。歯が鳴り、木に寄りかからなければ立っていられません。人影は足早に通り過ぎ、闇へ消えました。人の姿をした普通の生き物に、あの美しい子を殺せるはずがない。犯人はあいつだ。疑いようがありません。そう思いついたこと自体が、動かぬ証拠に感じられました。追おうと思いましたが、無駄でした。次の稲妻に照らされ、プランパレの南にそびえるサレヴ山の、ほとんど垂直な岩壁をよじ登る姿が見えたのです。すぐ頂に達し、消えました。
私は動けずにいました。雷はやみましたが、雨は降り続き、景色は見通せない闇に包まれました。忘れようとしてきたことが、次々に蘇りました。創造へと至った道のり。自分の手で作ったものが寝台のそばに現れた姿。そして去っていったこと。命を与えた夜から、ほぼ二年が経ちます。これが最初の罪だったのでしょうか。ああ、殺戮と不幸を喜ぶ邪悪なものを、私が世に放ってしまったのです。弟を殺したのではないでしょうか。
残りの夜、冷たい雨に濡れたまま屋外で過ごした苦痛は、誰にも想像できないでしょう。けれども、寒さも濡れた服も感じませんでした。頭の中は、恐ろしい光景と絶望でいっぱいでした。人々の中に放ち、今やこんな恐怖を実行する意志と力を持つ存在は、私自身の吸血鬼、墓から解き放たれ、私の愛する者をすべて滅ぼそうとする私自身の亡霊のようでした。
夜が明け、私は町へ向かいました。門は開いており、父の家へ急ぎました。まず考えたのは、知っている犯人のことを話し、すぐに追っ手を出すことでした。しかし、どう説明すればよいのでしょう。自分で作って命を与えた存在に、真夜中、近づくことも難しい山の崖で出会った、と言うのです。しかも創造した直後に、私は神経性の熱病にかかりました。そんな、ただでさえ信じがたい話が、熱病のうわごとに聞こえるでしょう。ほかの人から同じ話を聞いたら、私自身、狂人のたわごとだと思うはずです。それに家族が信じて追っ手を出してくれたとしても、あの異常な生き物を捕らえられるはずがありません。そもそも、何の役に立つでしょう。サレヴ山の突き出た岩壁を登れるものを、誰が捕まえられますか。私は黙っていることにしました。
父の家に入ったのは、朝の五時ごろでした。召使いたちには家族を起こさないよう伝え、いつもの起床時刻まで書斎で待ちました。
インゴルシュタットへ発つ前、父を最後に抱きしめたのと同じ場所に立ちました。消せない一つの傷を除けば、この六年は夢のようです。愛する、尊い父は、まだ私のそばにいてくれます。暖炉の上に飾られた母の絵を見上げました。父が描かせた、母の人生の一場面です。父を亡くしたキャロライン・ボーフォートが、悲しみに沈んで棺のそばにひざまずいていました。田舎風の服を着て、頬は青白い。それでも気品と美しさがあり、哀れみだけを抱かせる絵ではありません。その下には、ウィリアムの小さな肖像画があり、見つめると涙が流れました。そこへアーネストが入りました。私の到着を聞き、迎えに急いできたのです。「お帰り、ヴィクター」と言いました。「ああ、三か月前に来てくれていたら、皆が喜ぶ幸せな家に帰れたのに。今は、どうすることもできない悲しみを分け合うために来てもらった。でも、兄さんがいれば、苦しみに沈みきっている父さんも元気を取り戻すかもしれない。かわいそうなエリザベスも、むだに自分を責めるのをやめてくれるかもしれない。ウィリアムは、皆の宝で、誇りだったのに!」
弟の目から涙があふれ、私は死ぬほどの苦痛を感じました。それまでは荒れ果てた家の不幸を想像するだけでした。現実を目の前にして、新たな、少しも軽くはない災難として襲われたのです。アーネストを落ち着かせようと努め、父の様子を詳しく尋ね、エリザベスの名も出しました。
「彼女がいちばん慰めを必要としている」とアーネストは言いました。「弟を死なせたのは自分だと思って、ひどく苦しんでいる。でも犯人が見つかってからは――」
「犯人が見つかった? そんな馬鹿な! 誰に追える? 風に追いつき、わら一本で山の急流を止めるようなものだ。僕も昨夜見たんだ。自由に動き回っていた!」
「何を言ってるのかわからないよ」と弟は驚いて答えました。「でも、犯人がわかったことで、僕たちの苦しみは深まった。初めは誰も信じなかったし、証拠がそろった今でもエリザベスは信じない。だって、優しくて、家族の皆を愛していたジュスティーヌ・モリッツが、急にあんな恐ろしい罪を犯せるなんて、誰が信じられる?」
「ジュスティーヌ・モリッツ? あのかわいそうな子が疑われているのか。でも、無実だ。誰だってわかるだろう。誰も本気で信じていないよな、アーネスト?」
「初めはね。でもいろいろな事実が出てきて、認めざるをえなくなった。本人もひどく取り乱して、証拠を裏づけるような態度だった。残念だけど、疑う余地はほとんどないと思う。ただ、裁判は今日だから、詳しくはそこで聞けるよ。」
アーネストの話によると、ウィリアムの遺体が見つかった朝、ジュスティーヌは体調を崩し、何日か寝込んでいました。その間、召使いの一人がたまたま事件の夜に着ていた服を調べ、ポケットから母の小さな肖像画を見つけました。犯人が狙ったと考えられていた絵です。その召使いはすぐ別の召使いに見せ、見せられたほうは家族に黙って判事のもとへ行きました。二人の証言でジュスティーヌは捕らえられました。疑いをかけられた彼女は、ひどくうろたえ、かえって疑惑を深めてしまったのです。
奇妙な話ですが、私の確信は揺らぎませんでした。「皆、間違っている。犯人は僕が知っている。ジュスティーヌは無実だ。あんないい子が犯すはずがない。」
そのとき父が入ってきました。顔には深い不幸が刻まれていましたが、明るく迎えようとしてくれました。悲しい再会の挨拶を交わすと、父は別の話題に移ろうとしました。しかしアーネストが叫びました。「父さん、ヴィクターがウィリアムを殺した犯人を知っているって!」
「残念だが、私たちも知っている」と父は答えました。「あれほど大切にしていた者に、こんな邪悪さと恩知らずな心があると知るくらいなら、永遠に知らずにいたかった。」
「父さん、違うんです。ジュスティーヌは無実です。」
「そうなら、罪人として罰されることのないよう、神に祈ろう。裁判は今日だ。どうか、どうか無罪になるようにと思っている。」
父の言葉に、私は落ち着きました。ジュスティーヌも、ほかのどんな人間も殺していないと確信していました。状況証拠だけで有罪にできるほどの証拠が出るとは、心配していませんでした。自分の話を公にすることもできません。恐ろしすぎて、普通の人には狂気だと思われるでしょう。私という創造主以外に、あのものを自分の目で確かめずに、私が世に放った思い上がりと無知の生きた証拠を信じる人がいるでしょうか。
ほどなくエリザベスが来ました。会わないあいだに成長し、子どものころを超える美しさを備えていました。率直さも、生き生きとした明るさも変わりませんが、そこに豊かな感受性と思慮が加わっていました。彼女は深い愛情を込めて迎えてくれました。「帰ってきてくれて、希望が湧いたわ」と言いました。「無実のジュスティーヌを救う方法が、あなたなら見つけられるかもしれない。あの子が有罪にされたら、誰だって安心していられない。私自身が無実だと信じるのと同じくらい、あの子の無実を信じているの。私たちには二重の不幸です。かわいいウィリアムを失ったうえ、私が心から愛するあの子まで、もっと恐ろしい運命に奪われようとしている。もし有罪になったら、私は二度と喜ぶことができない。でも大丈夫、そんなことにはならないわ。きっと無罪になる。そうしたら、ウィリアムが亡くなった悲しみを抱えていても、もう一度幸せになれると思う。」
「無実だよ、エリザベス」と私は言いました。「必ず証明される。心配しないで。無罪になると信じて、元気を出して。」
「なんて優しいの! ほかの人は皆、あの子が犯人だと思っていて、つらかった。ありえないと私は知っているのに、皆があんなふうに決めつけるから、希望がなくなってしまったの。」
エリザベスは泣き出しました。
「愛しいエリザベス、涙を拭きなさい」と父が言いました。「お前の信じるとおり無実なら、法が公正に裁いてくれる。私も決して、少しの偏見も入り込ませないよう力を尽くすよ。」
第八章
裁判の始まる十一時まで、私たちは沈痛な気持ちで数時間を過ごした。父をはじめ家族は証人として出廷しなければならず、私も連れ立って裁判所へ向かった。この惨めな裁判という名の茶番のあいだ、私は生きながら責め苦を受けていた。私の好奇心と道に外れた企てが、二人の人間を死に至らしめるかどうかが、そこで決まろうとしていたのだ。一人は無垢な喜びに満ち、笑顔を浮かべていた幼子。もう一人は、あらゆる汚名を着せられて死に追いやられ、恐ろしい殺人として人々の記憶に残ることになる。ジュスティーヌもまた立派な娘で、その資質からして幸せな人生を送れるはずだった。それが今やすべて、不名誉な墓の中に葬られようとしている。しかも原因は私なのだ! ジュスティーヌに着せられた罪を、いっそ自分が犯したと告白したかった。だが犯行時、私はその場にいなかった。そんな告白をしても狂人のたわ言と見なされるだけで、私のせいで苦しむ彼女を救うことはできない。
ジュスティーヌは落ち着いた様子だった。喪服をまとい、もともと人を引きつける顔立ちは、その厳粛な心持ちによって、ひときわ美しく見えた。彼女は無実を確信しているようで、大勢の人々に見つめられ、罵声を浴びても震えなかった。普段ならその美しさが呼び起こしたはずの好意も、彼女が犯したとされる罪の恐ろしさを思う観衆の心からは、すっかり消えていた。落ち着きはしていたが、明らかに無理をしていた。以前の動揺を有罪の証拠とされたため、勇気ある態度を見せようと懸命になっていたのだ。法廷に入ると辺りを見渡し、すぐに私たちの席を見つけた。私たちを見て瞳が涙に曇ったようだったが、たちまち気を取り直した。その悲しげで愛情に満ちた眼差しは、彼女に罪などないことを物語っているようだった。
裁判が始まり、訴追側の弁護人が罪状を述べたあと、次々と証人が呼ばれた。彼女に不利な奇妙な事実がいくつも重なっていた。私のように無実の証拠を持たない者なら、誰でも心が揺らいだだろう。殺人のあった夜、彼女は一晩中外出しており、明け方には、のちに少年の遺体が見つかった場所の近くで、市場へ向かう女に目撃されていた。そこで何をしているのかと尋ねられても、彼女はひどく奇妙な顔をして、要領を得ない返事をしただけだった。家に戻ったのは八時頃。どこで夜を明かしたのかと聞かれると、子供を捜していたと答え、何か知らせはないかと必死に尋ねた。遺体を見せられると激しく取り乱し、数日間寝込んだ。そして使用人が彼女のポケットから見つけた肖像画が提示された。エリザベスが震える声で、ウィリアムがいなくなる一時間前に自分がその首に掛けたものだと証言すると、法廷は恐怖と憤りのざわめきに包まれた。
ジュスティーヌに弁明が求められた。審理が進むにつれて、彼女の顔つきは変わっていた。驚きと恐怖、苦悩がありありと浮かんでいた。ときには涙をこらえきれない様子だったが、発言を促されると気力を振り絞り、声は揺れながらも、はっきりと聞こえるように話し始めた。
「私がまったくの無実であることは、神様がご存じです」と彼女は言った。「ですが、そう申し立てるだけで無罪になるとは思っていません。私に不利とされる事実を、ありのままに説明することで無実を明らかにしたいのです。疑わしく見える点については、これまでの私の行いを踏まえて、裁いてくださる方々が好意的に受け取ってくださることを願っています。」
そして事件当夜、エリザベスの許しを得て、ジュネーヴから約一リーグ離れたシェーヌ村の叔母の家で夕方を過ごしたと語った。九時頃に帰る途中、行方不明の子供を見なかったかと男に尋ねられた。驚いた彼女は何時間も捜し回ったが、そのうちジュネーヴの門が閉まってしまった。顔見知りの住人を起こすのは気が引けたので、ある家の納屋で夜の数時間を過ごさざるを得なかった。ほとんど眠らずにいたが、明け方にほんの数分だけ眠ったらしい。足音で目が覚めた。夜が明けていたので、再び弟を捜そうと納屋を出た。遺体のあった場所に近づいたとしても、本人は知らずにそうしたのだ。市場へ向かう女に尋ねられてうろたえたのも、一睡もせず、哀れなウィリアムの安否も分からなかったのだから、無理はない。肖像画についてだけは、何も説明できなかった。
「この一点がどれほど重く、命取りになるほど私に不利かは分かっています」と不幸な娘は続けた。「でも、どうしてそこにあったのか、私には説明できません。何も知らないと申し上げた以上、なぜ私のポケットに入ったのか、考えられる可能性を推し量ることしかできないのです。けれど、それも行き詰まります。私にはこの世に敵などいないと思いますし、理由もなく私を破滅させるほど邪悪な人がいるとも思えません。犯人が入れたのでしょうか。そんな機会があったとは思えません。それに、機会があったとしても、すぐ手放すのなら、なぜ宝飾品を盗んだのでしょう。
「裁判官の方々の公正な判断に、すべてを委ねます。ですが、望みがあるとも思えません。私の人となりを知る方々の証言をお聞きくださるようお願いします。その証言でも、私に向けられた疑いを覆せないなら、私は有罪となるのでしょう。けれど、無実であることは、私の魂の救いにかけて誓えます。」
長年彼女を知る人々が何人も呼ばれ、皆その人柄を褒めた。だが、彼女が犯したと思い込んでいる罪への恐れと嫌悪から、誰もが萎縮し、進んで擁護しようとはしなかった。優れた性格と非の打ちどころのない行いという最後の頼みまで、被告を救えずに終わろうとしている。それを見たエリザベスは、激しく動揺しながらも、法廷で発言したいと申し出た。
「私は」と彼女は言った。「殺された不幸な子の従姉に当たります。いいえ、姉と言ったほうが近いでしょう。あの子が生まれるずっと前から、両親に育てられ、共に暮らしてきたのです。ですから、ここで私が発言するのは不適切と思われるかもしれません。でも、友人を名乗る人々の臆病さのために、一人の人間が命を失おうとしているのを見て、黙ってはいられません。私が知る彼女の人柄をお話しさせてください。私は被告をよく知っています。五年間、そして別の時期にも二年近く、同じ家で暮らしました。そのあいだずっと、彼女ほど心優しく、思いやりにあふれた人はいないと思っていました。私の叔母に当たるフランケンシュタイン夫人の最期の病には、深い愛情と細やかな心配りをもって看病しました。その後、自分の母親が長く患ったときにも献身的に世話をし、彼女を知る誰もが感嘆しました。それからまた叔父の家で暮らし、家族全員に愛されていました。亡くなったあの子を心からかわいがり、まるで優しい母親のように接していました。私自身、彼女に不利な証拠がどれほど示されようと、その無実を信じて疑いません。彼女にそんなことをする理由はありません。主な証拠とされるあの小さな飾りにしても、欲しいと言われていたら、喜んで差し上げました。それほど彼女を大切に思い、尊敬しているのです。」
エリザベスの飾り気のない力強い訴えに、賛同のざわめきが起こった。だがそれは彼女の勇気ある行動に向けられたもので、哀れなジュスティーヌに向けられたものではなかった。それどころか、人々の憤りは、恩を仇で返すこのうえない忘恩の徒として、いっそう激しくジュスティーヌに注がれた。エリザベスの話すあいだ、彼女は泣いていたが、何も答えなかった。裁判のあいだじゅう、私の動揺と苦しみは極限に達していた。私は彼女の無実を信じていた。いや、知っていた。弟を殺したに違いないあの悪魔は、地獄じみた戯れの果てに、罪なき者まで死と汚名へ追いやろうというのか。私は置かれた状況の恐ろしさに耐えられなかった。人々の声も裁判官たちの表情も、すでに不幸な犠牲者を有罪と決めているのを見て、苦しみに駆られて法廷を飛び出した。被告の受ける苦痛でさえ、私の苦痛には及ばなかった。彼女には無実という支えがある。だが後悔の牙は私の胸に食い込み、決して離れなかった。
その夜は、一瞬たりとも苦しみから解放されなかった。翌朝、私は法廷へ行った。唇も喉もからからに渇いていた。運命を決する問いを口にする勇気はなかったが、顔を知られていたので、係官は私が来た理由を察した。票決は終わっていた。投じられた票はすべて黒[訳注:有罪票を示す色]で、ジュスティーヌに有罪判決が下されていた。
そのときの気持ちは、とても言葉にできない。以前にも恐怖を味わい、それを表そうと努めてきた。だがあのときの、胸がむかつくほどの絶望は、どんな言葉でも伝えられない。私が話しかけた係官は、ジュスティーヌがすでに罪を認めたとも告げた。「これほど明白な事件なら、証言がなくとも足りたでしょうが」と彼は言った。「それでも告白が得られてよかった。どんなに決定的でも、状況証拠だけで有罪判決を下すのは、裁判官たちも好みませんから。」
思いがけない、奇妙な知らせだった。どういうことなのか。私の目が欺かれたのか。疑っている相手のことを打ち明ければ、世間が考えるとおり、私は本当に狂人なのだろうか。急いで家に帰ると、エリザベスが結果を問いただした。
「予想どおりの判決だよ」と私は答えた。「裁判官というものは、罪人を一人逃がすくらいなら、無実の者を十人苦しめるほうを選ぶ。でも、彼女は自白したそうだ。」
ジュスティーヌの無実を固く信じていた哀れなエリザベスには、あまりに残酷な一撃だった。「ああ!」と彼女は言った。「これからどうやって人の善良さを信じればいいの? 姉妹のように愛し、尊敬していたジュスティーヌが、どうしてあんな無垢な笑顔で私を欺けたの? あの穏やかな目に、残酷さや偽りが宿るなんて思えなかった。それなのに人を殺したなんて。」
間もなく、哀れなジュスティーヌがエリザベスに会いたがっていると聞いた。父は行かせたくない様子だったが、本人の判断と気持ちに任せると言った。「行きます」とエリザベスは答えた。「罪があるとしても、会いに行きます。ヴィクター、あなたも一緒に来て。一人では行けないわ。」
訪問を思うだけで責め苦だったが、断ることはできなかった。
薄暗い牢に入ると、ジュスティーヌは奥の藁の上に座っていた。両手には手枷がはめられ、膝の上に頭を載せている。私たちを見ると立ち上がり、ほかの者が部屋を出て二人きりになると、エリザベスの足元に身を投げて激しく泣いた。エリザベスも泣いた。
「ああ、ジュスティーヌ!」と彼女は言った。「どうして最後の慰めまで奪ったの? 無実だと信じていたのに。あのときだってひどくつらかったけれど、今ほどではなかったわ。」
「あなたまで、私をそれほど邪悪な人間だと思うのですか? あなたまで敵と一緒になって、私を殺人者と決めつけ、打ちのめすのですか?」
ジュスティーヌの声は、すすり泣きに詰まった。
「立って、かわいそうに」とエリザベスは言った。「無実なら、なぜひざまずくの? 私は敵じゃないわ。どんな証拠を見せられても、あなたは無実だと信じていた。自分で罪を認めたと聞くまでは。その話は嘘なのね。だったら信じて、ジュスティーヌ。あなた自身の自白でない限り、私の信頼は少しも揺るがないわ。」
「自白はしました。でも、嘘をついたのです。罪の赦しを得たくて、嘘の告白をしました。今はその嘘が、ほかのどんな罪よりも重く胸にのしかかっています。天の神様、どうかお赦しください! 有罪になってから、告解を聞く司祭が執拗に迫ってきました。脅し続けられるうちに、私は本当に司祭の言うような怪物なのかもしれないと、思いかけたほどです。頑として認めなければ、臨終のときに破門され、地獄の火に焼かれると脅されました。お嬢様、私には支えてくれる人がいなかった。誰もが、私は汚名を着せられて地獄に堕ちる人間だと思っていました。どうすればよかったのでしょう。あのとき判断を誤り、嘘の自白をしてしまいました。今こそ私は、本当に惨めです。」
泣きながら言葉を切り、やがて続けた。「優しいお嬢様、考えるだけで恐ろしかったのです。亡くなった叔母様があれほどかわいがり、お嬢様にも愛していただいたジュスティーヌが、悪魔にしかできない罪を犯したと、お嬢様に思われることが。愛しいウィリアム! かけがえのない、祝福された子! もうすぐ天国で会えるのですね。そこでは皆、幸せになれる。それを思えば、汚名と死を前にしても慰められます。」
「ああ、ジュスティーヌ! 一瞬でも疑って、ごめんなさい。どうして自白したの? でも、もう悲しまないで。怖がらないでね。私が無実を訴え、証明してみせる。涙と祈りで、敵の石のような心を動かしてみせるわ。死なせはしない! 遊び友達で、いつも一緒にいた、姉妹同然のあなたが処刑台で命を落とすなんて! いやよ! そんな恐ろしいことが起きたら、私は生きていけない。」
ジュスティーヌは悲しげに首を振った。「死ぬのは怖くありません」と言った。「その苦しみはもう乗り越えました。神様が弱い私を支え、どんなことにも耐える勇気をくださいます。悲しみと苦しみに満ちたこの世を去るのです。お嬢様が私を、無実の罪で裁かれた者として覚えていてくださるなら、待ち受ける運命を受け入れられます。どうか私を見て、天の御心に耐え忍んで従うことを学んでください。」
二人が話すあいだ、私は牢の隅に退き、身を苛む恐ろしい苦痛を隠していた。絶望だって? 誰がそんな言葉を口にできる? 明日には生と死の恐るべき境を越える哀れな犠牲者でさえ、私ほど深く苦しい痛みは感じていない。私は歯を食いしばり、ぎりぎりと噛み合わせ、心の底からうめき声を漏らした。ジュスティーヌがびくりとした。私だと分かると近づいてきて言った。「お坊ちゃま、お見舞いに来てくださって、ありがとうございます。あなたは、私が犯人だとは思っていませんよね?」
私は答えられなかった。「ええ、ジュスティーヌ」とエリザベスが言った。「ヴィクターは私以上に無実を信じていたわ。あなたが自白したと聞いたときでさえ、信じなかったの。」
「本当にありがたいことです。最後のときに、私を優しく思ってくださる方々への感謝で胸がいっぱいです。私のような惨めな者にとって、人の情けがどれほど甘美なものか。苦しみが半分以上軽くなります。お嬢様とお坊ちゃまが無実を認めてくださった今なら、安らかに死ねそうです。」
こうして哀れなジュスティーヌは、ほかの者と自分を慰めようとした。そして望んでいた心の平安を、確かに得たのだ。一方、真の殺人者である私の胸には、死ぬことのない虫がうごめき、希望も慰めも許さなかった。エリザベスも泣き、苦しんでいた。だが彼女の苦しみは、罪なき者の苦しみだ。美しい月を横切る雲のように、一時は輝きを隠しても、曇らせることはできない。苦痛と絶望は私の心の芯にまで入り込んでいた。胸の内に地獄を抱え、その火は何をもってしても消せなかった。私たちは何時間もジュスティーヌと過ごし、エリザベスはようやくの思いでその場を離れた。「あなたと一緒に死にたい」と彼女は叫んだ。「こんな悲しみの世界では生きていけない。」
ジュスティーヌはつらい涙を必死にこらえ、明るい表情をつくった。エリザベスを抱き締め、感情を押し殺した声で言った。「さようなら、優しいお嬢様。誰よりも大切なエリザベス。愛する、たった一人の友達。天が慈しみをもって、あなたを祝福し、お守りくださいますように。これがあなたにとって最後の不幸でありますように。生きて、幸せになってください。そして、ほかの人々も幸せにしてください。」
翌日、ジュスティーヌは死んだ。エリザベスの胸を打つ訴えも、聖女のような受刑者を有罪とする裁判官たちの確信を揺るがせなかった。私の怒りに満ちた必死の訴えも、彼らには届かなかった。冷ややかな返答と無情な理屈を聞くうち、打ち明けようと決めていた言葉は唇の上で消えた。私が狂人だと公言することはできても、不幸な犠牲者に下された判決は覆せない。ジュスティーヌは殺人者として処刑台で命を落とした!
自らの心を責め苛む苦痛から目をそらすと、声もなく深く嘆くエリザベスが見えた。これも私のせいだ! 父の悲しみも、つい先頃まで笑顔に満ちていた家が荒れ果てたことも、すべて、三重にも呪われるべき私の手が招いたのだ! 不幸な人たちよ、泣くがいい。だがその涙はこれで最後ではない! 再び弔いの声を上げ、幾度となく嘆きが響くだろう! フランケンシュタイン――あなた方の息子であり、身内であり、幼い頃から愛されてきた友。あなた方のためなら血の最後の一滴まで捧げ、あなた方の愛しい顔に映る喜び以外に幸せを知らず、祝福の言葉を辺りに満たし、一生をかけてあなた方に尽くしたいと願う者――その私が、あなた方に泣いてくれと言う。数えきれないほど涙を流してくれと。もしそれで容赦ない運命が満足し、悲しみに責められたあなた方が墓の安らぎに至る前に、破滅の連鎖が止まるのなら、これ以上望むべくもないのだ!
後悔と恐怖と絶望に引き裂かれながら、愛する人々がウィリアムとジュスティーヌの墓前で、報われぬ悲しみに暮れる姿を見て、私の心はそのように未来を告げた。二人は、私の忌まわしい技が生んだ最初の犠牲者だった。
第九章
出来事が立て続けに起こって心を激しく揺さぶられたあと、何もできず、結末だけが確定した静けさに置かれることほど、人の心に苦痛をもたらすものはない。希望も恐れも、魂から奪われてしまうのだ。ジュスティーヌは死んで安らぎ、私は生きていた。血は体を巡っているのに、心には絶望と後悔が重くのしかかり、何をしても取り除けなかった。眠りは訪れず、私は悪霊のようにさまよった。自分は筆舌に尽くしがたい恐ろしい災いを引き起こした。そして、この先にはもっと、はるかに多くの災いが待っている――そう思い込んでいた。だが私の心には、人への優しさと美徳への愛があふれていたのだ。善意を抱いて人生を歩み始め、人々の役に立てる日を待ち望んでいた。それが今や、すべて打ち砕かれた。過去を満足して振り返り、そこから新たな希望を見いだせる穏やかな良心の代わりに、後悔と罪の意識に捕らわれた。それは私を、言葉では表せない激しい責め苦の地獄へと引きずり込んだ。
この心のありようが健康をむしばんだ。最初に受けた衝撃から、体はまだ完全には回復していなかったのかもしれない。私は人を避けた。喜びや満足を示す声はすべて苦痛だった。慰めになるのは孤独だけ――深く、暗く、死にも似た孤独だけだった。
父は私の性格や習慣の変化を痛ましく思い、曇りのない良心と潔白な人生に裏打ちされた言葉で、私に強さを取り戻させ、心を覆う暗雲を払う勇気を呼び起こそうとした。「ヴィクター」と父は言った。「私が苦しんでいないとでも思うのか。おまえの弟を、私以上に愛せる者はいなかった」父の目に涙が浮かんだ。「だが、残された者たちに対する務めとして、度を越した悲嘆を見せて、さらに苦しめることは慎むべきではないか。自分自身に対する務めでもある。悲しみに沈みすぎれば、成長も喜びも、日々の役割を果たすことさえできなくなる。それができなければ、人は社会の中で生きられない。」
もっともな助言ではあったが、私にはまるで当てはまらなかった。ほかの感情に後悔の苦さと恐怖が混じっていなければ、誰より先に悲しみを隠し、友人たちを慰めただろう。だが今は絶望の目を父に向け、姿を隠そうとすることしかできなかった。
この頃、私たちはベルリーヴの家へ移った。その変化は私にはありがたかった。ジュネーヴの市門は毎晩きっかり十時に閉まり、それ以降は湖に出られない。城壁の内側で暮らすことが、私にはひどく窮屈だったのだ。今は自由だった。家族が寝静まったあと、よく舟を出し、水の上で何時間も過ごした。帆を張って風に任せることもあれば、湖の真ん中まで漕ぎ出し、あとは舟を漂うままにして、惨めな思いにふけることもあった。辺りがすべて静まり返り、天国のように美しい景色の中、安らげずにさまようのが私一人だけ――岸に近づいたときだけ耳に入る、途切れ途切れの耳障りな蛙の声や、時折飛ぶ蝙蝠を別にすれば――そんなとき、静かな湖に身を投げ、水の下に自分も不幸も永遠に沈めてしまいたいという誘惑に、幾度も駆られた。だが、勇敢で、苦しみに耐えているエリザベスを思うと踏みとどまった。私は彼女を心から愛し、彼女の人生は私の人生と結びついていた。父や、生き残った弟のことも考えた。私が卑怯にも去ってしまえば、彼らは私が解き放った悪魔の手から、誰にも守られないままになるのではないか。
そんなとき、私は激しく泣き、皆を慰め、幸せにするためだけでも心に平安が戻ってほしいと願った。だが、それは叶わなかった。後悔があらゆる希望を消し去った。取り返しのつかない悪を生み出したのは私だ。自分が造った怪物が新たな悪事を働くのではないかと、日々恐れながら生きていた。これですべて終わったわけではない。怪物はなお、過去の惨事さえかすむほどの大罪を犯すだろう――そんな漠然とした予感があった。愛する者が一人でも残っている限り、恐れる理由は尽きない。あの悪魔への嫌悪は、想像を絶するものだった。怪物を思うと歯を食いしばり、目は怒りに燃え、軽率にも与えてしまった命を消し去りたいと切望した。その罪と邪悪さを思えば、憎しみと復讐心は抑えが利かなくなった。アンデスの最高峰まで巡礼し、そこから怪物を突き落とせるというなら、喜んで登っただろう。もう一度会って、この手で憎しみの限りをぶつけ、ウィリアムとジュスティーヌの死の報いを受けさせたかった。
我が家は喪に服す家となった。父の健康は、相次ぐ恐ろしい出来事で大きく損なわれた。エリザベスは悲しみに沈み、普段の仕事にも喜びを見いだせなくなった。楽しむことは死者への冒涜だと感じ、踏みにじられた無実の命には、生涯にわたる嘆きと涙こそがふさわしいと考えていた。若い頃、私と湖畔を歩き、これからの人生を夢中で語った、あの幸せな人ではなくなっていた。私たちをこの世から引き離すために訪れるという悲しみを、彼女は初めて味わい、その影が、何より愛しかった笑顔を消してしまった。
「ねえ、ヴィクター」と彼女は言った。「ジュスティーヌ・モリッツの惨めな死を思うと、この世界も人の営みも、以前のようには見えなくなるの。本で読んだり、人から聞いたりした悪や不正は、昔話か、作り事の災いだと思っていた。少なくとも自分から遠くて、頭では分かっても実感はなかった。でも今は、不幸が我が家にやって来て、人は互いの血を求める怪物のように見える。けれど、そんなふうに思うのは不公平よね。誰もが、あのかわいそうな子を犯人だと信じていたのだから。もし本当に彼女が、死刑になったあの罪を犯していたなら、このうえなく堕落した人間だったでしょう。たかがいくつかの宝飾品のために、恩人であり友人である人の息子を、赤ん坊の頃から世話をし、我が子のように愛していた子を殺したのだとしたら! どんな人であっても死刑には賛成できないけれど、そんな人間は確かに、人々と共に暮らす資格がないと思ったはずよ。でも彼女は無実だった。分かるの、無実だと感じる。あなたもそう思っているから、なおさら確信できるわ。ああ、ヴィクター、嘘がこれほど本当らしく見えるのなら、自分の幸せをどうして確かなものだと思えるでしょう。崖っぷちを歩いていて、何千人もの人が押し寄せ、私を谷底へ突き落とそうとしているような気がする。ウィリアムとジュスティーヌは殺されたのに、犯人は逃げおおせ、自由に、もしかしたら人々に尊敬されながら世を歩いている。でも、同じ罪で私が処刑台に立たされることになっても、そんな人間と立場を替わりたいとは思わない。」
私は激しい苦痛のうちにその話を聞いた。手を下してはいないが、実質的に真の殺人者は私だった。エリザベスは私の表情から苦しみを読み取り、優しく手を握った。「大切なあなた、どうか落ち着いて。この出来事で私がどれほど傷ついたか、神様はご存じよ。でも、あなたほど苦しんではいない。あなたの顔には絶望が浮かんでいる。ときには復讐心まで見えて、怖くなるの。ヴィクター、そんな暗い思いを追い払って。あなたにすべての希望を託す友人たちが、そばにいることを思い出して。私たちには、もうあなたを幸せにする力がないの? ああ、私たちが愛し合い、互いに誠実でいる限り、あなたの故郷である、この美しく穏やかな土地で、静かな幸福をいくらでも得られるはず。何がそれを妨げられるというの?」
この世のどんな幸運よりも愛しい彼女の言葉でさえ、私の心に潜む悪魔を追い払えなかったのか。彼女が話している最中にも、私は恐怖に駆られたように身を寄せた。今この瞬間にも、破壊者が近くにいて、彼女を私から奪うのではないかと思ったのだ。
こうして、友情の優しさも、大地や天の美しさも、私の魂を苦しみから救えなかった。愛のこもった声でさえ、何の効き目もなかった。私は、どんな恵みも通さない雲に包まれていた。傷ついた鹿が、力を失った脚を引きずって人の踏み入らぬ茂みに入り、体を貫いた矢を見つめながら死んでいく。それが私の姿だった。
のしかかる陰鬱な絶望に耐えられるときもあった。だが、心に渦巻く感情に突き動かされ、体を動かし、場所を変えることで、耐えがたい気持ちを少しでも和らげようとするときもあった。そうした衝動に襲われたある日、私は突然家を出た。近くのアルプスの谷へ向かい、壮大で悠久の景色の中で、はかない人間である自分自身と、その悲しみを忘れようとしたのだ。足はシャモニーの谷へ向いた。少年時代に何度も訪れた場所である。あれから六年。私は見る影もなく変わったが、荒々しく変わることのない景色は、何ひとつ変わっていなかった。
旅の初めは馬に乗り、その後、この険しい道では足元が確かで怪我もしにくいラバを借りた。天気はよかった。八月の半ば頃で、ジュスティーヌの死から二か月近く経っていた。私のあらゆる不幸は、あの惨めな日から始まった。アルヴ川の峡谷へ深く進むにつれ、心を圧していた重みは目に見えて和らいだ。四方から覆いかぶさる巨大な山々と断崖、岩のあいだで荒れ狂う川の音、周囲に落ちる滝の響きは、全能の神にも等しい力を感じさせた。自然の猛威をここに示す万物を造り、治める存在以外は、もはや何も恐れず、屈するまいと思えた。登るほどに、谷はさらに雄大で驚くべき姿を見せた。松の生える山の断崖に懸かる城跡、勢いよく流れるアルヴ川、木々のあいだからところどころに顔を出す小屋。類いまれな美しさだった。だが、その上にそびえるアルプスの巨峰が、景色をさらに崇高なものにしていた。白く輝くピラミッドや円蓋のような峰々は、別の世界に属し、別の種族が住む場所であるかのようだった。
ペリシエ橋を渡ると、川の刻んだ峡谷が眼前に開け、その上にそびえる山を登り始めた。まもなくシャモニーの谷に入った。今通ってきたセルヴォの谷より壮観で崇高だが、美しさや絵画のような趣では及ばない。すぐそばまで雪を頂く高峰が迫り、城跡も肥沃な畑も見えなかった。巨大な氷河が道近くまで迫り、雪崩の落ちる雷鳴のような音が聞こえ、巻き上がる雪煙も見えた。周囲の尖峰から抜きん出て、至高の、壮麗なモンブランがそびえ、その巨大な円頂が谷を見下ろしていた。
道中、長く忘れていた喜びが、ふと身をよぎることが何度もあった。道の曲がり角や、突然目に入った見覚えのあるものが、過ぎ去った日々と少年時代の屈託のない楽しさを思い出させた。風さえも慰めるようにささやき、母なる自然が、もう泣かなくていいと告げているようだった。だが、その優しい力もまた途絶え、私は再び悲しみに縛られ、つらい思いに沈んだ。そんなときはラバを急がせ、世界も恐怖も、何より自分自身も忘れようとした。あるいは、いっそう絶望的な気分でラバを降り、恐怖と絶望の重みに押しつぶされながら、草の上に身を投げた。
ようやくシャモニーの村に着いた。心身ともに疲れ切り、今度は力が抜けて動けなくなった。しばらく窓辺に立ち、モンブランの上空を走る青白い稲妻を眺め、眼下で音を立てて流れるアルヴ川に耳を澄ませた。その絶え間ない響きが、張り詰めた感覚を鎮める子守歌になった。枕に頭を載せると眠りが訪れた。意識が薄れていくのを感じながら、忘却を与えてくれるものを祝福した。
第十章
翌日は谷を歩き回った。アルヴェロン川の源流にも立った。山頂からゆっくりと谷をせき止めるように下ってくる氷河から、その川は生まれている。目の前には巨大な山々の切り立った斜面があり、氷河の壁が頭上に迫る。折れた松が数本、辺りに散らばっていた。荘厳な自然の玉座の間を満たす静寂を破るのは、激しく流れる水、巨大な氷の塊が崩れ落ちる音、雪崩の雷鳴、そして幾重にも積もった氷が割れ、山々にこだまする響きだけだった。氷は変わることのない法則が静かに働くなかで、まるでその手の中のおもちゃのように、幾度も裂け、砕かれる。この崇高で壮麗な景色は、私に得られる限りの慰めを与えてくれた。狭い感情から心を引き上げ、悲しみを消しはしないまでも、鎮め、和らげてくれた。それまで一か月も心に巣くっていた考えからも、いくらか気をそらせた。夜、眠りにつくと、昼間眺めた雄大な光景が夢の中で寄り添い、私をいたわるようだった。汚れのない雪の山頂、輝く尖峰、松林、ごつごつした裸の峡谷、雲間を舞う鷲――すべてが私を囲み、安らげと告げていた。
翌朝目覚めたとき、その光景はどこへ消えたのか。心を奮い立たせたものは眠りとともに去り、暗い憂鬱がすべての思考を覆った。雨は激しく降り、濃い霧が山頂を隠し、力強い友である山々の姿すら見えなかった。それでも私は霧の帳を抜け、雲の中に潜む友を訪ねようと思った。雨や嵐が何だというのか。戸口にラバを連れてきてもらい、モンタンヴェールの頂を目指すことにした。初めてあの恐ろしく、絶えず動く氷河を見たとき、どれほど心を揺さぶられたか覚えていた。崇高な歓喜に満たされ、魂に翼が生え、暗い世界から光と喜びへ飛び立てるようだった。自然の恐ろしくも荘厳な姿を見ると、いつも心が厳粛になり、日々のつかの間の悩みを忘れられた。道はよく知っていたので、案内人は頼まなかった。誰かがいれば、この景色の孤高の雄大さが損なわれると思ったのだ。
登りは急だが、道は短い曲折を幾重にも刻んでおり、切り立った斜面を登れるようになっている。恐ろしいほど荒涼とした場所だ。いたるところに冬の雪崩の跡があり、木々は折れて地面に散らばっている。根こそぎ壊された木もあれば、曲がって山の突き出た岩に寄りかかる木、ほかの木を横切るように倒れた木もある。さらに登ると、道を雪の積もった溝が横切り、上から絶えず石が転がり落ちてくる。なかでも一か所はとりわけ危険で、大声で話す程度の音でも、空気が震えて雪崩を呼び、声を出した本人の頭上に破滅が降りかねない。松は高くも青々としてもいなかったが、その暗い色が景色に厳しさを添えていた。眼下の谷を見下ろすと、流れる川から巨大な霧が立ちのぼり、向かいの山々に濃く巻きついていた。山頂は一面の雲に隠れ、暗い空からは雨が降り注ぎ、周囲の景色がもたらす憂鬱を深めた。ああ、人はなぜ、獣より豊かな感受性を持つと誇るのだろう。それはかえって、獣を人より自足した存在にしているだけではないか。空腹と渇きと欲望にしか動かされなければ、私たちはほとんど自由でいられるだろう。だが今は、吹く風の一つひとつに揺さぶられ、たまたま耳にした言葉や、それが呼び起こす情景にさえ心を乱される。
眠れば、夢ひとつが眠りを毒する。
目覚めれば、さまよう思いひとつが一日を汚す。
感じ、思い描き、理を巡らせ、笑い、泣く。
愛しい悲しみを抱き、あるいは憂いを捨てる。
喜びであれ悲しみであれ、結局は同じ。
いつでも立ち去る道が開かれているのだから。
人の昨日と明日が、同じであるとは限らない。
変わりゆくことだけが、変わらずにある!
登りきったのは、正午近くだった。しばらく氷の海を見下ろす岩に座った。氷河も周囲の山々も霧に包まれていた。やがて風が雲を払い、私は氷河へ下りた。表面はひどく起伏に富み、荒れた海の波のように盛り上がっては沈み、深く落ち込む裂け目が点在していた。氷原の幅はほぼ一リーグだが、渡るのに二時間近くかかった。向かいの山は、むき出しの垂直な岩壁だった。私が立つ側から見ると、モンタンヴェールはちょうど向かいに、一リーグほど離れてそびえ、その上には威厳に満ちたモンブランが立っていた。私は岩のくぼみにとどまり、この驚くべき壮大な眺めを見つめた。海というより巨大な氷の川が、周囲の山々のあいだをうねり、その高い頂が川筋の上に張り出していた。氷に覆われて輝く峰々は、雲の上で陽光を受けていた。それまで悲しみに沈んでいた胸に、喜びにも似たものが満ちてきた。私は叫んだ。「さまよう魂たちよ、本当に墓の狭い寝床に眠らず、今もさまよっているのなら、このかすかな幸福を私に許してくれ。でなければ私を連れにして、人生の喜びから遠くへ連れ去ってくれ。」
その言葉を口にしたとき、離れた場所から人影がこちらへ近づいてくるのが突然見えた。人間離れした速さだった。私なら慎重に歩く氷の裂け目を飛び越えてくる。近づくにつれ、背丈も人間を超えているように見えた。動揺して目の前が霞み、気が遠くなりかけたが、山の冷たい風ですぐに意識がはっきりした。さらに近づいた姿を見て、気づいた。恐ろしくも忌まわしいその姿は、私の造った怪物だった。私は怒りと恐怖に震え、近づいてきたら命懸けで組み伏せようと決めて待った。怪物の顔には、深い苦悩に侮蔑と悪意が入り交じっていた。人の世のものとは思えない醜さは、目にするのも耐えがたいほどだった。だが、私はろくに見てもいなかった。怒りと憎しみで初めは言葉を失い、声が戻るや、激しい嫌悪と侮蔑を浴びせた。
「悪魔め!」と私は叫んだ。「よくも私の前に姿を現せたな。この手でおまえの忌まわしい頭に復讐を加えられるとは思わないのか。消えろ、卑しい虫けら! いや、そこにいろ。踏みつぶしてやる! おまえの命を消すことで、悪魔のように殺した人々を生き返らせられたなら!」
「こう迎えられると思っていた」と怪物は言った。「人は皆、不幸な者を嫌う。ならば、生きるものの誰より惨めな私は、どれほど憎まれることか。それでも私を造ったおまえは、被造物である私を嫌い、拒絶する。私たちのどちらかが消えない限り断てない絆で結ばれているのに。おまえは私を殺そうとしている。よくもそんなふうに命をもてあそべるものだ。私に対する務めを果たせ。そうすれば、私もおまえと人間たちに対する務めを果たす。私の求めを聞くなら、おまえたちを安らかに暮らさせよう。拒むなら、残った友人たちの血で死の腹を満たしてやる。」
「忌まわしい怪物め! 悪魔め! おまえの罪を罰するには、地獄の責め苦さえ生ぬるい。惨めな悪魔が、造られたことを私のせいにするのか。ならば来い。私が軽率に与えた命の火を、この手で消してやる。」
怒りに任せ、私は怪物に飛びかかった。相手の存在そのものを憎む者の、あらゆる感情に突き動かされていた。
怪物はたやすく身をかわし、言った。
「落ち着け! その憎しみを私にぶつける前に、どうか話を聞いてくれ。私の苦しみは、まだ足りないというのか。命が苦痛の積み重ねでしかなくとも、私には大切なものだ。守るつもりでいる。忘れるな。おまえは自分より力の強いものを造った。私は背が高く、体も柔軟だ。だが、だからといっておまえに逆らうつもりはない。私はおまえに造られた。おまえが私への務めを果たすなら、私も生まれながらの主君に穏やかに従おう。フランケンシュタイン、ほかのすべてに公平でありながら、私だけを踏みにじらないでくれ。おまえが最も公正に接し、憐れみ、愛情を注ぐべき相手こそ、この私なのだ。私はおまえの造ったものだ。アダムであるべきだったのに、むしろ堕天使のように、何の罪も犯さぬうちから喜びの園を追われた。どこを見ても幸福があるのに、私だけが永遠に締め出されている。私はもとは心優しく、善良だった。苦しみが私を悪魔にした。幸せにしてくれ。そうすれば、また善良になれる。」
「消えろ! 話など聞かない。おまえと私が分かり合うことはない。敵同士だ。去るか、どちらかが倒れるまで戦うか、選べ。」
「どうすれば心を動かせる? 憐れみと善意を乞う、自分の造ったものに、一度くらい優しい目を向けてはくれないのか。信じてくれ、フランケンシュタイン。私はもとは善良で、心は愛と思いやりに満ちていた。だが私は一人だ。惨めなほどに、一人きりなのだ。造り主のおまえさえ嫌うのに、何の義理もないほかの人間に、どうして望みを持てる? 皆、私を拒み、憎む。荒涼とした山と寂しい氷河だけが避難場所だ。ここを何日もさまよっている。氷の洞窟を恐れずにいられるのは私だけで、人間もそこに私が住むことなら嫌がらない。この荒れた空を歓迎する。人間よりも私に優しいからだ。人々が私の存在を知れば、おまえと同じように武器を取り、私を滅ぼそうとするだろう。ならば、私を嫌う者たちを憎んではいけないのか。敵と和解するつもりはない。私は惨めだ。彼らにも同じ惨めさを味わわせよう。だが、おまえには私に償いをし、人々を災いから救う力がある。その災いを大きくすれば、おまえと家族だけでなく、何千という人々まで怒りの嵐に巻き込まれる。どうか憐れみを持ち、私を見下さないでくれ。話を聞け。聞いたうえで、見捨てるに値するか、憐れむに値するか決めればいい。とにかく聞いてくれ。人間の法は血なまぐさいが、それでも罪人には判決を下す前に弁明を許す。聞くんだ、フランケンシュタイン。私を殺人者と責めながら、おまえは自分の造ったものを、良心の呵責もなく滅ぼそうとしている。ああ、人間の永遠の正義とは立派なものだな! 見逃してくれとは頼まない。話を聞け。それから、できるものなら、望むなら、自分の手で造ったものを滅ぼせ。」
「どうして私に思い出させるのだ」と私は答えた。「自分が始め、生み出したことを思うだけで身震いするような出来事を。おまえが初めて光を見た日は呪われよ、忌まわしい悪魔め! おまえを形づくったこの手も呪われよ――それは私自身を呪うことだが。おまえのせいで、私は言葉にならないほど惨めになった。おまえに公平に接しているかどうかを考える余裕さえ、もうない。消えろ! その忌まわしい姿を見せないでくれ。」
「では、見えないようにしてやろう、造り主よ」と言って、怪物は憎らしい両手で私の目を覆った。私は激しく払いのけた。「これで嫌な姿は見えまい。それでも話を聞き、憐れみを向けることはできるはずだ。かつて私が持っていた善良さにかけて、そうしてほしい。私の話を聞け。長く奇妙な話だ。ここは、おまえの繊細な体には寒すぎる。山の小屋へ来い。太陽はまだ高い。雪の崖の向こうに沈み、別の世界を照らすまでには、話を聞き終えて決められる。私が永遠に人里を去って害のない生を送るか、それとも人間たちを苦しめ、おまえ自身を間もなく破滅させるか。すべてはおまえ次第だ。」
そう言って怪物は氷の上を先に歩き出し、私はあとを追った。胸がいっぱいで、返事はしなかった。歩きながら怪物の言葉を一つひとつ考え、少なくとも話だけは聞こうと決めた。好奇心にも動かされ、憐れみが決意を後押しした。私はそれまで怪物を弟殺しの犯人だと思っており、その考えが正しいかどうか、確かめたくてたまらなかった。また初めて、造り主が被造物に対して負う務めというものを感じた。悪行を責める前に、まず幸せにしてやるべきではないのか。そうした思いから、怪物の求めに応じた。私たちは氷河を渡り、向かいの岩場を登った。空気は冷たく、また雨が降り始めていた。小屋に入ったとき、悪魔は勝ち誇った様子で、私は重い心を抱え、気力も沈んでいた。それでも聞くことには同意した。憎むべき道連れが起こした火のそばに座ると、怪物はこう語り始めた。
第十一章
「生まれて間もない頃のことを思い出すのは難しい。あの時期の出来事は、どれも入り混じってぼんやりしている。奇妙な感覚が一度に押し寄せ、私は同時に見て、触れ、聞き、匂いを嗅いでいた。感覚ごとの働きを区別できるようになるまでには、ずいぶん時間がかかった。次第に強い光が目を刺すようになり、目を閉じたのを覚えている。すると暗闇が訪れ、私は動揺した。だがすぐに――今思えば、目を開けたのだろう――再び光が流れ込んできた。歩き、階段を下りたのだと思う。そのうち、周囲の感じが大きく変わった。それまでは、触れても見ても通り抜けられない暗い物に囲まれていた。だが今は、越えたり避けたりできない障害物はなく、自由に歩き回れた。光はますますつらくなり、歩いていると暑さにも疲れたので、日陰を探した。そこはインゴルシュタット近くの森だった。私は小川のほとりに横たわって疲れを癒やしたが、やがて空腹と喉の渇きに苦しめられた。眠ったようになっていた意識が目覚め、木になっている実や地面に落ちている実を食べた。小川で喉を潤し、横になると、眠りに落ちた。
「目覚めたときは暗く、寒かった。誰もいないことが、本能的に恐ろしかった。おまえの部屋を出る前に寒さを感じ、服を何枚か身に着けていたが、夜露を防ぐには足りなかった。私は何も知らず、何ひとつ見分けられない、哀れで無力な存在だった。全身を襲う痛みに耐えかねて、座り込んで泣いた。
「やがて優しい光が空に広がり、うれしくなった。飛び起きると、木々のあいだから輝くものが昇ってきた。[月である]私は不思議な思いで見つめた。それはゆっくり動きながら道を照らしてくれたので、また実を探しに出かけた。まだ寒かったが、木の下で大きな外套を見つけ、体に巻いて地面に座った。はっきりした考えは何も浮かばず、すべてが混沌としていた。光や空腹、渇き、暗闇を感じ、無数の音が耳に響き、さまざまな匂いが四方から届いた。はっきり見分けられるのは明るい月だけで、喜びを感じながら見つめ続けた。
「昼と夜が何度か入れ替わり、夜の光る球がかなり小さくなった頃、私は感覚を一つずつ区別し始めた。飲み水をくれる澄んだ小川や、葉を茂らせて日陰をつくる木々が、次第にはっきり見えるようになった。よく耳にしていた心地よい音が、目の前の光をしばしば遮る小さな翼ある生き物の喉から出ていると、初めて分かったときはうれしかった。周囲のものの形も、以前より注意深く見られるようになり、頭上を覆う輝く空の果ても見えてきた。鳥の美しい声をまねようとしたが、できなかった。自分の気持ちを声にしようとしても、口から出るのは不格好ではっきりしない音ばかりで、自分で驚いて黙ってしまった。
「月は夜空から消え、また細い姿で現れた。そのあいだも私は森にいた。この頃には感覚が分かれてきて、日ごとに新しいことを知った。目が光に慣れ、ものを正しい形で見られるようになった。虫と草の違いが分かり、やがて草も種類ごとに見分けられた。雀の声は耳障りな音ばかりだが、黒歌鳥や鶫の歌は甘く心を誘うと知った。
「ある日、寒さに苦しんでいると、旅をする物乞いたちが残していった火を見つけた。暖かさがうれしくてたまらず、燃える炭に手を突っ込んだが、痛みに叫び、慌てて引っ込めた。同じものが、どうしてこんなに正反対の働きをするのだろうと思った。火の燃料を調べて、それが木だと分かるとうれしくなった。すぐに枝を集めたが、濡れていて燃えない。残念に思い、座って火を見つめた。熱のそばに置いた濡れ木が乾き、やがて燃え上がった。それを見て枝に触れ、違いを確かめた私は、大量の木を集めて乾かし、火を絶やさないようにしようとした。夜になって眠気が訪れると、火が消えてしまわないかひどく心配になった。乾いた木と葉を丁寧にかぶせ、その上に濡れた枝を置いた。それから外套を広げて地面に横たわり、眠った。
「目覚めると朝で、真っ先に火を確かめた。覆いを取り除くと、そよ風に吹かれてすぐ炎が上がった。これも覚えておき、枝で扇ぐ道具を作って、火が消えかけたときに炭を燃え立たせた。再び夜が来ると、火が熱だけでなく光も与えることが分かり、喜んだ。火の発見は食べ物にも役立った。旅人が残した食べ物のかけらが焼けていて、木から採った実よりずっとおいしかったのだ。そこで私も食べ物を炭の上に置いて焼いてみた。実はまずくなったが、木の実や根はずっとおいしくなった。
「しかし食べ物が乏しくなり、空腹を和らげるどんぐりを数個探すために、一日じゅう歩き回っても見つからないことがよくあった。こうなると、これまで住んだ場所を離れ、少ない欲求をもっと簡単に満たせる所を探そうと決めた。偶然手に入れた火を失うのはつらかったが、起こし方を知らない。何時間も真剣に考えたが、代わりの火を手に入れる方法は思いつかず、諦めるほかなかった。外套にくるまり、日の沈む方角へ森を横切って進んだ。三日さまよった末、ようやく開けた土地に出た。前の晩に大雪が降り、野原は一面真っ白だった。寂しい眺めで、地面を覆う冷たく湿ったものに足が凍えた。
「朝の七時頃だった。食べ物と雨風をしのぐ場所が欲しかった。やがて、小高い所に小さな小屋が見えた。羊飼いが使うために建てられたものだろう。初めて見る建物に興味を引かれ、よく調べた。戸が開いていたので中に入ると、老人が火のそばに座り、朝食を作っていた。物音に振り向いた老人は、私を見るなり大声で叫び、小屋を飛び出して野原を走り去った。弱った体からは想像もできない速さだった。それまで見た誰とも違う姿と、その逃げようには、いささか驚かされた。だが小屋の中はすばらしかった。雪も雨も入らず、地面は乾いている。火の湖で苦しんだ地獄の悪魔たちにとって万魔殿[訳注:『失楽園』に登場する、地獄の悪魔たちの宮殿]がそう見えたように、私には神聖で見事な避難場所に思えた。羊飼いの朝食の残りをむさぼり食べた。パン、チーズ、牛乳、ワインだったが、ワインは好きになれなかった。それから疲れに負け、藁の上に横たわって眠った。
「目覚めたのは正午だった。白い地面を明るく照らす陽光の暖かさに誘われ、再び旅を続けることにした。見つけた袋に朝食の残りを入れ、野原を何時間も歩いた。日暮れに村へ着くと、その眺めが奇跡のように思えた。粗末な小屋、整った家、堂々とした邸宅――どれにも順に見とれた。庭の野菜や、家々の窓辺に置かれた牛乳とチーズにも食欲をそそられた。私は立派な家の一つに入ったが、戸口に足を踏み入れるや子供たちが悲鳴を上げ、女の一人が気を失った。村じゅうが騒ぎになり、逃げる者もいれば、私を襲う者もいた。石やさまざまなものを投げつけられてひどい傷を負い、ようやく村を抜け出すと、恐怖に震えながら、低く粗末な物置に身を隠した。村で見た宮殿のような家々に比べ、みすぼらしい場所だった。すぐ隣には清潔で心地よさそうな家があったが、痛い目を見たばかりなので、入る勇気はなかった。隠れ家は木で造られ、座って背を伸ばすのもやっとの低さだった。床は板張りではなく土のままだが、乾いていた。無数の隙間から風が入っても、雪や雨を避けられるありがたい場所だった。
「こうして私は、どれほど粗末でも、寒さと、何より人間の残酷さを避けられる場所を見つけたことを喜び、そこに横になった。夜が明けるとすぐに寝ぐらから這い出し、隣の家を眺めて、この隠れ家に住み続けられそうか確かめた。物置は家の裏に接し、外に面した両側には豚小屋と澄んだ水の池があった。一方は開いていて、私はそこから入り込んだ。だが今度は、人目につきそうな隙間を石や木でふさいだ。必要なときは動かして外へ出られるようにした。光は豚小屋の方からしか入らなかったが、それで十分だった。
「住まいを整え、きれいな藁を敷き詰めると、私は奥へ引っ込んだ。遠くに人影が見え、前夜の仕打ちを思えば、その人に見つかるわけにはいかなかった。ただ、その日の食べ物だけは先に確保していた。粗いパンを一つこっそり取ってきていたし、隠れ家のそばを流れる清らかな水を、手より飲みやすくすくえるように、コップも手に入れた。床は少し高くなっていてすっかり乾いており、家の煙突に近いので、ほどよく暖かかった。
「ひとまず必要なものはそろったので、気が変わるようなことが起きるまで、この物置に住もうと決めた。雨の滴る枝と湿った地面のある、以前の荒涼とした森に比べれば、まさに楽園だった。私は喜んで朝食を食べ、水を汲むため板を一枚外そうとした。そのとき足音が聞こえ、小さな隙間からのぞくと、頭に桶を載せた若い人が物置の前を通っていくのが見えた。少女は若く、物腰が柔らかかった。あとで知ることになる田舎の家々の娘や農家の使用人とは違っていた。もっとも、身なりは質素で、粗い青いスカートと麻の上着しか着ていない。金色の髪は編んでいたが飾りはなく、辛抱強そうで、どこか悲しげだった。姿が見えなくなり、十五分ほどすると、牛乳がいくらか入った桶を持って戻ってきた。重そうに歩いていると、若い男が出会った。その顔には、少女よりも深い落胆が表れていた。男は沈んだ調子で何か声をかけ、少女の頭から桶を下ろし、自分で家まで運んだ。少女があとに続き、二人は見えなくなった。やがて男が道具を手に、家の裏の畑を横切るのが見えた。少女も家や庭で忙しく働いていた。
「隠れ家を調べると、その一角はもともと隣家の窓だったらしく、窓枠が木でふさがれていた。その木の一枚に、目を寄せれば中が見えるほどの、ごく小さな隙間があった。白く塗られた清潔な部屋が見えたが、家具はほとんどなかった。隅の小さな火のそばで、老人が両手に頭を預け、途方に暮れたように座っていた。少女は部屋を片づけていたが、やがて引き出しから何かを取り出し、手を動かしながら老人の隣に座った。老人が楽器を取り上げて弾き始めると、鶫や夜鳴き鶯の声よりも美しい音が流れた。それまで美しいものを見たことのなかった哀れな私にとってさえ、愛らしい光景だった。銀髪と優しい顔をした老人には敬意を覚え、少女の穏やかな振る舞いには心を引かれた。老人が甘く悲しい曲を弾くと、少女の目に涙が浮かんだ。老人は気づかなかったが、声を上げてすすり泣き始めると、何か言葉をかけた。少女は手を止め、老人の足元にひざまずいた。老人は立たせ、優しさと愛情に満ちた笑顔を向けた。すると、私の中にこれまでにない強い感情が湧き上がった。痛みと喜びが混ざったようで、空腹や寒さ、暖かさや食べ物から感じたどんなものとも違う。私はその気持ちに耐えられず、窓から離れた。
「まもなく若い男が薪を背負って帰ってきた。少女は戸口で迎えて荷を下ろすのを手伝い、一部を家の中へ運んで火にくべた。それから二人で部屋の片隅へ行き、男は大きなパンとチーズを少女に見せた。少女はうれしそうに庭から根菜や草を採ってきて、水に浸し、火にかけた。その後も少女は家事を続け、男は庭に出て、土を掘り、根を抜く仕事に励んだ。一時間ほどして少女も加わり、二人で家へ入った。
「そのあいだ老人は物思いに沈んでいたが、二人が戻ると明るい様子になり、皆で食事をした。食事はすぐに済み、少女はまた家を片づけ始めた。老人は若者の腕にすがり、家の前の日なたを数分間歩いた。この二人ほど、美しい対照をなす者はいなかった。老人は銀髪で、顔には優しさと愛情が輝いていた。若者は細身で優雅、顔立ちは整っていたが、目つきや姿勢には深い悲しみと落胆が表れていた。老人が家へ戻ると、若者は朝とは違う道具を持って畑を横切っていった。
「すぐに夜になった。すると驚いたことに、家の人々はろうそくを使って明かりを保った。日が沈んでも、人間の隣人たちを眺める楽しみが終わらないと分かり、私はうれしかった。夜、少女と若者は、私には分からないいろいろな仕事をしていた。老人はまた楽器を取り上げ、朝に私を魅了した、神々しい音を奏でた。演奏が終わると、若者が声を出し始めた。歌でも演奏でもなく、老人の楽器の調べや鳥の歌とも似ていない、単調な音だった。のちに朗読だと分かったが、その頃の私は言葉や文字の仕組みを何も知らなかった。
「家族はしばらくそうして過ごしたあと、明かりを消した。眠りについたのだろうと思った。」
第十二章
「私は藁の上に横たわったが、眠れなかった。その日の出来事を考えていた。何より印象に残ったのは、あの人たちの穏やかな振る舞いだった。仲間に加わりたいと切望したが、勇気が出ない。前夜、村人たちから受けた残酷な仕打ちを忘れられなかった。いずれどうするにせよ、当面は物置で静かに過ごし、彼らを観察して、その行動の理由を知ろうと決めた。
「翌朝、家の人々は日の出前に起きた。若い女が家を整えて食事を用意し、若者は朝食後に出かけた。
「その日も前日と同じように過ぎた。若者はずっと外で働き、少女は家の中でさまざまな骨の折れる仕事をした。老人は、じきに目が見えないのだと分かったが、暇な時間を楽器の演奏や物思いに費やしていた。若い二人が老人に示す愛情と敬意は、このうえなく深かった。細かな世話や務めをすべて優しくこなし、老人は慈愛に満ちた笑顔で応えた。
「だが、彼らは心から幸せというわけではなかった。若者と少女は、よく二人だけになって泣いているようだった。理由は分からないが、私も深く心を痛めた。こんなにすばらしい人たちでさえ不幸なら、不完全で孤独な私が惨めなのも不思議ではない。それにしても、なぜ彼らは悲しいのか。私の目には心地よい家があり、必要なものは何でもそろっていた。寒ければ火で暖まり、腹が減ればおいしそうな食事をする。立派な服を着て、何より、毎日言葉を交わし、優しい眼差しを向け合っていた。あの涙は何を意味するのだろう。本当に苦しみの涙なのか。初めは分からなかったが、注意深く見続けるうち、謎だったことが少しずつ明らかになった。
「この愛すべき家族の悩みの一つが分かるまでには、かなり時間がかかった。貧しさだった。しかも、ひどく苦しんでいた。食べ物は庭で採れる野菜と、一頭の牛の乳だけだった。冬にはその牛に食べさせる餌を確保するのさえ難しく、乳もほとんど出なかった。彼らはしばしば強い空腹に苦しんでいたと思う。とりわけ若い二人は、何度も自分たちの分を残さず、老人の前に食べ物を置いていた。
「その優しさに私は胸を打たれた。それまでは夜になると、蓄えの一部を盗んで食べていた。だが、それが彼らを苦しめていると知ってからはやめ、近くの森で採った実や木の実、根で腹を満たした。
「彼らの仕事を助ける、別の方法も見つけた。若者は毎日の多くを薪集めに費やしていた。そこで私は夜、彼の道具を借りた。使い方はすぐに分かったので、何日分もの薪を集めて家のそばに運んでおいた。
「初めてそうした翌朝のことを覚えている。戸を開けた少女は、外に大きな薪の山を見つけて、たいそう驚いた。大きな声で何か言うと若者も出てきて、同じように驚いた。うれしいことに、その日、若者は森へ行かず、家の修繕と庭の手入れに時間を使った。
「やがて、さらに大切なことに気づいた。彼らははっきりした音を発し、経験や気持ちを互いに伝えていたのだ。話す言葉によって、聞いた人の心や顔に、喜びや苦痛、笑顔や悲しみが生まれることが分かった。まさに神のような技で、私はどうしても身につけたかった。だが、試みはことごとく失敗した。彼らの話し方は速く、発する言葉と目に見えるものとの結びつきも分からない。何を指す言葉なのか、謎を解く手がかりがなかった。それでも懸命に取り組み、月が何度か満ち欠けするあいだ物置で暮らすうちに、よく話題に出るものの名前が分かってきた。火、牛乳、パン、木という言葉を覚え、使えるようになった。家族の呼び名も覚えた。若者と少女にはそれぞれ呼び名がいくつかあったが、老人には父さんという呼び名だけだった。少女は姉さんやアガサ、若者はフェリックス、兄さん、あるいは息子と呼ばれていた。それぞれの音が何を表すか分かり、自分でも言えるようになったときの喜びは、言葉にできない。まだ意味も使い方も分からないながら、優しい、大切な、不幸なといった言葉も聞き分けられた。
「そうして冬を過ごした。家族の穏やかな振る舞いと美しさを見ているうちに、私は彼らを深く愛するようになった。彼らが悲しめば私も落ち込み、喜べば私も喜んだ。ほかの人間はほとんど見なかったが、たまに家を訪れる人の荒い態度や無作法な足取りを見ると、友人たちの立派さがいっそう際立った。老人は、子供たちと呼ぶこともある若い二人を、よく励ましていた。明るい声で、私までうれしくなるほど優しい表情をして話す。アガサは敬意をもって聞き、ときに涙を浮かべ、気づかれないように拭っていた。それでも父親の言葉を聞いたあとは、たいてい顔つきも声も明るくなった。フェリックスは違った。三人の中でいつもいちばん悲しそうで、人の気持ちに疎い私にも、ほかの二人より深く苦しんでいるのが分かった。だが、顔がより悲しげな分、声は姉より明るかった。とくに老人に話しかけるときはそうだった。
「この愛すべき家族の人柄を示す、小さな出来事なら数えきれないほど話せる。貧しさの中でも、フェリックスは雪の下から顔を出した最初の白い花を、うれしそうに姉へ持っていった。朝早く、姉が起きる前に牛乳を置く小屋への道の雪を除き、井戸から水を汲み、薪小屋から薪を運んだ。薪がいつも見えない手によって補充されているのが、彼には不思議でならないようだった。昼間は近くの農家で働くこともあったらしい。出かけて昼食まで戻らず、薪も持ち帰らない日がよくあったからだ。庭で働くこともあったが、霜の降りる季節には仕事が少なく、老人とアガサに本を読んで聞かせていた。
「その朗読は、初めはさっぱり分からなかった。だが次第に、読むときにも話すときと同じ音をたくさん発していると気づいた。紙の上に、言葉を表す印が並んでいるのだと推測し、それも理解したくてたまらなくなった。けれど、印が表す言葉さえ十分に分からないのに、どうすればよいのか。それでも言葉は目に見えて上達した。ただ、力を尽くしても会話を追えるほどにはならなかった。家族の前に姿を現したくてたまらなかったが、まず言葉を使いこなせるようになるまで待つべきだと分かっていた。話ができれば、姿の醜さにも目をつぶってもらえるかもしれない。その醜さは、毎日彼らと自分を見比べることで、思い知らされていた。
「私は家族の整った姿、優雅さ、美しさ、きれいな肌に見とれていた。だが、澄んだ池に映る自分の姿を見たときの恐怖といったら! 最初は驚いて飛びのき、水面に映るのが自分だとは信じられなかった。やがて、あれこそ本当の自分であり、自分が怪物だと確信すると、絶望と屈辱のあまり、胸が張り裂けそうになった。ああ、その醜さがもたらす破滅的な結果を、まだ十分には知らなかったのだ。
「日差しが暖かくなり、昼が長くなると雪が消え、葉を落とした木々と黒い土が現れた。フェリックスは前より忙しくなり、飢えが迫る気配はなくなった。あとで分かったが、彼らの食事は粗末でも体によく、十分な量が手に入るようになっていた。庭には新しい草木がいくつも芽吹き、彼らはそれを料理した。季節が進むほど、暮らしは日ごとに豊かになった。
「雨が降らない日の正午には、老人は息子の腕にすがって散歩した。空から水が降ることを、彼らは雨と呼んでいた。雨はしばしば降ったが、強い風がすぐに土を乾かし、季節はそれまでよりずっと心地よくなった。
「物置での暮らしは単調だった。朝は家族の動きを見守り、それぞれが仕事に散ると眠った。あとの時間は友人たちを眺めて過ごした。皆が寝静まったあと、月が出ているか、星明かりがあれば森へ行き、自分の食べ物と家族の薪を集めた。戻ると、必要に応じて道の雪を除き、フェリックスがしていた細かな仕事を済ませた。のちに、見えない手が行うそうした仕事に、彼らがひどく驚いていたと分かった。何度か、善い精霊、不思議だと言うのを聞いたが、そのときは意味が分からなかった。
「私の思考は以前より活発になり、このすばらしい人たちの気持ちや、行動の理由を知りたいと思った。なぜフェリックスはあれほど惨めそうで、アガサはあんなに悲しげなのか。愚かなことに、私はこの立派な人たちに幸せを取り戻してあげられるかもしれないと思った。眠っているときも、どこかへ出かけているときも、敬うべき盲目の父親、優しいアガサ、立派なフェリックスの姿が目に浮かんだ。彼らを、私の運命を決める高貴な存在だと思っていた。姿を見せる場面や迎えられ方を、幾通りも想像した。初めは嫌がられるだろう。だが、穏やかな態度と言葉で、まず好意を得て、やがて愛してもらえる。そう夢見た。
「その思いに励まされ、私は新たな熱意で言葉を学んだ。私の声は荒かったが、口や舌は思いどおりに動いた。彼らの柔らかな声にはまるで似ていなくても、意味を覚えた言葉なら、それなりに容易に発音できた。私と彼らは、ロバと愛玩犬のようなものだった。だが、振る舞いは不器用でも愛情を抱いている優しいロバには、打たれたり罵られたりするよりましな扱いがふさわしいはずだ。
「心地よい春の雨と暖かさは、大地の姿を一変させた。それまで洞窟に隠れていたように見えた人々が外へ出て、さまざまな畑仕事を始めた。鳥は以前より楽しげに歌い、木々には若葉が芽吹いた。幸せな、幸せな大地! ほんの少し前まで寒々しく、湿って陰気だったのに、今や神々が住むにふさわしい場所になった。魅力に満ちた自然の眺めに心が高揚し、過去は記憶から消えた。現在は穏やかで、未来は希望と喜びへの期待に明るく彩られていた。」
第十三章
「ここからは、話の中でもひときわ心を揺さぶる部分へ急ごう。かつての私を今の私に変えた、さまざまな感情を呼び起こした出来事を話す。
「春は足早に進み、天気は穏やかで、空には雲がなかった。少し前まで荒れ果て、暗かった土地が、今は美しい花と緑に満ちている。その変わりようには驚いた。数えきれない芳しい香りと美しい眺めが、私の感覚を楽しませ、生き返らせた。
「家族がいつものように仕事を休む日のことだった。老人がギターを弾き、子供たちが聞いていた。私はフェリックスの顔が言い表せないほど悲しげなのに気づいた。彼は何度もため息をついた。父親が一度演奏を止めたので、その様子から、息子が悲しむ理由を尋ねたのだろうと思った。フェリックスは明るい調子で答え、老人がまた演奏を始めようとしたとき、誰かが戸を叩いた。
「馬に乗った女性が、土地の男を案内人にしてやって来た。女性は暗い色の服を着て、厚い黒いベールで顔を覆っていた。アガサが何か尋ねると、訪問者は甘い声でフェリックスの名を口にしただけだった。音楽のように美しい声だが、家族の誰の声とも違っていた。名を聞いたフェリックスは急いで近づいた。女性がベールを上げると、天使のように美しく、表情豊かな顔が現れた。艶のある漆黒の髪は凝った形に編まれ、暗い色の瞳は生き生きとしながらも穏やかだった。顔立ちは整い、驚くほど白い肌の両頬には、愛らしい薔薇色が差していた。
「彼女を見たフェリックスは、喜びに我を忘れたようだった。顔から悲しみが消え、そんな表情ができるのかと私が驚くほどの歓喜が、たちまち浮かんだ。目は輝き、頬は喜びに染まった。その瞬間、彼は訪問者に劣らず美しく見えた。女性の方は、さまざまな思いに揺れているようだった。美しい瞳から涙を拭い、フェリックスに手を差し出した。彼は夢中でその手に口づけし、聞き取れた限りでは『愛しいアラビアの人』と呼んだ。彼女には言葉が分からないようだったが、ほほ笑んだ。フェリックスは馬から降りるのを手伝い、案内人を帰して、家の中へ招き入れた。父親とのあいだに何か会話があり、若い訪問者は老人の足元にひざまずき、手に口づけしようとした。老人は彼女を立たせ、愛情深く抱き締めた。
「訪問者は言葉を話し、独自の言語を持っているようだったが、家族と意思を通じ合えず、家族の言葉も理解していないと、すぐに分かった。彼らは私には意味の分からない身ぶりを交わしていた。だが彼女の訪問によって、朝霧を払う太陽のように、家じゅうの悲しみが消え、喜びが広がったのが分かった。フェリックスはとりわけ幸せそうで、うれしそうな笑顔でアラビアの人を迎えていた。いつも優しいアガサは、美しい訪問者の手に口づけし、弟を指さして、彼女が来るまで弟が悲しんでいたと伝えているようだった。何時間もそうして過ぎ、彼らの表情には喜びがあふれていたが、その理由は私には分からなかった。やがて訪問者が、家族の発した音を何度も繰り返しているのに気づき、言葉を学ぼうとしていると分かった。私も同じ教えを利用すればよいと、すぐに思いついた。最初の勉強で、訪問者は二十語ほど覚えた。大半は私も知っている言葉だったが、知らない言葉をいくつか学べた。
「夜になると、アガサとアラビアの人は早めに寝に行った。別れ際、フェリックスは訪問者の手に口づけして、『おやすみ、愛しいサフィー』と言った。彼はずっと遅くまで起きて父親と話していた。何度も彼女の名が出たので、美しい客について話しているのだろうと思った。二人の言葉が分かりたくて、全神経を集中させたが、どうしても無理だった。
「翌朝フェリックスは仕事に出かけた。アガサがいつもの家事を終えると、アラビアの人は老人の足元に座り、彼のギターを手に取った。そして、あまりに美しい曲を弾いたので、悲しみと喜びの涙が同時に私の目からこぼれた。彼女は歌った。その豊かな声は、森の夜鳴き鶯のように高まり、静かに消えていった。
「歌い終えるとギターをアガサに渡したが、彼女は初め遠慮した。それから素朴な曲を弾き、甘い声を添えた。訪問者の驚くべき歌とは違っていた。老人は聞きほれ、何か言葉をかけた。アガサはそれをサフィーに説明しようとした。音楽が自分に大きな喜びを与えてくれた、と老人は伝えたかったようだ。
「それからの日々は、以前と同じように穏やかに過ぎた。ただ一つ違うのは、友人たちの顔で悲しみが喜びに変わったことだ。サフィーはいつも明るく幸せそうだった。彼女も私も急速に言葉を覚え、二か月後には、家族が話す言葉のほとんどを私も理解できるようになった。
「そのあいだに黒い土は草に覆われ、緑の土手には、香りも姿も美しい花が無数に咲いた。月夜の森に浮かぶ、淡く輝く星のようだった。日差しは暖かく、夜は澄んで穏やかになり、夜ごとの散歩はこのうえない楽しみとなった。ただし、日が暮れるのが遅く、昇るのが早くなったため、歩ける時間はかなり短くなった。最初に入った村で受けた仕打ちを恐れ、明るいうちに外へ出る気にはなれなかった。
「日中は一刻も早く言葉を使いこなせるよう、熱心に聞き続けた。自慢してもよいなら、私はアラビアの人より早く上達した。彼女はまだほとんど理解できず、たどたどしく話していたのに、私は人々の言葉をほぼすべて理解し、まねることができた。
「話し言葉とともに、訪問者が教わる文字も学んだ。それによって、驚きと喜びに満ちた広い世界が目の前に開けた。
「フェリックスがサフィーに教えるのに使った本は、ヴォルネーの『帝国の廃墟』だった。彼が読みながら細かな説明を加えなければ、内容は理解できなかっただろう。東方の著述家にならった雄弁な文体だからこの本を選んだのだと、彼は言っていた。この本から歴史を大まかに知り、今の世界に存在する諸帝国の姿を学んだ。国々の風習、政治、宗教についても知った。怠惰なアジアの人々、ギリシャ人の驚くべき才能と知性、初期のローマ人の戦いとすばらしい美徳、のちの堕落と大帝国の衰退。騎士道、キリスト教、王たち。アメリカ大陸の発見についても聞き、先住民の悲惨な運命にサフィーとともに涙した。
「驚くべき話の数々は、奇妙な感情を呼び起こした。人間は本当に、あれほど力強く、高潔で立派でありながら、同時にあれほど邪悪で卑劣なのか。あるときは悪そのものから生えた枝のようであり、またあるときは考えうる限り気高く、神々しいものに見えた。偉大で高潔な人になることは、感情を持つ存在に与えられる最高の名誉に思えた。歴史に記された多くの人々のように卑劣で邪悪になるのは、目の見えないモグラや無害な虫よりも惨めな、最も深い堕落だった。長いあいだ、どうして人が同じ人間を殺しに行けるのか、なぜ法律や政府が必要なのかさえ理解できなかった。だが、悪行や流血の詳しい話を聞くと、驚きは消え、嫌悪に顔を背けた。
「家族の会話は、そのたびに新しい驚きをもたらした。フェリックスがアラビアの人に教えるのを聞きながら、人間社会の奇妙な仕組みを知った。財産の分配、途方もない富と悲惨な貧困、身分、家系、高貴な血筋のことを聞いた。
「そうした言葉から、自分のことを考えた。人間が最も重んじるのは、富を伴った、汚れのない高い家柄だと知った。どちらか一方だけでも尊敬されることはある。だが両方ともなければ、ごくまれな例外を除き、浮浪者か奴隷のように見なされ、選ばれた少数の利益のために力を使い果たす運命にあるという。では私は何者なのか。自分がどう造られ、造り主が誰かもまったく知らなかった。だが、金も友人も財産もないことは分かっていた。そのうえ醜く、見るに堪えない姿をしており、人間と同じ性質ですらない。人間より素早く動き、粗末な食べ物で生きられ、厳しい暑さや寒さにも耐えられた。背丈も人間をはるかに超えている。辺りを見回しても、私に似た者は見えず、話にも聞かなかった。私は怪物なのか。誰もが逃げ、誰も仲間と認めない、この世の汚点なのか。
「そんな思いがどれほど私を苦しめたか、言葉では伝えられない。追い払おうとしたが、知れば知るほど悲しみは増した。ああ、生まれた森にずっといて、空腹や渇きや暑さ以外、何も知らず、感じずにいられたなら!
「知識とは何と奇妙なものだろう。いったん心に取りつくと、岩に張りつく地衣類のように離れない。考えることも感じることも、すべて振り払いたいと思うときがあった。だが、痛みをなくす方法は死しかないと知った。死を恐れてはいたものの、それが何かを理解してはいなかった。私は美徳や善い感情を敬い、家族の穏やかな振る舞いと愛すべき人柄を愛していた。けれど、こっそり盗み見ることを除けば、彼らと関わる道は閉ざされていた。見られず、知られずに得るものは、仲間になりたいという願いを満たすどころか、強めるだけだった。アガサの優しい言葉も、魅力的なアラビアの人の生き生きした笑顔も、私に向けられたものではない。老人の穏やかな励ましも、愛しいフェリックスの陽気な会話も、私のためではない。何と惨めで、不幸な存在なのだろう!
「さらに深く心に刻まれた教えもあった。男と女の違い、子供が生まれて育つことを知った。父親が幼子の笑顔や、育った子の活発な言葉をどれほど愛おしむか。母親が大切な子のために、生涯をかけて心を砕くこと。若者が心を育み、知識を得ること。兄弟姉妹をはじめ、人と人を結ぶさまざまな絆について知った。
「では、私の友人や家族はどこにいる? 幼い私を見守った父も、笑顔と抱擁を与えた母もいない。いたとしても、過去は何も見えない空白で、ひとつの記憶も残っていない。最も古い記憶の中から、私はすでに今と同じ背丈と体つきだった。自分に似た存在にも、私と関わりを持とうとする者にも、まだ出会ったことがない。私は何者なのか。問いは何度もよみがえり、答えはうめき声になるばかりだった。
「この思いが私をどこへ導いたかは、すぐに話そう。今は家族の話に戻らせてくれ。彼らの来歴を知って、私は怒りや喜び、驚きなど、さまざまな感情を抱いた。そのすべてが、私が勝手に『守ってくれる人たち』と呼んでいた彼らへの、いっそう深い愛と敬意につながった。そう呼ぶことは、無邪気で、少し悲しい思い込みだったのだが。」
第十四章
「友人たちの過去を知るまでには、しばらくかかった。世間を何も知らない私にとって、そこで明らかになる出来事はどれも興味深く、驚くべきもので、心に深く刻まれずにはいなかった。
「老人の名はド・レイシー。フランスの由緒ある家の出で、長年豊かに暮らし、目上の人々からは敬われ、対等な人々からは愛されていた。息子は国に仕える者として育ち、アガサも身分の高い婦人たちと肩を並べていた。私が来る数か月前まで、彼らはパリという大きく華やかな都に住み、友人たちに囲まれ、ほどよい財産と美徳と知性と趣味がもたらす、あらゆる喜びを享受していた。
「一家を破滅させた原因はサフィーの父親だった。トルコ人の商人で、長くパリに住んでいたが、私には分からない理由で政府に目をつけられた。サフィーがコンスタンティノープルから父に会いに来たまさにその日、捕らえられて投獄された。裁判の末、死刑判決を受けた。判決の不当さは明白で、パリじゅうが憤った。実際には、問われた罪よりも、宗教と財産のために死刑にされたのだろうと言われていた。
「フェリックスは偶然その裁判に立ち会っていた。判決を聞いたときの恐怖と憤りを抑えられず、その場で商人を救うと固く誓い、方法を探し始めた。牢に入ろうとして何度も失敗したあと、見張りのいない場所に、丈夫な格子のはまった窓を見つけた。それは不幸なイスラム教徒が、鎖につながれ、残酷な刑の執行を絶望のうちに待つ独房の窓だった。フェリックスは夜に格子を訪ね、助けたいと囚人に告げた。驚き喜んだトルコ人は、報酬と富を約束し、彼の熱意をさらに高めようとした。フェリックスはその申し出を軽蔑して退けた。だが、父を訪ねることを許された美しいサフィーが、身ぶりで心からの感謝を示すのを見たとき、彼は心の中で認めずにいられなかった。囚人には、どんな危険や苦労にも報いる宝がある、と。
「トルコ人は、娘がフェリックスの心をとらえたことをすぐに悟った。安全な場所へ逃がしてくれたらサフィーを妻に与えると約束し、いっそう彼を味方につけようとした。フェリックスは慎み深さから申し出を受けなかったが、その実現を、自分の幸福が完成する日として待ち望んだ。
「その後、商人の脱出準備を進めるあいだ、フェリックスは美しい娘から何通もの手紙を受け取り、救出への熱意を強めた。サフィーは、フランス語の分かる父の老僕の助けを借りて、恋人の言葉で思いを伝えた。父を救おうとしてくれることに熱烈な感謝を述べながら、自分の境遇を控えめに嘆いていた。
「その手紙の写しを私は持っている。物置に住んでいたあいだに筆記具を手に入れ、手紙がよくフェリックスかアガサの手元にあったので、写すことができた。別れる前に渡そう。私の話が本当だと分かるだろう。ただ、日はもうだいぶ傾いた。今は内容をかいつまんで話すだけにする。
「サフィーの母親はキリスト教徒のアラブ人で、トルコ人に捕らえられ、奴隷にされていた。その美しさでサフィーの父の心を射止め、妻となった。サフィーは母親を熱っぽく称えていた。自由の身に生まれた母は、強いられた隷属を軽蔑していた。娘に自分の宗教を教え、イスラム教徒の女性には禁じられている高い知性と独立した精神を求めるよう育てた。母親は亡くなったが、教えはサフィーの心に消えずに残った。アジアへ戻り、後宮の壁の内側に閉じ込められ、幼稚な楽しみだけを許される将来を思うと、耐えられなかった。彼女の心はすでに、高い理想と、美徳を目指して努力する気高さを知っていた。キリスト教徒と結婚し、女性にも社会での地位が認められる国にとどまる未来は、魅力的だった。
「トルコ人の処刑日が決まったが、その前夜に彼は牢を脱し、朝までにパリから何リーグも離れた。フェリックスは父と姉と自分の名で通行証を用意していた。あらかじめ父にも計画を伝え、父は旅に出るふりをして家を離れ、娘とともにパリの人目につかない場所に身を隠し、偽装に協力した。
「フェリックスは逃亡者たちを率い、フランスを通ってリヨンへ、さらにモン・スニを越えてリヴォルノまで向かった。商人はそこで、トルコ領へ渡る好機を待つつもりだった。
「サフィーは父が出発するまでそばにいることにした。父は出発前に、彼女を救出者と結婚させるという約束を繰り返した。フェリックスもそれを待って滞在し、アラビアの人と過ごす日々を楽しんだ。彼女は飾り気のない深い愛情を彼に示した。二人は通訳を介し、ときには眼差しの意味を読み合って語り合い、サフィーは故郷の神々しい歌を聞かせた。
「トルコ人は二人の親しさを許し、若い恋人たちの希望を育てた。だが心の中では、まったく別の計画を立てていた。娘がキリスト教徒と結婚するなど、考えるのも嫌だった。しかし、冷淡な態度を見せてフェリックスの怒りを買うのも恐ろしかった。フェリックスがその気になれば、滞在先のイタリアの当局に密告できると分かっていたからだ。必要がなくなるまで欺き続け、出発するときに娘をひそかに連れ去る方法を、あれこれ考えていた。パリから届いた知らせは、その計画を進めやすくした。
「フランス政府は、囚人を逃がされたことに激怒し、救出者を見つけて罰するため、あらゆる手を尽くした。フェリックスの計画はすぐに露見し、ド・レイシーとアガサが牢に入れられた。知らせを聞いたフェリックスは、幸福な夢からたたき起こされた。盲目の老父と優しい姉が不潔な牢に閉じ込められているのに、自分は自由な空気を吸い、愛する人と一緒にいる。その思いが彼を責め苛んだ。フェリックスはトルコ人と急いで取り決めをした。自分がイタリアに戻る前に商人が逃げられるなら、サフィーはリヴォルノの修道院に寄宿して待つことになった。それから愛しいアラビアの人に別れを告げ、パリへ急ぎ、自ら法の裁きを受けに行った。それでド・レイシーとアガサを自由にできると願っていた。
「だが願いは叶わなかった。三人は裁判まで五か月間閉じ込められた末、財産を没収され、祖国から永久追放となった。
「彼らが見つけた惨めな避難先が、私の出会ったドイツの家だった。やがてフェリックスは、彼と家族がこれほどひどい仕打ちを受ける原因となった、恩知らずのトルコ人のことを知った。救出者が貧困と破滅に陥ったと分かると、商人は義理も名誉も捨て、娘を連れてイタリアを去ったのだ。そのうえフェリックスには、今後の生活の足しにと称して、わずかな金を侮辱するように送りつけてきた。
「私が初めて見たとき、フェリックスが家族の中で誰よりも惨めだったのは、その出来事が心をむしばんでいたからだ。貧しさだけなら耐えられただろう。善い行いの報いとして苦しむなら、誇りさえ持てたはずだ。だが、トルコ人の忘恩と、愛するサフィーを失ったことは、もっと苦く、取り返しのつかない不幸だった。そこへアラビアの人が現れ、彼の心に新たな命が吹き込まれた。
「フェリックスが財産と地位を失った知らせがリヴォルノに届くと、商人は娘に、恋人のことは忘れて祖国へ帰る支度をしろと命じた。心の広いサフィーには、その命令が許せなかった。父に言い返そうとしたが、父は怒って部屋を去り、横暴な命令を繰り返した。
「数日後、トルコ人は娘の部屋に入ると、急いで告げた。リヴォルノにいることが知られ、間もなくフランス政府へ引き渡されそうだというのだ。そのためコンスタンティノープルへ向かう船を借り、数時間後には出航するという。娘は信頼できる使用人に預け、まだリヴォルノに届いていない財産の大部分とともに、都合のよいときに後を追わせるつもりだった。
「一人になると、サフィーはこの事態にどう対処すべきか考えた。トルコで暮らすことは、宗教にも気持ちにも反していた。偶然手に入った父の書類から、恋人が追放されたことと、今いる場所の名を知った。しばらく迷った末、心を決めた。自分の宝石と金をいくらか持ち、リヴォルノ生まれでトルコで広く使われる言葉が分かる付き添いの女性とともに、イタリアを発ってドイツへ向かった。
「ド・レイシーの家から二十リーグほどの町までは、無事に着いた。そこで付き添いが重い病に倒れた。サフィーは献身的に看病したが、かわいそうな女性は亡くなった。アラビアの人は、土地の言葉も世間の習わしも分からぬまま、一人きりになった。だが幸い、親切な人々に出会えた。付き添いのイタリア人が行き先の地名を話していたので、彼女が亡くなったあと、滞在先の女主人が、サフィーを恋人の家まで無事に送り届けてくれた。」
第十五章
「愛する家族の来歴は以上だ。その話は私に強い印象を残した。そこから人間社会を知り、彼らの美徳を敬い、人間の悪を憎むようになった。
「その頃の私にとって、犯罪はまだ遠い世界の災いだった。目の前にはいつも思いやりと寛大さがあり、すばらしい資質がいくつも発揮される、人々の営みに加わりたいという願いをかき立てていた。だが、自分の心がどう育ったかを話すには、同じ年の八月初めに起きたことを省くわけにはいかない。
「ある夜、いつものように近くの森へ、自分の食べ物と家族の薪を集めに行くと、地面に革の旅行鞄が落ちていた。中には衣類や本が何冊か入っていた。私は喜んで拾い、物置へ持ち帰った。幸運にも、本は家族から学んだ言葉で書かれていた。『失楽園』、『プルタルコス英雄伝』の一巻、そして『若きウェルテルの悩み』だった。宝物を手に入れた喜びは大きかった。家族がいつもの仕事をしているあいだ、私は絶えず読み、書かれた物語について考えた。
「本が私に与えた影響は、言葉ではなかなか説明できない。無数の新しい光景と感情を生み、ときには天にも昇る気持ちにしたが、それ以上に多くの場合、深い落胆へ沈めた。『若きウェルテルの悩み』には、素朴で胸を打つ物語の面白さだけでなく、さまざまな考えが交わされ、それまで私には分からなかった事柄に多くの光が当てられていた。考えても考え尽くせず、驚きが尽きなかった。そこで描かれる優しい家庭での暮らしと、自分のことだけに向けられていない高い理想や感情は、家族と過ごす中で見たことにも、私の胸から消えない願いにも、よく合っていた。だがウェルテル自身は、私が見たことも想像したこともないほど神々しい存在に思えた。気取ったところのない人柄が、深く心に染みた。死と自殺をめぐる議論には驚かされた。どちらの考えが正しいか判断はできなかったが、主人公に心を寄せ、その死の意味を十分には理解できないまま涙した。
「ただ、本を読むときは、書かれたことの多くを自分の気持ちや境遇に引き寄せた。本の登場人物や、私が会話を聞いてきた人々と、自分は似ているようで、奇妙に違っていた。共感し、ある程度理解もできたが、私の心はまだ形を成していなかった。私は誰にも頼らず、誰ともつながっていない。『立ち去る道は自由に開かれて』いて、私が消えても悲しむ者はいない。姿は醜く、体は巨人のように大きい。これは何を意味するのか。私は誰なのか。何なのか。どこから来て、どこへ行くのか。問いは繰り返し浮かんだが、答えは見つからなかった。
「持っていた『プルタルコス英雄伝』には、古代の共和国を築いた人々の生涯が収められていた。この本が私に与えた影響は、『若きウェルテルの悩み』とはまるで違った。ウェルテルの思いからは憂鬱と絶望を学んだが、プルタルコスからは気高い考えを学んだ。自分の惨めな思いの中から引き上げられ、昔の英雄たちを敬い、愛するようになった。読んでも、経験が足りず理解できないことは多かった。王国や広い国土、大河や果てしない海についての知識も曖昧だった。町や、大勢の人が集まる様子に至っては、何も知らなかった。家族の家が人間を学ぶ唯一の学校だったが、本には、さらに大きな人々の活動が描かれていた。公の仕事に携わり、人々を治め、あるいは殺す者たちのことを読んだ。美徳への強い憧れと、悪への嫌悪が湧き上がった。もっともその頃は、それらの言葉を喜びと苦痛に結びつける程度にしか理解していなかった。だから当然、ロムルスやテセウスよりも、平和を重んじる立法者のヌマ、ソロン、リュクルゴスを敬った。家族の穏やかで昔ながらの暮らしを見ていたため、その思いは心に深く根づいた。もし最初に知った人間が、栄光と殺戮に燃える若い兵士だったなら、私は違う感情に染まったかもしれない。
「だが『失楽園』は、また別の、はるかに深い感情を呼び起こした。手に入れたほかの本と同じく、私はこれを事実の記録として読んだ。全能の神が自ら造ったものと戦う姿は、考えうる限りの驚きと畏れを呼び起こした。境遇が似ていると感じるたび、登場する者たちを自分と比べた。アダムのように、私もほかの存在とのつながりを何も持たずに現れたようだった。だが、それ以外の境遇はまるで違った。彼は神の手から完全な存在として生まれ、幸せで恵まれ、造り主に特別に守られていた。より高い存在と語り合い、教えを受けることもできた。私は惨めで、無力で、一人きりだ。むしろサタンこそ私の姿に近いと、何度も思った。家族の幸福を見ると、彼と同じように、苦い嫉妬が胸に湧き上がったからだ。
「その思いをさらに強くすることがあった。物置に住み始めて間もなく、おまえの研究室から身につけてきた服のポケットに、何枚かの紙があるのを見つけた。初めは気に留めなかったが、文字を読めるようになった今、熱心に読み始めた。それは私が造られる前の四か月に、おまえがつけた日記だった。仕事の一つひとつの段階が細かく書かれ、家で起きたことも混じっていた。もちろん覚えているだろう。ここに持っている。私の呪われた誕生に関わることは、すべて記されていた。私を生み出した、忌まわしい出来事の一つひとつも。私の醜く、嫌悪を催す姿についても、おまえ自身の恐怖をありありと伝える言葉で、細部まで書かれていた。その言葉は私の恐怖も、消せないものにした。読んでいると吐き気がした。『命を得た、憎むべき日よ!』と私は苦しみのあまり叫んだ。『呪われた造り主め! なぜ、おまえ自身が嫌悪して顔を背けるほど醜い怪物を造った? 神は慈悲から、自分に似せて、美しく人を造った。だが私の姿は、おまえに似ているからこそ、いっそう恐ろしい、汚れた写しだ。サタンには仲間の悪魔たちがいて、敬い、励ましてくれた。私は一人きりで、誰にも嫌われている。』
「孤独と落胆のときには、そんな考えに沈んだ。だが家族の美徳や愛すべき優しさを思うと、彼らの立派さを私がどれほど敬っているか知れば、憐れみ、醜い姿にも目をつぶってくれるはずだと、自分に言い聞かせた。どれほど怪物じみた姿でも、情けと友情を求める者を、戸口から追い返すだろうか。少なくとも絶望はせず、運命を決める対面に向けて、できる限り備えようと決めた。成功があまりに大切だったので、失敗が恐ろしく、さらに数か月、試みを延ばした。それに、日々の経験を通じて理解力が伸びているのを感じ、もう少し学んでから会いたかった。
「そのあいだ、家にもいくつか変化があった。サフィーがいることで皆は幸せになり、暮らしにも前より余裕ができた。フェリックスとアガサは楽しみや会話に時間を使えるようになり、仕事には使用人の助けも得ていた。裕福には見えなかったが、満ち足りて幸せだった。彼らの心は静かで穏やかだったが、私の心は日ごとに騒がしくなった。知識が増えるほど、自分がどれほど惨めな、はぐれ者なのかはっきりした。確かに希望は持っていた。だが、水に映る自分の姿や月明かりに落ちる影を見るたび、はかない水面の像や揺れる影のように、希望は消えた。
「私は不安を押しつぶし、数か月後に挑むつもりの試練に備えようとした。ときには理性に止められず、思いを楽園の野へさまよわせた。愛らしい、美しい者たちが私の気持ちに寄り添い、暗い心を慰めてくれると空想することもあった。天使のような顔に、慰めの笑みが浮かんでいた。だが、すべて夢だった。悲しみを鎮め、思いを分かち合うイヴはどこにもいない。私は一人だった。アダムが造り主に願ったことを思い出した。だが、私の造り主はどこにいる? 私を捨てたのだ。私は胸の苦しさのあまり、おまえを呪った。
「そうして秋が過ぎた。葉が枯れ落ち、初めて森と美しい月を見た頃のように、自然がまた寒々と荒れた姿に戻るのを、驚きと悲しみのうちに眺めた。それでも寒さは気にならなかった。私の体は暑さより寒さに耐えるのに向いていた。けれど私が何より好きだったのは、花や鳥、夏の明るい装いだった。それらが去ると、家族をいっそう熱心に見つめるようになった。夏が終わっても、彼らの幸福は薄れなかった。愛し合い、互いの気持ちを分かち合う彼らの喜びは、周囲の変化に左右されない。見れば見るほど、彼らの保護と優しさを求める気持ちは強くなった。この愛すべき人々に知ってもらい、愛してもらいたい。優しい眼差しを私に向けてほしい。それが望みのすべてだった。彼らが侮蔑と恐怖に満ちた目を向けるなど、考えたくもなかった。家の前で足を止める貧しい人を、彼らは決して追い返さなかった。もちろん、私が求めるものは、少しの食べ物や休む場所より大きかった。優しさと共感を求めていたのだ。それでも私は、まったくふさわしくないとは思わなかった。
「冬が進み、私が命を得てから季節が一巡した。その頃の私は、どうやって家族の住まいに入り、姿を見せるかだけを考えていた。いくつも計画を練り、最後に、盲目の老人が一人でいるときに家へ入ろうと決めた。これまで私を見た人々を恐怖させた一番の理由が、人間離れした醜さだとは分かっていた。声は荒いが、恐ろしいものではない。子供たちのいないときに老人のド・レイシーの好意を得て、間を取り持ってもらえれば、若い二人にも受け入れてもらえるかもしれないと思った。
「ある日、地面を覆う赤い葉に太陽が差し、暖かくはないものの明るい気分になる日だった。サフィーとアガサとフェリックスが遠くへ散歩に出かけ、老人は本人の希望で家に残った。子供たちが出ると、彼はギターを手に取り、悲しくも美しい曲を何曲か弾いた。いつもよりさらに甘く、悲しげな調べだった。初めは喜びに顔を輝かせていたが、弾くうちに物思いと悲しみが浮かんだ。ついには楽器を置き、考えに沈んで座った。
「私の胸は激しく鳴った。希望が叶うか、恐れが現実になるかを決める試練の時が来たのだ。使用人たちは近くの市へ出かけていた。家の中も周囲も静まり返り、絶好の機会だった。それなのに計画を実行しようとすると、手足から力が抜け、地面に倒れ込んだ。再び立ち上がり、持てる限りの気力を振り絞って、物置の入口を隠す板を外した。新鮮な空気に元気づけられ、決意を新たにして家の戸口へ近づいた。
「戸を叩いた。『どなたかな』と老人が言った。『お入りなさい。』
「私は入った。『突然お邪魔して申し訳ありません』と言った。『旅の者で、少し休みたいのです。火のそばに数分いさせていただければ、たいへん助かります。』
「『どうぞお入りなさい』とド・レイシーは言った。『できることがあれば力になろう。ただ、あいにく子供たちは留守で、私は目が見えない。食べ物を用意するのは難しいかもしれない。』
「『どうかお気遣いなく。親切なご主人、食べ物は持っています。必要なのは暖かさと、少しの休息だけです。』
「私は座り、沈黙が訪れた。一分一分が貴重だと分かっていたが、どう話し始めればいいか迷っていると、老人が声をかけた。
『言葉からすると、あなたは同郷の方かな。フランス人ですか。』
「『いいえ。でもフランス人の家族から教わったので、分かるのはその言葉だけです。今から、心から愛する友人たちに助けを求めに行くところです。受け入れてもらえる望みも少しあります。』
「『その人たちはドイツ人ですか。』
「『いいえ、フランス人です。でも、別の話をさせてください。私は不幸な、見捨てられた存在です。辺りを見ても、この世に家族も友人もいません。これから会いに行く優しい人たちは、私を見たことがなく、私のこともほとんど知りません。恐ろしいのです。そこで受け入れてもらえなければ、私は永遠にこの世で一人きりです。』
「『望みを捨ててはいけません。友人がいないのは、確かに不幸なことです。だが、人の心は、目先の利害に曇らされていなければ、同胞への愛と思いやりに満ちています。友人たちが善良で優しい人なら、希望を持ちなさい。』
「『優しい人たちです。この世で最も立派な人たちです。ただ、残念なことに、私に偏見を持っています。私は人を傷つけたいとは思いません。これまで誰にも害を与えず、少しは人の役にも立ってきました。それなのに、致命的な思い込みが彼らの目を曇らせる。気持ちのある優しい友人がそこにいるのに、忌まわしい怪物しか見えないのです。』
「『それはつらいことだ。だが、本当に身に覚えがないのなら、誤解を解けないでしょうか。』
「『これからそうしようと思っています。だから恐ろしくてならないのです。その人たちを心から愛しています。彼らに知られぬまま、何か月も毎日のように親切にしてきました。それでも、私が危害を加えると思われています。その偏見を取り除きたいのです。』
「『その友人たちはどこに住んでいるのですか。』
「『すぐ近くです。』
「老人は少し黙り、それから続けた。『事情を隠さずに話してくれれば、誤解を解く手伝いができるかもしれません。私は目が見えず、顔つきで人を判断できませんが、あなたの言葉には誠実なものを感じます。私は貧しい亡命者です。それでも、一人の人間の役に立てるなら、心からうれしい。』
「『何と立派な方だろう! ありがとうございます。ありがたい申し出に甘えます。あなたの優しさは、私を地の底から引き上げてくれました。力を貸していただければ、人々の仲間と情けから追い出されずに済むと信じたい。』
「『天がそんなことを許すものか。仮にあなたに本当に罪があっても、追い出せば絶望させるだけで、善い道へ導くことはできない。私も不幸な身です。家族ともども、罪がないのに罰を受けた。だから、あなたの苦しみが分かると思います。』
「『どうお礼を申し上げればいいのか。私にとって初めての、そしてただ一人の恩人です。優しい言葉を私に向けてくださったのは、あなたが初めてです。この恩は一生忘れません。あなたが人として接してくださったおかげで、これから会う友人たちにも受け入れられると信じられます。』
「『その友人たちの名前と住まいを教えてもらえますか。』
「私は言葉に詰まった。これを言えば、永遠の幸福を得るか、失うかが決まる。答える勇気を振り絞ろうとしたが、それで残った力まで尽きた。椅子に沈み込み、声を上げて泣いた。そのとき、若い家族たちの足音が聞こえた。もう猶予はない。私は老人の手をつかんで叫んだ。『今です! どうか助け、守ってください! 私が捜している友人は、あなたとご家族なのです。どうか、この大事なときに私を見捨てないで!』
「『何ということだ!』と老人は叫んだ。『あなたはいったい誰なのです。』
「その瞬間、家の戸が開き、フェリックス、サフィー、アガサが入ってきた。私を見た彼らの恐怖と驚きを、誰が言葉にできるだろう。アガサは気を失い、サフィーは友人を介抱する余裕もなく家から飛び出した。フェリックスは駆け寄ると、老人の膝にすがりつく私を、信じがたい力で引きはがした。怒り狂って私を床にたたきつけ、杖で激しく打った。私なら、獅子が羚羊を裂くように、彼の手足を引き裂けただろう。だが胸はひどい病にかかったように沈み、私は手を出さなかった。フェリックスがもう一度打とうとするのを見て、痛みと苦しみに耐えきれず、家を飛び出した。混乱の中、誰にも気づかれず物置へ逃げ込んだ。」
第十六章
「呪われよ、呪われた造り主め! なぜ私は生きていた? あの瞬間、おまえが気まぐれに与えた命の火を、自分で消してしまわなかったのはなぜだ。分からない。まだ絶望には捕らわれていなかった。感じていたのは怒りと復讐心だった。家も住む人々も壊し、悲鳴と苦痛を聞いて満たされたいとさえ思った。
「夜になると隠れ家を出て、森をさまよった。もう姿を見られることも恐れず、恐ろしい叫び声を上げて苦しみを吐き出した。罠を破った野獣のように、行く手のものをなぎ倒し、鹿のような速さで森を駆けた。ああ、何という惨めな夜だったろう。冷たい星はあざ笑うように輝き、葉のない木々は頭上で枝を揺らした。すべてが静まり返る中、ときおり鳥の美しい声が響いた。私以外は皆、休むか、喜びを味わっていた。私だけが、大悪魔のように内に地獄を抱えていた。誰にも思いを分かってもらえない私は、木々を引き抜き、辺りを荒らし尽くし、その廃墟に座って眺めたいと思った。
「だが、そんな激しさは長く続かない。体を動かしすぎて疲れ果て、病んだような絶望と無力感のうちに、濡れた草の上に倒れた。世に何万という人間がいても、私を憐れみ、助ける者は一人もいない。ならば敵に優しくすべきか。いや。あのときから私は人間という種と永遠に戦うと決めた。何より、私を造り、この耐えがたい苦しみへ放り出した者と。
「日が昇り、人々の声が聞こえた。昼間は物置に戻れないと分かり、深い茂みに身を隠した。これからの時間を、自分の境遇について考えることに使おうと思った。
「心地よい日差しと澄んだ朝の空気が、いくらか心を落ち着かせた。家で起きたことを振り返ると、自分は結論を急ぎすぎたのではないかと思わずにいられなかった。確かに軽率だった。私との会話に老人が心を動かされたのは明らかだ。子供たちが驚く前に姿をさらしたのは愚かだった。まず老人と親しくなり、家族にも心の準備をしてもらってから、少しずつ姿を見せるべきだったのだ。だが、過ちはまだ取り返せると思った。よく考えた末、家へ戻って老人に会い、事情を話して味方になってもらおうと決めた。
「その考えに落ち着きを取り戻し、午後には深い眠りに落ちた。だが血が熱くたぎっていて、穏やかな夢は見られなかった。前日の恐ろしい光景が絶えず目の前で繰り返された。女たちが逃げ、怒り狂ったフェリックスが私を父親の足元から引きはがす。目覚めると疲れ切っていた。すでに夜だったので、隠れ場所から這い出し、食べ物を探しに行った。
「空腹を満たすと、よく知った道を通って家へ向かった。辺りは静かだった。物置に忍び込み、いつも家族が起きる時間を待った。その時間が過ぎ、太陽が高く昇っても、誰も姿を見せない。何か恐ろしいことが起きたのではないかと、激しく震えた。家の中は暗く、物音一つしない。待つあいだの苦しみは言葉にできない。
「やがて二人の農民が通りかかり、家のそばで立ち止まって、激しく身ぶりを交えながら話し始めた。だが、家族の使う言葉とは違う土地の言葉だったので、何を言っているか分からなかった。まもなくフェリックスが別の男と近づいてきた。今朝、家から出たところは見ていなかったので驚き、変わった様子の理由が話から分かるのを待った。
「『三か月分の家賃を払ううえ、庭の収穫も諦めることになりますよ』と連れの男が言った。『不当に得をするつもりはありません。数日かけて、決心を考え直してはどうです。』
「『考えても無駄です』とフェリックスは答えた。『もう二度と、あなたの家には住めません。お話しした恐ろしい出来事のせいで、父の命が危ない。妻も姉も、あの恐怖から立ち直れないでしょう。これ以上説得しないでください。家はお返しします。どうか、ここを去らせてください。』
「そう言うフェリックスは激しく震えていた。二人は家に入り、数分後に出て、そのまま去った。それ以来、ド・レイシー家の誰にも二度と会わなかった。
「その日、私は物置で、何も考えられないほどの絶望に沈んでいた。守ってくれる人たちは去り、私をこの世につなぐ唯一の糸が切れた。初めて復讐と憎しみが胸を満たした。抑えようともせず、流されるままに、傷つけ、殺すことばかり考えた。だが友人たちを思い、ド・レイシーの穏やかな声、アガサの優しい瞳、アラビアの人の類いまれな美しさを思い出すと、その考えは消え、あふれる涙がいくらか心を鎮めた。それでも、彼らが私を拒み、捨てたのだと思えば、また怒りが戻った。燃えるような怒りだ。人間には危害を加えられないので、物に怒りを向けた。夜が深まると家の周りに燃えやすいものをいくつも置き、庭で育てられたものをすべて荒らした。そして月が沈むのを、無理やりこらえるような気持ちで待った。
「夜が更けるにつれ、森から激しい風が吹き出し、空に残っていた雲をたちまち吹き払った。雪崩のようにうなりを上げて走る風に、私は正気を失ったようになり、理性も思慮も消えた。乾いた枝に火をつけ、燃やすと決めた家の周りを、怒りに任せて踊るように巡った。目は西の空から離れなかった。月が地平線に触れかけていた。やがて月の一部が隠れ、私は燃える枝を振り上げた。すべて沈むと、大声で叫び、集めておいた藁や荒野の草、茂みに火をつけた。風にあおられて炎は勢いを増し、たちまち家を包み込み、二つに分かれた舌のように壁をなめながら焼き尽くしていった。
「もう誰が来ても、建物のどの部分も救えないと確信すると、その場を去り、森に身を隠した。
「広い世界を前にして、私はどこへ行けばよいのか。不幸の起きた場所から、遠く離れようと決めた。だが嫌われ、蔑まれる私には、どの国も同じように恐ろしい。やがて、おまえのことが頭に浮かんだ。書類から、おまえが私の父であり、造り主だと知っていた。命を与えた者以上に、助けを求めるべき相手がいるだろうか。フェリックスがサフィーに教えたことには地理も含まれていたので、私は国々の位置関係を知っていた。おまえは故郷の名をジュネーヴと書いていた。私はそこへ向かうことにした。
「だが、どうやって道を見つけるか。南西へ進まねばならないことは分かっていたが、頼れるのは太陽だけだった。通る町の名も知らず、誰かに道を尋ねることもできない。それでも絶望はしなかった。助けを望めるのはおまえだけだった。おまえに向ける気持ちは、憎しみ以外に何もなかったのだが。冷たく、心のない造り主め! おまえは私に知覚と感情を与えておきながら、人々の蔑みと恐怖の的として世に放り出した。それでも、憐れみと償いを求められる相手はおまえだけだ。人間の姿をしたほかの誰からも得られなかった公正な扱いを、おまえに求めると決めた。
「旅は長く、苦しみは激しかった。長く暮らした土地を出たのは、秋も終わり頃だった。人の顔に出会うのを恐れ、夜だけ歩いた。周囲の自然は衰え、太陽からは暖かさが消えた。雨と雪が降り、太い川も凍った。大地は硬く、冷たく、むき出しで、身を寄せる場所はなかった。ああ、大地よ! 私は自分を生み出した者を、幾度呪ったことか。もとの穏やかな性質は消え、胸の内はすべて苦さと恨みに変わった。おまえの住まいに近づくほど、復讐の炎は強く燃えた。雪が降り、水が凍っても休まなかった。ときには手がかりになる出来事もあり、地図も持っていたが、道から大きく外れることも多かった。心の苦しみに休みはなく、どんな出来事からも怒りと惨めさを深めるものを見つけた。なかでも、スイスの国境に着いたときの出来事は、苦い思いと恐怖をいっそう強めた。太陽には暖かさが戻り、大地は再び緑になり始めていた。
「昼はたいてい休み、人目を避けられる夜だけ歩いた。だがある朝、道が深い森を通っていたので、日が昇ってからも旅を続けた。春の初めの日で、美しい日差しと穏やかな空気は、私さえ明るい気持ちにした。長く死んだと思っていた優しさと喜びが、胸によみがえった。その新鮮な感覚に半ば驚きながら、私は身を任せた。孤独と醜さを忘れ、幸せを感じることさえ許した。柔らかな涙がまた頬を濡らした。潤んだ目を喜びの源である太陽へ向け、感謝さえした。
「森の小道を歩き続け、やがて端まで来た。そこには深く流れの速い川があり、春の芽をつけた木々が、枝を水面へ垂らしていた。どちらへ行くべきか分からず立ち止まると、人の声がしたので、糸杉の陰に身を隠した。隠れてすぐ、若い少女が笑いながらこちらへ走ってきた。誰かと遊んでいて、追われているようだった。川の切り立った岸辺を走り続けたが、突然足を滑らせ、速い流れの中へ落ちた。私は隠れ場所から飛び出し、激しい流れに逆らって苦労の末に少女を救い、岸へ引き上げた。気を失っていたので、できる限りのことをして息を吹き返させようとした。そのとき、一人の村の男が近づき、私は手を止められた。おそらく少女がふざけて逃げていた相手だ。私を見ると駆け寄り、腕から少女を奪って、森の奥へ急いだ。私はなぜか自分でも分からないまま、急いで後を追った。近づくのを見た男は、持っていた銃を私に向け、撃った。私は地面に倒れ、傷を負わせた男はさらに速く森へ逃げ込んだ。
「これが、善意への報いなのか! 一人の人間を死から救った見返りに、肉と骨を砕く傷の激痛にのたうつことになった。つい先ほどまで抱いていた優しさは消え、地獄のような怒りが湧き、歯を食いしばった。痛みに燃えながら、すべての人間を永遠に憎み、復讐すると誓った。だが傷の苦しみには勝てず、脈が弱まり、意識を失った。
「それから数週間、森で惨めに暮らしながら、傷を治そうとした。弾は肩に入った。中に残ったのか、貫通したのか分からない。どちらにせよ、取り出す方法はなかった。不当に、恩を仇で返すような仕打ちを受けたという思いが、苦しみをいっそう強めた。私は毎日、復讐を誓った。受けた侮辱と苦痛に見合う、深く、命取りとなる復讐を。
「数週間後に傷が癒えると、旅を再開した。もう明るい太陽も、春の優しい風も、苦労を軽くしてはくれなかった。喜びはすべて、孤独な私をあざ笑い、自分がそれを味わうために造られたのではないと、いっそう痛ましく思い知らせるだけだった。
「だが旅の終わりは近かった。その二か月後、私はジュネーヴの郊外に着いた。
「着いたのは夕方だった。どうやっておまえに会うか考えるため、町を囲む野原に身を隠した。疲れと空腹に押しつぶされ、夜風の心地よさも、雄大なジュラ山脈の向こうへ沈む夕日も、楽しめないほど不幸だった。
「考える苦しみから、浅い眠りがしばし私を解放した。だが、隠れ場所に美しい子供が駆け込んできて目が覚めた。幼い子らしく、無邪気に遊びながら走ってきたのだ。見つめているうちに、ふと思いついた。この小さな子は偏見を持たず、醜いものを恐れる気持ちを覚えるほど長く生きていないはずだ。捕まえて、仲間として、友人として育てれば、人に満ちたこの世界で、一人きりにならずに済むかもしれない。
「その思いに動かされ、通り過ぎる少年を捕まえて引き寄せた。私の姿を見た途端、少年は両手で目を覆い、甲高い悲鳴を上げた。私はその手を無理やり顔から離し、言った。『どうした、子供よ。傷つけるつもりはない。話を聞いてくれ。』
「少年は激しく暴れた。『放せ!』と叫んだ。『怪物! 醜いやつ! 僕を食べて、ばらばらにするつもりだな。人食い鬼め! 放さないと父さんに言いつけるぞ。』
「『父親にはもう会えない。私と来るんだ。』
「『醜い怪物! 放せ! 父さんは市の役人だ。フランケンシュタインさんだぞ。おまえなんか罰してやる。僕を捕まえておけるものか。』
「『フランケンシュタインだと! ならば、おまえは私の敵の一族か。永遠に復讐すると誓った相手の。おまえを最初の犠牲者にしてやる。』
「少年はなお暴れ、次々と罵りの言葉を浴びせた。その一つひとつが私の心を絶望に沈めた。黙らせようと喉をつかむと、たちまち少年は私の足元で動かなくなった。
「私は犠牲者を見つめ、勝ち誇る地獄じみた喜びに胸を膨らませた。手を打って叫んだ。『私にも不幸を生み出せる。敵にも弱いところがある。この死はあいつを絶望させ、さらに千の苦しみが責め苛み、滅ぼすだろう。』
「少年を見ていると、胸元に光るものがあった。手に取ると、とても美しい女性の肖像画だった。悪意に満ちていた私も、その美しさに心を和らげられ、引きつけられた。濃い睫毛に縁取られた暗い瞳と、美しい唇を、しばらくうっとりと見つめた。だが、すぐに怒りが戻った。こんなに美しい人たちが与えてくれる喜びを、私は永遠に奪われている。肖像の女性も私を見れば、神のような優しさを浮かべた顔を、嫌悪と恐怖に変えるだろう。
「そんなことを考えて怒りに駆られたのが、不思議だろうか。むしろあのとき、人間たちの中へ飛び込んで殺そうとし、その場で自分も滅ぼされなかったことが不思議なくらいだ。
「その思いに打ちのめされながら、殺した場所を離れ、もっと人目につかない隠れ場所を探した。空いているように見えた納屋に入ると、一人の女が藁の上で眠っていた。若く、私の持つ肖像画の女性ほどではないが、感じのよい顔をして、若さと健康の美しさに輝いていた。この女も、私以外の皆には喜びを与える笑顔を向ける者なのだろう。私は身をかがめ、耳元でささやいた。『目を覚ましておくれ、美しい人。おまえを愛する者がそばにいる。優しい眼差しを一度向けてもらえるなら、命を捧げてもいい。愛しい人、目を覚まして。』
「女が身じろぎし、恐怖が走った。本当に目を覚まし、私を見て、呪い、殺人者だと叫んだら? 目を開けて私を見れば、必ずそうするだろう。その考えに正気を失い、心の悪魔が動き出した。苦しむべきは私ではなく、この女だ。彼女が与えうるものを私は永遠に奪われ、そのために殺人を犯したのだから、償いは彼女にさせよう。罪の原因は彼女にある。罰も彼女が受けるべきだ! フェリックスの教えと、人間の血なまぐさい法律から、私は悪事の働き方を学んでいた。女にかがみ込み、服のひだの奥へ肖像画を確かに差し込んだ。女がまた動き、私は逃げた。
「その後数日、その出来事が起きた辺りをさまよった。おまえに会いたいと思うこともあれば、この世と苦しみに永遠に別れを告げようと決めることもあった。やがて山々へ向かい、広大な奥地を歩き回った。おまえだけが満たせる、燃えるような思いに身を焦がしながら。私の求めに応じると約束するまで、別れるわけにはいかない。私は一人で惨めだ。人間は私を仲間にしない。だが、私と同じほど醜く恐ろしい者なら、拒まないだろう。連れ合いは私と同じ種類で、同じ欠点を持たねばならない。その存在を、おまえが造るのだ。」
第十七章
怪物は話し終えると、返答を待って私を見つめた。だが私は混乱し、途方に暮れ、その要求の意味を十分に理解できるほど考えをまとめられなかった。怪物は続けた。
「私が共に生き、命に欠かせない心の通い合いを得られるよう、女を一人造ってくれ。できるのはおまえだけだ。これは私の権利として求める。拒んではならない。」
家族と過ごした穏やかな日々を語るあいだ、私の怒りは鎮まっていた。だが話の最後の部分で再び燃え上がり、この要求を聞いて、もう抑えられなくなった。
「断る」と私は答えた。「どんな拷問を受けようと、承諾はしない。私をこの世で最も惨めな人間にはできても、自分で自分を卑しいと思うようなことはさせられない。おまえのようなものをもう一人造り、二人で悪事を重ねて世界を荒らさせろというのか。消えろ! 答えは言った。私を苦しめるがいい。だが決して承諾しない。」
「おまえは間違っている」と悪魔は答えた。「脅すのではなく、理を尽くして話そう。私に悪意があるのは、惨めだからだ。人間は皆、私を避け、憎む。造り主のおまえは、私を引き裂いて勝ち誇りたいのだろう。そのことを思い出して答えろ。なぜ私だけが、人間を憐れまねばならない? 氷の裂け目へ私を突き落とし、自らの手で造った体を壊せるなら、おまえはそれを殺人とは呼ばないだろう。人間が私を拒むのに、どうして私が人間を尊重すべきだ? 互いに優しくできるなら、私も感謝の涙を流し、彼らのために善いことを何でもしよう。だが、それは叶わない。人間の感覚が、私たちのあいだに越えられない壁を築いている。それでも、卑屈な奴隷のように従うつもりはない。受けた仕打ちに報復する。愛されることができないなら、恐れさせる。何より、私を造ったがゆえに最大の敵であるおまえに、消えることのない憎しみを誓う。覚悟しろ。おまえを破滅させるために動き、心を荒れ果てさせて、生まれた日を呪うまでやめない。」
話すうちに悪魔のような怒りが彼をとらえ、顔は人が見るに耐えないほど恐ろしくゆがんだ。だが、まもなく落ち着きを取り戻し、続けた。
「理を尽くして話すつもりだった。怒りは私にとって損になる。だが、その激しさの原因がおまえだと、考えてくれないのか。誰か一人でも私に優しさを向けてくれれば、百倍にもして返そう。その者のためなら、人間すべてと和解してもいい! だが、今の私が見ているのは、叶わない幸福の夢だ。私の求めはもっともで、控えめなものだ。異性の仲間を求めている。ただし私と同じほど醜い者だ。わずかな幸せでも、私が得られるのはそれだけで、それで満足しよう。確かに私たちは怪物として、世界から切り離される。だからこそ、いっそう強く互いを愛せるはずだ。幸せな人生にはならないだろう。だが人を傷つけず、今の私が感じる苦しみからは自由になれる。ああ、造り主よ、私を幸せにしてくれ。一つだけでも恩を与え、おまえに感謝させてくれ! この世にいる誰かが私に心を寄せてくれると、感じさせてくれ。どうか願いを拒まないでくれ!」
私は心を動かされた。応じた場合の結末を思うと身震いしたが、彼の理屈には一理あるとも感じた。その話と、今示した感情からは、繊細な心を持つ存在だと分かる。造り主である私は、与えられる限りの幸せを彼に与える義務があるのではないか。私の心が揺れたのを見て、怪物は続けた。
「承諾してくれるなら、私たちは二度と、おまえにもほかの人間にも姿を見せない。南アメリカの広大な荒野へ行く。私は人間のようなものを食べない。空腹を満たすために子羊や子山羊を殺すことはしない。どんぐりと木の実で十分生きられる。連れ合いも私と同じ性質なら、同じ食べ物で満足する。枯れ葉を寝床にしよう。太陽は人間と同じように私たちを照らし、食べ物を実らせる。穏やかで、人間らしい暮らしだろう。これさえ拒むのは、力をかさに着た気まぐれな残酷さでしかないと、おまえにも分かるはずだ。これまで私に情けをかけなかったおまえの目に、今は憐れみが見える。この機を逃さず、心からの願いを聞くと約束してもらいたい。」
「おまえは」と私は答えた。「人の住まいを離れ、野の獣だけを仲間に荒野で暮らすと言う。人間の愛情や共感を渇望するおまえが、そんな暮らしを続けられるのか。戻ってきて、また人の優しさを求めるだろう。そして嫌われ、再び邪悪な感情に捕らわれる。そのときは、破壊を手伝う連れ合いまでいる。そんなことは許せない。いくら話しても無駄だ。承諾はできない。」
「何と気持ちの変わりやすいことだ! つい先ほど私の話に心を動かされたのに、なぜまた訴えに心を閉ざす? 私の住む大地と、私を造ったおまえにかけて誓う。連れ合いを与えてくれれば、人里を去り、どれほど荒れた場所であろうと、そこで暮らす。心を通わせる相手がいれば、邪悪な思いは消える。静かに生き、死ぬときにも造り主を呪わない。」
怪物の言葉は、私に奇妙な力を及ぼした。憐れみを覚え、慰めてやりたいとさえ思うことがあった。だが姿を見て、その汚らわしい肉の塊が動き、話すのを見ると吐き気がし、感情は恐怖と憎しみに変わった。私はその気持ちを抑えようとした。自分には共感できないのだからこそ、与えることのできるわずかな幸福を奪う権利はない、と思った。
「人に害を加えないと誓うのか」と私は言った。「だが、おまえはすでに、疑われても仕方のない悪意を示した。これも見せかけで、復讐の機会を広げ、勝ち誇るための策略ではないのか。」
「どういうことだ。これ以上、私をもてあそぶな。答えを求める。つながりも愛情もなければ、私に残るのは憎しみと悪だけだ。誰かに愛されれば、罪を生んだ原因は消え、誰も存在さえ知らない者として静かに生きる。私の悪は、嫌でたまらない孤独から生まれた。同じ者と共に生きれば、善い心が必ず育つ。心を持つ者として愛情を感じ、今は締め出されている命と出来事のつながりに加われるのだ。」
私はしばらく黙り、彼の話と、挙げた理由を一つずつ考えた。生まれたばかりの頃には善良な心を持つ見込みがあったこと、その後、頼りにしていた家族の嫌悪と侮蔑によって、優しい感情がことごとく枯れたことを思った。彼の力と脅しも無視できない。氷河の洞窟に住み、人の近づけない断崖に身を隠せる者に、力で対抗しても無駄だ。長く考えた末、彼に対しても人間たちに対しても、公正を期すなら求めに応じるべきだと結論した。私は怪物に向き直り、言った。
「要求に応じよう。ただし、女をおまえに渡し、共に行けるようになったら、ヨーロッパから、そして人の住む土地すべてから永遠に去ると、固く誓うことが条件だ。」
「誓おう!」と怪物は叫んだ。「太陽と、青い空と、胸に燃える愛の炎にかけて。願いを叶えてくれるなら、それらがある限り、おまえの前に二度と姿を現さない。家へ帰り、仕事を始めてくれ。私は言葉にできない思いで進み具合を見守る。完成したときは、必ず現れると思ってくれ。」
そう言うなり、怪物は突然去った。私の気が変わるのを恐れたのかもしれない。鷲が飛ぶよりも速く山を下り、たちまち氷の海の起伏の向こうに消えた。
怪物の話で一日が過ぎ、去る頃には太陽が地平線に沈みかけていた。間もなく暗くなるので、谷へ急いで下りるべきだと分かっていた。だが心は重く、足取りは鈍かった。山の細い道を曲がりくねって下り、一歩ずつ足場を確かめることさえ、その日の出来事に揺さぶられている私には難しかった。道半ばの休憩所に着き、泉のそばに腰を下ろした頃には、夜が深まっていた。雲が通り過ぎるたび、星がちらちらと光った。暗い松が目の前に立ち、ところどころに折れた木が倒れている。驚くほど厳かな景色が、私の中に奇妙な思いを呼び起こした。私は激しく泣き、苦しみに両手を組んで叫んだ。「ああ、星よ、雲よ、風よ。おまえたちまで私をあざ笑おうというのか。本当に憐れむなら、感覚も記憶も押しつぶし、私を無にしてくれ。そうでないなら、去れ。去って、暗闇の中に一人でいさせてくれ。」
荒々しく、惨めな思いだった。だが、絶えずまたたく星がどれほど重くのしかかったか、風が吹くたび、自分を焼き尽くしに来る不気味な熱風のように聞こえたか、言葉では伝えられない。
シャモニーの村に戻る前に夜が明けた。私は休まず、すぐジュネーヴへ帰った。自分の胸の内でも、気持ちを言葉にすることはできなかった。山ほどの重みで私にのしかかり、あまりに大きくて、その下では苦しみさえ押しつぶされてしまった。そうして家に戻り、家族の前に姿を見せた。やつれ、常軌を逸したような私を見て、皆ひどく驚いた。だが、私はどの問いにも答えず、ほとんど口をきかなかった。まるで追放された者のようだった。家族に思いやりを求める権利も、二度と共に過ごす権利もないように感じた。それでも私は、彼らを敬うほど深く愛していた。皆を守るために、何より忌み嫌う仕事へ身を捧げると決めた。その仕事が待っていると思うだけで、生きる上でのほかのすべては夢のように霞み、その考えだけが、私にとって現実となった。
第十八章
ジュネーヴに戻ってから、日が過ぎ、週が過ぎていったが、私はどうしても仕事を再開する勇気を奮い起こせなかった。約束を果たさずに怪物の復讐を招くのは恐ろしい。それでも、命じられた仕事への嫌悪を抑えられなかった。雌の怪物を造るには、また何か月もかけて研究と骨の折れる検討を重ねなければならない。イングランドのある学者が、成功に欠かせない発見をしたと聞いていたので、その知識を得るために渡英したいと父に願い出ようかと思うこともあった。だが私は、先延ばしにできる口実なら何にでもすがった。差し迫った必要性さえ以前ほど絶対的には思えなくなり、その第一歩を踏み出すことをためらっていたのだ。実際、私自身にも変化が起きていた。衰え続けていた健康がかなり回復し、不幸な約束を思い出さずにいられるときには、気分もそれに応じて明るくなった。父はその変化を喜び、ときおり発作のように戻ってきて、差し始めた日の光を貪るような暗さで覆い尽くす憂鬱を、どうすれば根こそぎにできるか考えた。そんなとき、私は完全な孤独に逃げ込んだ。小舟で一人、湖上に一日中浮かび、黙って物憂く雲を眺め、波のさざめきを聞いた。それでも、澄んだ空気と明るい日差しに触れれば、たいていは多少なりとも心の落ち着きを取り戻せた。帰宅するころには、友人たちの挨拶に、以前より素直な笑顔と明るい心で応じられた。
そんな湖上の散策から戻ったある日、父が私を脇へ呼んで言った。
「ヴィクター、おまえが昔の楽しみを取り戻し、元気になってきたようで嬉しいよ。だが、まだ心には苦しみがあるし、私たちと過ごすのを避けている。なぜなのか、長いこと見当がつかなかった。ところが昨日、ひとつ思い当たることがあったんだ。もし当たっているなら、どうか打ち明けてほしい。このことを隠しても何の役にも立たない。それどころか、皆の苦しみが三倍になるだけだ。」
その前置きに私は激しく震えた。父は続けた。
「正直に言おう。おまえと愛するエリザベスが結婚すれば、我が家の幸せを結ぶ絆となり、老いた私の支えにもなる。ずっとそう願ってきた。二人は幼いころから仲がよく、ともに学び、気質も好みも申し分なく合っているように見えた。だが、人の経験などあてにならないものだ。計画に最も役立つと思っていたことが、かえってそれを台なしにしたのかもしれない。おまえはエリザベスを妹としか思えず、妻にしたいとは思わないのではないか。いや、ほかに愛する女性と出会ったのかもしれない。それでも名誉にかけてエリザベスと結婚しなければと思い、その葛藤に苦しんでいるのではないか。」
「父さん、安心してください。私はエリザベスを心から愛しています。あの人ほど強い憧れと愛情を抱いた女性はいません。これからの希望も将来の夢も、すべて彼女と結ばれることにかかっています。」
「そう聞けて嬉しいよ、ヴィクター。こんなに嬉しいのは久しぶりだ。おまえがそう思っているなら、今は暗い出来事に覆われていても、きっと幸せになれる。ただ、その暗さがあまりに深くおまえの心に根づいているようだから、取り除いてやりたいのだ。そこで聞かせてほしい。すぐに結婚式を挙げることに、異存はあるかい。私たちは不幸に見舞われ、最近の出来事のせいで、私の年齢と衰えた体にふさわしい穏やかな暮らしから遠ざかっている。おまえはまだ若い。だが十分な財産もあるのだから、早く結婚しても、将来考えている立派で有益な計画の妨げにはなるまい。もちろん、幸せを押しつけるつもりはないし、式を延ばしても私がひどく心配することはない。どうか率直に受け止め、信じて、正直に答えてほしい。」
私は黙って父の話を聞き、しばらく返事もできなかった。さまざまな考えが頭を駆け巡り、何とか結論を出そうとした。ああ、エリザベスとすぐ結婚するなど、私には恐怖でしかなかった。まだ果たしていない厳粛な約束があり、それを破ることは許されない。破れば、私と愛する家族にどれほどの災いが降りかかるだろう。命を奪いかねない重荷を首に下げ、地に押しつぶされそうなまま、祝宴に加われるものか。まず約束を果たし、怪物が伴侶とともに去るのを見届けなくてはならない。そのあとで初めて、安らぎをもたらすはずの結婚を喜べるのだ。
さらに私は、イングランドへ行くか、仕事に不可欠な知識と発見を持つ同国の学者たちと、長く手紙を交わさなければならないことも思い出した。手紙では時間がかかり、満足な情報も得られまい。それに何より、愛する人々と普段どおりに暮らしながら、父の家でおぞましい仕事に取り組むことには耐えられなかった。恐ろしい事故は幾らでも起こりうる。どんな小さな事故でも、私に近しい者すべてを震え上がらせる秘密が露見するかもしれない。また、あの不自然な作業を進めるうちに、自制心を失い、胸をえぐる感情を隠せなくなることも多いだろう。仕事のあいだは愛する人々から離れていなければならない。始めてしまえば、ほどなく終えられるはずだ。そして安らかに、幸せな気持ちで家族のもとへ帰ろう。約束さえ果たせば、怪物は永遠に去る。あるいは、そのあいだに何かが起きて怪物が滅び、私の隷属が終わるかもしれない――そんな甘い想像までした。
こうした思いから、私は父にイングランドへ行きたいと答えた。本当の理由は隠し、疑われぬ口実を整えて、熱心に願い出た。父を説得するのは容易だった。狂気にも似た深い憂鬱に長く沈んでいた私が、旅を楽しみにできるようになったのを父は喜んだ。景色が変わり、さまざまな楽しみに触れれば、帰るころにはすっかり元気になると期待したのだ。
留守にする期間は私が決めてよいことになった。数か月、長くても一年ほどを考えていた。父は、私に旅の道連れができるよう、親心から一つ手を打っていた。私に知らせず、エリザベスと相談して、クラヴァルがストラスブールで合流する手はずを整えていたのだ。仕事を進めるために欲しかった孤独は損なわれる。だが、旅の初めに友人がいても差し支えないし、むしろ孤独のなかで気を狂わせるような思いに囚われずに済むことは嬉しかった。それに、ヘンリーがいれば敵の接近を防げるかもしれない。一人なら、怪物はあの忌まわしい姿を突然現し、仕事を催促したり進み具合を見に来たりするだろう。
こうして行き先はイングランドと決まり、帰国したらすぐエリザベスと結婚することになった。老いた父は、これ以上延ばすことをひどく嫌がった。私も、忌まわしい苦役の果てに得られる報酬、並ぶもののない苦しみの慰めを、一つだけ心に描いていた。惨めな束縛から解放され、エリザベスと結ばれて過去を忘れる日だ。
旅支度を始めても、ある思いがつきまとい、恐怖と不安に襲われた。私が留守にしているあいだ、友人たちは敵の存在も知らず、襲撃に備えることもできない。私が去ったことで怪物が怒りを募らせるかもしれない。だが、どこへ行こうとついて来ると怪物は約束したではないか。ならばイングランドまで追って来るだろう。それ自体は恐ろしい想像だったが、友人たちが安全になると思えば慰めにもなった。逆のことが起きる可能性を考えると、身がよじれるほど苦しかった。それでも私は、自ら生み出したものの奴隷となっているあいだ、いつもその場の衝動に流されていた。そして今の直感は、怪物は私を追い、家族はその悪だくみの危険から免れると強く告げていた。
九月も終わりに近づいたころ、私は再び故国を離れた。旅を言い出したのは私なのでエリザベスも受け入れたが、離れているあいだにまた悲しみと苦しみが私を襲うのではないかと、気を揉んでいた。クラヴァルを道連れにしてくれたのも、彼女の心配りだった。男というものは、女性なら細やかに気づく幾千ものことに目が届かない。彼女は早く帰ってきてと頼みたかったのだろう。だが、相反する思いが胸に溢れて言葉にならず、涙を浮かべて黙って私を見送った。
私は行き先さえろくに意識しないまま馬車に乗り込み、周囲の出来事にも無関心だった。ただ一つ、化学実験の器具を荷造りして積ませることだけは忘れなかった。それを思うだけで胸が苦しくなった。陰鬱な想像に囚われ、美しく雄大な景色の数々を通り過ぎても、目は虚ろで、何も見ていなかった。頭にあるのは旅の終着地と、道中に待つ仕事だけだった。
数日間、幾リーグもの道を無気力に進み、ストラスブールに着いた。そこで二日待つと、クラヴァルがやって来た。ああ、私たちは何と違っていたことか。彼は新しい景色の一つ一つに心を躍らせ、夕日の美しさに喜び、朝日が昇って新しい一日が始まるとさらに嬉しそうだった。移ろう風景の色や空の様子を指さして言った。「生きているって、こういうことなんだ。今こそ生きる喜びを味わっているよ! でもフランケンシュタイン、君はどうしてそんなに沈んで悲しそうなんだ?」
実際、陰鬱な思いに囚われた私には、宵の明星が沈むのも、ライン川に映る金色の朝日も目に入らなかった。友よ、私の思いを聞くより、感動と喜びの目で景色を眺めたクラヴァルの旅行記を読んだほうが、あなたにはずっと面白いだろう。私は呪いにつきまとわれ、喜びへの道をことごとく閉ざされた哀れな男だった。
私たちはストラスブールからロッテルダムまで舟でライン川を下り、そこから船でロンドンへ渡ることにしていた。航行中、柳の茂る島々を幾つも過ぎ、美しい町をいくつも見た。マンハイムに一日滞在し、ストラスブールを出て五日目にマインツへ着いた。マインツより下流のライン川は、いっそう絵のように美しい。水は速く流れ、さほど高くはないが急峻で形の美しい丘のあいだを縫っていく。険しい崖の縁には、黒々とした森に囲まれた廃城がいくつも立っていた。この辺りの風景の変化は実に目覚ましい。荒々しい丘、恐ろしい断崖を見下ろす廃城、その下を駆け抜ける暗いライン川を眺めていたかと思うと、岬を回った途端、緑の斜面に広がる豊かな葡萄畑、緩やかに曲がる川、賑やかな町々が現れる。
葡萄の収穫期で、川を滑るように下りながら、働く人々の歌声を聞いた。暗い気持ちに沈み、心を絶えずかき乱されていた私でさえ、楽しいと感じた。舟底に寝そべって雲一つない青空を見上げていると、長らく縁のなかった安らぎが体に満ちてくるようだった。私でさえそうなのだから、ヘンリーの喜びは言うまでもない。妖精の国へ運ばれたように、人にはめったに味わえない幸福を感じていた。「故国でも、すばらしい景色を見てきたよ」と彼は言った。「ルツェルン湖やウーリ湖にも行った。雪を頂く山々が水辺までほとんど垂直に迫り、真っ黒な、奥も見通せない影を落としている。生き生きした緑の島々がなければ、陰気で悲しい眺めだったろうね。嵐に荒れる湖も見た。風が水を巻き上げ、大海原の竜巻とはこういうものかと思わせた。波は山の麓に激しく打ち寄せる。あそこでは司祭とその恋人が雪崩にのまれ、今も夜風のやむ合間に二人の最期の声が聞こえると言われている。ヴァレー州やヴォー州の山々も見た。でもヴィクター、ああした驚異のどれよりも、僕はこの土地が好きだ。スイスの山々はもっと雄大で珍しいけれど、この美しい川岸には、ほかでは見たことのない魅力がある。ほら、あの崖にせり出した城を見て。それから島にある城も。きれいな木々の葉にほとんど隠れている。あそこには葡萄畑から帰る人たち。山あいには、半分隠れた村もある。ここを守って暮らす精霊は、氷河を積み上げたり、僕らの国の近づけない峰に隠れたりする精霊より、ずっと人に近い心を持っているに違いない。」
クラヴァル、愛する友よ。今こうして君の言葉を書き留め、君にふさわしい賛辞を思い巡らすことさえ、私には喜びだ。彼は「自然そのものの詩」から生まれたような人だった。
奔放で熱情に満ちた想像力は、繊細な心によってほどよく和らげられていた。魂には熱い愛情が溢れ、その友情は、俗世の人間なら空想のなかにしかないと言うほど献身的で、すばらしかった。だが、人との絆だけでは、彼の旺盛な心は満たされない。ほかの者がただ感心して眺める自然の風景を、彼は情熱をもって愛した。
――轟く滝は
情熱のように彼につきまとった。高い岩、
山、深く暗い森、その色と形は
彼にとって渇きであり、感情であり、愛だった。
思索が与える遠い魅力も、目に映るもの以外の
何の関心も、必要としなかった。
[ワーズワス「ティンターン修道院」より]
その彼は今、どこにいるのだろう。あれほど優しく愛すべき人は、永遠に失われたのか。豊かな思索と壮麗な空想で一つの世界を生み出し、その世界を自らの命で支えていた心は、滅んでしまったのか。もう私の記憶のなかにしか存在しないのか。いや、そうではない。神々しいほど美しく造られた君の体は朽ちても、その魂はいまなお私のもとを訪れ、不幸な友を慰めてくれる。
悲しみに任せてしまったことを許してほしい。こんな力のない言葉では、比類ないヘンリーの価値をわずかに讃えることしかできない。それでも、彼を思うたび苦しみで溢れる私の心は、少し和らぐ。話を続けよう。
ケルンを過ぎると、オランダの平野を下った。風向きが悪く、川の流れも舟を進めるには穏やかすぎたので、残りは馬車で行くことにした。
ここからの旅では、美しい景色を眺める楽しみは薄れたが、数日でロッテルダムに着き、船でイングランドへ渡った。十二月も暮れに近い、よく晴れた朝、私は初めてブリテンの白い崖を見た。テムズ川の両岸には新しい風景が広がっていた。平坦だが豊かな土地で、ほとんどどの町にも、何らかの歴史が結びついている。ティルベリー砦を見てスペイン無敵艦隊を思い出し、故国にいたころから名を聞いていたグレーヴゼンド、ウーリッチ、グリニッジを通り過ぎた。
やがて、ロンドンに林立する尖塔が見えた。ひときわ高くそびえるセント・ポール大聖堂、そしてイングランドの歴史に名高いロンドン塔も。
第十九章
当面の滞在先はロンドンだった。このすばらしく名高い都市に数か月とどまることにした。クラヴァルは、当時活躍していた優れた才能の持ち主たちと交流したがった。だが、私にはそれは二の次だった。約束を果たすために必要な情報を得ることが第一で、持参した紹介状をすぐに使い、著名な自然哲学者たちを訪ねた。
学生時代の幸福なころなら、この旅は言葉にできないほど楽しかっただろう。だが、私の人生はすでに荒れ果て、彼らに会うのも、恐ろしいほど切実に求める知識を得るためだけだった。人づきあいは苦痛だった。一人なら、空や大地の眺めで心を満たせる。ヘンリーの声にも慰められ、束の間の安らぎを自分に信じ込ませることができた。だが、忙しげで、私には関心もなく、楽しそうにしている人々の顔を見ると、絶望が胸に戻ってきた。私とほかの人々とのあいだには、越えられない壁がある。その壁を封じているのはウィリアムとジュスティーヌの血だ。二人の名にまつわる出来事を思うだけで、魂が苦しみに満たされた。
一方、クラヴァルには、かつての私の姿が見えた。好奇心に溢れ、経験と知識を求めていた。目にする習慣の違いは、尽きることのない学びと楽しみになった。彼には長く抱いてきた目的もあった。インドを訪れることだ。さまざまな現地語の知識と、社会についての考えを生かして、ヨーロッパの植民と交易の発展に大きく貢献できると信じていた。その計画を進められるのはブリテンだけだった。彼はいつも忙しく、楽しみを妨げるものといえば私の沈んだ気持ちだけだった。心配事にも苦い記憶にも縛られず、新しい世界へ踏み出す人にふさわしい喜びを奪いたくなくて、私はできる限り気持ちを隠した。別の約束があると言って、同行を断り、一人になることも多かった。このころ、新たな創造に必要な材料を集め始めたが、それは頭に水滴を一滴ずつ落とし続けられる拷問のようだった。そのことを考えるたびに激しい苦痛を覚え、口に出そうとすれば唇が震え、心臓が高鳴った。
ロンドンで数か月過ごしたころ、以前ジュネーヴの我が家を訪れたことのあるスコットランド人から手紙が届いた。故郷の美しさを綴り、旅を北へ延ばして、自分の住むパースまで来てはどうかと誘ってくれた。クラヴァルはぜひ招きに応じたがった。私は人づきあいこそ嫌だったが、山や川を、自然が選りすぐりの土地に飾りつけた驚くべき景色を、もう一度見たかった。
イングランドに着いたのは十月初めで、今は二月だった。そこで、さらに一か月後に北への旅に出ることにした。エディンバラへの幹線道路をまっすぐ進むのではなく、ウィンザー、オックスフォード、マットロック、カンブリアの湖水地方に寄り、七月末ごろに旅を終える計画だ。私は化学実験の器具と集めた材料を荷造りし、スコットランド北部の人目につかない場所で仕事を終えるつもりだった。
三月二十七日にロンドンを発ち、ウィンザーで数日過ごして美しい森を歩き回った。山育ちの私たちには珍しい風景だった。堂々たる樫の木、豊富な野生動物、立派な鹿の群れ、何もかもが新鮮だった。
そこからオックスフォードへ向かった。町に入ると、百五十年以上前にここで起きた出来事が胸に浮かんだ。チャールズ一世はここに軍勢を集めた。国中が王を見捨て、議会と自由の旗のもとに集まっても、この町だけは王への忠誠を守った。不運な王とその仲間、好感の持てるフォークランド、尊大なゴーリング、王妃と王子の記憶が、彼らの足跡の残る町の隅々に特別な味わいを与えていた。ここには昔日の精神が息づき、私たちはその跡をたどって楽しんだ。たとえそうした想像上の喜びがなくとも、町そのものが賞賛に値するほど美しかった。古く趣のある大学の建物、堂々とした街路。そして、鮮やかな緑の牧草地を抜けて町のそばを流れる美しいアイシス川[訳注:オックスフォード付近でのテムズ川の呼び名]は、穏やかな水面を広げ、古木に抱かれた塔や尖塔、丸屋根の壮麗な姿を映していた。
私はその風景を楽しんだ。だが、過去の記憶と未来への不安が喜びに苦みを混ぜた。私は本来、穏やかな幸福のために生まれたのだ。若いころ、心が不満に囚われたことはなかった。たとえ倦怠を覚えても、自然の美しいものを眺め、人間の優れた崇高な作品を学べば、また心は躍り、元気を取り戻せた。しかし今の私は雷に打たれた木だ。稲妻は魂まで貫いた。そして私は、自分が間もなく失ってしまうものを、生きながらにしてさらし続けるのだと感じた。人間の壊れ果てた惨めな姿。人には哀れを催させ、自分には耐えがたい姿を。
私たちはオックスフォードに長く滞在し、周囲を歩き回って、イングランド史の最も胸躍る時代に関係する場所を探した。あれもこれも見たいと、小さな探訪はたびたび長引いた。名高いハムデンの墓と、その愛国者が倒れた戦場も訪ねた。そのときばかりは、卑小で惨めな恐怖から心が引き上げられ、そこに記念される自由と自己犠牲という崇高な理念に思いを馳せた。一瞬だけ鎖を振り払い、自由で気高い心で周囲を見渡せた。だが鉄の鎖はすでに肉へ食い込み、私はまた震えながら、希望を失った惨めな自分へ沈み込んだ。
名残惜しくオックスフォードを離れ、次の滞在地マットロックへ向かった。村の周辺には、スイスにかなり似た景色があった。ただし何もかも小ぶりで、緑の丘には、故国の松林の山々に寄り添う遠くの白いアルプスが欠けていた。私たちは見事な洞窟や、小さな博物陳列室を訪ねた。珍しい標本がセルヴォーやシャモニーの収集品と同じように並んでいた。ヘンリーがシャモニーの名を口にしたとき、私は震えた。その名に結びつく恐ろしい光景を思い出し、急いでマットロックを発った。
ダービーからさらに北へ進み、カンブリアとウェストモアランドで二か月を過ごした。そこでは、スイスの山中に戻ったような気さえした。山の北斜面に残る小さな雪のまだら、湖、岩間を勢いよく流れる川。どれも見慣れた、懐かしい景色だった。知り合いもでき、彼らのおかげで、幸せになったような錯覚を覚えることさえあった。クラヴァルの喜びは私よりはるかに大きかった。才能ある人々と交わって心を広げ、それまで自分より力の劣る人々のなかにいたときには気づかなかった能力と可能性を、自分のうちに見いだした。「ここで一生暮らしてもいいよ」と彼は言った。「この山々にいれば、スイスやライン川もほとんど恋しくならないだろう。」
だが旅人の暮らしには、楽しみだけでなく苦しみも多いことを彼は知った。心は絶えず何かを受け止めようと張りつめている。ようやく落ち着き、気に入ったものに親しみ始めたころには、そこを離れ、また心を奪う新しいものへ向かわなければならない。そしてそれも、次の珍しいもののために置き去りにするのだ。
カンブリアとウェストモアランドの湖々を見て回り、土地の人々に親しみを覚え始めたばかりなのに、スコットランドの友人との約束の日が近づき、また旅立つことになった。私は残念ではなかった。約束をしばらく放置していたため、怪物が失望したときのことが怖かった。スイスに残り、家族に復讐するかもしれない。その考えは、安らげるはずのときにもつきまとい、私を苦しめた。手紙を待つあいだは熱に浮かされたように落ち着かず、遅れれば幾千もの不安に襲われた。届いても、封にエリザベスや父の筆跡を見つけると、自分の運命を確かめるのが怖くてなかなか読めなかった。怪物が後をつけ、私に仕事を急がせようと、同行者を殺すのではないかと思うこともあった。そんな考えに囚われると、ヘンリーから一瞬も離れず、影のようについて歩いた。怪物の怒りから守ろうとしたのだ。私は大罪を犯し、その意識につきまとわれているような気がした。罪はなかった。だが、罪を犯した者と同じほど命取りになる、恐ろしい呪いを自ら招いたのは確かだった。
エディンバラでも私の目と心は沈んでいたが、あの町なら、どんな不幸な人間にも興味を抱かせられただろう。クラヴァルは、古い歴史のあるオックスフォードほどには気に入らなかった。それでも整然として美しいエディンバラの新市街、物語めいた城、そして世界でも屈指の心地よい周辺の景色――アーサーズ・シート、セント・バーナーズ・ウェル、ペントランド丘陵が、物足りなさを埋め、彼を喜びと感嘆で満たした。私は早く旅を終えたかった。
一週間後、エディンバラを発ち、クーパー、セント・アンドリューズを通り、テイ川沿いに進んで、友人の待つパースへ着いた。だが私は、知らない人々と笑い、語らい、その気持ちや計画に関心を寄せるような、客に求められる愛想のよさを持ち合わせていなかった。そこでクラヴァルに、一人でスコットランドを旅したいと告げた。「君は楽しんでいてくれ」と私は言った。「ここを再会の場所にしよう。一、二か月戻らないかもしれない。頼むから、私の行動には口を出さないでほしい。しばらく静かに一人で過ごさせてくれ。戻るころには心も軽くなって、君とまた楽しく過ごせると思う。」
ヘンリーは思いとどまらせようとしたが、私の決意が固いと見て、それ以上は言わなかった。代わりに、たびたび手紙をくれと頼んだ。「知らないスコットランドの人たちと過ごすより、君の一人歩きに付き合いたいよ」と彼は言った。「だから早く帰ってきてくれ。君がいないと、ここではどうにも落ち着かないんだ。」
友と別れた私は、スコットランドの人里離れた場所へ行き、孤独のなかで仕事を終えることにした。怪物は私を追っているはずだ。完成すれば姿を現し、伴侶を受け取りに来るだろう。
北部の高地を巡り、仕事場にオークニー諸島の最も辺鄙な島の一つを選んだ。波が絶えず高い岩壁を打つ、岩塊同然の島で、あの仕事にはふさわしかった。土は痩せ、ごくわずかな哀れな牛の餌と、住民の食べるオート麦を辛うじて育む程度だった。住民は五人。痩せこけた手足が、貧しい食事を物語っていた。野菜やパンを食べるという贅沢をするにも、真水を得るにも、およそ五マイル離れた本土から運んでこなければならない。
島全体に粗末な小屋が三軒あるだけで、私が来たとき、そのうち一軒は空いていた。私はそこを借りた。部屋は二つしかなく、どちらにも極貧の暮らしぶりがありありと表れていた。茅葺き屋根は崩れ、壁には漆喰も塗られておらず、扉は蝶番から外れていた。修理を頼み、家具を少し買って住み始めた。住民が貧しさに感覚まで鈍らされていなければ、よそ者の暮らしぶりを不思議がったかもしれない。実際には誰にも注目されず、邪魔もされずに済んだ。食べ物や服を少し分け与えても、礼を言われることさえめったになかった。苦しみは、人の最も素朴な感情まで鈍らせるのだ。
隠れ家では午前を仕事に充て、天気が許せば、夕方は石だらけの浜を歩いた。足元で波が砕け、轟く音に耳を傾けた。単調でありながら、絶えず姿を変える風景だった。私はスイスを思った。この荒涼とした、恐ろしい土地とは何もかも違う。あちらの丘は葡萄の木に覆われ、平野には家々が並ぶ。美しい湖には青く穏やかな空が映り、風で荒れても、巨大な海の轟きに比べれば元気な幼子の戯れのようなものだ。
島に来たばかりのころはそうして日々を送ったが、仕事が進むにつれ、嫌悪と苦痛は日に日に増した。何日も仕事場に入れないこともあれば、仕上げようと昼夜を問わず働くこともあった。実際、手を染めていたのは汚らわしい作業だった。最初の実験では、熱に浮かされたような興奮が、その恐ろしさから目を覆ってくれた。完成させることしか頭になく、何をしているかを直視しなかった。だが今は冷静なまま手を動かすため、自分のしていることにたびたび吐き気がした。
このように忌まわしい仕事に携わり、作業の現実から一瞬も気をそらせない孤独に閉じ込められるうち、心は不安定になり、落ち着きがなく、神経が過敏になった。いつ迫害者と鉢合わせるかと、絶えず怯えた。顔を上げれば見たくもない姿が現れる気がして、地面を見つめたまま座っていることもあった。一人になった途端、伴侶を寄こせと怪物が現れそうで、人のいる場所から遠くへ行くのも怖かった。
それでも仕事を続け、完成はかなり近づいた。終わりを思うと、震えるような切実な希望が湧いた。問い直すことさえ怖い希望だ。同時に、胸を悪くするような漠然とした凶事の予感もあった。
第二十章
ある晩、私は仕事場に座っていた。日は沈み、月が海から昇りかけていた。手元を照らす明かりが足りず、その夜は仕事をやめるか、休まず続けて完成を急ぐか考えながら、手を止めていた。そうしているうち、今していることの結果について思いを巡らせ始めた。三年前、私は同じような作業によって怪物を造った。その比類ない残忍さに心は荒れ果て、消えることのない痛烈な悔恨に満たされた。今また、気性も知らない新たな存在を造ろうとしている。雌の怪物は相手の一万倍も邪悪になり、人を殺し、不幸をもたらすこと自体を喜ぶかもしれない。雄は人里を離れ、荒野に隠れると誓った。だが雌は誓っていない。おそらく自分で考え判断するようになる彼女が、生まれる前に交わされた約束に従うとは限らない。二人が憎み合うことさえありうる。すでに生きている怪物は自分の醜さを忌み嫌っている。その醜さを雌の姿に見いだせば、いっそう激しい嫌悪を覚えるのではないか。雌も怪物に嫌悪を覚え、より美しい人間に惹かれて離れるかもしれない。そうなれば怪物は再び孤独になり、同類に捨てられた怒りを募らせるだろう。
たとえ二人がヨーロッパを去り、新世界の荒野に住んでも、怪物の切望する愛情からまず生まれるのは子どもだ。悪魔の種族が地上に増え、人類の存続そのものを脅かし、恐怖に満ちたものにするかもしれない。自分の利益のために、これから続く幾世代にも呪いを負わせる権利が私にあるのか。以前は、自分が造ったものの詭弁に心を動かされ、その恐ろしい脅迫に判断力を奪われた。だがそのとき初めて、約束の邪悪さがはっきり見えた。未来の人々が、自らの安らぎを人類全体の存続と引き換えにすることもいとわなかった利己的な厄災として、私を呪うかもしれない。そう思うと身震いした。
震え、心が折れそうになって顔を上げると、月明かりのなか、窓辺に怪物がいた。私が命じられた仕事をしているのを見つめ、唇を歪めて不気味に笑っていた。そうだ、怪物は旅のあいだずっと後をつけてきたのだ。森をうろつき、洞窟に隠れ、広い荒れ地に身を潜めて。そして今、進み具合を確かめ、約束を果たさせようと現れた。
その顔には、ありったけの悪意と裏切りが浮かんでいた。これと同じものをもう一体造るという約束を思うと、気が狂いそうになった。激しい感情に震えながら、私は造りかけのものを引き裂いた。自分の幸せを託した存在が壊されるのを見て、怪物は悪魔じみた絶望と復讐の雄叫びを上げ、立ち去った。
私は部屋を出て扉に鍵をかけ、二度と仕事を再開しないと心に固く誓った。それから震える足で寝室へ向かった。一人きりだった。暗い思いを払ってくれる者も、恐ろしい空想に押しつぶされそうな心を軽くしてくれる者もいない。
何時間も窓辺で海を見つめた。風はやみ、海はほとんど動かず、自然のすべてが静かな月のもとで休んでいた。海面に見えるのは、点々と浮かぶ数隻の漁船だけ。ときおり漁師が呼び交わす声が、そよ風に乗って届いた。静けさを感じながらも、それがどれほど深いかは意識していなかった。ふいに岸近くで櫂を漕ぐ音がして、家のそばに誰かが上陸するまでは。
数分後、扉がきしんだ。誰かがそっと開けようとしているらしい。私は全身を震わせた。相手が誰かを予感し、近くの小屋の住人を起こしたいと思った。だが、恐ろしい夢のなかで迫る危険から逃げようとしても逃げられない、あの無力感に囚われ、身動きできなかった。
やがて廊下を歩く音がした。扉が開き、恐れていた怪物が姿を現した。扉を閉め、私に近寄ると、押し殺した声で言った。
「始めた仕事を壊したな。どういうつもりだ? 約束を破る気か? 俺は苦労と苦しみに耐えてきた。おまえと一緒にスイスを離れ、ライン川の岸を、柳の茂る島々を、丘の頂をたどった。イングランドの荒れ地やスコットランドの人けのない土地で、幾月も過ごした。数えきれない疲労と寒さと飢えに耐えてきたんだ。それなのに、俺の希望を壊す気か?」
「出ていけ! 約束は破る。おまえと同じ醜さと邪悪さを持つものなど、二度と造らない。」
「奴隷め。前にはおまえと話し合おうとしたが、その譲歩に値しないことがわかった。俺には力がある。今でも惨めだと思っているだろうが、日の光さえ憎くなるほど、おまえを苦しめてやれる。おまえは俺の創造主だが、主人は俺だ。従え!」
「迷いの時は終わった。おまえの力が及ぶのもここまでだ。脅されても悪事に手は染めない。むしろ、おまえに悪の仲間を造らない決意が固まった。人の死と不幸を喜ぶ悪魔を、冷静なまま地上に放てるものか。出ていけ。決心は変わらない。その言葉で、私の怒りを煽るだけだ。」
怪物は私の顔に固い決意を見て取り、怒りを晴らせぬまま歯ぎしりした。「人間には誰にも妻がいて、獣にさえつがいがいるのに、俺だけ一人でいろと言うのか? 俺にだって愛情はあった。だが返ってきたのは嫌悪と軽蔑だけだ。人間よ、俺を憎むがいい。だが用心しろ! おまえは恐怖と苦しみのなかで時を過ごす。じきに一撃がおまえの幸福を永遠に奪うだろう。俺が惨めさの底で這いつくばっているのに、おまえだけ幸せになるつもりか? ほかの感情を踏みにじられても、復讐心は残る。これからは光よりも、食べ物よりも大切な復讐がな! 死ぬとしてもその前に、俺を虐げ苦しめたおまえが、自分の惨めさを照らす太陽を呪うことになる。覚悟しろ。俺には恐れるものがない。だから強い。蛇のように抜け目なく見張り、毒牙を突き立ててやる。俺にした仕打ちを後悔するがいい。」
「悪魔め、黙れ。その悪意に満ちた声で空気を汚すな。決心は伝えた。言葉に屈するような臆病者ではない。出ていけ。考えは変わらない。」
「いいだろう。帰る。だが覚えておけ。結婚の夜、おまえのそばに行く。」
私は前に飛び出して叫んだ。「卑劣な奴め! 私に死を宣告する前に、おまえ自身が無事でいられるか確かめろ!」
捕まえようとしたが、怪物は身をかわし、素早く家を出た。ほどなく小舟に乗る姿が見えた。舟は矢のように水上を走り、すぐに波間へ消えた。
再び静けさが戻っても、その言葉は耳に鳴り続けた。私の安らぎを奪った殺人者を追い、海へ突き落としたいという怒りに燃えた。部屋をせわしなく歩き回り、幾千もの想像に心を刺された。なぜ追いかけ、命を懸けて戦わなかったのか。私は行かせてしまい、怪物は本土へ向かった。次に飽くなき復讐の犠牲になるのは誰かと、身震いした。そしてまた、あの言葉を思い出した。「結婚の夜、おまえのそばに行く」。その夜、私の運命が決まるのだ。私は殺され、怪物の悪意は満たされると同時に終わる。その見通しに恐怖は感じなかった。だが愛するエリザベスが、恋人を無残に奪われて流す涙と、生涯続く悲しみを思うと、何か月も出なかった涙が頬を伝った。せめて激しく戦い、そう易々と敵の手には落ちまいと決めた。
夜が明け、海から日が昇った。怒りが絶望の底へ沈むのを落ち着きと呼べるなら、私は落ち着きを取り戻した。昨夜の恐ろしい争いの場となった家を出て、浜辺を歩いた。海は、私とほかの人々とのあいだに立つ越えられない壁のように思えた。いっそ本当にそうならいい、とさえ願った。この不毛な岩の島で、退屈でも、突然の災いに襲われずに一生を終えたい。帰れば、自分が犠牲になるか、自分の造った悪魔の手で最愛の人たちが死ぬのを見るか、そのどちらかだ。
愛するものすべてと引き離された、落ち着かない亡霊のように島をさまよった。正午になり、太陽が高く昇ったころ、草の上に横になると深く眠った。前の晩は一睡もせず、神経は高ぶり、眠れぬ苦しみで目は炎症を起こしていた。眠って少し元気を取り戻し、目覚めると、また自分が人間の一人であるように感じられた。起きたことも、少し冷静に考えられる。だが怪物の言葉だけは弔いの鐘のように耳で鳴り続けた。夢めいていながら、現実と同じほどはっきりと、重くのしかかっていた。
日はすでに大きく傾いていた。私はなお岸辺に座り、ひどく空いた腹をオート麦の菓子で満たしていた。すると漁船が近くに着き、男の一人が包みを持ってきた。ジュネーヴからの手紙と、合流してほしいと頼むクラヴァルの手紙が入っていた。彼は滞在先でいたずらに時を過ごしており、ロンドンで知り合った友人たちから、インドでの計画に向けて始めた交渉をまとめるため、戻るようにと手紙が来たという。もう出発を延ばせない。しかもロンドンへの旅のあと、思っているより早く長い船旅に出るかもしれない。だから、それまでできるだけ一緒に過ごしてほしいと書いてあった。この孤独な島を離れ、パースで落ち合って、連れ立って南へ向かおうというのだ。手紙を読んで、私はいくらか生き返った気がした。二日後に島を去ると決めた。
だがその前に、考えるだけで身がすくむ仕事が残っていた。実験器具を荷造りするには、おぞましい仕事をした部屋へ入り、見るだけで吐き気のする道具に触れなければならない。翌朝、夜明けとともに何とか勇気を振り絞り、仕事場の鍵を開けた。壊した未完成の生き物の残骸が、床に散らばっていた。生きた人間の肉体を切り刻んだような気がした。立ち止まって気持ちを整え、部屋へ入った。震える手で器具を運び出したあと、仕事の残骸を放置すれば、島民を怯えさせ、疑いを招くと思い至った。そこで大量の石とともに籠へ詰め、その夜、海へ捨てることにした。それまでは浜辺に座り、器具の手入れと整理をした。
怪物が現れたあの夜から、私の気持ちはすっかり変わった。以前は、どんな結果になろうと約束を果たすしかないと、暗い絶望のなかで考えていた。今は目の前の薄膜が取り払われ、初めてはっきり物が見えるようだった。仕事を再開する考えなど、一瞬も浮かばない。脅迫は心に重くのしかかったが、自分の意志で動けばそれを避けられるとは思わなかった。最初に造った怪物と同じものをもう一体造るのは、卑劣きわまりない利己的な行為だと心に決め、別の結論へ導く考えはすべて追い払った。
午前二時から三時のあいだに月が昇った。私は籠を小舟に積み、岸から四マイルほど漕ぎ出した。辺りはひっそりとしていた。本土へ戻る舟が数隻あったが、そこから離れて進んだ。恐ろしい罪を犯そうとしているような気がして、人に出会うのが怖かった。澄んでいた月が、ふいに厚い雲に隠れた。その闇に乗じて籠を海へ投げ込んだ。沈むときのごぼごぼという音を聞き、それからその場を離れた。空は曇ったが、吹き始めた北東の風は冷たく、澄んでいた。その風で気分が晴れ、心地よさを覚えたので、しばらく海の上にいることにした。舵をまっすぐに固定し、舟底に身を横たえた。雲に月は隠れ、辺りは暗い。聞こえるのは船底が波を切る音だけだった。その響きに誘われ、ほどなく深く眠った。
どれほど眠っていたかわからない。目覚めると太陽はかなり高く昇っていた。風は強く、波が絶えず小舟を脅かしていた。北東風に流され、出発した海岸から遠く離れてしまったらしい。進路を変えようとしたが、試みればすぐ舟に水が入るとわかった。こうなっては風に流されるしかない。正直に言えば、恐怖を感じた。羅針盤はなく、この辺りの地理にも疎く、太陽も役に立たない。このまま広い大西洋に流され、飢えの苦しみを味わうか、周囲で唸りながら舟を打つ果てしない海にのみ込まれるかもしれない。すでに何時間も海にいて、ほかの苦しみを予告するような、焼けつく喉の渇きを感じていた。空には、風に吹き飛ばされてもすぐ次の雲が現れる。海を見れば、そこが私の墓になるのだと思えた。「悪魔め」と私は叫んだ。「もう望みはかなったぞ!」
残してきたエリザベス、父、クラヴァルのことを考えた。怪物が血に飢えた無慈悲な欲望を、三人に向けるかもしれない。その思いが私を絶望の底へ突き落とした。今まさに命が尽きようとしているこのときでさえ、思い出すと震えるほど恐ろしい想像だった。
そうして数時間が過ぎた。日が地平線へ傾くにつれ、風は次第に弱まってそよ風になり、砕ける波も静まった。代わりに大きなうねりが現れ、吐き気を覚え、舵を握るのもやっとだった。だがそのとき、南に高い陸地が線のように見えた。
疲れと、何時間にも及ぶ恐ろしい不安で力を使い果たしかけていた私の心に、助かるという確信が温かな喜びとなって一気に流れ込んだ。涙が溢れた。
感情とは何と移ろいやすく、どれほど惨めなときにも命にしがみつく愛着とは何と不思議なものだろう。私は服の一部でもう一枚帆を作り、必死に陸へ舵を向けた。荒々しい岩場に見えたが、近づくにつれ耕作の跡がわかった。岸には船が見え、突然、人の文明のそばに戻ってきたようだった。海岸線の曲がり具合を注意深く見ながら進むと、小さな岬の陰から尖塔が現れた。その姿を喜んで迎えた。ひどく衰弱していたので、食べ物を手に入れやすい町へ直接向かうことにした。幸い金は持っていた。岬を回ると、こぢんまりした清潔そうな町と立派な港が見えた。思いがけず助かった喜びに胸を弾ませ、港へ入った。
舟をつなぎ帆を片づけていると、何人もの人が集まってきた。私の姿にひどく驚いたらしい。だが手を貸すどころか、顔を寄せて囁き合い、妙な身振りをした。いつもなら少し不安になっただろうが、そのときは英語を話していることに気づいただけで、私も英語で声をかけた。「皆さん、ここは何という町ですか。今どこにいるのか教えていただけませんか。」
「じきに嫌でもわかるさ」と、しゃがれ声の男が答えた。「気に入る場所とは限らんがな。どこに泊まるか、おまえの希望は聞いてもらえない。保証するよ。」
見知らぬ男の無礼な返事にひどく驚き、仲間たちも怒った顔で睨んでいるので面食らった。「どうしてそんなに乱暴な返事をするのです。」
私は言った。「イングランドの人には、旅人をこれほど冷たく迎える習慣があるとは思えませんが。」
「イングランド人の習慣は知らん」と男は言った。「だがアイルランド人には、悪党を嫌う習慣がある。」
奇妙なやり取りを続けるあいだにも、人はみるみる増えた。好奇心と怒りの入り交じった顔が煩わしく、少し怖くもなった。宿への道を聞いても誰も答えない。歩きだすと、群衆はざわめきながらついて来て、私を取り囲んだ。そこへ人相の悪い男が近づき、肩をたたいて言った。「さあ、キルウィンさんのところへ来てもらおう。話を聞かせてもらう。」
「キルウィンさんとは誰です? なぜ話をしなければならないのですか。ここは自由な国でしょう?」
「ああ、正直者には十分自由だよ。キルウィンさんは治安判事だ。昨夜ここで殺された紳士のことを、おまえに説明してもらう。」
その答えにぎょっとしたが、すぐに落ち着いた。私は無実だし、簡単に証明できる。黙って男について行き、町でも立派な家の一つに連れていかれた。疲れと空腹で倒れそうだったが、大勢に囲まれている以上、精いっぱい気を張るべきだと思った。体の弱りを恐怖や罪の意識と取られてはならない。そのわずか後に降りかかる災いが、恥辱や死への恐れを、恐怖と絶望のなかに消し去るとは、思いもしなかった。
ここで一息つかせてほしい。これから語る恐ろしい出来事を細部まで思い出すには、ありったけの勇気が要る。
第二十一章
間もなく私は治安判事の前に通された。穏やかで優しい物腰の、年配の善良そうな人だった。だが私にはやや厳しい目を向け、それから連れてきた者たちに、誰が証言するのか尋ねた。
六人ほどが前に出た。判事が一人を選ぶと、男は次のように証言した。前の晩、息子と義弟のダニエル・ニュージェントと漁に出ていたところ、十時ごろに強い北風が吹き始めたので港へ戻ることにした。月の出る前で、ひどく暗い夜だった。港ではなく、いつものようにそこから二マイルほど下手にある入り江へ上陸した。男は漁具の一部を持って先に歩き、ほかの二人が少し離れて後に続いた。砂浜を歩いていると何かにつまずき、前のめりに倒れた。仲間が助けに来て、ランタンで照らすと、男が倒れ込んだのは、見たところ死んでいる人の体だった。初めは溺死体が波に打ち上げられたと思ったが、調べると服は濡れておらず、体もまだ冷たくなかった。すぐ近くの老婆の小屋へ運び、蘇生を試みたが無駄だった。二十五歳ほどの顔立ちの整った若者だった。首に指の黒い痕がある以外、暴行の跡は見当たらず、絞め殺されたらしかった。
証言の前半には何の関心もなかった。だが指の痕と聞いた途端、弟が殺されたことを思い出し、ひどく動揺した。手足が震え、目の前がかすみ、椅子につかまらなければならなかった。判事は私を鋭く見つめ、当然ながらその様子に悪い意味を読み取った。
息子は父親の話を裏づけた。続いて呼ばれたダニエル・ニュージェントは、仲間が転ぶ直前、岸から少し離れた所に男が一人乗った舟を見たと断言した。わずかな星明かりで見た限り、それは私が乗ってきた舟と同じだったという。
次に一人の女性が証言した。彼女は浜の近くに住み、遺体が見つかったと聞く一時間ほど前、漁師たちの帰りを待って小屋の戸口に立っていた。そのとき、のちに遺体が見つかった辺りの岸から、男が一人で舟を出すのを見たという。
別の女性は、漁師たちが自分の家へ遺体を運び込んだことを認めた。体はまだ冷たくなかった。寝台に寝かせて体をさすり、ダニエルが薬剤師を呼びに町へ行ったが、息を吹き返すことはなかった。
さらに幾人かが私の上陸について証言した。夜に強い北風が吹いたのだから、私が何時間も海をさまよい、出発した場所の近くへ戻された可能性は高い、という見解で一致した。また、別の場所から遺体を運んだようにも見えると述べた。私が海岸の地理を知らない様子だったので、遺体を置いた所から――町までの距離がわからず、港へ入ってしまったのだろうという。
証言を聞き終えたキルウィンさんは、遺体が埋葬を待って安置されている部屋へ私を連れていき、それを見たときの反応を確かめるよう命じた。殺し方の説明を聞いて私がひどく動揺したためだろう。判事と数人に付き添われ、私は宿へ向かった。この一夜に重なった奇妙な偶然には驚かされた。だが、遺体が見つかった時刻には島で何人もの人と話していたので、この事件が自分に及ぼす影響についてはまったく不安がなかった。
遺体のある部屋へ入り、棺のそばに案内された。それを見たときの気持ちを、どう言い表せばいいのだろう。今も恐怖で喉が渇く。あの瞬間は、思い出すだけで震え、苦しくなる。目の前に横たわるヘンリー・クラヴァルの亡骸を見た途端、取り調べも、判事や証人の存在も、夢のように記憶から消えた。私は息を呑み、その体にすがって叫んだ。「私のせいで君まで命を奪われたのか、愛するヘンリー! もう二人を死なせた。まだ犠牲になる人がいる。だが君は、クラヴァル、私の友よ、私を助けてくれた君まで――」
もはや体は苦痛に耐えきれず、激しい痙攣に襲われた私は部屋から運び出された。
続いて熱病に倒れ、二か月ものあいだ生死の境をさまよった。あとで聞いたところ、私のうわごとは恐ろしいものだった。自分がウィリアムとジュスティーヌとクラヴァルを殺したと叫んだ。世話をする人に、私を苦しめる悪魔を滅ぼすのを手伝ってほしいと頼むこともあった。かと思えば、怪物の指が首をつかんだように感じ、苦痛と恐怖で叫び声を上げた。幸い、うわごとは母国語だったので、理解できたのはキルウィンさんだけだった。それでも身振りと悲痛な叫びは、ほかの者を怯えさせるには十分だった。
なぜ私は死ななかったのか。誰より惨めな身となったのに、なぜ意識を失い、安らぎのなかへ沈めなかったのか。死は、愛する親の唯一の希望である健やかな子どもを大勢奪う。花嫁や若い恋人が、ある日は健康と希望に輝き、次の日には虫と墓場の朽ちゆくものの餌食になった例が、どれほどあることか。車輪の回転のように拷問を繰り返す数々の衝撃に、それでも耐えられる私は、何でできているのだろう。
だが私は生きる運命にあった。二か月後、夢から覚めるように意識を取り戻すと、そこは牢獄だった。粗末な寝台に横たわり、周囲には看守や鍵番、閂をはじめ、地下牢の陰惨な設備があった。朝だったことを覚えている。何が起きたかは細部を忘れ、ただ突然、大きな不幸に押しつぶされたように感じた。だが格子のはまった窓と部屋の汚らしさを見回すうち、すべてが一気に蘇り、私は苦しげに呻いた。
その声で、そばの椅子で眠っていた老女が目を覚ました。雇われた看護人で、鍵番の一人の妻だった。その顔には、この種の人間にありがちな悪い性質がことごとく表れていた。苦しむ人を見慣れながら同情することを知らない者のように、顔立ちは険しく粗野だった。声にも無関心がにじんでいた。英語で話しかけられ、その声を病中に聞いたことがある気がした。
「具合はよくなりましたか」と女は言った。
私は弱々しい声で、同じ英語で答えた。「そう思います。でも、あれがすべて本当で、夢でなかったのなら、まだ生きていて、この苦しみと恐怖を味わわなければならないのが残念です。」
「それが、あんたが殺した紳士のことなら」と老女は答えた。「死んでいたほうがよかったかもしれませんよ。厳しい裁きになるでしょうからね。まあ、私には関係ありません。看護して治すために雇われたんです。私は良心に恥じないよう務めを果たします。誰でもそうすればいいんですけどね。」
死の淵から戻ったばかりの相手に、そんな思いやりのないことを言える女が嫌になり、私は顔をそむけた。だが体は弱りきり、これまでのことを考える力もなかった。自分の生涯すべてが夢のように思えた。現実の重みをもって感じられず、すべて本当のことなのかと疑うこともあった。
頭に浮かぶ光景が鮮明になるにつれ、また熱っぽくなった。闇が迫ってきた。愛情のこもった優しい声で慰める人も、親しい手で支えてくれる人もいない。医師が来て薬を処方し、老女が用意した。だが医師には無関心しか見えず、女の顔には残酷さがはっきり刻まれていた。殺人犯の運命に関心を持つ者など、謝礼を受け取る死刑執行人くらいだろう。
最初はそう思った。だが間もなく、キルウィンさんが非常に親切にしてくれていたことを知った。牢のなかでいちばんよい部屋――それでも惨めな部屋だが――を用意し、医師と看護人を手配してくれたのは彼だった。見舞いにはめったに来なかった。どんな人の苦しみも和らげたいと心から願う人だったが、殺人犯の苦悶とうわごとの場にいることは避けたかったのだ。それでもときおり、世話が行き届いているか確かめに来た。ただし訪問は短く、間隔も長かった。
少しずつ回復していたある日、私は椅子に座り、目を半ば閉じていた。頬には死人のような青さがあった。陰鬱と不幸に押しつぶされ、苦しみしかないこの世界に残るくらいなら、死んだほうがよいと何度も思った。罪を認め、法の裁きを受けるべきかとも考えた。哀れなジュスティーヌより、私はずっと罪深いのだから。そんなことを思っていると部屋の扉が開き、キルウィンさんが入ってきた。同情と哀れみを顔に浮かべ、椅子を引き寄せて座ると、フランス語で話しかけた。
「ここはお辛いでしょう。少しでも楽に過ごせるよう、私にできることはありますか。」
「ありがとうございます。でも、何をしていただいても私には意味がありません。この世のどこにも、私を慰められるものなどないのです。」
「見知らぬ者の同情では、これほど奇妙な不運に打ちのめされた方に、大した慰めにはならないでしょう。ですが、この陰気な場所からは、きっと間もなく出られます。嫌疑を晴らす証拠は、容易に得られるはずです。」
「そんなことはどうでもいいのです。奇妙な出来事の連続で、私は誰より不幸な人間になりました。これほど苦しめられてきた私にとって、死が悪いことでしょうか。」
「確かに、近ごろあなたに起きたことは、これ以上ないほど不運で辛い。思いがけない事故で、旅人を手厚く迎えることで知られるこの土地の岸へ流れ着き、たちまち捕まって殺人を疑われた。そして最初に目にしたのは、不可解な方法で殺され、まるで悪魔に行く手へ置かれたような、ご友人の遺体でした。」
そう言われ、苦しみが蘇って動揺しながらも、私のことをずいぶん知っているのが不思議だった。驚きが顔に出たのだろう。キルウィンさんはすぐに続けた。
「あなたが倒れてすぐ、持ち物にあった書類をすべて預かりました。ご家族へ不幸と病状を知らせる手がかりがないかと思い、調べたのです。手紙が何通かあり、その一通は書き出しから、お父様のものだとわかりました。すぐジュネーヴへ手紙を書きました。あれからもう二か月近く経ちます。ですが、あなたはまだ具合が悪い。今も震えています。刺激を受けてはいけません。」
「待たされるほうが、どんな恐ろしい知らせより千倍も辛い。新たに誰が死んだのですか。今度は誰の死を悼まねばならないのです?」
「ご家族は皆さんご無事です」と、キルウィンさんは優しく言った。「そして、あなたに会いに、親しい方が来ています。」
どういう連想だったのかわからないが、その瞬間、殺人者が私の苦しみを嘲り、クラヴァルの死を突きつけて、地獄のような要求に従わせようと来たのだと思った。私は目を手で覆い、苦しみのあまり叫んだ。
「ああ、追い払ってください! 顔など見たくない。お願いです、ここへ入れないで!」
キルウィンさんは困惑した顔で私を見た。その叫びを、罪を認めた証拠と取るしかなかったのだろう。少し厳しい声で言った。
「お若い方、お父様が来られたら、そんなに嫌がらずに喜ぶと思っていましたが。」
「父が!」と私は叫んだ。顔も体も、苦痛から一転して喜びに緩んだ。「本当に父が来たのですか? 何とありがたいことでしょう! 父はどこです? どうしてすぐ来てくれないのです?」
態度の変化に判事は驚き、喜んだ。先ほどの叫びは、一時的に熱病のうわごとが戻ったのだと思ったのかもしれない。すぐ元の優しさを取り戻して立ち上がり、看護人とともに部屋を出た。ほどなく父が入ってきた。
そのとき、父の到着以上に嬉しいことはなかった。手を伸ばして叫んだ。
「父さんは無事なんですね。エリザベスも、アーネストも?」
父は皆の無事を保証し、私が心から気にかける人たちの話をして、沈んだ気持ちを励まそうとした。だが牢獄が明るい気分になれる場所でないことは、すぐにわかった。「何という所にいるんだ、ヴィクター」と父は言い、格子窓と粗末な部屋を悲しげに見回した。「幸せを求めて旅に出たのに、不幸がおまえを追ってくるようだ。それに、かわいそうなクラヴァルまで――」
殺された不運な友人の名は、弱りきった私にはあまりに辛く、涙がこぼれた。
「ああ、そうです、父さん」と答えた。「恐ろしい運命が私につきまとっている。それを果たすために生きなければならないのです。そうでなければ、ヘンリーの棺の上で死んでいたはずです。」
長く話すことは許されなかった。健康状態が不安定なので、平静を保つための注意がすべて必要だった。キルウィンさんが入ってきて、話しすぎて体力を使ってはならないと言った。だが父の姿は守護天使のようで、私は少しずつ健康を取り戻した。
病が去ると、何をしても消えない暗く重い憂鬱に囚われた。殺されたクラヴァルのむごたらしい姿が、絶えず目の前にあった。その記憶に取り乱し、危険なほど病がぶり返すのではないかと、友人たちを何度も心配させた。ああ、なぜ彼らは、これほど惨めで忌まわしい命を救ったのか。今や終わりに近づいた運命を、私が果たすためなのだろう。じきに、ああ、もうすぐ死がこの胸の高鳴りを止め、私を地に押しつぶす苦しみから解放してくれる。そして正義の裁きを遂げ、私も安らぎにつくのだ。だが当時、死はまだ遠い先にあるように見えた。望む気持ちは絶えなかったが、私は何時間も身動きせず、何も話さずに座り、私と私を破滅させたものとを、まとめて瓦礫の下に埋めるような大変動を願っていた。
巡回裁判の時期が近づいた。すでに三か月牢にいた。まだ弱く、いつ病がぶり返してもおかしくなかったが、裁判所のある地方の町まで百マイル近く移動しなければならなかった。キルウィンさんが証人集めと弁護の手配を一手に引き受けてくれた。事件は生死を裁く法廷へ持ち込まれず、犯罪者として公衆の前に立つ恥は免れた。友人の遺体が発見された時刻に私がオークニー諸島にいたと証明され、大陪審は起訴を退けた。移送から二週間後、私は釈放された。
父は、殺人の嫌疑という苦痛から私が解放され、また新鮮な空気を吸い、故国へ帰れることを心から喜んだ。私は同じ気持ちにはなれなかった。牢獄も宮殿も、私には等しく忌まわしい。人生の杯には、永遠に毒が注がれていた。明るく幸福な人々と同じ太陽に照らされながら、私の周囲には、光の差さぬ濃い恐ろしい闇しか見えなかった。ただ二つの目が、薄明かりのなかから私を睨みつけていた。あるときは死に瀕したヘンリーの訴えかけるような目で、長い黒いまつ毛のついた瞼が暗い瞳に半ばかぶさっていた。またあるときは、インゴルシュタットの部屋で初めて見た、怪物の濁って潤んだ目だった。
父は私の愛情を呼び覚まそうとした。間もなく帰るジュネーヴや、エリザベス、アーネストの話をした。だがそれを聞くと、私の口からは深い呻きが出るだけだった。ときには幸福を求める気持ちが戻り、愛する従妹を思って物悲しい喜びを覚えた。幼いころから親しんだ青い湖と流れの速いローヌ川を、身を焦がすような望郷の念とともにもう一度見たいとも思った。だが普段は感情が麻痺し、牢獄も自然界で最も美しい場所も、住むには同じだった。そこから抜け出すのは、激しい苦痛と絶望に襲われるときだけだった。そんなときには、嫌い抜いた命を絶とうとすることも多く、恐ろしい行動に出ないよう、絶えず人に付き添い、見張ってもらう必要があった。
それでも、一つの務めが残っていた。それを思う気持ちが、ついには身勝手な絶望に打ち勝った。一刻も早くジュネーヴへ戻り、心から愛する人々の命を守り、殺人者を待ち受けなければならない。隠れ場所を見つけることがあれば、あるいは再び姿を現して私を苦しめるならば、必ず狙いを定め、私が命を与えたあの醜い姿と、それ以上に醜い魂もどきの存在を終わらせるのだ。父は出発を延ばしたがった。旅の疲れに耐えられないと心配したのだ。私は壊れかけた残骸で、人間の影にすぎなかった。力は失われ、骨と皮だけになった体を、昼も夜も熱が蝕んでいた。
それでも、アイルランドを去りたいと私が不安げに、苛立つほど強く訴え続けたので、父も譲ることにした。私たちはアヴル=シュル=メール行きの船に乗り、追い風を受けてアイルランドの岸を離れた。真夜中だった。甲板に横たわり、星を見上げ、波の打つ音を聞いた。アイルランドが暗闇に隠れるのを喜び、じきにジュネーヴを見られると思うと、熱に浮かされたように胸が躍った。過去は恐ろしい夢に思えた。だが私をあの憎むべきアイルランドの岸から運ぶ船、吹く風、周囲を囲む海が、それは幻ではなく、友であり最も親しい道連れだったクラヴァルは、私と私の造った怪物の犠牲になったのだと、容赦なく告げていた。私は生涯を頭のなかでたどり直した。ジュネーヴの家族と過ごした静かな幸せ、母の死、インゴルシュタットへの旅立ち。醜い敵を造り出すまで自分を駆り立てた狂気じみた情熱と、怪物が初めて息をした夜を思い、身を震わせた。もう考え続けられなかった。幾千もの感情が押し寄せ、私は激しく泣いた。
熱病から回復して以来、生きていくのに必要な睡眠を得るため、毎晩少量の阿片チンキを飲んでいた。その薬がなければ休めなかった。数々の不幸の記憶に押しつぶされ、その夜はいつもの倍を飲み、ほどなく深く眠った。だが、眠っても思いと苦しみからは逃れられなかった。夢には恐ろしいものが幾千も現れた。朝方には悪夢に取りつかれ、怪物が首をつかみ、どうしても振りほどけなかった。呻きや叫びが耳に響いた。付き添っていた父が私の苦しむ様子に気づき、起こしてくれた。周囲には波の音がし、頭上には曇り空がある。怪物はいない。今この時と、避けられない悲惨な未来とのあいだには、ひととき休戦が訪れたようだった。その安心感が、束の間の穏やかな忘却を与えてくれた。人の心には、そうした忘却に身を委ねる性質が備わっているのだ。
第二十二章
船旅が終わり、私たちは上陸してパリへ向かった。私はすぐ、力を使いすぎたことに気づいた。旅を続ける前に休息が必要だった。父は疲れを知らずに気遣ってくれたが、苦しみの原因を知らないため、治せない病に間違った方法で対処しようとした。人と交わって気晴らしをするよう勧めたのだ。私は人の顔を見るのが嫌だった。いや、嫌いなはずはない。彼らは私の同胞であり、どれほど不快な相手にも、天使のような存在として惹かれた。だが私には、人々の輪に加わる資格がない。人間の血を流し、呻きを楽しむ敵を、そのなかへ放ってしまったのだ。私の忌まわしい行いと、そこから生まれた犯罪を知れば、誰もが私を憎み、世の果てまで追いやるだろう。
父はやがて、人づきあいを避けたいという私の望みを受け入れた。そしてさまざまな言葉で、絶望を払おうと努めた。殺人の嫌疑をかけられた屈辱を深く気にしていると思い、誇りなど無意味だと説くこともあった。
「ああ、父さん」と私は言った。「私のことがまるでわかっていない。私のような者が誇りを抱けるなら、人間の感情も情熱もおとしめられてしまいます。哀れなジュスティーヌも、私と同じく無実だったのに、同じ罪を疑われ、処刑された。その原因は私です。私が殺したのです。ウィリアムもジュスティーヌもヘンリーも、皆、私の手で死んだ。」
投獄されているあいだも、父は何度も同じ言葉を聞いていた。私が自分を責めると、説明を求めたそうにすることもあれば、病中の妄想が回復後も残っているのだと思うこともあった。私は説明を避け、自分が造った怪物のことは話さなかった。狂ったと思われるに違いないという確信だけでも、口を閉ざすには十分だった。しかも、聞く者を震え上がらせ、心に異様な恐怖を植えつける秘密を、どうしても明かす気になれなかった。共感を求める切実な思いを抑え、何もかも打ち明けられるなら世界を差し出してもいいと思いながら、沈黙を守った。それでも、今記したような言葉は、制しきれずに飛び出した。説明はできなくても、真実を一部口にすると、秘密の苦しみが少し軽くなった。
このとき父は、心底驚いた顔で言った。「ヴィクター、いったいどうしたんだ。頼むから、もう二度とそんなことを言わないでくれ。」
「私は狂っていません」と私は強く叫んだ。「私の仕事を見ていた太陽も空も、証人になってくれます。罪のないあの人たちを殺したのは私です。私のしたことのせいで死んだ。助けられるなら、自分の血を一滴ずつ、千回でも流したでしょう。でも父さん、できなかった。本当に、人類すべてを犠牲にはできなかったのです。」
最後の言葉で、父は私の心が乱れていると確信した。すぐに話題を変え、私の考えを別の方向へ向けようとした。アイルランドでの出来事をできるだけ忘れさせようとして、自分から話題にせず、私にも不幸について話させなかった。
時が経つにつれ、私は落ち着いた。苦しみは心のなかに住みついていたが、自分の罪について、以前のように筋の通らない話し方をすることはなくなった。罪を自覚しているだけで十分だった。世界中へ叫びたがる不幸の声を、強いて抑え込んだ。その結果、氷の海への旅に出てからというもの、最も穏やかで落ち着いた態度を保てるようになった。
パリを発ち、スイスへ向かう数日前、エリザベスから次の手紙が届いた。
「大切なヴィクターへ
「パリから叔父様のお手紙が届き、とても嬉しく思いました。もう遠く離れてはいないのですね。二週間もしないうちに会えるかもしれません。かわいそうなヴィクター、どれほど苦しんだことでしょう。ジュネーヴを発ったときより、もっと具合が悪そうになっているのではと心配です。私もこの冬は、先の見えない不安に苦しみ、ひどく辛い日々を過ごしました。それでも、あなたの顔に安らぎを見いだし、心に少しは慰めと落ち着きが戻っていることを願っています。
「ただ、一年前にあなたをあれほど苦しめた思いが、今も消えていないのではないか、時とともに強まってさえいるのではないかと不安です。多くの不幸を抱えている今、心を乱したくはありません。それでも、叔父様が出発する前に交わした会話のことを思うと、再会する前に説明しておかねばなりません。
「説明、と聞いて驚くでしょう。エリザベスが何を説明するのか、と。もし本当にそう思うなら、私の疑問はすべて解け、心配もなくなります。でも離れている今、あなたはこの説明を恐れながら、待ってもいるかもしれません。そうだとしたら、もう書くのを延ばせません。あなたの留守中、何度も伝えたいと思いながら、書き出す勇気が出なかったことです。
「私たちの結婚を、幼いころからご両親が願っていたのは、あなたもよく知っているでしょう。子どものころからそう聞かされ、いずれ当然そうなるものだと思ってきました。幼い私たちは仲のよい遊び友達で、大きくなるにつれ、大切な友人同士になったと思います。でも兄と妹も、深く愛し合いながら結婚は望まないものです。私たちもそうなのではありませんか。ヴィクター、どうか教えてください。二人の幸せのために、ありのまま答えてください。ほかに愛する人がいるのではありませんか。
「あなたは旅をし、インゴルシュタットで何年も過ごしました。去年の秋、あれほど不幸そうに、人を避けて一人になろうとするあなたを見たとき、もしかすると私との約束を悔やんでいるのでは、と考えずにいられませんでした。本当の望みに反しても、ご両親の願いを叶えるのが義務だと思っているのではないか、と。でも、それは間違いです。あなたを愛しています。将来を夢見るとき、いつも私の友人で、伴侶でいてくれたのはあなたです。それでも私が願うのは、あなたの幸せでもあります。あなた自身が自由に望んで選ぶのでなければ、結婚しても私は生涯不幸です。今でさえ、これほど残酷な不幸に打ちひしがれたあなたが、義務という言葉のために、立ち直るために必要な愛と幸福への希望を押し殺すかもしれないと思うと、涙が出ます。自分の利益を求めずにあなたを愛する私が、望みを妨げ、苦しみを十倍にしているかもしれない。ああ、ヴィクター、あなたの従妹で遊び友達だった私が、そんな想像をして平気でいられるほど薄情でないことを、どうかわかってください。幸せになって。私のこの願いだけを聞いてくれたら、私の心の平穏を乱せるものなど、この世には何もありません。
「この手紙で心を乱さないでください。辛ければ明日も明後日も返事をしなくていい。帰ってきてからでもかまいません。あなたの体調は叔父様が知らせてくださいます。再会したとき、私の言葉で、あるいは私のした何かで、あなたの顔に一度でも笑顔が浮かべば、それだけで私は幸せです。
「エリザベス・ラヴェンツァ
「ジュネーヴ、一七――年五月十八日。」
手紙を読んで、忘れていた怪物の脅迫が蘇った。「結婚の夜、おまえのそばに行く」。それが私への宣告だった。その夜、怪物はあらゆる手を使って私を滅ぼし、苦しみを幾らか慰めてくれるはずの幸福から引き離すつもりだ。私を殺して、罪を完成させると決めたのだろう。いいだろう。命を懸けた戦いになるはずだ。怪物が勝てば、私は安らぎを得て、その支配も終わる。私が勝てば自由になる。だが、何という自由だろう。家族を目の前で殺され、家を焼かれ、土地を荒らされ、住む場所も金もなく、ただ一人放り出された農民の自由と同じだ。私にもエリザベスという宝は残るだろう。だが、その喜びを打ち消す罪悪感と後悔は、死ぬまでつきまとう。
愛しいエリザベス。私は手紙を何度も読み返した。心に優しい感情が戻り、愛と喜びに満ちた楽園の夢を、ひそかに囁きかけてくれた。だが禁断の実はすでに食べてしまった。天使は腕を振り上げ、希望のすべてから私を追い払おうとしている。それでも彼女の幸せのためなら死ねる。怪物が脅迫を実行すれば、死は避けられない。だが結婚がその日を早めるかどうかも考えた。破滅が数か月早まるかもしれない。しかし脅迫を恐れて結婚を延ばしたと怪物が思えば、ほかの、おそらくもっと恐ろしい方法で復讐するだろう。結婚の夜にそばにいると誓いながら、それまで手を出さないとは考えていない。脅迫した直後、まだ血に飽きていないと示すかのように、クラヴァルを殺したのだから。そこで、すぐ結婚することでエリザベスか父が幸せになるのなら、敵のたくらみのせいで一時間も延ばすまいと決めた。
そう決めてエリザベスに手紙を書いた。穏やかに、愛情をこめて。「愛するエリザベス」と私は書いた。「この世で私たちに残された幸せは、少ないのかもしれない。でも、いつか私が味わえる幸せは、すべて君のなかにある。根拠のない不安は捨ててほしい。私は君だけのために生き、心の安らぎを求めて努力する。一つ秘密があるんだ。恐ろしい秘密だ。打ち明ければ、君は全身を凍らせるだろう。そして私が苦しんでいることに驚くどころか、これだけの目に遭ってなお生きていることを不思議に思うはずだ。結婚の翌日、この悲しみと恐怖の話をすべて打ち明ける。愛しい従妹よ、私たちのあいだには完全な信頼がなければならないのだから。でもそれまでは、どうかそのことに触れないでほしい。心から頼む。君なら聞いてくれると信じている。」
エリザベスの手紙が届いて一週間ほど後、私たちはジュネーヴへ戻った。彼女は温かい愛情で迎えてくれたが、痩せた体と熱っぽい頬を見て、目に涙を浮かべた。彼女自身も変わっていた。痩せ、以前私を魅了した天真爛漫な生気をずいぶん失っていた。それでも優しさといたわりに満ちた眼差しは、傷つき不幸になった私に、いっそうふさわしい伴侶に思えた。
手に入れた平穏は長く続かなかった。記憶が狂気を連れてきた。過去を思い出すと、本当に心が乱れ、ときには怒り狂い、ときには気力を失い、沈み込んだ。誰とも話さず、目も合わせず、押し寄せる不幸の数々に呆然として、動かずに座っていた。
そんな発作から私を連れ戻せるのは、エリザベスだけだった。怒りに我を忘れたときには優しい声で鎮め、感情が麻痺したときには人間らしい心を取り戻させた。私とともに、私のために泣いてくれた。理性が戻ると、諭し、運命を受け入れるよう励ました。ああ、不幸な者には諦めが慰めになる。だが罪ある者に安らぎはない。悔恨の苦しみが、悲しみに身を任せることでときに得られる、わずかな慰めさえ毒してしまう。
帰宅して間もなく、父がエリザベスとの結婚をすぐに決めてはどうかと言った。私は黙っていた。
「ほかに想う人がいるのかい。」
「この世にはいません。私はエリザベスを愛し、結婚を心待ちにしています。日を決めてください。その日、私は生きるにせよ死ぬにせよ、従妹の幸せにすべてを捧げます。」
「ヴィクター、そんな言い方はやめなさい。私たちはひどい不幸に遭った。だからこそ、残された人ともっと強く結びつき、失った人への愛も、生きている人へ注ごう。家族は少なくなっても、愛情とともに味わった不幸で、いっそう固く結ばれる。時が経ち、おまえの絶望が和らげば、奪われた人たちに代わって、愛情を注ぐ新しい命も生まれるだろう。」
父はそう諭した。だが私には、脅迫の記憶が戻っていた。怪物は血を流すたび圧倒的な力を見せてきた。無敵にさえ思えたのも無理はない。「結婚の夜、おまえのそばに行く」と宣告された運命は避けられないと思った。だがエリザベスを失わずに済むなら、死も私には災いではなかった。そこで私は、落ち着いた、それどころか明るい顔で、彼女さえ承知するなら十日後に式を挙げることに父と同意した。それで自分の運命が決まるのだと思った。
ああ、神よ! 悪魔のような敵が本当は何をたくらんでいるのか、ほんの一瞬でも思い至っていたら、あの不幸な結婚を承諾するより、故国を永遠に離れ、友もない流浪の身として世界をさまよっただろう。だが怪物は魔法の力でも使ったかのように、その真の意図から私の目をそらしていた。自分の死を用意しているつもりで、私はもっと大切な人の死を早めたのだ。
式の日が近づくにつれ、臆病さからか、予感があったのか、胸が沈んだ。私は陽気なふりをして隠した。その様子に父は笑顔を取り戻し、喜んだが、いつも私に気を配るエリザベスの鋭い目は、ほとんど欺けなかった。彼女は静かな満足をもって結婚を待っていたが、そこには過去の不幸が植えつけた小さな恐れも混じっていた。確かに手が届きそうに思える幸せが、すぐに夢のように消え、深く永遠に続く後悔だけを残すのではないか、と。
式の準備が進み、祝福に来る客を迎え、誰もが笑顔だった。私は胸を蝕む不安をできるだけ閉じ込め、父の計画に熱心に加わるふりをした。その計画が、私の悲劇を飾るものにしかならないかもしれないのに。父の尽力で、エリザベスは遺産の一部をオーストリア政府から取り戻していた。コモ湖畔の小さな土地だった。結婚後はすぐにラヴェンツァ邸へ向かい、美しい湖のほとりで最初の幸福な日々を過ごすことになった。
一方、怪物が正面から襲ってきた場合に備え、私はできる限りの用心をした。拳銃と短剣を常に持ち歩き、だまし討ちにも警戒した。おかげで幾らか落ち着いた。式の日が近づくと、脅迫は心の平穏を乱すほどのものではなく、妄想だったようにさえ思えた。一方で、誰もが結婚を邪魔されようのない確かな出来事として口にするので、その日が近づくにつれ、結婚によって得られるはずの幸せも、いっそう現実味を帯びてきた。
エリザベスは幸せそうで、私の穏やかな態度も彼女を大いに安心させた。だが私の望みと運命がかなうはずの日、彼女は物悲しげで、不吉な予感に囚われていた。翌日打ち明けると約束した恐ろしい秘密を、気にかけていたのかもしれない。父は喜びに溢れ、準備の忙しさもあって、姪の憂鬱を花嫁のはにかみとしか見なさなかった。
式のあと、父の家には大勢が集まった。だが私たち二人は船で旅立ち、その夜はエヴィアンに泊まり、翌日も船旅を続けることになっていた。よく晴れ、風もよい。新婚の船出には、すべてが微笑んでいるようだった。
私が幸福を感じたのは、あれが最後だった。船は速く進んだ。日は暑かったが、私たちは天蓋のような覆いの陰にいて、景色を楽しんだ。湖の片側を見ればサレヴ山と、心地よいモンタレグルの岸辺。遠くには何よりも高く美しいモンブランと、その高さに届こうとしても及ばぬ雪山の連なりがあった。対岸沿いに進むと、暗い山肌を見せる雄大なジュラ山脈が、故国を捨てようとする者の野心を阻み、征服を望む侵略者の前には、ほとんど越えられない壁となっていた。
私はエリザベスの手を取った。「悲しそうだね。愛しい人。ああ、私がこれまでどれほど苦しみ、これから何に耐えなければならないかを知れば、せめて今日一日だけ許された、この静けさと絶望からの解放を味わわせてくれるだろうに。」
「幸せでいて、ヴィクター」とエリザベスは答えた。「もうあなたを苦しめるものが何もないよう祈っているわ。顔に弾むような喜びが見えなくても、心は満たされているのよ。ただ、目の前に開けた未来をあまり信じすぎてはだめ、と何かが囁くの。でも、そんな不吉な声には耳を貸さないわ。ほら、こんなに速く進んでいる。雲がモンブランの頂を隠したり、上へ流れたりするたび、この美しい眺めがますます素敵になるわ。澄んだ水には数えきれない魚が泳ぎ、底の小石まで一つ一つ見える。何てすばらしい日でしょう。自然のすべてが、こんなに幸せで穏やかに見える!」
そうしてエリザベスは、自分も私も暗いことを考えずに済むよう努めた。だが気持ちは揺れ動いた。ほんの一瞬、目に喜びが輝いても、すぐにぼんやりした物思いに取って代わられた。
太陽は空を下り、私たちはドランス川を通り過ぎた。高い山の裂け目や低い丘の谷間を抜けてきた川筋が見えた。この辺りではアルプスが湖に迫り、私たちは東の端を囲む円形劇場のような山並みに近づいた。エヴィアンの尖塔が周囲の森の下に輝き、その上には山が幾重にもそびえていた。
驚くほど速く船を運んでくれた風は、日没とともにそよ風へ変わった。岸に近づくと、柔らかな風が水面にさざ波を立て、木々を心地よく揺らし、花と干し草の甘い香りを運んできた。上陸するころ太陽は地平線に沈んだ。岸に足を踏み出したとき、私は不安と恐怖が蘇るのを感じた。それは間もなく私を捕らえ、永遠に離れなくなるのだった。
第二十三章
上陸したのは八時だった。しばらく岸辺を歩いて残る日の光を楽しみ、それから宿へ入った。暗闇に包まれながらも、黒い輪郭の見える湖と森と山の美しい景色を眺めた。
南から吹いていた風がやんだかと思うと、今度は西から激しく吹き始めた。月は空の頂点を越え、下り始めていた。雲が禿鷹より速く月の前を流れ、その光を曇らせた。湖はせわしない空を映していたが、立ち始めた波によって、その眺めはさらに騒がしくなった。突然、激しい雨が降り出した。
日中は落ち着いていた私も、夜に景色が隠されると、幾千もの恐れが湧き起こった。胸元に隠した拳銃を右手で握り、神経を研ぎ澄ませた。どんな音にも怯えたが、命は高く売ってやるつもりだった。自分か敵のどちらかが死ぬまで、戦いから逃げまいと決めていた。
エリザベスはしばらく、怯えて口もきかずに私の様子を見ていた。だが私の目に浮かぶものが彼女にも恐怖を伝えたのだろう。震えながら尋ねた。「どうしたの、ヴィクター。何をそんなに怖がっているの?」
「ああ、落ち着いて、愛しい人」と私は答えた。「今夜さえ過ぎれば、すべて大丈夫だ。ただ、今夜は恐ろしい。とても恐ろしいんだ。」
そのまま一時間が過ぎ、私は突然、まもなく始まるはずの戦いが妻にとってどれほど恐ろしいかに思い至った。そこで、敵の居場所がわかるまではそばへ行かないと決め、彼女に先に部屋へ戻るよう切に頼んだ。
エリザベスが去ったあと、私は宿の廊下をしばらく行き来し、敵が隠れられそうな隅をくまなく調べた。だが痕跡はなかった。幸運な偶然が脅迫の実行を妨げたのではないかと思いかけたとき、突然、甲高い恐ろしい叫びが聞こえた。エリザベスの入った部屋からだ。声を聞くや、すべてを悟った。腕から力が抜け、筋肉も体の隅々も動かなくなった。血が血管を流れ、手足の先がしびれるのを感じた。その状態は一瞬だけだった。また叫び声がして、私は部屋へ駆け込んだ。
神よ! なぜあのとき死ななかったのか。地上で最も清らかな人と、私の最も大切な希望が滅ぼされたことを、なぜこうして語らねばならないのか。エリザベスは寝台に横たわり、命を失って動かなかった。頭は垂れ、青白く歪んだ顔は髪に半ば覆われていた。今も目を向けるたび、同じ姿が見える。血の気のない腕、力を失い、殺人者によって婚礼の寝台に投げ出された体。あれを見てなお、生きられるものか。ああ、命は頑固なもので、最も憎まれるときにこそ、しがみついてくる。私はほんの一瞬、意識を失い、床に倒れた。
気がつくと宿の人々に囲まれていた。誰もが息を呑むほど怯えた顔をしていたが、その恐怖は、私を押しつぶす感情に比べれば、まがい物か、その影ほどにしか見えなかった。彼らを振り切り、つい先ほどまで生きていた、愛する妻エリザベスの遺体のある部屋へ戻った。初めに見たときから姿勢が変えられていた。腕に頭を預け、顔と首にハンカチがかけられている。眠っていると思えなくもなかった。私は駆け寄って強く抱きしめた。だが手足の冷たさと死の脱力が、腕のなかにいるのは、もう私の愛し、大切にしてきたエリザベスではないと告げた。首には怪物の手による痣が残り、唇から息は出ていなかった。
絶望に苦しみながら妻の上に身をかがめていると、ふと顔を上げた。それまで閉ざされていた部屋の窓から、青白く黄色がかった月の光が差し込んでいて、胸に恐怖が走った。雨戸は開かれていた。開いた窓には、筆舌に尽くせぬほど醜く忌まわしい姿があった。怪物の顔には笑みが浮かび、悪魔の指で妻の遺体を指さして、私を嘲っているようだった。私は窓へ駆け寄り、胸から拳銃を抜いて撃った。だが怪物は身をかわし、窓から飛び降りると、稲妻のような速さで走って湖へ飛び込んだ。
銃声を聞いて人々が部屋に集まった。怪物の消えた場所を示し、私たちは舟で追った。網も投げたが無駄だった。何時間も捜したあと、望みを失って戻った。同行した者の多くは、怪物など私の空想が生んだ姿だと思っていた。上陸してからも、人々は何組かに分かれ、森や葡萄畑のあいだを捜した。
私も加わろうと、宿から少し歩いた。だが目が回り、酔ったように足元がふらつき、とうとう力尽きて倒れた。目はかすみ、熱で肌が焼けつくようだった。宿に運び戻され、寝台に寝かされた。何が起きたのかもよくわからず、失った何かを探すように、部屋のなかを目で追った。
しばらくして起き上がり、本能に突き動かされるように、愛する人の遺体が横たわる部屋へ這っていった。そばでは女性たちが泣いていた。私も身をかがめ、一緒に涙を流した。そのあいだ、頭にはっきりした考えは何も浮かばず、不幸とその原因を混乱したまま思い巡らせていた。驚きと恐怖の霧のなかで、何もわからなかった。ウィリアムの死、ジュスティーヌの処刑、クラヴァルの殺害、そして妻の死。そのときなお、残された親しい者たちが怪物の悪意から無事なのか知らなかった。今この瞬間、父がその手に苦しめられ、アーネストが足元で死んでいるかもしれない。その考えに震え、我に返った。私は跳ね起き、できる限り早くジュネーヴへ戻ることを決めた。
馬は手に入らず、湖を渡るしかなかった。風向きは悪く、雨も激しく降っていた。だがまだ朝になったばかりで、夜までには着けるだろう。舟を漕ぐ人を雇い、自分も櫂を取った。体を動かすと、いつも心の苦しみが和らいだからだ。だが今の悲しみは溢れるほど深く、動揺も激しく、力を出せなかった。櫂を置き、両手に頭を預けて、湧き上がる暗い思いに身を任せた。顔を上げれば、幸せなころから慣れ親しみ、つい昨日も、今は思い出のなかにしかいない彼女と眺めた景色があった。涙が流れた。雨が一時やむと、水のなかで魚が遊ぶ姿が見えた。ほんの数時間前、エリザベスも魚たちを見ていた。大きく突然の変化ほど、人の心を苦しめるものはない。日が照っても、雲が垂れ込めても、もう何も昨日と同じには見えなかった。怪物が、未来の幸福への希望をすべて私から奪った。私ほど惨めな人間はかつていなかっただろう。人の歴史にも、これほど恐ろしい出来事は一つしかない。
だが、最後に降りかかったあの災いのあとに起きたことを、なぜ長々と語る必要があるだろう。私の話は恐怖の連続だった。その頂点にはもう達した。残りはあなたを退屈させるだけだ。親しい人々が次々に奪われ、私は一人になった。それだけ知ってほしい。もう力も尽きかけている。忌まわしい話の残りは手短に語ろう。
私はジュネーヴに着いた。父とアーネストはまだ生きていた。だが私が持ち帰った知らせに、父は倒れた。立派で尊敬すべき老人の姿が、今も目に浮かぶ。父の目は虚ろにさまよっていた。心の喜びであり、生きる張り合いでもあったエリザベスを失ったのだ。娘以上に愛していた。年老いて愛する人が少なくなれば、残された者をいっそう強く抱きしめるものだ。白髪の父に不幸をもたらし、苦しみのうちに衰えさせた怪物に、呪いあれ、幾重にも呪いあれ! 積み重なる恐怖に、父は耐えられなかった。命を支える力が突然絶え、寝台から起き上がれなくなり、数日後、私の腕のなかで死んだ。
そのあと私がどうなったのか、わからない。感覚を失い、意識にあるのは鎖と闇だけだった。若いころの友人たちと、花咲く草原や心地よい谷を歩く夢を見ることもあった。だが目覚めれば牢にいた。憂鬱な日々が続き、次第に自分の不幸と置かれた状況を理解できるようになると、ようやくそこから出された。私は狂ったと見なされ、聞けば何か月も独房に入れられていたのだ。
だが自由も、理性を取り戻すとともに復讐心を取り戻していなければ、私には無用の贈り物だった。過去の災いの記憶が押し寄せるにつれ、その原因を考え始めた。私が造り、私を破滅させるために世へ送り出した怪物、あの惨めな悪魔だ。思い浮かべるたび気が狂うほど怒り、何としてもこの手で捕らえ、その呪われた頭に思い知らせてやりたいと、熱烈に願い、祈った。
憎しみは、願うだけでは収まらなかった。捕まえるための最善の方法を考え始め、釈放から一か月ほど後、町の刑事を扱う判事を訪ねた。告発したい相手がいること、家族を滅ぼした者を知っていることを伝え、殺人者を捕らえるために権限を尽くしてほしいと頼んだ。
判事は親身になって、注意深く聞いてくれた。「ご安心ください」と言った。「その悪党を見つけるため、できる限りの手を尽くします。」
「ありがとうございます。では、私の話を聞いてください。あまりに奇妙で、真実にはどれほど驚くべき話も信じさせる力があるのでなければ、信じていただけないと思うほどです。ですが夢と取り違えられるような曖昧な話ではありませんし、私には嘘をつく理由もありません。」
そう話す私の態度は真剣だが落ち着いていた。自分を破滅させたものを死ぬまで追うと、心に決めていたからだ。その目的が苦痛を鎮め、しばらくのあいだ生きることを受け入れさせた。私は起きたことを簡潔に、だが確固とした態度で正確に語った。日付もきちんと示し、罵ったり叫んだりはしなかった。
判事は初め、まったく信じていない様子だった。だが話を続けるにつれ、熱心に耳を傾け、関心を深めた。恐怖に身を震わせることもあれば、疑いではなく驚きだけが顔に浮かぶこともあった。
語り終えて私は言った。「私が告発するのは、この存在です。捕らえて罰するため、あなたの権限をすべて使っていただきたい。それが判事としての務めですし、人間としての心も、その務めを果たすことを拒まないと信じています。」
そう求めると、聞き手の顔つきは大きく変わった。幽霊や超自然の話に向けるような、半信半疑の気持ちで私の話を聞いていたのだろう。だが職務として行動を求められると、疑いが一気に戻った。それでも穏やかに答えた。「追跡には喜んで協力します。ですが、あなたの話す生き物には、私たちの努力を退ける力があるようです。氷の海を渡り、人が踏み込めない洞窟や巣穴に住めるものを、誰が追えるでしょう。それに罪を犯してからもう何か月も経っています。どこへ去り、今どの土地にいるのか、見当もつきません。」
「私の住む場所の近くをうろついているはずです。もしアルプスへ逃げ込んだとしても、カモシカのように追い、猛獣として仕留められます。ですが、何を考えているかわかりました。私の話を信じず、敵にふさわしい罰を与えるつもりもないのですね。」
怒りが目に宿ったのだろう。判事は怯えた。「誤解です」と言った。「力を尽くします。怪物を捕らえられるなら、罪に見合う罰を受けさせます。ただ、ご自身が語った能力を考えると、それは難しいでしょう。しかるべき手はすべて打ちますが、成果が得られない場合にも備えてください。」
「備えるなどできません。ですが、これ以上何を言っても無駄でしょう。私の復讐など、あなたには大したことではない。復讐が悪いことだとは認めます。それでも今の私の心には、それしかない。私が人々のなかに放った殺人者が、まだ生きていると思うと、言葉にできない怒りを覚えます。正当な願いを聞き入れていただけないのなら、道は一つしかありません。生きているあいだに、あるいは命と引き換えに、必ず奴を滅ぼします。」
そう言いながら私は激しく震えた。態度には狂気じみたものがあり、昔の殉教者にあったと言われる、誇り高い激しさもにじんでいたに違いない。だが信念や英雄的行為とは無縁のことを考えて暮らすジュネーヴの判事には、その高揚はほとんど狂気に見えた。彼は乳母が子どもをあやすように私を落ち着かせようとし、話の内容を病気のうわごとによるものと片づけた。
「あなたという人は」と私は叫んだ。「賢いつもりで、何もわかっていない! もうやめてください。自分が何を言っているか、わかっていないのです。」
私は怒りと動揺のなかで家を飛び出し、別の手を考えるため、その場を去った。
第二十四章
今の私には、自分の意志で何かを考える余地などなかった。怒りに駆り立てられ、復讐心だけが私に力と平静を与えていた。それが私の感情を形づくり、さもなければ錯乱するか死ぬかしていたはずのときにも、冷静に策を練ることを可能にした。
最初に決めたのは、ジュネーヴを永久に去ることだった。幸福で愛されていたころには大切だった祖国が、不幸のさなかにある今は憎らしかった。金と、母の形見の宝石を少し持って、私は旅立った。
こうして、生ある限り終わることのない放浪が始まった。私は広大な土地を踏破し、荒野や未開の地を旅する者が味わうあらゆる苦難に耐えてきた。どうやって生き延びたのか、自分でもよくわからない。幾度も力の尽きた手足を砂地に投げ出し、死を願った。だが、復讐心が私を生かした。敵を生かしたまま死ぬわけにはいかなかった。
ジュネーヴを出てまず取りかかったのは、忌まわしい敵の足取りをたどる手がかりを探すことだった。だが方針は定まらず、どの道を行けばよいのかわからないまま、町外れを何時間もさまよった。夜が近づくころ、私はウィリアムとエリザベスと父の眠る墓地の入り口にいた。中に入り、三人の墓を示す墓石に近づいた。風にそよぐ木の葉を除いて、あたりは静まり返っていた。ほぼ闇に包まれたその光景は、縁のない者の胸をも打つほど厳かだった。死者たちの霊があたりを漂い、嘆き悲しむ私の頭上に、目には見えずとも感じられる影を落としているように思えた。
初めに湧き上がった深い悲しみは、たちまち怒りと絶望に変わった。三人は死に、私は生きている。その殺害者もまた生きており、奴を滅ぼすには、この疲れ果てた命を引き延ばさねばならない。私は草の上にひざまずき、大地に口づけして、震える唇で叫んだ。「私がひざまずくこの神聖な大地に、傍らをさまよう魂たちに、胸を満たす深く永遠の悲しみにかけて誓う。夜よ、そして夜をつかさどる霊たちよ、お前たちにも誓う。この不幸をもたらした悪魔を、奴か私のいずれかが死闘の果てに滅びるまで追い続ける。そのために私は生きる。この何にも代えがたい復讐を遂げるためだけに、再び太陽を仰ぎ、緑の草を踏む。さもなければ、それらは永遠に私の目から消え去るはずだった。死者の霊よ、さまよえる復讐の使者たちよ、私に力を貸し、行く手を導いてくれ。呪われた地獄の怪物に、苦痛を存分に味わわせてくれ。今私を責めさいなむ絶望を、奴にも思い知らせてくれ。」
誓い始めたときには厳かな畏れがあり、殺された愛する者たちの魂が私の献身を聞き、認めてくれたと、ほとんど確信していた。だが言い終えるころには憤怒に取りつかれ、怒りに喉を詰まらせていた。
静まり返った夜の闇から返事が来た。大きく、悪魔じみた笑い声だった。いつまでも重く耳に響き、山々がそれをこだました。地獄中から嘲笑されているようだった。誓いを聞き届けられ、復讐のために生かされているのでなければ、あの瞬間、私は狂気に呑まれて惨めな命を絶っていただろう。笑い声が消えると、聞き覚えのある忌まわしい声が、耳元からと思えるほど近くで、はっきりとささやいた。「満足だ、哀れな男よ。お前は生きると決めた。それで私は満足だ。」
私は声のしたほうへ飛びかかったが、悪魔は手をすり抜けた。そのとき、丸い月が地平から昇り、人間離れした速さで逃げる奴の、おぞましくゆがんだ姿を照らし出した。
私は追った。それから何か月ものあいだ、追跡が私の唯一の仕事となった。わずかな手がかりを頼りにローヌ川の流れに沿って進んだが、徒労に終わった。青い地中海が見えてきたころ、不思議な巡り合わせで、悪魔が夜陰に紛れて黒海行きの船に乗り込み、身を隠すのを見た。私も同じ船に乗ったが、奴はどうやったものか逃げおおせた。
タタール地方やロシアの荒野でも、奴は私をかわし続け、私はその後を追い続けた。恐ろしい怪物に怯えた農民たちが行方を教えてくれることもあった。また、奴の足跡を完全に見失えば私が絶望して死ぬと恐れたのか、怪物自身が道しるべを残すこともあった。雪が頭上に降りかかり、白い平原には奴の巨大な足跡が続いていた。まだ人生を歩み始めたばかりで、苦悩も知らず、耐えがたい苦痛を味わったこともないあなたに、私が何を感じ、今も感じているか、どうしてわかるだろう。寒さ、飢え、疲労など、私が耐える運命にあった苦しみのうちでは最も軽いものだった。悪魔の呪いを受け、永遠の地獄を身にまとって歩いていたのだ。それでも善なる霊が私についてきて足取りを導き、私が激しく運命を呪ると、乗り越えられそうもない窮地から突然救い出してくれた。飢えに負けて倒れ伏したとき、荒野に食べ物が用意されていて、力と気力を取り戻せたこともある。確かに粗末な、土地の農民が食べるようなものだった。だが、助けを求めて呼びかけた霊たちが置いてくれたのだと、私は信じて疑わない。あたりが乾ききり、空には雲一つなく、喉の渇きに苦しんでいるときには、小さな雲が空を覆い、私を生き返らせる数滴の雨を落として消えることが幾度もあった。
できる限り川沿いを進んだが、悪魔はたいてい川を避けた。その地方の人々は主に川辺に集まっていたからだ。それ以外の場所で人に会うことはめったになく、私は道を横切る野生動物を捕って食いつないだ。持っていた金を分け与えて村人の好意を得ることもあった。獲物を持っていき、その一部だけを自分で取り、火や調理道具を貸してくれた人々に残りを渡すこともあった。
そんな日々が続くうちに、人生は心底いとわしいものとなり、喜びを味わえるのは眠っているときだけになった。ああ、祝福された眠りよ。どん底にいるときにも眠りに落ちれば、夢は私を恍惚とするほど慰めてくれた。私を守る霊たちが巡礼を果たす力を保てるよう、束の間の、いや、幾時間もの幸福を授けてくれたのだろう。この休息がなければ、苦難に押しつぶされていたはずだ。日中、夜への望みが私を支え、励ましてくれた。眠れば友人たちに、妻に、愛する祖国に会えたからだ。父の慈愛に満ちた顔を再び見て、エリザベスの澄んだ声を聞き、健康と若さに輝くクラヴァルの姿を眺めた。苦しい行軍に疲れ果てたときには、今は夢を見ていて、夜が来れば愛する者たちの腕の中で現実を味わえるのだと、自分に言い聞かせることも多かった。どれほど切ない愛しさが胸にこみ上げたことか。目覚めているときさえ時折現れる懐かしい姿にすがりつき、皆はまだ生きているのだと思い込もうとした。そんなとき、胸の中で燃える復讐心は消えた。悪魔を滅ぼすために歩み続けるのも、魂から湧く激しい願いというより、天に課された務めに従い、自分でも知覚できない力に動かされているかのようだった。
追われる奴が何を感じていたか、私にはわからない。ときおり奴は木の幹に文字を書き、あるいは石に刻み、私に道を示すとともに怒りをかき立てた。その一つには、こう記されていた。「私の支配はまだ終わっていない。お前が生きている限り、私の力は揺るがない。追ってこい。私は北の永遠の氷を目指す。そこではお前は冷気と霜に苦しむだろうが、私には何の痛みもない。あまり遅れずに来れば、この近くに死んだ野兎が見つかる。食べて力をつけるがいい。来い、わが敵よ。命を懸けた勝負はまだ残っている。だが、そのときが来るまで、お前は苦しく惨めな時間をたっぷり味わわねばならない。」
人を嘲る悪魔め! 私はもう一度、復讐を誓う。忌まわしい怪物よ、お前に苦痛と死を与えると、改めて誓う。奴か私が滅びるまで、決して追跡をやめない。そのときこそ、どれほどの歓喜に包まれてエリザベスや亡き愛する者たちのもとへ行けるだろう。皆は今も、長く苦しい遍歴への報いを私のために用意してくれているはずだ。
なおも北へ進むにつれ、雪は深くなり、寒さはほとんど耐えられないほど厳しくなった。農民たちは粗末な家に閉じこもり、ごく少数の屈強な者だけが、飢えに追われて隠れ場所から獲物を探しに出てくる動物を捕ろうと外へ出た。川は凍りついて魚も捕れず、私は主な食料源を失った。
私の苦労が増すほど、敵は勝ち誇った。奴が残した文句の一つは、こうだった。「備えろ! お前の苦難は始まったばかりだ。毛皮をまとい、食料を蓄えておけ。まもなく始まる旅では、お前の苦しみが私の永遠の憎しみを満足させるだろう。」
その嘲りが、かえって私の勇気と忍耐を奮い立たせた。必ず目的を遂げると心に決め、天の助けを求めながら、熱意を少しも失わず果てしない荒野を進んだ。やがて遠くに海が現れ、地平の果てを縁取った。ああ、南の青い海とはなんと違っていたことか。氷に覆われ、陸よりさらに荒々しく険しいことでしか、海とは見分けられなかった。かつてギリシャ人たちはアジアの丘から地中海を望み、喜びの涙を流して、苦難の終わりを歓呼して迎えたという。私は泣かなかった。だがひざまずき、敵の嘲りにもかかわらず奴と対決できると望む場所まで無事導いてくれた霊に、心の底から感謝した。
その数週間前、私はそりと犬を手に入れ、雪原を想像もつかない速さで進めるようになっていた。悪魔にも同じ利点があったかは知らない。だが、それまでは日に日に引き離されていたのに、今度は差を縮めていた。初めて海を見たころには奴は一日行程ほど先にいるだけで、岸に着く前に追いつけると思った。私は勇気を新たに進み、二日後、海辺の貧しい集落に着いた。住民に悪魔のことを尋ねると、詳しく教えてくれた。前夜、銃一丁と何挺もの拳銃を携えた巨大な怪物が現れ、恐ろしい姿で一軒家の住民を追い払ったという。怪物は蓄えてあった冬の食料を奪ってそりに積み、さらに飼い慣らされた犬を大勢つかまえてそりにつないだ。そしてその夜のうちに、恐怖に震える村人たちが胸をなで下ろすなか、陸地のない方角へ海を渡っていった。氷が割れるか、尽きることのない寒さに凍えて、じきに死ぬだろうと彼らは考えていた。
話を聞いた私は、一時、絶望に襲われた。奴は逃げ去り、私は海の起伏する氷原を、破滅を招きかねない果てしない旅に出なければならない。その寒さには地元の人間さえ長くは耐えられず、温暖で日の光に恵まれた土地に生まれた私が、生き延びられるとは思えなかった。それでも、悪魔が生き延び勝ち誇る姿を思い浮かべると、怒りと復讐心が大波のように押し寄せ、ほかの感情をすべて呑み込んだ。少し休むあいだ、死者の霊が周囲を漂い、追跡と復讐へ私を駆り立てた。私は旅支度を整えた。
陸用のそりを、凍った海の凹凸に適したものに替え、十分な食料を買い込んで、陸を離れた。
それから何日が過ぎたのか、見当もつかない。ただ、心の中で燃え続ける正当な報復への思いがなければ耐えられなかったほどの苦難を味わった。巨大で険しい氷山が幾度も行く手を塞ぎ、海面下をうねる波の轟きが、私を呑み込むぞと脅すように聞こえた。だが寒気が戻るたび、海面は再び凍って安全な道になった。
消費した食料の量からすると、旅を始めて三週間ほど経っていたと思う。期待しては裏切られることの繰り返しに、幾度も落胆と悲しみの苦い涙がこぼれた。絶望はほとんど私を捕らえ、私はまもなく苦難に押しつぶされるところだった。あるとき、哀れな犬たちが信じがたい苦労の末になだらかな氷山の頂へ登りきり、一頭が疲労で倒れて死んだ。私は苦悶しながら眼前の広がりを眺めた。そのとき、薄暗い平原に黒い点が見えた。目を凝らし、それがそりであり、中には見覚えのあるゆがんだ体が乗っているとわかると、歓喜の叫びを上げた。ああ、どれほど熱い勢いで希望が胸に戻ったことか。目に涙があふれ、悪魔の姿が見えなくならないよう急いで拭った。それでも熱い涙に視界はかすみ、ついにはこみ上げる感情に負けて声を上げて泣いた。
だが、立ち止まっている場合ではない。私は死んだ仲間をそりから外し、犬たちにたっぷり餌をやった。どうしても必要な、しかしひどくもどかしい一時間の休息を取ってから、再び進んだ。そりはまだ見えていた。その後も、間にそびえる氷の岩に短いあいだ遮られる以外は、見失わなかった。確かに距離は縮まっていた。二日近く進んだのち、敵が一マイルも離れていないところにいるのを見たとき、胸は高鳴った。
ところが、もう少しで敵に手が届くと思った矢先、希望は突然絶たれた。かつてないほど完全に奴を見失ったのだ。海の底から轟きが聞こえ、足元の水がうねり膨らむにつれて、その音は刻々と不吉に、恐ろしくなった。進もうとしたが無駄だった。風が起こり、海が吠え、地震の激震のような圧倒的な轟音とともに、氷が裂けて割れた。すべてはたちまち終わった。数分のうちに、荒れ狂う海が私と敵を隔てていた。取り残された私は、絶えず小さくなっていく流氷に乗って漂い、おぞましい死を待つ身となった。
そうして恐怖の幾時間が過ぎた。犬が何頭か死に、私自身も重なる苦難に倒れかけたとき、錨を下ろしたあなたの船が見え、救いと生への希望が差し伸べられた。こんな北まで船が来るとは思いもせず、驚いた。私は急いでそりの一部を壊して櫂を作り、途方もない苦労の末、乗っていた氷を船のほうへ動かした。もし船が南へ向かうなら、目的を捨てるより海のなすがままになろうと決めていた。小舟を借り、敵を追えるよう頼むつもりだったのだ。だが船は北へ向かっていた。あなたがたに引き上げられたとき、私は力を使い果たしていた。まもなく重なる苦難に負けて死んでいただろう。務めを果たさぬまま死ぬことを、私は今も恐れている。
ああ、いつになれば導きの霊は私を悪魔のもとへ連れていき、望み続けた安息を与えてくれるのだろう。それとも私だけが死に、奴は生き延びるのか。もしそうなったら、ウォルトン、誓ってほしい。奴を逃がさず、追い求めて殺し、私の復讐を遂げると。だが私の遍歴を引き継ぎ、私が味わった苦難に耐えてくれなどと、どうして頼めよう。いや、そこまで身勝手にはなれない。それでも、私の死後に奴が現れ、復讐の使者たちがあなたのもとへ導いたなら、奴を生かしておかないと誓ってくれ。私の苦しみを踏み越えて勝ち誇り、さらに罪を重ねるために生き延びることは許さないと。奴は弁が立ち、人の心を動かす。その言葉は一度、私の心さえ揺さぶった。だが信じてはならない。魂は姿と同じく地獄そのもので、裏切りと悪魔のような悪意に満ちている。耳を貸すな。ウィリアム、ジュスティーヌ、クラヴァル、エリザベス、私の父、そして哀れなヴィクターの名を呼び、奴の心臓に剣を突き立ててくれ。私は傍らを漂い、その切っ先を導こう。
ウォルトン、続き。
八月二十六日、一七――年。
マーガレット、この奇妙で恐ろしい話を読んで、あなたも背筋が凍っただろうか。 今なお私の血が凍るように。彼は突然苦痛に襲われて話せなくなることもあれば、 途切れがちだが胸を刺す声で、苦悩に満ちた言葉をようやく絞り出すこともあった。 美しい目は憤りに輝いたかと思えば伏せられ、果てしない悲しみに光を失った。 ときには表情と声を抑え、動揺を少しも見せずに、最も恐ろしい出来事を静かに語った。 だが次の瞬間、噴火する火山のように顔を激怒に変え、 自分を苦しめた者への呪いを絶叫するのだった。
話は筋が通り、飾り気のない真実として語られた。それでも正直に言えば、どれほど真摯で一貫した彼の言葉よりも、見せてくれたフェリックスとサフィーの手紙、そして船から見た怪物の姿のほうが、私には強い証拠となった。あのような怪物が本当に存在するのだ! 疑いようもないが、驚嘆するばかりである。私はときどき、フランケンシュタインから怪物を造った詳しい方法を聞き出そうとしたが、その点について彼は口を閉ざした。
「気でも違ったのか、友よ」と彼は言った。「その無分別な好奇心は、あなたをどこへ連れていく? あなたまで自分と世界のために、悪魔のような敵を造りたいのか? やめてくれ。私の苦しみを教訓に、自分の苦しみを増やそうなどと思わないでくれ。」
フランケンシュタインは、私が彼の話を書き留めていることに気づいた。見せてほしいと言い、多くの箇所を自ら直して書き足した。とりわけ敵と交わした会話には、彼自身の手で生気を吹き込んだ。「私の話を残してくれるのなら」と彼は言った。「不完全な形で後世に伝わるのは望まない。」
こうして、想像力の生み出したどんな物語よりも奇怪な話に耳を傾けるうち、一週間が過ぎた。話そのものと、客人の気高く穏やかな人柄に引きつけられ、私の思考も感情もすべて彼のことで占められている。慰めてやりたい。だが、これほど不幸で、慰めの望みをすべて失った人に、生きよと勧められるだろうか。いや、できない。今の彼に残された唯一の喜びは、打ち砕かれた心を静め、死を迎えるときにあるだろう。それでも彼には、孤独と錯乱が生んだ慰めが一つある。夢で友人たちと語り合い、苦しみを癒やされたり復讐を励まされたりするとき、彼はその人々を空想の産物ではなく、遠い別世界から訪れる本人たちだと信じている。この信仰が夢想に厳かさを与え、私にもほとんど真実と同じほど重く、心を引かれるものにしている。
私たちの会話は、彼自身の来歴や不幸だけに限らない。文学一般についても、彼は底知れぬ知識と鋭い理解力を示す。その言葉は力強く胸を打ち、悲しい出来事を語ったり、哀れみや愛を呼び起こそうとしたりするのを、涙なしには聞けない。破滅のただ中でなおこれほど気高く、神のようである彼は、幸福な時代にはどれほど輝いていたのだろう。彼自身も自らの価値と、転落の深さを感じているらしい。
「若いころは」と彼は言った。「何か偉大な事業を成す運命にあると信じていた。感情は激しかったが、冷静に判断する力もあり、名高い仕事を成し遂げる素質があった。自分には価値があるという思いが、ほかの者なら押しつぶされるようなときにも私を支えてくれた。同胞の役に立つかもしれない才能を、無益な悲嘆で捨て去るのは罪だと思っていたからだ。感覚と理性を備えた生き物を造ったのだと考えれば、自分をありふれた夢想家たちと同列には置けなかった。だが、歩み始めた私を支えたこの思いも、今はただ、私をさらに深く塵の中へ沈めるだけだ。構想も希望も、すべて無に帰した。全能を望んだ大天使のように、私は永遠の地獄につながれている。想像力は豊かだったが、分析し、実行する力も強かった。その二つを結びつけて人間の創造を思い立ち、実現した。仕事が完成する前の夢想を、今も平静には思い出せない。心は天を歩き、自分の力に歓喜したかと思えば、それがもたらすものを思って胸を燃やした。幼いころから高い望みと大きな野心を抱いていた。それが、なんという転落だろう。ああ、友よ。かつての私を知っていたら、今の落ちぶれた姿を見ても同じ人間とは思えないはずだ。絶望が胸に忍び寄ることはめったになかった。崇高な運命に運ばれていくように思えた――落ちて、二度と、決して再び立ち上がれなくなるまでは。」
それほど立派な人を、私は失うのだろうか。私は友を求めてきた。共感し、愛してくれる人を探してきた。この荒れ果てた海で、ついに見つけたのだ。だが、その価値を知った途端に失うためだけに出会ったのではないかと恐れている。生きる気持ちを取り戻してほしいのに、彼はその考えを退ける。
「ウォルトン」と彼は言った。「こんな哀れな男を思いやってくれて、ありがとう。だが、新しい絆や愛情を語るとき、亡くした人々の代わりになる者がいると思うか? クラヴァルのような友人や、もう一人のエリザベスを、どこで見つけられる? 格別の美徳に心を打たれるわけではなくても、幼いころからの友は、後にできた友がめったに持ちえない力を私たちの心に及ぼす。どれほど変わっても消え去りはしない、幼いころの気質を知っているから、行いの動機が誠実だったかどうかをより確かに見定められる。早くからその兆しがあったのでない限り、きょうだいは互いを欺瞞や不正で疑ったりしない。だが後にできた友人には、どれほど深く親しんでも、思わず疑いの目を向けることがある。私の友人たちは、長い付き合いだけでなく、それぞれの人柄ゆえに愛おしかった。どこへ行こうと、エリザベスの優しい声とクラヴァルとの語らいが耳元に聞こえるだろう。二人は死んだ。この孤独の中で私を生かすのは、ただ一つの思いだけだ。もし同胞に広く役立つ崇高な事業を担っているなら、それを果たすまで生きられる。だが私の運命は違う。自ら命を与えた存在を追い、滅ぼさねばならない。そうすれば地上での役目を終え、死ぬことができる。」
愛する姉上へ
九月二日。
危険に囲まれながら手紙を書いている。懐かしいイングランド、そしてそこに住むもっと懐かしい人々に、再び会える運命にあるのかもわからない。逃げ道のない氷山に囲まれ、船は今にも押しつぶされそうだ。私に説得されて旅に加わった勇敢な仲間たちは助けを求めて私を見るが、与えられるものがない。恐ろしく切迫した状況だ。それでも勇気と希望は失っていない。ただ、彼ら全員の命が私のせいで危険にさらされていると思うと、身がすくむ。遭難すれば、原因は私の無謀な計画にある。
そして、マーガレット、あなたはどうなるだろう。私の死を知らされることもなく、帰りを案じて待ち続けるだろう。幾年も過ぎ、絶望に襲われながら、なお希望に苦しめられる。ああ、愛する姉上。心からの期待が衰えていくさまを想像するほうが、私自身の死より恐ろしい。だが、あなたには夫とかわいい子供たちがいる。幸せになれるはずだ。天があなたを祝福し、幸せにしてくださいますように。
不幸な客人は、深い思いやりをもって私を見ている。希望を持たせようと努め、まるで自分も命を大切にしているかのように語る。過去にこの海へ挑んだ航海者たちも、何度となく同じ災難に遭ったと話してくれるので、私も思わず明るい先行きを信じたくなる。水夫たちも彼の雄弁に動かされている。彼が語ると絶望を忘れ、活力を取り戻す。その声を聞くあいだは、巨大な氷山も人間の決意の前に消える小丘に思えるらしい。だが、そんな気持ちは長続きしない。待つ日が一日延びるごとに恐怖が増し、この絶望から反乱が起こるのではないかと、私はひそかに恐れている。
九月五日。
つい先ほど、並々ならぬ出来事があった。この手紙があなたに届かない可能性は高いが、どうしても書き残しておきたい。
私たちは今も氷山に囲まれ、押しつぶされる危険にさらされている。寒さは猛烈で、不幸な仲間の何人もが、すでにこの荒涼とした地を墓場とした。フランケンシュタインの体は日ごとに衰えている。目にはなお熱に浮かされた光が揺れるが、すっかり消耗しており、急に何かしようと力を振り絞っても、すぐにまた生気を失ったように沈み込む。
前の手紙で、反乱を恐れていると書いた。今朝、友人の青白い顔を見守っていたときのことだ。目は半ば閉じ、手足はだらりとしていた。そこへ六人ほどの水夫がやって来て、船室に入れてほしいと求めた。中に入ると、代表者が私に話しかけた。ほかの水夫たちに選ばれ、代表して要求を伝えに来たという。道理に照らせば拒めない要求だと言った。私たちは氷に閉じ込められ、おそらく脱出できない。だが、もし氷が離れて航路が開けても、私が無謀にも航海を続け、幸運にも今の危険を乗り越えた彼らを新たな危険に導くのではないかと恐れている。そこで、船が自由になったら直ちに南へ向かうと、厳粛に約束してほしいというのだった。
彼の話に私は困惑した。まだ希望を捨てておらず、脱出できても帰ろうとは考えていなかった。だが、この要求を拒むことが道義的に、いや実際に可能だろうか。ためらって返事をしかねていると、初めは黙り、話を聞く力さえないように見えたフランケンシュタインが身を起こした。目が輝き、頬には一瞬、力が戻ったように血の色が差した。彼は水夫たちに向かって言った。
「何を言っている? 船長に何を求めるつもりだ? そんなに簡単に志を捨てるのか? これは輝かしい遠征だと言ったではないか。なぜ輝かしい? 道が南の海のように穏やかだからではない。危険と恐怖に満ち、何か起こるたびに不屈の心と勇気を示さねばならず、死の危険を勇敢に乗り越える旅だからだ。だからこそ輝かしく、誉れ高い事業なのだ。いつか諸君は人類の恩人とたたえられ、人々のため、名誉のために死に立ち向かった勇者として、その名を敬われるはずだった。ところが今、危険を想像しただけで――いや、勇気を試す最初の大きな試練に遭ったところで尻込みし、寒さと危険に耐える力のない者として後世に名を残してもよいと言うのか。『寒くなったので、かわいそうな彼らは暖かな炉辺へ帰りました』と。そんなことに、これほどの準備はいらない。臆病者だと証明するためだけに、こんな遠くまで来て、船長に敗北の恥をかかせる必要などなかった。ああ、人間らしくあれ。それ以上の者になれ。志を揺るがせず、岩のように堅く立て。諸君の心と違い、この氷は不変ではない。行くと決めれば、氷に行く手を阻む力はない。額に不名誉の烙印を押されて家族のもとへ帰るな。戦い、勝ち、敵に背を向けることなど知らぬ英雄として帰るのだ。」
言葉に込められた感情に合わせて声を変え、高い志と勇気に満ちた目で彼は語った。水夫たちが心を動かされたとして、驚くだろうか。彼らは顔を見合わせ、答えられなかった。そこで私が、ひとまず戻って今の言葉を考えてほしいと伝えた。どうしても望まないならこれ以上北へは連れていかないが、考え直せば勇気を取り戻してくれると信じたい、と。
彼らが退出したので友人に向き直ると、彼はぐったりと力を失い、ほとんど命の灯が消えかけていた。
この先どうなるかはわからない。だが、志を果たせず恥を抱えて帰るくらいなら死にたい。それでも、そうなるのではないかと恐れている。栄光や名誉への思いに支えられない水夫たちが、自ら進んで今の苦難に耐え続けるとは思えないからだ。
九月七日。
賽は投げられた。船が壊れずに済めば帰ると、私は承諾した。臆病と優柔不断のために希望は打ち砕かれ、何も得られぬまま、失意のうちに帰る。この理不尽を黙って耐えるには、私にはもっと深い哲学が必要だ。
九月十二日。
すべては終わった。私はイングランドへ帰る。人々の役に立ち、栄誉を得る希望を失い、友も失った。だが、愛する姉上、苦い出来事の一部始終を伝えよう。イングランドへ、あなたのもとへと風に運ばれているあいだ、絶望はしないつもりだ。
九月九日、氷が動き始め、あちこちで氷の島が裂けるにつれ、遠くから雷のような轟きが聞こえた。私たちは差し迫った危険にあったが、ただ成り行きに任せるほかなかった。私は主に、病状が悪化して寝たきりになった不幸な客人の世話をしていた。船尾の氷が割れて勢いよく北へ押し流され、西風が吹き始めた。十一日には南への航路が完全に開いた。故郷に帰れる見通しが立ったと知ると、水夫たちはいつまでも大きな歓声を上げた。うとうとしていたフランケンシュタインが目覚め、騒ぎのわけを尋ねた。「もうすぐイングランドへ帰れるから」と私は答えた。「皆、喜んでいるのだ。」
「では、本当に帰るのか?」
「残念ながら。彼らの要求には逆らえない。嫌がる者たちを危険へ連れていくことはできないから、帰るしかない。」
「そうしたければ、そうするといい。だが私は帰らない。あなたは志を捨てても、私の務めは天に課されたもので、捨てるわけにはいかない。体は弱っているが、復讐を助ける霊たちが、きっと必要な力を授けてくれる。」
そう言って寝台から飛び起きようとしたが、体がついていかなかった。彼は倒れ込んで意識を失った。
なかなか息を吹き返さず、私は幾度も、命が尽きたのではないかと思った。ようやく目を開けたものの、呼吸は苦しく、言葉を発せない。船医は心を落ち着ける薬を飲ませ、静かに休ませるよう命じた。そして私に、友人にはもう何時間も残されていないと告げた。
宣告は下され、私には悲しみに耐えることしかできなかった。寝台の傍らに座って見守った。目を閉じているので眠ったのだと思ったが、やがて弱々しい声で私を呼び、近くに来るよう言った。「ああ、頼みにしていた力が尽きた。私はまもなく死ぬ。敵であり、私を苦しめたあの者は、なお生き続けるかもしれない。ウォルトン、最後のときになっても、以前口にした燃えるような憎しみや激しい復讐心に取りつかれているとは思わないでくれ。ただ、敵の死を望むことは正しいと感じている。この数日、過去の行いを振り返ったが、非難されるべきことをしたとは思わない。熱に浮かされた狂気から、私は理性を持つ生き物を造った。できる限りその幸福と安寧を守る義務があった。それは確かだ。だが、それに勝る義務もあった。同じ人間に対する義務は、より多くの人の幸不幸に関わる以上、いっそう重い。そう考えたからこそ、最初に造った者の伴侶を造ることを拒んだ。そして、拒んで正しかった。奴は比類ない悪意と利己心を示し、私の愛する者たちを殺した。豊かな感情を持ち、幸福と知恵を備えた人々を滅ぼしたのだ。その復讐欲がどこまで及ぶかもわからない。自ら不幸であっても、ほかの者を不幸にしないために、奴は死ぬべきだ。奴を滅ぼすのは私の務めだったが、果たせなかった。かつて身勝手で邪悪な動機から、やり残した仕事を引き受けてほしいとあなたに頼んだ。今、理性と正義に動かされて、改めて頼む。
「だが、そのために祖国や友人を捨ててくれとは言えない。イングランドへ帰るあなたが奴に会う機会も、ほとんどないだろう。事情を踏まえ、何が自分の務めかをよく考えて、あなた自身で決めてほしい。死が近づき、私の判断も思考もすでに乱れている。私が正しいと思うことを、あなたに強いるわけにはいかない。まだ激情に惑わされているかもしれないからだ。
「奴が生きて害をなすことだけは心にかかる。それ以外では、解放が目前に迫った今こそ、この数年で唯一の幸福なときだ。亡き愛する者たちの姿が目の前に浮かび、私はその腕の中へ急ぐ。さらば、ウォルトン。安らぎの中に幸福を求め、野心を避けてくれ。たとえ科学や発見によって名を上げたいという、一見無害な野心であっても。だが、なぜこんなことを言うのだろう。私の希望は潰えたが、ほかの誰かは成し遂げるかもしれない。」
話すうちに声は弱まり、とうとう力を使い果たして黙り込んだ。半時間ほどして再び話そうとしたが、声は出なかった。弱々しく私の手を握り、目を永遠に閉じた。唇に浮かんでいた穏やかな微笑みの光も、消え去った。
マーガレット、この輝かしい魂が早すぎる最期を迎えたことについて、何が言えるだろう。悲しみの深さを、どんな言葉で伝えられるだろう。何を言っても足りず、頼りない。涙が流れ、失意の雲が心を覆う。それでも私はイングランドへ向かっている。あの地で慰めを見いだせるかもしれない。
書く手を止める。今の音は何だろう。真夜中だ。風は順調に吹き、甲板の見張りもほとんど動いていない。また声のような音がした。だが人間の声よりしわがれている。フランケンシュタインの遺体を安置した船室から聞こえる。起きて確かめねば。おやすみ、姉上。
ああ、神よ! なんという光景を見たことか。思い出すだけで、まだめまいがする。書き記せるかどうかもわからない。だが、この最後の驚くべき結末を欠いては、私の記録した物語は完結しない。
私は不運に倒れた立派な友人の遺体が横たわる船室に入った。その上に、言葉では言い表せない姿がかがみ込んでいた。巨体でありながら、体つきはいびつでゆがんでいる。棺の上に身をかがめ、顔は長く乱れた髪に隠れていたが、伸ばした片手は途方もなく大きく、色も肌合いもミイラの手のようだった。私の近づく音を聞くと、悲嘆と恐怖の叫びをやめ、窓のほうへ跳んだ。その顔ほどおぞましいものを見たことはない。嫌悪を催すのに、恐怖で目を奪われる醜さだった。私は思わず目を閉じ、この破壊者に対して果たすべき務めを思い起こそうとした。そして、待て、と呼びかけた。
怪物は立ち止まり、不思議そうに私を見た。だが再び創造主の亡骸に顔を向けると、私がいることも忘れたようだった。その表情も身ぶりも、抑えきれない激しい感情に突き動かされていた。
「この人も、私の犠牲者だ!」と怪物は叫んだ。「この人の死で罪は極まり、私の惨めな生涯も終わりを迎えた。ああ、フランケンシュタイン! 寛大で、自らを犠牲にした人よ! 今さら許しを乞うて、何になろう。私はあなたの愛する者をことごとく滅ぼし、取り返しのつかないほどあなたを傷つけた。ああ、体は冷たい。もう答えてはくれない。」
声は喉に詰まったようだった。友の遺言に従って敵を滅ぼさねばという最初の思いは、好奇心と哀れみが入り交じるうちに揺らいだ。私は恐ろしい怪物に近づいた。その醜さには人ならぬ不気味さがあり、再び顔を見る勇気がなかった。話しかけようとしたが、言葉は唇で消えた。怪物はまとまりのない激しい言葉で、自らを責め続けた。ようやく感情の嵐が途切れたところで、私は覚悟を決めて話しかけた。
「今になって悔いても、もう遅い。悪魔のような復讐をここまで推し進める前に、良心の声に耳を貸し、悔恨の痛みを顧みていれば、フランケンシュタインはまだ生きていた。」
「夢でも見ているのか?」と悪魔は言った。「私が苦痛も後悔も感じていなかったと思うのか? この人が」と遺体を指して続けた。「殺害を遂げるまでに味わった苦しみは、私が長いあいだ犯行を重ねる中で味わった苦しみの、一万分の一にも満たない。恐ろしい利己心に急き立てられながら、私の心は悔恨に毒されていた。クラヴァルのうめき声が、私には音楽に聞こえたとでも思うのか? 私の心はもともと愛と共感を感じられるようにできていた。苦しみにねじ曲げられ、悪と憎しみに向かったとき、その変化は、あなたには想像もできない苦痛を伴った。
「クラヴァルを殺したあと、私は心を打ち砕かれてスイスへ戻った。フランケンシュタインを哀れみ、その哀れみは恐怖となり、自分自身を憎んだ。だが、私の存在と、この言葉にできない苦しみをともに生んだこの人が、なお幸福を望んでいると知った。私には不幸と絶望を積み重ねながら、私には永遠に許されない愛情や喜びを自ら味わおうとしていると知ったとき、どうにもならない羨望と苦い憤りが、飽くことのない復讐心に変わった。私はかつての脅しを思い出し、実行を決めた。自分自身にも致命的な苦痛を用意しているとわかっていた。だが私は、憎みながらも逆らえない衝動の主人ではなく、奴隷だった。それでも、彼女が死んだときには! いや、あのとき私は不幸ではなかった。あらゆる感情を捨て、あらゆる苦痛を押さえつけ、絶望の極みをほしいままにした。以来、悪が私の善となった。そこまで進んだ以上、自ら望んで選んだものに本性を合わせるしかなかった。悪魔のような企てを完成させることが、抑えようのない欲望になった。そして今、すべてが終わった。あそこに最後の犠牲者がいる!」
初めは、怪物の苦悩を語る言葉に心を動かされた。だが、奴の雄弁と説得力についてフランケンシュタインが語ったことを思い出し、友人の亡骸を再び見たとき、怒りが胸によみがえった。「この悪党め!」
私は言った。「自分で招いた破滅を前に、ここで泣き言を言うとはいい気なものだ。建物に火を放っておきながら、燃え落ちたあとで廃墟に座って嘆いている。偽善者の悪魔め! 嘆いている相手がまだ生きていれば、またお前の呪われた復讐の標的にし、餌食にしただろう。哀れんでいるのではない。悪意をぶつける相手が手の届かないところへ行ってしまったから嘆いているだけだ。」
「違う、そうではない」と怪物は遮った。「だが私の行いを見れば、そう思うのも当然だろう。私は、この苦しみをわかってほしいと求めているわけではない。共感を得られる日など来ないだろう。初めてそれを求めたとき、分かち合いたかったのは、この身にあふれていた善を愛する心、幸福と愛情だった。だが今、善は私には影となり、幸福と愛情は苦々しく、忌まわしい絶望に変わった。いったい何をわかってもらおうというのか。苦しみが続くあいだ、私は一人で耐える。死んだあと、人々が私の名を憎み、そしってもかまわない。かつては善や名声や喜びを夢見て、心を慰めた。外見を許し、自分の中に育つはずの優れた資質を愛してくれる者に出会えると、愚かにも望んだことがあった。名誉と献身への高い志を糧にしていた。だが今は、罪のために最も卑しい獣より低いところまで落ちた。私に匹敵する罪も、害も、悪意も、悲惨もない。恐ろしい罪の数々を思い返すと、かつて善の美しさと尊さに心を満たしていた者と自分が同じだとは信じられない。だが、まさしくそうなのだ。堕ちた天使は邪悪な悪魔となる。それでも、神と人に敵対したあの悪魔にさえ、荒涼とした境遇をともにする仲間がいた。私は一人だ。
「フランケンシュタインを友と呼ぶあなたは、私の罪と、あの人の不幸を知っているようだ。だが、あの人の話にも、むなしい激情の中で私が苦しみ抜いた歳月のすべては語れなかったはずだ。あの人の希望を壊しても、私自身の願いは満たされなかった。願いはいつも激しく、満たされることを求め続けた。私はなお愛と仲間を望み、そのたびに拒まれた。この仕打ちは不当ではなかったか? 人間が皆、私を踏みにじったのに、罪人は私だけなのか? 友を戸口からひどく追い払ったフェリックスを、あなたはなぜ憎まない? 自分の子を救った者を殺そうとした村人を、なぜ呪わない? いや、あの者たちは善良で、汚れ一つない人間なのだ! 惨めで見捨てられた私は、出来損ないとして拒まれ、蹴られ、踏みつけられる。今もその不当さを思い出すと血が煮えたぎる。
「だが、私が悪党なのも事実だ。愛らしい者、無力な者を殺した。眠る罪のない者を絞め殺し、私にもほかの生き物にも一度として害をなさなかった者の喉をつかみ、息を止めた。愛と尊敬に値する人間の中でも抜きん出た創造主を不幸に陥れ、取り返しのつかない破滅に至るまで追い詰めた。そこに横たわる体は、死んで青白く、冷たい。あなたは私を憎んでいる。だが、私が自分自身に抱く嫌悪には及ばない。この罪を犯した両手を見、この罪を思い描いた心を思う。そして、この手が自分の目に触れ、罪の記憶が二度と心に浮かばなくなるときを待ち望む。
「これから先、私が害をなすことを恐れないでほしい。私の仕事はほぼ終わった。この生涯を完結させ、なすべきことを果たすために、あなたの死も、ほかの誰の死も必要ない。必要なのは私自身の死だ。ためらうと思わないでくれ。私はこの船を去り、ここへ来るときに乗った流氷で、地球の最も北へ向かう。そこで自らのために薪を積み、この惨めな体を灰になるまで焼こう。私の残骸から何かを学び、私と同じものを造ろうとする、罰当たりな好奇心の持ち主を生まないためだ。私は死ぬ。今、身を焼く苦痛も、満たされず消えもしない思いの餌食になることも、もうない。私を生み出した人は死んだ。私がいなくなれば、二人の記憶もすぐに消えるだろう。太陽も星も二度と見ず、頬に風を感じることもない。光も感情も感覚も消え、その状態にこそ安らぎを見いだすのだ。数年前、この世界の光景が初めて目の前に開け、夏の温もりを感じ、木の葉のそよぎや鳥のさえずりを聞き、それらが私のすべてだったころなら、死ぬのが悲しくて泣いただろう。今は死だけが慰めだ。罪に汚れ、激しい悔恨に引き裂かれた私が、死以外のどこに安息を見いだせる?
「さらばだ。あなたを残して去る。あなたが、この目に映る最後の人間となる。さらば、フランケンシュタイン! もしあなたがまだ生き、私への復讐を望んでいたなら、私を滅ぼすより、生かしておくほうがその望みはかなっただろう。だが、あなたの願いは違った。私がこれ以上不幸を生まないよう、私の死を求めた。もし私にはわからない形で、今もあなたが考え、感じているとしても、私が抱いている以上の苦しみを与えたいとは望まないだろう。あなたも打ちのめされた。だが私の苦悩はそれ以上だった。死が傷口を永久に閉じるまで、悔恨の苦い痛みが私を刺し続けるからだ。
「だが、もうすぐだ」と怪物は、悲しく厳かな熱に浮かされて叫んだ。「私は死に、今感じているものは消える。身を焼く苦しみも、まもなくなくなる。私は勝ち誇って自らの火葬の薪に上がり、焼けつく炎の苦痛を喜んで受けよう。燃え盛る光は消え、灰は風に運ばれて海へ散る。魂は安らかに眠るだろう。もし考えることがあっても、今のような思いは二度としない。さらば。」
そう言うと、怪物は船室の窓から、船のすぐそばに浮かぶ氷の上へ跳び移った。たちまち波に運ばれ、闇と彼方の中へ消えていった。